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特開2023-141741排水設備、および、排水設備の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141741
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】排水設備、および、排水設備の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
E03C1/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048221
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】堀 綾香
(72)【発明者】
【氏名】田所 淳
(72)【発明者】
【氏名】日影 正弘
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA02
2D061DA03
2D061DD08
2D061DE01
(57)【要約】
【課題】施工性の良い排水設備、および、排水設備の施工方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る排水設備10は、排水トラップ120と、排水導出管200とを備える。排水トラップ120の出口127は、横向きに設けられている。排水設備10は、排水導出管200を構成する部材として、エルボ管210と、フレキシブルホース220とを有する。エルボ管210は、上流接続部211が、排水トラップ120の出口127に接続されている。エルボ管210は、エルボ管210の上流接続部211と、排水トラップ120の出口127との接続状態において、排水トラップ120の出口127に対して回転可能である。フレキシブルホース220は、エルボ管210の下流接続部212に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を貯留可能なトラップ部を有する排水トラップと、前記排水トラップの出口から排出された排水を設置施設の排水口まで導く排水導出管とを備える排水設備であって、
前記排水トラップの前記出口は、横向きに設けられており、
前記排水導出管を構成する部材として、
一端側が、前記排水トラップの前記出口に、前記出口に対して回転可能に接続されたエルボ管と、
前記エルボ管の前記一端側とは反対の他端側に接続されたフレキシブルホースとを有する排水設備。
【請求項2】
請求項1に記載の排水設備であって、
前記排水トラップの前記出口および前記エルボ管の前記一端側にはそれぞれフランジ部が形成されており、
前記排水トラップの前記出口と前記エルボ管の前記一端側とは、互いの前記フランジ部同士の遠ざかる向きの移動を規制する樹脂製のクイックファスナーが装着されていることによって接続されている排水設備。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排水設備であって、
前記排水トラップは、ボトルトラップである排水設備。
【請求項4】
排水を貯留可能なトラップ部を有する排水トラップと、前記排水トラップの出口から排出された排水を設置施設の排水口まで導く排水導出管とを備える排水設備の施工方法であって、
前記排水トラップとして、前記出口が横向きに設けられたものを用い、
前記排水導出管を構成する部材として、
一端側が、前記排水トラップの前記出口に、前記出口に対して回転可能に接続されるエルボ管と、
前記エルボ管の前記一端側とは反対の他端側に接続されるフレキシブルホースとを用い、
前記排水トラップの前記出口と前記エルボ管の前記一端側との接続箇所である第1接続箇所を接続し、
前記フレキシブルホースの前記設置施設の前記排水口側の接続箇所である第2接続箇所を接続し、
前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とを接続した後に、前記エルボ管と前記フレキシブルホースとの接続箇所である第3接続箇所を接続する排水設備の施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の排水設備の施工方法であって、
前記フレキシブルホースとして、前記第2接続箇所から前記第3接続箇所までの距離に比べて長いものを用い、
前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とを接続した後に、前記フレキシブルホースを前記第3接続箇所に合わせた長さで切断し、
