(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141813
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ロール紙供給装置、プリンタおよび該プリンタを備える現金自動取引装置
(51)【国際特許分類】
B65H 19/10 20060101AFI20230928BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20230928BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
B65H19/10 Z
B41J15/04
G07D11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048319
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今西 勇介
(72)【発明者】
【氏名】井澤 聡史
【テーマコード(参考)】
2C060
3E141
3F064
【Fターム(参考)】
2C060BA03
2C060BA12
3E141AA06
3E141BA07
3E141CA04
3E141FK02
3F064AA02
3F064BA03
3F064BA11
(57)【要約】
【課題】高い信頼性でロール紙を供給することができるロール紙供給装置、プリンタおよび該プリンタを備える現金自動取引装置信頼性を提供すること。
【課題を解決するための手段】複数巻きのロール紙4を一つずつ供給するロール紙供給装置1は、給紙位置P1にあるロール紙の先端を印刷部31へ供給する給紙部と、給紙部へロール紙を供給する補充部であって、給紙位置へ次のロール紙を送り出す待機位置P2と、待機位置の上方に位置して待機位置へロール紙を補充する補充位置P3とを備える補充部と、補充位置から待機位置へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で、ロール紙を支持しながら移動させる移動部50とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数巻きのロール紙を一つずつ供給するロール紙供給装置であって、
給紙位置にあるロール紙の先端を印刷部へ供給する給紙部と、
前記給紙部へロール紙を供給する補充部であって、前記給紙位置へ次のロール紙を送り出す待機位置と、前記待機位置の上方に位置して前記待機位置へロール紙を補充する補充位置とを備える補充部と、
前記補充位置から前記待機位置へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で、前記ロール紙を支持しながら移動させる移動部と、
を備えるロール紙供給装置。
【請求項2】
前記移動部は、
前記補充位置のロール紙を支持する上側支持部と、
前記上側支持部の下側に設けられ、前記補充位置から前記待機位置へ前記ロール紙が移動する際に前記ロール紙を支持しながら移動させる下側支持部と、
を備える請求項1に記載のロール紙供給装置。
【請求項3】
前記上側支持部は、
前記補充位置のロール紙を支持する開閉可能な上側レバー部であって、閉じている場合は前記ロール紙を斜め下側から支持して前記ロール紙が前記補充位置から前記待機位置へ移動するのを阻止し、開いた場合は前記ロール紙が前記補充位置から前記待機位置へ移動するのを許可する上側レバー部と、
前記上側レバー部と略対向する領域で前記ロール紙に接触するガイド部とを備え、
前記上側レバー部が開いた場合、前記ロール紙は、前記上側レバー部により前記ガイド部に押し当てられながら、前記補充位置から前記待機位置へ移動する
請求項2に記載のロール紙供給装置。
【請求項4】
前記下側支持部は、
ダンパ部と、
前記ダンパ部に基端側が回動可能に接続され、その先端側が上側に向けて回動するように付勢される下側レバー部と、
を備え、
前記上側レバー部が開いた場合に、前記下側レバー部は前記ロール紙を下側から支持しながら略水平になるまで回動することにより、前記ロール紙を前記補充位置から前記待機位置へ移動させる
請求項3に記載のロール紙供給装置。
【請求項5】
前記上側レバー部が前記ロール紙と接触する摩擦力よりも、前記ガイド部が前記ロール紙と接触する摩擦力の方が大きく設定されている
請求項3に記載のロール紙供給装置。
【請求項6】
前記移動部は、
