IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両制御装置 図1
  • 特開-車両制御装置 図2
  • 特開-車両制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141708
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B60T7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048167
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶田 和希
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA13
3D246BA03
3D246DA01
3D246DA03
3D246EA03
3D246EA04
3D246GB33
3D246JA02
3D246JA03
3D246JB02
3D246JB06
3D246JB41
(57)【要約】
【課題】目標減速度と実際の減速度との差異を小さくする。
【解決手段】
一態様の車両制御装置は、車速取得部と、目標減速度取得部と、予測減速度算出部と、制御部とを備える。予測減速度算出部は、第1補助ブレーキ操作及び第2補助ブレーキ操作が行われなかったときの車両の減速度の予測値である第1予測減速度と、第1補助ブレーキ操作が行われ、第2補助ブレーキ操作が行われなかったときの車両の減速度の予測値である第2予測減速度とを算出し、制御部は、車両の速度が第1閾値以上であり、且つ、目標減速度が第1予測減速度よりも大きいときに第1補助ブレーキ操作が実行され、車両の速度が第1閾値よりも大きな第2閾値以上であり、且つ、目標減速度が第2予測減速度よりも大きいときに第2補助ブレーキ操作が実行されるように複数の補助ブレーキ装置を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に制動力を付与する主ブレーキ及び複数の補助ブレーキ装置の作動を制御する車両制御装置であって、
前記車両の速度を取得する車速取得部と、
前記車両の目標減速度を取得する目標減速度取得部と、
前記車両の減速度の予測値を算出する予測減速度算出部と、
前記車両の減速度の予測値に基づいて、前記主ブレーキ及び前記複数の補助ブレーキの作動を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の補助ブレーキ装置は、第1補助ブレーキ操作、及び、前記車両に前記第1補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を付与する第2補助ブレーキ操作を実行可能であり、
前記予測減速度算出部は、前記第1補助ブレーキ操作及び前記第2補助ブレーキ操作が行われないときの前記車両の減速度の予測値である第1予測減速度と、前記第1補助ブレーキ操作が行われ、前記第2補助ブレーキ操作が行われないときの前記車両の減速度の予測値である第2予測減速度とを算出し、
前記制御部は、前記車両の速度が第1閾値以上であり、且つ、前記目標減速度が前記第1予測減速度よりも大きいときに前記第1補助ブレーキ操作が実行され、前記車両の速度が前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上であり、且つ、前記目標減速度が前記第2予測減速度よりも大きいときに前記第2補助ブレーキ操作が実行されるように前記複数の補助ブレーキ装置を制御する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記車両の重量を取得する車重取得部を更に備え、
前記複数の補助ブレーキ装置は、前記車両に前記第2補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を付与する第3補助ブレーキ操作、及び、前記車両に前記第3補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を付与する第4補助ブレーキ操作を更に実行可能であり、
前記予測減速度算出部は、前記第1補助ブレーキ操作及び前記第2補助ブレーキ操作が行われ、前記第3補助ブレーキ操作及び前記第4補助ブレーキ操作が行われないときの前記車両の減速度の予測値である第3予測減速度と、前記第1補助ブレーキ操作、前記第2補助ブレーキ操作及び前記第3補助ブレーキ操作が行われ、前記第4補助ブレーキ操作が行われないときの前記車両の減速度の予測値である第4予測減速度とを更に算出し、