前記フレキシブルホースの前記切断の後に、前記第3接続箇所を接続する排水設備の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水設備、および、排水設備の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水設備には、排水トラップが設けられていることがある。特許文献1には、「排水トラップ装置」として記載されているものもその一例である。同文献では、U字状に屈曲したトラップ形成管を含む複数の管を、手締めナットを用いて接続することによって、排水経路を形成する排水設備を構成している。この排水設備においては、手締めナットを緩めた状態として管を回転させ、床排水と壁排水とに対応できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-222890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、排水設備における手締めナットを用いた接続箇所においては調整が容易ではない。具体的には、手締めナットを用いた接続においては、手締めナットを緩めた状態として管の回転位置を調整し、調整した状態を維持したまま手締めナットを締める必要がある。このため、排水設備においては、その施工性について改善の余地があった。
【0005】
本明細書の開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、施工性の良い排水設備、および、排水設備の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における排水設備は、排水を貯留可能なトラップ部を有する排水トラップと、排水トラップの出口から排出された排水を設置施設の排水口まで導く排水導出管とを備える排水設備であって、排水トラップの出口は、横向きに設けられており、排水導出管を構成する部材として、一端側が、排水トラップの出口に、出口に対して回転可能に接続されたエルボ管と、エルボ管の一端側とは反対の他端側に接続されたフレキシブルホースとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る排水設備を備える洗面化粧台の正面図である。
図2】実施の形態に係る排水設備の上流側部分の断面図である。
図3】実施の形態に係る排水設備の接続に用いるクイックファスナーの斜視図である。
図4】実施の形態に係る排水設備の下流側部分の断面図である。
図5】実施の形態に係る排水設備の床排水を示す斜視図である。
図6】実施の形態に係る排水設備の壁排水を示す斜視図である。
図7】実施の形態に係る排水設備の対応可能範囲を示す図である。
図8】比較例に係る排水設備の対応可能範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、図1に示す洗面化粧台1の排水経路を構成する排水設備10にて本開示技術を具体化したものである。洗面化粧台1は、設置施設4の床5の上に設置されている。床5には、設置施設4に設けられた施設排水管50がある。洗面化粧台1は、洗面部20とキャビネット30とを有する。洗面部20は、キャビネット30の上部に設けられている。排水設備10は、洗面部20からの排水を、施設排水管50の施設排水口51へと導く排水経路を構成している。施設排水口51は、施設排水管50の入口である。
【0009】
洗面部20は、洗面ボウル21を備えている。洗面ボウル21は、湯水を受け入れることができる。洗面部20は、洗面ボウル21に向けて湯水を吐出する水栓を有する。洗面ボウル21の底面には、洗面排水口22が設けられている。洗面排水口22は、洗面ボウル21の出口である。洗面ボウル21内へと流れ込んだ湯水は、洗面排水口22から洗面ボウル21の外へと排水される。
【0010】
キャビネット30は、洗面化粧台1の土台を構成している。キャビネット30は、内部に収納空間31を有する。洗面化粧台1を使用する使用者は、収納空間31に、例えば、洗面化粧台1にて使用する物品を収納できる。キャビネット30は、例えば、収納空間31の前面を開閉可能な扉を有していてもよい。さらに、例えば、キャビネット30は、収納空間31へと収納可能な引き出しを有していてもよい。本形態の排水設備10は、キャビネット30の収納空間31を通過している。
【0011】