前記補充位置のロール紙を支持する上側支持部と、
前記上側支持部の下側に上下動可能に設けられ、前記ロール紙を載せて前記補充位置から前記待機位置まで移動させる下側移動部と
を備える請求項1に記載のロール紙供給装置。
【請求項7】
前記移動部は、
回転軸と、
前記回転軸から径方向に延びて設けられる複数の仕切り部と、
前記各仕切り部の間に設けられ、ロール紙を一つずつ収容可能な収容室と、
前記複数の収容室のうち最上部の収容室および最下部の収容室を除く他の収容室の外側を覆うように設けられるケーシングと
を備え、
前記複数の収容室の一つが前記給紙位置にあるときに、前記複数の収容室の他の一つが前記補充位置にあり、前記給紙位置にある収容室と前記補充位置にある収容室との間の一つ以上の収容室は前記待機位置に対応する収容室となり、
前記給紙位置に対応する収容室内のロール紙が無くなった場合には、前記回転軸を所定角度回転させて、前記給紙位置に対応する収容室を切り替える
請求項1に記載のロール紙供給装置。
【請求項8】
前記移動部は、前記補充位置と前記給紙位置とを接続するように設けられており、
ダンパ部と、
基端側が前記ダンパ部に回動可能に接続され、先端側がロック部によりロックされた上側レバー部を備え、
前記ロック部によりロックされている場合、前記上側レバー部はロール紙を下側から保持しており、
前記ロック部によるロックが解除された場合、前記上側レバー部は下側へ向けて回動し、前記ロール紙が前記給紙位置へ到達するように、前記上側レバー部の先端が前記給紙位置に達する
請求項1に記載のロール紙供給装置。
【請求項9】
前記ロール紙は、中央部に芯のないコアレス型ロール紙である
請求項1-8のいずれか一項に記載のロール紙供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載のロール紙供給装置を備えるプリンタ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリンタを有する現金自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙供給装置、プリンタおよび該プリンタを備える現金自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人手を介さずに連続的にロール紙を供給するロール紙供給装置を有するプリンタは知られている(特許文献1)。このようなプリンタでは、複数巻きのロール紙を予備として保管しており、印刷に使用していたロール紙を使い終わると、予備のロール紙を印刷部へ移動させる。ロール紙を保管場所から印刷場所へ移動させる際に、ロール紙に衝撃が加わると、ロール紙が変形したり、ロール紙先端が折れ曲がったりすることがある。この場合、ロール紙の自動セッティングに失敗したり、いわゆる搬送ジャムが生じたりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ロール紙を印刷部より上方へ積み上げて保管し、省スペースで複数巻ロール紙を保管している。しかし、上方のロール紙をその自重で落下させて移動させるだけのため、落下によるロール紙の変形などについての対策は見られない。このため、特許文献1では、落下時の衝撃によってロール紙に凹みが生じたり、ロール紙の先端が折れ曲がったり破れたりする可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、高い信頼性でロール紙を供給することができるロール紙供給装置、プリンタおよび該プリンタを備える現金自動取引装置信頼性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に従うロール紙供給装置は、複数巻きのロール紙を一つずつ供給するロール紙供給装置であって、給紙位置にあるロール紙の先端を印刷部へ供給する給紙部と、給紙部へロール紙を供給する補充部であって、給紙位置へ次のロール紙を送り出す待機位置と、待機位置の上方に位置して待機位置へロール紙を補充する補充位置とを備える補充部と、補充位置から待機位置へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で、ロール紙を支持しながら移動させる移動部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補充位置から待機位置へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】現金自動取引装置に使用されるプリンタを示す説明図。
