(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141754
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20230928BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230928BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20230928BHJP
G06F 30/10 20200101ALN20230928BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
G01B21/00 Z
G06F30/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048234
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 敦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】東方 良介
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】上村 恭
【テーマコード(参考)】
2F069
3C100
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
2F069AA31
2F069AA61
2F069AA96
3C100AA43
3C100AA65
3C100AA70
3C100BB06
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB19
5B146AA17
5B146DE12
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】3次元モデルデータに含まれる製品製造情報を用いて成形品の検査を行う際に、検査対象の製品製造情報のそれぞれに対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを検査可能な測定箇所を設定可能とする。
【解決手段】制御部34は、成形製品を製造する際に必要となるPMIが含まれる3次元モデルデータから、検査が必要なPMIを検査対象として抽出する。そして、制御部34は、抽出した検査対象のPMIに関する情報に応じて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び測定箇所の数を設定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
成形製品を製造する際に必要となる製品製造情報が含まれる3次元モデルデータから、検査が必要な製品製造情報を検査対象として抽出し、
抽出した検査対象の製品製造情報に関する情報に応じて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する
情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、検査対象の製品製造情報の種類、検査対象部位の形状・材料・色、基準寸法の値の大きさ、要求精度および加工方法のうちの少なくともいずれか1つ以上の情報を用いて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、1つの検査対象の製品製造情報に対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを判断するのに適する数の測定箇所を決定する請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、抽出した検査対象の製品製造情報に関する情報に応じて、当該製品製造情報を検査する際に使用すべき検査方法を決定し、
決定した検査方法に応じた測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する請求項1から3のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、検査対象の製品製造情報の種類、検査対象部位の形状・材料・色、基準寸法の値の大きさ、要求精度および加工方法のうちのいずれか1つの情報、又は少なくとも2つ以上の情報の組み合わせにより、抽出した製品製造情報を検査する際に使用すべき検査方法を決定する請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、サイズ公差を定義する製品製造情報を検査対象として抽出した場合、加工方法による指示の情報を用いて測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、幾何公差を定義する製品製造情報を検査対象として抽出した場合、当該幾何公差に関連する理論寸法が設定された箇所を測定箇所として設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、検査対象部位の形体の長さ又は面積に応じて、測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、検査対象部位の形体の長さが長くなるほど又は面積が広くなるほど、測定箇所の数が多くなるように設定する請求項8記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、検査対象部位の形体の種類に応じて、測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項11】
成形製品を製造する際に必要となる製品製造情報が含まれる3次元モデルデータから、検査が必要な製品製造情報を検査対象として抽出するステップと、
抽出した検査対象の製品製造情報に関する情報に応じて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び当該測定箇所の数を設定するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、寸法値と公差とを正確に取得する疑似寸法取得装置が開示されている。
【0003】
非特許文献1には、図面(DXF/DWG、PDF、画像)から検査表を自動生成する検査表システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アンドール株式会社、製品カタログ、「検査表システム」、[online]、[令和3年12月10日検索]、インターネット「https://www.andor.co.jp/products/inspection/index.html」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、3次元CAD(Computer-Aided Design)上において、成形製品の形状を示す製品形状情報だけでなく、基準寸法(図示サイズとも呼ぶ。)や公差等の規格情報を製品製造情報(以下、PMI(Product Manufacturing Information)と略す。)として3次元モデルデータに含めるようになっている。このようにすることにより、3次元モデルを表示する際に、3次元モデル上にPMIを3次元アノテーションとして表示することができ、2次元図面がなくても必要な基準寸法および公差などの情報を把握することができる。
