(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141797
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20230928BHJP
G02B 26/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01S3/10 D
G02B26/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048296
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 雄樹
【テーマコード(参考)】
2H141
5F172
【Fターム(参考)】
2H141MA22
2H141MA27
2H141MA28
2H141MB11
2H141MB17
2H141MD02
2H141MD32
2H141MD38
2H141MD40
2H141ME01
2H141ME06
2H141ME13
2H141ME23
2H141ME25
2H141MF01
2H141MG10
5F172CC04
5F172NN25
5F172NQ09
5F172NQ44
5F172NQ48
5F172NQ50
5F172ZZ04
5F172ZZ11
(57)【要約】
【課題】発する光の波長を迅速に変更することが可能な光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置は、光増幅器、分光素子、空間位相変調素子および制御部を備える。光増幅器は、光を増幅して放出する。分光素子は、光増幅器からの光を波長に応じて分光させる。空間位相変調素子は、ベース部と分光素子で分光された光を反射する複数の格子要素とを有し、少なくとも一部の格子要素をベース部に対して相対的に変位させて分光素子で分光された光に位相変調を施して、分光素子で分光された光の波長領域のうちの一部の波長について、分光素子からの入射光路に沿って回折光を出射する。制御部は、ベース部に対する複数の格子要素の変位を制御する。空間位相変調素子から出射される回折光は、分光素子で一部の波長の光を生じさせ、該一部の波長の光は、光増幅器で増幅された後に分光素子に向けて放出される。光増幅器で複数回の増幅が行われた一部の波長の光を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を増幅して放出する光増幅器と、
前記光増幅器から放出された光を波長に応じて分光させる分光素子と、
ベース部と、前記分光素子によって分光された光を反射する複数の格子要素とを有し、該複数の格子要素のうちの少なくとも一部の格子要素を前記ベース部に対して相対的に変位させることで前記分光素子によって分光された光に位相変調を施して、前記分光素子によって分光された光の波長領域のうちの一部の波長について、前記分光素子からの入射光路に沿って前記分光素子に向けて回折光を出射する、空間位相変調素子と、
前記ベース部に対する前記複数の格子要素の変位を制御する制御部と、を備え、
前記空間位相変調素子から出射される前記回折光は、前記分光素子において前記一部の波長の光を生じさせ、該一部の波長の光は、前記光増幅器によって増幅された後に前記分光素子に向けて放出され、
前記光増幅器によって複数回の増幅が行われた前記一部の波長の光を出力する、光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記光増幅器は、半導体光アンプ、ブースター光アンプ、または半導体レーザーを含む、光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光源装置であって、
前記分光素子は、回折格子を含む、光源装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つの請求項に記載の光源装置であって、
前記制御部は、前記空間位相変調素子によって前記複数の格子要素の前記ベース部に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンに変更させることで、前記一部の波長が第1波長を含む状態から、前記一部の波長が前記第1波長とは異なる第2波長を含む状態に切り替える、光源装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1つの請求項に記載の光源装置であって、
前記一部の波長は、互いに離れた異なる複数の波長、を含む、光源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光源装置であって、
前記制御部は、前記空間位相変調素子によって前記複数の格子要素の前記ベース部に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンに変更させることで、前記複数の波長が第1A波長と第1B波長とを含む状態から、前記複数の波長が前記第1A波長とは異なる第2A波長と前記第1B波長とは異なる第2B波長とを含む状態に切り替える、光源装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載の光源装置であって、
第1導光部と、光路変更光学系と、第2導光部と、を備え、
前記第1導光部は、前記光増幅器から放出された光を前記光路変更光学系に向けて導き、
前記光路変更光学系は、前記光増幅器から放出されて前記第1導光部を経た光を前記分光素子に向けて導くとともに、前記空間位相変調素子から出射された前記回折光に応じて前記分光素子で生じた前記一部の波長の光を前記第2導光部に導き、
前記第2導光部は、前記光路変更光学系によって前記第2導光部に導かれた光のうちの一部の光を前記第2導光部の外部に出力する第1光出力部と、前記光路変更光学系によって前記第2導光部に導かれた光のうちの前記一部の光を除く残余の光を前記光増幅器に向けて導く導光部分と、を含む、光源装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載の光源装置であって、
前記光増幅器の第1端面から放出された光を前記分光素子に向けて導くとともに、前記空間位相変調素子から出射された前記回折光に応じて前記分光素子で生じた前記一部の波長の光を前記光増幅器の前記第1端面に向けて導く第3導光部と、
前記光増幅器の第2端面から放出された光のうちの一部の光を透過させることで出力し、前記光増幅器の第2端面から放出された光のうちの前記一部の光を除く残余の光を前記第2端面に向けて反射する、部分反射光学系と、を備えている、光源装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1つの請求項に記載の光源装置であって、
前記複数の格子要素は、複数のリボン状部分、を含み、
前記複数のリボン状部分のそれぞれは、第1方向に沿って延在している細長いリボン状の形状と、可撓性と、前記ベース部とは逆側に光反射面を持つ反射部と、を有し、
前記複数のリボン状部分は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って並んでおり、
前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部は、空間を挟んで前記ベース部に対向しており、
前記複数のリボン状部分のそれぞれは、前記第1方向の両端部のそれぞれにおいて前記ベース部に連結されている連結部、を含み、
前記ベース部は、各前記反射部に対向している電極、を含み、
前記制御部は、前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部と前記電極との間に付与する電位差を調整することで、前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部と前記電極との間の静電気力によって前記複数のリボン状部分を撓ませて、前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部の前記ベース部に対する変位を制御する、光源装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れか1つの請求項に記載の光源装置であって、
前記空間位相変調素子は、マトリックス状に並んでいる複数の反射素子、を含み、
前記複数の反射素子のそれぞれは、空間を挟んで前記ベース部と対向しており且つ前記ベース部とは逆側に光反射面を持つ可動反射部と、該可動反射部の複数箇所をそれぞれ支持しており且つ前記ベース部に連結されている可撓性を有する支持部と、を含み、
前記複数の格子要素は、前記複数の反射素子のそれぞれの前記可動反射部、を含み、
前記ベース部は、各前記可動反射部に対向している電極、を含み、
前記制御部は、前記複数の反射素子のそれぞれにおいて、前記可動反射部と前記電極との間に付与する電位差を調整することで、前記可動反射部と前記電極との間の静電気力によって前記支持部を撓ませて、前記可動反射部の前記ベース部に対する変位を制御する、光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発する光の波長を変化させることが可能な光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発する光の波長を変化させることが可能なレーザー光源等の光源が光通信の分野および検査装置の分野等で利用される。
【0003】
例えば、検査装置の一例として、非侵襲で被検体の断層像に関する情報を取得することができる光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)が知られている。このOCTの一方式としてのスウェプトソースOCT(Swept Source OCT:SS-OCT)では、発する光の波長を時間的に広帯域で変化させる光源を用い、各々の波長についてサンプル光と参照光とを干渉させた光の強度を取得する。このため、SS-OCTでは出力光の波長を広帯域で掃引可能な波長掃引光源(周波数掃引光源)を使用する。
【0004】
この波長掃引光源としては、例えば、光を発生させるゲイン媒体とMEMS(Micro Electronic Mechanical Systems)の振動ミラーとを組み合わせた外部共振器型の波長掃引光源等がある(例えば、特許文献1等)。この外部共振器型の波長掃引光源では、ゲイン媒体から発せられるある程度の幅の波長を有する光を回折格子等によって波長に応じて分光させるとともに、MEMSの振動ミラーの往復運動を利用して所望の波長の光を選択的に反射させてゲイン媒体に戻すことで光を増幅しつつ、光源から発せられる光の波長を掃引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MEMSの振動ミラーを用いた外部共振器型の波長掃引光源では、例えば、光源から発せられる光の波長の掃引に要する時間は、MEMSの振動ミラーの振動の周期に応じたものとなる。つまり、MEMSの振動ミラーの振動の周期によって、光源から発せられる光の波長を変更する速度が律速される。
