(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141767
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】異常検知装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048251
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 智宏
(57)【要約】
【課題】微少な処理異常の検知、および、微少な処理異常の検知による装置全体の故障の予兆ができる異常検知装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置160で熱処理される半導体ウェハーWの処理異常を検知する異常検知装置2である。異常検知装置2は、熱処理中の半導体ウェハーWの温度を測定する下部放射温度計20と、下部放射温度計20により測定された温度と相関関係を有する複数の処理情報を取得する処理情報取得部90(各センサー)と、半導体ウェハーWの熱処理を複数のフェーズ(熱処理フェーズF1~7)に区切り、温度および処理情報に基づいて、複数のフェーズ(熱処理フェーズF1~7)のそれぞれ毎に作成された複数の学習モデルに基づいて半導体ウェハーWの処理異常を検知する検知部32cと、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理装置で熱処理される基板の処理異常を検知する異常検知装置であって、
熱処理中の前記基板の温度を測定する温度計と、
前記温度計により測定された温度と相関関係を有する複数の処理情報を取得する処理情報取得部と、
前記基板の熱処理を複数のフェーズに区切り、前記温度および前記処理情報に基づいて、前記複数のフェーズのそれぞれ毎に作成された複数の学習モデルに基づいて前記基板の処理異常を検知する検知部と、
を備える異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置において、
前記熱処理装置は、前記基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内に収容された前記基板に光を照射して前記基板を予備加熱する予備加熱部と、前記基板に光を照射して前記基板を処理温度に到達させる主加熱部と、を備え、
前記複数の処理情報は、前記チャンバー内の石英部品の温度、前記チャンバーの壁面の温度、前記予備加熱部に供給される電力、前記予備加熱部からの光の強度、および、前記チャンバーの内部への処理ガスの供給量からなる群から選択された2以上のパラメータを含む、異常検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異常検知装置おいて、
前記複数のフェーズは、少なくとも、前記予備加熱部により昇温されるフェーズと、前記予備加熱部により前記温度が一定に維持されるフェーズと、前記予備加熱部および前記主加熱部による加熱の終了後に前記基板が降温するフェーズと、を含む、異常検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の異常検知装置において、
前記検知部は前記学習モデルから求められる予想値と前記複数の処理情報に関する実測値とを前記複数のフェーズ毎に比較して処理異常を検知する異常検知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の異常検知装置において、
前記検知部は、前記実測値が前記学習モデルから求められる前記予想値から所定の閾値を超えて乖離しているときに処理異常と判定する異常検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の異常検知装置において、
前記検知部が処理異常を検知したときに警報を発する発報部をさらに備える、異常検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置で熱処理される半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)の処理異常を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理される基板の処理異常を検知する異常検知装置に関して、特許文献1が開示している。特許文献1には、半導体ウェハーの冷却期間中に半導体ウェハーの上面および/または下面の温度を測定することによって、半導体ウェハーの破損を検出する装置が記載されている。この装置は、推定された冷却モデルパラメータの値と半導体ウェハーの温度測定データから取得された値との差によって、半導体ウェハーの破損の検出を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置のように、モデルパラメータの値と実測値との差を比較した上で、その差が閾値の範囲内か否かにより異常検知を行う装置では、変化の微少な処理異常の検知が困難であった。例えば、基板を加熱するための熱源のうちの一つのランプの出力の低下を検知することが困難であった。
【0005】
これに対し、ランプの出力に関しての基準値と実測値との比較での異常検知を行う装置の開発も試みられている。しかしながら、このような装置であっても、基板の温度の数度の変化や、ランプの出力の数%の変化とノイズとの差別化を図ることは困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、微少な処理異常の検知、および、微少な処理異常の検知による装置全体の故障の予兆が可能な異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、熱処理装置で熱処理される基板の処理異常を検知する異常検知装置であって、熱処理中の前記基板の温度を測定する温度計と、前記温度計により測定された温度と相関関係を有する複数の処理情報を取得する処理情報取得部と、前記基板の熱処理を複数のフェーズに区切り、前記温度および前記処理情報に基づいて、前記複数のフェーズのそれぞれ毎に作成された複数の学習モデルに基づいて前記基板の処理異常を検知する検知部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る異常検知装置において、前記熱処理装置は、前記基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内に収容された前記基板に光を照射して前記基板を予備加熱する予備加熱部と、前記基板に光を照射して前記基板を処理温度に到達させる主加熱部と、を備え、前記複数の処理情報は、前記チャンバー内の石英部品の温度、前記チャンバーの壁面の温度、前記予備加熱部に供給される電力、前記予備加熱部からの光の強度、および、前記チャンバーの内部への処理ガスの供給量からなる群から選択された2以上のパラメータを含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2に係る異常検知装置において、前記複数のフェーズは、少なくとも、前記予備加熱部により昇温されるフェーズと、前記予備加熱部により前記温度が一定に維持されるフェーズと、前記予備加熱部および前記主加熱部による加熱の終了後に前記基板が降温するフェーズと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか一つに係る異常検知装置において、前記検知部は前記学習モデルから求められる予想値と前記複数の処理情報に関する実測値とを前記複数のフェーズ毎に比較して処理異常を検知することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項4に係る異常検知装置において、前記検知部は、前記実測値が前記学習モデルから求められる前記予想値から所定の閾値を超えて乖離しているときに処理異常と判定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5に係る異常検知装置において、前記検知部が処理異常を検知したときに警報を発する発報部をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