(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141819
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20230928BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230928BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G06F1/16 312J
F16C11/04 F
G06F1/16 312F
H05K5/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048333
(22)【出願日】2022-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】劉 ガロ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
【テーマコード(参考)】
3J105
4E360
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB02
3J105AB24
3J105AC06
4E360AB02
4E360AB17
4E360AB18
4E360BA02
4E360BB22
4E360BB30
4E360BC05
4E360CA02
4E360EA12
4E360ED02
4E360ED04
4E360ED06
4E360GA02
4E360GB46
4E360GC04
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】第1筐体部材と第2筐体部材との角度を一層正確に180度にすることのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は、第1筐体部材12Aと、第1筐体部材12Aと隣接する第2筐体部材12Bと、第1筐体部材12Aと第2筐体部材12Bとを、互いに面方向で重なるように積層する0度姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ180度姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置14とを有する。180度姿勢では第1筐体部材12Aの隣接端部38Aが第2筐体部材12Bの隣接端部38Bと対面する。隣接端部38Aには180度姿勢で隣接端部38Bに当接するストッパ突起40が設けられている。ストッパ突起40は、隣接端部38Aにおける第1筐体部材12Aの厚みWの中央付近に設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体部材と、
前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
を有し、
前記第2姿勢では前記第1筐体部材の第1側壁が前記第2筐体部材の第2側壁と対面し、
前記第1側壁には前記第2姿勢で前記第2側壁に当接するストッパ突起が設けられており、
前記ストッパ突起は、前記第1側壁における前記第1筐体部材の前記面方向の厚みの中央付近に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ヒンジ装置は、
本体ブロックと、
前記本体ブロックに対して前記第1筐体部材が軸支される第1回転軸部材と、
前記本体ブロックに対して前記第2筐体部材が軸支される第2回転軸部材と、
前記本体ブロックに対して前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との回動を同期させる同期機構と、
を有し、
前記第1回転軸部材および前記第2回転軸部材の前記面方向の幅の範囲内に前記ストッパ突起の少なくとも一部が含まれている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との間に亘って設けられ、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイを有する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1筐体部材と第2筐体部材とをヒンジ装置で連結した電子機器に関する。
器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないPCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、非使用時には小型化できることが望まれている。そこで、特許文献1では有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体部材だけでなくディスプレイまでも折り曲げ可能に構成した電子機器が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の電子機器では、第1筐体部材と第2筐体部材とがヒンジ装置で連結されており、第1筐体部材と第2筐体部材とが互いに面方向で重なるように積層する0度姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ180度姿勢との間で相対的に回動可能となっている。この電子機器は180度姿勢にすると広い面積のタブレット型PCと同様に使用することができる。ヒンジ装置には第1筐体部材と第2筐体部材とを任意の角度に保持することができるようにトルクを付与するトルク機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電子機器は、180度姿勢で第1筐体部材と第2筐体部材とのなす角度が正確に180度となることが望ましい。180度以上または180度以下であると机の上に置いたときに隙間が生じることになりユーザに違和感を与えるためである。そのため、第1筐体部材と第2筐体部材とが180度になるように何らかのストッパを設けることが考えられる。ヒンジ装置自体は多少の動作余裕を考慮して180度以上の動作が可能となるように設定されるため、ストッパは第1筐体部材および第2筐体部材のいずれか一方に設けて、180度姿勢で他方の動作制限面に当接させる構成にすればよい。
