(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141844
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】無線通信制御装置、無線通信制御方法、及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/145 20060101AFI20230928BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20230928BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20230928BHJP
【FI】
H04B7/145
H04W16/26
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048378
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 隆
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067DD42
5K067DD43
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K072AA22
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072GG02
5K072GG05
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG26
5K072GG27
5K072HH01
5K072HH02
(57)【要約】
【課題】通信品質が劣化したエリアの通信品質を改善する。
【解決手段】基地局から送信された電波を反射する反射板を制御する無線通信制御装置であって、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記記憶装置は、複数のビームの各々と、前記各ビームの電波の放射方向に設置された前記反射板との対応関係を記憶し、前記演算装置は、前記複数のビームの各々を使用した前記端末との通信の通信品質を前記記憶装置に記録し、前記演算装置は、前記通信品質が所定の閾値を下回ったビームがある場合、他のビームに対応する反射板を選定し、前記演算装置は、当該ビームによる通信品質が劣化した領域の通信品質が改善するように、前記選定された反射板の反射角を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局から送信された電波を反射する反射板を制御する無線通信制御装置であって、
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、
前記記憶装置は、複数のビームの各々と、前記各ビームの電波の放射方向に設置された前記反射板との対応関係を記憶し、
前記演算装置は、前記複数のビームの各々を使用した端末との通信の通信品質を前記記憶装置に記録し、
前記演算装置は、前記通信品質が所定の閾値を下回ったビームがある場合、他のビームに対応する反射板を選定し、
前記演算装置は、当該ビームによる通信品質が劣化した領域の通信品質を改善するように、前記選定された反射板の反射角を制御することを特徴とする無線通信制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信制御装置であって、
前記演算装置は、通信品質の劣化が記録されたビームと異なる方向のビームに対応する反射板を選定することを特徴とする無線通信制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信制御装置であって、
前記演算装置は、直近に制御していない反射板を選定することを特徴とする無線通信制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信制御装置であって、
前記通信品質は、受信信号強度、信号対干渉ノイズ比、及びスループットの少なくとも一つであることを特徴とする無線通信制御装置。
【請求項5】
無線通信制御装置が基地局から送信された電波を反射する反射板を制御する無線通信制御方法であって、
前記無線通信制御装置は、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有し、
前記記憶装置は、複数のビームの各々と、前記各ビームの電波の放射方向に設置された前記反射板との対応関係を記憶し、
前記無線通信制御方法は、
前記演算装置が、前記複数のビームの各々を使用した端末との通信の通信品質を前記記憶装置に記録し、
前記演算装置が、前記通信品質が所定の閾値を下回ったビームがある場合、他のビームに対応する反射板を選定し、
前記演算装置が、当該ビームによる通信品質が劣化した領域の通信品質が改善するように、前記選定された反射板の反射角を制御することを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項6】
無線通信システムであって、
電波の放射方向が異なる複数のビームを用いて端末と通信する基地局と、
電波の反射角を変化可能な反射板と、
前記反射板を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数のビームの各々と、前記各ビームの電波の放射方向に設置された前記反射板との対応関係を記憶し、
前記複数のビームの各々を使用した前記端末との通信の通信品質を記録し、
前記通信品質が所定の閾値を下回ったビームがある場合、他のビームに対応する反射板を選定し、