、請求項2、請求項4、および請求項5に記載の発明によれば、複数のフェーズのそれぞれ毎に作成された複数の学習モデルに基づいて基板の処理異常を検知することから、微少な処理異常の検知、および、微少な処理異常の検知による装置全体の故障の予兆ができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、予備加熱部による特徴あるフェーズに区切るので、特徴あるフェーズ毎に学習モデルの作成することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、処理異常を検知したときに警報を発する発報部を備えることから、装置の操作者による処理異常の検知がスムーズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に関する熱処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図7】ハロゲン加熱部における複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】異常検知装置を含む熱処理装置の電気的な構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図9】第1実施形態における学習モデルの作成のときに利用されるフェーズを表す表である。
【
図10】異常検知装置による学習モデル作成の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】異常検知装置による処理異常の検知手順を示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態における学習モデルの作成のときに利用されるフェーズを表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付される図面を参照しながら実施形態について説明する。以下の実施形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0018】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0019】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0020】
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0021】
また、以下に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0022】
また、以下に記載される説明における、相対的または絶対的な位置関係を示す表現、たとえば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」または「同軸」などは、特に断らない限りは、その位置関係を厳密に示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において角度または距離が変位している場合を含むものとする。
【0023】
また、以下に記載される説明において、等しい状態であることを示す表現、たとえば、「同一」、「等しい」、「均一」または「均質」などは、特に断らない限りは、厳密に等しい状態であることを示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において差が生じている場合を含むものとする。
【0024】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0025】
また、以下に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「甲の上面に設けられる乙」と記載される場合、甲と乙との間に別の構成要素「丙」が介在することを妨げるものではない。
【0026】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に関する熱処理装置の異常検知装置について説明する。
【0027】
<熱処理装置160の構成>
図1は、第1実施形態に関する熱処理装置160の構成を概略的に示す断面図である。
【0028】
図1に例が示されるように、本実施形態の熱処理装置160は、基板としての円板形状の半導体ウェハーWに対して光照射を行うことによって、その半導体ウェハーWを加熱する装置である。
【0029】
処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、たとえばφ300mmまたはφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。
【0030】
熱処理装置160は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー161と、主加熱部としての複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、予備加熱部としての複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー161の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。さらに、熱処理装置160は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー161に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3と、を備える。なお、本実施形態においては、制御部3に熱処理装置160の異常を検知する異常検知装置2が含まれる。なお、本実施形態では、ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLを備えているが、ハロゲンランプHLの代わりにアークランプまたは発光ダイオード(Light Emitting Diode、すなわち、LED)が備えられていてもよい。上述の構成により、半導体ウェハーWは、チャンバーに収容された状態で加熱される。
【0031】
複数のフラッシュランプFLは、フラッシュ光を照射することによって半導体ウェハーWを加熱する。また、複数のハロゲンランプHLは、半導体ウェハーWを連続加熱する。
【0032】
また、熱処理装置160は、チャンバー161の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10とを備える。
【0033】
チャンバー161は、チャンバー筐体(チャンバー側部61)の上面に石英製の上側チャンバー窓63が装着されて閉塞されている。
【0034】
チャンバー161の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英によって形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射された光をチャンバー161内に透過する石英窓として機能する。
【0035】
また、チャンバー161の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英によって形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー161内に透過する石英窓として機能する。
【0036】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68および反射リング69は、ともに円環状に形成されている。
【0037】
上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68および反射リング69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。
【0038】
チャンバー161の内側空間、すなわち、上側チャンバー窓63、チャンバー筐体(チャンバー側部61)、反射リング68によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0039】
