(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014168
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及びジオールを含有する抗菌性混合物、並びにそれを含有する化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20230119BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20230119BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q17/00
A61K8/34
A61K31/12
A61K31/047
A61P31/04
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022188509
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2019572135の分割
【原出願日】2018-06-27
(31)【優先権主張番号】1756159
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1756165
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1760568
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・マナール-シュチェバラ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ・クフェルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ガルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニク・シュヴァリエ
(57)【要約】
【課題】本発明は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール及び1,2-デカンジオールから選択されるジオール化合物とを含有する抗菌性混合物、並びにさらにこのような混合物を含有する化粧用組成物に関する。ケラチン物質のケア、メイクアップ及びクレンジングにおける使用。
【解決手段】本発明者らは、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール及び1,2-デカンジオールから選択されるジオール化合物との組合せが、相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にすることを発見した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール及び1,2-デカンジオールから選択されるジオール化合物とを含む抗菌性混合物であって、前記ジオールが1,3-プロパンジオールである場合、それが、0.02~0.15の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,3-プロパンジオール質量比で存在する抗菌性混合物。
【請求項2】
前記ジオール化合物が1,3-プロパンジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌性混合物。
【請求項3】
前記質量比が、0.02~0.07の範囲であることを特徴とする、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
前記ジオール化合物が1,2-オクタンジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,2-オクタンジオールは、前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-オクタンジオール質量比が、0.1~1.5の範囲であり、好ましくは、0.2~1.1の範囲であるような量で存在することを特徴とする、請求項4に記載の抗菌性混合物。
【請求項6】
前記ジオール化合物が1,2-デカンジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌性混合物。
【請求項7】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-デカンジオール質量比が、1.6~12の範囲であり、好ましくは、1.6~10、優先的に、2.8~9の範囲であるような量で前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,2-デカンジオールを含むことを特徴とする、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
1.6~6.4の範囲、好ましくは、1.6~4.8の範囲、優先的に、2.8~6.4の範囲、より優先的に、2.8~4.8の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-デカンジオール質量比を有することを特徴とする、請求項6に記載の抗菌性混合物。
【請求項9】
2.8~12の範囲、好ましくは、3.2~10の範囲、特に3.5~9の範囲、優先的に、6~12の範囲、より優先的に、6~10の範囲、特に6~9の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-デカンジオール質量比を有することを特徴とする、請求項1に記載の抗菌性混合物。
【請求項10】
生理学的に許容可能な媒体中に、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物を含む組成物。
【請求項11】
水、油、2~10個の炭素原子を含有するポリオール、ゲル化剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、着色剤、香料、充填剤、紫外線遮断剤、植物抽出物、化粧用及び皮膚用活性薬剤、及び塩から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンが、前記組成物の総質量に対して0.01質量%~5質量%の範囲、好ましくは、0.01質量%~3質量%の範囲、優先的に、0.01質量%~2.5質量%の範囲の含量で存在することを特徴とする、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
生理学的に許容可能な媒体を含む組成物の保存のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌性混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び特定のジオール化合物を含有する抗菌性混合物、並びにさらにこのような混合物を含有する化粧用組成物である。
