(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141672
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器
(51)【国際特許分類】
B27D 1/10 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B27D1/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048113
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309024572
【氏名又は名称】株式会社キーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安田 聡
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁彦
(72)【発明者】
【氏名】岡山 真之介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】李 元羽
【テーマコード(参考)】
2B200
【Fターム(参考)】
2B200BB11
2B200EA04
2B200ED08
2B200ED11
2B200ED60
(57)【要約】
【課題】木質板材同士を容易かつ強固に接合することが可能な、木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器を提供する。
【解決手段】木質板材1の接合構造は、対向する木質板材1A、1Bの端面11A、11B同士を接合させるものであって、端面11A、11Bには傾斜面14A、14Bが形成され、傾斜面14A、14Bの中間部に木質板材1A、1Bの対向する方向Dsに棒状部材20が埋め込まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する木質板材の端面同士を接合させる木質板材の接合構造であって、
前記端面には傾斜面、または段差部が形成され、
前記傾斜面または前記段差部の中間部に前記木質板材の対向する方向に棒状部材が埋め込まれていることを特徴とする木質板材の接合構造。
【請求項2】
木質板材の端面同士を接合させる木質板材の接合構造であって、
端面に、
表面に対して斜めに傾斜する傾斜面、または、
前記表面よりも内側に、前記表面と同じ方向を向いて形成された内側面と、当該内側面と交差して、厚さ方向の内側へと延在するように形成された交差面とを含む段差部の、
いずれか一方が形成された第1木質板材と、
前記第1木質板材と接合される端面に、前記第1木質板材の前記端面に対応する形状の、前記傾斜面または前記段差部が形成された第2木質板材と、
棒状部材と、
を備え、
前記第1木質板材及び前記第2木質板材の各々は、前記傾斜面または前記交差面の互いに対応する位置に穴が形成されており、対応する前記傾斜面または前記段差部同士が互いに当接して接着剤により接着され、前記棒状部材が前記穴の各々に挿入されて接合されていることを特徴とする木質板材の接合構造。
【請求項3】
前記第1木質板材と前記第2木質板材の前記端面には、両側の前記表面の各々に対して、当該表面と交差して、厚さ方向の内側へと延在するように形成された縁面が、平面視したときに異なる位置に形成され、
前記傾斜面と前記段差部は、前記縁面の、前記厚さ方向における内側の端部間に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の木質板材の接合構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに1項に記載の木質板材の接合構造を備えた木質什器であって、
前記第1木質板材及び前記第2木質板材のうち、少なくとも一方の表面が屈曲または湾曲して形成され、
椅子、テーブル、または間仕切壁であることを特徴とする木質什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器に関する。
【背景技術】
【0002】
木質板材の端面同士を接合させる木質板材の接合構造としては、様々なものが存在する。木質板材同士を接合するに際しては、その接合強度を高めることが求められる場合がある。
例えば特許文献1には、端面に突起を形成した一方の木質床材と、端面に溝を形成した他方の木質床材とを実継ぎしてなる木質床材の接合部構造であって、突起の突出寸法より溝の深さ寸法を大きくし、溝の下方において他方の木質床材の底面に溝に沿って延びる切込み溝を形成し、実継ぎ状態にて一方の木質床材の突起より上部の上部端面と、他方の木質床材の溝より上部の上部端面との間に隙間を形成し、一方の木質床材の突起より下部の下部端面と、他方の木質床材の溝より下部の下部端面とを突き合わせる構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、木質床材の接合面を、突起、溝を有した複雑な形状に加工しなければならず、接合面の形成が容易ではない。
【0003】
また、特許文献2には、木材の構造縦継ぎ用フィンガージョイントにおいて、フィンガージョイント部をスカーフ状とした構成が開示されている。
特許文献3には、スカーフ面に溝の多数条を並列状に形成して成る板材同士を、接着剤を介して、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせ、一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、接着剤を硬化させて、板材を接合する構成が開示されている。
特許文献2、3に開示されたような構成では、いわゆるフィンガージョイントが用いられており、この場合においても、接合面の形状が複雑で、接合面を形成するのが容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-109734号公報
【特許文献2】実全昭61-175406号公報