チャンバー側部61に反射リング68および反射リング69が装着されることによって、チャンバー161の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68および反射リング69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。
【0040】
凹部62は、チャンバー161の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68および反射リング69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(たとえば、ステンレススチール)で形成されている。
【0041】
また、チャンバー筐体(チャンバー側部61)には、チャンバー161に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ162によって開閉可能とされている。搬送開口部66は、凹部62の外周面に連通接続されている。
【0042】
このため、ゲートバルブ162が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ162が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー161内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0043】
また、チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61a,61bが設けられている各部位には上部放射温度計25と下部放射温度計20がそれぞれ取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25に導くための円筒状の孔である。また、貫通孔61bは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61a,61bは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0044】
上部放射温度計25は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め上方に設置され、その半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を受光して上面の温度を測定する。上部放射温度計25に備えられる赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウェハーWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。
【0045】
一方、下部放射温度計20は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め下方に設置され、その半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光して下面の温度を測定する。下部放射温度計20には赤外線センサー24が備えられ、半導体ウェハーWの下面の温度が測定される。また、チャンバー161には、温度センサー91,92,93,94,95が設置される。各温度センサー91,92,93,94,95において、温度センサー91はサセプタ74を、温度センサー92は上側チャンバー窓63を、温度センサー93は下側チャンバー窓64を、温度センサー94はチャンバー内の雰囲気を、温度センサー95はチャンバー161の壁面を、測定する。
【0046】
また、チャンバー161の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー161の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。
【0047】
ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。なお、バルブ84の下流側には流量計98が接続されており、流量計98によりバルブ84を通過する処理ガスの流量が測定される。
【0048】
緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、窒素(N2)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガスを用いることができる(本実施形態では窒素)。
【0049】
一方、チャンバー161の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー161の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気機構190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。
【0050】
なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー161の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気機構190は、熱処理装置160に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置160が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0051】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気機構190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー161内の気体が排気される。
【0052】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英で形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英で形成されている。
【0053】
基台リング71は、円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー161の壁面に支持されることとなる(
図3を参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0054】
サセプタ74は、基台リング71に設けられた4個の連結部72によって下側から支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。
【0055】
サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英で形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は、半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0056】
保持プレート75の上面周縁部には、ガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。たとえば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。
【0057】
ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英で形成される。
【0058】
ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしてもよいし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしてもよい。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしてもよい。
【0059】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の支持ピン77が設けられている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に合計12個の支持ピン77が環状に立設されている。