前記制御部は、前記車両の速度が前記第2閾値よりも大きな第3閾値以上であり、且つ、前記目標減速度が前記第3予測減速度よりも大きいときに前記第3補助ブレーキ操作が実行され、前記車両の速度が前記第2閾値よりも大きな第4閾値以上であり、前記車両の重量が第5閾値よりも大きく、且つ、前記目標減速度が前記第4予測減速度よりも大きいときに前記第4補助ブレーキ操作が実行されるように前記複数の補助ブレーキ装置を制御する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記予測減速度算出部は、前記第1補助ブレーキ操作、前記第2補助ブレーキ操作、前記第3補助ブレーキ操作及び前記第4補助ブレーキ操作が行われたときの前記車両の減速度の予測値である第5予測減速度を更に算出し、
前記制御部は、前記目標減速度が前記第5予測減速度よりも大きいときに前記主ブレーキを作動させる、請求項2に記載の車両制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主ブレーキ装置及び補助ブレーキ装置を制御して、車両を減速させる制動支援制御を行う装置が知られている。例えば、特許文献1には、主ブレーキおよび複数種の補助ブレーキを備えた車両に搭載され、先行車との車間距離及び該先行車との相対速度から自車に対する目標減速度を演算し、目標減速度と複数種の補助ブレーキに対応する複数の閾値とを比較して、目標減速度に応じて減速度の小さい補助ブレーキから順に作動させるオートクルーズ制御装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-263098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助ブレーキの作動によって車両に生じる減速度は、車両の速度や重量等の走行状態に依存する。したがって、特許文献1に記載の装置のように、車両の走行状態を考慮せずに目標減速度と複数の閾値とを比較することで作動させる補助ブレーキを決定した場合には、目標減速度と実際の減速度との間に差異が生じる場合がある。例えば、車両が低速で走行している場合には、補助ブレーキ装置を作動させても車両が高速で走行しているときと同じ減速度を得ることはできないし、貨物を搭載して車重が増加している場合には、補助ブレーキ装置を作動させても貨物を搭載していないときと同じ減速度を得ることはできない。
【0005】
そこで、本開示は、目標減速度と実際の減速度との差異を小さくすることができる車両制御装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、車両に制動力を付与する主ブレーキ及び複数の補助ブレーキ装置の作動を制御する車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、車両の速度を取得する車速取得部と、車両の目標減速度を取得する目標減速度取得部と、車両の減速度の予測値を算出する予測減速度算出部と、車両の減速度の予測値に基づいて、主ブレーキ及び複数の補助ブレーキの作動を制御する制御部と、を備える。複数の補助ブレーキ装置は、第1補助ブレーキ操作、及び、車両に第1補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を付与する第2補助ブレーキ操作を実行可能であり、予測減速度算出部は、第1補助ブレーキ操作及び第2補助ブレーキ操作が行われないときの車両の減速度の予測値である第1予測減速度と、第1補助ブレーキ操作が行われ、第2補助ブレーキ操作が行われないときの車両の減速度の予測値である第2予測減速度とを算出し、制御部は、車両の速度が第1閾値以上であり、且つ、目標減速度が第1予測減速度よりも大きいときに第1補助ブレーキ操作が実行され、車両の速度が第1閾値よりも大きな第2閾値以上であり、且つ、目標減速度が第2予測減速度よりも大きいときに第2補助ブレーキ操作が実行されるように複数の補助ブレーキ装置を制御する。
【0007】
本態様の車両制御装置では、減速度の予測値を算出し、当該減速度の予測値と目標減速度とを比較して複数の補助ブレーキ装置の作動を制御しているので、目標減速度と実際の減速度との差異を小さくすることができる。また、一般的に、補助ブレーキ装置は、主ブレーキのような精密な制動制御が難しいので、低速で走行しているときに補助ブレーキを作動させると減速度が急激に増加し、乗り心地が悪化する恐れがある。この車両制御装置では、車両の速度が一定値以上であるときに、補助ブレーキ装置を作動させるので、乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0008】
