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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141713
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】医薬作業管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/101 20230101AFI20230928BHJP
【FI】
G06Q10/10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048173
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】榊原 宏達
(72)【発明者】
【氏名】大年 健治
(72)【発明者】
【氏名】浅田 裕之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA11
(57)【要約】
【課題】 作業の逸脱を未然に防ぐことが可能な医薬作業管理システムを提供する。
【解決手段】 医薬品に対する作業を管理する医薬作業管理システムであって、前記医薬品に対して定められた作業内容を作業手順毎に予め撮影した画像である手本画像を記憶する記憶部と、前記医薬品に対して作業者によって行われる実作業の画像である実作業画像を撮影するカメラと、撮影中の実作業画像を前記手本画像と対比した結果に基づいて、作業の逸脱の有無を判定する逸脱判定部を備えることを特徴とする。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品に対する作業を管理する医薬作業管理システムであって、
前記医薬品に対して定められた作業内容を作業手順毎に予め撮影した画像である手本画像を記憶する記憶部と、
前記医薬品に対して作業者によって行われる実作業の画像である実作業画像を撮影するカメラと、
撮影中の実作業画像を前記手本画像と対比した結果に基づいて、作業の逸脱の有無を判定する逸脱判定部を備えることを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記医薬品に対する作業に用いられる作業具を、前記手本画像と前記実作業画像のそれぞれから抽出し、前記作業具の位置の両画像間のずれ量が閾値以上であれば逸脱が有ると判定することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記作業具に付けられた二次元バーコードに基づいて、前記作業具を抽出することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項4】
請求項2に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記作業具に付けられた色に基づいて、前記作業具を抽出することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記作業具の形状に基づいて、前記作業具を抽出することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項6】
請求項2に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記作業具に付された文字に基づいて、前記作業具を抽出することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記医薬品に対する作業が希釈作業であるとき、前記希釈作業に用いられるピペットとフラスコとの距離を、前記手本画像と前記実作業画像との間で作業手順毎に対比し、両画像間での距離の差異が閾値以上であれば逸脱が有ると判定することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の医薬作業管理システムであって、
前記逸脱判定部は、前記ピペットと前記フラスコとが接近している時間である接近時間を、両画像間で作業手順毎にさらに対比し、両画像間での接近時間の差異が閾値以上であれば逸脱が有ると判定することを特徴とする医薬作業管理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の医薬作業管理システムであって、
前記記憶部は、作業手順毎の前記実作業画像に対して、作業時刻と作業者名を対応付けて記憶することを特徴とする医薬作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造現場、特に医薬品の製造現場では、作業手順毎に厳格に定められた作業内容を作業者は遵守なければならないが、何らかの要因によって、作業手順のスキップや作業内容の誤りといった逸脱が生じることがある。このような逸脱の要因は、逸脱発生時の画面イメージデータをシステムログとともに記録しておくことで、作業後に確認できるものの、画面イメージデータが改ざんされると逸脱発生時の状況を正確に把握することができない。
【0003】
特許文献1には、医薬品製造時の作業手順からの逸脱発生時の画面イメージデータの改ざんを検出する作業手順管理システムが開示される。具体的には、サーバログイン時に付与されるセッションIDとともに処理のログ情報と画面ハードコピーを記録し、逸脱判断されたときの逸脱内容と画面ハードコピーの一部を符号化した情報を記録することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6474237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、画面イメージデータの改ざんを検知したり、作業の逸脱を作業後に判断したりはできるものの、作業の逸脱を未然に防ぐことに対する配慮はなされていない。
【0006】
