(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141781
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】建具及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E05D 15/10 20060101AFI20230928BHJP
E05F 15/632 20150101ALI20230928BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20230928BHJP
【FI】
E05D15/10
E05F15/632
E05F15/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048268
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】西川 忠伸
(72)【発明者】
【氏名】豊島 礼恵
(72)【発明者】
【氏名】中桐 卓大
【テーマコード(参考)】
2E034
2E052
【Fターム(参考)】
2E034GA08
2E052AA01
2E052CA06
2E052EA12
2E052EA15
2E052EC02
2E052GB12
2E052GD02
2E052HA00
(57)【要約】
【課題】障子が枠内を移動する場合に、意匠性を向上でき、かつ、安全性が確保された建具を提供すること。
【解決手段】建具1は、第1駆動部511,521の駆動により移動する障子20と、障子20の側方に配置され、第1駆動部511,521とは別の第2駆動部71の駆動により移動する移動部材15,16と、障子20と移動部材15,16との距離Lを一定に保つように、第1駆動部511,521及び第2駆動部61,71を制御する制御部8と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動部の駆動により移動する障子と、
前記障子の側方に配置され、前記第1駆動部とは別の第2駆動部の駆動により移動する移動部材と、
前記障子と前記移動部材との距離を一定に保つように、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する制御部と、を備える建具。
【請求項2】
前記制御部は、前記障子と前記移動部材とを移動させる場合に、前記障子と前記移動部材との移動開始タイミングを一致させ、かつ、前記障子と前記移動部材との移動完了タイミングを一致させるように、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子は、室内外方向に移動可能であり、
前記移動部材は、前記障子の側方に回転可能に配置される蓋部である、請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
第1駆動部の駆動により移動する障子と、
前記障子の側方に配置され、前記第1駆動部とは別の第2駆動部の駆動により移動する移動部材と、を備える建具に用いられるプログラムであって、
コンピュータに、前記障子と前記移動部材との距離を一定に保つように、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する処理を行わせるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体と、枠体内を移動可能な障子と、を備える建具において、障子が移動した後の上枠や下枠の溝状の開口部を外部から視認できないように回転して塞ぐ蓋を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の建具は、障子が移動した後の上枠及び下枠の開口部を蓋により塞ぐため、視認性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、障子が移動した後の上枠及び下枠の開口部を蓋により覆うように構成した場合に、障子と蓋との間の隙間が大きいと、障子が移動した後の上枠及び下枠の開口部が外部から視認されるため意匠性を損なう可能性がある。また、障子と蓋との間の隙間が大きいと、上枠及び下枠の開口部に物が落下する可能性がある。更には、障子と蓋との間の隙間の大きさが大きい状態から小さい状態に変化すると、障子と蓋との間に指を挟む可能性がある。
【0005】
本開示は、障子が枠内を移動する場合に、意匠性を向上でき、かつ、安全性が確保された建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1駆動部の駆動により移動する障子と、前記障子の側方に配置され、前記第1駆動部とは別の第2駆動部の駆動により移動する移動部材と、前記障子と前記移動部材との距離を一定に保つように、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する制御部と、を備える建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るパノラマ窓を室内側から見た正面図である。