【0007】
また、MEMSの振動ミラーを用いた外部共振器型の波長掃引光源では、例えば、MEMSの振動ミラーの振動によって、所定の波長域における最大波長から最小波長に向けた方向もしくは最小波長から最大波長に向けた方向において、光源から発せられる光の波長を順番に変更することしかできない。
【0008】
よって、外部共振器型の波長掃引光源については、例えば、発する光の波長を迅速に変更する点で改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発する光の波長を迅速に変更することが可能な光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の態様に係る光源装置は、光増幅器と分光素子と空間位相変調素子と制御部とを備えている。前記光増幅器は、光を増幅して放出する。前記分光素子は、前記光増幅器から放出された光を波長に応じて分光させる。前記空間位相変調素子は、ベース部と、前記分光素子によって分光された光を反射する複数の格子要素とを有し、該複数の格子要素のうちの少なくとも一部の格子要素を前記ベース部に対して相対的に変位させることで前記分光素子によって分光された光に位相変調を施して、前記分光素子によって分光された光の波長領域のうちの一部の波長について、前記分光素子からの入射光路に沿って前記分光素子に向けて回折光を出射する。前記制御部は、前記ベース部に対する前記複数の格子要素の変位を制御する。前記空間位相変調素子から出射される前記回折光は、前記分光素子において前記一部の波長の光を生じさせ、該一部の波長の光は、前記光増幅器によって増幅された後に前記分光素子に向けて放出される。前記光増幅器によって複数回の増幅が行われた前記一部の波長の光を出力する。
【0011】
第2の態様に係る光源装置は、第1の態様に係る光源装置であって、前記光増幅器は、半導体光アンプ、ブースター光アンプ、または半導体レーザーを含む。
【0012】
第3の態様に係る光源装置は、第1または第2の態様に係る光源装置であって、前記分光素子は、回折格子を含む。
【0013】
第4の態様に係る光源装置は、第1から第3の何れか1つの態様に係る光源装置であって、前記制御部は、前記空間位相変調素子によって前記複数の格子要素の前記ベース部に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンに変更させることで、前記一部の波長が第1波長を含む状態から、前記一部の波長が前記第1波長とは異なる第2波長を含む状態に切り替える。
【0014】
第5の態様に係る光源装置は、第1から第3の何れか1つの態様に係る光源装置であって、前記一部の波長は、互いに離れた異なる複数の波長、を含む。
【0015】
第6の態様に係る光源装置は、第5の態様に係る光源装置であって、前記制御部は、前記空間位相変調素子によって前記複数の格子要素の前記ベース部に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンに変更させることで、前記複数の波長が第1A波長と第1B波長とを含む状態から、前記複数の波長が前記第1A波長とは異なる第2A波長と前記第1B波長とは異なる第2B波長とを含む状態に切り替える。
【0016】
第7の態様に係る光源装置は、第1から第6の何れか1つの態様に係る光源装置であって、第1導光部と、光路変更光学系と、第2導光部と、を備えている。前記第1導光部は、前記光増幅器から放出された光を前記光路変更光学系に向けて導く。前記光路変更光学系は、前記光増幅器から放出されて前記第1導光部を経た光を前記分光素子に向けて導くとともに、前記空間位相変調素子から出射された前記回折光に応じて前記分光素子で生じた前記一部の波長の光を前記第2導光部に導く。前記第2導光部は、前記光路変更光学系によって前記第2導光部に導かれた光のうちの一部の光を前記第2導光部の外部に出力する第1光出力部と、前記光路変更光学系によって前記第2導光部に導かれた光のうちの前記一部の光を除く残余の光を前記光増幅器に向けて導く導光部分と、を含む。
【0017】
第8の態様に係る光源装置は、第1から第6の何れか1つの態様に係る光源装置であって、第3導光部と、部分反射光学系と、を備えている。前記第3導光部は、前記光増幅器の第1端面から放出された光を前記分光素子に向けて導くとともに、前記空間位相変調素子から出射された前記回折光に応じて前記分光素子で生じた前記一部の波長の光を前記光増幅器の前記第1端面に向けて導く。前記部分反射光学系は、前記光増幅器の第2端面から放出された光のうちの一部の光を透過させることで出力し、前記光増幅器の第2端面から放出された光のうちの前記一部の光を除く残余の光を前記第2端面に向けて反射する。
【0018】
第9の態様に係る光源装置は、第1から第8の何れか1つの態様に係る光源装置であって、前記複数の格子要素は、複数のリボン状部分、を含む。前記複数のリボン状部分のそれぞれは、第1方向に沿って延在している細長いリボン状の形状と、可撓性と、前記ベース部とは逆側に光反射面を持つ反射部と、を有する。前記複数のリボン状部分は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って並んでいる。前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部は、空間を挟んで前記ベース部に対向している。前記複数のリボン状部分のそれぞれは、前記第1方向の両端部のそれぞれにおいて前記ベース部に連結されている連結部、を含む。前記ベース部は、各前記反射部に対向している電極、を含む。前記制御部は、前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部と前記電極との間に付与する電位差を調整することで、前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部と前記電極との間の静電気力によって前記複数のリボン状部分を撓ませて、前記複数のリボン状部分のそれぞれの前記反射部の前記ベース部に対する変位を制御する。
【0019】
第10の態様に係る光源装置は、第1から第8の何れか1つの態様に係る光源装置であって、前記空間位相変調素子は、マトリックス状に並んでいる複数の反射素子、を含む。前記複数の反射素子のそれぞれは、空間を挟んで前記ベース部と対向しており且つ前記ベース部とは逆側に光反射面を持つ可動反射部と、該可動反射部の複数箇所をそれぞれ支持しており且つ前記ベース部に連結されている可撓性を有する支持部と、を含む。前記複数の格子要素は、前記複数の反射素子のそれぞれの前記可動反射部、を含む。前記ベース部は、各前記可動反射部に対向している電極、を含む。前記制御部は、前記複数の反射素子のそれぞれにおいて、前記可動反射部と前記電極との間に付与する電位差を調整することで、前記可動反射部と前記電極との間の静電気力によって前記支持部を撓ませて、前記可動反射部の前記ベース部に対する変位を制御する。
【発明の効果】
【0020】
第1から第10の何れの態様に係る光源装置によっても、例えば、複数の格子要素におけるベース部に対する変位のパターンを変更することで、分光素子によって分光された所定の波長領域の光のうちの選択的に分光素子に戻す一部の波長の光を、迅速に変更することができる。その結果、例えば、複数回の増幅の後に光源装置から出力される出力光の波長が迅速に切り替えられ得る。したがって、例えば、光源装置が発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0021】
第4の態様に係る光源装置によれば、例えば、複数の格子要素におけるベース部に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンへ変更することで、光源装置から出力される光の波長をランダムに変更することができる。その結果、例えば、光源装置が発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0022】
第5および第6の何れの態様に係る光源装置によっても、例えば、分光素子によって分光された所定の波長領域の光のうちの選択的に分光素子に戻される光の波長が、互いに離れた異なる複数の波長を含むため、互いに離れた異なる複数の波長の光を同時に光源装置から出力させることができる。
【0023】
第6の態様に係る光源装置によれば、例えば、複数の格子要素におけるベース部に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンへ変更することで、光源装置から同時に出力される光の複数の波長をランダムに変更することができる。その結果、例えば、光源装置が同時に発する光の複数の波長が迅速に変更され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る光源装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブの構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブの構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブの構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブの動作の一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブの動作の一例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブの動作の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、空間位相変調素子における入射光の光路と出射光としての回折光の光路との関係の一例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、空間位相変調素子における入射光の光路と出射光としての回折光の光路との関係の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、空間位相変調素子における入射光の光路と出射光としての回折光の光路との関係の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、光源装置から出力される出力光における波長の切り替えの一例を模式的に示すグラフである。
【
図12】
図12は、光源装置から出力される複数の波長の出力光についての波長と強度との関係の一例を模式的に示すグラフである。
【
図13】
図13は、空間位相変調素子において機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状に係る第1Aパターンの一例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、空間位相変調素子において機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状に係る第1Bパターンの一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、空間位相変調素子において機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状について複数の波長の光を分光素子に戻すための合成パターンを生成する方法の一例を説明するための図である。