そこで本発明の目的は、作業の逸脱を未然に防ぐことが可能な医薬作業管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、医薬品に対する作業を管理する医薬作業管理システムであって、前記医薬品に対して定められた作業内容を作業手順毎に予め撮影した画像である手本画像を記憶する記憶部と、前記医薬品に対して作業者によって行われる実作業の画像である実作業画像を撮影するカメラと、撮影中の実作業画像を前記手本画像と対比した結果に基づいて、作業の逸脱の有無を判定する逸脱判定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業の逸脱を未然に防ぐことが可能な医薬作業管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】医薬作業管理システムの全体構成図
図2】手本画像を撮影する処理の流れの一例を示す図
図3】作業手順書の一例を示す図
図4】希釈作業の一例について説明する図
図5】希釈作業の作業手順について説明する図
図6】作業の逸脱を判定する処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明に係る医薬作業管理システムの実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【実施例0011】
図1は医薬作業管理システム100の全体構成を示す図である。医薬作業管理システム100は、医薬品に対する作業を管理するシステムであって、医薬作業管理装置101とカメラ109を備える。医薬作業管理装置101は、演算部102、メモリ103、記憶部104、インターフェース105がシステムバス106によって信号送受可能に接続されて構成される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。医薬作業管理装置101には、表示装置107と入力装置108が接続されても良い。
【0012】
演算部102は、各構成要素の動作を制御する装置であり、具体的にはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等である。演算部102は、記憶部104に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリ103にロードして実行する。メモリ103は、演算部102が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。記憶部104は、演算部102が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。インターフェース105は、医薬作業管理装置101をカメラ109に接続するためのものである。
【0013】
表示装置107は、医薬作業管理装置101の処理結果等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。入力装置108は、操作者が医薬作業管理装置101に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス、タッチパネル等である。マウスはトラックパッドやトラックボール等の他のポインティングデバイスであっても良い。
【0014】
カメラ109は、医薬品に対して作業者が作業台の上で作業具を用いて行う作業を撮影する装置である。撮影された画像は、静止画または動画であり、インターフェース105を介して、記憶部104に記憶される。
【0015】
医薬品に対する作業内容は作業手順毎に厳格に定められており、定められた作業内容から逸脱しないことが作業者には求められる。そこで実施例1では、定められた作業内容を作業手順毎に予め撮影した画像である手本画像と、作業者によって行われる実作業の画像である実作業画像とを対比した結果に基づいて、作業の逸脱の有無を判定し、逸脱が有れば作業者に警告する。
【0016】
図2を用いて、手本画像を撮影する処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0017】
(S201)
演算部102は、作業手順書を取得する。作業手順書は、図3に例示されるように作業毎に作業内容が示されるものであり、記憶部104に予め記憶される。
【0018】
(S202)
演算部102は、S201にて取得した作業手順書から作業毎の作業内容を読み出す。例えば、図3の作業手順書から希釈作業の作業内容が読み出される。希釈作業は、例えば入荷した原料からサンプリングされた検体に対して行われる作業である。
【0019】
図4を用いて、図3の作業手順書の作業番号001-1~001-3に関する希釈作業の作業内容について説明する。まずサンプリングされた検体が収容される100mLフラスコから50mLフラスコαへ定量の検体が10mLピペットを用いて移される。50mLフラスコαへ移される検体の量は30mLであるので、10mLピペットは3回使用される。次に30mLの検体が移された50mLフラスコαへ定量の希釈液が20mLピペットを用いて入れられる。50mLフラスコαへ入れられる希釈液の量は20mLであるので、20mLピペットは1回使用される。以上で、作業番号001-1が完了する。続いて作業番号001-2の希釈作業として、50mLフラスコβへ30mLの検体と20mLの希釈液が入れられ、作業番号001-3の希釈作業として、50mLフラスコγへ30mLの検体と20mLの希釈液が入れられる。
【0020】
(S203)
演算部102は、S202にて読み出された作業内容を作業手順毎にカメラ109に撮影させる。例えば、、図3の作業手順書の作業番号001-1に関する希釈作業の作業内容が作業手順毎にカメラ109によって撮影される。
【0021】
図5を用いて、作業番号001-1の希釈作業の作業手順について説明する。まず100mLフラスコから50mLフラスコαへ30mLの検体が10mLピペットを用いて移される作業手順について説明する。作業手順(A)では、サンプリングされた検体を収容する100mLフラスコへ10mLピペットが接近する。作業手順(B)では、10mLピペットが100mLフラスコから検体を10mL吸引する。作業手順(C)では、検体を吸引した10mLピペットが50mLフラスコαへ接近する。作業手順(D)では、10mLピペットが50mLフラスコαへ10mLの検体を吐出する。以上の作業手順(A)~(D)が3回繰り返されることで、50mLフラスコαへ30mLの検体が移される。