【背景技術】
【0002】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(ケトン化合物)は、出願(特許文献1)に記載されるように、微生物汚染から組成物を保護するための、化粧用組成物用の保存剤として興味深い物質である。
【0003】
しかしながら、良好な抗菌保護性能を維持しながら、組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物中に低濃度の前記ケトン化合物を組み込むことができることが望ましい。したがって、ケトン化合物と、抗菌効果を有する他の化合物との組合せが、この目的のために探し求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/039445号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、予想外にも、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール及び1,2-デカンジオールから選択されるジオール化合物との組合せが、相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にすることを発見した。
【0006】
後述される例の結果は、いくつかの混合物で取られた最小発育阻止濃度(MIC)測定で得られた相乗的抗菌活性を示す。抗菌活性は、抗菌性混合物が、20%以下、或いは25%以下の菌株増殖のパーセンテージを得ることを可能にする場合に相乗的であると見なされる。
【0007】
特定の質量比の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,3-プロパンジオールとの組合せが、特にかび、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【0008】
出願仏国特許出願公開第A-2973227号明細書には、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、及び1,3-プロパンジオールを含む特定の親水性溶媒を含有する化粧用組成物が記載されている。前記溶媒は、ケトン化合物を溶解させることを可能にする。この文献は、記載される混合物についての何らの抗菌特性も記載していない。
【0009】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,2-オクタンジオールとの組合せが、特に酵母、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【0010】
出願仏国特許出願公開第A-2962333号明細書には、2-アルコキシ-4-アルキルケトンフェノール及び精油を含む、脂性肌の処置のための化粧用組成物が記載されている。この組成物は、抗菌剤などの、脂性肌ケアのためのさらなる活性薬剤を含み得、その中でも特に、カプリリルグリコールが言及されている。この文献は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと1,2-オクタンジオールとの組合せから構成される抗菌性混合物を具体的に記載しておらず、このような混合物が、酵母、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する相乗的抗菌活性を有することも示唆していない。
【0011】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンと、1,2-デカンジオールとの組合せが、特にかび、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、及び酵母、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する相乗的抗菌活性を有する抗菌性混合物を得ることを可能にする。
【0012】
より詳細には、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、並びに1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール及び1,2-デカンジオールから選択されるジオール化合物を含むか、又はそれらから構成される抗菌性混合物であり、ジオールが1,3-プロパンジオールである場合、これは、0.02~0.15の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,3-プロパンジオール質量比で存在する。
【0013】
本発明の主題はまた、生理学的に許容可能な媒体中の、上述される前記混合物を含む組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物である。
【0014】
本発明のさらなる主題は、上述される組成物のケラチン物質への適用を含む、ケラチン物質の非治療的美容的処置のための方法である。この方法は、ケラチン物質をケア又はメイクアップ又はクレンジングするための美容的方法であり得る。
【0015】
本発明の主題はまた、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物を保存するための方法であって、上述される抗菌性混合物を前記組成物中に組み込むことを含むことを特徴とする方法である。
【0016】
本発明の主題はまた、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物を保存するための、上述される抗菌性混合物の使用である。
【0017】
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、式
【化1】
の化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,3-プロパンジオール質量比が、0.02~0.15の範囲であるような量で存在する4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,3-プロパンジオールを含むか、又はそれらから構成される抗菌性混合物である。
【0019】
有利には、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,3-プロパンジオールは、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,3-プロパンジオール質量比が、0.02~0.07の範囲であるような含量で前記混合物中に存在する。
【0020】
第2の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,2-オクタンジオールを含むか、又はそれらから構成される抗菌性混合物である。
【0021】
1,2-オクタンジオールは、化合物カプリリルグリコール(CAS番号1117-86-8)に相当する。