【
図16】
図16は、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブにおいて機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状に係る合成パターンの一例を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、光源装置から出力される出力光における複数の波長の切り替えの一例を模式的に示すグラフである。
【
図18】
図18は、一変形例に係る光源装置の構成を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、平面ライトバルブの構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図20】
図20は、平面ライトバルブにおける1つの反射素子およびベース部の構成を模式的に示す断面図である。
【
図21】
図21は、平面ライトバルブにおける1つの反射素子およびベース部の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の各種実施形態について説明する。これらの実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、同様な構成および機能を有する部分には同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面においては、理解を容易にするために、必要に応じて各部の寸法および数が誇張または簡略化されて図示されている。各図においては、各要素の位置関係等を説明するために、
図2から
図10、
図13から
図16および
図19から
図21には、右手系のXYZ直交座標系を付している。ここでは、後述する空間位相変調素子7の回折格子面(格子面ともいう)P0に沿った方向にX軸およびY軸が延びており、格子面P0の法線に沿った方向にZ軸が延びている。また、以下の説明では、矢印の先端が向く方を+(プラス)方向とし、その逆方向を-(マイナス)方向とする。
【0026】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」等)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」等)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」等)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸および面取り等を有する形状も表すものとする。1つの構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「~の上」および「~の下」とは、特に断らない限り、2つの要素が接している場合のほか、2つの要素が離れている場合も含む場合がある。「特定方向に移動させる」とは、特に断らない限りにおいて、この特定方向と平行に移動させる場合のみならず、この特定方向の成分を持つ方向に移動させることを含む場合がある。
【0027】
<1.第1実施形態>
<1-1.光源装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る光源装置100の構成の一例を模式的に示す図である。
図1では、光の進行方向が細い一点鎖線で描かれた矢印で示されている。
【0028】
光源装置100は、光増幅器から出射される光のうちの所望の波長の光を、光増幅器の外部に設けられた構成によって選択的に光増幅器に戻すことで、所望の波長の光を増幅して出力することができる、外部共振型の光源装置の構成を有する。
【0029】
光源装置100は、光増幅器1と、分光素子6と、空間位相変調素子7と、第1制御部10と、を備えている。また、光源装置100は、例えば、第2制御部20を備えている。第1実施形態では、光源装置100は、第1導光部2と、光路変更光学系3と、第2導光部8と、を備えている。
図1の例では、光源装置100は、光路変更光学系3と分光素子6との間に配置された、光を伝送する機能を有する光伝送部である光ファイバ4および光学レンズであるコリメータレンズ5を備えている。
【0030】
<<光増幅器1>>
光増幅器1は、光を増幅して放出する。光増幅器1は、例えば、分光素子6に向けて光を放出する。光増幅器1には、例えば、半導体レーザー(Laser Diode:LD)、半導体光アンプ(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)またはブースター光アンプ(Booster Optical Amplifier:BOA)等の光を増幅させる光利得媒体(光ゲイン媒体ともいう)が適用される。
【0031】
また、光増幅器1は、例えば、電圧の印加に応じて光を発生させる。光増幅器1は、例えば、第2制御部20の制御によって印加される電圧が制御されることで駆動する。光増幅器1は、例えば、所定の波長領域に強度を有する光を発する。所定の波長領域は、例えば、50ナノメートル(nm)から150nm程度の幅を有する領域に設定される。所定の波長領域に強度を有する光は、例えば、可視光線であってもよいし、不可視光線であってもよい。不可視光線には、例えば、近赤外光、紫外線または遠赤外線等が適用される。光増幅器1から発せられる光には、例えば、所定の波長領域以外の波長に強度を有する光が含まれていてもよい。
図1の例では、光増幅器1の一方の端面(第1端面ともいう)E1から放出される光は、第1導光部2、光路変更光学系3、光ファイバ4およびコリメータレンズ5をこの記載の順に経て、分光素子6に照射される。
【0032】
<<第1導光部2>>
第1導光部2は、光増幅器1から放出された光を光路変更光学系3に向けて導く。第1導光部2は、例えば、光学レンズであるコリメータレンズ21と、光伝送部である光ファイバ22と、を有する。
図1の例では、光増幅器1の第1端面E1から放出された光は、コリメータレンズ21と光ファイバ22とをこの記載の順に経て光路変更光学系3に入射する。
【0033】
<<光路変更光学系3>>
光路変更光学系3は、光増幅器1から放出されて第1導光部2を経た光を分光素子6に向けて導く。また、光路変更光学系3は、分光素子6からの光を第2導光部8に導く。分光素子6からの光は、例えば、空間位相変調素子7から出射される回折光に応じて分光素子6で生じた光である。光路変更光学系3には、例えば、オプティカルサーキュレータまたは偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)等を用いて構成された光学系が適用される。
【0034】
図1の例では、光増幅器1から放出されて光路変更光学系3によって分光素子6に向けて導かれた光は、光ファイバ4とコリメータレンズ5とをこの記載の順に経て、分光素子6に照射される。また、空間位相変調素子7から出射される回折光に応じて分光素子6で生じた光は、コリメータレンズ5と光ファイバ4とをこの記載の順に経て、光路変更光学系3に入射する。
【0035】
<<分光素子6>>
分光素子6は、光増幅器1から放出された光を波長に応じて分光させる。
図1の例では、分光素子6は、光増幅器1から放出されて、第1導光部2、光路変更光学系3、光ファイバ4およびコリメータレンズ5をこの記載の順に経て、分光素子6に照射された光を、波長に応じて分光させる。分光素子6は、光増幅器1から放出された光を構成している所定の波長領域に強度を有する光を、波長に応じた角度で出射する。換言すれば、分光素子6は、光増幅器1から放出された光を構成している所定の波長領域に強度を有する光を、波長に応じて分散させる。分光素子6には、回折格子が適用される。
図1の例では、分光素子6には、透過型の回折格子が適用されているが、これに限られず、分光素子6には、反射型の回折格子が適用されてもよい。また、分光素子6には、例えば、プリズム等の他の分光素子が適用されてもよい。
【0036】
分光素子6で分光された光は、空間位相変調素子7に照射される。このため、空間位相変調素子7には、所定の波長領域に強度を有する光について、波長に応じた角度で光が照射される。ここで、分光素子6で分光されて分光素子6から空間位相変調素子7に照射される光の光路のうちの基準となる光路を基準光路Ln0とする。基準光路Ln0としては、例えば、分光素子6で分光されて分光素子6から空間位相変調素子7に照射される光の光路のうちの中心の光路が採用される。中心の光路には、所定の波長領域に強度を有する光について、分光素子6から出射される光の角度の範囲のうちの中心の角度の光路が適用される。
【0037】
また、分光素子6は、空間位相変調素子7から出射される回折光に応じた光を生じる。この光は、光路変更光学系3に向けて出射される。
図1の例では、空間位相変調素子7から出射される回折光に応じて分光素子6で生じた光は、コリメータレンズ5と光ファイバ4とをこの記載の順に経て、光路変更光学系3に入射する。
【0038】
<<空間位相変調素子7>>
空間位相変調素子7は、分光素子6から照射される光に対して位相変調を行う。これにより、空間位相変調素子7は、例えば、分光素子6に向けて回折光を出射することができる。空間位相変調素子7には、例えば、
図2から
図4で示される、光位相アレイの一種であるグレーティングライトバルブ(Grating Light Valve)が適用される。
図2は、グレーティングライトバルブの構成の一例を模式的に示す平面図である。
図2では、グレーティングライトバルブの構成の一部が模式的に示されている。
図3および
図4は、それぞれグレーティングライトバルブの構成の一例を模式的に示す断面図である。
図5から
図7は、それぞれグレーティングライトバルブの動作の一例を模式的に示す図である。
図2から
図7では、グレーティングライトバルブを構成している基板71sの+Z方向側の主面(第1主面ともいう)Sf1に沿った第1方向が+Y方向であり、第1主面Sf1に沿っており且つ+Y方向に直交する第2方向が+X方向であり、第1主面Sf1の法線に沿った第3方向が+Z方向である。
【0039】
グレーティングライトバルブは、例えば、ベース部71と、分光素子6によって分光された光を反射する複数の格子要素としての複数のリボン状の部分(リボン状部分ともリボンともいう)72と、を有する。
【0040】
ベース部71は、例えば、基板71sと、電極(基準電極ともいう)71eと、を有する。基板71sには、例えば、シリコン基板等の板状の基板が適用される。基準電極71eは、基板71sの第1主面Sf1に沿って位置している。基準電極71eには、例えば、基板71sの第1主面Sf1上に形成された金属膜が適用される。
【0041】
