(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141794
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20230928BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20230928BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20230928BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20230928BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20230928BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20230928BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230928BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230928BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230928BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20230928BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
B60W10/26 900
B60W20/00 900
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
F02D29/06 D
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048291
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 孝士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼下 祐介
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB05
3D202BB12
3D202BB19
3D202BB22
3D202CC42
3D202DD45
3D202DD46
3D202EE00
3D202FF04
3D202FF13
3G093AA07
3G093BA21
3G093CA01
3G093DA01
3G093DA06
3G093DB01
3G093DB05
3G093DB09
3G093DB19
3G093DB20
3G093EA02
3G093EA03
3G093EA05
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC13
5H125BC19
5H125BD17
5H125CA02
5H125CD09
5H125DD05
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE42
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】温度条件に関係なく、エンジンの始動に必要なバッテリのSOCを得る。
【解決手段】ハイブリッド車両システム1は、車両を駆動するエンジン2と、エンジンを始動させ且つエンジンの駆動により発電されるモータジェネレータ3と、モータジェネレータの発電により充電されるバッテリ4と、現時点でのバッテリのSOC検出値K2を検出するSOCセンサSN6と、エンジン及びモータジェネレータを制御するコントローラ10と、を備える。コントローラは、車両の次回始動時点での外気温度(バッテリ温度)を温度推定値Ta2として推定し、温度推定値に基づいて次回始動時点で必要なバッテリのSOC閾値K1を決定し、SOC検出値がSOC閾値を満たさないと判定した場合、現時点から次回始動時点までの間に、モータジェネレータの発電によりバッテリを充電することによって、バッテリのSOCがSOC閾値に到達するようにSOCを増大させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するエンジンと、
前記エンジンを始動させるとともに前記エンジンの駆動により発電されるモータジェネレータと、
前記モータジェネレータの発電により充電されるバッテリと、を備えるハイブリッド車両システムであって、
現時点における前記バッテリのSOCをSOC検出値として検出するSOCセンサと、
前記エンジン及び前記モータジェネレータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記車両の次回始動時点における前記バッテリの温度を温度推定値として推定する温度推定部と、
前記温度推定値に基づいて前記次回始動時点で必要な前記バッテリの前記SOCをSOC閾値として決定するSOC閾値決定部と、
前記SOC検出値が前記SOC閾値を満たすか否かを判定するSOC判定部と、含み、
前記制御部は、前記SOC検出値が前記SOC閾値に満たないと判定された場合、前記現時点から前記次回始動時点までの間に、前記モータジェネレータの発電により前記バッテリを充電することによって、前記SOCが前記SOC閾値に到達し得るように前記SOCを増大させる、ハイブリッド車両システム。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両システムであって、
前記現時点における前記バッテリの温度を温度検出値として検出するバッテリ温度センサと、
前記バッテリを昇温するヒータと、を備え、
前記制御部は、
前記温度検出値に基づいて前記バッテリの充電効率を算出する充電効率算出部と、