【0022】
有利には、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,2-オクタンジオールは、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-オクタンジオール質量比が、0.1~1.5の範囲である、好ましくは、0.2~1.1の範囲であるような含量で前記混合物中に存在する。
【0023】
第3の実施形態によれば、本発明の主題は、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,2-デカンジオールを含むか、又はそれらから構成される抗菌性混合物である。
【0024】
有利には、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び1,2-デカンジオールは、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-デカンジオール質量比が、1.6~12の範囲であり、好ましくは、1.6~10の範囲であり、優先的に、2.8~9の範囲であるような含量で前記混合物中に存在する。
【0025】
抗菌性混合物は、1.6~6.4の範囲、好ましくは、1.6~4.8の範囲、優先的に、2.8~6.4の範囲、より優先的に、2.8~4.8の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-デカンジオール質量比を有し得る。このような混合物は、かび、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対する良好な抗菌活性を有する。
【0026】
抗菌性混合物は、2.8~12の範囲、好ましくは、3.2~10の範囲、特に3.5~9の範囲、優先的に、6~12の範囲、より優先的に、6~10の範囲、特に6~9の範囲の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン/1,2-デカンジオール質量比を有し得る。このような混合物は、酵母、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する良好な抗菌活性を有する。
【0027】
化合物4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンは、組成物の総質量に対して0.01質量%~5質量%の範囲、好ましくは、0.01質量%~3質量%の範囲、優先的に、0.01質量%~2.5質量%の範囲、より優先的に、0.01質量%~2質量%の範囲の量で、本発明に係る組成物中に存在し得る。
【0028】
本発明の主題はまた、生理学的に許容可能な媒体中に、上述される抗菌性混合物を含む組成物である。
【0029】
「生理学的に許容可能な媒体」という用語は、皮膚、頭皮、毛髪及び爪などのヒトケラチン物質と適合する媒体を意味することが意図される。前記媒体は、ケトン化合物及び上述されるジオール以外の1つ以上のさらなる成分を含み得る。
【0030】
本組成物は、水、油、2~10個の炭素原子を含有するポリオール、ゲル化剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、着色剤、香料、充填剤、紫外線遮断剤、植物抽出物、化粧用及び皮膚用活性薬剤、及び塩から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含み得る。
【0031】
本発明に係る組成物は、水性相を含み得る。
【0032】
本組成物は、組成物の総質量に対して5質量%~90質量%の範囲、好ましくは、35質量%~75質量%の範囲の含量で存在し得る水を含み得る。
【0033】
本組成物は、特に、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール又はジグリセロールなどの、特に2~10個の炭素原子を含有する、好ましくは、2~6個の炭素原子を含有するポリオールから選択される、周囲温度(25℃)で水混和性のポリオールも含み得る。
【0034】
本発明に係る組成物は、水中油型(O/W)エマルション、油中水型(W/O)エマルション又は多重エマルション(トリプル:W/O/W又はO/W/O)、油性溶液、油性ゲル、水溶液、水性ゲル、固体組成物の形態であり得る。これらの組成物は、通常の方法にしたがって調製される。
【0035】
本発明に係る組成物は、程度の差はあるが流体であり得、白色若しくは有色のクリーム、軟膏、乳液、ローション、セラム、ペースト又はフォームの外観を有し得る。それらは、任意選択的に、エアロゾル形態で皮膚に適用され得る。それらはまた、固体形態、例えば、スティック又はコンパクトパウダーの形態であり得る。
【0036】
本発明に係る組成物は、特に以下の形態であり得る:
-特に、顔、身体の皮膚、又は唇若しくはまつげをメイクアップするためのメイクアップ製品;
-アフターシェーブジェル又はローション;シェービング製品;
-デオドラント(スティック、ロールオン又はエアロゾル);
-脱毛クリーム;
-シャワージェル又はシャンプーなどの身体衛生組成物;
-医薬組成物;
-石鹸又はクレンジングバーなどの固体組成物;
-加圧噴射剤も含むエアロゾル組成物;
-ヘアセット用ローション、ヘアスタイリング用クリーム若しくはジェル、染料組成物、パーマネントウェーブ用組成物、抜け毛を防ぐためのローション若しくはジェル、又はヘアコンディショナー;
-皮膚をケア又はクレンジングするための組成物。
【0037】
本発明の主題はまた、組成物、特に、化粧用又は皮膚用組成物を調製するための方法であって、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン、上述されるジオール、及び1つ以上のさらなる成分、特に、上述されるものなどの化粧用又は皮膚用成分を混合する工程を含む方法である。
【0038】
本発明は、以下に続く実施例においてより詳細に例示される。成分の量は、質量パーセンテージとして表される。
【実施例0039】
実施例1:MICとしての相乗的抗菌活性の決定
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)とジオール(物質Bと呼ばれる)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証が、下式にしたがって相乗効果指数(又はFIC指数)を計算することによって行われる:
FIC指数=(Bと合わせたMICa/MICa)+(Aと合わせたMICb/MICb)
ここで:
-Bと合わせたMICa:阻害効果を得ることを可能にする組合せA+Bにおける生成物Aの最小濃度
-Aと合わせたMICb:阻害効果を得ることを可能にする組合せA+Bにおける生成物Bの最小濃度。
-MICa:生成物A単独の最小発育阻止濃度。
-MICb:生成物B単独の最小発育阻止濃度。
【0040】