当該ビームによる通信品質が劣化した端末の通信品質が改善するように、前記選定された反射板の反射角を制御することを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信制御装置に関し、特に複数のビームを用いて通信を行う無線通信システムにおいて、通信品質の自動最適化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波を利用した5Gサービスなどにおいては、サービスエリア内の遮蔽物によって、面的なサービスエリアを構成することが困難となる。これに対し、メタマテリアル反射板やLIS(Large Intelligent Surface)反射板などを利用した遮蔽エリアの救済が検討されている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、反射板を利用して通信品質が劣化しているエリアの通信品質を改善する技術がある(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1には、電波の反射を制御できるデバイスであるLIS(Large Intelligent Surface)を用いて電波の遮蔽エリアに存在する端末の通信品質を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yui Han, at. el., "Large Intelligent Surface-Assisted Wireless Communication Exploiting Statistical CSI," IEEE TRANSACTIONS ON VEHICULAR TECHNOLOGY, VOL. 68, NO. 8, AUGUST 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した先行技術では、基地局や反射板の設置後に遮蔽物の移動などにより遮蔽エリアが変化した場合、反射板の再配置など人手による再調整が必要となる。頻繁に変動が発生する環境においては、再調整のためのコストが高くなる。また、ミリ波5G通信においては基地局からの複数のビームを切り替えて通信するため、複数のビームと複数の反射板を連携した制御が必要となる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、基地局から送信された電波を反射する反射板を制御する無線通信制御装置であって、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記記憶装置は、複数のビームの各々と、前記各ビームの電波の放射方向に設置された前記反射板との対応関係を記憶し、前記演算装置は、前記複数のビームの各々を使用した前記端末との通信の通信品質を前記記憶装置に記録し、前記演算装置は、前記通信品質が所定の閾値を下回ったビームがある場合、他のビームに対応する反射板を選定し、前記演算装置は、当該ビームによる通信品質が劣化した領域の通信品質が改善するように、前記選定された反射板の反射角を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、通信品質が劣化したエリアの通信品質を改善できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の通信システムの構成を示す図である。
【
図2】実施例1の反射板の制御動作のフローチャートである。
【
図3】実施例1の反射板の制御動作例を示す図である。
【
図4】実施例1の反射板の制御動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施例1>
図1は、実施例1の通信システムの構成を示す図である。
【0011】
基地局10は、複数のビーム(ビーム1、ビーム2、ビーム3)を切り替えて通信エリア内の1又は複数の端末30と通信する。通信エリアに発生する遮蔽エリアを救済するために、反射波の方向を制御可能な複数の反射板17、18、19を配置し、これらの反射板の反射方向を、それぞれ反射板制御部a14、反射板制御部b15、反射板制御部c16が制御する。制御装置11が、反射板制御部a、b、c(14、15、16)を一括して制御するので、各反射板が連携して制御できる。
【0012】
制御装置11は、ビーム毎の通信品質情報の通知を基地局10から受け、通信品質情報を記憶部12に記憶する。基地局10から送信される通信品質情報は、各ビームを通信に使用した時の通信品質であり、通信品質は、基地局10で上りの信号を測定したり、端末30で下りの信号を測定したり、基地局10及び端末30で各々上りの信号及び下りの信号を測定したりできる。各ビームに対応した記憶領域に通信品質が記録される。通信品質は、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、信号対干渉ノイズ比(SINR:Signal to Interference and Noise Ratio)、スループット等であり、これらの一つ又は複数の組み合わせであるとよい。また、記憶部12は、基地局10から見て各ビームの方向に設置されている反射板番号(反射板a、b、c)を(例えば、反射板設置時に)予め記憶する。
図1では、全てのビーム方向に反射板が設置されているが、必ずしもその必要はなく、ビーム数より少ない数の反射板を設置してもよい。この場合、記憶部12には、対応する反射板がないビームには、反射板が設置されていない旨を記憶する。
【0013】
制御装置11は、プログラムを実行する演算装置(CPU)、演算装置がアクセス可能な記憶装置、不揮発性の補助記憶装置、及び通信インターフェースを有する計算機によって構成される。
【0014】