前記現時点から前記次回始動時点までの前記車両の運転予定時間を推定する運転予定時間推定部と、
前記充電効率に基づいて前記運転予定時間中に前記SOCが前記SOC閾値に到達するか否かを判定する閾値到達判定部と、を含み、
前記制御部は、前記運転予定時間中に前記SOCが前記SOC閾値に到達しないと判定された場合、前記ヒータにより前記バッテリを昇温することによって、前記充電効率を増大させる、ハイブリッド車両システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両システムであって、
前記バッテリを昇温するヒータを備え、
前記制御部は、前記次回始動時点までに前記SOCが前記SOC閾値に到達しなかった場合には、前記次回始動時点において前記ヒータにより前記バッテリを昇温することによって、前記SOC閾値を減少させる、ハイブリッド車両システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のハイブリッド車両システムであって、
前記モータジェネレータは、前記エンジンによる前記車両の駆動をアシスト可能であり、
前記制御部は、
前記車両の要求駆動力が前記エンジンの高効率駆動点での高効率駆動力よりも小さい場合、前記エンジンを前記高効率駆動点で駆動するとともに、前記高効率駆動力から前記要求駆動力を差し引いた余剰分を前記モータジェネレータの発電に利用し、
前記要求駆動力が前記高効率駆動力よりも大きい場合、前記エンジンを前記高効率駆動点で駆動するとともに、前記要求駆動力から前記高効率駆動力を差し引いた不足分を前記モータジェネレータによってアシストし、
前記SOC検出値が前記SOC閾値に満たない場合、前記モータジェネレータによる前記アシストを行わずに、前記モータジェネレータの発電を行うとともに、前記要求駆動力を前記エンジンのみによって出力する、ハイブリッド車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を駆動するエンジンと、エンジンを始動させるとともにエンジンの駆動により発電されるモータジェネレータと、モータジェネレータの発電により充電されるバッテリと、を備えるハイブリッド車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のハイブリッドシステムでは、モータジェネレータは、エンジンを始動させるスタータモータとして機能する一方、エンジンの駆動により発電されるジェネレータとしても機能する。モータジェネレータにより発電された電力は、バッテリに充電される。さらに、モータジェネレータは、エンジンによる車両の駆動をアシストするアシストモータとしても機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリの出力は、バッテリのSOC(State Of Charge:充電状態)及びバッテリの温度に、大きく依存する。基本的に、バッテリのSOCが小さくなるに従って、バッテリの出力が小さくなる。さらに、バッテリの温度の低い領域では、バッテリの温度が低くなるに従って、バッテリの所定出力を得るのに必要なSOCが大きくなる。
【0005】
このため、特に寒冷時では、バッテリのSOCがそれほど小さくない場合でも、バッテリの出力を十分に得られず、モータジェネレータによりエンジンをスムーズに始動できなくなるおそれがある。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、温度条件に関係なく、モータジェネレータによるエンジンの始動に必要なバッテリのSOCを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るハイブリッド車両システムは、車両を駆動するエンジンと、上記エンジンを始動させるとともに上記エンジンの駆動により発電されるモータジェネレータと、上記モータジェネレータの発電により充電されるバッテリと、を備えるハイブリッド車両システムであって、現時点における上記バッテリのSOCをSOC検出値として検出するSOCセンサと、上記エンジン及び上記モータジェネレータを制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記車両の次回始動時点における上記バッテリの温度を温度推定値として推定する温度推定部と、上記温度推定値に基づいて上記次回始動時点で必要な上記バッテリの上記SOCをSOC閾値として決定するSOC閾値決定部と、上記SOC検出値が上記SOC閾値を満たすか否かを判定するSOC判定部と、含み、上記制御部は、上記SOC検出値が上記SOC閾値に満たないと判定された場合、上記現時点から上記次回始動時点までの間に、上記モータジェネレータの発電により上記バッテリを充電することによって、上記SOCが上記SOC閾値に到達し得るように上記SOCを増大させる。
【0008】
バッテリの温度の低い領域では、バッテリの温度が低くなるに従って、バッテリの所定出力を得るのに必要なSOC閾値が大きくなる。そこで、先ず、SOCセンサによって、現時点におけるバッテリのSOC検出値を、検出する。
【0009】
次に、温度推定部によって、車両の次回始動時点におけるバッテリの温度推定値を、推定する。SOC閾値決定部によって、バッテリの温度推定値に基づいて、次回始動時点で必要なバッテリのSOC閾値を、決定する。SOC判定部によって、SOC検出値がSOC閾値を満たすか否かを、判定する。
【0010】
ここで、バッテリのSOCがSOC閾値に満たない場合、モータジェネレータによりエンジンを始動させるのに必要なバッテリの出力を、得ることができない。このため、SOC検出値がSOC閾値に満たないと判定された場合には、現時点から次回始動時点までの間に、モータジェネレータの発電によりバッテリを充電することによって、バッテリのSOCを増大させる。これにより、バッテリのSOCは、モータジェネレータによるエンジンの始動に必要なSOC閾値に、到達し得る。