【
図3】ロール紙を補充位置から待機位置へ移動させる様子を示す説明図。
【
図4】上側レバー部と下側レバー部とでロール紙を支える状態を示す説明図。
【
図5】ロール紙が待機位置へ移動した状態を示す説明図。
【
図6】ロール紙が給紙位置へ移動した状態を示す説明図。
【
図7】比較例としてのロール紙の供給方法を示す説明図。
【
図9】第3実施例に係るロール紙供給装置の説明図。
【
図10】第3実施例に係るロール紙供給装置の説明図。
【
図11】第4実施例に係るロール紙供給装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、複数巻きのロール紙を自動的に印刷部へ供給する装置について説明する。本実施形態のロール紙供給装置は、例えば、熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ、ドットインパクトプリンタ、レーザープリンタなどの各種プリンタに内蔵することができる。それらのプリンタは、例えば、ATM(Automatic Teller Machine)、レジスタ、POS(Point Of Sales)レジスタ、病院などに設置される診察受付機、精算機といった各種の装置に内蔵させることもできる。プリンタは、例えば、取引の明細票、レシート、受付票といった伝票等を印刷して発行する。
【0010】
図1,
図2に示すように、本実施形態で述べるロール紙供給装置1は、プリンタ1000にロール紙4を自動的に供給する。ロール紙供給装置1は、複数のロール紙4を上下方向に積んで保持しており、必要に応じてロール紙4を印刷部31へ供給する。
【0011】
ロール紙供給装置1は、補充位置から待機位置へロール紙4を移動させるために、上側に位置する上側支持部(51,52,53)と下側に位置する下側支持部(54,55)とを備える。
【0012】
本実施形態に係る複数巻きロール紙供給装置1は、給紙位置P1にあるロール紙4の先端41を印刷部31へ供給する給紙部12と、給紙部12へロール紙4を供給する補充部11であって、給紙位置P1へ次のロール紙を送り出す待機位置P2と、待機位置P2の上方に位置して待機位置P2へロール紙を補充する補充位置P3とを備える補充部11と、補充位置P3から待機位置P2へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で、ロール紙を支持しながら移動させる移動部50とを備える。
【0013】
移動部50は、補充位置P3のロール紙を支持する上側支持部(51,52,53)と、上側支持部の下側に設けられ、補充位置P3から待機位置P2へロール紙が移動する際にロール紙を支持しながら移動する下側支持部(54,55)と、を備える。
【0014】
上側支持部は、補充位置P3のロール紙を支持する開閉可能な上側レバー部(52,53)であって、閉じている場合はロール紙を斜め下側から支持してロール紙が補充位置P3から待機位置P2へ移動するのを阻止し、開いた場合はロール紙が補充位置P3から待機位置P2へ移動するのを許可する上側レバー部(52,53)と、上側レバー部(52,53)と略対向する領域でロール紙に接触するガイド部51とを備え、上側レバー部(52,53)が開いた場合、ロール紙は、上側レバー部(52,53)によりガイド部51に押し当てられながら、補充位置P3から待機位置P2へ移動する。ロール紙4は、上側レバー部52および下側レバー部54の両方によってガイド部51に押し付けられつつ下側へ移動してもよい。
【0015】
下側支持部(54,55)は、ダンパ部55と、ダンパ部55に基端側が回動可能に接続され、その先端側が上側に向けて回動するように付勢される下側レバー部54とを備え、上側レバー部(52,53)が開いた場合に、下側レバー部54はロール紙を下側から支持しながら略水平になるまで回動することにより、ロール紙を補充位置P3から待機位置P2へ移動させる。
【0016】
上側レバー部(52,53)がロール紙と接触する摩擦力よりも、ガイド部51がロール紙と接触する摩擦力の方が大きく設定されている。
【0017】