【0007】
そして、このような3次元モデルデータにより現された成形品が正しい状態で成形されているか否かを検査する場合、3次元モデルデータに含まれるPMIのうち、検査対象とするPMIをユーザが選択して、選択されたPMIを検査対象のPMIとして成形品の各検査対象部位の寸法を測定することが行われる。
【0008】
しかし、1つのPMIにより定義される寸法であっても成形品の検査対象部位の特性によっては1つの測定箇所のみを測定したのでは、正しい検査を行うことができない場合もある。また、逆に1つのPMIに定義される寸法に対して複数の測定箇所において測定したのでは、成形品が正しく成形されているにもかかわらず検査で不合格になってしまうような場合もある。
【0009】
本発明の目的は、3次元モデルデータに含まれる製品製造情報を用いて成形品の検査を行う際に、検査対象の製品製造情報のそれぞれに対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを検査可能な測定箇所を設定することが可能な情報処理装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様の情報処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、成形製品を製造する際に必要となる製品製造情報が含まれる3次元モデルデータから、検査が必要な製品製造情報を検査対象として抽出し、
抽出した検査対象の製品製造情報に関する情報に応じて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する。
【0011】
本発明の第2態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、検査対象の製品製造情報の種類、検査対象部位の形状・材料・色、基準寸法の値の大きさ、要求精度および加工方法のうちの少なくともいずれか1つ以上の情報を用いて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する。
【0012】
本発明の第3態様の情報処理装置は、第1態様又は第2態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、1つの検査対象の製品製造情報に対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを判断するのに適する数の測定箇所を決定する。
【0013】
本発明の第4態様の情報処理装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、抽出した検査対象の製品製造情報に関する情報に応じて、当該製品製造情報を検査する際に使用すべき検査方法を決定し、
決定した検査方法に応じた測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する。
【0014】
本発明の第5態様の情報処理装置は、第4態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、検査対象の製品製造情報の種類、検査対象部位の形状・材料・色、基準寸法の値の大きさ、要求精度および加工方法のうちのいずれか1つの情報、又は少なくとも2つ以上の情報の組み合わせにより、抽出した製品製造情報を検査する際に使用すべき検査方法を決定する。
【0015】
本発明の第6態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、サイズ公差を定義する製品製造情報を検査対象として抽出した場合、加工方法による指示の情報を用いて測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する。
【0016】
本発明の第7態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、幾何公差を定義する製品製造情報を検査対象として抽出した場合、当該幾何公差に関連する理論寸法が設定された箇所を測定箇所として設定する。
【0017】
本発明の第8態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、検査対象部位の形体の長さ又は面積に応じて、測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する。
【0018】
本発明の第9態様の情報処理装置は、第8態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、検査対象部位の形体の長さが長くなるほど又は面積が広くなるほど、測定箇所の数が多くなるように設定する。
【0019】
本発明の第10態様の情報処理装置は、第1態様の情報処理装置において、前記プロセッサは、検査対象部位の形体の種類に応じて、測定箇所及び当該測定箇所の数を設定する。
【0020】
本発明の第11態様のプログラムは、成形製品を製造する際に必要となる製品製造情報が含まれる3次元モデルデータから、検査が必要な製品製造情報を検査対象として抽出するステップと、
抽出した検査対象の製品製造情報に関する情報に応じて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び当該測定箇所の数を設定するステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1態様の情報処理装置によれば、3次元モデルデータに含まれる製品製造情報を用いて成形品の検査を行う際に、検査対象の製品製造情報のそれぞれに対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを検査可能な測定箇所を設定することができる。
【0022】
本発明の第2態様の情報処理装置によれば、検査対象の製品製造情報の属性に応じた測定箇所を設定することができる。
【0023】
本発明の第3態様の情報処理装置によれば、検査対象の製品製造情報の属性に応じた数の測定箇所を設定することができる。
【0024】
本発明の第4態様の情報処理装置によれば、使用すべき検査方法を自動的に決定して、決定した検査方法に応じた測定箇所を設定することができる。
【0025】
本発明の第5態様の情報処理装置によれば、検査対象の製品製造情報の属性に応じた測定箇所を設定することができる。
