IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

<>
  • 特開-観察装置 図1
  • 特開-観察装置 図2
  • 特開-観察装置 図3
  • 特開-観察装置 図4
  • 特開-観察装置 図5
  • 特開-観察装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141747
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】観察装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20230928BHJP
   G02B 21/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
G02B7/04 C
G02B7/04 E
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048227
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】藪 光紘
(72)【発明者】
【氏名】山内 翼
【テーマコード(参考)】
2H044
2H052
【Fターム(参考)】
2H044BB03
2H044BB05
2H052AD05
(57)【要約】
【課題】ボイスコイルモータで駆動されるレンズユニットに対するカウンターウェイトを、軽量化することが可能な技術を提供する。
【解決手段】観察装置1は、メインフレーム11と、レンズユニット2と、結像レンズ5と、駆動機構3と、付勢機構4とを備える。駆動機構3は、ボイスコイルモータ31の駆動力により、レンズユニット2を移動させる。付勢機構4は、梃子部40と、カウンターウェイト41と、ワイヤー42とを有する。梃子部40は、メインフレーム11に対して、X方向に延びるシャフト軸を中心として回転可能に支持される。カウンターウェイト41は、梃子部40における、メインフレーム11に支持される支点位置P1から離れた力点位置P2に力を負荷する。ワイヤー42は、梃子部40における力点位置P2よりも支点位置P1に近い作用点位置P3にレンズユニット2を接続する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察装置であって、
フレームと、
観察対象物との距離を調整して焦点位置を変更可能な対物レンズを含むレンズユニットと、
前記フレームに取り付けられており、ボイスコイルモータの駆動力により、前記レンズユニットを移動させる駆動機構と、
前記レンズユニットを上方へ向けて付勢する付勢機構と、
を備え、
前記付勢機構は、
前記フレームに対して、鉛直方向と交差する第1方向に延びる軸を中心として回転可能に支持される梃子部と、
前記梃子部における、前記フレームに支持される支点位置から離れた力点位置に力を負荷するカウンターウェイトと、
前記梃子部における前記力点位置よりも前記支点位置に近い作用点位置に前記レンズユニットを接続する接続部と、
を有する、観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置であって、
前記駆動機構は、前記レンズユニットを上下に移動させる、観察装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の観察装置であって、
前記接続部は、ワイヤーを有する、観察装置。
【請求項4】
請求項3に記載の観察装置であって、
前記付勢機構は、前記ワイヤーが掛けられる滑車、をさらに有する、観察装置。
【請求項5】
請求項4に記載の観察装置であって、
前記滑車は、前記梃子部よりも上側に位置する、観察装置。
【請求項6】
請求項5に記載の観察装置であって、
前記作用点位置は、前記支点位置と前記力点位置の間に設定されている、観察装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の観察装置であって、
前記付勢機構は、前記レンズユニットから前記第1方向に離れて位置する、観察装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の観察装置であって、
前記カウンターウェイトにおける前記支点位置から遠い側の側部が弧状である、観察装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の観察装置であって、
前記梃子部における前記カウンターウェイトの位置は、前記支点位置に近づく方向または前記支点位置から遠ざかる方向に調整可能である、観察装置。
【請求項10】
請求項9に記載の観察装置であって、
前記カウンターウェイトを前記梃子部に固定するネジ、
をさらに有し、