【特許文献3】特開2011-31396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、木質板材同士を容易かつ強固に接合することが可能な、木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、木質板材の接合構造として、対向する木質板材同士の端面に傾斜面(テーパー部)、または段差部を設け、かつ双方の傾斜面、または段差部と交差する方向に棒状鋼材を挿入させるとともに、傾斜面同士、または段差部同士を接着剤で接着させることで、接着面が剥離したとしても、棒状部材が引張抵抗し、脆性的な破壊が抑制できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の木質板材の接合構造は、対向する木質板材の端面同士を接合させる木質板材の接合構造であって、前記端面には傾斜面、または段差部が形成され、前記傾斜面または前記段差部の中間部に前記木質板材の対向する方向に棒状部材が埋め込まれていることを特徴とする。
このような構成によれば、木質板材の、互いに接合される端面に形成された傾斜面または段差部の中間部に、木質板材の対向する方向に棒状部材が埋め込まれているため、面外方向に曲げモーメントが作用した場合に棒状部材がこれに抵抗する。
また、端面に傾斜面または段差部を形成し、棒状部材で連結するという簡単な構成であるため、木質板材の端面を簡潔な形状とすることができる。したがって、木質板材の加工や接合を容易に行える。
このようにして、木質板材同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【0007】
また、本発明の木質板材の接合構造は、木質板材の端面同士を接合させる木質板材の接合構造であって、端面に、表面に対して斜めに傾斜する傾斜面、または、前記表面よりも内側に、前記表面と同じ方向を向いて形成された内側面と、当該内側面と交差して、厚さ方向の内側へと延在するように形成された交差面とを含む段差部の、いずれか一方が形成された第1木質板材と、前記第1木質板材と接合される端面に、前記第1木質板材の前記端面に対応する形状の、前記傾斜面または前記段差部が形成された第2木質板材と、棒状部材と、を備え、前記第1木質板材及び前記第2木質板材の各々は、前記傾斜面または前記交差面の互いに対応する位置に穴が形成されており、対応する前記傾斜面または前記段差部同士が互いに当接して接着剤により接着され、前記棒状部材が前記穴の各々に挿入されて接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、木質板材同士の接合構造として、第1木質板材、及び第2木質板材は、対応する傾斜面または段差部同士が互いに当接して接着剤により接着されている。これにより、第1木質板材と第2木質板材の端面同士が当接する部分の面積が大きくなり、接着剤により木質板材の接合構造での耐力を確保し、木質板材同士が強固に接合される。
また、棒状部材により、第1木質板材、及び第2木質板材が接合されていることで、第1木質板材、及び第2木質板材の間にずれが生じようとしても、第1木質板材、及び第2木質板材に挿入されている棒状部材が引張抵抗材となり、第1木質板材、及び第2木質板材の接合状態を維持することが可能である。
更に、例えば一般のスカーフジョイントのように端面同士を接着剤で接合するのみの構造においては、面外方向に曲げモーメントが作用した場合に、接着剤が剥離すると、支持可能な荷重が急激に低下して脆性的に破壊するところ、上記のような構成においては、第1木質板材と第2木質板材は、接着剤に加えて棒状部材によって接合されているため、接着面が剥離したとしても、棒状部材によって耐力後の変形性能を確保することで、棒状部材が曲げモーメントに抵抗し、脆性的な破壊が抑制される。
上記のように接着剤により木質板材の接合構造の耐力を確保しつつ、棒状部材で耐力後の変形性能を確保することができ、木質板材同士が強固に接合される。
また、端面に傾斜面か段差部を形成し、棒状部材で連結するという簡単な構成であるため、第1木質板材、及び第2木質板材の端面を簡潔な形状とすることができる。したがって、木質板材の加工や接合を容易に行える。
このようにして、木質板材同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記第1木質板材と前記第2木質板材の前記端面には、両側の前記表面の各々に対して、当該表面と交差して、厚さ方向の内側へと延在するように形成された縁面が、平面視したときに異なる位置に形成され、前記傾斜面と前記段差部は、前記縁面の、前記厚さ方向における内側の端部間に形成されている。
このような構成によれば、上記のような接合構造を、より適切に実現することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の木質板材の接合構造を備えた木質什器は、上記したような木質板材の接合構造によって形成された木質什器であって、前記第1木質板材及び前記第2木質板材のうち、少なくとも一方の表面が屈曲または湾曲して形成され、椅子、テーブル、または間仕切壁であることを特徴とする。
このような構成によれば、上記したような木質板材の接合構造を用いることで、木質什器を構成する第1木質板材及び第2木質板材同士の接合部において、木質板材同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。また、第1木質板材及び第2木質板材のうち、少なくとも一方の表面が屈曲または湾曲して形成されることで、曲面を備えた椅子またはテーブル、或いは間仕切壁を構成する木質什器を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、木質板材同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る木質板材の接合構造の構成を示す断面図である。
【