【0006】
ところで上記のとおりヒンジ装置にはトルク機構が設けられている。そのため、180度姿勢でストッパが動作制限面に当接してもトルク機構の残留トルクの影響により回動角度が逆側に戻り、若干ではあるが180度未満となってしまう懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、第1筐体部材と第2筐体部材との角度を一層正確に180度にすることのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の実施態様に係る電子機器は、電子機器であって、第1筐体部材と、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、を有し、前記第2姿勢では前記第1筐体部材の第1側壁が前記第2筐体部材の第2側壁と対面し、前記第1側壁には前記第2姿勢で前記第2側壁に当接するストッパ突起が設けられており、前記ストッパ突起は、前記第1側壁における前記第1筐体部材の前記面方向の厚みの中央付近に設けられている。これにより、第1筐体部材と第2筐体部材との角度を一層正確に180度にすることができる。
【0009】
前記ヒンジ装置は、本体ブロックと、前記本体ブロックに対して前記第1筐体部材が軸支される第1回転軸部材と、前記本体ブロックに対して前記第2筐体部材が軸支される第2回転軸部材と、前記本体ブロックに対して前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との回動を同期させる同期機構と、を有し、前記第1回転軸部材および前記第2回転軸部材の前記面方向の幅の範囲内に前記ストッパ突起の少なくとも一部が含まれていてもよい。第1回転軸部材と第2回転軸部材とは本体ブロックによって軸支されていることから相互距離が縮むことがないため、この幅の範囲内にストッパ突起の一部が含まれるようにすると、第1筐体部材と第2筐体部材との角度を一時的に180度以上に開きやすくなる。
【0010】
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との間に亘って設けられ、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイを有してもよい。本実施の態様では、第1筐体部材と第2筐体部材とが一層正確に180度となることから、折曲領域が平面状となりディスプレイの視認性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、ストッパ突起が第1側壁の面方向の厚みの中央付近に設けられていることから、第1筐体部材と第2筐体部材とを一時的に180度以上開くことができ、その後ヒンジ装置の残留応力の作用によって若干逆に戻り、一層正確に180度姿勢とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す電子機器を0度姿勢とした状態を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、0度姿勢における電子機器の端部の拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、180度姿勢における電子機器の端部の拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、電子機器を示す図であり、(a)は180度姿勢の状態を示す模式側面図であり、(b)は180度よりも若干開いた状態を示す模式側面図である。
【
図8】
図8は、比較例にかかる電子機器を示す図であり、(a)は180度姿勢の状態を示す模式側面図であり、(b)は180度よりも若干閉じた状態を示す模式側面図である。
【
図9】
図9は、電子機器の製造において、フレーム部材およびフレーム部材に対してディスプレイを取り付ける工程の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
【0015】
図1、
図2に示すように、電子機器10は、第1筐体部材12A及び第2筐体部材12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0016】
各筐体部材12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体部材12A,12Bは、CPUを実装したマザーボード、バッテリ装置、アンテナモジュール、及び通信モジュール等の各種電子部品を適宜搭載している。
【0017】
第1筐体部材12Aは、フレーム部材17Aと、カバー部材18Aとを備える。フレーム部材17Aは、第2筐体部材12Bと隣接する隣接端部38A以外の3辺に立壁を形成した矩形の枠状部材である。カバー部材18Aは、フレーム部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(
