(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141773
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】格納容器
(51)【国際特許分類】
G21C 13/00 20060101AFI20230928BHJP
G21C 15/12 20060101ALI20230928BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20230928BHJP
G21C 11/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G21C13/00 200
G21C15/12 Z
G21D1/00 Q
G21C11/02 100
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048259
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】507142476
【氏名又は名称】高松 邦吉
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高松 邦吉
(57)【要約】
【課題】本発明は、煙突効果を用いることなく冷却能力を向上させるとともに、熱利用率を向上させることのできる格納容器を提供することを目的とする。
【解決手段】
原子炉圧力容器2を格納するための格納容器10において、前記原子炉圧力容器2が格納される圧力容器室10bが内部に形成された容器本体10aと、前記容器本体10aよりも放熱性が高く、外部に露出するように前記容器本体10aに設けられ、前記圧力容器室10bと連通する冷却室5aが内部に形成され、前記冷却室5a内の流体と外部の流体とで熱交換して、前記原子炉圧力容器2により加熱されて前記圧力容器室10bから前記冷却室5aに流入した流体を冷却する冷却部5と、前記圧力容器室10b内に露出するとともに、前記原子炉圧力容器2に供給される冷媒とは別回路の冷媒が内部を流れ、前記原子炉圧力容器2から放出されるふく射熱を回収する熱回収部7とを備えるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器を格納するための格納容器において、
前記原子炉圧力容器が格納される圧力容器室が内部に形成された容器本体と、
前記容器本体よりも放熱性が高く、外部に露出するように前記容器本体に設けられ、前記圧力容器室と連通する冷却室が内部に形成され、前記冷却室内の流体と外部の流体とで熱交換して、前記原子炉圧力容器により加熱されて前記圧力容器室から前記冷却室に流入した流体を冷却する冷却部と、
前記圧力容器室内に露出するとともに、前記原子炉圧力容器に供給される冷媒とは別回路の冷媒が内部を流れ、前記原子炉圧力容器から放出されるふく射熱を回収する熱回収部とを備えたことを特徴とする、格納容器。
【請求項2】
請求項1に記載の格納容器において、
前記熱回収部は、前記圧力容器室の側壁に沿って延在するように設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の格納容器において、
前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器と対向するように設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の格納容器において、
前記熱回収部は、前記冷却部の真下に設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の格納容器において、
前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器から前記冷却部に流れる流体の流路上に設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の格納容器において、
前記圧力容器室には、前記原子炉圧力容器と前記冷却部との間に、前記原子炉圧力容器からのふく射熱を前記熱回収部に向けて反射するための反射板が設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項7】
請求項6に記載の格納容器において、
前記反射板は、前記熱回収部の真下に設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の格納容器において、
