(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141835
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】乗物用スマートフォン保持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20230928BHJP
H04M 1/11 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B60R11/02 T
H04M1/11 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048362
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
【テーマコード(参考)】
3D020
5K023
【Fターム(参考)】
3D020BA07
3D020BC02
3D020BC10
3D020BD02
3D020BD05
5K023AA07
5K023BB23
5K023CC01
5K023KK09
5K023LL03
(57)【要約】
【課題】スマートフォンの保持安定性に優れた乗物用スマートフォン保持構造を提供する。
【解決手段】スマートフォンSの一端側を収容する収容部10と、収容部10の開口11を閉塞可能な蓋部材81と、収容部10の一壁部12に配置されたワイヤレス充電器14と、を備え、一壁部12と隣接する隣接壁部21,31から収容部10内に向けて進退可能に突出し、収容部10内に向けて付勢されてスマートフォンSの幅方向における両側部を押圧可能な一対の横押さえ部50と、一壁部12と対向する対向壁部41から収容部10内に向けて進退可能に突出し、収容部10内に向けて付勢されてスマートフォンSの表示面Dを押圧可能な表示面押さえ部60と、を備えるとともに、蓋部材81は、収容部10の開口11を閉塞する閉塞位置と、収容部10の内側に回動してスマートフォンSの表示面Dを押圧する押圧位置との間で回動可能とされている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の室内意匠面から窪んでスマートフォンの長手方向における一端側を収容可能な矩形の箱型の収容部と、
前記収容部の開口を閉塞可能な蓋部材と、
前記収容部の側壁を構成する4つの壁部のうちの一壁部に配置されたワイヤレス充電器と、を備える乗物用スマートフォン保持構造であって、
前記一壁部と隣接して互いに対向する一対の隣接壁部から前記収容部の内側に向けて進退可能に突出し、前記収容部の内側に向けて付勢されて当該収容部内に収容されたスマートフォンの幅方向における両側部を押圧可能な一対の横押さえ部と、
前記一壁部と対向する対向壁部から前記収容部の内側に向けて進退可能に突出し、前記収容部の内側に向けて付勢されて当該収容部内に収容されたスマートフォンの表示面を押圧可能な表示面押さえ部と、を備えるとともに、
前記蓋部材は、前記収容部の開口を閉塞する閉塞位置と、前記閉塞位置から前記対向壁部の上端に設けられた回動軸を中心に前記収容部の内側に回動して前記収容部内に収容された前記スマートフォンの表示面を押圧する押圧位置との間で回動可能とされている、乗物用スマートフォン保持構造。
【請求項2】
前記表示面押さえ部が前記表示面を押圧する力は、前記蓋部材が前記押圧位置において前記表示面を押圧する力より大きくなるように設定されている請求項1に記載の乗物用スマートフォン保持構造。
【請求項3】
前記収容部のうち前記開口と対向する底部に、当該底部から窪んで前記スマートフォンに接続された配線を逃がすための逃がし凹部が設けられている請求項1または請求項2に記載の乗物用スマートフォン保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物用スマートフォン保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の運転席と助手席との間に配置されているセンターコンソールから窪むように設けられた有底四角筒状の受承部材内に、スマートフォン等の携帯機器を支持可能な構成が開示されている。受承部材は弾性変形可能な蓋部材により塞がれており、蓋部材には、携帯機器の挿入により受承部材の底壁へ向けて弾性変形可能な舌片部が切り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のスマートフォンの保持構造は、スマートフォンの安定性が十分とは言えず、車両の走行時や停止時にスマートフォンがガタついて音がうるさい場合がある。具体的には、受承部材は、様々な種類のスマートフォンに対応可能とするべく一般的なスマートフォンより大きいサイズに形成されているため、収容されたスマートフォンは、受承部材の開口付近において舌片部によって厚み方向に押圧されるものの、車両の振動により幅方向に移動したり、受承部材に対する傾きが変化したりする場合がある。