複数のリボン72は、基板71sの第1主面Sf1上に位置している。複数のリボン72のそれぞれには、例えば、非晶質のシリコン窒化膜等で構成された微細な構造体が適用される。複数のリボン72は、X方向に沿って並んでいる。複数のリボン72の本数は、例えば、2000本から4000本程度に設定される。より具体的には、例えば、複数のリボン72の本数は、約3000本程度に設定される。ここでは、複数のリボン72は、相互に接触していない。換言すれば、複数のリボン72のうちの隣り合う2つのリボン72の間には、微小な隙間が存在している。
【0042】
複数のリボン72のそれぞれは、Y方向に沿って延在している細長いリボン状の形状を有する。例えば、
図2で示されるように、平面視した場合に、複数のリボン72のそれぞれは、X方向に沿った短手方向と、Y方向に沿った長手方向と、を持つ矩形状の形状を有する。各リボン72の短手方向の長さ(幅ともいう)は、例えば、2マイクロメートル(μm)から25.5μm程度に設定され、各リボン72の長手方向の長さは、例えば、1ミリメートル(mm)から3mm程度に設定される。
【0043】
複数のリボン72のそれぞれは、例えば、反射部72rと、連結部72cと、を有する。各リボン72において、Y方向の中央に反射部72rが位置し、Y方向の両端に連結部72cが位置している。換言すれば、各リボン72においては、Y方向において、連結部(第1の連結部ともいう)72cと、反射部72rと、連結部(第2の連結部ともいう)72cと、がこの記載の順に位置している。
【0044】
反射部72rは、ベース部71とは逆側に光を正反射する面(光反射面ともいう)を有する。例えば、光反射面は、XY平面に平行な面である。例えば、各リボン72の表面は、光を正反射するアルミ等の金属の薄膜によって被覆された構成を有する。これにより、例えば、各リボン72の反射部72rのベース部71とは逆側の表面は、光反射面としての機能を有する。ここでは、例えば、反射部72rが光反射面を有することで、各リボン72の反射部72rが分光素子6によって分光された光を反射することができる。換言すれば、例えば、複数の格子要素としての複数のリボン72は、分光素子6によって分光された光を反射することができる。また、各リボン72の表面を構成している金属の薄膜は、電極(可動電極ともいう)としての機能を有する。
【0045】
連結部72cは、ベース部71に連結されている部分である。例えば、
図3で示されるように、複数のリボン72のそれぞれは、Y方向の両端部のそれぞれにおいてベース部71に連結されている連結部72cを含む。換言すれば、例えば、複数のリボン72のそれぞれは、Y方向の両端部のそれぞれにおいてベース部71の第1主面Sf1に連結されている。
【0046】
ここで、複数のリボン72のそれぞれの反射部72rは、空間Sp1を挟んでベース部71に対向している。そして、各リボン72の反射部72rは、空間Sp1を挟んでベース部71の基準電極71eに対向している。換言すれば、ベース部71の基準電極71eは、複数のリボン72のそれぞれの反射部72rに対向している。別の観点から言えば、例えば、複数のリボン72のそれぞれは、基準電極71eとは接触することなく基準電極71eを跨ぐように、基板71s上に架設されている。
【0047】
複数のリボン72のそれぞれは、可撓性を有する。ここでは、例えば、可動電極としての機能を有するリボン72と、基準電極71eとの間に、電位差が付与されることで、反射部72rと基準電極71eとの間に、反射部72rを基準電極71eに引き寄せる静電気力が生じる。この静電気力によってリボン72が撓む。
図3には、撓んでいない状態(基準状態ともいう)のリボン72が描かれており、
図4には、撓んだ状態のリボン72が描かれている。
図3および
図4で示されるように、リボン72は、撓むことでZ方向において変位する。ここでは、例えば、リボン72が撓んでいない基準状態における反射部72rの位置を基準として、リボン72が撓むことで、反射部72rが-Z方向において変位する。
【0048】
空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、例えば、第1制御部10からの信号に応じた静電気力によってリボン72を撓ませることで、該信号に応じた変位量だけリボン72を変位させる。グレーティングライトバルブは、例えば、第1制御部10からの信号に応じて複数のリボン72のそれぞれに対して個別に電位を付与するためのCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ドライバ(不図示)等を有する。
【0049】
第1実施形態では、例えば、第1制御部10は、複数のリボン72のそれぞれについて、反射部72rと基準電極71eとの間に付与する電位差を調整することで、反射部72rと基準電極71eとの間の静電気力によってリボン72を撓ませて、反射部72rのベース部71に対する変位を制御することができる。
【0050】
例えば、基準電極71eには、0ボルト(V)から-12V等の固定の基準となる第1電位が付与され、複数のリボン72のそれぞれには、第1電位以上の第2電位が付与される。第2電位は、例えば、第2電位と第1電位との差(電位差)が0Vから25V等の所定の範囲内の所望の電位差となるように設定される。例えば、第2電位は可変の電位である。複数のリボン72には、例えば、相互に異なる第2電位が付与され得る。これにより、例えば、複数のリボン72の間で、反射部72rの変位量を自在に異ならせることができる。リボン72と基準電極71eとの間に付与される電位差に応じた静電気力によってリボン72を撓ませた後に、リボン72と基準電極71eとの間に付与される電位差が略ゼロとなると、リボン72の弾性力によって、リボン72は撓んでいない基準状態に戻る。このとき、反射部72rの変位量がゼロに戻る。
【0051】
図5には、複数のリボン72における複数の反射部72rの変位量が等しくゼロである第1状態が例示されている。この場合には、複数の反射部72rの光反射面は、格子面P0に沿って位置しており、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、鏡として機能する。基準光路Ln0は、例えば、反射部72rの光反射面の法線に沿った光路となる。この場合には、基準光路Ln0は、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブの格子面P0の法線に沿った光路である。ここでは、グレーティングライトバルブの格子面P0は、XY面に沿った面である。格子面P0の法線は、Z方向に沿って延びている仮想的な直線である。
【0052】
図6には、X方向において反射部72rの変位量が周期的に変化しており、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブがブレーズド回折格子として機能している第2状態が例示されている。
図7には、X方向において反射部72rの変位量が周期的に変化しており、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブがブレーズド回折格子として機能している第3状態が例示されている。
図6および
図7のそれぞれには、ブレーズド回折格子における、変位の周期である格子のピッチ(格子ピッチともいう)d、および格子面P0に対して鋸歯形状の傾斜面が成す角(ブレーズ角ともいう)θbが便宜的に付されている。
【0053】
図6で示される第2状態と
図7で示される第3状態との間では、格子ピッチdおよびブレーズ角θbが異なっている。空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、例えば、複数のリボン72のそれぞれに付与される第2電位の制御によって複数のリボン72の撓み量が制御されることで、格子ピッチdおよびブレーズ角θbが可変であるブレーズド回折格子として機能し得る。
【0054】
第1実施形態では、例えば、分光素子6は、複数の格子要素としての複数のリボン72が並んでいる第2方向としてのX方向において波長に応じた異なる角度で光を出射するように配置されている。そして、分光素子6は、分光して出射した光が、複数の格子要素としての複数のリボン72に照射されるように配置されている。例えば、分光素子6から出射される光は、複数の格子要素としての複数のリボン72のそれぞれの第1方向としてのY方向の中央部に照射される。換言すれば、分光素子6から出射される光は、複数の格子要素としての複数のリボン72を構成している複数の反射部72rに照射される。ここでは、分光素子6から出射される光は、複数の格子要素としての複数のリボン72のうちの第1方向としてのY方向の略中央に沿った線状もしくは帯状の領域に照射される。この場合には、複数の反射部72rの光反射面に対してX方向において異なる波長の光が照射される。例えば、分光素子6から出射されて複数の反射部72rの光反射面に照射される光においては、+X方向に向かうにつれて光の波長が短くなる態様が考えられる。
【0055】
ここで、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、複数の格子要素としての複数のリボン72のうちの少なくとも一部のリボン72をベース部71に対して相対的に変位させることができる。そして、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6によって分光された光に位相変調を施して、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長について、分光素子6からの入射光の光路(入射光路ともいう)Liに沿って分光素子6に向けて回折光を出射することができる。これにより、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6によって分光された光のうちの一部の波長(選択波長ともいう)の光を、選択的に分光素子6に戻すことができる。
【0056】
図8から
図10は、それぞれグレーティングライトバルブにおける入射光の光路(入射光路)Liと出射光としての回折光の光路(出射光路ともいう)Leとの関係の一例を模式的に示す図である。
【0057】
空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、例えば、ブレーズド回折格子として機能する場合には、入射光の照射に応じて、格子ピッチdに応じた角度へ回折光を出射することができる。そして、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、例えば、ブレーズド回折格子として機能する場合には、いわゆるリトロー配置に設定されることで、所望の波長の光について、格子面P0の法線L0と入射光の光路(入射光路)Liとが成す角度(入射角ともいう)θiと、格子面P0の法線L0と回折光の光路(出射光路)Leとが成す角度(回折角ともいう)θeと、が同一となる。リトロー配置では、例えば、ブレーズド回折格子の鋸歯状のパターンの深さ(=d×tanθb)が、所望の波長の半分に近づくほど、回折効率が高まり得る。この場合、例えば、入射角θiと回折角θeとブレーズ角θbとが同一となる。