【0022】
次に30mLの検体が移された50mLフラスコαへ定量の希釈液が20mLピペットを用いて入れられる作業手順について説明する。作業手順(E)では、希釈液を吸引した20mLピペットが50mLフラスコαへ接近する。作業手順(F)では、20mLピペットが50mLフラスコαへ20mLの希釈液を吐出する。
【0023】
作業手順(A)~(D)が3回繰り返された後、作業手順(E)と手順(F)が実施されることで、作業番号001-1に関する希釈作業が完了する。カメラ109は、作業手順(A)~(F)のそれぞれを、作業番号001-1に関する希釈作業の作業手順毎の手本画像として撮影する。
【0024】
(S204)
演算部102は、S203の撮影によって取得された手本画像を作業手順に対応付けて記憶部104に記憶させる。例えば、100mLフラスコへ10mLピペットが接近することが撮影された手本画像は、作業番号001-1の作業手順(A)に対応付けられて記憶される。
【0025】
(S205)
演算部102は、次の作業内容の有無を判定する。次の作業内容が有ればS202へ処理が戻され、無ければ処理の流れは終了となる。
【0026】
図2を用いて説明した処理の流れにより、予め定められた作業内容の作業手順毎に手本画像が対応付けられて記憶される。作業手順書の作業手順毎に対応付けられた手本画像は、作業者によって行われる実作業が、定められた作業内容から逸脱しているか否かを判定するときに用いられる。
【0027】
図6を用いて、作業の逸脱を判定する処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0028】
(S601)
演算部102は、作業手順書を取得する。S601にて取得された作業手順書には、予め定められた作業内容の作業手順毎に手本画像が対応付けられている。
【0029】
(S602)
演算部102は、S601にて取得された作業手順書から作業手順と手本画像を読み出す。読み出された手本画像は、作業者が作業の参考にできるように表示装置107に表示されても良い。
【0030】
(S603)
カメラ109は、作業者によって行われる実作業を撮影する。撮影によって得られる実作業画像は、作業手順毎に記憶部104に記憶される。実作業画像が作業手順毎に記憶されることにより、作業番号と作業手順をキーとして実作業画像を検索できるので、作業内容の調査に要する工数を低減できる。また作業手順毎に記憶される実作業画像には、作業時刻や作業者名が対応付けられても良い。作業手順毎の実作業画像に作業時刻や作業者名が対応付けられることにより、作業内容を作業者にヒアリングする手間が軽減される。
【0031】
(S604)
演算部102は、S602にて読み出された手本画像と、S603で撮影された実作業画像とを対比した結果に基づいて、作業の逸脱の有無を判定する。逸脱が有ればS605を介してS603へ処理が戻され、逸脱が無ければS606へ処理が進められる。
【0032】
作業の逸脱の有無は、例えば、手本画像と実作業画像のそれぞれから抽出される作業具の位置の両画像間のずれ量に基づいて判定される。すなわち手本画像の中の作業具の位置と、実作業画像の中の作業具の位置とのずれ量が、予め定められた閾値以上であれば逸脱が有ると判定される。なお手本画像や実作業画像の中の作業具は、例えば作業具に予め付けられた二次元バーコードや色に基づいて抽出される。また作業具の形状や作業具に付された文字に基づいて、作業具が抽出されても良い。
【0033】
また作業内容が希釈作業である場合、作業具として用いられるピペットとフラスコとの距離に基づいて、作業の逸脱の有無が判定されても良い。例えば作業手順(A)の手本画像と実作業画像のそれぞれから抽出される10mLピペットと100mLフラスコとの距離を対比し、両画像間での距離の差異が閾値以上であれば逸脱が有ると判定される。なお作業手順(A)の実作業画像から10mLピペットの代わりに20mLピペットが抽出された場合、実作業画像では10mLピペットと100mLフラスコとの距離が求められず、両画像間での距離の対比ができないので、逸脱が有ると判定される。
【0034】
さらに希釈作業では、検体の吸引や吐出に所定の時間を要するので、ピペットとフラスコとが接近している時間である接近時間に基づいて、作業の逸脱の有無が判定されても良い。例えば作業手順(B)の手本画像と実作業画像のそれぞれから算出される接近時間を対比し、両画像間での接近時間の差異が閾値以上であれば逸脱が有ると判定される。なおピペットとフラスコとが接近しているか否かは、手本画像や実作業画像から抽出されるピペットとフラスコとの距離に基づいて判定される。すなわちピペットとフラスコとの距離が閾値以下であるとき、ピペットとフラスコとが接近していると判定される。
【0035】
(S605)
演算部102は、作業に逸脱があったことを表示装置107にアラート表示させる。アラート表示は逸脱が有ったことを示すテキストでも良いし、画面全体または一部の点滅、変色でも良い。アラート表示がなされることにより、作業者は作業の逸脱に気づき、作業をやり直すことができる。すなわち、作業の逸脱を未然に防ぐことができる。
【0036】
(S606)
演算部102は、次の作業手順の有無を判定する。次の作業手順が有ればS602へ処理が戻され、無ければ処理の流れは終了となる。
【0037】
図6を用いて説明した処理の流れにより、作業者が行う実作業に逸脱が有ったか否かを判定することができる。また逸脱が有った場合、直ちにアラート表示がなされるので、作業の逸脱を未然に防ぐことができる。
【0038】
以上、本発明の実施例について説明した。なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0039】
100:医薬作業管理システム、101:医薬作業管理装置、102:演算部、103:メモリ、104:記憶部、105:インターフェース、106:システムバス、107:表示装置、108:入力装置、109:カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6