一実施形態の車両制御装置は、車両の重量を取得する車重取得部を更に備え、複数の補助ブレーキ装置は、車両に第2補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を付与する第3補助ブレーキ操作、及び、車両に第3補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を付与する第4補助ブレーキ操作を更に実行可能であり、予測減速度算出部は、第1補助ブレーキ操作及び第2補助ブレーキ操作が行われ、第3補助ブレーキ操作及び第4補助ブレーキ操作が行われないときの車両の減速度の予測値である第3予測減速度と、第1補助ブレーキ操作、第2補助ブレーキ操作及び第3補助ブレーキ操作が行われ、第4補助ブレーキ操作が行われないときの車両の減速度の予測値である第4予測減速度とを更に算出し、制御部は、車両の速度が第2閾値よりも大きな第3閾値以上であり、且つ、目標減速度が第3予測減速度よりも大きいときに第3補助ブレーキ操作が実行され、車両の速度が第2閾値よりも大きな第4閾値以上であり、車両の重量が第5閾値よりも大きく、且つ、目標減速度が第4予測減速度よりも大きいときに第4補助ブレーキ操作が実行されるように複数の補助ブレーキ装置を制御する。この車両制御装置では、車両の重量が一定値以上であるときに第4ブレーキ操作を実行するので乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0009】
一実施形態では、予測減速度算出部は、第1補助ブレーキ操作、第2補助ブレーキ操作、第3補助ブレーキ操作及び第4補助ブレーキ操作が行われたときの車両の減速度の予測値である第5予測減速度を更に算出し、制御部は、目標減速度が第5予測減速度よりも大きいときに主ブレーキを作動させてもよい。この実施形態では、主ブレーキの使用を抑制しつつ、目標減速度と車両の減速度との差異を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、目標減速度と実際の減速度との差異を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る車両制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】車両制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図3図2の続きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して種々の実施形態に係る車両制御装置について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととし、同一又は相当の部分に対する重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る車両制御装置の機能的構成を示すブロック図である。車両制御装置10は車両1に搭載され、車両を減速させる制動支援制御を実行する。車両制御装置10が搭載される車両1は、例えばトラック又はトラクタ等の貨物を搭載する貨物車である。なお、車両1は、バス等の大型乗用車であってもよいし、普通乗用車、小型車両又は軽車両であってもよい。
【0014】
図1に示すように、車両1は、外部センサ2、内部センサ3、主ブレーキ装置5、複数の補助ブレーキ装置6、及び、車両制御装置10を備えている。
【0015】
外部センサ2は、車両1の外部環境の情報を検出する。外部センサ2としては、例えばカメラが用いられる。カメラは、車両1の前方の画像を撮像する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有する。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれる。外部センサ2は、車両1の周囲に電磁波を送信し、周囲の物体から反射波を受信して物体を検出するレーダセンサを含んでもよい。
【0016】
内部センサ3は、車両1の各種情報を収集する。内部センサ3は、車速センサ及び重量センサを含む。車速センサは、車両1の速度(以下、「車両速度」という。)を検出する。車速センサとしては、例えば、車両の車輪又はドライブシャフト等に取り付けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。重量センサは、車両1の重量(以下、「車両重量」という。)を計測する。車速センサ及び重量センサは、計測された車両速度及び車両重量を示す情報を車両制御装置10に出力する。
【0017】
主ブレーキ装置5は、車両1の主要な制動を担う制動装置であり、例えばサービスブレーキである。主ブレーキ装置5は、車両1の各車輪に設けられており、ブレーキペダルの操作量に応じた摩擦力を車輪に加えることで車両1に制動力を付与する。
【0018】
複数の補助ブレーキ装置6は、車両1の補助的な制動を担う制動装置である。一実施形態では、複数の補助ブレーキ装置6は、排気ブレーキ、ブレーキ加圧装置、エンジンリターダ及びトランスミッションリターダといった各種補助ブレーキ装置のうち、2種以上の補助ブレーキ装置を含む。図1に示す実施形態では、複数の補助ブレーキ装置6は、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8を含んでいる。