前記カウンターウェイトまたは前記梃子部は、前記ネジが挿入される穴であって、前記支点位置に近づく方向または前記支点位置から離れる方向に延びる挿入穴を有する、観察装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の観察装置であって、
前記カウンターウェイトは、重心が前記支点位置から離れる方向に偏在する、観察装置。
【請求項12】
請求項11に記載の観察装置であって、
前記カウンターウェイトは、前記支点位置から離れるほど幅が大きくなる部分を有する、観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞等の観察対象物をレンズにより拡大して観察する観察装置が知られている。この種の観察装置では、対物レンズを光軸方向に移動させて、観察対象物に焦点を合わせる。対物レンズを移動させるためのアクチュエータには、例えば、ピエゾアクチュエータ、モータとボールねじを用いた直動機構、超音波モータと歯車およびカムを用いた機構、ステッピングモータとカムおよび歯車を用いた機構、などが使用される。また、小型の対物レンズを移動させるためのアクチュエータとして、ボイスコイルモータが使用される場合もある。
【0003】
ボイスコイルモータで対物レンズを移動させる機構については、例えば、特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-056207号公報
【特許文献2】特開2012-118195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボイスコイルモータは、永久磁石の磁場の中でコイルに電流を流すことにより生じるローレンツ力を利用して、直進運動を出力するアクチュエータである。ボイスコイルモータを使用すれば、モータとボールねじを用いた直動機構等のような他のアクチュエータを使用する場合と比べて、対物レンズを応答性よく移動させることができる。しかしながら、ボイスコイルモータは、出力される駆動力が小さい。このため、対物レンズの質量が大きい場合に、ボイスコイルモータを使用することは容易ではなかった。
【0006】
カウンターウェイトを用いて対物レンズの見かけの質量を小さくすることが考えられる。しかしながら、対物レンズが大きくなると、カウンターウェイトも大きくなる。このため、装置全体のサイズが大きくなるとともに、装置の重量も大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
本開示の目的は、ボイスコイルモータで駆動されるレンズユニットに対するカウンターウェイトを、軽量化することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1態様は、観察装置であって、フレームと、観察対象物との距離を調整して焦点位置を変更可能な対物レンズを含むレンズユニットと、前記フレームに取り付けられており、ボイスコイルモータの駆動力により、前記レンズユニットを移動させる駆動機構と、前記レンズユニットを上方へ向けて付勢する付勢機構と、を備え、前記付勢機構は、前記フレームに対して、鉛直方向と交差する第1方向に延びる軸を中心として回転可能に支持される梃子部と、前記梃子部における、前記フレームに支持される支点位置から離れた力点位置に力を負荷するカウンターウェイトと、前記梃子部における前記力点位置よりも前記支点位置に近い作用点位置に前記レンズユニットを接続する接続部とを有する。
【0009】
第2態様は、第1態様の観察装置であって、前記駆動機構は、前記レンズユニットを上下に移動させる。
【0010】
第3態様は、第1態様または第2態様の観察装置であって、前記接続部は、ワイヤーを有する。
【0011】
第4態様は、第3態様の観察装置であって、前記付勢機構は、前記ワイヤーが掛けられる滑車をさらに有する。
【0012】
第5態様は、第4態様の観察装置であって、前記滑車は、前記梃子部よりも上側に位置する。
【0013】
第6態様は、第5態様の観察装置であって、前記作用点位置は、前記支点位置と前記力点位置の間に設定されている。
【0014】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1つの観察装置であって、前記付勢機構は、前記レンズユニットから前記第1方向に離れて位置する。
【0015】
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれか1つの観察装置であって、前記カウンターウェイトにおける前記支点位置から遠い側の側部が弧状である。
【0016】
第9態様は、第1態様から第8態様のいずれか1つの観察装置であって、前記梃子部における前記カウンターウェイトの位置は、前記支点位置に近づく方向または前記支点位置から遠ざかる方向に調整可能である。