【0058】
ここでは、例えば、鋸歯形状の傾斜面が、+X方向に向かうにつれて-Z方向に向かうように傾斜する場合に、ブレーズ角θbが負の角度であり、鋸歯形状の傾斜面が、-X方向に向かうにつれて-Z方向に向かうように傾斜する場合に、ブレーズ角θbが正の角度であるように、ブレーズ角θbの正負を定義することができる。このとき、+Y方向に平面視して、法線L0に対して入射光路Liおよび出射光路Leが鋭角を成すように反時計回りに傾いている場合に、入射角θiおよび回折角θeが負の角度であり、法線L0に対して入射光路Liおよび出射光路Leが鋭角を成すように時計回りに傾いている場合に、入射角θiおよび回折角θeが正の角度であるように、入射角θiおよび回折角θeの正負を定義することができる。
【0059】
例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、第1制御部10の制御に応じて、複数の反射部72rのうちの少なくとも一部の反射部72rをベース部71に対して相対的に変位させることで、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)に対するリトロー配置に設定され得る。この場合には、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、選択波長について、分光素子6からの入射光の入射光路Liに沿って、分光素子6に向けて回折光を出射することができる。換言すれば、選択波長の光について、格子面P0の法線L0と入射光の光路(入射光路)Liとが成す角度(入射角)θiと、格子面P0の法線L0と回折光の光路(出射光路)Leとが成す角度(回折角)θeと、が同一となる。これにより、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6によって分光された光のうちの一部の波長(選択波長)の光を、選択的に分光素子6に戻すことができる。そして、空間位相変調素子7から出射される選択波長の回折光は、分光素子6において該分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)の光を生じさせる。
【0060】
ここで、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、第1制御部10の制御に応じて、複数の反射部72rのうちの少なくとも一部の反射部72rをベース部71に対して相対的に変位させることで、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての第1波長λ1に対するリトロー配置に設定され得る。ここでは、例えば、
図9で示されるように、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブでは、分光素子6から空間位相変調素子7に向けて照射される第1波長λ1の光路(第1入射光路ともいう)Li1と格子面P0の法線L0とが成す角度(第1入射角ともいう)θi1に対応するブレーズ角(第1ブレーズ角ともいう)θb1が設定される。この場合には、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6からの第1波長λ1の入射光の入射光路(第1入射光路)Li1に沿って、分光素子6に向けて第1波長λ1の回折光を出射する。換言すれば、選択波長の光について、格子面P0の法線L0と第1波長λ1の入射光の光路(第1入射光路)Li1とが成す角度(第1入射角)θi1と、格子面P0の法線L0と第1波長λ1の回折光の光路(第1出射光路ともいう)Le1とが成す角度(第1回折角ともいう)θe1と、が同一となる。これにより、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6によって分光された光のうちの一部の波長(選択波長)の光としての第1波長λ1の光を、選択的に分光素子6に戻すことができる。そして、空間位相変調素子7から出射される第1波長λ1の回折光は、分光素子6において該分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての第1波長λ1の光を生じさせる。
【0061】
また、ここで、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、第1制御部10の制御に応じて、複数の反射部72rのうちの少なくとも一部の反射部72rをベース部71に対して相対的に変位させることで、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての第2波長λ2に対するリトロー配置に設定され得る。第2波長λ2は、第1波長λ1とは異なる。ここでは、例えば、
図10で示されるように、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブでは、分光素子6から空間位相変調素子7に向けて照射される第2波長λ2の光路(第2入射光路ともいう)Li2と格子面P0の法線L0とが成す角度(第2入射角ともいう)θi2に対応するブレーズ角(第2ブレーズ角ともいう)θb2が設定される。この場合には、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6からの第2波長λ2の入射光の入射光路(第2入射光路)Li2に沿って、分光素子6に向けて第2波長λ2の回折光を出射する。換言すれば、選択波長の光について、格子面P0の法線L0と第2波長λ2の入射光の光路(第2入射光路)Li2とが成す角度(第2入射角)θi2と、格子面P0の法線L0と第2波長λ2の回折光の光路(第2出射光路ともいう)Le2とが成す角度(第2回折角ともいう)θe2と、が同一となる。これにより、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、分光素子6によって分光された光のうちの一部の波長(選択波長)の光としての第2波長λ2の光を、選択的に分光素子6に戻すことができる。そして、空間位相変調素子7から出射される第2波長λ2の回折光は、分光素子6において該分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての第2波長λ2の光を生じさせる。
【0062】
<<第2導光部8>>
第2導光部8は、例えば、第1光出力部84と、導光部分86と、を含む。
図1の例では、第2導光部8は、光伝送部としての光ファイバ81と、光学レンズであるコリメータレンズ82と、光伝送部としての光ファイバ83と、を含む。例えば、光路変更光学系3によって第2導光部8に導かれた光は、光ファイバ81と、コリメータレンズ82と、光ファイバ83と、をこの記載の順に経て、第1光出力部84に入射する。
【0063】
第1光出力部84は、光路変更光学系3によって第2導光部8に導かれた光のうちの一部の光を出力光として第2導光部8の外部に出力する。第1光出力部84には、例えば、光ファイバカプラ(カプラともいう)が適用される。例えば、カプラは、カプラに入射した光のうちの一部を光伝送部である光ファイバ85を介して第2導光部8の外部に出力し、カプラに入射した光のうちの残余の光を導光部分86に導く。ここでは、例えば、カプラに入射した光について、光ファイバ85を介して第2導光部8の外部に出力される出力光の光量よりも、導光部分86に出力される残余の光の光量の方が、数倍から数十倍となるように設定される。別の観点から言えば、例えば、カプラに入射した光について、光ファイバ85を介して第2導光部8の外部に出力される出力光の光量と、導光部分86に出力される残余の光の光量との比が、例えば、5~20:95~80に設定される。例えば、出力光の光量と残余の光の光量との比は、10:90等に設定される。
【0064】
導光部分86は、光路変更光学系3によって第2導光部8に導かれた光のうち、第1光出力部84によって第2導光部8の外部に出力された一部の光(出力光)を除く残余の光を光増幅器1に向けて導く。これにより、例えば、光増幅器1に入射した光は、光増幅器1によって増幅された後に分光素子6に向けて放出される。換言すれば、例えば、空間位相変調素子7から出射される回折光に応じて分光素子6において生じた、所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)の光が、光増幅器1によって増幅された後に、分光素子6に向けて放出される。
【0065】
図1の例では、導光部分86は、光伝送部としての光ファイバ861と、光学レンズであるコリメータレンズ862と、を含む。この場合には、例えば、第1光出力部84から導光部分86に導かれた光は、光ファイバ861と、コリメータレンズ862と、をこの記載の順に経て、光増幅器1のうちの第1端面E1とは異なる他の端面(第2端面ともいう)E2に入射する。これにより、例えば、光増幅器1の第2端面E2に入射した光は、光増幅器1によって増幅された後に分光素子6に向けて放出される。
【0066】
光源装置100では、光増幅器1から放出される光が、分光素子6、空間位相変調素子7、分光素子6および光増幅器1をこの記載の順に経る経路(増幅経路ともいう)を複数回通り得る。これにより、例えば、所定の波長領域に強度を有する光の光増幅器1からの放射に応じて、光増幅器1によって複数回の増幅が行われた一部の波長(選択波長)の光が出力される。その結果、例えば、狭い波長域に高い強度を有する光が光源装置100から出力され得る。
【0067】
<<第1制御部10>>
第1制御部10は、空間位相変調素子7の動作を制御する。具体的には、第1制御部10は、空間位相変調素子7におけるベース部71に対する複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)の変位を制御する。ここでは、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブによって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)におけるベース部71に対する変位のパターンを変更することで、分光素子6によって分光された所定の波長領域の光のうちの選択的に分光素子6に戻す一部の波長(選択波長)の光を、迅速に変更することができる。その結果、例えば、複数回の増幅の後に光源装置100から出力される出力光の波長が迅速に切り替えられ得る。したがって、例えば、光源装置100が発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0068】
さらに、例えば、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のそれぞれが微小であり、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)の変位量が精度よく制御され得る。これにより、例えば、光源装置100が発する光の波長が精度よく変更され得る。
【0069】
