(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141837
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】振動発生器
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20230928BHJP
H02K 33/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
H02K33/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048364
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】横山 恭介
(72)【発明者】
【氏名】中村 英昭
【テーマコード(参考)】
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
5D107AA11
5D107CC08
5D107CC10
5H633BB02
5H633GG03
5H633GG08
5H633HH02
5H633HH05
5H633HH09
5H633HH13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一対のマグネット同士の間隔を一定値以上に維持できる振動発生器を提供する。
【解決手段】振動発生器1は、コイル22を有し第1方向に移動可能な可動子2と、可動子を第1方向と交差する第2方向に挟んで配置される一対のマグネット3と、一対のマグネットを第2方向に挟んで配置され、一対のマグネットとそれぞれ固定される一対の磁性体4と、一対のマグネット同士の間に配置されるスペーサ部52と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有し、第1方向に移動可能な可動子と、
前記可動子を前記第1方向と交差する第2方向に挟んで配置される一対のマグネットと、
前記一対のマグネットを前記第2方向に挟んで配置され、前記一対のマグネットとそれぞれ固定される一対の磁性体と、
前記一対のマグネット同士の間に配置されるスペーサ部と、を有する振動発生器。
【請求項2】
前記スペーサ部は、前記一対のマグネットと第1接着剤で接着される請求項1に記載の振動発生器。
【請求項3】
前記一対のマグネットは、前記一対の磁性体とそれぞれ第2接着剤で接着され、
前記第1接着剤と前記第2接着剤とは、互いに異なる成分を含む接着剤である請求項2に記載の振動発生器。
【請求項4】
前記第1接着剤は、弾性変形可能である請求項2または3に記載の振動発生器。
【請求項5】
前記スペーサ部は、前記一対のマグネットのうち前記第1方向および前記第2方向の両方と交差する第3方向における端部同士の間に位置し、かつ、前記第1方向に延びており、
前記スペーサ部のうち前記第1方向の両端部において前記第2方向の両端部が、前記一対のマグネットとそれぞれ前記第1接着剤で接着される請求項2から4のいずれか一項に記載の振動発生器。
【請求項6】
前記スペーサ部は、前記一対のマグネットのうち前記第1方向および前記第2方向の両方と交差する第3方向における端部同士の間に位置し、かつ、前記第1方向に延びる請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生器。
【請求項7】
前記一対の磁性体同士を固定するブラケットを有し、
前記ブラケットは、
前記一対の磁性体同士を固定するブラケット本体部と、
前記ブラケット本体部から前記一対のマグネット同士の間に突出する前記スペーサ部と、
を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の振動発生器。
【請求項8】
前記スペーサ部を構成する材料は、非磁性体である請求項1から7のいずれか一項に記載の振動発生器。
【請求項9】
前記スペーサ部は、前記第1方向および前記第2方向の両方と交差する第3方向に前記可動子を挟んで一対設けられる請求項1から8のいずれか一項に記載の振動発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されるように、コイルを有する可動子を挟んで一対のマグネットが対向配置され、これらの一対のマグネットを挟んでソフトマグネットなどの磁性体(プレート)が配置される振動発生器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0387324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような振動発生器においては、一対のマグネット同士が磁力によって互いに引かれ合い、一対のマグネット同士の間隔が小さくなる恐れがあった。