【0017】
第10態様は、第9態様の観察装置であって、前記カウンターウェイトを前記梃子部に固定するネジ、をさらに有し、前記カウンターウェイトまたは前記梃子部は、前記ネジが挿入される穴であって、前記支点位置に近づく方向または前記支点位置から離れる方向に延びる挿入穴を有する。
【0018】
第11態様は、第1態様から第10態様のいずれか1つの観察装置であって、前記カウンターウェイトは、重心が前記支点位置から離れる方向に偏在する。
【0019】
第12態様は、第11態様の観察装置であって、前記カウンターウェイトは、前記支点位置から離れるほど幅が大きくなる部分を有する。
【発明の効果】
【0020】
第1態様から第12態様の観察装置によれば、てこの原理に基づき、カウンターウェイトの重さよりも大きい力でレンズユニットを上方へ付勢できる。これにより、軽量のカウンターウェイトであっても、質量の大きいレンズユニットを、ボイスコイルモータを用いて精度よく移動させることができる。
【0021】
第5態様の観察装置によれば、梃子部よりも上側に位置する滑車に掛けられたワイヤーが梃子部に接続されるため、梃子部の作用点位置に対して、レンズユニットの重量に応じた力を上向きに負荷できる。
【0022】
第6態様の観察装置によれば、梃子部の作用点位置に負荷されるレンズユニットの重力に応じた上向きの力と、力点位置に負荷されるカウンターウェイトの重量に応じた下向きの力との間で、釣り合いを取ることができる。
【0023】
第8態様の観察装置によれば、梃子部とともにカウンターウェイトが回転したときの、カウンターウェイトの回転半径を小さくすることができる。これにより、カウンターウェイトの側部が他の部材と接触することを低減できる。
【0024】
第9態様の観察装置によれば、カウンターウェイトの位置を、支点位置に近づく方向または支点位置から離れる方向に調整できる。これにより、レンズユニットを上方へ付勢する力を調整できる。
【0025】
第10態様の観察装置によれば、カウンターウェイトを固定するネジの位置を調整することで、カウンターウェイトの位置を支点位置に近づく方向または支点位置から離れる方向に調整できる。
【0026】
第11態様の観察装置によれば、重心を支点位置から離れる方向に偏在させることによって、モーメントを大きくすることができる。これにより、カウンターウェイトを軽量化できる。
【0027】
第12態様の観察装置によれば、支点位置から離れるほど幅が大きくなることにより、カウンターウェイトの重心を支点位置から離れる方向に偏在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る観察装置の構成を概略的に示す側面図である。
図2図1に示される観察装置の側面図である。
図3図1に示される観察装置の背面図である。
図4図1に示される観察装置の平面図である。
図5図1に示される梃子部に負荷される力を概念的に示す図である。
図6】変形例に係る梃子部に負荷される力を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0030】
図1および以降の各図には、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸をそれぞれ示す矢印が図示されている。X軸、Y軸およびZ軸は、好ましくは直交する。以下の説明では、X軸、Y軸およびZ軸に沿う方向を、それぞれ「X方向」、「Y方向」および「Z方向」と称する。また、各矢印の先端が向く方を+(プラス)側とし、+側の反対側を-(マイナス)側とする。
【0031】
以下の説明では、Z方向を鉛直方向とし、+Z方向を鉛直上向き、-Z方向を鉛直下向きとする。また、図1に示されるように、メインフレーム11を基準として、ボイスコイルモータ31側を-X側とし、その反対側を+X側とする。
【0032】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態に係る観察装置1の構成を概略的に示す側面図である。図2は、図1に示される観察装置1の側面図である。図3は、図1に示される観察装置1の背面図である。図4は、図1に示される観察装置1の平面図である。
【0033】
観察装置1は、試料容器90に保持された細胞9を、後述する対物レンズ22により拡大して観察するための装置である。試料容器90は、例えば、ウェルプレートまたはシャーレである。試料容器90は、観察装置1の上方に位置する支持台80に、水平姿勢で載置される。支持台80に載置された試料容器90の上方には、照明が設けられていてもよい。試料容器90は、光を透過する透明な樹脂により形成される。試料容器90内には、培養液91とともに、観察対象物となる複数の細胞9が保持される。細胞9は、透明または半透明の生体試料である。細胞9は、試料容器90内の底部に吸着しているか、あるいは、試料容器90内の培養液91中に浮遊した状態で存在する。