第1制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリおよび記憶部あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えて構成される。記憶部には、例えば、CPU等で実行可能なプログラムを格納する不揮発性の記憶媒体等が適用される。第1制御部10は、例えば、光源装置100の外部の制御装置200からの信号または情報等に応じて、空間位相変調素子7の動作を制御する。制御装置200から第1制御部10に入力される信号または情報は、例えば、空間位相変調素子7におけるベース部71に対する複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)の変位のパターンを示す信号または情報を含む。
【0070】
制御装置200には、例えば、CPUおよび記憶部等を有するパーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータ等が適用される。制御装置200は、例えば、光源装置100から出力させたい所望の波長(選択波長)の光に対応するブレーズド回折格子の表面形状に応じて、空間位相変調素子7における複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンを示す情報を生成する。ここで、光源装置100から出力させたい所望の波長の光に対応するブレーズド回折格子の表面形状は、例えば、分光素子6と空間位相変調素子7との相対的な位置および姿勢の関係ならびに分光素子6における分光特性の情報等に基づく計算もしくはシミュレーションあるいは光源装置100を用いた実験等によって求められ得る。ブレーズド回折格子の表面形状を規定する要素には、例えば、ブレーズ角θbおよび格子ピッチd等が含まれる。
【0071】
第1制御部10は、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブによって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンを、第1パターンから第2パターンに変更させることができる。
【0072】
ここで、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが第1パターンに設定されると、分光素子6から空間位相変調素子7に向けて照射される第1波長λ1の入射光の光路(第1入射光路)Li1と格子面P0の法線L0とが成す角度(第1入射角)θi1に対応するブレーズ角(第1ブレーズ角)θb1を有するブレーズド回折格子として機能するものとする。また、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブは、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが第2パターンに設定されると、分光素子6から空間位相変調素子7に向けて照射される第2波長λ2の入射光の光路(第2入射光路)Li2と格子面P0の法線L0とが成す角度(第2入射角)θi2に対応するブレーズ角(第2ブレーズ角)θb2を有するブレーズド回折格子として機能するものとする。
【0073】
この場合には、例えば、第1制御部10によって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが、第1パターンから第2パターンに変更されると、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)が第1波長λ1を含む状態から、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)が第2波長λ2を含む状態に切り替わる。このため、例えば、光源装置100から出力される出力光の波長をランダムに変更することができる。その結果、例えば、光源装置100が発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0074】
また、第1制御部10は、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブによって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンを、第1パターンから第3パターンに変更させてもよい。ここで、例えば、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが第3パターンに設定されると、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブが、分光素子6によって分光される所定の波長領域のうちの第3波長λ3の光について、分光素子6からの入射光の入射光路Liに沿って分光素子6に向けて回折光を出射するものとする。この場合には、例えば、第1制御部10によって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが、第1パターンから第3パターンに変更されると、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)が第1波長λ1を含む状態から、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)が第3波長λ3を含む状態に切り替わる。
【0075】
図11は、光源装置100から出力される出力光における波長(選択波長)の切り替えの一例を模式的に示すグラフである。
図11には、光源装置100から出力される出力光の波長が第1波長λ1である場合における出力光のスペクトルの一例が実線で描かれた曲線で模式的に示されており、光源装置100から出力される出力光の波長が第2波長λ2である場合における出力光のスペクトルの一例が一点鎖線で描かれた曲線で模式的に示されている。また、
図11には、光源装置100から出力される出力光の波長が第3波長λ3である場合における出力光のスペクトルの一例が二点鎖線で描かれた曲線で模式的に示されている。
【0076】
図11で示されるように、例えば、光源装置100から出力される出力光の波長を、第1波長λ1から、この第1波長λ1から離れた第1波長λ1よりも小さな第2波長λ2に迅速に切り替える態様が考えられる。また、例えば、光源装置100から出力される出力光の波長を、第1波長λ1から、この第1波長λ1から離れた第1波長λ1よりも大きな第3波長λ3に迅速に切り替える態様が考えられる。ここでは、第2波長λ2と第3波長λ3とが入れ替えられてもよい。
【0077】
このように、光源装置100では、例えば、上述したように、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブを用いて、分光素子6によって分光された光のうちの一部の波長(選択波長)の光を、選択的に分光素子6に戻すことで、光源装置100から出力される出力光の波長を、ランダムに増大および減少させることができる。
【0078】
ところで、例えば、背景技術で説明したMEMSの振動ミラーを用いた外部共振器型の波長掃引光源では、光源装置100における格子要素としてのリボン72(具体的には、反射部72r)よりも大きな振動ミラーを揺動させることで、出力光の波長が掃引される。このため、例えば、振動ミラーをある程度以上の角度の範囲内でしか揺動させることができない律速がある。よって、例えば、10nm未満等の狭い波長の範囲内で出力光の波長を掃引することが容易でない。これに対して、第1実施形態に係る光源装置100では、MEMSの振動ミラーよりも微小な複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)の変位量を制御することで、例えば、出力光の波長を1nmから10nm未満等の狭い波長の範囲内で出力光の波長を掃引することができる。
【0079】
<<第2制御部20>>
第2制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリおよび記憶部あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えて構成される。記憶部には、例えば、CPU等で実行可能なプログラムを格納する不揮発性の記憶媒体等が適用される。第2制御部20は、例えば、制御装置200からの信号に応じて、光増幅器1の制御を行ってもよい。
【0080】
<1-2.第1実施形態のまとめ>
以上のように、第1実施形態に係る光源装置100では、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブによって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)におけるベース部71に対する変位のパターンを変更することができる。これにより、例えば、分光素子6によって分光された所定の波長領域の光のうちの選択的に分光素子6に戻す一部の波長(選択波長)の光を、迅速に変更することができる。その結果、例えば、複数回の増幅の後に光源装置100から出力される出力光の波長が迅速に切り替えられ得る。したがって、例えば、光源装置100が発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0081】
また、第1実施形態に係る光源装置100では、例えば、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが、第1パターンから第2パターンに変更されると、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)が第1波長λ1を含む状態から、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)が第2波長λ2を含む状態に切り替わる。これにより、例えば、光源装置100から出力される出力光の波長をランダムに変更することができる。その結果、例えば、光源装置100が発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0082】
<2.変形例>
本発明は上述の第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良等が可能である。
【0083】
<<第1変形例>>
上記第1実施形態において、例えば、分光素子6で分光された光における所定の波長領域のうちの空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブによって選択的に分光素子6に戻す光における一部の波長(選択波長)が、互いに離れた異なる複数の波長を含んでいてもよい。ここでは、例えば、第1制御部10が、空間位相変調素子としてのグレーティングライトバルブによって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンを第1パターンに設定させることで、分光素子6で分光された光における所定の波長領域のうちの互いに離れた異なる複数の波長の光を選択波長の光として選択的に分光素子6に戻させてもよい。この場合には、例えば、分光素子6によって分光された所定の波長領域の光のうちの選択的に分光素子6に戻される光の波長が、互いに離れた異なる複数の波長を含むため、互いに離れた異なる複数の波長の光を同時に光源装置100から出力させることができる。