【
図2】
図1のA-A線断面図であって、パノラマ窓が閉位置に位置した状態を示す横断面図である。
【
図3】
図2に示す閉位置から、パノラマ窓が途中位置に移動した状態を示す横断面図である。
【
図4】
図3に示す途中位置から、パノラマ窓が開位置に位置した状態を示す横断面図である。
【
図5】
図1においてパラレル移動障子が配置された部分の縦断面図である。
【
図6】
図5に示す位置から、パラレル移動障子が見込方向の途中に移動した状態を示す図である。
【
図7】
図6に示す位置から、パラレル移動障子が室内側に移動した状態を示す図である。
【
図8】シート状の気密材の詳細を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態の建具としてのパノラマ窓1について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、パノラマ窓1は、枠体10と、枠体10内に配置されるパラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40と、を備える。パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40は、それぞれ、複層ガラスにより構成される。
【0009】
なお、本明細書において、「見付方向」とは、建具の枠体10に納められるパラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の面方向を意味し、「見込方向」とは、室内外方向(即ち、奥行き方向)を意味する。また、見付方向において、
図1における左右の方向を左右方向Xという。
図1における左右方向Xの一方側(左側)をX1側といい、左右方向Xの他方側(右側)をX2側という。また、
図2~
図7における室内外方向を見込方向Yという。
図2~
図4において、見込方向Yにおける奥側を室外側Y1といい、手前側を室内側Y2という。
【0010】
図1に示すように、枠体10は、上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,14が、方形状に枠組みされている。上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,14は、例えば、アルミニウムを押し出し成形することによって形成される。枠体10内には、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40が配置される。
【0011】
図2~
図4に示すように、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40は、それぞれ、3枚のガラス板(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42、室内側ガラス板23,33,43)と、スペーサ24,34,44と、一対の補強部材25,35,45と、気密材28,38,48と、を有する複層ガラスにより構成される。
【0012】
なお、
図2~
図4に示すように、FIX障子40側の縦枠14の室内側Y2において、左右方向Xの内側の見込面には、中間部材145を介してカバー部材146が取り付けられている。これにより、FIX障子40の複層ガラス41,42,43間にあるスペーサ44は、室内側Y2から見えない構造となっている。パラレル移動障子20側の縦枠13の室内側Y2において、左右方向Xの内側の見込面には、カバー部材136が取り付けられている。パノラマ窓1において、FIX障子40を設けないこともあるが、FIX障子40を設けない場合において、スライド移動障子30が縦枠14側に設置される場合も同様に、中間部材145を介してカバー部材146が取り付けられる。この場合も同様に、スライド移動障子30の複層ガラス31,32,33間にあるスペーサ34は、室内側Y2から見えない構造となる。本実施形態においては、中間部材145及びカバー部材136,146ともにアルミニウムからなるが、樹脂で構成されてもよい。
【0013】
図2~
図4に示すように、FIX障子40は、枠体10内の左右方向XのX2側に固定される。パラレル移動障子20及びスライド移動障子30は、枠体10内のFIX障子40よりも左右方向XのX1側において、閉位置(
図1及び
図2参照)と、途中位置(
図3参照)と、開位置(
図4参照)と、に移動可能である。
【0014】