【0060】
12個の支持ピン77を配置した円の径(対向する支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ210mm~φ280mmである。支持ピン77は、3本以上設けられる。それぞれの支持ピン77は石英で形成されている。
【0061】
複数の支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしてもよいし、保持プレート75と一体に加工するようにしてもよい。
【0062】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー161の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー161に装着される。保持部7がチャンバー161に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0063】
チャンバー161に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー161に装着された保持部7のサセプタ74の上側に水平姿勢で載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の支持ピン77によって支持されて、下側からサセプタ74に支持される。より厳密には、12個の支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面(裏面)に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。
【0064】
12個の支持ピン77の高さ(支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0065】
また、半導体ウェハーWは複数の支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0066】
また、
図2および
図3に示されるように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20が半導体ウェハーWの下面(裏面)から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー筐体(チャンバー側部61)の透明窓21(貫通孔61bに装着される)を介して半導体ウェハーWの下面(裏面)から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。
【0067】
さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0068】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。
【0069】
それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英で形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。
【0070】
水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであってもよいし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであってもよい。
【0071】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置において上昇させると、合計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2および
図3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置において下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。
【0072】
一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー161の外部に排出されるように構成されている。
【0073】
図1に戻り、チャンバー161の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52とを備えて構成される。
【0074】
また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英によって形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー161の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー161の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。ランプ光放射窓53には光量センサー96が取り付けられており、光量センサー96によりフラッシュランプFLから照射される光の量が検出される。
【0075】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面(表面)に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0076】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。
【0077】
キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0078】
このようなフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0079】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板で形成されており、その上面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0080】
チャンバー161の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー161の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。筐体41の上部には光量センサー97が取り付けられており、光量センサー97によりハロゲンランプHLから照射される光の量が検出される。
【0081】
図7は、ハロゲン加熱部4における複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0082】
各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面(表面)に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0083】
また、
図7に示されるように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0084】
また、
図1に示すように、複数のハロゲンランプHLのそれぞれには電力供給部49から電圧が印加されることによって、当該ハロゲンランプHLが発光する。電力供給部49は、制御部3の制御に従って、複数のハロゲンランプHLのそれぞれに供給する電力を個別に調整する。すなわち、電力供給部49は、ハロゲン加熱部4に配置された複数のハロゲンランプHLのそれぞれの発光強度を個別に調整することができる。
【0085】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように合計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0086】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。
【0087】
したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図3)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0088】