【0011】
以上、バッテリの温度条件に関係なく、モータジェネレータによるエンジンの始動に必要なバッテリのSOCを、得ることができる。
【0012】
一実施形態では、上記現時点における上記バッテリの温度を温度検出値として検出するバッテリ温度センサと、上記バッテリを昇温するヒータと、を備え、上記制御部は、上記温度検出値に基づいて上記バッテリの充電効率を算出する充電効率算出部と、上記現時点から上記次回始動時点までの上記車両の運転予定時間を推定する運転予定時間推定部と、上記充電効率に基づいて上記運転予定時間中に上記SOCが上記SOC閾値に到達するか否かを判定する閾値到達判定部と、を含み、上記制御部は、上記運転予定時間中に上記SOCが上記SOC閾値に到達しないと判定された場合、上記ヒータにより上記バッテリを昇温することによって、上記充電効率を増大させる。
【0013】
バッテリの温度の低い領域では、バッテリの温度が高くなるに従って、バッテリの充電効率が大きくなることが知られている。そこで、バッテリ温度センサによって、現時点におけるバッテリの温度検出値を、検出する。充電効率算出部によって、バッテリの温度検出値に基づいて、バッテリの充電効率を算出する。運転予定時間推定部によって、現時点から次回始動時点までの車両の運転予定時間を、推定する。閾値到達判定部によって、バッテリの充電効率に基づいて、運転予定時間中にバッテリのSOCがSOC閾値に到達するか否かを、判定する。
【0014】
そして、制御部は、運転予定時間中にバッテリのSOCがSOC閾値に到達しないと判定された場合、ヒータによりバッテリを昇温することによって、バッテリの充電効率を増大させる。
【0015】
これにより、バッテリのSOCを増大させやすくなるので、バッテリのSOCを、次回始動時点までにSOC閾値に到達させやすくなる。
【0016】
一実施形態では、上記制御部は、上記次回始動時点までに上記SOCが上記SOC閾値に到達しなかった場合には、上記次回始動時点において上記ヒータにより上記バッテリを昇温することによって、上記SOC閾値を減少させる。
【0017】
かかる構成によれば、仮に、次回始動時点までにバッテリのSOCがSOC閾値に到達しなかった場合には、次回始動時点においてヒータによりバッテリを昇温することによって、SOC閾値を実際のSOCに近づける。これにより、次回始動時点までにバッテリのSOCがSOC閾値に到達しなかった場合であっても、モータジェネレータによりエンジンを始動させることができる。
【0018】
一実施形態では、上記モータジェネレータは、上記エンジンによる上記車両の駆動をアシスト可能であり、上記制御部は、上記車両の要求駆動力が上記エンジンの高効率駆動点での高効率駆動力よりも小さい場合、上記エンジンを上記高効率駆動点で駆動するとともに、上記高効率駆動力から上記要求駆動力を差し引いた余剰分を上記モータジェネレータの発電に利用し、上記要求駆動力が上記高効率駆動力よりも大きい場合、上記エンジンを上記高効率駆動点で駆動するとともに、上記要求駆動力から上記高効率駆動力を差し引いた不足分を上記モータジェネレータによってアシストし、上記SOC検出値が上記SOC閾値に満たない場合、上記モータジェネレータによる上記アシストを行わずに、上記モータジェネレータの発電を行うとともに、上記要求駆動力を上記エンジンのみによって出力する。
【0019】
かかる構成によれば、エンジンを可能な限り高効率駆動点で駆動することができるので、燃費の向上を図ることができる。また、バッテリのSOC検出値がSOC閾値に満たない場合に、モータジェネレータをアシストではなく発電に用いることによって、バッテリを効果的に充電することができるので、バッテリのSOCをSOC閾値に到達させる上で有利になる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、温度条件に関係なく、モータジェネレータによるエンジンの始動に必要なバッテリのSOCを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るハイブリッド車両システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、外気温度に応じたバッテリにおけるSOCと出力との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、ハイブリッド車両システムの制御態様を示す制御ブロック図である。
【
図4】
図4は、現時点から次回始動時点までのハイブリッド車両システムの制御フローを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、車両の走行中におけるハイブリッド車両システムの制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0023】
(ハイブリッド車両システムの構成)
図1は、ハイブリッド車両システム1を示す概略構成図である。ハイブリッド車両システム1は、エンジン2と、モータジェネレータ3と、バッテリ4と、インバータ5と、クラッチ6と、トランスミッション7と、ヒータ8と、制御部としてのコントローラ10と、を備える。
【0024】
エンジン2は、例えばガソリンエンジンである。モータジェネレータ3は、例えばロータ(回転軸)に永久磁石が埋設され且つステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータである。
【0025】
モータジェネレータ3は、バッテリ4からの電力供給によって回転駆動する電動機として、機能する。また、モータジェネレータ3は、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても、機能する。モータジェネレータ3は、例えば、車両の減速時に回生発電可能である。
【0026】