【0084】
図12は、光源装置100から出力される複数の波長の出力光についての波長と強度との関係の一例を模式的に示すグラフである。
図12で示されるように、互いに離れた異なる複数の波長が、互いに離れた異なる関係にある第1A波長λ1aと第1B波長λ1bとを含む態様が考えられる。ここでは、例えば、出力光の全体におけるスペクトルは、第1A波長λ1aにおけるピーク(第1Aピークともいう)と、第1B波長λ1bにおけるピーク(第1Bピークともいう)を有する。
【0085】
図13は、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおいて機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状に係る第1Aパターンの一例を模式的に示す断面図である。
図14は、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおいて機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状に係る第1Bパターンの一例を模式的に示す断面図である。
【0086】
ここで、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおける複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが、
図13で示されるような第1Aパターンの表面形状に対応する変位のパターンであれば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブで機能的に実現されるブレーズド回折格子が、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての第1A波長λ1aに対するリトロー配置を有するものとする。また、ここで、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおける複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンが、
図14で示されるような第1Bパターンの表面形状に対応する変位のパターンであれば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブで機能的に実現されているブレーズド回折格子が、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての第1B波長λ1bに対するリトロー配置を有するものとする。
【0087】
この場合には、制御装置200は、例えば、第1Aパターンの表面形状と、第1Bパターンの表面形状と、に基づいた表面形状のパターン(合成パターンともいう)を生成し、ブレーズド回折格子の合成パターンの表面形状に応じて、空間位相変調素子7における複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンを示す情報を生成してもよい。ここでは、例えば、制御装置200が、いわゆる逆フーリエ変換法を用いた第1Aパターンの表面形状と第1Bパターンの表面形状との合成によって合成パターンを生成する態様、が考えられる。
【0088】
図15は、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおいて機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状について複数の波長の光を分光素子に戻すための合成パターンを生成する方法の一例を説明するための図である。
図16は、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおいて機能的に実現されるブレーズド回折格子の表面形状に係る合成パターンの一例を模式的に示す断面図である。
【0089】
ここで、例えば、
図15および
図16で示されるように、制御装置200が、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおいて第1A波長λ1aの光が照射される領域(第1A領域ともいう)A1aに対応する場所で第1Aパターンの表面形状を有し、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブにおいて第1B波長λ1bの光が照射される領域(第1B領域ともいう)A1bに対応する場所で第1Bパターンの表面形状を有するように、合成パターンを生成する態様、が採用されてもよい。
【0090】
ここでは、例えば、第1A波長λ1aおよび第1B波長λ1bを任意に設定すれば、互いに離れた異なる任意の複数の波長の光を同時に光源装置100から出力させることができる。その結果、例えば、異なる複数の狭い波長域のそれぞれに高い強度を有する光が光源装置100から出力され得る。
【0091】
図17は、光源装置100から出力される出力光における複数の波長の切り替えの一例を模式的に示すグラフである。
図17には、光源装置100から出力される出力光の波長が複数の波長としての第1A波長λ1aおよび第1B波長λ1bである場合における出力光のスペクトルの一例が細い二点鎖線で描かれた曲線で模式的に示されており、光源装置100から出力される出力光の波長が互いに離れた異なる複数の波長としての第2A波長λ2aおよび第2B波長λ2bである場合における出力光のスペクトルの一例が実線で描かれた曲線で模式的に示されている。光源装置100から出力される出力光の波長が互いに離れた異なる複数の波長としての第2A波長λ2aおよび第2B波長λ2bである場合には、出力光の全体におけるスペクトルは、例えば、第2A波長λ2aにおけるピーク(第2Aピークともいう)と、第2B波長λ2bにおけるピーク(第2Bピークともいう)を有する。
【0092】
ここで、第1制御部10は、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブによって、複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)のベース部71に対する変位のパターンを、第1パターンから第2パターンに変更させることで、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての複数の波長が第1A波長λ1aと第1B波長λ1bとを含む状態から、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長(選択波長)としての複数の波長が第2A波長λ2aと第2B波長λ2bとを含む状態に切り替えてもよい。この場合には、例えば、空間位相変調素子7としてのグレーティングライトバルブの複数の格子要素としての複数のリボン72(具体的には、複数の反射部72r)におけるベース部71に対する変位のパターンを第1パターンから第2パターンへ変更することで、光源装置100から同時に出力される光の複数の波長をランダムに変更することができる。その結果、例えば、光源装置100が同時に発する光の複数の波長が迅速に変更され得る。
【0093】
図17で示されるように、例えば、光源装置100から出力される出力光の2つの波長を、第1A波長λ1aおよび第1B波長λ1bから、第1A波長λ1aから波長が増大する方向に離れた第2A波長λ2aおよび第1B波長λ1bから波長が増大する方向に離れた第2B波長λ2bに迅速に切り替えられる態様が考えられる。ここで、例えば、第2A波長λ2aは、第1A波長λ1aよりも小さくてもよいし、第2B波長λ2bは、第1B波長λ1bよりも小さくてもよい。
【0094】
ここで、同時に発する光の複数の波長を迅速に変換することが可能な光源装置100は、例えば、周波数変調連続波(Frequency Modulation Continuous Wave:FMCW)方式の測距技術において2波長のビート信号を用いたDualビート方式による長距離高精度測距を行う装置またはシステムに適用することができる。Dualビート方式による長距離高精度測距では、例えば、同時に2つの異なる波長の光を用いて、それぞれの参照光を掃引しながら対象物からの戻り光と参照光との干渉によって参照光と戻り光との周波数差に等しいビート信号を検出し、高速フーリエ変換(FFT)等でビート信号に係る周波数スペクトルを得ることで、対象物までの距離の測定が行われる。
【0095】
<<第2変形例>>
上記第1実施形態および上記変形例において、例えば、光増幅器1の第1端面E1から光が放出され、空間位相変調素子7から出射された回折光に応じて分光素子6で生じた光が、光増幅器1の第1端面E1に戻される構成が採用されてもよい。
【0096】
図18は、一変形例に係る光源装置100Aの構成を模式的に示す図である。
図18では、
図1と同様に、光の進行方向が細い一点鎖線で描かれた矢印で示されている。
【0097】
光源装置100Aは、上記第1実施形態に係る光源装置100をベースとして、第1導光部2、光路変更光学系3、第2導光部8、光ファイバ4およびコリメータレンズ5の代わりに、第3導光部2Aおよび部分反射光学系9Aを備えている。換言すれば、光源装置100Aは、光増幅器1、分光素子6、空間位相変調素子7および第1制御部10に加えて、第3導光部2Aおよび部分反射光学系9Aを備えている。また、光源装置100は、例えば、第2制御部20を備えている。
【0098】
第3導光部2Aは、光増幅器1の第1端面E1から放出された光を分光素子6に向けて導くとともに、空間位相変調素子7から出射された回折光に応じて分光素子6で生じた一部の波長(選択波長)の光を光増幅器1の第1端面E1に向けて導く。第3導光部2Aには、例えば、光増幅器1と分光素子6との間に配置された光学レンズであるコリメータレンズ21A等が適用される。
【0099】
部分反射光学系9Aは、光増幅器1の第2端面E2から放出された光のうちの一部の光を透過させることで出力光として出力し、光増幅器1の第2端面E2から放出された光のうちの一部の光を除く残余の光を光増幅器1の第2端面E2に向けて反射する。部分反射光学系9Aには、例えば、部分反射ミラー91Aと、光学レンズであるコリメータレンズ92Aと、が適用される。部分反射ミラー91Aには、例えば、ハーフミラーもしくはマジックミラー等が適用される。部分反射ミラー91Aは、光増幅器1の第2端面E2から放出された光の一部を透過させ、コリメータレンズ92Aを介して部分反射光学系9Aの外部に出力光として出力させる。
【0100】
ここでは、光増幅器1の第2端面E2から放出された光のうちの部分反射ミラー91Aを透過する光(一部の光)の光量よりも、光増幅器1の第2端面E2から放出された光のうちの部分反射ミラー91Aによって光増幅器1の第2端面E2に向けて反射する光(残余の光)の光量の方が、数倍から数十倍となるように設定される。別の観点から言えば、光増幅器1の第2端面E2から部分反射ミラー91Aに照射された光のうち、部分反射ミラー91Aを透過する一部の光(透過光ともいう)の光量と、部分反射ミラー91Aで反射される残余の光(反射光ともいう)の光量との比が、例えば、5~20:95~80に設定される。例えば、部分反射ミラー91Aにおける透過光の光量と反射光の光量との比は、10:90等に設定される。