排水設備10は、上流から下流に向けて順に、排水導入部110、排水トラップ120、排水導出管200を備えている。排水導出管200は、上流から下流に向けて順に、エルボ管210、フレキシブルホース220、接続管230を備えている。排水導出管200における最も下流に位置する接続管230は、施設排水管50の施設排水口51に接続されている。よって、排水導出管200は、排水トラップ120の出口127から排出された排水を設置施設4の施設排水口51まで導く。
【0012】
排水導入部110は、洗面ボウル21から下方へ向けて延びる管である。排水導入部110の上部は、洗面排水口22に接続されている。図1に示す接続箇所Aは、排水導入部110と排水トラップ120との接続箇所である。接続箇所Bは、排水トラップ120とエルボ管210との接続箇所である。接続箇所Cは、エルボ管210とフレキシブルホース220との接続箇所である。接続箇所Dは、フレキシブルホース220と接続管230との接続箇所である。接続箇所Eは、接続管230と施設排水口51との接続箇所である。
【0013】
図2は、排水トラップ120、エルボ管210、フレキシブルホース220の断面図である。排水トラップ120は、排水導入部110の下方に設けられている。排水トラップ120の上部は、排水導入部110の下部に接続されている。排水導入部110と排水トラップ120との接続箇所Aは、ナット130によって固定されている。ナット130は、手締めナットである。
【0014】
排水トラップ120は、トラップ部121を有する。トラップ部121は、所定量の排水を貯留できる。排水トラップ120は、貯留した排水によって、排水経路の下流側において発生した悪臭等が洗面ボウル21側へ流れてしまうことを防止できる。本形態の排水トラップ120は、ボトルトラップである。ボトルトラップは、U字状に屈曲したトラップ形成管を用いて構成した排水トラップに比べて意匠性が高い。さらに、ボトルトラップは、U字状に屈曲したトラップ形成管を用いて構成した排水トラップに比べてコンパクトに構成されている。ボトルトラップである排水トラップ120は、収納空間31を十分に確保できる。
【0015】
排水トラップ120は、本体部122、カップ123を有する。本体部122は、排水トラップ120の上部から下方に向けて延びる流入管部124を有する。流入管部124は、排水トラップ120の入口を構成している。排水導入部110を通過した排水は、流入管部124から、排水トラップ120の内部へと流入する。カップ123は、本体部122の下方に装着されている。カップ123は、流入管部124の側方と下方を囲う形状である。流入管部124の下部に形成された開口125と、カップ123の底面126との間には隙間が設けられている。
【0016】
カップ123は、回転させながら下方へと引っ張ることによって本体部122から取り外すことができる。排水トラップ120は、カップ123を取り外すことによってトラップ部121内を容易に清掃できる。つまり、本形態の排水トラップ120は、U字状に屈曲したトラップ形成管を用いて構成した排水トラップに比べてメンテナンスが容易である。
【0017】
本体部122には、出口127が設けられている。出口127は、流入管部124の開口125に比べて上に位置している。トラップ部121は、本体部122とカップ123との間に形成されている。流入管部124から排水トラップ120内へと流入した排水は、出口127からオーバーフローによって排水トラップ120の外部へ流出する。トラップ部121は、出口127まで到達せず、オーバーフローしなかった排水を貯留する。
【0018】
排水トラップ120の出口127は、横向きに設けられている。本形態の排水トラップ120の出口127は、具体的には、水平方向に突出して設けられている。出口127には、フランジ部128が形成されている。フランジ部128は、出口127におけるその他の部分に比べて外径が大きい。
【0019】
エルボ管210は、屈曲箇所213を有する円筒形状の部材である。エルボ管210は、一端側に位置する上流接続部211と、他端側に位置する下流接続部212とを有する。上流接続部211は、排水経路の上流側の端に位置している。下流接続部212は、排水経路の下流側の端に位置している。エルボ管210は、両端にそれぞれ位置する上流接続部211から下流接続部212までの間に、屈曲箇所213が設けられている。本形態において、屈曲箇所213の屈曲の角度は90°である。
【0020】