【0034】
観察装置1は、試料容器90内に保持された細胞9を、試料容器90の下方から撮影することにより、細胞9の画像を取得する。図1から図4に示されるように、観察装置1は、フレーム10、レンズユニット2、駆動機構3、付勢機構4、結像レンズ5、撮像部6、およびコンピュータ7を備える。
【0035】
フレーム10は、観察装置1のコンピュータ7以外の各部を支持する部材である。フレーム10は、例えば、剛性が高い金属により形成される。フレーム10は、水平な面上に配置される。図1から図4に示されるように、フレーム10は、メインフレーム11、第1支持部12、および第2支持部13を有する。メインフレーム11は、上下方向(Z方向)に延びる板状である。第1支持部12および第2支持部13は、メインフレーム11に対して-X側に位置し、メインフレーム11から-X側へ向けて突出する。第2支持部13は、第1支持部12から下方に離れて位置する。結像レンズ5は、第1支持部12に取り付けられる。撮像部6は、第2支持部13に取り付けられる。
【0036】
レンズユニット2は、レボルバ21(図1では図示省略)と、レボルバ21に支持された複数の対物レンズ22と、後述する移動子232とを有する。図2から図4に示されるように、レボルバ21は、平板状の支持プレート211と、ターンテーブル212とを有する。ターンテーブル212は、複数のレンズ取付面を有する。複数のレンズ取付面は、多角錐(本例では、四角錐)の扁平な各側面に対応する位置関係を有する。レボルバ21は、ターンテーブル212の1つのレンズ取付面が水平となるように、傾いた姿勢で配置される。ターンテーブル212は、上記多角錐の中心軸を中心として回転可能な状態で、支持プレート211に支持される。複数の対物レンズ22は、ターンテーブル212の複数のレンズ取付面に、それぞれ取り付けられる。
【0037】
各対物レンズ22は、観察対象物との距離を調整して焦点位置を変更可能である。複数の対物レンズ22は、焦点距離等の光学特性が、互いに異なる。観察装置1のユーザは、ターンテーブル212を回転させることにより、複数の対物レンズ22のうちの任意の1つの対物レンズ22を選択して、使用することができる。
【0038】
レボルバ21は、リニアガイド23を介して、メインフレーム11に取り付けられている。リニアガイド23は、レール231と移動子232とで構成される。図2に示すように、レール231は、メインフレーム11の-X側面に形成される。レール231は、上下方向に沿って、直線状に延びる。移動子232は、レボルバ21の支持プレート211に固定される。移動子232は、レール231に沿って、上下方向に移動可能である。これにより、レンズユニット2は、メインフレーム11に対して、上下方向に移動可能である。
【0039】
駆動機構3は、レンズユニット2を上下方向に移動させる。レンズユニット2が上下に移動することによって、対物レンズ22の焦点が細胞9に合わせられる。駆動機構3は、ボイスコイルモータ31を有する。ボイスコイルモータ31のケーシングは、メインフレーム11に対して固定されている。ボイスコイルモータ31は、アクチュエータであって、永久磁石の磁場の中でコイルに電流を流すことにより生じるローレンツ力を利用して、直進運動を出力する。ボイスコイルモータ31は、他の一般的なアクチュエータと比べて、応答性が非常に高いという特長を有する。ボイスコイルモータ31の出力軸32は、リニアガイド23の移動子232に接続されている。このため、ボイスコイルモータ31のコイルに駆動電流が供給されると、出力軸32およびレンズユニット2が、一体として上下方向に移動する。
【0040】
<付勢機構>
付勢機構4は、駆動機構3によるレンズユニット2の移動を補助するための機構である。付勢機構4は、梃子部40と、カウンターウェイト41と、ワイヤー42と、滑車43とを有する。
【0041】
梃子部40は、剛性を有する部材である。図3に示されるように、梃子部40は、Y方向に延びる直方体状である。梃子部40は、軸受(不図示)を介して支持シャフト111に連結されている。支持シャフト111は、X方向に延びており、メインフレーム11から+X方向に突出する。支持シャフト111は、梃子部40をX方向(第1方向)に延びる所定軸を中心として回転可能な状態で支持する。すなわち、梃子部40は、メインフレーム11に対して、X方向に延びる軸を中心として回転可能に支持される。なお、軸受が梃子部40に設けられていてもよい。この場合、メインフレーム11に対して支持シャフト111を回転不能とし、梃子部40が支持シャフト111に対して回転する。
【0042】
梃子部40における支持シャフト111に連結される部分(メインフレーム11に対する位置が固定される部分)は、支点位置P1に相当する。支点位置P1は、梃子部40における-Y側端部に設定されている。