この場合、マグネットに固定された磁性体が変形したり、マグネットが磁性体から外れたりする恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、一対のマグネット同士の間隔を一定値以上に維持できる振動発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る振動発生器の1つの態様は、コイルを有し、第1方向に移動可能な可動子と、前記可動子を前記第1方向と交差する第2方向に挟んで配置される一対のマグネットと、前記一対のマグネットを前記第2方向に挟んで配置され、前記一対のマグネットとそれぞれ固定される一対の磁性体と、前記一対のマグネット同士の間に配置されるスペーサ部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動発生器において、一対のマグネット同士の間隔を一定値以上に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による振動発生器を第2方向から見た図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による振動発生器の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による振動発生器を第1方向から見た図である。
【
図5】
図5は、ブラケットを外した振動発生器の斜視図である。
【
図6】
図6は、第3方向の外側から見たブラケットの斜視図である。
【
図7】
図7は、基板側から見たブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態による振動発生器について、
図1-
図7に基づいて説明する。
図1から
図3に示すように、本実施形態による振動発生器1は、可動子2と、一対のマグネット3,3と、一対の磁性体4,4と、ブラケット5と、板ばね6と、枠部と、を有する。板ばね6は、
図1にのみ図示している。枠部は図示していない。
【0010】
図4に示すように、可動子2は、基板21および基板21に設けられたコイル22を有する。振動発生器1は、コイル22の励磁に応じて可動子2が往復移動して振動力を発生するいわゆるリニアタイプの振動発生器である。可動子2は、第1方向に往復移動、すなわち振動する。一対のマグネット3,3は、可動子2を第1方向と交差する第2方向に挟んで配置される。本実施形態では、第1方向と第2方向とは直交している。第1方向および第2方向の両方に直交する方向を第3方向と表記する。図面では、第1方向を矢印Yで示し、第2方向を矢印Zで示し、第3方向を矢印Xで示す。
【0011】
本実施形態の基板21は、長尺の平板状である。基板21は、第3方向に延び、板面が第2方向を向いている。基板21の板面の短辺方向が第1方向に相当し、長辺方向が第3方向に相当し、基板21の厚さ方向が第2方向に相当している。
【0012】
一対のマグネット3,3は、それぞれ棒状である。一対のマグネット3,3は、それぞれ第3方向に延びる向きに配置される。一対のマグネット3,3は、可動子2を第2方向に挟んで配置される。
図5に示すように、本実施形態の振動発生器1には、一対のマグネット3,3が第1方向に2つ並んで設けられる。
図3に示すように、マグネット3の第3方向の長さ寸法は、可動子2の第3方向の長さ寸法よりも大きい。マグネット3の第3方向の両縁部は、可動子2の第3方向の縁部よりも第3方向の外側に突出する。一対のマグネット3,3の第3方向の端部31の間には、可動子2が配置されないスペース32が設けられる。
【0013】
図1および
図2に示すように、一対の磁性体4,4は、それぞれ板面が長尺の長方形の平板状である。一対の磁性体4,4は、可動子2を第2方向に挟んで配置された一対のマグネット3,3を第2方向に挟んで配置される。一対の磁性体4,4の第3方向の長さ寸法は、マグネット3の第3方向の長さ寸法よりも大きい。磁性体4の第3方向の端部41は、マグネット3の第3方向の端部31よりも第3方向の外側に突出する。磁性体4は、マグネット3と第2方向に対向する。マグネット3と磁性体4とは、互いに対向する面が第2接着剤8で接着される。第2接着剤8は、例えば、嫌気性接着剤である。第1接着剤7については、後述する。
【0014】
磁性体4の第3方向の端部41それぞれにおける第1方向の両端部、すなわち四隅には、第3方向に突出する突出片42が設けられる。突出片42は、ブラケット5の第1切り欠き部511に嵌めこまれる。
【0015】