また、熱処理装置160は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー161の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー161の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0089】
次に、熱処理装置160における処理動作について説明する。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置160の各動作機構を制御することにより進行する。
【0090】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89が開放されてチャンバー161内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー161内の気体が排気される。これにより、チャンバー161内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0091】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー161内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0092】
続いて、ゲートバルブ162が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー161内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー161には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0093】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0094】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ162によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、被処理面である表面を上面として保持部7に保持される。複数の支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0095】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0096】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定される。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1(
図9参照)に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0097】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、下部放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0098】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0099】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー161内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー161内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0100】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度まで上昇した後、急速に下降する。
【0101】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、下部放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ162により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー161から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0102】
<異常検知装置2の構成>
図8は、異常検知装置2を含む熱処理装置160の電気的な構成を概略的に示す機能ブロック図である。熱処理装置160は、制御部3と、入力部15と、表示部16とを含んでいる。制御部3は、CPU等の演算処理装置を含む。また、制御部3は異常検知装置2を含む。制御部3は、例えばフラッシュ加熱部5やハロゲン加熱部4を制御する。入力部15は、キーボード、ポインティングデバイスおよびタッチパネル等の入力機器を含む。さらに、入力部15は、ホストコンピュータとの通信のための通信モジュールを含む。表示部16は、例えば液晶表示ディスプレイを含み、制御部3の制御下で各種情報を表示する。
【0103】
制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置160における処理が進行する。例えば、制御部3は、ハロゲン加熱部4やフラッシュ加熱部5を制御して半導体ウェハーWを設定された温度に熱処理する。また、制御部3は、記憶部31と、演算部32と、発報部33とを含む。記憶部31は、固体メモリデバイスおよびハードディスクドライブ等の記憶装置を含む。演算部32は、後に詳細に説明する、関係情報分析部32aと、学習モデル作成部32bと、検知部32cと、を備える。学習モデル作成部32bと、検知部32cと、発報部33とは、異常検知装置2に含まれる。関係情報分析部32a、学習モデル作成部32b、検知部32c、および発報部33は、制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。関係情報分析部32a、学習モデル作成部32b、検知部32c、および発報部33の処理内容についてはさらに後述する。
【0104】
再び
図1に戻り、上部放射温度計25は、半導体ウェハーWの上面(表面)の温度を測定する赤外線センサー29を備える。赤外線センサー29は、受光に応答して生じた検出信号を制御部3に送り、制御部3において半導体ウェハーWの上面の温度を算出する。同様に、下部放射温度計20は、半導体ウェハーWの下面(裏面)の温度を測定する赤外線センサー24を備える。赤外線センサー24は、受光に応答して生じた検出信号を制御部3に送り、制御部3において半導体ウェハーWの下面の温度を算出する。
【0105】
熱処理装置160の制御部3は、半導体ウェハーWの温度の他、半導体ウェハーWの温度と相関関係を有する複数の処理情報を取得する。この処理情報の例としては、チャンバー161内の石英部品の温度(例えば、サセプタ74の温度、上側チャンバー窓63の温度、下側チャンバー窓64の温度)、チャンバー161の壁面の温度、ハロゲン加熱部4(または各ハロゲンランプHL)に供給される電力量、ハロゲン加熱部4(または各ハロゲンランプHL)から照射される光量、チャンバー161の内部への処理ガスの供給量、およびフラッシュ加熱部5(または各フラッシュランプFL)から照射される光量である。
【0106】
これらの処理情報は、処理情報取得部90としての各センサーS1~S9により取得される。例えば、サセプタ74の温度は温度センサー91(
図1)(
図8におけるセンサーS1)、上側チャンバー窓63の温度は温度センサー92(
図1)(
図8におけるセンサーS2)、下側チャンバー窓64の温度は温度センサー93(
図1)(
図8におけるセンサーS3)、チャンバー161内の雰囲気の温度は温度センサー94(
図1)(
図8におけるセンサーS4)、チャンバー161の壁面の温度は温度センサー95(
図1)(
図8におけるセンサーS5)により取得される。また、ハロゲン加熱部4(または各ハロゲンランプHL)に供給される電力量は電力供給部49に接続される電流計49a(
図1)(
図8におけるセンサーS6)、ハロゲン加熱部4(または各ハロゲンランプHL)から照射される光量は光量センサー97(
図1)(