【0019】
エンジンリターダ7は、エンジンの圧縮行程で排気弁を強制的に開放して、エンジンの圧縮圧力を開放することで車両1に制動力を付与する補助ブレーキ装置である。エンジンリターダ7から車両1に付与される制動力は、複数段階に切り替え可能である。例えば、エンジンリターダ7の作動モードは、弱モード及び強モードの二段階に切り替え可能である。エンジンリターダ7が弱モードで作動した場合には相対的に小さな制動力が車両1に付与され、エンジンリターダ7が強モードで作動した場合には相対的に大きな制動力が車両1に付与される。すなわち、エンジンリターダ7は、第1補助ブレーキ操作と、当該第1補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を車両1に付与する第2補助ブレーキ操作を実行可能である。
【0020】
トランスミッションリターダ8は、車両1のトランスミッションの出力軸に摩擦力を付与して車両1に制動力を付与する装置である。トランスミッションリターダ8から車両1に付与される制動力は、複数段階に切り替え可能である。例えば、トランスミッションリターダ8の作動モードは、弱モード及び強モードの二段階に切り替え可能である。トランスミッションリターダ8が弱モードで作動した場合には相対的に小さな制動力が車両1に付与され、トランスミッションリターダ8が強モードで作動した場合には相対的に大きな制動力が車両1に付与される。
【0021】
トランスミッションリターダ8は、エンジンリターダ7よりも大きな制動力を車両1に付与する。例えば、弱モードで作動するトランスミッションリターダ8の制動力は、強モードで作動するエンジンリターダ7の制動力よりも大きい。すなわち、トランスミッションリターダ8は、第2補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を車両1に付与する第3補助ブレーキ操作と、当該第3補助ブレーキ操作よりも大きな制動力を車両1に付与する第4補助ブレーキ操作を実行可能である。
【0022】
エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8の動作は、車両制御装置10によって制御される。例えば、車両制御装置10からエンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8に制御信号が送出されることにより、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8の作動、作動停止、及び、作動モードが切り替えられる。
【0023】
車両制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニットである。車両制御装置10は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、車両1の各構成要素と通信可能に接続される。車両制御装置10は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで、後述する各種機能を実現する。車両制御装置10は、複数の電子制御ユニットから構成されてもよい。車両制御装置10
【0024】
図1に示すように、車両制御装置10は、機能的構成として、車両情報取得部11、減速対象検出部12、目標減速度取得部13、予測減速度算出部14及び制御部15を備えている。
【0025】
車両情報取得部11は、車両1に関する情報(以下、「車両情報」という。)を取得する。例えば、車両情報取得部11は、内部センサ3によって計測された車両速度、及び、車両重量を取得する。すなわち、車両情報取得部11は、車両速度を取得する車速取得部、及び、車両重量を取得する車重取得部として機能する。さらに、車両情報取得部11は、エンジンの回転数、トランスミッションのギア段(以下「ギア比」という。)、デファレンシャルギアのギア比(以下「デフ比」という。)、総ギア比(トランスミッションのギア比とデファレンシャルギアのギア比の積)、車両1の前面投影面積、道路勾配等を車両情報として取得する。
【0026】
減速対象検出部12は、外部センサ2の検出結果に基づいて、自車両の前方の減速対象を検出する。減速対象とは、減速支援制御の対象である。減速対象には、カーブ、信号機、一時停止線及び先行車等が含まれる。減速支援制御とは、車両1を目標車速まで減速させる制御である。目標車速は、原則対象の種別に応じて設定される。
【0027】
減速対象検出部12は、例えばカメラにより撮像された自車両の前方の撮像画像に基づいて、予め記憶された減速対象の種別ごとの画像パターンを用いたパターンマッチングを行うことにより、減速対象を検出する。例えば、減速対象が一時停止線である場合には、減速対象検出部12は、周知の画像認識技術を用いて道路の幅方向に延びる白線を抽出することで、一時停止線の位置を認識する。なお、減速対象検出部12は、レーダセンサによって検出された物体の位置に基づいて、減速対象を検出してもよい。