ブラケット5は、一対の磁性体4,4同士を固定する。ブラケット5は、一対の磁性体4,4それぞれの第3方向の端部41同士を固定する。ブラケット5は、一対の磁性体4,4のそれぞれの第3方向の一方側の端部41同士を固定するブラケット5と、一対の磁性体4,4のそれぞれの第3方向の他方側の端部41同士を固定するブラケット5と、の一対が設けられる。ブラケット5は、一対の磁性体4,4の間に配置される可動子2および一対のマグネット3,3それぞれの第3方向の端面と第3方向に対向する。
【0016】
ブラケット5は、一対の磁性体4,4同士を固定するブラケット本体部51と、ブラケット本体部51から一対のマグネット3,3同士の間に突出するスペーサ部52と、を有する。ブラケット5を構成する材料は、非磁性体である。
図6および
図7に示すように、本実施形態のブラケット5は、平板状のステンレス板に絞り加工によって板面から突出する凸部を設けて製作される。凸部は、ステンレス板の板面に沿った一方向に延びる。ブラケット5は、凸部の両側に平板状がある。凸部がスペーサ部52である。凸部の両側の平板状の部分がブラケット本体部51である。
【0017】
図2から
図4に示すように、ブラケット5は、ブラケット本体部51の板面が第3方向を向き可動子2、一対のマグネット3,3および一対の磁性体4,4それぞれの第3方向の端面と対向し、スペーサ部52が第1方向に延びて可動子2側に突出する姿勢で一対の磁性体4,4を固定する。以下のブラケット5の説明では、ブラケット5の姿勢は、一対の磁性体4,4を固定している姿勢である。
【0018】
図6および
図7に示すように、ブラケット本体部51の第2方向の端部513それぞれにおける第1方向の両端部、すなわち四隅には、第2方向および第1方向に凹んだ第1切り欠き部511が設けられている。上述しているように、ブラケット5の第1切欠き部511には、磁性体4の突出片42が嵌めこまれる。ブラケット5は、第1切欠き部511に磁性体4の突出片42が嵌めこまれて一対の磁性体4,4を固定する。
【0019】
スペーサ部52は、ブラケット5の第2方向の中央部に位置する。スペーサ部52は、ブラケット5の第1方向の全体にわたって設けられる。スペーサ部52の周面のうち、先端に位置し第3方向を向く先端面521と表記する。スペーサ部52の周面のうち、先端面521の第2方向の一方側の縁部とブラケット本体部51とを結ぶ面および先端面521の第2方向の他方側の縁部とブラケット本体部51とを結ぶ面を、側面522,522と表記する。側面522,522は、第2方向を向く面である。スペーサ部52の側面522,522は、スペーサ部52の第2方向の両端部に相当する。
【0020】
図2および
図3に示すように、スペーサ部52は、可動子2側に突出する。スペーサ部52は、一対のマグネット3,3の第3方向の端部31の間で、可動子2が配置されないスペース32に配置される。スペーサ部52は、一対のマグネット3,3の第3方向の端部31に第2方向から挟まれる。第3方向の一方側に設けられるスペーサ部52と他方側に設けられるスペーサ部52とは、可動子2を第3方向から挟んでいる。
スペーサ部52の先端面521は、可動子2の第3方向の端面23と第3方向に対向する。スペーサ部52の側面522,522は、一対のマグネット3の第3方向の端部31と、第2方向に対向する。スペーサ部52の側面522,522と一対のマグネット3の第3方向の端部31とは、第1接着剤7で接着される。
【0021】
第1接着剤7は、弾性変形可能である。第1接着剤7は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂系接着剤である。第1接着剤7、マグネット3と磁性体4とを接着する第2接着剤8とは、互いに異なる成分を含む接着剤である。
第1接着剤7は、スペーサ部52に両側の側面522,522それぞれの第1方向の両端部の4箇所とマグネット3の第3方向の端部31との間に注入される。
図7にスペーサ部52における第1接着剤7が設けられる位置71を示す。
スペーサ部52は、一対のブラケット5それぞれに設けられるため、1つの振動発生器1では、スペーサ部52とマグネット3とが8カ所において第1接着剤7によって接着される。マグネット3は、1つの振動発生器1に4つ設けられ、スペーサ部52は2つ設けられるため、1つのマグネット3は、1つのスペーサ部52と1カ所ずつ接着される。
第1接着剤7は、可動子2および一対のマグネット3,3を挟んだ一対の磁性体4,4同士をブラケット5で固定した後に、スペーサ部52とマグネット3との間に注入される。
【0022】
次に、上記の本実施形態による振動発生器1の作用・効果について説明する。
上記の本実施形態による振動発生器1では、一対のマグネット3,3の間にスペーサ部52が配置されることにより、マグネット3同士が互いに引かれ合った場合でも一対のマグネット3,3の間隔をスペーサ部52の厚さ寸法以上に維持できる。これにより、磁性体4の反り量が大きくなったり、マグネット3が磁性体4から剥がれたりすることを防止できる。
【0023】