パラレル移動障子20は、閉位置において、枠体10内の左右方向XのX1側(
図1参照)に配置され、パラレル側見込方向移動機構5(一対のパラレル側見込方向上部移動機構51、一対のパラレル側見込方向下部移動機構52)(
図1参照)により、見込方向Yに移動可能に構成される。スライド移動障子30は、閉位置において、枠体10内の左右方向の中央(
図1参照)に配置され、スライド側見付方向移動機構(図示せず)により、左右方向Xの中央からX1側に移動可能に構成される。
【0015】
本実施形態においては、パラレル移動障子20は、枠体10内において見込方向Y(室内外方向)のみに移動可能である。また、スライド移動障子30は、枠体10内において、見付方向の左右方向X(横方向)のみに移動可能である。これにより、パラレル移動障子20を枠体10内において見込方向Yのみに移動した後に、スライド移動障子30を見付方向の左右方向Xのみに移動させて、パノラマ窓1を開くことができる。これにより、眺望性を保ちつつ、開閉可能なパノラマ窓1を実現できる。
【0016】
パノラマ窓1が閉位置に位置した場合に、
図2に示すように、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40は、枠体10内において、左右方向XのX1側からX2側に向けて、この順に一直線上に並んで配置される。
【0017】
パノラマ窓1を閉位置(
図1及び
図2参照)から開位置(
図4参照)に移動させる場合には、
図2に示す閉位置から、パラレル移動障子20を見込方向Yの室内側Y2に移動させることで
図3に示す途中位置に移動させて、
図3に示す途中位置から、スライド移動障子30を見付方向の左右方向XのX1側に移動させることで、
図4に示す開位置に移動させることができる。
【0018】
また、パノラマ窓1を開位置(
図4参照)から閉位置(
図1及び
図2参照)に移動させる場合には、
図4に示す開位置から、スライド移動障子30を見付方向の左右方向XのX2側に移動させることで
図3に示す途中位置に移動させて、
図3に示す途中位置から、パラレル移動障子20を見込方向Yの室外側Y1に移動させることで、
図2に示す開位置に移動させることができる。
【0019】
次に、パラレル移動障子20が見込方向Yに移動する場合の周辺の関連動作について説明する。詳細には、パラレル移動障子20が駆動する際に、パラレル側上部回転蓋部15及びパラレル側下部回転蓋部16が同期して駆動する動作の詳細について説明する。
図5に示すように、パノラマ窓1は、パラレル移動障子20と、パラレル側上部回転蓋部15と、パラレル側下部回転蓋部16と、パラレル側見込方向移動機構5と、パラレル側上部開閉機構6と、パラレル側下部開閉機構7と、制御部8と、を備える。
【0020】
上枠11には、
図5に示すように、下方に向けて開放する上枠下方開口部111が形成される。上枠下方開口部111には、パノラマ窓1が閉位置に位置した状態において、パノラマ窓1の左右方向XのX1側(
図1参照)においては、
図5に示すように、パラレル移動障子20の上端部が配置される。パラレル移動障子20の上端部は、パノラマ窓1の左右方向XのX1側(
図1~
図3参照)において、見込方向Yに移動可能に配置される。
【0021】
下枠12には、
図5に示すように、上方に向けて開放する下枠上方開口部121が形成される。下枠12において、下枠上方開口部121の下方側の内部は、パラレル移動障子20の下端部が配置される障子配置溝である。下枠上方開口部121には、パノラマ窓1が閉位置に位置した状態において、パノラマ窓1の左右方向XのX1側(
図1参照)においては、
図5に示すように、パラレル移動障子20の下端部が配置される。パラレル移動障子20の下端部は、パノラマ窓1の左右方向XのX1側(
図1~
図3参照)において、見込方向Yに移動可能に配置される。
【0022】
パラレル側見込方向移動機構5は、
図1に示すように、パラレル移動障子20の上端部の左右方向Xの両端側に接続される一対のパラレル側見込方向上部移動機構51と、パラレル移動障子20の下端部の左右方向Xの両端側に接続される一対のパラレル側見込方向下部移動機構52と、を有する。
【0023】
一対のパラレル側見込方向上部移動機構51及び一対のパラレル側見込方向下部移動機構52は、パラレル移動障子20を見込方向Yのみに移動させることができる。パラレル側見込方向上部移動機構51及びパラレル側見込方向下部移動機構52は、パラレル移動障子20を、
図5~
図7に示すように、
図5に示す室外側Y1の位置から、
図6に示す見込方向Yの途中位置を経由して、
図7に示す室内側Y2の位置まで、の間を移動させることができる。また、それとは逆に、一対のパラレル側見込方向上部移動機構51及び一対のパラレル側見込方向下部移動機構52は、パラレル移動障子20を、
図5~
図7に示すように、