【0028】
目標減速度取得部13は、車両1の目標減速度を取得する。例えば目標減速度取得部13は、車両1の速度と、車両1から減速対象までの距離と、目標速度とに基づいて目標減速度を設定する。例えば、減速対象が一時停止線である場合には、一時停止線の手前での目標速度は、0km/hである。そこで、目標減速度取得部13は、一時停止線の手前で車両1が停車できるように目標減速度を設定する。なお、減速度とは負の加速度を示している。したがって、減速度が大きいとは加速度が小さいことを意味する。
【0029】
予測減速度算出部14は、車両1の減速度の予測値(以下、「予測減速度」という。)を算出する。例えば、予測減速度算出部14は、車両1の走行抵抗によって生じる減速度と、複数の補助ブレーキ装置6の制動力によって生じる減速度とに基づいて予測減速度を算出する。車両1の走行抵抗には、車両1の空気抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗、トランスミッション慣性モーメント等が含まれる。
【0030】
空気抵抗によって生じる減速度は、例えば車両1の全面投影面積、車両速度及び車両重量に基づいて算出される。転がり抵抗によって生じる減速度は、例えば転がり抵抗係数及び道路勾配に基づいて算出される。勾配抵抗によって生じる減速度は、例えば道路勾配に基づいて算出される。トランスミッション慣性モーメントは、例えばトランスミッションのギア段、総ギア比、タイヤ半径及び車両重量に基づいて算出される。
【0031】
また、予測減速度算出部14は、複数の補助ブレーキ装置6の制動力によって生じる減速度を予測する。例えば車両制御装置10の記憶部には、車両速度と、車両重量と、エンジンリターダ7の作動モード毎の減速度との関係を示す第1減速度データが記憶されている。予測減速度算出部14は、第1減速度データから車両情報取得部11によって取得された車両速度及び車両重量に対応する制動力を抽出することにより、エンジンリターダ7の作動によって発生する制動力を取得する。なお、予測減速度算出部14は、第1減速度データを用いずに、エンジンスピードと、デフ比と、ギア比と、車両1のタイヤ半径と、車両重量とに基づいて、エンジンリターダ7の制動力によって生じる減速度を計算して取得してもよい。
【0032】
また、車両制御装置10の記憶部には、車両速度と、車両重量と、トランスミッションリターダ8の作動モード毎の減速度との関係を示す第2減速度データが記憶されている。予測減速度算出部14は、第2減速度データから車両情報取得部11によって取得された車両速度及び車両重量に対応する制動力を抽出することにより、トランスミッションリターダ8の作動によって発生する制動力を取得する。予測減速度算出部14は、上記のように求められた車両1の走行抵抗によって生じる減速度と、複数の補助ブレーキ装置6の制動力によって生じる減速度との和を予測減速度として出力する。
【0033】
制御部15は、目標減速度と予測減速度とに基づいて、主ブレーキ装置5及び複数の補助ブレーキ装置6の作動を制御する。例えば、制御部15は、主ブレーキ装置5、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8に制御信号を送出して、主ブレーキ装置5の作動又は作動停止、エンジンリターダ7の作動又は作動停止、及び、トランスミッションリターダ8の作動又は作動停止を制御する。また、制御部15は、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8の作動モード(弱モード又は強モード)を切り替える。
【0034】
図2及び図3を参照して、車両制御装置10の機能についてより詳細に説明する。図2及び図3は、車両制御装置10によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0035】
図2に示すように、まず車両制御装置10の車両情報取得部11は、車両1の車両情報を取得する(ステップST1)。具体的に、車両情報取得部11は、車両速度、車両重量、道路勾配、総ギア比、タイヤ半径、エンジンの回転数、及び、トランスミッションのギア段に関する情報を車両情報として取得する。
【0036】
次に、目標減速度取得部13が目標減速度を取得する。例えば、車両1の前方に一時停止線が存在する場合には、目標減速度取得部13は、一時停止線の手前で車両1が停車できるような目標減速度を設定する。
【0037】
次に、予測減速度算出部14が、主ブレーキ装置5及び複数の補助ブレーキ装置6の作動が停止されたときの減速度の予測値である第1予測減速度を算出する(ステップST3)。すなわち、第1予測減速度は、第1補助ブレーキ操作及び第2補助ブレーキ操作が行われなかったときの車両1の減速度の予測値である。例えば、予測減速度算出部14は、車両1の走行抵抗(空気抵抗、転がり抵抗及び勾配抵抗)によって生じる減速度と、車両1のエンジンブレーキによって生じる減速度との和を第1予測減速度として算出する。