図3も参照)。同様に、第2筐体部材12Bは、第1筐体部材12Aと隣接する隣接端部38B以外の3辺に立壁を形成したフレーム部材17Bと、フレーム部材17Bの裏面開口を閉じるカバー部材18Bとを備える。フレーム部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0018】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。
【0019】
ヒンジ装置14は、筐体部材12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結している。ただし厳密には、ヒンジ装置14は多少の動作余裕を考慮して180度以上(例えば185度程度)の動作が可能となるように設定されている。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される隣接端部38A,38B間の隙間を隠す背表紙としても機能する。ディスプレイ16は、筐体部材12A,12B間に亘って延在している。
【0020】
以下、電子機器10について、筐体部材12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する隣接端部38A,38Bに沿う方向をY方向、筐体部材12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。また、筐体部材12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向(つまりZ方向)で重なるように積層された状態を0度姿勢(第1姿勢。
図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(第2姿勢。
図2参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体部材12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0021】
図3は、電子機器10の模式的な断面図である。
図4は、
図3に示す電子機器10を0度姿勢とした状態を示す模式的な断面図である。
【0022】
図1及び
図4に示す0度姿勢において、筐体部材12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、有機ELで形成されたペーパー状のフレキシブルディスプレイである。0度姿勢時、ディスプレイ16は、
図2に示す第1筐体部材12A側の領域R1と第2筐体部材12B側の領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図2に示す180度姿勢において、筐体部材12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0023】
ディスプレイ16は、領域R1が第1筐体部材12Aに対して相対的に固定され、領域R2が第2筐体部材12Bに対して相対的に固定される。具体的には、領域R1の裏面16aが第1プレート20A(
図3参照)を介して第1筐体部材12Aと固定され、領域R2の裏面16aが第2プレート20B(
図3参照)を介して第2筐体部材12Bと固定される。第1プレート20Aは、ヒンジ装置14の第1サポートプレート22Aと隣接し、第2プレート20Bは、ヒンジ装置14の第2サポートプレート22Bと隣接している(
図3参照)。
【0024】
ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体部材12A,12Bに対して相対移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R3の裏面16aは、ヒンジ本体28及びサポートプレート22A,22Bで支持される。0度姿勢時、折曲領域R3は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がサポートプレート22A,22Bで支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する。
【0025】
図3に示すように、ヒンジ装置14は、ヒンジ本体(本体ブロック)28と、第1サポートプレート22Aと、第2サポートプレート22Bと、第1リンクアーム30Aと,第2リンクアーム30Bとを有する。を有する。
【0026】
ヒンジ本体28は、筐体部材12A,12Bの隣接端部38A,38Bを跨ぐ位置に設けられ、隣接端部38A,38Bに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジ本体28は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジ本体28には、180度姿勢でX方向に並ぶ第1ヒンジ軸(第1回転軸部材)14A,第2ヒンジ軸(第2回転軸部材)14Bが支持されている。
【0027】
第1ヒンジ軸14Aには、第1リンクアーム30Aの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。第2ヒンジ軸14Bには、第2リンクアーム30Bの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。
【0028】
第1リンクアーム30Aの第2端部は、第1ブラケット31Aに対して回転軸34を用いて相対回転可能に連結されている。第1ブラケット31Aは、ねじ等を用いて第1筐体部材12Aの内面12Abに固定されている。第2リンクアーム30Bの第2端部は、第2ブラケット31Bに対して回転軸35を用いて相対回転可能に連結されている。第2ブラケット31Bは、ねじ等を用いて第2筐体部材12Bの内面12Bbに固定されている。
【0029】