図7に示す室内側Y2の位置から、
図6に示す見込方向Yの途中位置を経由して、
図5に示す室外側Y1の位置まで、の間を移動させることができる。
【0024】
パラレル側見込方向上部移動機構51及びパラレル側見込方向下部移動機構52は、
図5に示すように、パラレル移動用モータ511,521(第1駆動部)と、見込方向移動軸512,522(移動軸)と、突出ピン部材513a,523aが形成された移動プレート513,523と、L字状連結部514,524(連結部)と、を備える。
【0025】
L字状連結部514は、パラレル移動障子20の上部において、パラレル側見込方向上部移動機構51の突出ピン部材513aとパラレル移動障子20とを連結する。L字状連結部524は、パラレル移動障子20の下部において、パラレル側見込方向下部移動機構52の突出ピン部材523aとパラレル移動障子20とを連結する。パラレル移動障子20の下部において、パラレル側見込方向下部移動機構52の突出ピン部材523aとパラレル移動障子20とを連結する。見込方向移動軸512,522は、移動プレート513,523を見込方向Yに移動させる送りねじ機構を有する。
【0026】
以上のように構成されるパラレル側見込方向上部移動機構51及びパラレル側見込方向下部移動機構52は、パラレル移動用モータ511,521を駆動することで、移動プレート513,523の突出ピン部材513a,523aに連結されたL字状連結部514,524を見込方向Yに移動させる。これにより、パラレル移動障子20は、パラレル移動用モータ511,521の駆動により、見込方向Y(室内外方向)のみに移動する。
【0027】
パラレル移動障子20が見込方向Y(室内外方向)に移動する場合に、
図1に示すパノラマ窓1の左右方向XのX1側(
図1参照)において、
図5~
図7に示すように、パラレル移動障子20の見込方向Yへの移動に同期して、上枠11において、パラレル側上部開閉機構6により、パラレル側上部回転蓋部15(移動部材、蓋部)が回転駆動され、下枠12において、パラレル側下部開閉機構7により、パラレル側下部回転蓋部16(移動部材、蓋部)が回転駆動される。パラレル側上部開閉機構6は、回転軸61aを有する上部蓋開閉モータ61(第2駆動部)を備える。パラレル側下部開閉機構7は、回転軸71aを有する下部蓋開閉モータ71(第2駆動部)を備える。
【0028】
パラレル側上部回転蓋部15は、
図5~
図7に示すように、上枠11の上枠下方開口部111を開閉するように上枠11の下面に配置される。パラレル側上部回転蓋部15は、パラレル移動障子20の上部において、パラレル移動障子20の室内側Y2の側方に回転可能に配置される。パラレル側上部回転蓋部15は、パラレル側上部開閉機構6の上部蓋開閉モータ61の回転軸61aに接続される。
【0029】
パラレル側上部回転蓋部15は、パラレル側上部開閉機構6に接続されるモータ側枠部151と、連結部材153を介してモータ側枠部151に接続される蓋側枠部152と、を有する。蓋側枠部152の先端152aは、パラレル移動障子20の室内側Y2の側面20aに対向して配置されている。
【0030】
モータ側枠部151及び蓋側枠部152は、互いが連結部材153を介して固定されることで一体に構成される。パラレル側上部回転蓋部15は、パラレル側上部開閉機構6の上部蓋開閉モータ61が駆動されることで、
図5~
図7に示すように、上部蓋開閉モータ61の回転軸61aを中心に一体で回転される。
【0031】
パラレル側上部回転蓋部15は、上枠11の上枠下方開口部111を見込方向Yに移動されるパラレル移動障子20の室内側Y2において、蓋側枠部152が上枠下方開口部111を閉める閉位置(
図5参照)と、蓋側枠部152が室内側Y2の斜め上側に回転して退避して上枠下方開口部111を途中まで開ける途中開位置(
図6参照)と、蓋側枠部152が室内側Y2の斜め上側に回転して退避して上枠下方開口部111を全部開ける開位置(
図7参照)と、の間を回転移動可能である。
【0032】
図5に示すように、パラレル移動障子20が室外側Y1に位置する場合には、パラレル側上部回転蓋部15を閉位置に位置させる。
図6に示すように、パラレル側上部回転蓋部15を徐々に閉める側に回転させて、その後、
図7に示すように、パラレル側上部回転蓋部15を閉位置に位置させた場合には、上枠下方開口部111が閉められる。パラレル側上部回転蓋部15を閉位置に位置させて上枠下方開口部111が閉められた状態においては、パラレル側上部回転蓋部15の蓋側枠部152の下面と、上枠11の室外側Y1の下端に設けられる上枠室外側カバー112の下面と、上枠11の室内側Y2の下端に設けられる上枠室内側カバー113の下面と、が同一平面上に配置される。上枠室内側カバー113は、取り外し可能に上枠11に引っ掛けるように設置されている。
【0033】
パラレル移動障子20を、室外側Y1(