本実施形態は、以下のように表現することもできる。例えば、上側支持部は、可動式の支持部52によりロール紙4をその外周と接して摩擦のあるガイド部51に押し付け、ロール紙4を回転して用紙先端41を巻取りながら移動させる機構(51,52,53)、および、支持部52とは異なる可動式の支持部54により、移動するロール紙4を受け止めて移動方向と逆向きの力を加え、ロール紙の移動時の衝撃を緩和する機構(54,55)を備えるロール紙供給装置。。
【0018】
あるいは、本実施形態は、以下のように表現することもできる。ロール紙を支持するガイド部51と、ロール紙を支持する可動式の上流側支持部(52,53)と、ロール紙を支持する可動式の下流側支持部(54,55)と、を有し、上流側支持部は、ロール紙を支持しつつガイド部方向に押し付けるように動き、下流側支持部は、上流側支持部の下流に位置し、移動するロール紙を支持しつつ動くロール紙供給装置。
【0019】
ガイド部51は、ロール紙の外周と接しており、上流側支持部(52,53)が動くと、ロール紙をガイド部のある方向へ押さえつけ、上流側支持部の動きに合わせて、ロール紙が移動するロール紙供給装置。
【0020】
ガイド部51は、ロール紙の外周と接しており、その接地面には十分な摩擦力があり、ロール紙がガイド部と滑らないことで、ロール紙が上流側支持部とともに移動する際に回転するロール紙供給装置。
【0021】
下流側支持部(54,55)は、移動してきたロール紙に接触し、それに合わせて動くロール紙供給装置。
【0022】
下流側支持部(54,55)は、ロール紙を受けて移動する際に、それに抵抗する力が働き、下流側支持部と共に移動するロール紙の移動速度を緩めるロール紙供給装置。
【0023】
ロール紙4は、その外周部分でガイド部51、上流側支持部(52,53のうち52)、下流側支持部(54,55のうち54)と接し、ロール紙の側面部分に、ロール紙を目視可能な開口部111を有するロール紙供給装置。
【0024】
ロール紙は、その外周部分でガイド部51、上流側支持部(52,53のうち52)、下流側支持部(54,55のうち54)と接し、ロール紙の側面部分に設けられた開閉自在な扉112を有するロール紙供給装置。
【0025】
本実施形態によれば、補充位置から待機位置へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で移動させることにより、ロール紙が変形等するのを抑制できる。本実施形態によれば、比較的簡易な構成で、高い信頼性をもってロール紙を自動的に供給できる。
【実施例0026】
図1~
図7を用いて第1実施例を説明する。
図1は、ロール紙供給装置1を模式的に示す説明図である。ロール紙供給装置1を内蔵するプリンタ1000と、プリンタ1000を内蔵する現金自動取引装置1001については後述する。
【0027】
ロール紙供給装置1は、複数の(ここでは三巻の)ロール紙4を収容できる。ロール紙4は、印刷用紙を何周も巻回したものであり、その中心40は空洞となっている。本実施例で述べるロール紙4は、いわゆるコアレス型のロール紙であり、中心40に段ボール製の芯部材などは設けられていない。ロール紙4は、その中心40に芯が存在しないため、芯を有するロール紙に比べると耐久性は低いが、印刷長を大きくするか、あるいは、軽くすることができる。さらに、コアレス型のロール紙4では、使い終わった後に何も残らないため、使い終わった後の芯を取り外す必要がある有芯のロール紙よりも簡易な構成で自動ロール紙供給機構を構成することができる。このような利点があるにもかかわらず、本実施例は有芯のロール紙にも適用可能である。ただし、その場合は、ロール紙を使い終わった後の芯を取り外す機構が必要になる。
【0028】
ロール紙供給装置1の内部には、給紙位置P1と待機位置P2と補充位置P3が設けられており、それぞれの位置にロール紙を保持できる。したがって、本実施例のロール紙供給装置1は、最大で三巻のロール紙4を収容することができる。三巻とは例示にすぎず、ロール紙供給装置1は四巻以上のロール紙を収容できるように構成されてもよい。
【0029】
図1では、一巻目のロール紙4のみが示されており、二巻目のロール紙および三巻目のロール紙は示されていない。すなわち、
図1は、最後のロール紙を使用している状態を示している。
【0030】
ロール紙を補充位置P3から給紙位置P1まで搬送する搬送路20は、例えば、補充位置P3から待機位置P2まで上下方向に積み重ねられるロール紙を側面で支持する垂直部21と、待機位置P2から給紙位置P1までロール紙を下側から支持する搬送路22とを備えている。
【0031】