【0005】
また近年、スマートフォンの本体部分を接触させるだけで充電可能なワイヤレス充電が増加しているが、受承部材にワイヤレス充電器を設けても、上述したようにスマートフォンの保持安定性が不十分であるため、充電状態が不安定になるという問題がある。
【0006】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであり、スマートフォンの保持安定性に優れた乗物用スマートフォン保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、乗物の室内意匠面から窪んでスマートフォンの長手方向における一端側を収容可能な矩形の箱型の収容部と、前記収容部の開口を閉塞可能な蓋部材と、前記収容部の側壁を構成する4つの壁部のうちの一壁部に配置されたワイヤレス充電器と、を備える乗物用スマートフォンの保持構造であって、前記一壁部と隣接して互いに対向する一対の隣接壁部から前記収容部の内側に向けて進退可能に突出し、前記収容部の内側に向けて付勢されて当該収容部内に収容されたスマートフォンの幅方向における両側部を押圧可能な一対の横押さえ部と、前記一壁部と対向する対向壁部から前記収容部の内側に向けて進退可能に突出し、前記収容部の内側に向けて付勢されて当該収容部内に収容されたスマートフォンの表示面を押圧可能な表示面押さえ部と、を備えるとともに、前記蓋部材は、前記収容部の開口を閉塞する閉塞位置と、前記閉塞位置から前記対向壁部の上端に設けられた回動軸を中心に前記収容部の内側に回動して前記収容部内に収容された前記スマートフォンの表示面を押圧する押圧位置との間で回動可能とされている。
【0008】
上記構成によれば、収容部内に収容されたスマートフォンは、その幅方向と厚み方向の両方から押圧されるから、乗物の走行時や停止時にスマートフォンが収容部内でがたつくことがなく、安定的に保持される。また上記構成によれば、横押さえ部および表示面押さえ部は収容部の内側に向けて付勢されているから、サイズが異なるスマートフォンに対応して突出寸法が変更可能である。すなわち、サイズが異なるスマートフォンを安定的に保持可能であり、汎用性に優れる。
【0009】
また、蓋部は、収容部にスマートフォンが収容されていない場合には閉塞位置とされ、乗物の室内意匠面を美しく見せることができるとともに、収容部内に異物が入ることを抑制することができる。一方、スマートフォンを収容部内に収容した状態では押圧位置とされ、スマートフォンを開口に近い位置において収容部の一壁部に向けて押圧するから、収容部から外側にはみ出した状態のスマートフォンの端部側が乗物の走行時や停止時にがたつくことをより確実に抑制することができる。
【0010】
また、上記構成によれば、スマートフォンを収容部に収容する際には、スマートフォンの一端側で蓋部を押圧しつつスマートフォンを奥方に向けて差し込むだけでよく、取り出す際には収容部から外側にはみ出した状態の他端側を把持して引き抜くだけでよいから、着脱操作が簡単である。
【0011】
さらに、収容部内に収容されたスマートフォンは収容部の一壁部に向けて開口に近い位置と奥方の2か所で蓋部および面押さえ部により押圧されるとともに、一対の横押さえ部により幅方向の中央に位置決めされるようになっているから、ワイヤレス充電器対応のスマートフォンの充電を確実に行うことができる。
【0012】
前記表示面押さえ部が前記表示面を押圧する力は、前記蓋部が前記押圧位置において前記表示面を押圧する力より大きくなるように設定されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、スマートフォンを収容部に挿入する際、姿勢が不安定な挿入初期は比較的に小さい力で挿入可能であり、奥方に差し込まれて姿勢が正規の姿勢に案内された状態で、比較的に大きい力で押し込むようになっている。つまり、挿入操作時に大きい力が不要で挿入操作が容易である上に、最後にスマートフォンが奥方まで差し込まれた節度感を得ることができる。
【0014】