図2参照)から室内側Y2(
図3参照)に移動させる場合、又は、室内側Y2(
図3参照)から室外側Y1(
図2参照)に移動させる場合には、
図5~
図7に示すように、制御部8(後述)の制御により、パラレル移動障子20を見込方向Yに移動させる駆動に同期されて、パラレル側上部回転蓋部15は、回転駆動される。
【0034】
図2に示すように、パノラマ窓1が閉位置に位置した場合において、パラレル移動障子20のX1側に配置された補強部材25の室外側Y1の見付面には、縦枠13の室外側Y1に配置された室外側部分の室内側Y2の面に取り付けられた当接材13aが接触する。当接材13aは、軟質樹脂で形成されている。
【0035】
また、FIX障子40のX2側に配置された補強部材45の室外側Y1の見付面には、縦枠14の室外側Y1に配置された室外側部分の室内側Y2の面に取り付けられた当接材14aが接触する。FIX障子40のX2側に配置された補強部材45の室内側Y2の見付面には、縦枠14の室内側Y2に配置された室内側部分の室外側Y1の面に取り付けられた当接材14bが接触する。当接材14a及び当接材14bは、軟質樹脂で形成されており、FIX障子40のX2側に配置された補強部材45の室外側Y1の見付面及び室内側Y2の見付面に接触することで、FIX障子40の変形に追随してクッション的な役割を果たすことができる。
【0036】
図2に示すように、一対の縦枠13,14の呑み込み部には、それぞれ、シート状の気密材50が配置される。シート状の気密材50の周辺の構造について説明する。縦枠13,14に配置されるシート状の気密材50の周辺の構造は、左右対称の構造である。そのため、本実施形態においては、X2側の縦枠14に配置されるシート状の気密材50の周辺の構造について説明する。
【0037】
シート状の気密材50は、
図8に示すように、見込方向Yに延びて形成され、室外側Y1において見込方向Yに延びる直線部531と、直線部531の室内側Y2の端部に接続され室内側Y2において見込方向Yに対して傾斜して延びる傾斜部532と、室外側Y1の端部の外周側に形成される室外側端部突出部533と、室内側Y2の端部の外周側に形成される室内側端部突出部534と、を有する。
【0038】
シート状の気密材50は軟質樹脂で形成され、
図8に示すように、補強部材45と接触することで、補強部材45と縦枠14との間の気密性を高めることができる。シート状の気密材50の室外側端部突出部533及び室内側端部突出部534は、アルミニウム材料で形成された長尺の板状部材81の見込方向の両端に固定されている。シート状の気密材50の外周側に位置する板状部材81は、シート被固定部材82にネジ81aなどの固定部材で取り付けられる。このシート被固定部材82はさらに外周側に対向部材83を有し、シート被固定部材82と対向部材83は、ねじ83aにより、ねじ止めされている。このねじ83aを締めたり緩めたりすることで、シート状の気密材50の張り具合を調整できる。
【0039】
また、板状部材81は見込方向の室外側Y1の端部において外周側に折り曲げられる折り曲げ片811を有しており、折り曲げ片811の外周側の端部には、樹脂部材84が設置されている。この樹脂部材64は、縦枠14の呑み込み部において内周側に突出させた突出部141と接触している。突出部141は、縦枠14の呑み込み部においてX1側の面から左右方向XのX1側に突出する突出片141aと、突出片141aのX方向の途中の部分から室内側Y2に延出する延出部141bと、を有する。延出部141bは、ねじ83aにより、対向部材83の室外側Y1の部分に固定されている。
【0040】
このようにシート状の気密材50を用いることでFIX障子40に風圧などによる高さ方向もしくは幅方向(見込方向Y)の反りが生じた場合でも、シート状の気密材50と補強部材45との接触面積を確保できるため、気密性を維持することができる。特に大型のFIX障子40を用いる場合には、FIX障子40の反りも大きくなることから効果的である。
【0041】
パノラマ窓1の下枠12の内部には、下部支持枠124が配置される。下部支持枠124の上面は、水平面状に形成される。下部支持枠124の上面のX1側の一部には、パラレル用レール板125が固定される。
【0042】
パラレル用レール板125の上面には、パラレル移動障子20が見込方向Yに移動可能に配置される。パラレル用レール板125の上面には、
図5~
図7に示すように、パラレル移動障子20が室内側Y2に位置する場合に、パラレル移動障子20の見込方向移動戸車26が配置される。パラレル用レール板125は、例えば、ステンレス材料により形成される。
【0043】
パラレル側下部回転蓋部16は、
図5~