前記圧力容器室は、前記原子炉圧力容器から放射される放射線を遮へいするための遮へい体が前記容器本体の側壁に沿って設けられており、前記冷却室及び前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器と前記遮へい体との間に配置された断熱壁の前記原子炉圧力容器側を前記断熱壁に沿って延びていることを特徴とする、格納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器が格納される格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉圧力容器が格納される格納容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の格納容器では、原子炉圧力容器から放出される熱により加熱された格納容器内を冷却するために空気の自然対流を用いていた(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
煙突効果を用いて格納容器内を冷却する場合には、
図6に示すように、原子炉圧力容器と遮へい体及びその断熱壁との間に、かつ、断熱壁に沿って、格納容器内に空気が流通するためのダクトが設けられていた。これにより、原子炉圧力容器で生じた熱はダクト内の空気に伝達され、加熱された空気が煙突効果によりダクト内を上昇してダクトの上端にて大気に開放されるようになっていた。このような冷却方法では、例えば、上下方向に約60m以上の長さのダクトを用いて煙突効果を大きくし、作動媒体である空気の速度を上昇させることにより、自然対流による熱伝達量を大きくしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-6197号公報
【非特許文献1】高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)の受動的冷却設備の設計、日本原子力学会和文論文誌、Vol.3、No.3(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、煙突効果を用いた上記従来の技術による格納容器では、空気の流速を、一般に強風と言われる程度の速度まで上昇させることが望ましいが、ダクトの長さにも制限があり、また、ダクトの表面抵抗により空気の流速に限界が生じてしまっていた。また、地震等による事故が発生したときにダクトが変形または閉塞してしまうと、必要とする空気の流速を満たすことができず、自然対流による熱伝達量が小さくなって、除熱量が減少してしまう。これにより、煙突効果による空気の自然対流を用いた炉容器冷却設備はフェール・セーフの点では望ましくなかった。さらに、煙突効果による空気の自然対流を用いた炉容器冷却設備は、大気が直接的にダクト内に入るため、砂、土、虫、及び植物等が炉容器冷却設備内に溜まってしまっていた。さらにまた、大気に含まれる湿度や塩分により酸化、錆発生、及び腐食等が発生し、ダクトの交換が必要となるが、ダクトの交換は困難であった。
【0006】
また、原子炉圧力容器の表面から放出された廃熱を可能な限り回収し、有効利用することで高温ガス炉全体の熱利用率を高めることが求められていた。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、煙突効果を用いることなく冷却能力を向上させるとともに、熱利用率を向上させることのできる格納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原子炉圧力容器を格納するための格納容器において、前記原子炉圧力容器が格納される圧力容器室が内部に形成された容器本体と、前記容器本体よりも放熱性が高く、外部に露出するように前記容器本体に設けられ、前記圧力容器室と連通する冷却室が内部に形成され、前記冷却室内の流体と外部の流体とで熱交換して、前記原子炉圧力容器により加熱されて前記圧力容器室から前記冷却室に流入した流体を冷却する冷却部と、前記圧力容器室内に露出するとともに、前記原子炉圧力容器に供給される冷媒とは別回路の冷媒が内部を流れ、前記原子炉圧力容器から放出されるふく射熱を回収する熱回収部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記熱回収部は、前記圧力容器室の側壁に沿って延在するように設けられていてもよい。前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器と対向するように設けられていてもよい。前記熱回収部は、前記冷却部の真下に設けられていてもよい。前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器から前記冷却部に流れる流体の流路上に設けられていてもよい。前記圧力容器室には、前記原子炉圧力容器と前記冷却部との間に、前記原子炉圧力容器からのふく射熱を前記熱回収部に向けて反射するための反射板が設けられていてもよい。前記反射板は、前記熱回収部の真下に設けられていてもよい。前記圧力容器室は、前記原子炉圧力容器から放射される放射線を遮へいするための遮へい体が前記容器本体の側壁に沿って設けられており、前記冷却室及び前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器と前記遮へい体との間に配置された断熱壁の前記原子炉圧力容器側を前記断熱壁に沿って延びていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、例えば、煙突効果を用いることなく冷却能力を向上させるとともに、熱利用率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る格納容器を示す模式図である。