前記収容部のうち前記開口と対向する底部に、当該底部から窪んで前記スマートフォンに接続された配線を逃がすための逃がし凹部が設けられていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、スマートフォンの挿入方向の先端側に配線が接続されている場合でも、配線を逃がし凹部内に逃がしつつ、スマートフォンを収容部内に安定的に保持することができる。なお、スマートフォンを収容部に収容する際に、配線が外側になるように反転させて収容することも考えられるが、そのようにした場合には、表示面の表示方向が逆になったり、スマートフォンのサイドスイッチの操作が不可になったりするため、配線が奥方(底部側)に配置される向きで収容することが望まれる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示される技術によれば、スマートフォンの保持安定性に優れた乗物用スマートフォン保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の車両用スマートフォンの保持構造を備えるセンターコンソールを示す斜視図
【
図3】スマートフォンの保持構造を示す一部分解斜視図
【
図4】スマートフォンの保持構造であって蓋部が閉じた状態を示す平面図
【
図5】スマートフォンの保持構造であってスマートフォンを収容した状態を示す平面図
【
図7】スマートフォンの挿入過程を示す
図6のI―I断面図
【
図8】スマートフォンを収容した状態を示す
図6のI―I断面図
【
図9】蓋部が閉じた状態を示す
図6のII―II断面図
【
図10】スマートフォンの挿入過程を示す
図6のII―II断面図
【
図11】スマートフォンを収容した状態を示す
図6のII―II断面図
【
図12】配線が接続されたスマートフォンを収容した状態を示す
図6のI―I断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態を
図1から
図12によって説明する。本実施形態の乗物用スマートフォン保持構造1は、
図1に示すように、車両の運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソール2に設けられている。なお、以下の説明においては、車両進行方向における前方を前(F)、後方を後ろ(Rr)、右方を右(R)、左方を左(L)とし、車両の上方を上(U)、下方を下(D)として説明するが、方向については本実施形態に限定されるものではない。また、複数の同一部材については、一の部材に符号を付して他の部材の符号は省略することがある。
【0019】
本実施形態のスマートフォンの保持構造1はシフトレバー3の前方に配置されており、センターコンソール2のうち前方に向けて斜め上方に傾斜する部分に設けられている。センターコンソール2には矩形の貫通孔4が設けられており、この貫通孔4の内側に、センターコンソール2の上面(室内意匠面)から下方に向けて凹状に窪む形で収容部10が設けられている(
図6参照)。収容部10は、スマートフォンSの長手方向における一端側よりも一回り大きく、前後方向に扁平な直方体の箱型をなしている。
【0020】
詳細には、収容部10は、その開口11からの深さ寸法(上下方向の寸法)がスマートフォンSの長手方向の長さよりも短い寸法とされ、前後方向の寸法がスマートフォンSの厚さ寸法より大きい寸法とされ、幅方向(左右方向)の寸法がスマートフォンSの幅寸法よりも大きい寸法とされている。つまり、収容部10内にスマートフォンSが収容された状態において、収容部10の開口11からスマートフォンSの上端側が突出するとともに、前後方向および幅方向の双方において収容部10の内壁とスマートフォンSとの間に充分な隙間が形成可能な寸法に設定されている。
【0021】
上述したように、収容部10はセンターコンソール2の傾斜した部分に設けられている。このため、収容部10のうち前方に配される前壁(一壁部の一例)12の高さ寸法は、後方に配される後壁(対向壁部の一例)41の高さ寸法よりやや高い寸法に設定されている。また、前壁12と後壁41とを連結する一対の側壁(隣接壁部の一例)21,31の上端は、後方から前方に向けてやや上方に傾斜している(
図9参照)。前壁12、側壁21,31、および後壁41は、開口11と対向して水平方向に配される底壁(底部の一例)15に対して垂直に立ち上がっており、互いに対向する壁部と平行に配置されている。
【0022】
なお、前壁12のうち上方側約1/3の領域は、外側(前方)に向けて断面弧状に膨出した湾曲部13とされている。また、後壁41のうち上方側約1/3の領域は、外側(後方)かつ上方に向けて拡径する傾斜部42とされている(
図9参照)。
【0023】
収容部10の底壁15には、
図6に示すように、幅方向(左右方向)の中央部において前後方向の全体に亘って凹状に窪む逃がし凹部16が設けられている。この逃がし凹部16は、スマートフォンSの下端に接続された配線Wを逃がし、配線Wが収容部10の底壁15と干渉するのを防ぐためのものである。なお、配線Wは、逃がし凹部16からスマートフォンSと収容部10の内壁との間に形成された隙間を通して収容部10の開口11から外部に引き出すことが可能である(