後述するガイド部51は、垂直部21の一部となる。後述する下側レバー部54は、ロール紙を載せた状態で、搬送路22の一部となる。搬送路22は、待機位置P2から給紙位置P1に向けて緩やかに傾斜して形成されており、ストッパ部56が外れたときにロール紙が待機位置P2から給紙位置P1までゆっくりと移動できるようになっている。なお、搬送路22の一部が途切れていても支障はない。すなわち、下側レバー部54の先端と、駆動ローラ26との間が繋がっていなくても、ロール紙4を給紙位置P1へ移動させることができる。
【0032】
補充位置P3にある三巻目のロール紙は、移動部50により、補充位置P3から待機位置P2へ比較的緩やかに移動される。ここで、比較的緩やかに移動されるとは、補充位置P3から待機位置P2へロール紙を自由落下させる場合よりも遅い速度で移動させる意味である。換言すれば、比較的緩やかに移動されるとは、ロール紙が補充位置P3から待機位置P2へ移動したときに、ロール紙に加わる衝撃でロール紙が変形しない程度の速度で移動されることを意味する。
【0033】
補充位置P3にあるロール紙は、可動式の上側レバー部52と、上側レバー部52の略反対側にあるガイド部51とによって挟持されている。詳しくは、ガイド部51は、ロール紙に水平方向から接触して支持している。上側レバー部52は、ガイド部51がロール紙に接触する領域の反対側のやや下側で、ロール紙に接触して支持している。上側レバー部52は、リンク機構53によって開閉される。リンク機構53により上側レバー部52が矢示F11方向へ回動すると、上側レバー部52が開き、ロール紙の待機位置P2への移動が許可される。リンク機構53により上側レバー部52が矢示F11方向と逆向きに回動すると、上側レバー部52が閉じ、ガイド部51とともにロール紙を補充位置P3に留める。
【0034】
ガイド部51には、例えば板状のゴムが貼り付けられている。これにより、ガイド部51の表面は、ロール紙に対して、上側レバー部52より高い摩擦力を持つ。このゴムは、ロール紙との摩擦が十分にあればその材質にこだわる必要がなく、例えば、ビニルテープやポリウレタンフォームなどの樹脂材などでもよい。ガイド部51は、ロール紙との間に所定値以上の摩擦を確保できればよいため、表面を研磨して粗く仕上げたり、表面を凹凸形状にしたりするだけでもよい。
【0035】
待機位置P2のロール紙(二巻目のロール紙)は、下側レバー部54と、ストッパ部56で保持される。下側レバー部54は搬送路22の上流側として、ロール紙を下側から支持する。ストッパ部56は、水平方向に対して緩やかに傾斜する下側レバー部54上をロール紙が移動しないように、ロール紙の前進を阻止する。
【0036】
下側レバー部54は、ダンパ部55により回動可能である。下側レバー部54の基端はダンパ部55に接続されている。下側レバー部54は、図中反時計回りに回動した状態で、補充位置P3から待機位置P2へ移動途中のロール紙を下側から支える。補充位置P3から待機位置P2へロール紙を送り込む場合、下側レバー部54は、ダンパ部55により、ロール紙を下側から支えながら時計回りにゆっくり回動し、やや傾いた位置(略水平の位置)で停止する。そして、上述の通り、ストッパ部56が反時計回りに回動して、ロール紙の位置を規制する。給紙位置P1のロール紙を使い終わった場合、ストッパ部56が開き、待機位置P2から給紙位置P1へロール紙がその自重で移動する。
【0037】
待機位置P2から給紙位置P1へロール紙が移動すると、下側レバー部54は、図示せぬバネのバネ力などによって反時計回りに回動し、初期位置に戻る。ロール紙の供給動作についてはさらに後述する。
【0038】
搬送路20に沿って設けられた構成要素を説明する。給紙位置P1には、例えば、駆動ローラ26と、セパレータ30が設けられている。セパレータ30は、給紙位置P1にあるロール紙の位置を規制するとともに、ロール紙の先端41をロール紙本体から分離させる機能を持つ。セパレータ30には、図示せぬ光電スイッチのようなセンサが設けられており、ロール紙先端41を検知することができる。駆動ローラ26の回転量に応じて、ロール紙の先端41は印刷ヘッド31に向けて送り出される。ロール紙の先端41は、印刷ヘッド31とプラテンローラ32の間を通過する際に印刷され、
図2で後述する排出部13へ送り込まれる。本実施例では、サーマルプリンタを例にあげて説明するが、これに限らず、インクジェットプリンタなどにも適用可能である。
【0039】