【0026】
本発明の第6態様の情報処理装置によれば、加工方法に適した測定箇所を設定することができる。
【0027】
本発明の第7態様の情報処理装置によれば、理論寸法が設定された箇所の寸法を検査対象とすることができる。
【0028】
本発明の第8態様の情報処理装置によれば、検査対象の部位の特徴に応じた測定箇所を設定することができる。
【0029】
本発明の第9態様の情報処理装置によれば、検査対象の部位の形体が長い場合、又は面積が広い場合に多くの設定箇所を設定することができる。
【0030】
本発明の第10態様の情報処理装置によれば、検査対象の部位の種類に応じた数の設定箇所を設定することができる。
【0031】
本発明の第11態様のプログラムによれば、3次元モデルデータに含まれる製品製造情報を用いて成形品の検査を行う際に、検査対象の製品製造情報のそれぞれに対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを検査可能な測定箇所を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態の図面データ処理システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】PMIを含んだ3次元モデルデータの一例を示す図である。
【
図3】3次元モデルデータから検査規格を抽出して生成した検査表の一例である。
【
図4】
図3に示した検査表において検査方法として示した使用する検査機器の略称の一覧表である
【
図5】3次元モデル中における図示例を示す図(
図5(A))、及び抜き勾配不可の指示がされている場合の測定場所を示す図(
図5(B))である。
【
図6】抜き勾配不可の指示がされていない場合において、ある箇所にPLの位置が指定されている際の適切な測定箇所を示す図(
図6(A))、及び別の箇所にPLの位置が指定されている際の適切な測定箇所を示す図(
図6(B))である。
【
図7】本発明の一実施形態における端末装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の一実施形態における端末装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】3次元モデルデータから検査表を自動生成する際の動作の概略を説明するためのフローチャートである。
【
図10】検査方法を決定する際の決定基準例を示す図である。
【
図11】検査方法を決定する際の決定基準例を示す図である。
【
図12】
図10、
図11に示した決定基準を用いて検査方法を決定する際の処理の一部を説明するためのフローチャートである。
【
図13】2つの検査対象面の法線が対向している様子を示す図である。
【
図14】検査対象部位が外側の形状である場合の具体例を示す図である。
【
図15】各検査規格に対する検査方法が自動的に決定されることによって、検査表における検査方法の欄が埋まって行く様子を示す図である。
【
図16】凹部62を有する形状の部品61を示す図である。
【
図17】
図16に示す部品61において、円状の凹部62における板厚に対して2±0.3というサイズ公差が規定されていることを示す図である。
【
図18】測定箇所及び測定箇所の数を設定する際の設定基準例を示す図である。
【
図19】検査対象の基準値の大きさに基づいて測定箇所の数を設定する場合の3次元モデルデータの一例を示す図である。
【
図20】検査対象の基準値の大きさに基づいて測定箇所の数を設定する場合の検査表における1行の検査行に3行を追加して合計4行に展開する様子を示す図である。
【
図21】検査対象箇所の形状が円の場合に測定箇所の数を設定する場合の3次元モデルデータの一例を示す図である。
【
図22】検査対象箇所の形状が円の場合の検査表における1行の検査行に3行を追加して合計4行に展開する様子を示す図である。
【
図23】抜き勾配不可の指示に基づいて測定箇所及び測定箇所の数を設定する場合の3次元モデルデータの一例を示す図である。
【
図24】抜き勾配不可の指示に基づいて測定箇所及び測定箇所の数を設定する場合の検査表における1行の検査行にさらに1行を追加して合計2行に展開する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の一実施形態の図面データ処理システムのシステム構成を示す図である。
【0035】
本発明の一実施形態の図面データ処理システムは、
図1に示されるように、ネットワーク30により相互に接続された複数の端末装置10、および図面データ管理サーバ20により構成される。図面データ管理サーバ20は、各種製品を設計する際の部品図面及び製品図面等の図面データを管理している。端末装置10は、図面データ管理サーバ20に管理されている図面データをダウンロードして表示させたり、ダウンロードした図面データの修正、変更等の各種作業を行って図面データ管理サーバ20にアップロードしたりすることができる機能を有する情報処理装置である。
【0036】
ここで、図面データ管理サーバ20において管理されている図面データは、例えば、成形製品の形状を示す製品形状情報だけでなく、基準寸法や公差等の規格情報をPMIとして含めるようにした3次元モデルデータである。
【0037】
このようなPMIを含んだ3次元モデルデータの一例を
図2に示す。
図2を参照すると、サイズ公差、幾何公差、理論的に正しい寸法(Theoretically Exact Dimension:以下理論寸法と略す。)等の様々なPMIが3次元モデル上に3次元アノテーションとして表示されているのが分かる。
【0038】
そして、このような3次元モデルデータにより現された成形品が正しい状態で成形されているか否かを検査する場合、3次元モデルデータに含まれるPMIのうち、検査対象とするPMIをユーザが選択して、選択されたPMIを検査対象のPMIとして成形品の各検査対象部位の寸法を測定することが行われる。
【0039】
そして、近年では3次元モデルデータから、寸法、公差等の情報を検査規格として自動的に抽出して検査表を作成することが行われている。
【0040】
このようにして生成される検査表の一例を
図3に示す。
図3に示した検査表では、検査番号、注記、基準寸法、公差上限、公差下限、検査結果の記入欄及び検査方法の項目が、3次元モデルデータから抽出された検査規格毎に記載されているのが分かる。
【0041】
なお、
図3に示した検査表において検査方法として示した使用する検査機器の略称の一覧表を