詳細は後述するが、モータジェネレータ3は、車両始動時にエンジン2を始動させるスタータモータとして、機能する。また、モータジェネレータ3は、エンジン2による車両の駆動(走行)をアシスト可能なアシストモータとしても、機能する。
【0027】
バッテリ4は、例えばリチウムイオンバッテリであり、充放電可能である。バッテリ4は、放電によって、電動機としてのモータジェネレータ3に電力を供給する。また、バッテリ4は、発電機としてのモータジェネレータ3の発電によって、充電される。
【0028】
インバータ5は、モータジェネレータ3とバッテリ4との間に介在している。インバータ5は、バッテリ4からの直流電流を三相交流電流に変換して、当該三相交流電流を電動機としてのモータジェネレータ3に印加する。また、インバータ5は、発電機としてのモータジェネレータ3からの三相交流電流を直流電流に変換して、当該直流電流をバッテリ4に供給する。
【0029】
クラッチ6は、エンジン2とモータジェネレータ3との間に介在している。クラッチ6は、エンジン2の出力軸とモータジェネレータ3の回転軸(詳細には回転軸の一端部)とを連結する。クラッチ6は、エンジン2の出力軸とモータジェネレータ3の回転軸とを断接(解放)する。すなわち、クラッチ6は、エンジン2とモータジェネレータ3との間において、トルクの伝達と遮断とを切り替える。
【0030】
クラッチ6は、例えば乾式多板クラッチであって、オイルポンプ(図示せず)からのクラッチ作動油の流量及び圧力を連続的又は段階的に変化させることによって、伝達トルク容量を変更可能である。
【0031】
クラッチ6が連結状態のとき、エンジン2の出力軸及びモータジェネレータ3の回転軸のうちの一方が回転すると、他方も回転する。クラッチ6が解放状態のとき、エンジン2の出力軸及びモータジェネレータ3の回転軸のうちの一方が回転しても、他方は回転しない。
【0032】
トランスミッション7は、エンジン2及び/又はモータジェネレータ3からの動力を変速して、車両の駆動輪9に出力する。トランスミッション7は、詳細な説明及び図示を省略するが、複数の遊星歯車機構と、複数のブレーキ機構と、複数のクラッチ機構7aと、を有する。クラッチ機構7aは、例えば乾式多板クラッチであって、エンジン2及び/又はモータジェネレータ3と駆動輪9との間において、トルクの伝達と遮断とを切り替える。
【0033】
クラッチ6及びクラッチ機構7aがともに連結状態のとき、エンジン2は、モータジェネレータ3及びトランスミッション7を介して、車両の駆動輪9を駆動する(車両を走行させる)。
【0034】
エンジン2が車両の駆動輪9を駆動している状態において、バッテリ4からの電力供給により電動機としてのモータジェネレータ3を駆動することによって、モータジェネレータ3は、アシストモータとして、エンジン2による車両の駆動輪9の駆動をアシストしてもよい。
【0035】
反対に、モータジェネレータ3をアシストモータとして駆動させずに、エンジン2のみによって、車両の駆動輪9を駆動してもよい。そして、エンジン2の駆動によって、発電機としてのモータジェネレータ3を発電させてもよい。
【0036】
モータジェネレータ3は、車両始動時において、スタータモータとして、エンジン2のクランキングを行って、エンジン2を始動させる。
【0037】
ヒータ8は、電気ヒータであって、バッテリ4の近傍に設けられている。ヒータ8は、バッテリ4を昇温する。コントローラ10の詳細については後述する。
【0038】
(外気温度に応じたバッテリにおけるSOCと出力との関係)
図2は、外気温度Ta[℃]に応じたバッテリ4におけるSOC(State Of Charge:充電状態)[%]と出力Q[kw]との関係を示すグラフである。
図2では、寒冷時、具体的には外気温度Taが-10℃,-20℃及び-30℃の場合を例示する。バッテリ4の出力Qは、バッテリ4のSOC及びバッテリ4の温度に、大きく依存する。ここで、車両始動時(車両停止時)では、バッテリ4の温度は、外気温度Taに略等しい(車両始動時におけるバッテリ4の温度≒外気温度Ta)。
【0039】
図2に示すように、バッテリ4のSOCが小さくなるに従って、バッテリ4の出力Qが小さくなる。さらに、外気温度Ta(≒車両始動時におけるバッテリ4の温度)の低い寒冷時では、外気温度Taが低くなるに従って、バッテリ4の任意の出力Qを得るのに必要なSOCが大きくなる。すなわち、モータジェネレータ3によりエンジン2を始動させるのに必要な要求出力値Q1に対応するSOC閾値K1は、外気温度Taが低くなるに従って大きくなる。
【0040】
このため、例えば外気温度Taが-30℃の場合では、SOC閾値K1が非常に大きいので、バッテリ4のSOCがそれほど小さくなくても、バッテリ4の出力Qが要求出力値Q1に満たない可能性がある。そして、車両始動時において、モータジェネレータ3によりエンジン2をスムーズに始動できなくなるおそれがある。特に、アシストモータとして適用されるモータジェネレータ3は、モータ容量が小さいので、この問題を起こしやすい。
【0041】
なお、要求出力値Q1は、エンジン2自体の始動に必要な出力のみならず、エンジン2の始動に伴って駆動する補機の出力をも、含み得る。要求出力値Q1として、補機を含む値及び補機を含まない値の2種類が、用意されてもよい。要求出力値Q1は、一義的に決定されてもよいし、都度計算されてもよい。
【0042】
本実施形態に係るハイブリッド車両システム1では、外気温度Ta(≒車両始動時におけるバッテリ4の温度)に関係なく(特に外気温度Taが低い場合であっても)、モータジェネレータ3によるエンジン2の始動に必要なバッテリ4のSOCを得ることを、可能にした。
【0043】
(ハイブリッド車両システムの制御)