図2は、現金自動取引装置1001に使用されるプリンタ1000を示す。
図1で述べたロール紙供給装置1は、プリンタ1000で使用される。
【0040】
現金自動取引装置1001は、例えば、カード・明細票口1002、通帳口1003、紙幣口1004、硬貨口1005、顧客操作部1006を備える。本実施例のロール紙供給装置1およびプリンタ1000は、ATMのような現金自動取引装置1001だけでなく、レジスター、券売機、診察受付機などの種々の装置にも適用可能である。
【0041】
プリンタ1000の構成を説明する。プリンタ1000は、例えば、補充部11と、給紙部12と、排出部13と、制御部100を備える。
【0042】
補充部11は、給紙部12へロール紙4を供給する装置である。本実施例の補充部11は、ロール紙4を上下に積み重ねて合計二巻保管できるようになっている。補充部11内には、上述した移動部50が設けられている。さらに、補充部11には、開口部111が形成されている。開口部111では、待機位置P2にあるロール紙4の軸方向端部が一部露出している。プリンタ1000のユーザまたは保守員(以下、ユーザ等)は、開口部111を介して、例えば、待機位置P2でのロール紙4の有無と、ロール紙4の様子とを視認することができる。
【0043】
給紙部12は、制御部100からの信号に応じて、ロール紙4を所定量ずつ印刷ヘッド31へ自動的に送り出す装置である。
図2では、セパレータ30等を省略している。給紙部12には、扉121が設けられている。
図2では、扉121は閉じている。ユーザ等は扉121を手動で開けることにより、給紙部12の内部の状況を確認したり、セットされているロール紙4を取り出したりすることができる。扉121は、メンテナンス用に使用されるものである。ユーザ等は、扉121を介して給紙部12の保守作業を容易かつ速やかに行うことができる。これに対し、もしも扉121が設けられていない場合、ユーザ等は、プリンタ1000を現金自動取引装置1001から取り外し、さらにプリンタ1000のケーシングを外すなどしなければ、給紙部12を保守することができない。開口部111もメンテナンス用の確認窓として使用されるもので、本実施例のプリンタ1000は、開口部111を有するため、容易に補充部11の状況を確認することができる。
【0044】
排出部13は、供給されたロール紙を所定の長さに切断して一枚の伝票等とし、その伝票等をエンドユーザへ提供したり、不要な伝票等を回収したりする。排出部13は、カッター33と、排出路23と、回収箱34と、排出口24を備える。カッター33は、ロール紙を所定の長さに切断する。切断により形成された伝票等は、排出路23を通って排出口24から排出される。一方、エンドユーザが取り忘れた伝票等は、不要な伝票等として回収箱34に収容される。
【0045】
制御部100は、プリンタ1000の動作を制御する装置である。制御部100は、現金自動取引装置1001内の制御部(不図示)からの信号に基づいて動作する。
【0046】
図3は、補充位置P3にあるロール紙4を示す。可動式の上側レバー部52は、リンク機構53と連動している。図示しないアクチュエータにより任意のタイミングで、リンク機構53が動くと、上側レバー部52は矢示F11方向へ回動する。これにより上側レバー部52による位置規制が解放され、補充位置P3のロール紙4は、自重で自由落下するよりも遅い速度で、下方への移動を開始する。
【0047】
図4に示すように、ロール紙4はその自重により、上側レバー部52を矢示F11方向へ押しながら下側への移動を開始するため、ガイド部51には押し付ける方向(矢示FX方向)の力が加わる。片方の面がガイド部51に押し付けられたロール紙4は、摩擦の高いガイド部51に接触しながら、滑ることなく下側に移動する。ロール紙4は、ロール紙の先端41を巻き込むように矢示F31方向へ回転しながら、下方向へ移動する。その結果、用紙先端41がロール紙4の本体から離れるのを抑制でき、用紙先端41を引っ掛けたり、つぶしたりする可能性を少なくできる。
【0048】
なお、ロール紙4が上側レバー部52から離れると、リンク機構53により上側レバー部52は元の位置(
図3に示す初期位置)へ戻り、再びロックがかかる。したがって、補充位置P3に新たなロール紙4が置かれても、そのロール紙4が勝手に下に落ちることはない。
【0049】