図3】木質板材の接合構造で接合される一方の木質板材の端面の構成を示す断面図である。
【
図4】木質板材の接合構造で接合される他方の木質板材の端面の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る木質板材の接合構造の変形例の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る木質板材の接合構造の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示した木質什器を構成する木質板材の例を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示した木質板材を組み合わせて接合することで形成される擬似湾曲部の例を示す斜視図である。
【
図11】実施例で用いた試験体の試験方法を示す図である。
【
図12】実施例と比較例1、2における初期剛性と最大耐力を示す表である。
【
図13】比較例1における部材中央の曲げモーメントと鉛直変位との関係を示す図である。
【
図14】実施例と比較例2における部材中央の曲げモーメントと鉛直変位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、木質板材の端面に傾斜面(テーパー部)、または段差部が形成された第1木質部材、及び第2木質部材と、双方の傾斜面、または段差部と交差する方向に挿入される棒状鋼材と、を備えており、第1木質板材及び第2木質板材の傾斜面または段差部同士が互いに当接して接着剤により接着される、木質板材の接合構造である。
本発明の第1実施形態は、木質板材同士の端面に傾斜面(テーパー部)が設けられ、その傾斜面と交差する方向に棒状鋼材が挿入されており、対向する木質板材の傾斜面同士が接着剤で接着される木質板材の接合構造である(
図1~
図4)。第2施形態は、木質板材同士の端面に段差部が設けられ、その段差部と交差する方向に棒状鋼材が挿入されており、対向する木質板材の段差部同士が接着剤で接着される木質板材の接合構造である(
図6)。
以下、添付図面を参照して、本発明による木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る木質板材の接合構造の構成を示す断面図を
図1に示す。
図2は、
図1の平面図である。
図1、
図2に示されるように、本実施形態における木質板材1の接合構造は、2枚の木質板材1同士を付き合わせて接合させる。ここで、接合すべき一方の木質板材1を第1木質板材1Aとし、他方の木質板材1を第2木質板材1Bとする。第1木質板材1A、第2木質板材1Bは、それぞれ板状をなしている。第1木質板材1Aと第2木質板材1Bとは、第1木質板材1Aの端面11Aと、第2木質板材1Bの端面11Bとを、互いに突き合わせた状態で接合されている。
【0013】
図3は、木質板材の接合構造で接合される一方の木質板材の端面の構成を示す断面図である。
図3に示されるように、第1木質板材1Aは、板状部10Aを有している。板状部10Aは、一方の表面12Aと他方の表面13Aとを結ぶ厚さ方向Dtに所定の厚さを有した、木質材からなる板状である。第1木質板材1Aは、例えば、単板であってもよいし、集成材、単板積層材(LVL)等であってもよい。
第1木質板材1Aの、第2木質板材1Bに接合される端面11Aは、傾斜面14Aと、縁面15A、16Aとを有している。
傾斜面14Aは、第1木質板材1Aの厚さ方向Dtの中間部に形成されている。傾斜面14Aは、表面12A、13Aに対して斜めに傾斜している。具体的には、傾斜面14Aは、第1木質板材1Aと第2木質板材1Bとが対向する対向方向Dsで第1木質板材1Aの内部から外方すなわち第2木質板材1B側へと向かうにつれて、厚さ方向Dtの一方の側(表面12A側)に位置する表面が他方の側(表面13A側)に向けて接近して、断面積が漸次減少するように設けられている。このようにして、傾斜面14Aは、一方の表面12A側を向くように、傾斜して設けられている。
縁面15A、16Aは、両側の表面12A、13Aの各々に対して、対向方向Dsにおいて、異なる位置に形成されている。縁面15A、16Aは、
図2のように第1木質板材1Aを平面視したときに、互いに異なる位置に形成されている。縁面15Aは、厚さ方向Dtの一方の側の表面12Aと交差して、特に本実施形態においては直交して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成されている。縁面16Aは、厚さ方向Dtの他方の側の表面13Aに直交して厚さ方向Dtの内側へと延在するように設けられている。
傾斜面14Aは、縁面15A、16Aの、厚さ方向Dtにおける内側の端部15s、16s間に形成されている。
【0014】
図4は、木質板材の接合構造で接合される他方の木質板材の端面の構成を示す断面図である。
図4に示されるように、第2木質板材1Bは、第1木質板材1Aと同様に、板状部10Bを有している。板状部10Bは、一方の表面12Bと他方の表面13Bとを結ぶ厚さ方向Dtに所定の厚さを有した、木質材からなる板状である。第2木質板材1Bは、例えば、単板であってもよいし、集成材、単板積層材(LVL)等であってもよい。
第1木質板材1Bの、第1木質板材1Aに接合される端面11Bは、第1木質板材1Aの端面11Aに対応した形状を有している。第2木質板材1Bの端面11Bは、第1木質板材1Aの端面11Aに対し、表面12B、13Bを厚さ方向Dtに反転させた形状を有している。第2木質板材1Bの端面11Bは、傾斜面14Bと、縁面15B、16Bとを有している。
傾斜面14Bは、第2木質板材1Bの厚さ方向Dtの中間部に形成されている。傾斜面14Bは、表面12B、13Bに対して斜めに傾斜している。具体的には、傾斜面14Bは、対向方向Dsで第2木質板材1Bの内部から外方すなわち第1木質板材1A側へと向かうにつれて、厚さ方向Dtの一方の側(表面12B側)に位置する表面が他方の側(表面13B側)に向けて接近して、断面積が漸次減少するように設けられている。このようにして、傾斜面14Bは、一方の表面12B側を向くように、傾斜して設けられている。