【
図2】格納容器による除熱の解析結果を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る格納容器を示す模式図である。
【
図4】第3実施形態に係る格納容器を示す模式図である。
【
図5】第4実施形態に係る格納容器を示す模式図である。
【
図6】煙突効果による空気の自然対流を用いた従来の技術による格納容器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
[1]第1実施形態
図1は、本実施形態に係る格納容器を示す模式図である。格納容器(CV:Containment Vessel)10は、原子炉の炉心1が格納された原子炉圧力容器(RPV:Reactor Pressure Vessel)2を格納するための容器である。この格納容器10は、例えば、鋼で形成されており、原子炉圧力容器で生じた圧力を抑える圧力障壁であるとともに、放射性物質の拡散を防止する。格納容器10は、容器本体10aと、遮へい体3と、断熱壁4と、冷却部である炉容器冷却設備(RCCS:Reactor Cavity Cooling System)5と、反射板6と、熱回収部である冷却配管7とを備えている。
【0013】
容器本体10aは、原子炉圧力容器2が格納される圧力容器室10bが内部に形成されている。
【0014】
遮へい体3は、容器本体10aの側壁である壁部10c等に沿って圧力容器室10b内に設けられており、原子炉圧力容器2から放射される放射線を遮へいするようになっている。なお、遮へい体3は、
図1では壁部10cに沿ってのみ設けられているが、天井部や床部等その他の部分に設けられていてもよい。
【0015】
断熱壁4は、原子炉圧力容器2と遮へい体3との間に遮へい体3に沿って配置されており、原子炉圧力容器2から放射された熱が外部に放熱されないように断熱するようになっている。
【0016】
炉容器冷却設備5は、容器本体10aの外側で容器本体10aに取り付けられており、容器本体10aの上部で外部に露出するように容器本体10aに設けられている。この炉容器冷却設備5は、容器本体10aよりも放熱性が高くなるように設けられており、内部に形成された冷却室5a内の流体と外部の流体とで熱交換して、圧力容器室10bから冷却室5aに流入した流体を冷却するようになっている。この冷却室5aは、容器本体10aに形成された開口を介して圧力容器室10bと流体的に連通しており、断熱壁4の原子炉圧力容器2側を断熱壁4に沿って延びるように設けられている。冷却室5aは、容器本体10aから上方に延びて形成されており、冷却室5aが延びる方向に延びる仮想線Xが原子炉圧力容器2と交わらない位置に配置されている。炉容器冷却設備5は、表面積を拡大して放熱性を向上させるべく、内部の冷却室5a内を流れる流体と接するフィン、及び、外部を流れる流体と接するフィンが設けられている。
【0017】
反射板6は、圧力容器室10b内であって、原子炉圧力容器2と炉容器冷却設備5との間に設けられている。この反射板6は、ふく射(放射)された熱を反射するようになっており、原子炉圧力容器2からふく射された熱を反射させて炉容器冷却設備5及び冷却配管7に効率良く伝達するようになっている。反射板6は、
図1では、容器本体10aの天井面及び床面に配置されているが、壁面等その他の位置に配置されていてもよい。本実施形態では、容器本体10aの床面に配置された反射板6は、冷却室5a及び冷却配管7の真下まで延びており、仮想線Xが交わるように設けられている。
【0018】
冷却配管7は、原子炉圧力容器2に供給される冷媒とは別回路の冷媒が管路内を流れている。この冷却配管7は、容器本体10aの側壁を形成する壁部10cと、遮へい体3と、断熱壁4とをこの順で水平方向に貫通し、圧力容器室10b内に導かれている。
【0019】
圧力容器室10b内に導かれた冷却配管7は、上方に向けて湾曲し、壁部10c、遮へい体3、及び断熱壁4に沿って上方に向かって延在している。冷却配管7は、この上下方向に延在する部分が圧力容器室10bに露出しており、原子炉圧力容器2と対向するように設けられている。なお、