【0038】
次に、制御部15が、エンジンリターダ7を弱モードで作動させるための条件である第1作動条件を満たすか否かを判定する(ステップST4)。例えば、制御部15は、車両速度が第1速度(第1閾値)以上であり、且つ、目標減速度が第1予測減速度よりも大きいときに第1作動条件が成立したと判定する。第1速度は、予め設定された速度であり、例えば8km/hである。
【0039】
第1作動条件が成立した場合には、制御部15は、エンジンリターダ7を制御してエンジンリターダ7を弱モードで作動させる(ステップST5)。上記のように、車両速度が第1速度以上であり、且つ、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8の作動が停止されたときの減速度が目標減速度に達しないと予測されたときにエンジンリターダ7が弱モードで作動される。
【0040】
次に、予測減速度算出部14が、エンジンリターダ7が弱モードで作動され、主ブレーキ装置5及びトランスミッションリターダ8の作動が停止されたときの減速度の予測値である第2予測減速度を算出する(ステップST6)。例えば、予測減速度算出部14は、車両1の走行抵抗によって生じる減速度と、車両1のエンジンブレーキによって発生する減速度と、弱モードで作動するエンジンリターダ7によって生じる減速度との和を第2予測減速度として算出する。このとき、予測減速度算出部14は、例えば車両情報取得部11によって取得された車両速度及び車両重量に対応する減速度を第1減速度データから抽出することで、弱モードで作動するエンジンリターダ7によって生じる減速度を取得する。
【0041】
次に、制御部15が、エンジンリターダ7を強モードで作動させるための条件である第2作動条件を満たすか否かを判定する(ステップST7)。例えば、制御部15は、車両速度が第2速度(第2閾値)であり、且つ、目標減速度が第2予測減速度よりも大きいときに第2作動条件が成立したと判定する。第2速度は、第1速度よりも高い速度であり、例えば10km/hである。
【0042】
第2作動条件が成立した場合には、制御部15は、エンジンリターダ7を制御して、エンジンリターダ7を強モードで作動させる(ステップST8)。上記のように、車両速度が第1速度以上であり、且つ、エンジンリターダ7が弱モードで作動されたときの減速度が目標減速度に達しないと予測されたときにエンジンリターダ7が強モードで作動される。
【0043】
次に、予測減速度算出部14が、エンジンリターダ7が強モードで作動され、主ブレーキ装置5及びトランスミッションリターダ8の作動が停止されたときの減速度の予測値である第3予測減速度を算出する(ステップST9)。例えば、予測減速度算出部14は、車両1の走行抵抗によって生じる減速度と、エンジンブレーキによって生じる減速度と、強モードで作動するエンジンリターダ7によって生じる減速度の和を第3予測減速度として算出する。
【0044】
次に、図3に示すように、制御部15が、トランスミッションリターダ8を弱モードで作動させるための条件である第3作動条件を満たすか否かを判定する(ステップST10)。例えば、制御部15は、車両速度が第3速度(第3閾値)以上であり、且つ、目標減速度が第3予測減速度よりも大きいときに第3作動条件が成立したと判定する。第3速度は、第2速度よりも高い速度であり、例えば20km/hである。
【0045】
第3作動条件が成立した場合には、制御部15は、トランスミッションリターダ8を制御して、トランスミッションリターダ8を弱モードで作動させる(ステップST11)。上記のように、車両速度が第3速度以上であり、且つ、エンジンリターダ7を強モードで作動したときの減速度が目標減速度に達しないと予測されたときに、エンジンリターダ7が強モードで作動され、トランスミッションリターダ8が弱モードで作動される。
【0046】
次に、予測減速度算出部14が、主ブレーキ装置5の作動が停止され、エンジンリターダ7が強モードで作動され、トランスミッションリターダ8が弱モードで作動されたときの減速度の予測値である第4予測減速度を算出する(ステップST12)。例えば、予測減速度算出部14は、車両1の走行抵抗によって生じる減速度と、エンジンブレーキによって生じる減速度と、強モードで作動するエンジンリターダ7によって生じる減速度と、弱モードで作動するトランスミッションリターダ8によって生じる減速度との和を第4予測減速度として算出する。このとき、予測減速度算出部14は、例えば車両情報取得部11によって取得された車両速度及び車両重量に対応する減速度を第2減速度データから抽出することで、弱モードで作動するトランスミッションリターダ8によって生じる減速度を取得する。
【0047】