縁面15B、16Bは、両側の表面12B、13Bの各々に対して、対向方向Dsにおいて、異なる位置に形成されている。縁面15B、16Bは、
図2のように第2木質板材1Bを平面視したときに、互いに異なる位置に形成されている。縁面15Bは、厚さ方向Dtの一方の側の表面12Bに直交して厚さ方向Dtの内側へと延在するように設けられている。縁面16Bは、厚さ方向Dtの他方の側の表面13Bに直交して厚さ方向Dtの内側へと延在するように設けられている。
傾斜面14Bは、縁面15B、16Bの、厚さ方向Dtにおける内側の端部15t、16t間に形成されている。
【0015】
図1~
図4に示すように、第1木質板材1A、第2木質板材1Bの傾斜面14A、14Bには、互いに対応する位置に、対向方向Dsに延びる穴17A、17Bが形成されている。
図2に示すように、穴17A、17Bは、第1木質板材1A、第2木質板材1Bの幅方向に間隔をあけて複数並設されている。
図1に示すように、第1木質板材1Aと、第2木質板材1Bとは、傾斜面14Aと傾斜面14B、縁面15Aと縁面16B、縁面16Aと縁面15Bを互いに当接させた状態で接合されている。第1木質板材1Aの表面12Aと第2木質板材1Bの表面13B、及び第1木質板材1Aの表面13Aと第2木質板材1Bの表面12Bは、それぞれ、同一の平面を形成している。第1木質板材1Aの穴17Aと、第2木質板材1Bの穴17Bには、棒状部材20の両端部がそれぞれ挿入されている。このようにして、棒状部材20は、傾斜面14A、14Bの中間部に、木質板材1A、1Bの対向する方向Dsに延在するように、埋め込まれている。
また、第1木質板材1Aの端面11A(傾斜面14A、縁面15A、16A)と、第2木質板材1Bの端面11B(傾斜面14B、縁面15B、16B)とは、接着剤30により互いに接着されている。接着剤30は、穴17A、17Bの内部にも塗布され、穴17A、17Bと、棒状部材20とは接着剤30により接合されている。このようにして、第1木質板材1A、第2木質板材1B、及び棒状部材20の各々は、接着剤によって互いに接合されている。
ここで、棒状部材20は、第1木質板材1A、第2木質板材1Bを形成する木質系材料よりも高い強度、剛性を有する、例えば金属材料(鋼棒)によって形成されている。棒状部材20としては、全ネジ、丸鋼、異形鉄筋等を用いることができる。棒状部材20として、外周面に雄ねじ溝が形成された全ネジや異形鉄筋を用いる場合においては、丸鋼よりも表面積が大きくなり接着剤30との接触面積が増えるため、棒状部材20が穴17A、17Bに、より強固に接合される。接着剤30としては、例えば、ポリウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤等を使用することができる。
【0016】
図3、
図4に示すように、上記したような第1木質板材1A、第2木質板材1Bは、板状部10A、10Bの原材10sに、穴17A、17Bを形成した後、原材10sの端部10bを、端面11A、11Bの形状に合わせて切り落とすことで形成される。
また、
図1に示すように、第1木質板材1Aと第2木質板材1Bとを接合するには、第1木質板材1A、および第2木質板材1Bのうち少なくとも一方(好ましくは双方)の端面11A、11Bに接着剤30を塗布する。接着剤30は、穴17A、17B内にも塗布する。第1木質板材1A、および第2木質板材1Bのうちの一方、本実施形態では、例えば第1木質板材1Aの穴17Aに、棒状部材20を挿入する。
その後、棒状部材20を第1木質板材1A、および第2木質板材1Bのうちの他方、本実施形態では、例えば第2木質板材1Bの穴17Bに挿入しつつ、第1木質板材1Aの端面11Aと第2木質板材1Bの端面11Bとを互いに接近させ、当接させる。このとき、第1木質板材1Aの縁面15A、16Aと、第2木質板材1Bの縁面16B、15Bとが互いに突き当たることにより、対向方向Dsにおける第1木質板材1Aと第2木質板材1Bとの位置決めを容易に行える。接着剤30が硬化することにより、第1木質板材1Aと第2木質板材1B、及び棒状部材20が、互いに、強固に接合される。
【0017】
上述したような木質板材1の接合構造は、対向する木質板材1A、1Bの端面11A、11B同士を接合させる木質板材1A、1Bの接合構造であって、端面11A、11Bには傾斜面14A、14Bが形成され、傾斜面14A、14Bの中間部に木質板材1A、1Bの対向する方向Dsに棒状部材20が埋め込まれている。
このような構成によれば、木質板材1A、1Bの、互いに接合される端面11A、11Bに形成された傾斜面14A、14Bの中間部に、木質板材1A、1Bの対向する方向Dsに棒状部材20が埋め込まれているため、面外方向に曲げモーメントが作用した場合に棒状部材20がこれに抵抗する。
また、端面11A、11Bに傾斜面14A、14Bを形成し、棒状部材20で連結するという簡単な構成であるため、木質板材1A、1Bの端面11A、11Bを簡潔な形状とすることができる。したがって、木質板材1A、1Bの加工や接合を容易に行える。
このようにして、木質板材1A、1B同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【0018】
また、木質板材1の端面11A、11B同士を接合させる木質板材1の接合構造であって、端面11Aに、表面12A、13Aに対して斜めに傾斜する傾斜面14Aが形成された第1木質板材1Aと、第1木質板材1Aと接合される端面11Bに、第1木質板材1Aの端面11Aに対応する形状の傾斜面14Bが形成された第2木質板材1Bと、棒状部材20と、を備え、第1木質板材1A及び第2木質板材1Bの各々は、傾斜面14A、14Bの互いに対応する位置に穴17A、17Bが形成されており、対応する傾斜面14A、14B同士が互いに当接して接着剤30により接着され、棒状部材20が穴17A、17Bの各々に挿入されて接合されている。