図1では1つの冷却配管7のみ記載されているが、圧力容器室10b内には、断熱壁4に沿って複数の冷却配管7が配列されており、それぞれの冷却配管7は圧力容器室10b内で流体的に連通していてもよいし、個別に外部から圧力容器室10b内に延びていてもよい。
【0020】
冷却配管7は、圧力容器室10b内に露出している部分の上端で壁部10cに向けて湾曲し、断熱壁4と、遮へい体3と、壁部10cとをこの順で水平方向に貫通して、格納容器10の外部に戻るように設けられている。すなわち、冷却配管7は、壁部10cから圧力容器室10b内に入り、原子炉圧力容器2に流体的に接続されることなく、壁部10cを通って圧力容器室10b外に出るように設けられている。これにより、原子炉圧力容器2内を流れる冷媒は冷却配管7には流入しないようになっている。
【0021】
冷却配管7は、主に原子炉圧力容器2から放出された放射熱がふく射により伝達されるようになっているため、内部を流れる冷媒には核分裂生成物(FP)が混入しないようになっている。これにより、別の冷媒回路を用いて核分裂生成物の混入を避けるための二次冷却系を用いる必要がなく、冷却配管7を通った冷媒をそのまま廃熱利用システム(不図示)等に送って利用することができる。原子炉が運用されているときの冷却配管7から廃熱利用システム等に供給される冷媒の温度範囲は100℃以上300℃以下であり、この温度範囲は軽水炉の出口冷却材温度と同程度である。これにより、冷却配管7を通った冷媒は、そのまま廃熱利用システムで発電等の用途に用いることができるようになっている。
【0022】
冷却配管7は、炉容器冷却設備5の真下に設けられており、原子炉圧力容器2から炉容器冷却設備5に流れる流体の流路上に設けられている。これにより、原子炉圧力容器2で加熱された空気等の流体は、冷却配管7の周りを流れることによって流体中の熱の一部が冷却配管7内の冷媒に回収されてから上昇し、炉容器冷却設備5の冷却室5a内に流入するようになっている。
【0023】
図2は、格納容器による除熱の解析結果を示す図である。
この解析結果では、上述のパラメータに基づくモデルを用いており、図中軸線Cで軸対象なモデルとなっている。容器本体10aは、
図2に示すように、断熱壁4で覆われており、炉容器冷却設備5のみ断熱がなされていない。炉容器冷却設備5は、
図2では、800(kW)の除熱量となるような高さに形成されているが、例えば、高さh1で形成すると除熱量が約600(kW)となり、高さh2で形成すると除熱量が約400(kW)となり、高さh3で形成すると除熱量が約200(kW)となる。なお、炉容器冷却設備5にフィン等を設けることにより、同じ除熱量を維持したまま炉容器冷却設備5の高さを低く抑えることができる。
【0024】
図2に示す解析結果では、温度分布を符号t1乃至t7で領域分けしており、温度分布t1から温度分布t7にかけて次第に温度が下がり、温度分布t7が最も温度が低くなっている。なお、熱回収部7は、温度分布t1の領域に設けられている。
【0025】
本実施形態では、格納容器10は、原子炉圧力容器2が格納される圧力容器室10bが内部に形成された容器本体10aと、前記容器本体10aよりも放熱性が高く、外部に露出するように前記容器本体10aに設けられ、前記圧力容器室10bと連通する冷却室5aが内部に形成され、前記冷却室5a内の流体と外部の流体とで熱交換して、前記原子炉圧力容器2により加熱されて前記圧力容器室10bから前記冷却室5aに流入した流体を冷却する炉容器冷却設備5と、前記圧力容器室10b内に露出するとともに、前記原子炉圧力容器2に供給される冷媒とは別回路の冷媒が内部を流れ、前記原子炉圧力容器2から放出されるふく射熱を回収する熱回収部7とを備えている。これにより、圧力容器室10b及び冷却室5aからなる空間は、
図1に示すように、煙突効果を用いる従来技術(
図6参照)による格納容器の内部空間に相当する領域A1よりも図中に破線で区切られた領域A2の分だけ大きくなり、伝熱面積や総括熱伝達率(W/m
2/K)における自然対流による平均熱伝達率を大きくして受動的な炉容器冷却設備5とすることができるとともに、原子炉圧力容器2の表面から放出された廃熱を熱回収部7で回収することができる。このため、煙突効果を用いることなく冷却能力を向上させるとともに、熱利用率を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、格納容器10は、冷却配管7の真下に、原子炉圧力容器2からの熱を冷却配管7に向けて反射するための反射板6が設けられている。これにより、格納容器10は、原子炉圧力容器2からふく射された熱を効率良く冷却配管7に伝達させることができる。
【0027】
[2]第2実施形態
図3は、第2実施形態に係る格納容器を示す模式図である。第2実施形態に係る格納容器10は、炉容器冷却設備5の冷却室5aが鉛直に対して傾いた方向に延びているという構成が第1実施形態と異なっている。