【0043】
なお、梃子部40は、一方向に真っ直ぐに延びていることは必須ではない。例えば、梃子部40は、曲がった部分を有していてもよい。また、梃子部40は、円板状等であってもよい。
【0044】
カウンターウェイト41は、レンズユニット2の見かけの重量を軽減するための重りである。図1図3および図4に示されるように、カウンターウェイト41は、メインフレーム11に対して+X側に位置する。カウンターウェイト41は、固定具である2つのネジ45を介して、梃子部40に取り付けられる。梃子部40におけるカウンターウェイト41が取り付けられる位置は、力点位置P2に相当する。力点位置P2は、支点位置P1から離れて位置する。このように、カウンターウェイト41は、力点位置P2に配置されており、力点位置P2にカウンターウェイト41の重量に応じた下向きの力を負荷する。
【0045】
図3に示されるように、カウンターウェイト41は、ネジ45が挿通される挿入穴410を有する。本例では、カウンターウェイト41は、2つのネジ45に対して、2つの挿入穴410を有する。挿入穴410は、支点位置P1に近づく方向または支点位置P1から離れる方向に延びる長穴である。挿入穴410を長穴にすることによって、カウンターウェイト41の位置(すなわち、力点位置P2の位置)を、支点位置P1に近づく方向または遠ざかる方向に調整可能である。なお、梃子部40に設けられる、ネジ45が挿入される穴(不図示)が、長穴であってもよい。
【0046】
ネジ45でカウンターウェイト41を梃子部40に固定することは必須ではない。例えば、カウンターウェイト41は、梃子部40に引っ掛けられるワイヤーを介して、梃子部40に取り付けられてもよい。また、ワイヤーを引っ掛けるに当たり、梃子部40にフックが設けられていてもよい。また、支点位置P1からの距離が異なる複数のフックが設けられてもよい。複数のフックを設けることによって、カウンターウェイト41を取り付ける位置(すなわち、力点位置P2)を調整できる。
【0047】
また、カウンターウェイト41が梃子部40上をスライド移動するように、梃子部40がガイドレールなどの案内部を有していてもよい。
【0048】
図3に示されるように、カウンターウェイト41は、例えば扇形状である。カウンターウェイト41は、支点位置P1から遠い側(図3に示される例では、+Y側)の側部411が弧状(本例では、円弧状)である。カウンターウェイト41は梃子部40とともに、支持シャフト111(支点位置P1)を中心として回転可能である。このため、カウンターウェイト41の側部411を弧状とすることによって、支点位置P1を中心にカウンターウェイト41が回転したときの、カウンターウェイト41の回転半径を小さくすることができる。したがって、カウンターウェイト41の側部411が他の部材(例えば、フレーム10)に接触することを抑制できる。なお、カウンターウェイト41の形状は、扇形状に限定されるものではなく、任意に選択される。
【0049】
ワイヤー42は、レンズユニット2と、梃子部40とを接続する線状部材である。ワイヤー42は、接続部の一例である。ワイヤー42の一端は、移動子232に接続される。ワイヤー42の他端は、梃子部40の作用点位置P3に接続される。作用点位置P3は、力点位置P2よりも支点位置P1に近くに位置する。本例では、作用点位置P3は、支点位置P1と力点位置P2との間に設定されている。滑車43は、移動子232および梃子部40よりも上方に離れて位置する。滑車43は、Y方向に延びる軸を中心として回転可能である。
【0050】
ワイヤー42が滑車43に掛けられることにより、上方から梃子部40にワイヤー42が接続される。これにより、ワイヤー42を介して、レンズユニット2の重量に応じた力が、梃子部40の作用点位置P3に上向きに負荷される。また、作用点位置P3に上向きの力が負荷され、力点位置P2にカウンターウェイト41の重量に応じた下向きの力が負荷されることによって、梃子部40を釣り合わせることができる。
【0051】
結像レンズ5は、対物レンズ22を通過した光を、撮像部6に結像させるためのレンズである。結像レンズ5は、対物レンズ22の下方に位置する。また、結像レンズ5は、フレーム10の第1支持部12に固定されている。したがって、フレーム10に対する結像レンズ5の位置は、一定である。
【0052】
撮像部6は、結像レンズ5により結像された細胞9の像を撮影するカメラである。撮像部6は、結像レンズ5の下方に位置する。また、撮像部6は、フレーム10の第2支持部13に固定されている。したがって、フレーム10に対する撮像部6の位置は、一定である。対物レンズ22、結像レンズ5、および撮像部6は、メインフレーム11の前方において、上下方向に延びる光軸に沿って、一直線上に並んでいる。撮像部6は、CMOSやCCD等の撮像素子を有する。撮像部6は、細胞9の画像を、複数の画素からなる多階調のデジタルデータとして取得する。そして、撮像部6は、取得した画像データを、コンピュータ7へ出力する。