プロセッサ1が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して制御装置11に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置に格納される。このため、制御装置11は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0015】
制御装置11は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。また、制御装置11は、ハードウェア的に独立した装置でもよいし、他の制御を目的とした装置内にソフトウェア的に実装されてもよい。
【0016】
反射角制御機構13は、記憶部12に記録された通信品質情報、及びビームと反射板の対応関係に基づいて、反射板制御部a、b、c(14、15、16)を制御する。反射角を制御可能な反射板としては、設置角度駆動機構を有する反射板を用いてもよいし、電気的に反射角を制御可能なメタマテリアル反射板や、LIS(Large Intelligent Surface)反射板を用いてもよい。
【0017】
図2は、
図1に示す通信システムにおける反射板17、18、19の制御動作のフローチャートであり、
図3及び
図4は、反射板17、18、19の制御動作例を示す図である。
【0018】
基地局10は、端末30との通信品質を測定し、測定した通信品質を制御装置11に通知する。制御装置11は、端末30から通知された通信品質を記憶部12に記録する(ステップ20)。通信中の複数のビームについて、通信品質が所定の閾値を下回って劣化しているかを判定し(ステップ21)、通信品質が所定の閾値を下回る劣化がない場合、反射板を制御せずに、ステップ20に戻る。
【0019】
ステップ21において通信品質が所定の閾値を下回って劣化したビームが検出された場合、反射角制御機構13は、当該ビームによる通信品質が劣化した領域の通信品質を改善するために制御すべき反射板を選定する(ステップ22)。反射角制御機構13は、ステップ22にて選定された反射板に対応する反射板制御部a、b、c(14、15、16)を制御して、反射板の反射角を制御する(ステップ23)。例えば、通信品質を測定しながら反射角の制御量を変えて、通信品質が良い制御量を見つけるとよい。また、通信品質を測定しながら反射角の制御量を所定パターンで変えて、通信品質が良い制御量を見つけてもよい。また、通信品質が劣化したビームと、選定された反射板に対応するビームとの幾何学的関係で、制御量の変化パターンを変えてもよい。反射板の角度の制御の結果、通信品質が所定の閾値より高くなって劣化が解消したかを測定する(ステップ24)。測定の結果、通信品質が所定の閾値を下回る劣化が解消している場合、ステップ20に戻る。通信品質が所定の閾値を下回る劣化が解消していなければ、ステップ22に戻り、制御すべき他の反射板を選定する。
【0020】
ステップ22における制御すべき反射板の選定は、以下の方法が採用できる。例えば、
図3に示すように、ビーム2の通信品質が所定の閾値を下回る劣化が検出された場合、ビーム2の方向に遮蔽物35が出現し、ビーム2の方向には電波が届いていない可能性がある。従って、通信品質が劣化したビームと異なる方向のビーム1を選定して、選定されたビーム1に対応する反射板17を制御して、ビーム1の電波がビーム2の通信品質劣化エリアに届くように、ビーム1を反射させ、又は反射板19を制御して、ビーム3の電波がビーム2の通信品質劣化エリアに届くように、ビーム3を反射させることによって、ビーム2の通信品質劣化エリアにビーム1又はビーム3の電波が届くようにすることが望ましい。従って、反射板17又は反射板19を選定して制御する。
【0021】
反射板17、反射板19のいずれを制御するかの選定は、他のエリアの通信品質向上のために過去に制御した反射板を制御すると、当該他のエリアの通信品質を劣化させる可能性があるので、直近(例えば、所定時間)に制御していない反射板を選定するとよい。制御すべき候補の全ての反射板が直近に制御している場合、最も過去に制御した反射板を選定するとよい。
【0022】
また、現在、端末30との通信に使用されていないビームに対応する反射板を選定してもよい。
【0023】
また、制御すべき候補の反射板が複数ある場合、通信品質が劣化したビームの方向に近い方向に電波を放射するビームに対応する反射板を制御するようにするとよい。例えば、
図4に示すように、ビーム3の通信品質の劣化が検出された場合、ビーム3の方向に遮蔽物35が出現し、ビーム3の方向には電波が届いていない可能性がある。従って、他のビームの反射板を制御してビーム3の通信品質劣化エリアに電波を届けるが、ビーム1ではなくビーム2を制御するとよい。これは、近い方向に電波を放射しているビームを用いた方が、劣化したビームを遮蔽している遮蔽物35の影響を受けにくいからである。
【0024】
以上に説明したように、本発明の実施例の制御装置11では、複数のビームの各々を使用した端末30との通信の通信品質を記憶部12に記録し、通信品質が所定の閾値を下回ったビームがある場合、他のビームに対応する反射板を選定し、通信品質が劣化した領域の通信品質が改善するように、選定された反射板の反射角を制御するので、通信エリアにおいて通信品質の劣化が発生したエリアを自動的に検出し、通信品質を改善できる。
【0025】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0026】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0027】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0028】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0029】
10:基地局
11:制御装置
12:記憶部
13:反射角制御機構
14、15、16:反射板制御部
17、18、19:反射板
30:端末
35:遮蔽物