このような構成によれば、木質板材1同士の接合構造として、第1木質板材1A、及び第2木質板材1Bは、対応する傾斜面14A、14B同士が互いに当接して接着剤30により接着されている。これにより、第1木質板材1Aと第2木質板材1Bの端面11A、11B同士が当接する部分の面積が大きくなり、接着剤30により木質板材1A、1Bの接合構造での耐力を確保し、木質板材1A、1B同士が強固に接合される。
また、棒状部材20により、第1木質板材1A、及び第2木質板材1Bが接合されていることで、第1木質板材1A、及び第2木質板材1Bの間にずれが生じようとしても、第1木質板材1A、及び第2木質板材1Bに挿入されている棒状部材20が抵抗し、第1木質板材1A、及び第2木質板材1Bの接合状態を維持することが可能である。
更に、例えば一般のスカーフジョイントのように端面同士を接着剤で接合するのみの構造においては、面外方向に曲げモーメントが作用した場合に、接着剤が剥離すると、支持可能な荷重が急激に低下して脆性的に破壊するところ、上記のような構成においては、第1木質板材1Aと第2木質板材1Bは、接着剤30に加えて棒状部材20によって接合されているため、接着面が剥離したとしても、棒状部材20が曲げモーメントに抵抗し、脆性的な破壊が抑制される。
上記のように接着剤30により木質板材1A、1Bの接合構造の耐力を確保しつつ、棒状部材20で耐力後の変形性能を確保することができ、木質板材1A、1B同士が強固に接合される。
また、端面11A、11Bに傾斜面14A、14Bを形成し、棒状部材20で連結するという簡単な構成であるため、第1木質板材1A、及び第2木質板材1Bの端面11A、11Bを簡潔な形状とすることができる。したがって、木質板材1の加工や接合を容易に行える。
このようにして、木質板材1同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【0019】
また、第1木質板材1Aと第2木質板材1Bの端面11A、11Bには、両側の表面12A、13A、12B、13Bの各々に対して、表面12A、13A、12B、13Bと交差して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成された縁面15A、16A、15B、16Bが、平面視したときに異なる位置に形成され、傾斜面14A、14Bは、縁面15A、16A、15B、16Bの、厚さ方向Dtにおける内側の端部15s、15t、16s、16t間に形成されている。
このような構成によれば、上記のような接合構造を、より適切に実現することができる。
【0020】
また、棒状部材20は、第1木質板材1A及び第2木質板材1Bよりも高い剛性を有する。棒状部材20は、具体的には金属材料によって形成されている。
このような構成によれば、面外方向に曲げモーメントが作用し、接着面が剥離した場合に、棒状部材20が曲げモーメントに抵抗し、脆性的な破壊を効率的に抑制することができる。
【0021】
(第1実施形態の変形例)
なお、本発明の木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、第1木質板材1A、第2木質板材1Bは、傾斜面14A、14Bに対して厚さ方向Dtの両側に、縁面15A、16A、15B、16Bを備えるようにしたが、これに限らない。
図5は、本発明の第1実施形態に係る木質板材の接合構造の変形例の構成を示す断面図である。
例えば、
図5に示すように、縁面15A、16A、15B、16Bを備えず、端面11A、11Bにおいて厚さ方向Dtの全体にわたって、傾斜面14C、14Dが形成されているようにしてもよい。
【0022】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る木質板材の接合構造の構成を示す断面図を
図6に示す。
図6に示されるように、本実施形態における木質板材1の接合構造は、2枚の木質板材1同士を付き合わせて接合させる。第1木質板材1Cと第2木質板材1Dとは、第1木質板材1Cの端面11Cと、第2木質板材1Dの端面11Dとを、互いに突き合わせた状態で接合されている。
【0023】
第1木質板材1Cは、板状部10Cを有している。板状部10Cは、一方の表面12Cと他方の表面13Cとを結ぶ厚さ方向Dtに所定の厚さを有した、木質材からなる板状である。第1木質板材1Cは、例えば、単板であってもよいし、集成材、単板積層材(LVL)等であってもよい。
第1木質板材1Cの、第2木質板材1Dに接合される端面11Cは、段差部20Cと、縁面15C、16Cとを有している。
段差部20Cは、第1木質板材1Cの厚さ方向Dtの中間部に形成されている。段差部20Cは、内側面21C、22Cと、交差面23Cと、を有している。内側面21C、22Cは、表面12C、13Cよりも厚さ方向Dtの内側に、表面12C、13Cと平行に形成されている。内側面21Cと内側面22Cとは、厚さ方向Dtで異なる位置に形成されている。内側面21Cは、厚さ方向Dtで表面12Cに近い側に形成されている。内側面22Cは、厚さ方向Dtで表面13Cに近い側に形成されている。内側面21Cと内側面22Cとは、第1木質板材1Cと第2木質板材1Dとが対向する対向方向Dsで、異なる位置に形成されている。内側面21Cは、後に説明する交差面23Cに対して、対向方向Dsにおいて、第1木質板材1Cの内側に形成されている。内側面22Cは、交差面23Cに対して、対向方向Dsにおいて、第1木質板材1Cの外側(第2木質板材1D側)に形成されている。内側面21C、22Cは、いずれも厚さ方向Dtで表面12Cと同じ方向を向いて形成されている。
交差面23Cは、内側面21Cと内側面22Cとの間に形成されている。交差面23Cは、内側面21C、22Cと交差して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成されている。特に本実施形態においては、交差面23Cは、内側面21C、22Cに対して直交するように形成されている。