図4に示す。検査方法において略称として示したCMM(Coordinate Measuring Machine)は3次元測定機を意味し、OCはビジョン測定システム(Vision Measuring System)を意味する。また、HG(Height Gauge)は高さゲージを意味し、MIC(Micrometer)はマイクロメータを意味する。また、DCは、ノギス(Caliper)を意味し、CG(Checking Gauge)はチェックゲージを意味する。また、PRO(Profile Projector)は投影検査機を意味し、BG(Block Gauge)はブロックゲージを意味する。また、TG(Thickness Gauge)は厚みゲージを意味し、SG(Screw Gauge)はスクリューゲージを意味する。さらに、PG(Pin Gauge)はピンゲージを意味し、LSM(Laser Scan Machine)はレーザスキャン装置を意味する。なお、この略称は以下の説明においても使用するものとする。
【0042】
このように自動的に生成された検査表では、1つのPMIにより定義される検査規格に対しては、1つの測定箇所が設定される。しかし、成形品の検査対象部位の特性によっては1つの測定箇所のみを測定したのでは、正しい検査を行うことができない場合もある。また、逆に1つのPMIに定義される寸法に対して複数の測定箇所において測定したのでは、成形品が正しく成形されているにもかかわらず検査で不合格になってしまうような場合もある。
【0043】
例えば、図面中において抜き勾配不可が指示された箇所は、抜き方向全域の寸法が公差内に収まる範囲での抜き勾配しか認められないため、抜き方向において先端部位と根元部位の少なくとも2箇所の寸法を測定することが必要となる。また、抜き勾配不可が指示されない箇所、つまり抜き勾配が指定の角度以内で材料を減らす方向につけるとした箇所は、抜き勾配が設けられる部位のうちの最も材料が多い部位、つまり最も寸法値が大きな部位が測定箇所として選択される。そして、この抜き方向は金型を分割する位置を示すPL(Parting Line)の位置により変わってくる。つまり、図面中における寸法値を測定すべき測定箇所は、抜き勾配不可が指示されているか否か、及びPLの位置がどこにあるかによって変わってくる。
【0044】
このような加工方法指示による測定箇所の違いについて
図5、
図6を参照して説明する。例えば、
図5(A)に示すような図示が3次元モデル中において行われている場合のCと表記された寸法値を測定する場合の測定箇所について説明する。もし、この部位に抜き勾配不可の指示がされている場合には、
図5(B)に示すように、抜き方向に対して先端部位と根元部位の少なくとも2箇所の測定箇所51、52が必要となる。
【0045】
これに対して、この部位に抜き勾配不可の指示がされていない場合における適切な測定箇所を
図6に示す。
図6(A)に示すような位置にPLが設定されている場合には、抜き方向の根元部位の測定箇所53を測定することが必要となる。また、
図6(B)に示すような位置にPLが設定されている場合には、抜き方向の根元部位の測定箇所54を測定することが必要となる。
【0046】
このように抜き勾配を考慮した測定箇所の設定が必要な理由について具体的に説明する。例えば、高さ5mm、抜き勾配が1度の部位を測定対象とした場合、勾配の先端部位と根元部位では下記のような寸法差が発生する。
【0047】
寸法差=5(mm)×tan(1°)≒0.087(mm)
【0048】
具体的には、先端部位と根元部位における寸法差は約0.087(mm)となり、先端部位と根元部位で0.1mm近く寸法が変わってくることになる。このような寸法差は、設定されている公差によっては無視できない大きさであり、測定箇所の設定を誤ると、成形品が正常に作成されているにもかかわらず検査で不合格になってしまうことにもなる。
【0049】
そこで、本実施形態の図面データ処理システムでは、3次元モデルデータに含まれるPMIを用いて成形品の検査を行う際に、検査対象部位のそれぞれに対して、検査対象部位の特性に応じた適切な測定箇所および測定箇所の数を設定することにより、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを適切に検査可能としている。
【0050】
なお、検査対象部位の寸法を測定する際には、ノギスによる測定、CMMによる測定、ピンゲージによる測定、ブロックゲージによる測定等の様々な検査方法が存在する。そのため、検査対象のそれぞれのPMIに対して、要求精度、検査対象部位の形状等の応じた適切な検査方法を選択して検査する必要がある。
【0051】
しかし、検査対象部位のそれぞれに対して、どの検査方法を選択するのかは慣れない者にとっては選択できない場合もある。また、検査方法を決定する人によって、選択する検査方法及び検査結果(合否)がばらつくという問題もある。さらに、各PMIに対して人手により検査方法を決定したのでは手間がかかるという問題もある。
【0052】
そこで、本実施形態の図面データ処理システムでは、下記において説明するような制御を行うことにより、3次元モデルデータに含まれるPMIを用いて成形品の検査を行う際に、検査対象のPMIのそれぞれに対して、使用すべき検査方法を自動的に決定するようにしている。
【0053】
次に、本実施形態の図面データ処理システムにおける端末装置10のハードウェア構成を
図7に示す。
【0054】
端末装置10は、
図7に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)14、液晶ディスプレイ等の表示装置15と、タッチパネル又はキーボードを含む操作入力装置16を有する。これらの構成要素は、制御バス17を介して互いに接続されている。
【0055】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、端末装置10の動作を制御するプロセッサである。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、これに限定されるものではない。この制御プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、このプログラムをCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、この制御プログラムを、通信インタフェース14に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしてもよい。
【0056】
図8は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される端末装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0057】
本実施形態の端末装置10は、
図8に示されるように、操作受付部31と、表示部32と、データ送受信部33と、制御部34と、データ記憶部35とを備えている。
【0058】
データ送受信部33は、図面データ管理サーバ20等の外部の装置との間でデータの送受信を行う。
【0059】
表示部32は、制御部34により制御され、ユーザに各種情報を表示する。操作受付部31は、ユーザにより行われた各種操作を受け付ける。
【0060】