リンクアーム30A,30B及びブラケット31A,31Bは、ヒンジ本体28の長手方向であるY方向に沿って複数並ぶように設けられている。これによりヒンジ本体28は、筐体部材12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ本体28内には、筐体部材12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構(同期機構)や、筐体部材12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。
図1に示すように、ヒンジ本体28の裏面には、化粧カバーとなる背表紙部品36が取り付けられている。
【0030】
サポートプレート22A,22Bは、アルミニウム等の金属材料で形成され、Y方向に延在するプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート22A,22Bは、リンクアーム30A,30Bが軸支されたブラケットに対して軸支されて揺動可能である。サポートプレート22A,22Bは、180度姿勢時にヒンジ本体28の左右に並び、その表面がヒンジ本体28の表面と同一平面上に配置される。これによりヒンジ装置14は、180度姿勢時にディスプレイ16の折曲領域R3(
図2参照)を支持することができる。
【0031】
図5は、0度姿勢における電子機器10の端部の拡大斜視図である。
図6は、180度姿勢における電子機器10の端部の拡大斜視図である。
【0032】
第1筐体部材12Aおよび第2筐体部材12BはZ方向の厚みがWである。第1筐体部材12Aの隣接端部38Aは背表紙部品36の三方を囲むように形成されており、左右両端でZ方向に沿う一対の縦端部(第1側壁)38Aa(
図1も参照)と、Y方向に沿う横端部38Abとから構成されている。同様に、第2筐体部材12Bの隣接端部38Bは背表紙部品36の三方を囲むように形成されており、左右両端でZ方向に沿う一対の縦端部(第2側壁)38Baと、Y方向に沿う横端部38Bbとから構成されている。縦端部38Aa,38BaはZ方向の全長に亘って形成されている。横端部38Ab,38BbはY方向の全長に亘って形成されている。
【0033】
本実施の形態では隣接端部38A,38Bは狭い面積であるが、第1筐体部材12Aおよび第2筐体部材12Bの側壁の一部を構成していると見做すことができる。縦端部38Aa,38Ba、および横端部38Ab,38Bbは細くなっているが、設計条件によっては背表紙部品36を小さくしてその分だけ隣接端部38A,38Bの占める面積を広くしてもよい。180度姿勢(
図6参照)において隣接端部38Aと隣接端部38Bとは狭い隙間Gを介して対面する。
【0034】
縦端部38Aaには180度姿勢で縦端部38Baに当接するストッパ突起40が設けられている。ストッパ突起40は一対の縦端部38Aaにそれぞれ設けられている(
図1参照)。ストッパ突起40は小さく、突出高さは隙間Gと等しい。
【0035】
図7は、電子機器10を示す図であり、(a)は180度姿勢の状態を示す模式側面図であり、(b)は180度よりも若干開いた状態を示す模式側面図である。ストッパ突起40は、縦端部38Aaにおける第1筐体部材12Aの厚みWの中央、つまり厚みW/2の位置に設けられている。一層具体的には、ストッパ突起40は第1ヒンジ軸14Aおよび第2ヒンジ軸14BのZ方向の幅Aの範囲内に含まれている。ストッパ突起40は180度姿勢で対面する縦端部38Baに当接するため、該縦端部38Baが動作制限面となる。
【0036】
電子機器10では、ストッパ突起40は厚み方向の中央に設けられていることから、該ストッパ突起40よりカバー部材18A,18Bに近い背面側(
図7では矢印Z1の側)に背面側隙間Gaが形成される。
【0037】
図7(b)に示すように、電子機器10では、ヒンジ装置14に180度以上の動作余裕があり、さらにストッパ突起40より背面側には背面側隙間Gaがあることから該背面側隙間Gaが変形代となり、ストッパ突起40を支点にして第1筐体部材12Aと第2筐体部材12Bとの角度が一時的に180度よりも若干開く状態(例えば、182度か183度程度)とすることができる。
【0038】
そうすると、ヒンジ装置14のトルク機構には若干の残留トルクが発生することから、人手によって
図7(b)に示す状態まで開いた後に開放すると、若干逆に戻り
図7(a)に示すような180度姿勢とすることができる。特に、電子機器10を机などの平面上に置くことにより、平面に倣い相当正確に180度姿勢とすることができる。
【0039】
第1筐体部材12Aと第2筐体部材12Bとはヒンジ本体28を介して第1ヒンジ軸14Aおよび第2ヒンジ軸14Bの軸支によって相対的に回動することから、ストッパ突起40はこれらの第1ヒンジ軸14Aおよび第2ヒンジ軸14BのZ方向の幅Aの範囲内に含む配置とすることにより、適切かつ一時的に180度以上まで開くことができる。ただし、ストッパ突起40は、その全部が幅Aの範囲内に含まれている必要はなく、隣接端部38Aの厚みWの中央付近で、少なくとも一部が幅Aの範囲内にあればほぼ同様の効果が得られる。
【0040】
このように、電子機器10では、ストッパ突起40が、隣接端部38Aの厚みWの中央付近に設けられていることから、第1筐体部材12Aと第2筐体部材12Bとを一時的に180度以上開くことができ、その後ヒンジ装置14の残留応力の作用によって若干逆に戻り、一層正確に180度姿勢とすることができる。したがって、電子機器10を机に載置したときX方向の両端が浮き上がるようなことがなくユーザに違和感を与えることがない。また、このようにして180度姿勢に戻った電子機器10では、依然としてストッパ突起40が、隣接端部38Bに当接していてストッパとして機能しており安定している。さらに、電子機器10では正確に180度姿勢となることからディスプレイ16が平面状となり、折曲領域R3(