図3は、ハイブリッド車両システム1の制御態様を示す制御ブロック図である。コントローラ10は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御器である。コントローラ10は、コンピュータで構成されており、図示しないが、1つ以上のプロセッサ(典型的にはCPU)と、ROMやRAMのようなメモリと、を含む。メモリは、プロセッサ上で解釈実行される各種プログラム(OS等の基本制御プログラムや、OS上で起動されて特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及び各種データを記憶する。
【0044】
ハイブリッド車両システム1は、現時点におけるエンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサSN1と、現時点におけるモータジェネレータ3の回転数を検出するモータ回転数センサSN2と、現時点における運転者によるアクセルペダルの踏込量に対応するアクセル開度を検出するアクセル開度センサSN3と、現時点における車両の車速を検出する車速センサSN4と、現時点における車両の加速度を検出する加速度センサSN5と、現時点におけるバッテリ4のSOCをSOC検出値K2として検出するSOCセンサSN6と、現時点におけるバッテリの温度を温度検出値Ta2として検出するバッテリ温度センサSN7と、を備える。
【0045】
「現時点」とは、一瞬の時点に限定されるのではなく、少なくとも車両の次回始動時点よりも前において、ある程度の幅を持つ時間帯を含み得る。
【0046】
SOCセンサSN6は、周知のSOCセンサであって、バッテリ4のSOCを直接的に検出するのみならず、バッテリ4のSOCを間接的に検出してもよい。SOCセンサSN6は、例えば、バッテリ4への充電電力の積算値に基づいてSOCを算出(推定)したり、バッテリ4の内部抵抗に基づいてSOCを算出(推定)したりしてもよい。バッテリ温度センサSN7は、周知の温度センサであって、例えば、バッテリ4の近傍に配置されている。コントローラ10には、各センサSN1~SN7からの信号が入力される。
【0047】
ハイブリッド車両システム1は、車両の始動を入力する始動スイッチSW1と、車両の次回始動時刻を入力する次回始動時刻入力スイッチSW2と、走行中の車両における目的地点(次回始動時点での始動地点)を入力する目的地点入力スイッチSW3と、を備える。 各スイッチSW1~SW3は、例えば、車両のダッシュボードに配置されたインターフェースに設けられている。なお、始動スイッチSW1は、キータイプでもよい。コントローラ10には、各スイッチSW1~SW3からの信号が入力される。
【0048】
コントローラ10は、エンジン2、インバータ5、クラッチ6、トランスミッション7及びヒータ8に対して、制御信号を出力する。例えば、コントローラ10は、エンジン2の点火プラグ、燃料噴射弁及びスロットル弁などを制御することによって、エンジン2の回転数及びトルクなどを調整する。コントローラ10は、油圧制御回路を介して、クラッチ6及びトランスミッション7を制御する。コントローラ10は、インバータ5を介してモータジェネレータ3を制御することによって、モータジェネレータ3の回転数及びトルクなどを調整する。コントローラ10は、ヒータ8を制御して、バッテリ4の昇温を調整する。
【0049】
コントローラ10は、温度推定部11と、SOC閾値決定部12と、SOC判定部13と、充電効率算出部14と、運転予定時間推定部15と、閾値到達判定部16と、充電効率増大判定部17と、を含む。温度推定部11は、車両の次回始動時点における外気温度Ta(≒次回始動時点におけるバッテリ4の温度)を、温度推定値Ta1として推定する。温度推定部11は、例えば、インターネット回線を経由して得られる今後1週間ないし1か月の気温情報や天気情報に基づいて、温度推定値Ta1を推定する。
【0050】
SOC閾値決定部12は、温度推定値Ta1に基づいて、次回始動時点で必要なバッテリ4のSOCを、SOC閾値K1として決定する。具体的には、SOC閾値決定部12は、
図2における外気温度Taに対応する曲線と要求出力値Q1との交点を求めることによって、SOC閾値K1を得る。
【0051】
SOC判定部13は、SOCセンサSN6で得られたSOC検出値K2が、SOC閾値決定部12で得られたSOC閾値K1を満たすか否かを判定する)。
【0052】
ここで、バッテリ4の温度の低い領域では、バッテリ4の温度が高くなるに従って、バッテリ4の充電効率F(単位時間当たりの充電量:Ah,Wh)が大きくなることが知られている。充電効率算出部14は、バッテリ温度センサSN7で得られたバッテリ4の温度検出値Ta2に基づいて、バッテリ4の充電効率Fを算出する。コントローラ10には、バッテリ4における温度と充電効率Fとの関係を表す式やマップが、予め登録されている。
【0053】
運転予定時間推定部15は、現時点から次回始動時点までの車両の運転予定時間Hを、推定する。運転予定時間推定部15は、例えば、GPSによる現在地点及び目的地点(次回始動時点での始動地点)の位置情報や、インターネット回線を経由して得られる交通情報等に基づいて、運転予定時間Hを推定する。
【0054】
閾値到達判定部16は、バッテリ4の充電効率Fに基づいて、運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達するか否かを、判定する。
【0055】
充電効率増大判定部17は、バッテリ4の温度検出値Ta2に基づいて、バッテリ4の充電効率Fをこれ以上増大させることが可能か否かを、判定する。例えば、バッテリ4の温度検出値Ta2が既に高い値を示す場合、バッテリ4の充電効率Fをこれ以上増大させる余地が無いことがあり得る。
【0056】
(現時点から始動時点までのハイブリッド車両システムの制御フロー)
図4は、現時点から次回始動時点までのハイブリッド車両システムの制御フローを示すフローチャートである。スタートから出発して、先ず、ステップS1において、SOCセンサSN6によって、現時点におけるバッテリ4のSOC検出値K2を検出する。
【0057】