縁面15C、16Cは、両側の表面12C、13Cの各々に対して、対向方向Dsにおいて、異なる位置に形成されている。縁面15C、16Cは、第1木質板材1Cを平面視したときに、互いに異なる位置に形成されている。縁面15Cは、厚さ方向Dtの一方の側の表面12Cと交差して、特に本実施形態においては直交して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成されている。縁面16Cは、厚さ方向Dtの他方の側の表面13Cに直交して厚さ方向Dtの内側へと延在するように設けられている。
段差部20Cは、縁面15C、16Cの、厚さ方向Dtにおける内側の端部15s、16s間に形成されている。すなわち、縁面15Cの厚さ方向Dtにおける内側の端部15sに、縁面15Cと直交するように内側面21Cが設けられ、縁面16Cの厚さ方向Dtにおける内側の端部16sに、縁面16Cと直交するように内側面22Cが設けられ、内側面21Cと内側面22Cとの間に、これら内側面21Cと内側面22Cと直交するように、交差面23Cが設けられている。
【0024】
第2木質板材1Dは、第1木質板材1Cと同様に、板状部10Dを有している。板状部10Dは、一方の表面12Dと他方の表面13Dとを結ぶ厚さ方向Dtに所定の厚さを有した、木質材からなる板状である。第2木質板材1Dは、例えば、単板であってもよいし、集成材、単板積層材(LVL)等であってもよい。
第2木質板材1Dの、第1木質板材1Cに接合される端面11Dは、第1木質板材1Cの端面11Cに対応した形状を有している。第2木質板材1Dの端面11Dは、第1木質板材1Cの端面11Cに対し、表面12D、13Dを厚さ方向Dtに反転させた形状を有している。第2木質板材1Dの、第1木質板材1Cに接合される端面11Dは、段差部20Dと、縁面15D、16Dとを有している。
段差部20Dは、第2木質板材1Dの厚さ方向Dtの中間部に形成されている。段差部20Dは、内側面21D、22Dと、交差面23Dと、を有している。内側面21D、22Dは、表面12D、13Dよりも厚さ方向Dtの内側に、表面12D、13Dと平行に形成されている。内側面21Dと内側面22Dとは、厚さ方向Dtで異なる位置に形成されている。内側面21Dは、厚さ方向Dtで表面12Dに近い側に形成されている。内側面22Dは、厚さ方向Dtで表面13Dに近い側に形成されている。内側面21Dと内側面22Dとは、対向方向Dsで異なる位置に形成されている。内側面21Dは、後に説明する交差面23Dに対して、対向方向Dsにおいて、第2木質板材1Dの内側に形成されている。内側面22Dは、交差面23Dに対して、対向方向Dsにおいて、第2木質板材1Dの外側(第1木質板材1C側)に形成されている。内側面21D、22Dは、いずれも厚さ方向Dtで表面12Dと同じ方向を向いて形成されている。
交差面23Dは、内側面21Dと内側面22Dとの間に形成されている。交差面23Dは、内側面21D、22Dと交差して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成されている。特に本実施形態においては、交差面23Dは、内側面21D、22Dに対して直交して形成されている。
縁面15D、16Dは、両側の表面12D、13Dの各々に対して、対向方向Dsにおいて、異なる位置に形成されている。縁面15D、16Dは、第2木質板材1Dを平面視したときに、互いに異なる位置に形成されている。縁面15Dは、厚さ方向Dtの一方の側の表面12Dと交差して、特に本実施形態においては直交して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成されている。縁面16Dは、厚さ方向Dtの他方の側の表面13Dに直交して厚さ方向Dtの内側へと延在するように設けられている。
段差部20Dは、縁面15D、16Dの、厚さ方向Dtにおける内側の端部15t、16t間に形成されている。すなわち、縁面15Dの厚さ方向Dtにおける内側の端部15tに、縁面15Dと直交するように内側面21Dが設けられ、縁面16Dの厚さ方向Dtにおける内側の端部16tに、縁面16Dと直交するように内側面22Dが設けられ、内側面21Dと内側面22Dとの間に、これら内側面21Dと内側面22Dと直交するように、交差面23Dが設けられている。
【0025】
第1木質板材1C、第2木質板材1Dの段差部20C、20Dの交差面23C、23Dには、互いに対応する位置に、対向方向Dsに延びる穴17C、17Dが形成されている。穴17C、17Dは、厚さ方向Dtから視て、第1木質板材1C、第2木質板材1Dの幅方向に間隔をあけて複数並設されている。
第1木質板材1Cと、第2木質板材1Dとは、段差部20Cと段差部20Dすなわち内側面21Cと内側面22D、内側面22Cと内側面21D、及び交差面23Cと交差面23D、及び、縁面15Cと縁面16D、縁面16Cと縁面15Dと、の各々を、互いに当接させた状態で、接合されている。第1木質板材1Cの表面12Cと第2木質板材1Dの表面13D、及び第1木質板材1Cの表面13Cと第2木質板材1Dの表面12Dは、それぞれ、同一の平面を形成している。第1木質板材1Cの穴17Cと、第2木質板材1Dの穴17Dには、棒状部材20の両端部がそれぞれ挿入されている。このようにして、棒状部材20は、段差部20C、20Dの中間部に、木質板材1C、1Dの対向する方向Dsに延在するように、埋め込まれている。
また、第1木質板材1Cの端面11C(段差部20C、縁面15C、16C)と、第2木質板材1Dの端面11D(段差部20D、縁面15D、16D)とは、接着剤30により互いに接着されている。接着剤30は、穴17C、17Dの内部にも塗布され、穴17C、17Dと、棒状部材20とは、接着剤30により接合されている。このようにして、第1木質板材1C、第2木質板材1D、及び棒状部材20の各々は、接着剤によって互いに接合されている。