上流接続部211は、フランジ部214と上流挿入部215とを有する。フランジ部214は、上流接続部211におけるその他の部分に比べて外径が大きい。上流挿入部215は、フランジ部214から排水トラップ120側へと突出している。上流挿入部215の外径は、排水トラップ120の出口127の内径に対応した大きさである。
【0021】
上流挿入部215は、排水トラップ120の出口127の内部に挿入されている。上流挿入部215の外面と排水トラップ120の出口127の内面との間には、Oリング216が配置されている。よって、エルボ管210と排水トラップ120との接続箇所Bは密封されている。上流挿入部215が排水トラップ120の出口127に挿入された状態において、フランジ部128のフランジ面128aとフランジ部214のフランジ面214aとは接触している。
【0022】
エルボ管210と排水トラップ120との接続箇所Bには、クイックファスナー250が装着されている。本形態のクイックファスナー250は樹脂製である。クイックファスナー250は、図3の斜視図に示すように、基部251と、クリップ部252とを有する。基部251とクリップ部252とは、他の部分に比べて厚みが薄い弾性部253にてつながっている。つまり、クリップ部252は、基部251と一体的に形成されている。
【0023】
クリップ部252は、弾性部253がたわむことによって基部251に対して回転するように動作できる。クイックファスナー250は、クリップ部252が開いた開状態と、クリップ部252が閉じた閉状態とに変異できる。図3には、閉状態のクリップ部252を実線によって、開状態のクリップ部252を二点鎖線によって示している。閉状態のクイックファスナー250は、リング状をしている。
【0024】
基部251の弾性部253側とは反対側の端部254と、クリップ部252の弾性部253側と反対側の端部255とは、スナップフィット構造によって結合できる。この結合によって、クリップ部252を閉状態に維持できる。本形態のクイックファスナー250においては、基部251の端部254に凹部が形成されている。クリップ部252の端部255には、基部251の端部254に形成されている凹部にはめ込むことが可能な凸部が形成されている。なお、クリップ部252の端部255に凹部を、基部251の端部254に凸部が設けられていてもよい。クイックファスナー250の基部251の内周面には、リング状のクイックファスナー250の周方向に延びる溝256が形成されている。
【0025】
図2に示すように、フランジ部128とフランジ部214とは、接続箇所Bに装着されたクイックファスナー250の溝256の内部に位置する。よって、装着されたクイックファスナー250は、フランジ部128とフランジ部214との互いに遠ざかる向きへの移動を規制する。一方、本形態では、エルボ管210の排水トラップ120の出口127に対する回転を規制するものはない。すなわち、エルボ管210は、排水トラップ120の出口127に対して回転可能に接続される。エルボ管210の排水トラップ120の出口127に対する回転の回転軸の方向は、出口127における排水方向(図2における左右方向)である。装着されたクイックファスナー250は、エルボ管210が排水トラップ120に対して回転したとしても、接続箇所Bにおける接続が解除されてしまうことを防止する。
【0026】
本形態では、クイックファスナー250の材質として、樹脂を採用している。なお、クイックファスナー250の材質としては、金属を採用することもできる。ただし、収納空間31内に位置するクイックファスナー250には、使用者の手等が接触してしまうことがある。このような場合、樹脂製のクイックファスナー250であることによって、金属製である場合に比べて使用者にとって安全である。金属製のクイックファスナー250を用いる場合、樹脂製のカバーを設けることによって安全性を高めることはできる。しかし、金属製のクイックファスナー250を用い、さらに樹脂製のカバーを設ける場合には、構成部品数が多くなってしまう。よって、樹脂製のクイックファスナー250を用いることによって、使用者の安全を確保しつつ施工性を良くできる。
【0027】
フレキシブルホース220は、弾性変形が可能な材質によって形成された円筒形状の部材である。フレキシブルホース220の材質としては、例えば、弾力性があるゴムや樹脂を用いることができる。フレキシブルホース220は、平滑な内面221を有する。
【0028】
フレキシブルホース220の外面222は、周方向に連続する山部223を有する。本形態のフレキシブルホース220の山部223は、外面222に螺旋状に設けられている。このような構造のフレキシブルホース220は、屈曲によって偏心変位が可能である。一方、フレキシブルホース220は、蛇腹構造の管のような伸縮変位はほとんどできない。