図12参照)。
【0024】
上述した収容部10は、複数の部材を組み付けることで構成されている。具体的には、前壁12および底壁15を構成する部材と、右側の側壁(右側壁21とする)を構成する部材と、左側の側壁(左側壁31とする)を構成する部材と、後壁41を構成する部材とを備えて構成されている。
【0025】
図9に示すように、前壁12の外面(前面)には、ワイヤレス充電器14が密着した状態で重ね合わされている。また、一対の側壁21,31の下方側から約1/3の高さ部分には、収容部10の内側に向けて進退可能に突出する横押さえ部50がそれぞれ設けられている。横押さえ部50は、
図6に示すように、側壁21,31に設けられた矩形の横側貫通孔22,32から収容部10の内側に向けて縦断面略U字形状に湾曲して突出する中空体とされている。
【0026】
横押さえ部50の突出方向における基端側(側壁側)の上端部には、前後方向に延びる回動軸51が設けられている。回動軸51は各側壁21,31に支持されており、横押さえ部50は回動軸51を中心として車両幅方向(左右方向)において車室内外方向に回動可能とされている。つまり、収容部10の内側に対して進退可能とされている。換言すると、側壁21,31からの突出寸法が変更可能とされている。また、これらの横押さえ部50は、回動軸51に設けられたねじりコイルバネ52により収容部10の内側に向けて突出するように付勢されている(
図3参照)。回動軸51およびねじりコイルバネ52は、側壁21,31の外面に設けられた横ブラケット28,38により、側壁21,31に支持されている。
【0027】
また、後壁41の幅方向における中央であって下方側から約1/3の高さ部分には、収容部10の内側に向けて進退可能に突出する表示面押さえ部60が設けられている。表示面押さえ部60は、
図9に示すように、後壁41に設けられた矩形の後側貫通孔43から収容部10の内側に向けて縦断面略U字形状に湾曲して突出する中空体とされている。
【0028】
表示面押さえ部60の突出方向における基端側(後壁41側)の上端部には、上述した横押さえ部50と同様に、車両幅方向(左右方向)に延びる回動軸61が設けられている。回動軸61は後壁41に支持されており、表示面押さえ部60は回動軸61を中心として車両前後方向に回動可能とされている。つまり、収容部10の内側に対して進退可能とされている。換言すると、後壁41からの突出寸法が変更可能とされている。表示面押さえ部60は、回動軸61に設けられたねじりコイルバネ62により収容部10の内側に向けて突出するように付勢されている。回動軸61およびねじりコイルバネ62は、後壁41の外面に設けられた後ブラケット45により、後壁41に支持されている。
【0029】
上述した一対の横押さえ部50および表示面押さえ部60は、底壁15から同高さであって、ワイヤレス充電器14に対応する位置に設けられている。
【0030】
次に、蓋部材70について説明する。本実施形態の蓋部材70は、長方形の枠状の枠体71と、枠体71の内側の開口(以下、枠体開口72とする)を塞ぐ蓋体81とを備えて構成されている。
【0031】
枠体71は、
図6に示すように、その外径がセンターコンソール2に設けられた貫通孔4より大きい寸法とされており、その内径(枠体開口72の寸法)が貫通孔4より小さい寸法とされている。枠体71は、貫通孔4の孔縁部を被覆するように、あるいはその縁部が貫通孔4の孔縁部と重なるように、センターコンソール2の上面(意匠面)に重ね合わされている。枠体開口72のうち後方側の縁部(後方縁部72B)の下面側は、幅方向の全体に亘って後方に向かって斜めに切り欠かれた傾斜部73とされている(
図9参照)。
【0032】
図6に示すように、枠体71には、長手方向の両端部寄りに下方に向けて延びる一対の板状の位置決め片74が設けられている。一対の位置決め片74は、それらの外面間の寸法がセンターコンソール2の貫通孔4の幅方向の寸法と同等とされており、前後方向の寸法が貫通孔4の前後方向の寸法と同等とされている。これにより、一対の位置決め片74を貫通孔4に挿入することで、蓋部材70がセンターコンソール2に対して位置決めされるようになっている。
【0033】
一対の位置決め片74の間には、上述した収容部10の上方部分が配置されている。収容部10は、上端が枠体71の下面に当接した状態で一対の位置決め片74の間に配置され、位置決め片74の先端面(下面)に対してL字形状の上述した横ブラケット28,38を介して締結されている。蓋部材70と収容部10とが組み付けられた状態において、収容部10の開口11と枠体開口72とは重畳するように配置されている(