図8におけるセンサーS7)により、チャンバー161の内部への処理ガスの供給量はガス供給管83に接続される流量計98(
図1)(
図8におけるセンサーS8)により、フラッシュ加熱部5(または各フラッシュランプFL)から照射される光量は光量センサー96(
図1)(
図8におけるセンサーS9)により、それぞれ取得される。この情報も学習モデルの作成のための処理情報として利用可能である。なお、処理情報取得部90としての各センサーS1~S9により得られる処理情報は、上記から選択された2以上のパラメータが含まれることが好ましい。また、処理情報として、半導体ウェハーWの温度との相関関係を有するものであれば他の情報が採用されてもよく、上記のセンサーS1~S9による処理情報が除外されてもよい。
【0107】
半導体ウェハーWの温度と相関関係を有する処理情報であるか否かは、半導体ウェハーWの温度と処理情報との関係性を分析する関係情報分析部32aにより行われる。関係情報分析部32aは、各センサーから取得される情報が半導体ウェハーWの温度との相関関係の有無や高低を判断する。関係情報分析部32aにおいて、半導体ウェハーWの温度と相関関係が高いと判断された情報は、学習モデル作成部32bにおいて処理情報として採用される。一方で、半導体ウェハーWの温度との相関関係が無いか小さいと判断された処理情報は、学習モデル作成部32bにおける処理情報から除外されてもよい。
【0108】
本実施形態において、学習モデル作成部32bは、半導体ウェハーWの温度と、処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値(各センサーの出力値)との間の関係を表す学習モデルを作成する。学習モデルを作成するときには、まず、半導体ウェハーWの温度と上記の2以上の各センサーから得られる実測値とに基づいて、半導体ウェハーWの温度と各実測値との関係を示す学習データが取得される。そして、取得された学習データを用いて、各実測値の重み付け係数等が最適化される。このようにして、学習モデルが作成される。
【0109】
図9は、本実施形態における学習モデルの作成のときに利用されるフェーズを表す表である。なお、
図9において横軸は時間を示し、一方の縦軸(左側(表中の実線が示すデータ))は温度を示し、他方の縦軸(右側(表中の点線が示すデータ))は熱処理フェーズを示す。
【0110】
本実施形態において、学習モデルが作成されるときには、学習モデル作成部32bは、半導体ウェハーWの熱処理を複数のフェーズに区切って学習モデルの作成を行う。複数のフェーズは、少なくとも、ハロゲン加熱部4により半導体ウェハーWの温度が昇温されるフェーズと、ハロゲン加熱部4により半導体ウェハーWの温度が一定に維持されるフェーズと、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5による加熱の終了後に半導体ウェハーWの温度が降温するフェーズと、を含むことが好ましい。これらの熱処理フェーズは、半導体ウェハーWの品質管理において特徴的なフェーズと考えられるためである。なお、
図9においては、半導体ウェハーWの下面の温度が示されており、本実施形態においては半導体ウェハーWの下面の温度との相関関係を有する処理情報が関係情報分析部32aにより採用される。
【0111】
本実施形態においては、
図9において点線で示す各熱処理フェーズに区切られる。本実施形態においては、ハロゲン加熱部4からの光の強度の異なりによって区切られる。本実施形態における熱処理フェーズは7区間に区切られる。詳細には、
図9において、t0~t1の区間(熱処理フェーズF1)、t1~t2の区間(熱処理フェーズF2)、t2~t3の区間(熱処理フェーズF3)、t3~t4の区間(熱処理フェーズF4)、t4~t5の区間(熱処理フェーズF5)、t5~t6の区間(熱処理フェーズF6)、t6~t7の区間(熱処理フェーズF7)それぞれに区切られる。これらの各熱処理フェーズでは、設定されるハロゲン加熱部4からの光の強度が異なる。すなわち、電力供給部49からハロゲン加熱部4に供給される電力量(電流計49aの指示値)が異なる。学習モデル作成部32bは、上記のような複数のフェーズのそれぞれ毎に学習モデルを作成する。なお、上記のようなフェーズの区分けは、熱処理のレシピ毎に異なる。
【0112】
検知部32cは、学習モデル作成部32bが作成した複数の学習モデルに基づいて半導体ウェハーWの処理異常を検知する。より具体的には、検知部32cは、処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値と学習モデルを用いて算出した予想値との差分に基づいて、半導体ウェハーWの処理異常を検知する。検知部32cは学習モデルから求められる予想値と複数の処理情報に関する実測値とを複数のフェーズ毎に比較して処理異常を検知する。検知部32cは、処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値と学習モデルを用いて算出した予想値との差分に基づいて、半導体ウェハーWの処理異常を検知する。このとき、処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値と学習モデルを用いて算出した予想値と差分の大きさを異常度として演算する。異常度は、半導体ウェハーWの温度と処理情報との相関関係の大きさと関係する。相関関係が大きい場合には、差分が小さくても異常度が高いと判断され、相関関係が小さい場合には、差分が大きくても異常度が低いと判断される。
【0113】
以上のとおり、検知部32cでは、半導体ウェハーWの温度と処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値との関係性の変化が検出される。これにより、熱処理装置160の故障の予兆が検知される。また、検知部32cは、前記実測値が学習モデルから求められる予想値から所定の閾値を超えて乖離しているときに処理異常と判定する。
【0114】
発報部33は、検知部32cが上記のような処理異常を検知したときに警報を発する。発報部33は表示部16に故障または故障の予兆がある旨のアラームを表示させる。
【0115】
<異常検知装置2の学習モデル作成フロー>
以下、異常検知装置2における熱処理装置160の学習モデル作成および処理異常検知のフローについて説明する。
【0116】
図10は、異常検知装置2による学習モデル作成の処理手順を示すフローチャートである。また、
図11は、異常検知装置2による処理異常の検知手順を示すフローチャートである。
【0117】
図10に示されるように、異常検知装置2により学習モデルが作成されるには、まず、教師データとなる半導体ウェハーWの温度が測定される(ステップST1)。温度の測定は、複数の半導体ウェハーWにおいて行われる。次に、温度の測定と同様に、熱処理装置160に設置される各センサー(処理情報取得部90)により教師データとなる各処理情報が取得される(ステップST2)。各処理情報の取得もまた、複数の半導体ウェハーWの処理において行われる。
【0118】
ステップST1およびステップST2において、取得された教師データとしての温度データと各処理情報とは、
図9に示される熱処理フェーズ毎に区切られて、記憶部31に記憶される(ステップST3)。次に、学習モデル作成部32bは、温度および各処理情報に基づいて、上記各熱処理フェーズF1~7のそれぞれ毎に学習モデルを作成する。熱処理フェーズ毎に区切られた温度データの学習モデルが作成されるとともに、熱処理フェーズ毎に区切られた各処理情報の学習モデルが作成される(ステップST4)。
【0119】
本実施形態における異常検知装置2は、上記のとおり、熱処理フェーズ毎に区切られた学習モデルが作成されて、熱処理フェーズ毎に予想値と実測値とを比較可能である。なお、半導体ウェハーWの熱処理においては、特徴の異なる各熱処理フェーズで、異なる半導体ウェハーWの温度と他の処理情報との関係性が構築されると考えられる。このような条件の中で、熱処理フェーズ毎に異なる関係性が把握されると、熱処理におけるわずかな変化が検知され得る。このため、本実施形態における異常検知装置2によれば、従来技術では困難であった変化の微少な処理異常の検知が可能となる。例えば、基板を加熱するための熱源のうちの一つのランプの出力の低下を検知することが可能である。また、基板の温度の数度の変化や、ランプの出力の数%の変化とノイズとの差別化を図ることも可能である。以上から、本実施形態における異常検知装置2によれば、半導体ウェハーWの全体的な熱処理で学習モデルが作成される場合よりも、微少な処理異常の検知、および、微少な処理異常の検知による装置全体の故障の予兆ができる。