次に、ステップS2において、次回始動時刻入力スイッチSW2によって、車両の次回始動時刻(例えば、年月日)を入力する。次に、ステップS3において、目的地点入力スイッチSW3によって、走行中の車両における目的地点(次回始動時点での始動地点)を入力する。なお、次回始動時刻及び目的地点は、予め登録されていてもよい。また、目的地点は、後述するステップS9の前に入力されてもよい。
【0058】
次に、ステップS4において、温度推定部11によって、車両の次回始動時点における外気温度Ta(≒次回始動時点におけるバッテリ4の温度)を、温度推定値Ta1として推定する。温度推定値Ta1の推定にあたって、次回始動時刻及び目的地点に関する情報(例えば、当該時刻及び当該地点における気温情報や天気情報など)を、考慮してもよい。
【0059】
次に、ステップS5において、SOC閾値決定部12によって、温度推定値Ta1に基づいて、次回始動時点で必要なバッテリ4のSOC閾値K1を、決定する(
図2参照)。
【0060】
次に、ステップS6において、SOC判定部13によって、SOC検出値K2がSOC閾値K1を満たすか否かを、判定する。ここで、バッテリ4のSOCがSOC閾値K1に満たない場合、モータジェネレータ3によりエンジン2を始動させるのに必要なバッテリの出力(要求出力値Q1)を、得ることができない。
【0061】
SOC検出値K2がSOC閾値K1を満たす(SOC検出値K2≧SOC閾値K1)と判定された場合、スタートに戻る。SOC検出値K2がSOC閾値K1を満さない(SOC検出値K2<SOC閾値K1)と判定された場合、ステップS7に進む。
【0062】
次に、ステップS7において、バッテリ温度センサSN7によって、現時点におけるバッテリ4の温度検出値Ta2を、検出する。
【0063】
次に、ステップS8において、充電効率算出部14によって、バッテリ4の温度検出値Ta2に基づいてバッテリ4の充電効率Fを算出するとともに、充電効率Fに基づいてバッテリ4に充電可能な最大充電電力Win[kW]を設定する。
【0064】
次に、ステップS9において、運転予定時間推定部15によって、現時点から次回始動時点までの車両の運転予定時間Hを、推定する。運転予定時間Hの推定にあたって、ステップS3において目的地点入力スイッチSW3により得られた目的地点情報を、考慮する。
【0065】
次に、ステップS10において、閾値到達判定部16によって、バッテリ4の充電効率Fに基づいて、運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達するか否かを判定する。
【0066】
ステップS10において運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達すると判定された場合、ステップS11に進む。そして、ステップS11において、バッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達するために必要な(バッテリ4が要求出力値Q1を得るために必要な)所要充電電力W1[kW]を算出する。所要充電電力W1は、最大充電電力Win以下でもよい(W1≦Win)。
【0067】
次に、ステップS12において、エンジン2の駆動によって、発電機としてのモータジェネレータ3からバッテリ4への所要充電電力W1の供給(充電)を、開始する。これにより、バッテリ4のSOCが増大するので、バッテリ4のSOCは、モータジェネレータ3によるエンジン2の始動に必要なSOC閾値K1に、到達する。そして、リターンに至る。なお、所要充電電力W1以上の電力を、モータジェネレータ3からバッテリ4へ供給してもよい。
【0068】
このように、コントローラ10は、ステップS6においてSOC検出値K2がSOC閾値K1に満たない(SOC検出値K2<SOC閾値K1)と判定された場合、現時点から次回始動時点までの間に、モータジェネレータ3の発電によりバッテリ4を充電することによって、バッテリ4のSOCを増大させて、バッテリ4のSOCをSOC閾値K1に到達させる。
【0069】
一方、ステップS10において運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達しないと判定された場合、ステップS13に進む。そして、ステップS13において、充電効率増大判定部17によって、バッテリ4の温度検出値Ta2に基づいて、バッテリ4の充電効率Fをこれ以上増大させることが可能か否かを判定する。
【0070】
ステップS13においてバッテリ4の充電効率Fを増大可能と判定された場合、ステップS14に進む。そして、ステップS14において、ヒータ8を作動させて、バッテリ4を昇温させた後に、ステップS7に戻る。
【0071】
このように、コントローラ10は、ステップS10において運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達しないと判定された場合、ステップS14においてヒータ8の作動によりバッテリ4を昇温することによって、バッテリ4の充電効率Fを増大させる。
【0072】
ステップS13においてバッテリ4の充電効率Fを増大不可能と判定された場合、ステップS15に進む。ここで、ステップS15は、車両の次回始動時点までにバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達しなかった場合である。ステップS15では、コントローラ10は、車両の次回始動時点において、ヒータ8の作動によりバッテリ4を昇温することによって、SOC閾値K1を減少させる(
図2参照)。これにより、SOC閾値K1を、バッテリ4の実際のSOCに近づける。次回始動時点において、始動スイッチSW1を入力すると、車両が始動する。
【0073】
なお、ステップS15において、次回始動時点までに、モータジェネレータ3からバッテリ4へ可能な限り電力供給(充電)することによって、バッテリ4のSOCを可能な限り増大させておくことが好ましい。