制御部34は、データ送受信部33を介して図面データ管理サーバ20から図面データを受信してデータ記憶部35に記憶させ、データ記憶部35に記憶した図面データを表示部32に表示する。また、制御部34は、操作受付部31により受け付けられたユーザの操作に基づいて、データ記憶部35に記憶された図面データに基づいて、図面データ中のサイズ公差、幾何公差等の情報を検査規格として抽出して検査表を生成する。
【0061】
先ず、制御部34は、成形製品を製造する際に必要となるPMIが含まれる3次元モデルデータから、検査が必要なPMIを検査対象として抽出する。
【0062】
そして、制御部34は、抽出した検査対象のPMIに関する情報に応じて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び測定箇所の数を設定する。
【0063】
具体的には、制御部34は、検査対象のPMIの種類、検査対象部位の形状・材料・色、基準寸法の値の大きさ、要求精度および加工方法のうちの少なくともいずれか1つ以上の情報を用いて、検査対象部位を測定すべき測定箇所及び測定箇所の数を設定する。
【0064】
なお、制御部34は、1つの検査対象のPMIに対して、検査対象部位が正しい状態で成形されているか否かを判断するのに適する数の測定箇所を決定する。
【0065】
ここで、制御部34は、サイズ公差を定義するPMIを検査対象として抽出した場合、加工方法による指示の情報を用いて測定箇所及び測定箇所の数を設定する。
【0066】
さらに、制御部34は、幾何公差を定義するPMIを検査対象として抽出した場合、この幾何公差に関連する理論寸法が設定された箇所を測定箇所として設定する。
【0067】
また、制御部34は、検査対象部位の形体の長さ又は面積に応じて、測定箇所及び測定箇所の数を設定する。
【0068】
具体的には、制御部34は、検査対象部位の形体の長さが長くなるほど又は面積が広くなるほど、測定箇所の数が多くなるように設定する。
【0069】
さらに、制御部34は、検査対象部位の形体の種類に応じて、例えば検査対象部位が穴であるのか面であるのかに応じて、測定箇所及び測定箇所の数を設定する。
【0070】
また、制御部34は、3次元モデルデータから抽出した検査対象のPMIに関する情報に応じて、そのPMIを検査する際に使用すべき検査方法を決定する。ここで、検査方法とは、どのような測定器具、測定装置、測定器具又は検査器具を用いて、設定された測定箇所の測定又は検査を行うべきであるかを示すものである。
【0071】
なお、検査方法によっても適切な測定箇所及び測定箇所の数は変化するため、制御部34は、検査方法を決定した後に、決定した検査方法に応じた測定箇所及び測定箇所の数を設定するようにしてもよい。
【0072】
具体的には、制御部34は、検査対象のPMIの種類、検査対象部位の形状・材料・色、基準寸法の値の大きさ、要求精度および加工方法のうちのいずれか1つの情報、又は少なくとも2つ以上の情報の組み合わせにより、抽出したPMIを検査する際に使用すべき検査方法を決定する。
【0073】
制御部34は、測定精度が異なる複数の測定機器の中から、検査対象のPMIを検査する際に要求される要件を満たす測定機器を選択して、選択した測定機器を用いる検査方法を、抽出したPMIを検査する際に使用すべき検査方法として決定する。
【0074】
また、制御部34は、予め設定された段階的に構成された決定基準に基づいて、検査対象のPMIに関する情報から、このPMIを検査する際に使用すべき検査方法を決定する。
【0075】
例えば、制御部34は、検査対象のPMIの種類を第1の決定基準、検査対象部位の形状を第2の決定基準、基準寸法の値の大きさ及び公差の広さを第3の決定基準として、第1の決定基準、第2の決定基準及び第3の決定基準の順番でPMIを検査する際に使用すべき検査方法を段階的に決定する。
【0076】
ここで、制御部34は、第1の決定基準、第2の決定基準及び第3の決定基準の順番でPMIを検査する際に使用すべき検査方法の範囲を狭めていき、使用可能な検査方法が1つになった場合、その検査方法を、PMIを検査する際に使用すべき検査方法として決定する。
【0077】
なお、制御部34は、検査対象部位の寸法を測定する際の測定し易さを示す測定効率を第4の決定基準として、第3の決定基準の次に第4の決定基準を用いて、PMIを検査する際に使用すべき検査方法を段階的に決定するようにしてもよい。
【0078】
さらに、制御部34は、第4の決定基準を用いて検査方法を決定する際に、異なる検査対象部位の寸法を連続して測定する際の検査方法の切り替え回数が少なくなるような検査方法の選択を測定効率がよいと判断するようにしてもよい。
【0079】
次に、本実施形態の図面データ処理システムにおける端末装置10の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
【0080】
先ず、本実施形態の図面データ処理システムの端末装置10において3次元モデルデータから検査表を自動生成する際の動作の概略について、
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0081】
なお、本実施形態においては、端末装置10において検査表を作成する場合について説明するが、図面データ管理サーバ20において3次元モデルデータから検査表を作成するようにしてもよい。
【0082】
まず、制御部34は、ステップS101において、検査表を作成する対象の3次元モデルデータから検査対象とすべきサイズ公差及び幾何公差を検査規格として抽出する。次に、制御部34は、ステップS102において、抽出したそれぞれの検査規格に対して、検査番号を付与する。
【0083】
そして、制御部34は、ステップS103において、抽出したそれぞれの検査規格に対して、その検査規格における寸法値を適切に測定又は検査することが可能な検査方法を決定する。この検査方法を決定する際の具体的な決定基準の具体例については後述する。
【0084】
次に、制御部34は、ステップS104において、3次元モデルデータから抽出したそれぞれの検査規格に対して、その検査規格における寸法値を適切に測定又は検査することができる測定箇所および測定箇所の数を設定する。この測定箇所および測定箇所の数を設定する際の具体的な設定基準の具体例についても後述する。
【0085】
そして、制御部34は、ステップS105において、3次元モデルデータから抽出した1つの検査規格に対して、1つの検査行を生成する。この検査行とは、検査表において1つの測定箇所又は検査箇所に対応して設けられる行を意味する。具体的には、検査行とは、
図3に示した検査表例において、各基準寸法に対して検査結果を記入するように設けられている各行を意味する。
【0086】
次に、制御部34は、ステップS104において複数の測定箇所が設定された検査規格に対して、ステップS106において、1行の検査行を複数行に展開する。例えば、ステップS104においてある1つの検査規格に対して4箇所の測定箇所が必要であると判定した場合、その検査規格に対して3行分の検査行を追加して全部で4行とする。