【0120】
次に、異常検知装置2による処理異常が検知されるには、まず、処理される半導体ウェハーWの温度が測定される(ステップST11)。次に、各センサー(処理情報取得部90)により各処理情報が取得される(ステップST12)。
【0121】
ステップST11およびステップST12において、取得された半導体ウェハーWの温度データと各処理情報とは、
図9に示される熱処理フェーズ毎(熱処理フェーズF1~7)に区切られて、記憶部31に記憶される(ステップST13)。記憶部31記憶された温度データと各処理情報とは、実際に計測された実測値として以下の処理で利用される。
【0122】
次に、半導体ウェハーWの温度や各処理情報についての学習モデルの予想値が演算部32で演算される(ステップST14)。このように演算された予想値と上記のステップST13において記憶された実測値とが比較される(ステップST15)。つまり、異常検知装置2は、学習モデルから求められる予想値と、複数の処理情報に関する実測値とを、複数の処理情報毎に、複数の熱処理フェーズ毎(熱処理フェーズF1~7)に比較する。
【0123】
ステップST15において比較された予想値と実測値との差分が、予め設定された閾値以上かどうかが判断される(ステップST16)。閾値は処理情報毎に設定され、さらにフェーズ毎に設定されている。この閾値は、学習モデルの作成のときに算出されてもよい。ステップST16において予想値と実測値との差分が閾値未満と判断された場合、処理異常なしと判断される(ステップST17)。処理異常なしと判断された場合には、次の半導体ウェハーWの処理が行われる。
【0124】
一方で、ステップST16において予想値と実測値との差分が閾値以上と判断された場合、処理異常ありと判断される(ステップST18)。処理異常ありとの判断は、いずれかの処理情報において、いずれかの熱処理フェーズにおいて閾値以上である場合に、行われる。いずれかの処理情報において、いずれかの熱処理フェーズにおいて、閾値以上である場合には、温度と当該処理情報との相関関係が破壊されたものと判断される。そして、相関関係の破壊の大きさも同時に評価される。ここで、破壊の大きさは、関係情報分析部32aにおいて演算された学習モデルにおける有効相関数と実測値における相関数との比率により評価される。したがって、学習モデルによる有効相関数の値が低い場合(相関関係が低いとされる処理情報の場合)には、実測値における相関数に変化が起こっていても異常と判断されない場合がある。
【0125】
ステップST18において処理異常ありと判断された場合には、異常検知装置2の発報部33によりアラームが発報される(ステップST19)。破壊の大きさが大きいほど強いアラームが発報されてもよい。また、複数の処理情報において、複数の熱処理フェーズにおいて、連続して処理異常と判断された場合にも、強いアラームが発報されてもよい。アラームの発報は、例えば、発報部33が表示部16に故障または故障の予兆がある旨の表示をする。このような発報に伴い、半導体ウェハーWの処理を停止してもよい。
【0126】
異常検知装置2は、上記のようにして、学習モデルから求められる予想値と複数の処理情報に関する実測値とを複数のフェーズ毎に比較して処理異常を検知する。
【0127】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置260の構成および半導体ウェハーWの処理手順は第1実施形態と同様である。第2実施形態においては、
図8に示すとおり、第1実施形態と同様の電気的な構成を有している。制御部203は、記憶部31と、演算部232と、発報部33とを含む。演算部232は、関係情報分析部32aと、学習モデル作成部232bと、検知部32cと、を備える。学習モデル作成部232bと、検知部32cと、発報部33とは、異常検知装置202に含まれる。
【0128】
図12は、第2実施形態における学習モデルの作成のときに利用されるフェーズを表す表である。なお、
図12において横軸は時間を示し、縦軸(左側(表中の実線が示すデータ))は温度を示す。
【0129】
第2実施形態において、学習モデルが作成されるときには、学習モデル作成部232bは、半導体ウェハーWの熱処理を複数のフェーズに区切って学習モデルの作成を行う。第2実施形態においては、
図12においてt11~t17で示す時間に区切られた各熱処理フェーズに区切られる。
【0130】
第1実施形態における熱処理フェーズは、ハロゲン加熱部4からの光の強度毎に区切られるが、第2実施形態における熱処理フェーズは、半導体ウェハーWの下面の温度の範囲毎に区切られる。第2実施形態においては、ハロゲン加熱部4からの光の強度の異なりによって区切られる。第2実施形態における熱処理フェーズは5区間に区切られる。詳細には、
図12において、t10~t11の区間(熱処理フェーズF11)、t11~t12の区間(熱処理フェーズF12)、t12~t13の区間(熱処理フェーズF13)、t13~t14の区間(熱処理フェーズF14)それぞれに区切られる。これらの各熱処理フェーズでは、下部放射温度計20により測定される温度の範囲が異なる。例えば、熱処理フェーズF11はハロゲン加熱部4による加熱開始から半導体ウェハーWの温度が上昇し始めるまでの区間、熱処理フェーズF12はハロゲン加熱部4により半導体ウェハーWが予備加熱温度T1まで上昇する区間(ハロゲン加熱部4により昇温される区間)、熱処理フェーズF13はハロゲン加熱部4による加熱により半導体ウェハーWが予備加熱温度T1で一定に維持される区間、熱処理フェーズF14はフラッシュ加熱部5の加熱の終了後にハロゲン加熱部4の出力低下により半導体ウェハーWの温度が降温する区間(ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5による加熱の終了後に半導体ウェハーWが降温する区間)である。
【0131】
第2実施形態において、取得された半導体ウェハーWの温度データと各処理情報とは、
図12に示される熱処理フェーズ毎(熱処理フェーズF11~14)に区切られて、記憶部31に記憶される。そして、第2実施形態における異常検知装置202は、学習モデルから求められる予想値と、複数の処理情報に関する実測値とを、複数の処理情報毎に、複数の熱処理フェーズ毎(熱処理フェーズF11~14)に比較する。
【0132】
<以上に記載された実施形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。
【0133】
また、当該置き換えは、複数の実施形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0134】
以上に記載された実施形態の異常検知装置2(202)によれば、熱処理装置160で熱処理される半導体ウェハーWの処理異常を検知する異常検知装置2(202)である。異常検知装置2(202)は、熱処理中の半導体ウェハーWの温度を測定する下部放射温度計20と、下部放射温度計20により測定された温度と相関関係を有する複数の処理情報を取得する処理情報取得部90(各センサー)と、半導体ウェハーWの熱処理を複数のフェーズ(熱処理フェーズF1~7、または、熱処理フェーズF11~14)に区切り、温度および処理情報に基づいて、複数のフェーズ(熱処理フェーズF1~7、または、熱処理フェーズF11~14)のそれぞれ毎に作成された複数の学習モデルに基づいて半導体ウェハーWの処理異常を検知する検知部32cと、を備える。
【0135】
このような構成によれば、複数のフェーズ(熱処理フェーズF1~7、または、熱処理フェーズF11~14)のそれぞれ毎に作成された複数の学習モデルに基づいて基板の処理異常を検知することができる。このことから、複数のフェーズに区切らずに作成された学習モデルにより異常を検知される場合よりも、微少な処理異常の検知、および、微少な処理異常の検知による熱処理装置160(260)全体の故障の予兆ができる。
【0136】