図3において、第1実施形態と略同様の構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0028】
第2実施形態に係る炉容器冷却設備5の冷却室5aは、
図3に示すように、鉛直方向に対して傾いて形成されている。具体的には、冷却室5aは、冷却室5aが延びる方向に延びる仮想線Xが鉛直に伸びる軸線Cに対して角度θだけ傾いた方向に延びて原子炉圧力容器2と交わる位置に配置されている。この角度θは、例えば、15度以上30度以下となっている。
【0029】
本実施形態では、炉容器冷却設備5の冷却室5aは、鉛直に対して傾いた方向に延びて、冷却室5aが延びる方向に延びる仮想線Xが原子炉圧力容器2と交わる位置に配置されている。これにより、格納容器10は、原子炉圧力容器2でふく射により放出された熱が、格納容器10の中で反射せずに真っ直ぐ炉容器冷却設備5の冷却室5aに届くようになっている。このため、格納容器10のふく射による冷却能力をさらに向上させることができる。
【0030】
[3]第3実施形態
図4は、第3実施形態に係る格納容器を示す模式図である。第3実施形態に係る格納容器10は、冷却室5aが原子炉圧力容器2に近づく程断面が大きくなるように形成されているという構成が第2実施形態と異なっている。
図4において、第2実施形態と略同様の構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0031】
第3実施形態に係る炉容器冷却設備5の冷却室5a及び冷却配管7は、
図4に示すように、鉛直方向に対して傾いて形成されており、冷却室5aは、原子炉圧力容器2に近づく程断面が大きくなるように形成されている。具体的には、冷却室5aの断面は、原子炉圧力容器2の近傍では、原子炉圧力容器2の側面2aの全面と同程度以上の面積になっている。すなわち、第2実施形態よりも、ふく射により冷却室5aに真っ直ぐに到達する熱を多くすることができる。
【0032】
本実施形態では、鉛直に対して傾いた方向に延びる炉容器冷却設備5の冷却室5aは、原子炉圧力容器2に近づく程断面が大きくなるように形成されている。これにより、格納容器10は、原子炉圧力容器2でふく射により放熱された熱が、格納容器10の中で反射せずに真っ直ぐ炉容器冷却設備5の冷却室5aに届くようになっている。このため、格納容器10のふく射による冷却能力をさらに向上させることができる。
【0033】
[4]第4実施形態
図5は、第4実施形態に係る格納容器を示す模式図である。第4実施形態に係る格納容器20は、炉容器冷却設備15の冷却室15aが圧力容器室10bから水平方向に延びて形成されているという構成が第1乃至3実施形態と異なっている。すなわち、第4実施形態に係る格納容器20は、実質的に第3実施形態に係る格納容器10の冷却室5aをさらに傾けて水平にした構成になっている。
図5において、第2実施形態と略同様の構成は、同一の符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0034】
第4実施形態に係る炉容器冷却設備15は、
図5に示すように、容器本体10aの側部に設けられている。炉容器冷却設備15の冷却室15aと容器本体10aの圧力容器室10bとは、例えば、境界線Aを境に分かれている。本実施形態では、冷却室15aの空間が大きいため、冷却配管7は冷却室15a内に設けることが可能になっている。
【0035】
冷却室15aの底部は、パラボラアンテナのような形状の放物曲面16で形成されている。この放物曲面16は、ふく射された熱を反射するようになっており、原子炉圧力容器2からふく射された熱を上方に反射させるように設けられている。なお、放物曲面16は、原子炉圧力容器2からふく射により放出されたほとんどの熱を上方に反射可能な形状に形成されている。
【0036】
冷却室15aの上部は、外部に露出する熱交換面15bが形成されている。炉容器冷却設備15は、この熱交換面15bで冷却室15a内の流体と外部の流体とで熱交換して、圧力容器室10bから冷却室15aに流入した流体を冷却するようになっている。熱交換面15bは、表面積を拡大して放熱性を向上させるべく、内部の冷却室15a内を流れる流体と接するフィン、及び、外部を流れる流体と接する図示せぬフィンが設けられている。熱交換面15bは、圧力容器室10bの天井面と同じかより高い位置に設けられており、これにより圧力容器室10b内を対流した熱が熱交換面15bまで対流可能になっている。
【0037】
圧力容器室10bの底部は、冷却室15aの放物曲面16と同様の放物曲面10dで形成されている。この放物曲面10dは、冷却室15aの放物曲面16と略連続する放物曲面で形成されている。放物曲面10dは、ふく射された熱を反射するようになっており、原子炉圧力容器2からふく射された熱を冷却室15aの熱交換面15bに向けて反射させるように設けられている。なお、放物曲面10dは、原子炉圧力容器2から下方に向けてふく射により放出されたほとんどの熱を熱交換面15bに反射可能な形状に形成されている。