ここで、棒状部材20は、第1木質板材1C、第2木質板材1Dを形成する木質系材料よりも高い強度、剛性を有する、例えば金属材料(鋼棒)によって形成されている。棒状部材20としては、全ネジ、丸鋼、異形鉄筋等を用いることができる。棒状部材20として、外周面に雄ねじ溝が形成された全ネジや異形鉄筋を用いる場合においては、丸鋼よりも表面積が大きくなり接着剤30との接触面積が増えるため、棒状部材20が穴17C、17Dに、より強固に接合される。接着剤30としては、例えば、ポリウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤等を使用することができる。
【0026】
上述したような木質板材1の接合構造は、対向する木質板材1C、1Dの端面11C、11D同士を接合させる木質板材1C、1Dの接合構造であって、端面11C、11Dには段差部20C、20Dが形成され、段差部20C、20Dの中間部に木質板材1C、1Dの対向する方向Dsに棒状部材20が埋め込まれている。
このような構成によれば、木質板材1C、1Dの、互いに接合される端面11C、11Dに形成された段差部20C、20Dの中間部に、木質板材1C、1Dの対向する方向Dsに棒状部材20が埋め込まれているため、面外方向に曲げモーメントが作用した場合に棒状部材20がこれに抵抗する。
また、端面11C、11Dに段差部20C、20Dを形成し、棒状部材20で連結するという簡単な構成であるため、木質板材1C、1Dの端面11C、11Dを簡潔な形状とすることができる。したがって、木質板材1C、1Dの加工や接合を容易に行える。
このようにして、木質板材1C、1D同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【0027】
また、木質板材1の端面11C、11D同士を接合させる木質板材1の接合構造であって、端面11Cに、表面12C、13Cよりも内側に、表面12C、13Cと同じ方向を向いて形成された内側面21C、22Cと、内側面21C、22Cと交差して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成された交差面23Cとを含む段差部20Cが形成された第1木質板材1Cと、第1木質板材1Cと接合される端面11Dに、第1木質板材1Cの端面11Cに対応する形状の段差部20Dが形成された第2木質板材1Dと、棒状部材20と、を備え、第1木質板材1C及び第2木質板材1Dの各々は、交差面23C、23Dの互いに対応する位置に穴17C、17Dが形成されており、対応する段差部20C、20D同士が互いに当接して接着剤30により接着され、棒状部材20が穴17C、17Dの各々に挿入されて接合されている。
このような構成によれば、木質板材1同士の接合構造として、第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dは、対応する段差部20C、20D同士が互いに当接して接着剤30により接着されている。これにより、第1木質板材1Cと第2木質板材1Dの端面11C、11D同士が当接する部分の面積が大きくなり、接着剤30により木質板材1の接合構造での耐力を確保し、木質板材1C、1D同士が強固に接合される。
また、棒状部材20により、第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dが接合されていることで、第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dの間にずれが生じようとしても、第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dに挿入されている棒状部材20が抵抗し、第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dの接合状態を維持することが可能である。
更に、例えば一般のスカーフジョイントのように端面同士を接着剤で接合するのみの構造においては、面外方向に曲げモーメントが作用した場合に、接着剤が剥離すると、支持可能な荷重が急激に低下して脆性的に破壊するところ、上記のような構成においては、第1木質板材1Cと第2木質板材1Dは、接着剤30に加えて棒状部材20によって接合されているため、接着面が剥離したとしても、棒状部材20が曲げモーメントに抵抗し、脆性的な破壊が抑制される。
上記のように接着剤30により木質板材1C、1Dの接合構造での耐力を確保しつつ、棒状部材20で耐力後の変形性能を確保することができ、木質板材1C、1D同士が強固に接合される。
また、端面11C、11Dに段差部20C、20Dを形成し、棒状部材20で連結するという簡単な構成であるため、第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dの端面11C、11Dを簡潔な形状とすることができる。したがって、木質板材1の加工や接合を容易に行える。
このようにして、木質板材1同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。
【0028】
また、第1木質板材1Cと第2木質板材1Dの端面11C、11Dには、両側の表面12C、13C、12D、13Dの各々に対して、表面12C、13C、12D、13Dと交差して、厚さ方向Dtの内側へと延在するように形成された縁面15C、16C、15D、16Dが、平面視したときに異なる位置に形成され、段差部20C、20Dは、縁面15C、16C、15D、16Dの、厚さ方向Dtにおける内側の端部15s、15t、16s、16t間に形成されている。
このような構成によれば、上記のような接合構造を、より適切に実現することができる。
【0029】
また、棒状部材20は、第1木質板材1C及び第2木質板材1Dよりも高い剛性を有する。棒状部材20は、具体的には金属材料によって形成されている。
このような構成によれば、面外方向に曲げモーメントが作用し、接着面が剥離した場合に、棒状部材20が曲げモーメントに抵抗し、脆性的な破壊を効率的に抑制することができる。
【0030】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る木質板材の接合構造、及び当該接合構造を用いた木質什器の構成を示す斜視図を
図7に示す。
図8は、