この式は、F.C.Kull、P.C.Eisman、H.D.Sylwestrowka、及びR.L.Mayerによる論文、Applied Microbiology 9:538-541,1961において初めて記載された。
【0041】
試験される各化合物単独では、MICは、20%以下の微生物増殖パーセンテージを得ることを可能にする最初の濃度と見なされる。
【0042】
試験される組合せに関しては、bと合わせたMICa及びaと合わせたMICbは、20%以下の微生物増殖パーセンテージを得ることを可能にする組合せにおけるA及びBのそれぞれの濃度である。
【0043】
FIC指数の解釈:
FIC指数値が、1以下である場合、試験化合物の組合せが相乗効果を有するものと見なされる。
【0044】
得られた結果が、以下の表にまとめられている。
【0045】
化合物A及びBの組合せを、以下の菌株:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)及び/又はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)について試験した。
【0046】
微生物菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275、並びにポリオキシエチレン化(20 OE)ソルビタンモノパルミテート(Croda製のTween 40)及びPhytagel(著作権)BioReagentを補充した2倍濃度サブローブロス液体培養培地を使用した(すなわち、5gのPhytagel+0.6gのTween 40+60gのサブローブロスの混合物)。
【0047】
微生物菌株カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231及び2倍濃度サブローブロス液体培養培地を使用した。
【0048】
96ウェルマイクロプレート及び32.5℃のインキュベーション時間を使用する。
【0049】
マイクロプレートのインキュベーション時間は、以下のとおりである:
-カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231については好気条件下で18~24時間;
-アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATCC 6275については好気条件下で24~30時間。
【0050】
試験
各化合物について:
A=4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン化合物
B=ジオール化合物
10%(質量/体積)のストック溶液を、1gの化合物を9mlの水性1%o寒天溶液中で混合することによって調製した。連続希釈を、1%o寒天溶液を用いて行った。
【0051】
・化合物A及びB単独の試験
化合物A又はBを含有する得られた娘溶液のそれぞれ50μlを、マイクロプレートウェルに加える。菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を接種した100μlのサブロー液体栄養ブロス及び50μlの水性1%o寒天溶液もそれに加える。
【0052】
・混合物としての化合物A及びBの試験
化合物Aを含有する得られた娘溶液のそれぞれ50μl及び化合物Bを含有する得られた娘溶液のそれぞれ50μlを、マイクロプレートウェルに加える。菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を2倍濃度で接種した100μlのサブロー液体栄養ブロスもそれに加える。
【0053】
微生物増殖対照
陽性微生物増殖対照も調製した。陽性微生物増殖対照は、化合物A及びBの非存在下での、100μlの水性1%o寒天溶液と、菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を2倍濃度で播種した100μlのサブロー液体栄養ブロスとの混合物に相当する。
【0054】
化合物A及びB単独の吸光度対照
並行して、吸光度対照を、化合物A及びB単独について行った。この対照は、100μlの2倍濃度滅菌サブロー液体栄養ブロス+100μlの2倍濃度化合物A又はBに相当する。
【0055】
3つの場合(吸光度対照、増殖対照及び試験)において、マイクロプレートウェルのそれぞれに存在する最終体積は、200μlである。
【0056】
2つの場合(試験及び対照)において、接種材料は、ウェルの最終体積(200μl)で存在する菌株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の濃度を示し、2~6×105cfu/mlのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。
【0057】
各化合物A及びB単独並びに組合せの最小発育阻止濃度(MIC)を、620nmの波長での光学密度測定によって決定した。
【0058】
上述される試験(試験、吸光度対照及び増殖対照)を、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)菌株について組合せA及びBを試験するために再度行った。
【0059】
化合物B1=1,3-プロパンジオールについて以下の結果が得られた:
【0060】
【0061】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.025%のA及び1%のB1、すなわち、比率A/B1=0.025
ii)0.05%のA及び1%のB1、すなわち、比率A/B1=0.05
iii)0.05%のA及び0.5%のB1、すなわち、比率A/B1=0.1
iv)0.05%のA及び0.25%のB1、すなわち、比率A/B1=0.2
【0062】
実施例2:微生物菌株カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対するMICにおける相乗的抗菌活性の決定
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)菌株に対する、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)と1,2-オクタンジオール(物質B2と呼ばれる)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証が、実施例1中のプロトコルにしたがって行われる。
【0063】
以下の結果が得られた:
【0064】
【0065】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.025%のA及び0.1%のB2、すなわち、比率A/B2=0.25
ii)0.05%のA及び0.1%のB2、すなわち、比率A/B2=0.5
iii)0.1%のA及び0.1%のB2、すなわち、比率A/B2=1
iv)0.05%のA及び0.05%のB2、すなわち、比率A/B2=1
v)0.1%のA及び0.05%のB2、すなわち、比率A/B2=2