次に、制御部15が、トランスミッションリターダ8を強モードで作動させるための条件である第4作動条件を満たすか否かを判定する(ステップST13)。例えば、制御部15は、車両速度が第4速度(第4閾値)以上であり、車両重量が所定の重量(第5閾値)以上であり、且つ、目標減速度が第4予測減速度よりも大きいときに第4作動条件が成立したと判定する。第4速度は、第2速度よりも高い速度であり、例えば20km/hである。所定の重量は、予め設定された重量であり、例えば10tである。
【0048】
第4作動条件が成立した場合には、制御部15は、トランスミッションリターダ8を制御して、トランスミッションリターダ8を強モードで作動させる(ステップST14)。上記のように、車両速度が第4速度以上であり、車両速度が所定の重量以上であり、且つ、トランスミッションリターダ8が弱モードで作動されたときの減速度が目標減速度に達しないと予測されたときに、エンジンリターダ7が強モードで作動され、トランスミッションリターダ8が強モードで作動される。
【0049】
次に、予測減速度算出部14が、主ブレーキ装置5の作動が停止され、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8が強モードで作動されたときの減速度の予測値である第5予測減速度を算出する(ステップST15)。例えば、予測減速度算出部14は、車両1の走行抵抗によって生じる減速度と、エンジンブレーキによって生じる減速度と、強モードで作動するエンジンリターダ7によって生じる減速度と、強モードで作動するトランスミッションリターダ8によって生じる減速度との和を第5予測減速度として算出する。
【0050】
次に、制御部15が、主ブレーキ装置5を作動させるための条件である第5作動条件を満たすか否かを判定する(ステップST16)。例えば、制御部15は、目標減速度が第5予測減速度よりも大きいときに第5作動条件が成立したと判定する。
【0051】
第5作動条件が成立した場合には、制御部15は、主ブレーキ装置5を作動させる(ステップST17)。このとき、制御部15は、目標減速度と第5予測減速度との差に応じた不足分の減速度が発生するように主ブレーキ装置5を制御する。上記のように、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8が強モードで作動されたときの減速度が目標減速度に達しないと予測されたときに主ブレーキ装置5が作動されるので、主ブレーキ装置5の過度な使用が抑制され、主ブレーキ装置5の長寿命化が図られる。
【0052】
また、ステップST4、ST7、ST10、ST13において、第1~第4作動条件が成立しないと判定された場合には、制御部15は、主ブレーキ装置5を作動させるための条件である第6作動条件を満たすか否かを判定する(ステップST18)。例えば、制御部15は、車両速度が第5速度以上であり、目標減速度が所定の減速度以上であるときに、第6作動条件が成立したと判定する。第5速度は、第1速度よりも低い速度であり、例えば2km/hである。所定の減速度は、例えば-0.05mm/sである。一実施形態では、制御部15は、車両速度が第2速度以上であり、且つ、目標減速度が車両1の走行抵抗によって生じる減速度よりも大きいときに、第6作動条件が成立したと判定してもよい。
【0053】
第6作動条件が成立した場合には、制御部15は、主ブレーキ装置5を作動させる(ステップST19)。
【0054】
以上説明した車両制御装置10では、減速度の予測値を算出し、当該減速度の予測値と目標減速度とを比較して複数の補助ブレーキ装置の作動を制御しているので、目標減速度と実際の減速度との差異を小さくすることができる。また、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8は、主ブレーキと異なり精密な制動制御が難しい。したがって、例えば車両速度が低い場合にエンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8を作動させると、車両1の急激に減速し、乗員の乗り心地が悪化する恐れがある。これに対し、車両制御装置10では、車両速度が一定値以上であるときに、エンジンリターダ7及びトランスミッションリターダ8を作動させているので、乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0055】
以上、種々の実施形態に係る車両制御装置について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。なお、上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…車両、5…主ブレーキ装置、6…補助ブレーキ装置、10…車両制御装置、13…目標減速度取得部、14…予測減速度算出部、15…制御部。

図1
図2
図3