図7に示すように、下枠12の下枠上方開口部121を開閉するように下枠12の上面に配置される。パラレル側下部回転蓋部16は、パラレル移動障子20の下部において、パラレル移動障子20の室内側Y2の側方に回転可能に配置される。パラレル側下部回転蓋部16は、パラレル側下部開閉機構7の下部蓋開閉モータ71の回転軸71aに接続される。
【0044】
パラレル側下部回転蓋部16は、パラレル側下部開閉機構7に接続されるモータ側枠部161と、連結部材163を介してモータ側枠部161に接続される蓋側枠部162と、を有する。蓋側枠部162の先端162aは、パラレル移動障子20の室内側Y2の側面20aに対向して配置されている。
【0045】
モータ側枠部161及び蓋側枠部162は、互いが連結部材163を介して固定されることで一体に構成される。パラレル側下部回転蓋部16は、パラレル側下部開閉機構7の下部蓋開閉モータ71が駆動されることで、
図5~
図7に示すように、下部蓋開閉モータ71の回転軸71aを中心に一体で回転される。
【0046】
パラレル側下部回転蓋部16は、下枠12の下枠上方開口部121を見込方向Yに移動されるパラレル移動障子20の室内側Y2において、蓋側枠部162が下枠上方開口部121を閉める閉位置(
図5参照)と、蓋側枠部162が室内側Y2の斜め下側に回転して退避して下枠上方開口部121を途中まで開ける途中開位置(
図6参照)と、蓋側枠部162が室内側Y2の斜め下側に回転して退避して下枠上方開口部121を全部開ける開位置(
図7参照)と、の間を回転移動可能である。
【0047】
図5に示すように、パラレル移動障子20が室外側Y1に位置する場合には、パラレル側下部回転蓋部16を閉位置に位置させる。
図6に示すように、パラレル側下部回転蓋部16を徐々に閉める側に回転させて、その後、
図7に示すように、パラレル側下部回転蓋部16を閉位置に位置させた場合には、下枠上方開口部121が閉められる。パラレル側下部回転蓋部16を閉位置に位置させて下枠上方開口部121が閉められた状態においては、パラレル側下部回転蓋部16の蓋側枠部162の上面と、下枠12の室外側Y1の上端に設けられる下枠室外側カバー122の上面と、下枠12の室内側Y2の上端に設けられる下枠室内側カバー123の上面と、が同一平面上に配置される。下枠室内側カバー123は、取り外し可能に下枠12に引っ掛けるように設置されている。
【0048】
パラレル移動障子20を、室外側Y1(
図2参照)から室内側Y2(
図3参照)に移動させる場合、又は、室内側Y2(
図3参照)から室外側Y1(
図2参照)に移動させる場合には、
図5~
図7に示すように、制御部8(後述)の制御により、パラレル移動障子20を見込方向Yに移動させる駆動に同期されて、パラレル側下部回転蓋部16は、回転駆動される。
【0049】
制御部8は、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15とを移動させる場合に、
図5~
図7に示すように、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15との距離L又はパラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16との距離Lを一定に保つように、第1駆動部(パラレル側見込方向上部移動機構51のパラレル移動用モータ511、パラレル側見込方向下部移動機構52のパラレル移動用モータ521)及び第2駆動部(パラレル側上部開閉機構6の上部蓋開閉モータ61、パラレル側下部開閉機構7の下部蓋開閉モータ71)を制御する。
【0050】
より具体的には、制御部8は、パラレル移動障子20を室外側Y1から室内側Y2に移動させる場合においても、パラレル移動障子20を室内側Y2から室外側Y1に移動させる場合においても、パラレル移動障子20の上部においては、パラレル移動障子20の室内側Y2の側面20aとパラレル側上部回転蓋部15の先端152aとの間の距離を一定距離Lに保ちながら、パラレル側上部開閉機構6の上部蓋開閉モータ61及びパラレル側見込方向上部移動機構51のパラレル移動用モータ511を駆動するように制御する。また、パラレル移動障子20の下部においては、パラレル移動障子20の室内側Y2の側面20aとパラレル側下部回転蓋部16の先端162aとの間の距離を一定距離Lに保ちながら、パラレル側下部開閉機構7の下部蓋開閉モータ71及びパラレル側見込方向下部移動機構52のパラレル移動用モータ521を駆動するように制御する。
【0051】
一定距離Lは、パラレル移動障子20の上部においては、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15とが接触しない距離であって、パラレル移動障子20が上枠11の上枠下方開口部111を見込方向Yに移動した後においても外部から上枠11の上枠下方開口部111の室内側Y2の内部が視認されずに、指が入らない距離が好ましい。
【0052】