図4参照)。
【0034】
枠体開口72は、上述した収容部10の開口11よりもやや小さい寸法とされている。具体的には、枠体開口72は、幅方向の寸法が収容部10の開口11と同等され(
図6参照)、前後方向の寸法が収容部10の開口11の寸法より小さい寸法とされている(
図9参照)。
【0035】
蓋部材70(枠体71)と収容部10とが組み付けられた状態において、枠体開口72の開口縁部のうち前方に配される前方縁部72Aは、収容部10の前壁12の内面と面一に連なっている(
図9参照)。また、枠体開口72の開口縁部のうち側方(左右方向)に配される側方縁部72Cは、収容部10の側壁21,31の内面と面一に連なっている(
図6参照)。さらに、枠体開口72の開口縁部のうち後方に配される後方縁部72Bは、収容部10の後壁41から離れて後壁41より前方側(収容部10の内側)に配されている(
図9参照)。
【0036】
枠体開口72を塞ぐ蓋体81は、全体として枠体開口72よりやや大きい寸法の矩形の板状をなしている。詳細には、蓋体81は、平面視において幅方向の寸法が枠体開口72と同等寸法とされ、前後方向の寸法が枠体開口72より大きい寸法とされている。また蓋体81は、
図9に示すように、前方部分においてはその上面が枠体開口72と同等寸法とされて枠体開口72を閉塞可能な塞ぎ部82とされ、後方部分はその上面が塞ぎ部82の上面から後方に向けて斜め下方に傾斜して、当該蓋体81が閉塞位置とされた状態において上述した枠体71の傾斜部73と重畳可能な基端側部83とされている。なお、塞ぎ部82の前方側の端縁部の角部は面取りされ、湾曲形状とされている。
【0037】
基端側部83の後端の幅方向における両端部には、
図3に示すように、幅方向の外側(互いに反対側)に向けて同軸上に突出する支持軸(回動軸の一例)84が設けられており、これらの支持軸84が収容部10の側壁21,31に設けられた支持部24,34に支持されることにより、蓋体81が支持軸84を中心に収容部10に対して回動可能に支持されている。具体的には、蓋体81は、塞ぎ部82の上面が枠体71の板面に沿って枠体開口72を塞ぐ閉塞位置と、塞ぎ部82の前端側が収容部10の内側に押し込まれた状態の押圧位置との間で回動可能に支持されている。
【0038】
一対の支持軸84のうち右側に配置される右側支持軸84Rは、収容部10の一対の側壁21,31のうち右側に配される右側壁21の板面を貫通して設けられた孔状の右側支持部24に挿通されている。また、
図3に示すように、右側支持軸84Rのうち右側壁21の外面から突出した先端部分には、ねじりコイルバネ88が嵌め入れられている。右側壁21の外面には、右側支持部24を中心としてその周囲を弧状に切り欠いた形状の切欠部25が設けられており、ねじりコイルバネ88の両端部は切欠部25の内壁に当接している。このねじりコイルバネ88により、蓋体81は閉塞方向に付勢された状態とされている。
【0039】
なお、蓋体81の前端下面には、前方に向けて突出する一対の係止片85が設けられており、これら一対の係止片85が、枠体開口72の前方縁部72Aの対応位置において下面から上方に向けて窪む被係止凹部75内に係止することにより、蓋体81の収容部10外(上方)への回動が規制されるようになっている(
図4参照)。
【0040】
また、
図3に示すように、右側壁21の切欠部25内には、右側支持部24(右側支持軸84R)を中心として弧状に延びる案内孔26が板面を貫通して設けられている。この案内孔26は、蓋体81の前後方向における略中央部において右側の端部から幅方向に突出して設けられた被案内部86を挿通させて、蓋体81の閉塞位置と押圧位置との間の回動を案内するためのものである。
【0041】
一方、一対の支持軸84のうち左側に配置される左側支持軸84Lの基端部には、第1歯車87が一体に設けられている。
図3に示すように、収容部10の一対の側壁21,31のうち左側に配される左側壁31には、内面から凹状に窪んで第1歯車87を収容する第1凹部33が設けられており、上述した左側支持軸84Lの先端を支持する左側支持部34は、第1凹部33の底部から凹状に窪んで形成されている。第1歯車87は、第2歯車91を介して、左側壁31に取り付けられた第3歯車92と噛み合っており、これらの歯車87,91,92により蓋体81のスローダウン機構が構成されている。なお、第2歯車91および第3歯車92は、左側壁31の内面から凹状に窪む第2凹部35および第3凹部36内に収容されている。
【0042】