【0038】
炉容器冷却設備15は、放物曲面16及び熱交換面15bが設けられていることにより、原子炉圧力容器2からのふく射熱を効率良く外部の流体と熱交換することができるようになっている。具体的には、例えば、原子炉圧力容器2の下端の点Pでふく射された熱は、図中矢印Rで示すように、放物曲面16で上方に向けて反射されて熱交換面15bに到達し、熱交換面15bで外部の流体と熱交換するようになっている。
【0039】
一方、炉容器冷却設備15は、原子炉圧力容器2から対流によって放出された熱は上方に対流した後に圧力容器室10bの天井面及び冷却室15aの天井面で水平方向に広がり、冷却室15aの熱交換面15bで外部の流体と熱交換するようになっている。
【0040】
本実施形態では、冷却室15aの底部が放物曲面16で形成されているとともに、圧力容器室10bの底部が放物曲面10dで形成されている。これにより、格納容器20は、原子炉圧力容器2でふく射により放出された熱のほとんどを放物曲面16,10dで反射させて炉容器冷却設備15の熱交換面15bに届くようにすることができる。このため、格納容器20のふく射による冷却能力をさらに向上させることができる。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1乃至3実施形態では、格納容器10の底部を平面としているが、第4実施形態のような放物曲面としてもよい。
【0042】
また、上記本実施形態では、冷却配管7は、圧力容器室10b内で上下方向に延在しているが、原子炉圧力容器2から放出されたふく射熱を回収することができれば左右方向や原子炉圧力容器2に向かう方向等、その他の方向に延在していてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 炉心
2 原子炉圧力容器
3 遮へい体
4 断熱壁
5 炉容器冷却設備(冷却部)
5a 冷却室
6 反射板
7 冷却配管(熱回収部)
10 格納容器
10a 容器本体
10b 圧力容器室
10c 壁部
10d 放物曲面
15 炉容器冷却設備(冷却部)
15a 冷却室
15b 熱交換面
16 放物曲面
20 格納容器
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器を格納するための格納容器において、
前記原子炉圧力容器が格納される圧力容器室が内部に形成された容器本体と、
前記容器本体よりも放熱性が高く、外部に露出するように前記容器本体に設けられ、前記圧力容器室と連通する冷却室が内部に形成され、前記冷却室内の流体と外部の流体とで熱交換して、前記原子炉圧力容器により加熱されて前記圧力容器室から前記冷却室に流入した流体を冷却する冷却部と、
前記圧力容器室内に露出するとともに、前記原子炉圧力容器に供給される冷媒とは別回路の冷媒が内部を流れ、前記原子炉圧力容器から放出されるふく射熱を回収する熱回収部とを備え、
前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器から前記冷却部に流れる流体の流路上かつ前記冷却部の真下に、前記冷却部に向けて上下方向に延在するように設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項2】
請求項1に記載の格納容器において、
前記熱回収部は、前記圧力容器室の側壁に沿って延在するように設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の格納容器において、
前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器と対向するように設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の格納容器において、
前記圧力容器室には、前記原子炉圧力容器と前記冷却部との間に、前記原子炉圧力容器からのふく射熱を前記熱回収部に向けて反射するための反射板が設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項5】
請求項4に記載の格納容器において、
前記反射板は、前記熱回収部の真下に設けられたことを特徴とする、格納容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の格納容器において、
前記圧力容器室は、前記原子炉圧力容器から放射される放射線を遮へいするための遮へい体が前記容器本体の側壁に沿って設けられており、前記冷却室及び前記熱回収部は、前記原子炉圧力容器と前記遮へい体との間に配置された断熱壁の前記原子炉圧力容器側を前記断熱壁に沿って延びていることを特徴とする、格納容器。