【0029】
エルボ管210の下流接続部212の外径は、フレキシブルホース220の内径に比べて小さい。エルボ管210の下流接続部212は、フレキシブルホース220の排水経路の上流側の端部225に挿入されている。つまり、エルボ管210とフレキシブルホース220との接続箇所Cは、エルボ管210の下流接続部212がフレキシブルホース220の内側へと挿入された内嵌合接続によって構成されている。本形態では、接続箇所Cにおけるエルボ管210の下流接続部212とフレキシブルホース220の端部225との接続には、接着剤が使用されている。接続箇所Cの接着剤としては、硬質ポリ塩化ビニル管専用接着剤を用いることができる。接着剤は、エルボ管210の下流接続部212とフレキシブルホース220の端部225との隙間に塗布されている。接着剤を用いた接着によって、フレキシブルホース220とエルボ管210との接続箇所Cは密封されている。さらに、接着剤を用いた接着によって、フレキシブルホース220からエルボ管210の下流接続部212が抜けてしまうことが防止されている。
【0030】
接続箇所Cの内部には、エルボ管210の下流接続部212の下流側の端部によって段差が形成されている。つまり、エルボ管210の下流接続部212の端面212aは、段差面として排水経路の内部に露出している。ただし、エルボ管210の下流接続部212の端面212aは、排水方向の下流側に向いている。この下流接続部212の端面212aの向きは、排水の流れを妨げる向きではない。よって、接続箇所Cでは、排水が滞留してしまうことが抑制されている。さらには、排水と一緒に流れてきたゴミ等が、下流接続部212の端面212aに引っかかることについても抑制されている。つまり、接続箇所Cでは、排水と一緒に流れてきたゴミ等が詰まることが抑制されている。
【0031】
図4は、フレキシブルホース220、接続管230の断面図である。接続管230は、排水経路の上流側の端に位置するホース接続部231と、下流側の端に位置する排水口接続部235とを有する。
【0032】
ホース接続部231は、フレキシブルホース220の排水経路の下流側の端部226との接続部分である。ホース接続部231の外径は、フレキシブルホース220の外径に比べて太い。ホース接続部231は、フレキシブルホース220の端部226が挿入される凹部232を有する。凹部232は、内壁232aと突き当て面232bとを有する。内壁232aは、凹部232の側壁である。突き当て面232bは、凹部232の底面である。
【0033】
内壁232aは、螺旋状の山部223を有するフレキシブルホース220の外面222に対応した形状をしている。具体的には、凹部232の内壁232aには、フレキシブルホース220の山部223に対応したらせん状の谷部234が設けられている。フレキシブルホース220の端部226は、ホース接続部231へとねじ込まれることによって、ホース接続部231の内側へと挿入されている。つまり、フレキシブルホース220と接続管230との接続箇所Dは、接続管230のホース接続部231がフレキシブルホース220の端部226の外側へと被さった外嵌合接続によって構成されている。さらに、フレキシブルホース220の端部226は、凹部232の突き当て面232bに突き当たるまで、凹部232へと挿入されている。
【0034】
本形態では、接続箇所Dにおけるフレキシブルホース220の端部226と接続管230のホース接続部231との接続には、接着剤が使用されている。接続箇所Dの接着剤としては、シリコーン接着剤を用いることができる。接続箇所Dの接着剤として、硬質ポリ塩化ビニル管専用接着剤を用いてもよい。接着剤は、フレキシブルホース220の端部226と接続管230のホース接続部231との隙間に塗布されている。接着剤を用いた接着によって、フレキシブルホース220と接続管230との接続箇所Dは密封されている。さらに、接着剤を用いた接着によって、接続管230がフレキシブルホース220に対して回転することが防止されている。つまり、接続管230からフレキシブルホース220の端部226が抜けてしまうことが防止されている。
【0035】
排水口接続部235の外径は、施設排水口51の直径に比べて小さい。ホース接続部231の外径は、施設排水口51の直径に比べて大きい。排水口接続部235は、施設排水口51から施設排水管50の内部へと挿入されている。施設排水口51に比べて太いホース接続部231の下面は、施設排水口51へと挿入されず、施設排水口51の上面へと接触している。これによって、接続箇所Eが構成されている。