【0087】
最後に、制御部34は、ステップS107において、生成された検査表を所定の書式に出力する。
【0088】
なお、本実施形態の図面データ処理システムでは、ステップS103、S104、S106における処理が特徴的な処理であるため、以下においてはその処理の詳細を中心として説明する。
【0089】
まず、
図9のフローチャートのステップS103において説明した、検査方法を決定する際の決定基準例を
図10、
図11に示す。なお、
図10、
図11に示した決定基準例はあくまでも一例であり、また一部のみを示した抜粋である。
【0090】
検査方法を決定する際の処理の流れとしては、主として下記のような判定基準で行われる。
【0091】
A:検査規格の種類による検査方法の選択
(1)検査規格の種類がサイズ公差なのか幾何公差なのかで処理が分かれる。
【0092】
(2)検査規格の種類がサイズ公差の場合、さらに検査規格の種類が、長さ寸法、径寸法、角度寸法、面取り、ねじなのかで処理を分ける。
【0093】
(3)検査規格の種類がサイズ公差、かつ、長さ寸法の場合、そのサイズ公差がデータム基準の値であるのか、データム基準ではないローカル寸法であるのかにより処理が分かれる。データム基準の値である場合には、3次元測定機(略称はCMM)による測定を、使用すべき検査方法として決定する。
【0094】
(4)なお、そのサイズ公差がローカル寸法である場合には、測定対象部位の形状、基準寸法の値の大きさ、公差の広さを用いて検査方法を決定する。
【0095】
(5)検査規格の種類が幾何公差の場合には、さらに幾何公差の種類、その幾何公差が真直度なのか、平面度なのか、輪郭度なのか等に基づいて検査方法を選択する。例えば、幾何公差の種類が輪郭度の場合には、3次元測定機による測定を、使用すべき検査方法として決定する。
【0096】
B:検査規格の種類による検査方法の選択
(1)先ずは、測定対象部位の形状が凸形状のような外側なのか、穴のような内側なのかにより処理が分かれる。つまり、測定対象部位が外側の寸法の場合には、マイクロメータ、ノギス等の測定対象部位を挟み込んで測定可能な測定器具を用いる検査方法を選択する。
【0097】
(2)なお、測定対象部位が外側の寸法の場合でも、測定面が対向していないと挟み込んで測定することはできない。つまり、2つの測定面が同じ向きであったり、いずれか一方の測定面が他方の測定面に対して傾いていたりする場合には挟み込んだ測定は不可能である。さらに、2つの測定面が対向していて挟み込んだ測定が可能であっても基準寸法が例えば、100mmを超えるような場合には、マイクロメータによる測定は適していないと判断して他の検査方法を選択する。
【0098】
C:基準寸法と公差による検査方法の選択
(1)それぞれの測定器具、測定装置等には測定可能な測定範囲が存在する。そのため、基準寸法が、測定器具および測定装置等における測定範囲内か否かという判定基準により検査方法を選択する。また、ブロックゲージ等の各種ゲージ及び、測定用のプローブが測定対象部位に挿入可能か否かという判定基準も用いて検査方法を選択する。
【0099】
(2)さらに、それぞれの測定器具、測定装置には測定可能な寸法精度が設定されている。そのため、測定精度があまり高くない測定器具等を使用したのでは、あまり狭い公差の寸法値の測定には適しない場合がある。そのため、公差の広さに応じて適切な測定器具等を使用した検査方法を決定する。例えば、測定精度が高い順に測定器具を並べると、ピンゲージ>マイクロメータ>ノギスという順番となり、公差が狭い場合には、より測定精度の高い測定器具を使用する検査方法を選択する。
【0100】
このように、制御部34は、
図10、
図11に示したような段階的に構成された決定基準に基づいて、検査対象のPMIに関する情報から、このPMIを検査する際に使用すべき検査方法を決定する。つまり、制御部34は、
図10、
図11に示したような決定基準を左から右方向に順に適用していくことにより、使用すべき検査方法を決定することができるようになっている。
【0101】
この
図10、
図11に示した決定基準を用いて検査方法を決定する際の処理の一部について
図12のフローチャートを参照して説明する。
図12のフローチャートは、検査規格の種類がサイズ公差であり、かつ、長さ寸法である場合の判定例となっている。
【0102】
まず、制御部34は、ステップS201において、検査規格の種類がローカル寸法であるか否かを判定する。ステップS201において、検査規格の種類がローカル寸法ではないと判定した場合、つまり、データム基準の寸法であると判定した場合、制御部34は、ステップS217において、検査方法としてCMM(3次元測定機の略)、PRO(投影検査機の略)による検査方法を選択する。
【0103】
そして、ステップS201において、検査規格の種類がローカル寸法であると判定した場合、制御部34は、ステップS202において、この検査規格には接点及び交点のいずれもが含まれないか否かを判定する。ステップS202において、この検査規格には接点及び交点のいずれかが含まれると判定した場合、制御部34は、ステップS203において、この検査規格に接点が含まれるか否かを判定する。
【0104】
ステップS203において、この検査規格には接点が含まれない、つまり交点が含まれると判定した場合、制御部34は、ステップS217において、検査方法としてCMM、PROによる検査方法を選択する。また、ステップS203において、この検査規格には接点が含まれると判定した場合、制御部34は、ステップS216において、この検査規格に対する検査方法を空欄とする。これは、接点の検査方法は多岐にわたり、一意に決定することが困難であるため、空欄とし検査者の判断に任せることとしている。
【0105】
ステップS202において、この検査規格には接点及び交点のいずれも含まれないと判定した場合、制御部34は、ステップS204において、2つの検査対象面の法線が対向しているか否かを判定する。
【0106】
ここで、2つの検査対象面の法線が対向している様子を
図13に示す。
図13に示すように、2つの検査対象面の法線が対向しているということは2つの検査対象面が平行平面であり、検査対象部位の形状が穴であることを意味している。
【0107】
そして、ステップS204において、2つの検査対象面の法線が対向していると判定した場合、つまり検査対象部位の形状が穴であると判定した場合、制御部34は、ステップS210において、公差が0.2mm未満であるか否かを判定する。
【0108】
ステップS210において、公差が0.2mm未満であると判定した場合、制御部34は、ステップS213において、BG(ブロックゲージの略)による検査方法を選択する。なお、検査対象部位の穴の寸法が、BGが入らないような寸法の場合には、制御部34は、PG(ピンゲージの略)による検査方法を選択する。さらに、検査対象部位の穴の寸法が、PGが入らないような寸法の場合には、制御部34は、DC(ノギスの略)による検査方法を選択する。