【0074】
(車両の走行中におけるハイブリッド車両システムの制御フロー)
図5は、車両の走行中におけるハイブリッド車両システム1の制御フローを示すフローチャートである。なお、以下の説明において、
図4の説明と重複する部分については、同一の用語及び符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0075】
スタートから出発して、先ず、ステップS1’において、車両の運転状態を取得する。運転状態として、例えば、エンジン回転数センサSN1により得られるエンジン2の回転数、モータ回転数センサSN2により得られるモータジェネレータ3の回転数、アクセル開度センサSN3により得られるアクセル開度、車速センサSN4により得られる車両の車速、加速度センサSN5により得られる車両の加速度、等がある。
【0076】
次に、ステップS2’において、車両の運転状態に応じて、車両の目標駆動力、すなわち車両の要求駆動力R[kW]を、設定する。
【0077】
次に、ステップS3’において、車両の要求駆動力Rに対するエンジン2の高効率駆動点Pを、設定する。高効率駆動点Pは、例えば、コントローラ10に予め登録された運転マップに基づいて、得られる。高効率駆動点Pは、最高効率駆動点のみならず、最高効率駆動点からエンジン効率が5%程度低下する駆動点をも、含み得る。
【0078】
次に、ステップS4’において、車両の要求駆動力Rがエンジン2の高効率駆動点Pでの高効率駆動力E[kW]よりも小さいか否かを判定する。換言すると、エンジン2の駆動によりモータジェネレータ3を発電した方が高効率であるか否かを、判定する。要求駆動力Rが高効率駆動力Eよりも小さい(R<E)場合、高効率駆動力Eから要求駆動力Rを差し引いた余剰分(E-R)を、モータジェネレータ3の発電に利用した方が高効率である。
【0079】
ステップS4’において要求駆動力Rが高効率駆動力Eよりも小さい(R<E)と判定された場合、ステップS5’に進む。そして、ステップS5’において、エンジン2を高効率駆動点Pで駆動するとともに、高効率駆動力Eから要求駆動力Rを差し引いた余剰分(E-R)を、モータジェネレータ3の発電に利用することを考える。また、ステップS5’において、当該余剰分(E-R)をモータジェネレータ3の発電に利用した場合における発電電力W2[kW]を、算出する。
【0080】
次に、ステップS6’において、SOC検出値K2がSOC閾値K1を満たすか否か(すなわち、充電指令要否)を、判定する。ステップS6’においてSOC検出値K2がSOC閾値K1を満さない(SOC検出値K2<SOC閾値K1)と判定された場合、充電指令が行われて、ステップS7’に進む。
【0081】
次に、ステップS7’において、バッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達するために必要な所要充電電力W1が、モータジェネレータ3による発電電力W2以下であるか否かを判定する。
【0082】
ステップS7’において所要充電電力W1が発電電力W2以下(W1≦W2)であると判定された場合、ステップS8’に進む。ステップS8’では、車両は、エンジン2のみによって駆動される。エンジン2は、高効率駆動点Pで駆動される。車両の要求駆動力Rは、エンジン2の高効率駆動力Eよりも小さい。
【0083】
このため、ステップS8’では、高効率駆動力Eから要求駆動力Rを差し引いた余剰分(E-R)がモータジェネレータ3の発電に利用されて、発電電力W2が得られる。すなわち、エンジン2は、車両の要求駆動力R及びモータジェネレータ3の発電電力W2(≧W1)を出力する。
【0084】
ステップS8’では、発電電力W2は、バッテリ4の充電に利用される。所要充電電力W1が発電電力W2以下なので、発電電力W2から所要充電電力W1を差し引いた余剰分(W2-W1)だけ、バッテリ4は余裕を持って充電される。
【0085】
ステップS8’では、モータジェネレータ3は、エンジン2による車両の駆動をアシストせずに、発電を行う。エンジン2は、モータジェネレータ3の助けを借りずに、単独で、車両の要求駆動力R(+発電電力W2)を出力する。そして、リターンに至る。
【0086】
ステップS7’において所要充電電力W1が発電電力W2よりも大きい(W1>W2)であると判定された場合、ステップS9’に進む。ステップS9’では、エンジン2を高効率駆動点Pで駆動した場合、モータジェネレータ3による発電電力W2が所要充電電力W1よりも小さくなってしまう。
【0087】
このため、ステップS9’では、エンジン2を高効率駆動点Pとは異なる駆動点で駆動することによって、エンジン2は、車両の要求駆動力R及び所要充電電力W1(>W2)を出力する。ステップS9’では、ステップS8’に比較して、エンジン2の効率は、低下する。高効率駆動点Pとは異なる駆動点でのエンジン2の駆動によりモータジェネレータ3を発電することによって得られた所要充電電力W1は、バッテリ4の充電に利用される。そして、リターンに至る。
【0088】
ステップS6’においてSOC検出値K2がSOC閾値K1を満す(SOC検出値K2≧SOC閾値K1)と判定された場合、充電指令は行われず、ステップS8’に進む(ただし、発電電力W2は、バッテリ4の充電に利用されなくてもよい)。
【0089】
ステップS4’において要求駆動力Rが高効率駆動力E以上(R≧E)であると判定された場合、ステップS10’に進む。ステップS10’においてSOC検出値K2がSOC閾値K1を満さない(SOC検出値K2<SOC閾値K1)と判定された場合、充電指令が行われて、ステップS9’に進む。ステップS9’において、エンジン2を高効率駆動点Pとは異なる駆動点で駆動することによって、エンジン2は、車両の要求駆動力R及び所要充電電力W1を出力する。
【0090】