【0036】
排水口接続部235の内径は、フレキシブルホース220の内径と同じ大きさとされている。排水口接続部235の内面236は、ホース接続部231の凹部232の突き当て面232bまで延びている。接続箇所Dにおいて、フレキシブルホース220の内面221は、内部にて露出している。フレキシブルホース220の端部226と排水口接続部235の内面236との間には隙間がない。フレキシブルホース220の端部226と排水口接続部235の内面236との間に隙間があったとしても、その隙間は小さい。つまり、フレキシブルホース220の端部226の端面が、排水経路の内部に露出することが防止されている。このため、フレキシブルホース220の端部226の端面は、排水の流れを妨げることはない。よって、接続箇所Dでは、排水が滞留してしまうことが抑制されている。さらには、排水と一緒に流れてきたゴミ等が、フレキシブルホース220の端部226の端面に引っかかることについても抑制されている。よって、接続箇所Dでは、排水と一緒に流れてきたゴミ等が詰まることが抑制されている。
【0037】
本形態の排水設備10では、エルボ管210は、排水トラップ120の出口127に対して回転可能に接続されている。さらに、排水設備10を構成しているフレキシブルホース220は、屈曲による偏心変位が可能である。よって、排水設備10は、さまざまな設置施設に容易に施工できる。
【0038】
具体的に、排水設備10は、例えば、図5に示す床排水や、図6に示す壁排水に対応可能である。図5は、洗面化粧台1を、図1から図4によって説明した設置施設4に設置した場合である。設置施設4は、前述したように、洗面化粧台1が置かれる床5に施設排水口51を有する。
【0039】
一方、図6は、洗面化粧台1を、設置施設4とは異なる設置施設6に設置した例を示している。設置施設6は、壁7に施設排水口70を備えている。図6の例において、洗面化粧台1の背面は、壁7に対向している。設置施設6に設置された洗面化粧台1において、フレキシブルホース220の中間部分は、壁7に向けて屈曲している。よって、排水設備10は、排水経路を壁7の施設排水口70に向けて構成している。なお、施設排水口の位置によっては、エルボ管210を、排水トラップ120の出口127に対して回転させた状態として施工することもできる。エルボ管210を回転させる際には、接続箇所Bの接続を解除する必要はない。エルボ管210は、排水トラップ120の出口127に対して回転可能に接続されているからである。
【0040】
図7は、本形態に係る排水設備10が対応可能な対応可能範囲X1を示す図である。図7は、床排水の例であり、図1に示す洗面化粧台1のA-A位置における断面図である。対応可能範囲X1は、排水設備10の下流側の端部が床に沿って移動可能な可動範囲である。排水設備10の下流側の端部は、排水口接続部235である。対応可能範囲X1にはハッチングを施している。図7には、中心X2を示している。中心X2は、排水設備10の下流側の端部の可動範囲の中心である。
【0041】
図8は、本形態の排水設備10とは異なる比較例に係る排水設備が対応可能な対応可能範囲Y1を示す図である。比較例に係る排水設備は、本形態と同じキャビネット30を有する洗面化粧台8に設けられている。対応可能範囲Y1は、比較例に係る排水設備の下流側の端部が床に沿って移動可能な可動範囲である。対応可能範囲Y1にはハッチングを施している。比較例に係る排水設備は、特開2010-222890号公報に記載のように、U字状に屈曲したトラップ形成管を含む複数の硬質の樹脂管を用いて構成されている。図8には、比較例に係る排水設備の下流側の端部の可動範囲の中心Y2を示している。
【0042】
図7図8に示すように、排水設備10の対応可能範囲X1の半径X3は、比較例に係る排水設備の対応可能範囲Y1の半径Y3に比べて大きい。さらに、排水設備10の対応可能範囲X1は、中心X2から外縁まで隙間がない。これに対し、比較例に係る排水設備の対応可能範囲Y1は、中心Y2付近に、排水設備の端部が届かない。つまり、排水設備10の対応可能範囲X1は、比較例に係る排水設備の対応可能範囲Y1に比べて広いことがわかる。図5図8を用いて説明した通り、本形態の排水設備10は、施工性が良く、さまざまな設置施設に容易に施工できる。
【0043】