また、熱処理装置160(260)は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー161と、チャンバー161内に収容された半導体ウェハーWに光を照射して半導体ウェハーWを予備加熱するハロゲン加熱部4と、半導体ウェハーWに光を照射して半導体ウェハーWを処理温度に到達させるフラッシュ加熱部5と、を備える。また、複数の処理情報は、チャンバー161内の石英部品の温度(例えば、サセプタ74の温度、上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64)、チャンバーの壁面の温度、ハロゲン加熱部4に供給される電力、ハロゲン加熱部4からの光の強度、および、チャンバー161の内部への処理ガスの供給量からなる群から選択された2以上のパラメータを含む。
【0137】
このような構成によれば、複数の処理情報のうちに、半導体ウェハーWの温度との相関関係の大きいと考えられる2以上のパラメータを含むため、処理異常の検知の精度が向上する。
【0138】
また、複数のフェーズ(熱処理フェーズ)は、少なくとも、ハロゲン加熱部4により昇温されるフェーズ(第2実施形態における熱処理フェーズF12)と、ハロゲン加熱部4により温度が一定に維持されるフェーズ(第2実施形態における熱処理フェーズF13)と、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5による加熱の終了後に半導体ウェハーWが降温するフェーズ(第2実施形態における熱処理フェーズF14)と、を含む。
【0139】
このような構成によれば、半導体ウェハーWの品質管理において特徴的なフェーズと考えられる熱処理フェーズ毎に学習モデルが作成されるため、処理異常の検知の精度が向上する。
【0140】
また、検知部32cは学習モデルから求められる予想値と複数の処理情報(例えば、チャンバー161内の石英部品の温度、チャンバーの壁面の温度、ハロゲン加熱部4に供給される電力、ハロゲン加熱部4からの光の強度、および、チャンバー161の内部への処理ガスの供給量)に関する実測値とを複数のフェーズ(熱処理フェーズF1~7、または、熱処理フェーズF11~14)毎に比較して処理異常を検知する。
【0141】
このような構成によれば、半導体ウェハーWの温度と処理情報との相関関係の大きさによって、異常度の大小が判断される。このため、処理異常の検知の精度が向上する。
【0142】
また、検知部32cは、実測値が学習モデルから求められる予想値から所定の閾値を超えて乖離しているときに処理異常と判定する。
【0143】
また、検知部32cが処理異常を検知したときにアラーム(警報)を発する発報部33をさらに備える。
【0144】
このような構成によれば、熱処理装置160(260)の操作者による処理異常の検知がスムーズに行われる。
【0145】
<以上に記載された実施形態の変形例について>
以上に記載された実施形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。
【0146】
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0147】
上述の実施形態において、演算部32(232)は、関係情報分析部32aと、学習モデル作成部32b(232b)とを備える構成としているが、これに限定されない。演算部32(232)は、関係情報分析部32aを備えず、代わりに、予め分析された(または設定された)半導体ウェハーWの温度と処理情報との関係性が記憶部31に記憶されていてもよい。また、演算部32(232)は、学習モデル作成部32bを備えず、代わりに、予め作成された学習モデルが記憶部31に記憶されていても良い。そして、この記憶された学習モデルに基づいて、演算部32(232)が予想値を演算する構成としても良い。
【0148】
同様に、上述の実施形態において、異常検知装置2(202)は、学習モデル作成部32b(232b)を備える構成としているが、これに限定されない。異常検知装置2(202)は、学習モデル作成部32b(232b)を備えず、代わりに、予め作成された学習モデルが記憶部31に記憶されていても良い。そして、この記憶された学習モデルに基づいて、異常検知装置2(202)が半導体ウェハーWの処理異常を検知する構成としても良い。
【0149】
また、上述の実施形態において、演算部32(232)(異常検知装置2(202))が検知部32cを備える構成としているが、これに限定されない。演算部32(232)(異常検知装置2(202))が検知部32cを備えず、熱処理装置160(260)とリモートアクセス可能なクラウドに検知部32cの機能が備えられる構成としても良い。この場合には、処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値および下部放射温度計20(または/および上部放射温度計25)による測定値がクラウドに送信され、クラウドで演算された上で処理異常の結果を制御部3(203)が受信する構成としても良い。なお、この場合、処理情報取得部90(各センサー)により得られる実測値および下部放射温度計20(または/および上部放射温度計25)による測定値がクラウドに記憶される構成としても良い。また、制御部3(203)の全体的な機能がクラウドに備えられる構成としても良い。さらに、クラウドに限らず、有線または無線にて熱処理装置160とアクセス(送受信)可能な検知部32cの機能が備えられる構成でもよい。
【0150】
また、上述の実施形態においては、下部放射温度計20により測定された半導体ウェハーWの温度との相関関係を有する複数の処理情報が学習モデルの作成のために採用されているが、このような処理情報に限定されない。上部放射温度計25により測定された半導体ウェハーWの上面の温度との相関関係を有する複数の処理情報が学習モデルの作成のために採用されてもよい。この場合は、半導体ウェハーWの上面の温度と処理情報に基づいて学習モデルが作成される。このため、他の期間と比較して、熱処理装置160(260)の状態が安定しており、ノイズの影響も小さいと考えられる期間(例えばソ-ク時)においても、半導体ウェハーWの処理異常の検知が行われ得る。
【0151】
また、下部放射温度計20および上部放射温度計25により測定された半導体ウェハーWの下面および上面それぞれの温度との相関関係を有する複数の処理情報が学習モデルの作成のために採用されてもよい。
【0152】
また、以上に記載された実施形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【符号の説明】
【0153】
2,202 異常検知装置
3,203 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
11 移載アーム
12 リフトピン
13 水平移動機構
14 昇降機構
15 入力部
16 表示部
20 下部放射温度計
21,26 透明窓
24,29 赤外線センサー
25 上部放射温度計
31 記憶部
32,232 演算部
32a 関係情報分析部
32b,232b 学習モデル作成部
32c 検知部
33 発報部
41,51 筐体
43,52 リフレクタ
49 電力供給部
49a 電流計
53 ランプ光放射窓
61 チャンバー側部
61a,61b 貫通孔
62 凹部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
66 搬送開口部
68,69 反射リング
71 基台リング
72 連結部
74 サセプタ
75 保持プレート
75a 保持面
76 ガイドリング
77 支持ピン
78 開口部
79 貫通孔
81 ガス供給孔
82,87 緩衝空間
83 ガス供給管
84,89,192 バルブ
85 処理ガス供給源
86 ガス排気孔
88,191 ガス排気管
90 処理情報取得部
91、92,93,94,95 温度センサー
96,97 光量センサー
98 流量計
160,260 熱処理装置
161 チャンバー
162 ゲートバルブ
190 排気機構
F1,F2,F3,F4,F5,F6,F7,F11,F12,F13,F14 熱処理フェーズ
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9 センサー
T1 予備加熱温度
W 半導体ウェハー