vi)0.1%のA及び0.025%のB2、すなわち、比率A/B2=4
【0066】
実施例3:抗菌性混合物の抗菌活性の決定
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン+1,2-オクタンジオール抗菌性混合物の抗菌効果を、チャレンジ試験方法(Challenge Test method)によって評価した。
【0067】
プロトコル
チャレンジ試験の方法は、コレクションからの微生物菌株(細菌、酵母及びかび)による試料の人工的汚染、及び接種の数日後の復活可能な微生物の数の評価から構成される。
【0068】
抗菌性混合物の効果を実証するために、0.05%の4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン及び0.2%の1,2-オクタンジオールを含有する化粧用配合物の抗菌活性を、約106cfu(コロニー形成単位)/化粧用配合物のグラムの接種後に、同じ配合物単独(対照)と比較した。
【0069】
化粧用配合物
以下の組成を有するフェイシャルケア用水中油型エマルションを調製した(質量パーセンテージでの含量):
ソルビタントリステアレート(Croda製のSpan 65 V):0.9%
グリセリルモノ/ジステアレート(36/64)/ステアリン酸カリウム混合物
(Goldschmidt製のTegin Pellets):3%
ステアリン酸ポリエチレングリコール(40エチレンオキシド単位):2%
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン:0.05%
1,2-オクタンジオール:0.2%
1,3-プロパンジオール:2%
鉱油、マイクロクリスタリンワックス及びパラフィン
(Aiglon製のVaseline Blanche Codex 236):4%
シアバターの液体画分(Olvea製のShea Olein):1%
シクロペンタジメチルシロキサン:5%
セチルアルコール:4%
杏仁油:0.3%
水添ポリイソブテン(NOF Corporation製のParleam):7.2%
ミリスチン酸ミリスチル:2%
ステアリン酸:1.2%
カフェイン:0.1%
クエン酸:0.2%
グリセロール:3%
水酸化ナトリウム:0.05%
水:100%までの適量
【0070】
微生物培養物
微生物の5つの純粋培養物を使用した。
【0071】
【0072】
グラム陰性菌(大腸菌(Escherichia coli)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、グラム陽性菌(エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis))、酵母(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、並びにかび(アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger))の菌株を、細菌及び酵母については接種の前日、及びかびについては接種の5日前に、それぞれ継代培養培地中に接種する。
【0073】
接種の当日:
-分光光度計によって、544nmで35%~45%の透過光の光学密度を有する懸濁液を得るように、細菌及び酵母についてそれぞれ、トリプトン塩希釈剤中の懸濁液を調製し;
-かびについては、6~7mlの回収用溶液で寒天を洗浄することによって、胞子を収集し、懸濁液を、滅菌管又はフラスコ中に回収する。
【0074】
微生物懸濁液を均質化した後、0.2mlの接種材料を、各薬瓶に導入し(懸濁液を純粋なまま使用する:ml当たり1×108~3×108cfu)、20gの生成物(=化粧用配合物)中の微生物懸濁液を、スパチュラを用いて十分に均質化する。
【0075】
生成物中に存在する微生物の含量は、生成物のグラム当たり106個の微生物の濃度への均質化の後、すなわち、ml当たり108個の微生物を含有する1%の接種材料の接種の後に相当する。
【0076】
22℃±2℃及び暗所での微生物及び生成物の間の7日間の接触時間の後、10倍の希釈を行い、生成物中に残っている復活可能な微生物の数を計数する。
【0077】
【0078】
実施例4:MICとしての相乗的抗菌活性の決定
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(物質Aと呼ばれる)と1,2-デカンジオール(物質B3と呼ばれる)との混合物による相乗的抗菌活性効果の実証が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)菌株を用いて、実施例1に記載されるプロトコルにしたがって行われる。
【0079】
以下の結果が得られた:
【0080】
【0081】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.025%のA及び0.0125%のB3、すなわち、比率A/B3=2
ii)0.05%のA及び0.0125%のB3、すなわち、比率A/B3=4
【0082】
【0083】
得られた結果は、混合物について相乗的阻害活性を示す:
i)0.05%のA及び0.0125%のB3、すなわち、比率A/B3=4
ii)0.1%のA及び0.0125%のB3、すなわち、比率A/B3=8
【0084】
実施例5:抗菌性混合物の抗菌活性の決定
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン+1,3-プロパンジオール(化合物B1)抗菌性混合物(0.16のそれぞれの質量比)の抗菌効果を、実施例3に記載される、チャレンジ試験方法(Challenge Test method)によって評価した。
【0085】
化粧用配合物
以下の組成を有するフェイシャルケア用水中油型エマルションを調製した(質量パーセンテージでの含量):
ソルビタントリステアレート(Croda製のSpan 65 V):0.9%
グリセリルモノ/ジステアレート(36/64)/ステアリン酸カリウム混合物
(Goldschmidt製のTegin Pellets):3%
ステアリン酸ポリエチレングリコール(40エチレンオキシド単位):2%
4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン:0.5%
1,3-プロパンジオール:5%
プロパン-1,3-ジオール:2%
鉱油、マイクロクリスタリンワックス及びパラフィン
(Aiglon製のVaseline Blanche Codex 236):4%
シアバターの液体画分(Olvea製のShea Olein):1%
シクロペンタジメチルシロキサン:5%
セチルアルコール:4%
杏仁油:0.3%
水添ポリイソブテン(NOF Corporation製のParleam):7.2%
ミリスチン酸ミリスチル:2%
ステアリン酸:1.2%
カフェイン:0.1%
グリセロール:3%
水酸化ナトリウム:0.05%
水:100%までの適量
【0086】