比較例に係る排水設備では、適切に調整がなされていないと、施工後に手締めナットが意図せず緩んでしまうことがある。具体的には、例えば、手締めナットによって接続された硬質の樹脂管にねじりやゆがみ等の変形が生じていた場合、変形していた樹脂管が元の形状に戻ろうとする力によって、手締めナットが回転することがある。そうすると、手締めナットが緩んでしまい、緩んだ手締めナットの接続箇所から排水が漏れてしまうことがあり得る。これに対し、本形態に係る排水設備10のエルボ管210は、排水トラップ120に接続された状態であっても、排水トラップ120の出口127に対して回転可能である。排水設備10のフレキシブルホース220は、屈曲による偏心変位が可能である。つまり、排水設備10は、施工が済んで接続された状態においても可動範囲が広い。このため、排水設備10では、施工後に接続箇所の接続が意図せず解除されてしまうことを抑制できる。よって、排水設備10では、排水の漏れが抑制されている。
【0044】
次に、排水設備10の施工方法について説明する。排水設備10は、例えば、設置施設4に洗面化粧台1を設置する際に施工される。洗面化粧台1の設置では、設置施設4の床5の上に洗面化粧台1を置いた後、排水設備10の各部の接続箇所を接続する。
【0045】
接続箇所Aは、排水導入部110の下部に排水トラップ120の上部を合わせ、ナット130を締めることによって接続する。接続箇所Bは、排水トラップ120の出口127にエルボ管210の上流挿入部215を、フランジ部128とフランジ部214とが接触するまで挿入し、クイックファスナー250を装着することによって接続する。クイックファスナー250は、開状態にて溝256にフランジ部128とフランジ部214とを挿入し、クリップ部252を閉状態に変位させて装着する。接続箇所Cは、接着剤を塗布したエルボ管210の下流接続部212を、フレキシブルホース220の端部225へと挿入することによって接続できる。接続箇所Dは、接着剤を塗布したフレキシブルホース220の端部226を、接続管230のホース接続部231へとねじ込むように挿入することによって接続できる。接続箇所Eは、接続管230の排水口接続部235を、施設排水口51の内部へと挿入することによって接続できる。接続箇所Eには、接続管230の排水口接続部235が施設排水口51から抜けることを防止する留め具を装着してもよい。
【0046】
排水設備10の施工時には、例えば、接続箇所D、接続箇所A、接続箇所B、接続箇所E、接続箇所Cの順に接続できる。このように、本形態の排水設備10の施工においては、接続箇所Cを最後に接続することが好ましい。一般的に、排水設備の施工時における最後の接続では、排水設備を構成する各部材がある程度、固定されている。つまり、排水設備を構成する各部材の可動範囲が制限されている傾向にある。このため、最後の接続は、一般的には、困難になりがちである。
【0047】
しかし、接続箇所Cを構成するエルボ管210は、接続箇所Cとは反対側の接続箇所Bにおいて、排水トラップ120に対して回転可能に接続されている。つまり、エルボ管210の下流接続部212は、エルボ管210の上流側に位置するすべての接続箇所の接続が完了した後にも、可動範囲が広い。
【0048】
接続箇所Cを構成するフレキシブルホース220は、偏心変位が可能な部材である。つまり、フレキシブルホース220の端部225は、フレキシブルホース220の下流側に位置するすべての接続箇所の接続が完了した後にも、可動範囲が広い。
【0049】
このため、接続箇所Cは、他のすべての接続箇所の接続が完了していても、容易に接続できる。接続箇所Cは、可動範囲の広いエルボ管210の下流接続部212と、フレキシブルホース220の端部225との接続によって構成できるからである。さらに、接続箇所Cは、比較的高い位置において接続作業ができる。つまり、作業者は、顔に近い高さで接続箇所Cを接続できる。このため、接続箇所Cは、一般的には困難になりがちな最後の接続箇所とした場合にも、接続が容易である。
【0050】
さらに、フレキシブルホース220として、接続箇所Cから接続箇所Dまでの距離に比べて長いものを用い、他のすべての接続箇所を接続した後に、フレキシブルホース220を適切な長さにカットしてもよい。具体的には、まず、排水設備10の施工前には、フレキシブルホース220として、接続箇所Cから接続箇所Dまでの排水経路上の距離に比べて長いものを準備しておく。次に、排水設備10における接続箇所C以外を接続する。これによって、エルボ管210の排水トラップ120側の接続と、フレキシブルホース220の施設排水口51側の接続とが完了する。その状態において、フレキシブルホース220の施設排水口51側とは反対側の端部を、エルボ管210の下流接続部212の位置に合わせて切断する。つまり、フレキシブルホース220を、接続箇所Cから接続箇所Dまでの排水経路上の距離に応じた長さに切断する。その後、フレキシブルホース220における切断した側の端部、すなわち端部225を、エルボ管210の下流接続部212に接続する。