補充位置P3から待機位置P1へ移動を開始したロール紙4は、その移動途中から下側レバー部54と接触し始めるため、下側レバー部54は矢示F21方向へ動く。この際、下側レバー部54に接続されたダンパ機構55により、移動方向F21とは反対向きの力FYが生じる。この力FYにより、移動中のロール紙4は減速する。補充位置P3から待機位置P2へ移動するロール紙4の速度を力FYで低減させるため、ロール紙4が待機位置P2に到着したときの衝撃を緩和することができる。ロール紙4が下側レバー部54で支えられながら待機位置P2に到着したときの衝撃は、ロール紙4補充位置P3から待機位置P2へ自重で自由落下した場合の衝撃よりも少ないため、ロール紙4が変形等するのを防止できる。
【0050】
図5は、ロール紙4が待機位置P2に到着した状態を示す。上側レバー部52は、初期位置に復帰している。下側レバー部54は、ロール紙4を載せたまま略水平に傾いて、搬送路22の上流側を形成する。下側レバー部54を略水平に位置させるとは、ロール紙4を待機位置P2から給紙位置P1へゆっくりと移動させることができる程度に、わずかに傾斜させることを意味する。待機位置P2に到着したロール紙4が勝手に給紙位置P1へ移動しないように、ストッパ部56は跳ね上がってロール紙4の位置を規制する。
【0051】
図6は、ロール紙4が待機位置P2から給紙位置P1に到着した状態を示す。下側レバー部54は、ロール紙4が離れると、図示せぬバネのバネ力などによって、矢示F22方向へ回動して初期位置に戻り、次回のロール紙の移動に備える。また、給紙位置P1に至ったロール紙4は、駆動ローラ26が回転することにより、用紙先端41がロール紙本体から分離されてセパレータ30へ進入する。セパレータ30に設けられた用紙検出センサ(不図示)は、用紙先端41を検知し、その検知信号を制御部100へ送信する。制御部100は、用紙先端41が検出された時刻を基準として、駆動ローラ26を回転させることにより所定量の用紙を印刷ヘッド31に送り出す。印刷ヘッド31は、ロール紙の先端41から順に印刷する。
【0052】
図7は、比較例としてのロール紙供給装置1Pを示す説明図である。比較例のロール紙供給装置1Pは、本実施例のロール紙供給装置1の効果を説明するために用意されたものであり、先行技術ではない。
図7の開示の全ては、本実施例に係るロール紙供給装置1の特許性を否定するために用いることはできない。以下、説明の便宜上、給紙位置P1にある一巻目のロール紙に符号4(P1)を、待機位置P2にある二巻目のロール紙に符号4(P2)を、補充位置P3にある三巻目のロール紙に符号4(P3)を、それぞれ与えて説明する。この符号の与え方は、
図1~
図6での説明に適用することもできる。
【0053】
図7に示す比較例のロール紙供給装置1Pは、補充位置P3にロール紙4(P3)を留めておくためのレバー部52Aと、待機位置P2にロール紙4(P2)を留めておくためのストッパ部56Aを備えている。しかし、比較例のロール紙供給装置1Pは、実施例で述べた移動部50を備えていない。
【0054】
比較例では、待機位置P2が空になると、レバー部52Aが開放されて、ロール紙4(P3)は垂直方向に落下する。ロール紙4は自由落下するため、搬送路20またはストッパ部56Aに衝突してしまう。自由落下するロール紙4の先端41もロール紙本体4から離れて自由に振る舞うであろう。
【0055】
ここで、ロール紙4の移動に際して生じうる変形について、
図7を用いて以下の二点を記述する。一点目は用紙先端41の変形である。ロール紙4の移動中に、搬送路20、レバー部52Aなどに用紙先端41が引っかかることによって、用紙先端41が折れたり、たわんだり、破れたりといった変形を生じることがある。
【0056】
また、ロール紙4から離れた先端41を押しつぶすようにロール紙4が落下すると、先端41を折ることがある。これらのように用紙先端41が変形することにより、印刷ヘッド31へ自動給紙中に、用紙先端41がセパレータ部30の下に入り込めずに分離に失敗する可能性がある。用紙先端41をロール紙本体から分離できたとしても、プリンタから発行された伝票に折れや破れが表れてしまったり、紙面への印字が途切れたり伸びたりする可能性がある。さらに、ロール紙4(P2)の用紙先端が搬送路20やレバー部52Aに引っかかった場合には、その後にロール紙4(P2)1bを給紙部12へ移動させる際に失敗することがある。
【0057】