図7に示した木質什器を構成する木質板材の例を示す斜視図である。
図9は、
図8に示した木質板材を組み合わせて接合することで形成される擬似湾曲部の例を示す斜視図である。
図7に示されるように、上記第1、第2実施形態で示したような木質板材1の接合構造を用い、複数枚の木質板材1同士を順次接合することによって、木質什器100を形成することができる。木質什器100は、例えば、椅子101、テーブル102、間仕切壁103として用いる部分が組み合わされたものである。
図7に示した木質什器100の全体的な構成、形状は、一例に過ぎず、木質什器100は、椅子101、テーブル102、及び間仕切壁103のうちの一種のみとして機能するものであってもよいし、椅子101、テーブル102、及び間仕切壁103のうちの二種を組み合わせたものであってもよい。
このような木質什器100を構成する複数枚の木質板材1は、平面視したときの形状が、矩形状に限らず、台形状、三角形状等であってもよい。このような平面形状の木質板材1を組み合わせ、上記第1、第2実施形態で示したような木質板材1の接合構造により接合することで、例えば、平面視した際に幅方向に湾曲して延びる部分111、112等を形成することができる。
また、複数枚の木質板材1を、床面に立てて配置した状態で、上記第1、第2実施形態で示したような木質板材1の接合構造により接合することで、壁状の部分121、122等を形成することができる。
ここで、
図8に示すように、第1木質板材1A及び第2木質板材1Bのうち、少なくとも一方(
図8の例では、第2木質板材1B)の表面12W、13Wが屈曲または湾曲して形成されるようにしてもよい。このような第1木質板材1Aと、第2木質板材1Bとを接合することで、
図7、
図9に示すように、擬似的に厚さ方向に湾曲した擬似湾曲部115を構成することができる。これにより、擬似湾曲部115によって形成される曲面を備えた椅子101、テーブル102、または間仕切壁103を構成することができる。
【0031】
本変形例の木質什器100は、上記したような木質板材1の接合構造を備えた木質什器100であって、第1木質板材1A及び第2木質板材1Bのうち、少なくとも一方の表面12W、13Wが屈曲または湾曲して形成され、椅子101、テーブル102、または間仕切壁103である。
このような構成によれば、上記したような木質板材1の接合構造を用い、木質什器100を形成することによって、木質什器100を構成する第1木質板材1A及び第2木質板材1B同士の接合部において、木質板材1同士を容易かつ強固に接合することが可能となる。また、第1木質板材1A及び第2木質板材1Bのうち、少なくとも一方の表面12W、13Wが屈曲または湾曲して形成されることで、曲面を備えた椅子101、テーブル102、または間仕切壁103を構成する木質什器100を形成することが可能となる。
【0032】
(第3実施形態の変形例)
上記実施形態では、木質什器100を構成する複数枚の木質板材1として、上記第1実施形態で示したような構成を適用したが、これに限られず、上記第2実施形態で示したような第1木質板材1C、及び第2木質板材1Dを適用してもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0033】
(検討例)
上記第1実施形態で示した木質板材の接合構造と、従来手法による木質板材の接合構造について、曲げ試験による比較を行ったのでその結果を以下に示す。
試験体は、厚さ35mm、幅200mm、長さ1100mmのブナ材を用いた平板であり、その平板の材軸方法の中央部に継手を設けた曲げ試験体用の平板試験体である。継手の条件を、以下のように異ならせた。
実施例:
図10、
図11に示すように、第1実施形態で示した傾斜面14A、14Bを備えた構成を用い、棒状部材20として、長さ98mmのM8の全ネジを配置し、端面11A、11B同士を接着剤30で接着した。
比較例1:試験体として、継手のない平板を用いた。
比較例2:長さ600mmの2枚の平板板端面を、材軸方向に100mにわたって傾斜面としたスカーフ継手とし、端面同士をエポキシ系の接着剤で接着した。
なお、ブナ材の材料特性規格値は、曲げ弾性率は16800N/mm
2で、許容曲げ応力度fbは64.9N/mm
2で、短期降伏曲げモーメントMyは2.65kNmである。曲げ試験では、部材中央の曲げモーメントと鉛直変位との関係から得られる曲げ剛性、及び曲げ耐力について比較検証を行った。
【0034】
実施例、比較例1、2のそれぞれについて、
図11に示されるように試験体両端を支持し、部材中央2点に鉛直力を作用させた。
その結果を、以下に示す。
図12は、実施例、比較例1、2における初期剛性(曲げ剛性)と最大耐力(曲げ耐力)を示す表である。
図13は、比較例1における部材中央の曲げモーメントと鉛直変位との関係を示す図である。
図12、及び
図13に示すように、継手を有さない比較例1では、曲げ剛性は曲げ弾性率と比較して同等で、最大耐力は短期降伏曲げモーメント以上であった。
図14は、実施例と比較例2における部材中央の曲げモーメントと鉛直変位との関係を示す図である。
図12、及び
図14に示すように、スカーフ継手と接着を用いた比較例2では、いずれも曲げモーメント約1kNmで接着面が剥離して脆性的に破壊した。
実施例では、接着面の剥離後に、棒状部材が曲げ抵抗するため、急激な荷重低下をすることなく、靭性が向上しているのが分かる。最終的に棒状鋼材が抜けだし荷重が低下した。
【符号の説明】
【0035】
1 木質板材 20C、20D 段差部
1A、1C 第1木質板材 21C、21D、22C、22D 内側面
1B、1D 第2木質板材 23C、23D 交差面
11A~11D 端面 30 接着剤
12A~12D、13A~13D、12W、13W 表面 100 木質什器
14A~14D 傾斜面 101 椅子
15A~15D、16A~16D 縁面 102 テーブル
15s、15t、16s、16t 端部 103 間仕切壁
17A~17D 穴 Ds 対向方向(対向する方向)
20 棒状部材 Dt 厚さ方向