図2参照)が曲がった状態にはならず、視認性が向上する。
【0041】
図8は、比較例にかかる電子機器100を示す図であり、(a)は180度姿勢の状態を示す模式側面図であり、(b)は180度よりも若干閉じた状態を示す模式側面図である。電子機器100では、ストッパ突起40が第1筐体部材12Aにおける隣接端部38AのZ1側の端に設けられている。
【0042】
比較例にかかる電子機器100では、0度姿勢またはその他の任意の角度から第1筐体部材12Aと第2筐体部材12Bとの角度を開くと、やがてストッパ突起40が隣接端部38Bに当接して、一時的に(a)に示す180度姿勢まで開くことができる。しかしながら、電子機器100では上記の電子機器10における背面側隙間Gaが形成されていないことから動作の余裕代がなく、180度以上には開くことができない。
【0043】
さらに詳細には、第1ヒンジ軸14Aと第2ヒンジ軸14Bとはヒンジ本体28(
図3参照)によって軸支されていることから相互距離が縮むことがないため、隣接端部38Aと隣接端部38Bとの間で距離が縮み得るのは幅Aの範囲よりもZ1側の部分、つまり電子機器10における背面側隙間Gaの部分である。比較例にかかる電子機器100ではこの部分にストッパ突起40が設けられているために180度以上には開くことができなくなっている。したがって、ヒンジ装置14の残留応力の作用によって若干逆に戻ってしまい、X方向の両端が浮き上がる状態となりユーザに違和感を与え得る。上記の通り本実施の形態にかかる電子機器10ではこのような不都合がない。
【0044】
なお図示を省略するが、仮にストッパ突起40を第1筐体部材12Aにおける隣接端部38AのZ2側の端に設けるとストッパとしての十分な機能が得られず不安定となり得る。そのため、上記のとおり、ストッパ突起40は厚みWの中央付近に設けることが望ましい。
【0045】
図9は、電子機器10の製造において、フレーム部材17Aおよびフレーム部材17Bに対してディスプレイ16を取り付ける工程の様子を示す模式図である。この工程ではフレーム部材17Aおよびフレーム部材17Bを複数の治具42aおよび複数の治具42bによって押さえつける。
【0046】
治具42bはフレーム部材17Aおよびフレーム部材17BをY方向に圧縮するように押さえつける。治具42bのうち、
図9における下側のものはフレーム部材17Aおよびフレーム部材17Bに共通となるように長くなっている。治具42bのうち、
図9における上側のものはフレーム部材17Aとフレーム部材17Bとで別体であり、それぞれ2つずつが設けられており、バランスよく押圧することができる。
【0047】
治具42aはフレーム部材17Aおよびフレーム部材17BをX方向に圧縮するように押さえつける。治具42aは4つが一対ずつ対向するように設けられて設けられ、バランスよく押圧することができる。治具42aはフレーム部材17A,17Bの中抜き部17Aa、18Baに設けられており、隣接端部38A,38Bに対して効果的に押圧することができる。
【0048】
この工程では、治具42a,42bの押圧作用によりフレーム部材17Aおよびフレーム部材17BはX方向およびY方向にそれぞれ微小量だけ圧縮される。また、X方向に関しては、フレーム部材17Aとフレーム部材17Bとは一対のストッパ突起40を介して接している。ストッパ突起40は、上記のとおり厚みWの中間付近に設けられていることから(
図7参照)、治具42aによってバランスよく押圧することができる。治具42a,42bによる押圧は、ストッパ突起40と被当接部との間に空隙がないようにするための必要最低限の荷重になっている。180度に完全に開いてないないと、中央にディスプレイ16が余って皺が発生するが、180度完全に開くようになることで、ディスプレイ16の皺を防ぐことができる。
【0049】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 電子機器
12A 第1筐体部材
12B 第2筐体部材
14 ヒンジ装置
14A 第1ヒンジ軸
14B 第2ヒンジ軸
28 ヒンジ本体(本体ブロック)
36 背表紙部品
38A、38B 隣接端部
38Aa 縦端部(第1側壁)
38Ba 縦端部(第2側壁)
40 ストッパ突起
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体部材と、
前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
を有し、
前記第2姿勢では前記第1筐体部材の第1側壁が前記第2筐体部材の第2側壁と対面し、
前記第1側壁には前記第2姿勢で前記第2側壁に当接するストッパ突起が設けられており、
前記ストッパ突起は、前記第1側壁における前記第1筐体部材の前記面方向の厚みの中央付近に設けられており、
前記ヒンジ装置は、
本体ブロックと、
前記本体ブロックに対して前記第1筐体部材が軸支される第1回転軸部材と、
前記本体ブロックに対して前記第2筐体部材が軸支される第2回転軸部材と、
前記本体ブロックに対して前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との回動を同期させる同期機構と、
を有し、
前記第1回転軸部材および前記第2回転軸部材の前記面方向の幅の範囲内に前記ストッパ突起の少なくとも一部が含まれている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との間に亘って設けられ、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイを有する
ことを特徴とする電子機器。