【0109】
なお、ステップS210において、公差が0.2mm以上であると判定した場合、制御部34は、ステップS211において、基準寸法が50mm以下であるか否かを判定する。
【0110】
ステップS211において、基準寸法が50mmを超えると判定した場合、制御部34は、ステップS218において、検査方法としてCMMによる検査方法を選択する。
【0111】
ステップS211において、基準寸法が50mm以下であると判定した場合、制御部34は、ステップS212において、公差が0.3mm未満であるか否かを判定する。
【0112】
ステップS212において、公差が0.3mm未満であると判定した場合、制御部34は、ステップS218において、検査方法としてCMMによる検査方法を選択する。
【0113】
ステップS212において、公差が0.3mm以上であると判定した場合、制御部34は、ステップS215において、検査方法としてDCによる検査方法を選択する。
【0114】
なお、ステップS204において、2つの検査対象面の法線が対向していないと判定した場合、つまり検査対象部位が外側の形状であると判定した場合、制御部34は、ステップS205において、2つの検査対象面の法線どうしが外向きであるか否かを判定する。なお、検査対象部位が外側の形状である場合の具体例を
図14に示す。
【0115】
ステップS205において、2つの検査対象面の法線どうしが外向きであると判定した場合、制御部34は、ステップS207において、一方の面の法線の反対側上に他方の面が重なるか否かを判定する。つまり、制御部34は、ステップS207において、2つの検査対象面がずれていないかを判定する。
【0116】
ステップS207において、一方の面の法線の反対側上に他方の面が重なると判定した場合、つまり2つの検査対象面がずれていないと判定した場合、制御部34は、ステップS208において、基準寸法が100mm以下であるか否かを判定する。
【0117】
そして、ステップS208において、基準寸法が100mm以下であると判定した場合、制御部34は、ステップS209において、公差が0.3mm未満であるか否かを判定する。
【0118】
そして、ステップS209において、公差が0.3mm未満であると判定した場合、制御部34は、ステップS214において、検査方法としてMIC(マイクロメータの略)による検査方法を選択する。
【0119】
そして、ステップS208において、基準寸法が100mm以下ではないと判定した場合、及び、ステップS209において、公差が0.3mm未満ではないと判定した場合、制御部34は、ステップS215において、検査方法としてDCによる検査方法を選択する。
【0120】
また、ステップS205において、2つの検査対象面の法線どうしが外向きではないと判定した場合、制御部34は、ステップS206において、2つの検査対象面のエッジが法線方向において重なるか否かを判定する。
【0121】
ステップS206において、2つの検査対象面のエッジが法線方向において重なると判定した場合、制御部34は、ステップS215において、検査方法としてDCによる検査方法を選択する。
【0122】
また、ステップS206において、2つの検査対象面のエッジが法線方向において重ならないと判定した場合、制御部34は、ステップS218において、検査方法としてCMMによる検査方法を選択する。
【0123】
なお、
図10に示した決定基準例、
図12に示したフローチャート、
図14に示した検査対象部位が外側の形状である場合の具体例において、(1)~(4)の判定基準はそれぞれ対応している。
【0124】
最後に、このようにして制御部34が各検査規格に対する検査方法を自動的に決定することによって、検査表における検査方法の欄が埋まって行く様子を
図15に示す。
図15を参照すると、人による操作を必要とせずに、検査表における検査規格毎の検査方法が決定されているのが分かる。
【0125】
なお、制御部34は、検査方法を決定する際に、検査対象の形状、基準寸法値、及び公差等の検査対象箇所の特性だけで検査方法を決定するのではなく、実際に検査対象部位の寸法を測定する際の測定し易さを示す測定効率を基準として、使用すべき検査方法を決定するようにしてもよい。
【0126】
測定する人が測定器具又は測定装置を持ち替えるためには手間がかかる。そのため、例えば、上記のような測定効率以外の基準に基づいて検査方法を決定した場合、CMM→ノギス→CMMという順番で検査すべきとなった場合でも、CMM→CMM→CMMという同じ測定装置で連続して検査を行った方が測定効率は良くなる。このように、制御部34は、測定効率という決定基準を用いて検査方法を決定する際に、異なる検査対象部位の寸法を連続して測定する際の検査方法の切り替え回数が少なくなるような検査方法の選択を測定効率がよいと判断する。
【0127】
また、制御部34は、測定対象部位の寸法を測定する際の周辺形状と測定器具との干渉をどう避けるか、部品切断を必要とすることなく測定対象部位の寸法を測定するためにはどの測定器具を使用したら良いかという判定基準により、使用すべき検査方法を決定するようにしてもよい。
【0128】
具体的には、
図16に示すようなある形状の部品61における凹部62の寸法を測定する場合を用いて説明する。この部品61では、
図17に示すように円状の凹部62における板厚に対して2±0.3というサイズ公差が規定されているものとする。このサイズ公差を測定しようとした場合、上記で説明したような決定基準に基づいて選択される検査方法がノギスによる検査方法であったとする。
【0129】
しかし、ノギスによりある部位の寸法を測定しようとした場合、ノギスのジョウにより測定しようとする部位を挟み込む必要がある。そのため、この凹部62の板厚の寸法をノギスにより測定しようとすると、ノギスのジョウが部品61の凹部62以外の箇所と干渉してしまい、ノギスのジョウを測定しようとする部位に当てることができない。その結果、この部品61の凹部62の板厚を測定しようとした場合、断面線E-Eで示す部分で部品61を切断して測定する必要がある。
【0130】
一方、ノギスより精度の高いマイクロメータは、測定対象の部位を挟み込んで測定することはノギスと同じであるが、形状がいわゆるC文字型であることにより周囲形状と干渉せずに測定することが可能である。そのため、このマイクロメータを用いると、部品61の凹部62以外の箇所との干渉を避けて凹部62の板厚を測定することが可能であり、部品61を切断することなく凹部62の板厚を測定することが可能である。
【0131】
あるいは検査方法としてCMMを用いた検査方法を選択することにより、2つの面の位置を測定して凹部62の板厚を求めることができるため、部品61の切断を必要とすることなく寸法の測定が可能である。このように、検査対象の部位の形状及びその周辺形状と、測定器具又は測定装置とが干渉する場合であって、より高精度の測定器具又は測定装置を用いると干渉せずに測定可能な場合、干渉しない測定器具又は測定装置を用いた検査方法を選択することにより測定効率の良い検査方法の選択が可能となる。