次に、スマートフォン保持構造の使用方法について説明する。スマートフォンSを収容部10に収容する際には、スマートフォンSの上下方向が正しい方向に配置され、かつ、表示面Dが見える状態(手前側を向く状態)でスマートフォンSの上端を把持し、スマートフォンSの下端で蓋体81を下方に押圧する。すると、蓋体81はその付勢力に抗して支持軸84を中心として収容部10の内側(下方)に向けて回動し、先端側が収容部10内に押し込まれる(
図7および
図10参照)。
【0043】
スマートフォンSが収容部10に収容される過程において、スマートフォンSの表示面Dは蓋体81の塞ぎ部82により前方に向けて押圧され、スマートフォンSの背面が前壁12と接触した状態とされる。さらにスマートフォンSを下方に向けて押し込むと、スマートフォンSの下端は、収容部10内に突出している一対の横押さえ部50に当接し、これらを回動軸51を中心として車幅方向の外側に向けて回動させるとともに、これらの付勢力により左右から均等な力で押圧されて、収容部10の幅方向における中央部分に案内される。また同時に、スマートフォンSの下端は表示面押さえ部60に当接し、当該表示面押さえ部60を後方に向けて回動させる。つまりスマートフォンSの表示面Dは、収容部10の開口11付近において蓋体81により前壁12に向けて押圧されるとともに、収容部10の奥方(下方)においても表示面押さえ部60により前壁12に向けて押圧される。
【0044】
なおこの時、表示面押さえ部60の押圧力は、蓋体81の押圧力よりも大きくなるように設定されている。したがって、乗員が押し込み最後に要する押し込み力は、スマートフォンSが表示面押さえ部60に到達する前の押し込み力よりも大きいものとされる。これにより乗員は、スマートフォンSが下方まで押し込まれ、充電が可能となった感覚を得ることができる。
【0045】
またこの時、横押さえ部50および表示面押さえ部60は、上述したように突出部分が湾曲形状とされているから、表示面Dに対して面当たりして、表示面Dを傷つけることが抑制される(
図8および
図11参照)。スマートフォンSは、下端が収容部10の底壁15に到達する位置まで押し込まれる(
図8および
図11参照)。
【0046】
スマートフォンSが正規の位置まで押し込まれた状態において、スマートフォンSは、表示面Dの上方部分が蓋体81の先端部によって前壁12に押し付けられるとともに、表示面Dの下方部分が表示面押さえ部60によって前壁12の下方部分に押し付けられることにより、背面全体が前壁12に密着した状態とされている。この時、蓋体81の先端部は上述したように湾曲形状とされているから、表示面Dに対して面当たりして、表示面Dを傷つけることが抑制される(
図11参照)。またスマートフォンSが正規に位置に収容された状態において、上述したワイヤレス充電器14は、スマートフォンSが備えるワイヤレス充電部の位置と重畳する位置に設けられている。
【0047】
このような収容状態において、乗員は収容部10から突出したスマートフォンSの表示面Dの上方部分を見ることが可能である。またスマートフォンSは安定支持されているから、がたつき等の異音が発生することがない。また、運転中にワイヤレス充填を行うことが可能である。さらに、スマートフォンSを収容部10から取り出す際には、スマートフォンSの上端部分を把持して上方に引き抜けばよく、操作が簡単である。
【0048】
次に、作用効果について説明する。本実施形態の車両用スマートフォンS保持構造は、車両の室内意匠面から窪んでスマートフォンSの長手方向における一端側を収容可能な矩形の箱型の収容部10と、収容部10の開口11を閉塞可能な蓋部材70と、収容部10の前壁12に配置されたワイヤレス充電器14と、を備え、一対の側壁21,31から収容部10の内側に向けて進退可能に突出し、収容部10の内側に向けて付勢されて当該収容部10内に収容されたスマートフォンSの幅方向における両側部を押圧可能な一対の横押さえ部50と、後壁41から収容部10の内側に向けて進退可能に突出し、収容部10の内側に向けて付勢されて当該収容部10内に収容されたスマートフォンSの表示面Dを押圧可能な表示面押さえ部60と、を備えるとともに、蓋部材70の蓋体81は、収容部10の開口11を閉塞する閉塞位置と、閉塞位置から後壁41の上端に設けられた支持軸84を中心に収容部10の内側に回動して収容部10内に収容されたスマートフォンSの表示面Dを押圧する押圧位置との間で回動可能とされている。
【0049】
上記構成によれば、収容部10内に収容されたスマートフォンSは、その幅方向と厚み方向の両方から押圧されるから、車両の走行時や停止時にスマートフォンSが収容部10内でがたつくことがなく、安定的に保持される。また上記構成によれば、横押さえ部50および表示面押さえ部60は収容部10の内側に向けて付勢されているから、サイズが異なるスマートフォンSに対応して突出寸法が変更可能である。すなわち、サイズが異なるスマートフォンSを安定的に保持可能であり、汎用性に優れる。