本実施形態による振動発生器1では、スペーサ部52は、一対のマグネット3,3と第1接着剤7で接着される。
このような構成とすることにより、スペーサ部52が一対のマグネット3,3の間から抜け出ることを防止できる。
【0024】
本実施形態による振動発生器1では、第1接着剤7は、弾性変形可能である。このような構成とすることにより、第1接着剤7がマグネット3の微細な変位を吸収でき、マグネット3の変位によって第1接着剤7が割れたり剥がれたりすることを防止できる。
【0025】
本実施形態による振動発生器1では、第1接着剤7と、一対のマグネット3と一対の磁性体4とをそれぞれ接着する第2接着剤8とは、互いに異なる成分を含む接着剤である。第2接着剤8によるマグネット3と磁性体4との接着と、第1接着剤7によるマグネット3とスペーサ部52との接着とは、異なる工程で行われるため、温度状態などそれぞれの工程が行われる状態に合わせた接着剤を選択できる。
【0026】
本実施形態による振動発生器1では、スペーサ部52は、一対のマグネット3,3のうち第3方向の端部31同士の間に位置し、かつ、第1方向に延びる。スペーサ部52のうち第1方向の両端部において第2方向の両端部が、一対のマグネット3,3とそれぞれ第1接着剤7で接着される。上述しているように、スペーサ部52の第2方向の両端部は、両方の側面522,522に相当する。このような構成とすることにより、スペーサ部52が一対のマグネット3,3の間から抜け出ることを防止できる。スペーサ部52を一対のマグネット3,3の間に配置した後に第1接着剤7をスペーサ部52とマグネット3との間に注入して、スペーサ部52と一対のマグネット3,3とを接着できる。
【0027】
本実施形態による振動発生器1では、一対の磁性体4,4同士を固定するブラケット5を有する。ブラケット5は、一対の磁性体4,4同士を固定するブラケット本体部51と、ブラケット本体部51から一対のマグネット3,3同士の間に突出するスペーサ部52とを有する。
このような構成とすることにより、スペーサ部52の設置をブラケット5の設置と同時にできる。振動発生器1の部品点数を少なくすることができる。
【0028】
本実施形態による振動発生器1では、スペーサ部52は、第3方向に可動子2を挟んで一対設けられる。
このような構成とすることにより、スペーサ部52が第1方向に移動する可動子と干渉する恐れがない。
【0029】
以上、本発明による振動発生器の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、スペーサ部52と一対のマグネット3,3とは、第1接着剤7で接着されなくてもよい。第1接着剤7は、弾性変形可能でなくてもよい。第1接着剤7は、例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂系接着剤などであってもよく、適宜選択されてよい。
スペーサ部52と一対のマグネット3,3とが第1接着剤7で接着される箇所や数は、適宜設定されてよい。振動発生器1の製造工程において、スペーサ部52と一対のマグネット3,3とを第1接着剤7で接着する工程は適宜設定されてよい。
【0030】
マグネット3と磁性体4とは、接着以外の方法で固定されてもよい。マグネット3と磁性体4とを接着する第2接着剤8の種類は適宜選択されてよい。
第1接着剤7と第2接着剤8とは、同じ成分を含む接着剤であってもよい。
【0031】
上記の実施形態では、スペーサ部52は、第1方向に延びている。スペーサ部52は、点状に設ける等、一方向に延びる形状でなくてもよい。
【0032】
上記の実施形態では、スペーサ部52は、ブラケット5に設けられる。スペーサ部52は、ブラケット5とは別の部材であってもよい。
【0033】
スペーサ部52を構成する材料は、ステンレス以外であってもよい。スペーサ部52を構成する材料は、樹脂であってもよい。スペーサ部52を構成する材料は、磁性体でもよいが、非磁性体が望ましい。スペーサ部52を構成する材料が非磁性体であると、スペーサ部52によってコイル22の磁束が乱れることを防止できる。
【0034】
上記の実施形態では、スペーサ部52は、第3方向に可動子2を挟んで一対設けられる。スペーサ部52と可動子2との位置関係は適宜設定されてよい。
【0035】
上記の実施形態では、基板21は、第3方向に延び、板面が第2方向を向いている。基板21の形状や配置される向きは、適宜設定されてよい。上記の実施形態では、第1方向、第2方向および第3方向は、互いに直交する方向であるが、交差する方向であれば、直交していなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…振動発生器、2…可動子、3…マグネット、4…磁性体、5…ブラケット、7…第1接着剤、8…第2接着剤、22…コイル、31…端部、51…ブラケット本体部、52…スペーサ部