二点目は、ロール紙本体の変形である。ロール紙4(P3)を移動させた際に、搬送路20やストッパ部56Aなどに接触したときの衝撃によって、ロール紙本体がつぶれて変形することがある。これにより、ロール紙を円滑に転がすことができずに、ロール紙を給紙部12へ移動させることができない場合がある。自動給紙動作において、駆動ローラ26を回転させてもロール紙4(P1)が回転しないこともありえる。さらに、自動給紙動作が正常に完了したとしても、ロール紙4(P1)が変形していると、使用中に用紙の巻き緩みが生じて折れが生じ、用紙先端41の変形と同様に、発行された印刷物に折れや破れが生じたり、紙面への印字が途切れたり伸びたりする問題が生じる。
【0058】
移動部50を備えていない比較例では、上述の問題を有する。しかし、本実施例のロール紙供給装置1は、補充位置P3から待機位置P2へロール紙4を自由落下させる場合よりも遅い速度で、ロール紙4を支持しながら移動させる移動部50を備えるため、ロール紙を補充位置P3から待機位置P2へ移動させる際に、ロール紙4に変形等が生じる可能性を低減することができ、ロール紙を高い信頼性で自動的に給紙できる。
【0059】
本実施例の移動部50は、補充位置P3のロール紙4を支持する上側支持部(51,52,53)と、上側支持部の下側に設けられ、補充位置P3から待機位置P2へロール紙4が移動する際にロール紙4を支持しながら移動する下側支持部(54,55)とを備えている。したがって、本実施例では、ロール紙4が補充位置P3から待機位置P2へ移動する際に、下側支持部により支持しながら案内することができ、ロール紙4が自然落下するのを防止できる。
【0060】
本実施例では、上側支持部は、補充位置P3のロール紙を支持する開閉可能な上側レバー部(52,53)であって、閉じている場合はロール紙を斜め下側から支持してロール紙が補充位置P3から待機位置P2へ移動するのを阻止し、開いた場合はロール紙が補充位置P3から待機位置P2へ移動するのを許可する上側レバー部(52,53)と、上側レバー部(52,53)と略対向する領域でロール紙に接触するガイド部51とを備えて構成されており、上側レバー部(52,53)が開いた場合、ロール紙は、上側レバー部(52,53)によりガイド部51に押し当てられながら、補充位置P3から待機位P2置へ移動する。本実施例では、ロール紙4をガイド部51に押し付けながら、ロール紙をゆっくりと待機位置P2へ移動させることができる。
【0061】
本実施例では、下側支持部(54,55)は、ダンパ部55と、ダンパ部55に基端側が回動可能に接続され、その先端側が上側に向けて回動するように付勢される下側レバー部54とを備え、上側レバー部(52,53)が開いた場合に、下側レバー部54はロール紙を下側から支持しながら略水平になるまで回動することにより、ロール紙を補充位置P3から待機位置P2へ移動させる。これにより、ロール紙4は、上側レバー部52とガイド部51により挟持されて支持された状態と、上側レバー部52とガイド部51および下側レバー部54によって三点で支持された状態と、下側レバー部54により下側から支持された状態とを経て、補充位置P3から待機位置P2まで自然落下時よりも緩やかに移動する。
【0062】
本実施例によれば、複雑な機構を必要とせずに、ロール紙4を変形させることなく垂直方向へ移動させることができる。このため、本実施例のロール紙供給装置1は、小型化が容易であり、部品数も少なくでき、安価で製造できる。
【0063】
本実施例のロール紙供給装置1を用いることで、衝撃に弱いコアレス型のロール紙を複数巻き収容して自動的に供給することができる。
【0064】
さらに、本実施例では、プリンタ1000の側面に(ロール紙の移動方向に沿った面に)、開口部111および扉121を設けることができるため、ユーザ等による保守作業の効率を向上できる。
【0065】
このように本実施例のロール紙供給装置1は、高い信頼性でロール紙を印刷ヘッド31へ供給することができ、ユーザ等の使い勝手も向上できる。
本実施例のプリンタ1000Aは、補充部11の下側レバー部54の付近に扉112が設けられている。ユーザ等は、扉112を開けることで、下側レバー部54と下側レバー部54に載っているロール紙4の状態を確認することができ、ロール紙4を補充部11から取り出すこともできる。
このように構成される本実施例も実施例1と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、給紙部12だけでなく補充部11にも扉112を設けるため、ユーザ等にとっての使い勝手がさらに向上する。