【0050】
また、蓋体81は、収容部10にスマートフォンSが収容されていない場合には閉塞位置とされ、車両の室内意匠面を美しく見せることができるとともに、収容部10内に異物が入ることを抑制することができる。一方、スマートフォンSを収容部10内に収容した状態では押圧位置とされ、スマートフォンSを開口11に近い位置において収容部10の前壁12に向けて押圧するから、収容部10から外側にはみ出した状態のスマートフォンSの上端側が車両の走行時や停止時にがたつくことをより確実に抑制することができる。
【0051】
また、上記構成によれば、スマートフォンSを収容部10に収容する際には、スマートフォンSの下端側で蓋体81を押圧しつつスマートフォンSを奥方に向けて差し込むだけでよく、取り出す際には収容部10から外側にはみ出した状態の上端側を把持して引き抜くだけでよいから、着脱操作が簡単である。
【0052】
さらに、収容部10内に収容されたスマートフォンSは収容部10の前壁12に向けて開口11に近い位置と奥方の2か所で蓋体81および表示面押さえ部60により押圧されるとともに、一対の横押さえ部50により幅方向の中央に位置決めされるようになっているから、ワイヤレス充電対応のスマートフォンSの充電を確実に行うことができる。
【0053】
また、表示面押さえ部60が表示面Dを押圧する力は、蓋体81が押圧位置において表示面Dを押圧する力より大きくなるように設定されている。
【0054】
上記構成によれば、スマートフォンSを収容部10に挿入する際、姿勢が不安定な挿入初期は比較的に小さい力で挿入可能であり、奥方に差し込まれて姿勢が正規の姿勢に案内された状態で、比較的に大きい力で押し込むようになっている。つまり、挿入操作時に大きい力が不要で挿入操作が容易である上に、最後にスマートフォンSが奥方まで差し込まれた節度感を得ることができる。
【0055】
また、収容部10のうち開口11と対向する底壁15に、当該底壁15から窪んで前記スマートフォンSに接続された配線Wを逃がすための逃がし凹部16が設けられている。
【0056】
上記構成によれば、スマートフォンSの挿入方向の先端側に配線Wが接続されている場合でも、配線Wを逃がし凹部16内に逃がしつつ、スマートフォンSを収容部10内に安定的に保持することができる。なお、スマートフォンSを収容部10に収容する際に、配線Wが外側になるように反転させて収容することも考えられるが、そのようにした場合には、表示面Dの表示方向が逆になったり、スマートフォンSのサイドスイッチの操作が不可になったりするため、配線Wが奥方(底壁15側)に配置される向きで収容することが望まれる。
【0057】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)スマートフォンの保持構造は、車両のセンターコンソール2以外にも、サイドドアや後部座席のセンターアームレスト、電車や飛行機のシート側部に設けられるアームレスト等に設けることができる。
【0059】
(2)上記実施形態では、スマートフォンSを上方から下方に差し込む縦型の保持構造を開示したが、横型の保持構造とすることもできる。
【0060】
(3)上記実施形態では、横押さえ部および表示面押さえ部を回動させることにより収容部に対して進退させる構成としたが、進退構造は上記実施形態に限るものではなく、例えば、直線上を変位する構成としてもよい。
【0061】
(4)上記実施形態では、表示面押さえ部60が表示面Dを押圧する力が、蓋体81が押圧位置において表示面Dを押圧する力より大きくなる形態を示したが、表示面押さえ部と蓋部材の押圧力を同等に設定したり、蓋部材の押圧力の方が大きくなるように設定した形態も技術範囲に含まれる。
【0062】
(5)逃し凹16部は省略することもできる。
【0063】
(6)上記実施形態では、横押さえ部50と表示面押さえ部60とを同高さに設ける構成としたが、異なる高さに設けることもできる。
【0064】
(7)上記実施形態のスマートフォンの保持構造は、ワイヤレス充電器を備えない構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:乗物用スマートフォン保持構造、10:収容部、11:開口、12:前壁(一壁部)、14:ワイヤレス充電器、15:底壁(底部)、16:逃がし凹部、21:右側壁(隣接壁部)、31:左側壁(隣接壁部)、41:後壁(対向壁部)、50:横押さえ部、60:表示面押さえ部、70:蓋部材、71:枠体、81:蓋体(蓋部材)、84:支持軸(回動軸)、D:表示面、S:スマートフォン、W:配線