【0051】
排水経路において必要な長さに比べて長いフレキシブルホース220を準備し、排水設備10の施工時に、接続箇所Cに合わせてフレキシブルホース220を切断することによって、フレキシブルホース220を適切な長さにできる。なお、洗面化粧台1の低い場所や、手前側から遠い奥側の場所にて、フレキシブルホース220を適切な長さに合わせつつ切断することは困難である。しかし、接続箇所Cでは、前述したように、作業者は、比較的高い位置、かつ、顔に近い位置において作業ができる。よって、接続箇所Cにおいて、フレキシブルホース220を適切な長さに合わせて切断することは容易である。
【0052】
最後に接続箇所Cを接続する場合、その他の接続箇所A、B、D、Eの接続の順序は上記の順序に限らない。例えば、接続箇所A、B、Dは、洗面化粧台1を設置施設4へと搬入する前に接続しておいてもよい。さらに、洗面化粧台1の製造工程に、接続箇所Dに係るフレキシブルホース220と接続管230とを接続する工程を含んでいてもよい。これによって、接続箇所Dの接続の品質を適切に管理できる。つまり、接続箇所Dを、安定した品質にて接続できる。よって、例えば、接続箇所Dを、確実に密封できる。さらに、フレキシブルホース220の端部226と排水口接続部235の内面236との隙間を、確実に小さくできる。
【0053】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、排水設備10は、排水トラップ120と、排水導出管200とを備える。排水トラップ120の出口127は、横向きに設けられている。排水設備10は、排水導出管200を構成する部材として、エルボ管210と、フレキシブルホース220とを有する。エルボ管210は、上流接続部211が、排水トラップ120の出口127に接続されている。エルボ管210は、エルボ管210の上流接続部211と、排水トラップ120の出口127との接続状態において、排水トラップ120の出口127に対して回転可能である。フレキシブルホース220は、エルボ管210の下流接続部212に接続されている。このように、排水設備10は、可動範囲が広いエルボ管210およびフレキシブルホース220を備えている。よって、施工性が良い排水設備10が実現されている。
【0054】
本実施の形態に係る排水設備10の施工方法では、接続箇所Cを接続する前に、接続箇所C以外を接続する。つまり、接続箇所Cを接続する前に、エルボ管210よりも上流側の接続箇所を接続しておく。さらに、接続箇所Cを接続する前に、フレキシブルホース220の下流側の接続箇所、すなわちフレキシブルホース220の施設排水口51側の接続箇所を接続しておく。その後に、ともに可動範囲が広いエルボ管210の下流接続部212とフレキシブルホース220の端部225との接続箇所Cを接続する。このため、接続箇所Cを容易に接続できる。さらに、接続箇所Cは、作業者の顔の位置に近い。よって、施工性が良い排水設備10の施工方法が実現されている。
【0055】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、排水設備10は、洗面化粧台1以外に設けることもできる。具体的には、排水設備10は、例えば、キッチンユニットのキッチンシンクの排水口からの排水経路に採用することも可能である。例えば、排水トラップの種類は、ボトルトラップに限られない。つまり、排水トラップを、例えば、U字状に屈曲したトラップ形成管を用いて構成してもよい。例えば、エルボ管210の屈曲箇所213の角度は、90°以外の角度でもよい。なお、エルボ管210の屈曲箇所213の角度が90°であることによって、排水トラップ120の横向きの出口127の下流側の排水経路を、施設排水口が設けられた床および壁のどちらにも適切に構成できる。
【符号の説明】
【0056】
4 設置施設、10 排水設備、51 施設排水口、120 排水トラップ、
121 トラップ部、127 出口、128 フランジ部、200 排水導出管、
210 エルボ管、214 フランジ部、220 フレキシブルホース、
250 クイックファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8