【0053】
コンピュータ7は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を備えた、情報処理装置である。図1中に破線矢印で示したように、コンピュータ7は、駆動機構3および撮像部6と、電気的に接続されている。コンピュータ7には、観察処理を実行するためのコンピュータプログラムが、インストールされている。コンピュータ7は,コンピュータプログラムに従って動作する。これにより、駆動機構3および撮像部6を動作制御する。具体的には、コンピュータ7は、駆動機構3を動作させることにより、レンズユニット2の高さを調整し、対物レンズ22の焦点を細胞9に合わせる。また、コンピュータ7は、撮像部6を動作させることにより、細胞9の撮影を行う。また、コンピュータ7は、撮像部6から出力される画像データに対して、画像処理を行う。これにより、画像データを、細胞9の観察に適した画像データに変換する。
【0054】
以上のように、この観察装置1は、培養液中に浮遊する細胞9の画像を撮影する。その際、対物レンズ22の高さを精度よく変更すべき場合がある。例えば、観察装置1は、対物レンズ22の焦点の上下方向の位置を変更しつつ、複数回の撮影(フォーカスブラケット撮影)を行う場合がある。この場合、撮像部6から出力される複数の画像を合成することにより、高さの異なる複数の細胞9の全てに焦点が合う、いわゆる全焦点画像を生成することができる。本実施形態の観察装置1は、このようなフォーカスブラケット撮影を行う場合でも、ボイスコイルモータ31を用いることにより、対物レンズ22の高さを、迅速かつ精度よく変更できる。
【0055】
図5は、図1に示される梃子部40に負荷される力を概念的に示す図である。図5中、「F1」は、ワイヤー42および滑車43を経由して伝わるレンズユニット2の重力(N)を示す。「F2」は、カウンターウェイト41の重力(N)を示す。「L1」は、支点位置P1(原点)から力F1が作用する作用点位置P3までの距離(m)を示す。「L2」は、支点位置P1(原点)から力F2が作用する力点位置P2までの距離(m)を示す。「θ」は、支点位置P1を中心とする梃子部40の回転角(rad)を示す。
【0056】
図5に示されるように梃子部40が釣り合う場合、次式が成り立つ。
式(1) F1・L1・cosθ=F2・L2・cosθ
【0057】
上記式(1)から、力F2は、次式で表される。
式(2) F2=F1・(L1/L2)
【0058】
ここで、距離L2は、距離L1よりも大きくなるように設定されている(L1<L2)。このため、式(2)によると、釣り合いがとれている場合、力F2は、力F1よりも小さくなる。すなわち、カウンターウェイト41の重量に応じた力F2よりも大きい力で、レンズユニット2を上方に付勢できる。また、式(2)の式から明らかなように、梃子部40の回転角度θにかかわらず、一定の力でレンズユニット2を上方に付勢できる。
【0059】
カウンターウェイト41は、支点位置P1から離れるほど、幅(支点位置P1から力点位置P2に向かう方向と交差する方向(好ましくは、直交する方向)の寸法)が大きくなっている。本例のように、カウンターウェイト41を扇形状とした場合、支点位置P1から離れるほど幅が一定割合で大きくなる。このように、支点位置P1から離れるほどカウンターウェイト41の幅を大きくすることによって、カウンターウェイト41の重心を、支点位置P1から離れる方向に偏在させることができる。これにより、カウンターウェイト41によるモーメントを大きくすることができるため、カウンターウェイト41を軽量化できる。なお、カウンターウェイト41の幅を、一定割合で大きくすることは必須ではない。例えば、カウンターウェイト41の幅を、ステップ状に大きくしてもよい。
【0060】
上述したように、ネジ45が挿入される挿入穴410を長穴にすることにより、カウンターウェイト41の位置を調整することが可能である。すなわち、上記式(1)において、支点位置P1から力点位置P2までの距離L2を調整することが可能である。ここで、挿入穴410の調整代をαとした場合、式(1)は、次式のように変形される。
式(3) F1・L1・cosθ=F2(L2+α)・cosθ
=F2・L2・cosθ+F2・α・cosθ
【0061】
上記式(3)が示すように、調整代αを設けることによって、力点位置P2におけるモーメントを、F2・α・cosθの分だけ調整できる。これにより、カウンターウェイト41によってレンズユニット2を引き上げる力を微調整できる。
【0062】
<効果>