また、一定距離Lは、パラレル移動障子20の下部においては、パラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16とが接触しない距離であって、パラレル移動障子20が下枠12の下枠上方開口部121を見込方向Yに移動した後においても外部から下枠12の下枠上方開口部121の内部が視認されずに、指が入らない距離が好ましい。
【0053】
一定距離Lは、パラレル移動障子20の可動中のいかなる時においてもぴったり同じ距離でなくてもよく、僅かに変化の幅を有していてもよい。本実施形態においては、例えば、一定距離Lを2.85mm~4.2mmに設定しており、この一定距離Lを保つように制御されている。
【0054】
制御部8は、パラレル移動障子20の上部においては、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15とを移動させる場合に、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15との移動開始タイミングを一致させ、かつ、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15との移動完了タイミングを一致させるように、パラレル側見込方向上部移動機構51のパラレル移動用モータ511及びパラレル側上部開閉機構6の上部蓋開閉モータ61を制御する。
【0055】
また、制御部8は、パラレル移動障子20の下部においては、パラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16とを移動させる場合に、パラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16との移動開始タイミングを一致させ、かつ、パラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16との移動完了タイミングを一致させるように、パラレル側見込方向下部移動機構52のパラレル移動用モータ521及びパラレル側下部開閉機構7の下部蓋開閉モータ71を制御する。
【0056】
これにより、パラレル移動障子20の移動開始から移動完了まで、パラレル移動障子20の駆動動作とパラレル側上部回転蓋部15の駆動動作とを、同期させることができ、パラレル移動障子20の駆動動作とパラレル側下部回転蓋部16の駆動動作とを、同期させることができる。本実施形態においては、制御部8は、パラレル移動障子20の駆動動作に同期しているため、パラレル移動障子20の上部においてのパラレル側上部回転蓋部15の駆動動作も、パラレル移動障子20の下部においてのパラレル側下部回転蓋部16の駆動動作も、同期して駆動している。
【0057】
本実施形態においては、パラレル移動障子20の駆動動作とパラレル側上部回転蓋部15の駆動動作とにおいて、及び、パラレル移動障子20の駆動動作とパラレル側下部回転蓋部16の駆動動作とにおいて、移動開始から移動完了までの時間を所定時間に設定できる。本実施形態において、例えば、移動開始から移動完了までの時間を、7~12秒に設定している。
【0058】
本実施形態のパノラマ窓1において、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15との距離Lを一定に保つ制御や、パラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16との距離Lを一定に保つ制御は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。本実施形態においては、パノラマ窓1に用いられるプログラムとして、コンピュータに、パラレル移動障子20とパラレル側上部回転蓋部15との距離L又はパラレル移動障子20とパラレル側下部回転蓋部16との距離Lを一定に保つように、第1駆動部(パラレル側見込方向上部移動機構51のパラレル移動用モータ511、パラレル側見込方向下部移動機構52のパラレル移動用モータ521)及び第2駆動部(パラレル側上部開閉機構6の上部蓋開閉モータ61、パラレル側下部開閉機構7の下部蓋開閉モータ71)を制御する処理を行わせるためのプログラムとすることができる。
【0059】
以上説明したパノラマ窓1は、第1駆動部(パラレル移動用モータ511,521)の駆動により移動するパラレル移動障子20と、パラレル移動障子20の側方に配置され、第1駆動部(パラレル移動用モータ511,521)とは別の第2駆動部(上部蓋開閉モータ61,下部蓋開閉モータ71)の駆動により移動する蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)と、第1駆動部(パラレル移動用モータ511,521)と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)との距離Lを一定に保つように、第1駆動部(パラレル移動用モータ511,521)及び第2駆動部(上部蓋開閉モータ61,下部蓋開閉モータ71)を制御する制御部8と、を備える。