【0132】
次に、
図9のフローチャートのステップS104において説明した、測定箇所及び測定箇所の数を設定する際の設定基準例を
図18に示す。なお、
図18に示した設定基準例はあくまでも一例であり、また一部のみを示した抜粋である。
【0133】
制御部34は、
図18に示した設定基準を、規格の種類、形体、加工方法の順に段階的に判定して、最終的には検査対象の基準寸法等の条件に基づいて測定箇所の数と、測定箇所を設定する。
【0134】
例えば、
図18の設定基準例において、制御部34は、検査規格の種類が「サイズ公差」、「長さ寸法」、「データム基準」であって、加工方法が「射出成形」で「抜き勾配不可」の場合、最低2箇所の測定箇所を設定する。また、制御部34は、抜き方向/長さ寸法方向と直交する長さに応じて、測定箇所を変化させる。なお、制御部34は、抜き方向と長さ寸法の方向が同じ方向の場合、抜き方向の展開はせず、直交する2方向それぞれに対して上記で説明したような判定基準により設定箇所の数を設定する。さらに、制御部34は、位置度も付く場合、位置度の設定箇所の数も同時に追加する。
【0135】
また、
図18の設定基準例において、制御部34は、検査規格の種類が「サイズ公差」、「長さ寸法」、「データム基準」であって、加工方法が「射出成形」で「抜き勾配は所定の角度以下」の場合、抜き方向/長さ寸法方向と直交する長さに応じて、測定箇所を変化させる。なお、制御部34は、抜き方向と長さ寸法の方向が同じ方向の場合、直交する2方向それぞれに対して上記で説明したような判定基準により設定箇所の数を設定する。さらに、制御部34は、測定対象面が円の場合、円の直径が5mm以上の場合には、円の90度毎に測定箇所を設定する。つまり、制御部34は、検査表における1行の検査行を4行に展開する。さらに、制御部34は、位置度も付く場合、位置度の設定箇所の数も同時に追加する。
【0136】
測定箇所及び測定箇所の数を設定する際の処理の流れとしては、例えば、下記のような判定基準で行われる。
【0137】
(1)検査対象箇所の形状が広い、長い場合は測定箇所を増やす。
例えば、検査対象箇所の形状が平面又は円筒面の場合、検査対象となる基準値の長さ又は円弧長によって下記のように測定箇所の数を変化させる。
【0138】
・100mm以下の場合、測定箇所は1箇所のままとする。
・100mmを超えて300mm以下の場合、測定箇所は2箇所とする。(つまり検査行を1行追加して合計2行とする。)
・300mmを超えて500mm以下の場合、測定箇所は3箇所とする。(つまり検査行を2行追加して合計3行とする。)
・500mmを超える場合には、200mm毎にさらに測定箇所は1箇所ずつ増加させる。(つまり検査行は合計4行以上となる。)
【0139】
このように検査対象の基準値の大きさに基づいて測定箇所の数を設定する場合の一例を
図19に示す。
【0140】
図19に示された例では、検査番号26により示された検査対象の基準値が「523.9±0.5」となっていて、図中において太線の点線で示す検査対象の長さと直交する方向が540mmと500mmを超えている。
【0141】
そのため、制御部34は、
図20に示すように、測定箇所の数を4箇所に設定して、検査表における1行の検査行に3行を追加して合計4行に展開する。
【0142】
(2)検査対象箇所の形状が円の場合には、基本的に上下左右の4箇所を基準とする。この場合には、例えば、基準寸法が5mm以上の場合にのみ測定箇所を4箇所として、5mm未満の場合には1箇所のままとするようにしてもよい。
【0143】
このように検査対象箇所の形状が円の場合に測定箇所の数を設定する場合の一例を
図21に示す。
【0144】
図21に示された例では、検査番号50により示された検査対象の測定箇所の形状が円であるため、制御部34は、適切な測定箇所の数は4箇所であると判定して、
図22に示すように、検査表における1行の検査行に3行を追加して合計4行に展開する。
【0145】
(3)検査対象箇所の形状が櫛歯形状のような突き出し形状については、測定箇所の数を突き出し個数と対応した数となるように検査行を追加する。
【0146】
(4)基準寸法に対する公差の割合で測定箇所の数を変更する。
【0147】
例えば、制御部34は、サイズ公差の基準寸法に対する公差の割合が、基準寸法100mmあたりの公差が±0.1mmの割合以下の場合、元の検査行に追加する行の数を2倍とする。
【0148】
(5)抜き勾配不可の場合と抜き勾配は所定の角度以下とで測定箇所及び測定箇所の数を変更する。
【0149】
このように抜き勾配不可の指示の有無に基づいて測定箇所及び測定箇所の数を設定する場合の一例を
図23に示す。
【0150】
図23に示された例では、検査番号8により示された基準寸法が「3+0.014-0」となっていて、加工条件として、射出成形でフラグ(=五角形で囲まれた数字)17により抜き勾配不可が指示されているものとする。
【0151】
そのため、制御部34は、
図18に示した設定基準例を参照して、検査規格の種類が「サイズ公差」、「長さ寸法」、「ローカル寸法」であって、加工方法が「射出成形」で「抜き勾配不可」であり、抜き方向/長さ方向と直交する図示しない長さが4mmと30mm以下であるのでM=1より、適切な測定箇所の数は抜き方向に根元、先端の2箇所であると判定する。その結果、制御部34は、
図24に示されるように、検査表における1行の検査行にさらに1行を追加して合計2行に展開する。
【0152】
(6)輪郭度等の幾何公差の判定元データとなる1つの理論寸法を複数の測定項目として行展開する。ただし、追加行自体は個別判定せずに参考値とする。
【0153】
(7)測定方法が異なる場合に測定箇所の数を変化させる。例えば、円筒穴に対する測定方法がピンゲージを用いる測定方法とした場合には、測定箇所を1箇所設定するが、測定方法がマイクロメータ又はノギスである場合には最低縦横2箇所を測定箇所とする。
【0154】
制御部34は、上記で説明したような様々な設定基準に基づいて、検査対象部位の特性に応じた適切な測定箇所および測定箇所の数を設定する。
【0155】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0156】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0157】
10 端末装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース
15 表示装置
16 操作入力装置
17 制御バス
20 図面データ管理サーバ
30 ネットワーク
31 操作受付部
32 表示部
33 データ送受信部
34 制御部
35 データ記憶部
51~54 測定箇所
61 部品
62 凹部