以上のように、観察装置1によれば、てこの原理に基づいて、カウンターウェイト41の重さよりも大きい力F1で、レンズユニット2を上方へ付勢できる。このため、カウンターウェイト41を軽量化できる。また、カウンターウェイト41を軽量化できるため、付勢機構4を軽量化および小型化できる。したがって、観察装置1を軽量化および小型化できる。
【0063】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0064】
上記実施形態の観察装置1は、観察対象物である細胞9を、下方から観察するものであった。しかしながら、観察装置1は、観察対象物である細胞9を、上方から観察するものであってもよい。すなわち、観察装置1は、細胞9を保持する試料容器90の上方に配置されていてもよい。その場合、レンズユニット2の上側に結像レンズ5が配置され、そのさらに上側に撮像部6が配置されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態の観察装置1では、ボイスコイルモータ31が、レンズユニット2の下側に配置されている。すなわち、上記実施形態のボイスコイルモータ31は、レンズユニット2を上昇させるときにはレンズユニット2を上向きに押し、レンズユニット2を下降させるときにはレンズユニット2を下向きに引く。しかしながら、ボイスコイルモータ31は、レンズユニット2の上側に配置されていてもよい。すなわち、ボイスコイルモータ31は、レンズユニット2を上昇させるときにはレンズユニット2を上向きに引き、レンズユニット2を下降させるときにはレンズユニット2を下向きに押すものであってもよい。
【0066】
また、上記実施形態の観察装置1は、観察対象物である細胞9を撮影する撮像部6を備えている。しかしながら、観察装置1は、撮像部6を備えていなくてもよい。観察装置1は、結像レンズ5により結像される細胞9の像を、ユーザが目視により観察するものであってもよい。
【0067】
また、観察装置1は、細胞9以外の生体試料を観察するためのものであってもよい。また、観察装置1は、生体試料以外の観察対象物を観察するものであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態の観察装置1は、梃子部40とカウンターウェイト41とを別体として備えている。しかしながら、カウンターウェイト41は、梃子部40と一体に形成されていてもよい。例えば、梃子部40において、力点位置P2に相当する力点部分の幅を、支点位置P1の部分の幅よりも大きくすることによって、力点部分をカウンターウェイト41として機能させてもよい。
【0069】
また、上記実施形態の観察装置1では、支点位置P1が梃子部40の一端に設定されており、当該支点位置P1に対して、作用点位置P3が力点位置P2と同じ側に設定されている。しかしながら、支点位置P1、力点位置P2および作用点位置P3の位置関係は、これに限定されるものではない。この変形例について図6を参照しつつ説明する。
【0070】
図6は、変形例に係る梃子部40aに負荷される力を概念的に示す図である。図6中、「L1a」は、支点位置P1(原点)から力F1が作用する作用点位置P3までの距離(m)を示す。「L2a」は、支点位置P1(原点)から力F2が作用する力点位置P2までの距離(m)を示す。図6に示される例では、支点位置P1に対して、作用点位置P3が力点位置P2とは反対側に設定されている。すなわち、支点位置P1が力点位置P2と作用点位置P3との間に設定されている。
【0071】
図6に示される変形例の場合、距離L2aは、距離L1aよりも大きくなるように設定される。また、作用点位置P3に負荷される力F1、および、力点位置P2に負荷される力F2は、同じ向き(ここでは、下向き)となるように、レンズユニット2およびカウンターウェイト41が梃子部40aにそれぞれ接続されるとよい。例えば、力F1を下向きとする場合には、梃子部40aをレンズユニット2の移動子232よりも上側に配置し、移動子232が梃子部40aに吊り下げられるとよい。
【0072】
図6に示される変形例の場合であっても、距離L2aを距離L1aよりも大きくすることによって、カウンターウェイト41の重量に応じた力F2よりも大きい力で、レンズユニット2を上向きに付勢できる。したがって、カウンターウェイト41を軽量化できる。
【0073】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 観察装置
2 レンズユニット
3 駆動機構
4 付勢機構
5 結像レンズ
11 メインフレーム(フレーム)
20 レンズユニット
22 対物レンズ
31 ボイスコイルモータ
40,40a 梃子部
41 カウンターウェイト
42 ワイヤー
43 滑車
45 ネジ
410 挿入穴
411 側部
P1 支点位置
P2 力点位置
P3 作用点位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6