ステップS10’においてSOC検出値K2がSOC閾値K1を満す(SOC検出値K2≧SOC閾値K1)と判定された場合、充電指令が行われず、ステップS11’に進む。
【0091】
ステップS11’において、モータジェネレータ3による車両の駆動のアシストの要否を、判定する。具体的には、モータジェネレータ3によって車両の駆動をアシストした方が高効率であるか否かを、判定する。
【0092】
ステップS11’においてモータジェネレータ3によるアシストが必要と判定された場合、ステップS12’に進む。ステップS12’において、エンジン2は、高効率駆動点Pで駆動される。モータジェネレータ3は、エンジン2による車両の駆動を、アシストする。具体的には、モータジェネレータ3は、車両の要求駆動力Rからエンジン2の高効率駆動力Eを差し引いた不足分(R-E)を、アシスト出力する。すなわち、エンジン2及びモータジェネレータ3は、協働して、車両の要求駆動力Rを出力する。そして、リターンに至る。
【0093】
ステップS11’においてモータジェネレータ3によるアシストが不要と判定された場合、ステップS13’に進む。ステップS13’において、モータジェネレータ3は、エンジン2による車両の駆動を、アシストしない。すなわち、エンジン2は、単独で、車両の要求駆動力Rを出力する。そして、リターンに至る。
【0094】
このように、コントローラ10は、ステップS4’~S8’において、車両の要求駆動力Rがエンジン2の高効率駆動点Pでの高効率駆動力Eよりも小さい(R<E)場合、エンジン2を高効率駆動点Pで駆動するとともに、高効率駆動力Eから要求駆動力Rを差し引いた余剰分(E-R)を、モータジェネレータ3の発電(発電電力W2)に利用する。
【0095】
コントローラ10は、ステップS4’,S10’,S11’,S12’において、車両の要求駆動力Rがエンジン2の高効率駆動力Eよりも大きい(R>E)場合、エンジン2を高効率駆動点Pで駆動するとともに、要求駆動力Rから高効率駆動力Eを差し引いた不足分(R-E)を、モータジェネレータ3によってアシスト出力する。
【0096】
コントローラ10は、特にステップS6’~S8’において、SOC検出値K2がSOC閾値K1に満たない(SOC検出値K2<SOC閾値K1)場合、モータジェネレータ3によるアシストを行わずに、モータジェネレータ3の発電を行うとともに、車両の要求駆動力Rをエンジン2のみによって出力する。
【0097】
(作用効果)
本実施形態によれば、SOC検出値K2がSOC閾値K1に満たないと判定された場合には、現時点から次回始動時点までの間に、モータジェネレータ3の発電によりバッテリ4を充電することによって、バッテリ4のSOCを増大させる。これにより、バッテリ4のSOCは、モータジェネレータ3によるエンジン2の始動に必要なSOC閾値K1に、到達する。
【0098】
以上、外気温度Ta(≒次回始動時点におけるバッテリ4の温度)に関係なく(特に外気温度Taが低い場合であっても)、モータジェネレータ3によるエンジン2の始動に必要なバッテリ4のSOCを得ることができる。
【0099】
運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達しないと判定された場合、ヒータ8によりバッテリ4を昇温することによって、バッテリ4の充電効率Fを増大させる。これにより、バッテリ4のSOCを増大させやすくなるので、バッテリ4のSOCを、次回始動時点までにSOC閾値K1に到達させやすくなる。
【0100】
仮に、次回始動時点までにバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達しなかった場合には、次回始動時点においてヒータ8によりバッテリ4を昇温することによって、SOC閾値K1を実際のSOCに近づける。これにより、次回始動時点までにバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達しなかった場合であっても、モータジェネレータ3によりエンジン2を始動させることができる。
【0101】
エンジン2を可能な限り高効率駆動点Pで駆動することができるので、燃費の向上を図ることができる。また、SOC検出値K2がSOC閾値K1に満たない場合に、モータジェネレータ3をアシストではなく発電に用いることによって、バッテリ4を効果的に充電することができるので、バッテリ4のSOCをSOC閾値K1に到達させる上で有利になる。
【0102】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0103】
モータジェネレータ3は、エンジン2の駆動により発電されるのみならず、車両の減速時に回生発電されてもよい。
【0104】
現在地点から目的地点までの間の坂道情報を、運転予定時間H中にバッテリ4のSOCがSOC閾値K1に到達するか否かの判定に、用いてもよい。
【0105】
上記実施形態では、温度推定部11による温度推定値Ta1の推定に、次回始動時点における外気温度Taを用いたが、これに限定されず、次回始動時点におけるバッテリ4の温度を直接的に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示は、ハイブリッド車両システムに適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0107】
1 ハイブリッド車両システム
2 エンジン
3 モータジェネレータ
4 バッテリ
8 ヒータ
9 駆動輪
10 コントローラ(制御部)
11 温度推定部
12 SOC閾値決定部
13 SOC判定部
14 充電効率算出部
15 運転予定時間推定部
16 閾値到達判定部
17 充電効率増大判定部
Ta 外気温度
Ta1 温度推定値
Ta2 温度検出値
Q1 要求出力値
K1 SOC閾値
K2 SOC検出値
F 充電効率
H 運転予定時間
R 要求駆動力
E 高効率駆動力
P 高効率駆動点
SN6 SOCセンサ
SN7 バッテリ温度センサ