【0060】
これにより、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)との間の距離Lを一定に保つことで、パラレル移動障子20が移動した後の上枠11及び下枠12の開口部(上枠下方開口部111、下枠上方開口部121)が外部から視認されにくいため、意匠性を向上できる。また、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)との間の距離Lを一定に保つことで、上枠11及び下枠12の開口部(上枠下方開口部111、下枠上方開口部121)に物が落下することを低減できる。更には、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)との間の距離Lを一定に保つことで、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)との間の距離が変化する場合よりも、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)との間に指を挟むことを抑制できる。以上により、パラレル移動障子20が上枠11内又は下枠12内を移動する場合に、意匠性を向上でき、かつ、安全性を確保することができる。
【0061】
また、パラレル移動障子20を第1駆動部(パラレル移動用モータ511,521)の駆動により移動させ、蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)を第1駆動部(パラレル移動用モータ511,521)とは別の第2駆動部(上部蓋開閉モータ61,下部蓋開閉モータ71)の駆動により移動させるため、蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)のメンテナンスの際に、蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)を構成するユニットだけを単独で動かすことができるため、清掃や交換などのメンテナンス作業を容易に行うことができ、メンテナンス性を向上できる。
【0062】
また、本実施形態においては、制御部8は、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15、パラレル側下部回転蓋部16)とを移動させる場合に、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15、パラレル側下部回転蓋部16)との移動開始タイミングを一致させ、かつ、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15、パラレル側下部回転蓋部16)との移動完了タイミングを一致させるように、パラレル移動用モータ511,521及び蓋開閉モータ(上部蓋開閉モータ61、下部蓋開閉モータ71)を制御する。これにより、パラレル移動障子20と蓋部(パラレル側上部回転蓋部15、パラレル側下部回転蓋部16)とを同期させて移動させることができる。
【0063】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。また、本実施形態では室内側Y2から見て左側から順に、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40が配置されているが、パラレル移動障子20とスライド移動障子30が隣接する並びであればよい。例えば、室内側Y2から見て左側から、FIX障子40、スライド移動障子30、パラレル移動障子20の順でもよいし、パラレル移動障子20、スライド移動障子30、スライド移動障子30、パラレル移動障子20の順で並んでもよく、これらの左右方向の両端又は一方の端にFIX障子40が配置されていてもよい。また、スライド移動障子30、パラレル移動障子20だけでもよい。
【0064】
前記実施形態においては、蓋部(パラレル側上部回転蓋部15,パラレル側下部回転蓋部16)を、障子(パラレル移動障子20)の側方に配置して駆動により移動させたが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0065】
1 パノラマ窓(建具)、8 制御部、15 パラレル側上部回転蓋部(移動部材、蓋部)、16 パラレル側下部回転蓋部(移動部材、蓋部)、20 パラレル移動障子(障子)、61 上部蓋開閉モータ(第2駆動部)、71 下部蓋開閉モータ(第2駆動部)、511,521 パラレル移動用モータ(第1駆動部)