【0101】
上記構成を有する光源装置100Aでは、光増幅器1から放出される光が、第3導光部2A、分光素子6、空間位相変調素子7、分光素子6、第3導光部2A、光増幅器1、部分反射光学系9Aおよび光増幅器1をこの記載の順に経る経路(往復経路ともいう)を複数回通り得る。換言すれば、光増幅器1から放出される光が、部分反射光学系9Aと空間位相変調素子7との間を往復し、光増幅器1によって複数回の増幅が行われる。これにより、例えば、所定の波長領域に強度を有する光の光増幅器1からの放射に応じて、光増幅器1によって複数回の増幅が行われた一部の波長(選択波長)の光が出力される。その結果、例えば、狭い波長域に高い強度を有する光が光源装置100Aから出力され得る。
【0102】
<<第3変形例>>
上記第1実施形態および上記各変形例において、例えば、空間位相変調素子7には、グレーティングライトバルブの代わりに、平面ライトバルブが適用されてもよい。
【0103】
図19は、平面ライトバルブの構成の一例を模式的に示す平面図である。
図19では、平面ライトバルブの構成の一部が示されている。
図20および
図21は、それぞれ平面ライトバルブにおける1つの反射素子74およびベース部73の構成を模式的に示す断面図である。
図19から
図21では、平面ライトバルブを構成している基板73sの+Z方向側の主面(第2主面ともいう)Sf2に沿った第1方向が+Y方向であり、第2主面Sf2に沿っており且つ+Y方向に直交する第2方向が+X方向であり、第2主面Sf2の法線に沿った第3方向が+Z方向である。
図20および
図21では、後述する支持部74sの図示が便宜的に省略されている。
【0104】
空間位相変調素子7としての平面ライトバルブは、例えば、ベース部73と、複数の反射素子74と、を有する。
【0105】
ベース部73は、例えば、基板73sと、電極(基準電極ともいう)73eと、を有する。基板73sには、例えば、シリコン基板等の板状の基板が適用される。基準電極73eは、基板73sの第2主面Sf2に沿って位置している。基準電極73eには、例えば、基板73sの第2主面Sf2上に形成された金属膜が適用される。基準電極73eは、例えば、反射素子74ごとに設けられた電極であってもよいし、複数の反射素子74に対して共通の電極であってもよい。
【0106】
複数の反射素子74は、マトリックス状に並んでいる。より具体的には、複数の反射素子74は、基板73sの第2主面Sf2上においてマトリックス状に配列されている。平面ライトバルブでは、例えば、Y方向にM個で且つX方向にN個の反射素子74が配置されている。ここで、MおよびNは自然数であり、MおよびNのそれぞれは、例えば、数百から数千の数値である。
【0107】
複数の反射素子74のそれぞれは、可動反射部74rと、支持部74sと、を含む。ここでは、複数の反射素子74における複数の可動反射部74rは、分光素子6によって分光された光を反射する複数の格子要素として機能する。また、
図19から
図21の例では、複数の反射素子74のそれぞれは、固定反射部74fを含む。
【0108】
図19から
図21で示されるように、固定反射部74fは、基板73sに固定された平面状の略矩形の部材であり、中央に略円形の開口を有する。固定反射部74fの+Z方向を向いた面(上面ともいう)は光を正反射する光反射面(固定光反射面ともいう)を有する。
【0109】
可動反射部74rは、ベース部73とは逆側に光を正反射する光反射面(可動光反射面ともいう)を有する。光反射面は、XY平面に平行な面である。例えば、各可動反射部74rの表面は、光を正反射するアルミ等の金属の薄膜によって被覆された構成を有する。これにより、例えば、各可動反射部74rのベース部73とは逆側の表面は、光反射面としての機能を有する。ここでは、例えば、可動反射部74rが光反射面を有することで、各可動反射部74rが分光素子6によって分光された光を反射することができる。
【0110】
支持部74sは、可撓性を有しており、可動反射部74rの複数箇所をそれぞれ支持しており且つベース部73に連結されている。支持部74sには、例えば、非晶質のシリコン窒化膜等で構成された微細な構造が適用される。支持部74sは、例えば、十字状の構造体(十字状構造体ともいう)の一部によって構成される。この場合には、十字状構造体は、可動反射部74rの-Z方向の面(裏面ともいう)の一部を構成する中央部と、可動反射部74rとベース部73との間に架設された支持部74sとしての4つの端部と、を有する。十字状構造体の表面は、アルミ等の金属の薄膜が被覆された構成を有する。この金属の薄膜は、電極(可動電極ともいう)としての機能を有する。換言すれば、可動反射部74rは、可動電極としての機能を有する。
【0111】
ここで、可動反射部74rは、空間Sp1を挟んでベース部73に対向している。そして、各可動反射部74rは、空間Sp1を挟んでベース部73の基準電極73eに対向している。換言すれば、ベース部73の基準電極73eは、各可動反射部74rに対向している。また、支持部74sは、例えば、基準電極73eとは接触することなく可動反射部74rを支持している。このため、例えば、支持部74sが撓むことで、
図20および
図21で示されるように、可動反射部74rがベース部73に対して変位し得る。
【0112】
ここでは、例えば、可動電極としての機能を有する可動反射部74rと、基準電極73eとの間に、電位差が付与されることで、可動反射部74rと基準電極73eとの間に、可動反射部74rを基準電極73eに引き寄せる静電気力が生じる。この静電気力によって支持部74sが撓む。
【0113】
空間位相変調素子7としての平面ライトバルブは、例えば、第1制御部10からの信号に応じた静電気力によって支持部74sを撓ませることで、該信号に応じた変位量だけ可動反射部74rを変位させる。
【0114】
例えば、第1制御部10は、複数の反射素子74のそれぞれについて、可動反射部74rと基準電極73eとの間に付与する電位差を調整することで、可動反射部74rと基準電極73eとの間の静電気力によって支持部74sを撓ませて、可動反射部74rのベース部73に対する変位を制御することができる。換言すれば、第1制御部10は、ベース部73に対する複数の格子要素としての複数の可動反射部74rの変位を制御することができる。なお、ここでは、例えば、可動反射部74rと基準電極73eとの間に付与される電位差に応じた静電気力によって支持部74sを撓ませた後に、可動反射部74rと基準電極73eとの間に付与される電位差が略ゼロとなると、支持部74sの弾性力によって、支持部74sは撓んでいない基準状態に戻る。このとき、可動反射部74rの変位量がゼロに戻る。
【0115】
ここでは、Y方向に沿って並ぶ複数の反射素子74のそれぞれにおける可動反射部74rの変位量は同一となるように制御される。換言すれば、マトリックス状に並ぶ複数の反射素子74は、Y方向に沿って並ぶ1列を成す複数の反射素子74が1つの単位とされて、可動反射部74rの変位量が制御される。このため、例えば、平面ライトバルブは、上述したグレーティングライトバルブにおける
図6および
図7で示された上記第2状態および上記第3状態と同様な態様で、X方向において可動反射部74rの変位量が周期的に変化してブレーズド回折格子として機能し得る。そして、空間位相変調素子7としての平面ライトバルブは、例えば、複数の可動反射部74rの可動電極に付与される電位の制御等によって複数の支持部74sの撓み量が制御されることで、格子ピッチdおよびブレーズ角θbが可変であるブレーズド回折格子として機能し得る。
【0116】
このため、例えば、空間位相変調素子7としての平面ライトバルブは、複数の格子要素としての複数の可動反射部74rのうちの少なくとも一部の可動反射部74rをベース部73に対して相対的に変位させることで、分光素子6によって分光された光に位相変調を施して、分光素子6によって分光された光の所定の波長領域のうちの一部の波長について、分光素子6からの入射光の光路(入射光路)Liに沿って分光素子6に向けて回折光を出射することができる。これにより、空間位相変調素子7としての平面ライトバルブは、分光素子6によって分光された光のうちの一部の波長(選択波長ともいう)の光を、選択的に分光素子6に戻すことができる。
【0117】
よって、平面ライトバルブを空間位相変調素子7に適用した場合であっても、上記第1実施形態と同様に、複数の格子要素としての複数の可動反射部74rにおけるベース部73に対する変位のパターンを変更することで、分光素子6によって分光された所定の波長領域の光のうちの選択的に分光素子6に戻す一部の波長(選択波長)の光を、迅速に変更することができる。その結果、例えば、複数回の増幅の後に光源装置100,100Aから出力される出力光の波長が迅速に切り替えられ得る。したがって、例えば、光源装置100,100Aが発する光の波長が迅速に変更され得る。
【0118】
ここで、例えば、複数の可動反射部74rのそれぞれ形状は、円板状に限られず、上下面が矩形の板状等、種々の板状であってもよい。
【0119】
<<その他の変形例>>
上記第1実施形態および上記各変形例において、例えば、空間位相変調素子7で機能的に実現されるブレーズド回折格子の鋸歯状のパターンの深さ(=d×tanθb)は、常に選択波長の半分である設定でなくてもよい。ここでは、例えば、空間位相変調素子7で機能的に実現されるブレーズド回折格子の鋸歯状のパターンの深さ(=d×tanθb)は、所定の波長領域内の特定の波長の半分に設定されてもよい。特定の波長には、例えば、所定の波長領域の中心の波長もしくは中心付近の波長が適用され得る。
【0120】
上記第1実施形態および各変形例において、例えば、第1制御部10と第2制御部20とは1つの制御部であってもよい。
【0121】
上記第1実施形態および各変形例において、例えば、第1制御部10および第2制御部20のうちの一部の機能を光源装置100の外部の装置に持たせてもよい。外部の装置には、例えば、制御装置200等が適用され得る。
【0122】
上記第1実施形態および各変形例において、光ファイバが設けられている箇所は、光路上の前後の素子の配置次第で、適宜自由空間に置き換え得る。
【0123】
なお、上記第1実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1 光増幅器
10 第1制御部
100,100A 光源装置
2 第1導光部
20 第2制御部
2A 第3導光部
3 光路変更光学系
6 分光素子
7 空間位相変調素子
71,73 ベース部
71e,73e 基準電極
71s,73s 基板
72 リボン
72c 連結部
72r 反射部
74 反射素子
74r 可動反射部
74s 支持部
8 第2導光部
84 第1光出力部
86 導光部分
9A 部分反射光学系
E1 第1端面
E2 第2端面
Li 入射光路
Sp1 空間