(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141846
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電池搭載型電気推進船舶システム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/17 20060101AFI20230928BHJP
B63J 3/02 20060101ALI20230928BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20230928BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20230928BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B63H21/17
B63J3/02 A
B63H21/21
B63J99/00 A
H02J7/00 B
H02J7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048382
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】500072529
【氏名又は名称】向島ドック 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 信好
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】蓄電池の残量や運航状況に応じて、発電原動機の運転と電力の供給を最も効率良く行なえるように制御できる省エネ効果の高い電池搭載型電気推進船舶システムを提供する。
【解決手段】推進電動機である主機関と、蓄電池と、発電原動機と、船体を推進するための推進手段とを含む、電池搭載型電気推進船舶システムであって、(i)蓄電池の残量が少なくなった場合、発電原動機は、蓄電池の残量がほぼ満杯になるまで発電を行なって蓄電池に電力を供給するとともに任意選択的に主機関及び/又は船内負荷に電力を供給し、(ii)蓄電池の残量がほぼ満杯に到達した後は再び少なくなるまで発電原動機は、停止され、蓄電池が主機関及び/又は船内負荷に電力を供給し、その後はこれらの動作を繰り返す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進電動機である主機関と、蓄電池と、発電原動機と、船体を推進するための推進手段とを含む、電池搭載型電気推進船舶システムであって、
主機関は、推進手段に推進力を与えるように構成され、
蓄電池は、主機関及び/又は船内負荷に電力を供給するように構成され、
発電原動機は、発電を行なって主機関及び/又は蓄電池及び/又は船内負荷に電力を供給するように構成され、
(i)蓄電池の残量が定格容量の0~15%の中から選択される容量X以下になった場合、発電原動機は、蓄電池の残量が定格容量の90~100%の中から選択される容量Yになるまで発電を行なって蓄電池に電力を供給するとともに任意選択的に主機関及び/又は船内負荷に電力を供給し、(ii)蓄電池の残量が容量Yに到達した後は再び容量X以下になるまで発電原動機は、停止され、蓄電池が主機関及び/又は船内負荷に電力を供給し、その後は(i),(ii)の動作を繰り返すように構成されることを特徴とする電池搭載型電気推進船舶システム。
【請求項2】
(i)の場合に行なわれる発電原動機の発電が一定負荷で行なわれることを特徴とする請求項1に記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
【請求項3】
少なくとも2台の発電原動機が船内に据え付けられ、そのうち第一発電原動機は、主機関及び/又は蓄電池及び/又は船内負荷に電力を供給するために優先的に使用され、第二発電原動機は、第一発電原動機の故障及び/又はメンテナンス時の代替の電力の供給源として、又は主機関の最大出力の80%以上で運転する高速航海時の主機関のアシスト電力の供給源として使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
【請求項4】
主機関の最大出力の50%以上で運転する常用航海時において、(i)蓄電池の残量が定格容量の0~15%の中から選択される容量X以下になった場合、発電原動機は、蓄電池の残量が定格容量の90~100%の中から選択される容量Yになるまで発電を行なって蓄電池に電力を供給するとともに主機関及び船内負荷に電力を供給し、(ii)蓄電池の残量が容量Yに到達した後は再び容量X以下になるまで発電原動機は、停止され、蓄電池が主機関及び船内負荷に電力を供給し、その後は(i),(ii)の動作を繰り返すように制御されることができることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
【請求項5】
10ノット以下の低速航海時において、蓄電池の残量が定格容量の5~15%の中から選択される容量X以下にならない限り、発電原動機は、停止され、蓄電池は、主機関及び船内負荷に電力を供給するように制御されることができることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
【請求項6】
総トン数が100T以上5000T未満の内航船に使用されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進電動機である主機関と、蓄電池と、発電原動機と、船体を推進するための推進手段とを含む、電池搭載型電気推進船舶システムにおいて、蓄電池の残量や運航状況に応じて発電原動機の運転を最も効率良く制御するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、他の交通機関に比べて高い省エネ性・低二酸化炭素排出性能を持つ。そのため、国内貨物輸送の内航海運へのモーダルシフトが、国家的規模で推奨されているものの、その動きは未だに大きくない。モーダルシフトの推進のためにも、環境負荷及び運送コスト削減を実行できる高経済性船舶が広く求められている。
【0003】
加えて近年の少子高齢化の人口構造による影響を多分に受け、内航船員不足も大きく表面化している。その解決策の一つとして革新的技術・新技術を用い、省エネ性の高い運航能力を有した船舶が内航船分野において出現することが期待されている。
【0004】
従来は、電池を使用した船舶のマネジメントとしては、発電原動機をメインの給電装置として利用し、常用航海時における発電原動機の最大負荷におけるデマンド対策として、蓄電池を使用しているケースがほとんどであり(特許文献1,2参照)、常用航海時、低速航海時等の全ての状況において蓄電池をメインの給電設備として使用したものは内航船では採用されてこなかった。これは、電気推進システムを船舶に搭載した場合、運航状況に応じて発電原動機を効率的に運転したり、蓄電池の蓄電量を適切に制御することが難しかったためである。
【0005】
蓄電池を搭載し、もっぱら電気で推進する船舶システムは、上述のように現実的なものにはなっていないが、最近では、かかる船舶システムにおいて、蓄電池の蓄電量に基づいて推進電動機の出力の制御を行なうことが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献3では、蓄電池に充電された電力を利用して船舶を推進する電気推進システムにおいて、蓄電池の蓄電量が船舶を推進不可能な状態まで放電してしまうことを防ぐために蓄電池の充電状態に基づいて推進用電動機の出力を制御することが提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3のシステムでは、蓄電池の充電状態に基づいて制御されるのは推進電動機の出力であるため、常用航海時でも出力を絞るように制御され、推進電動機を主機関とした船舶では様々な運航状態に応じて船舶の推進と電力供給を省エネの観点から効率良く制御できないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-209018号公報
【特許文献2】特開2015-3658号公報
【特許文献3】特開2021-54353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、推進電動機である主機関と、蓄電池と、発電原動機と、船体を推進するための推進手段とを含む、電池搭載型電気推進船舶システムにおいて、蓄電池の残量や運航状況に応じて、発電原動機の運転と電力の供給を最も効率良く行なえるように制御できる省エネ効果の高い電池搭載型電気推進船舶システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、蓄電池の残量が特定の容量まで少なくなった場合に、発電原動機が蓄電池の残量がほぼ満杯まで増加するまで連続的に一定負荷で発電を行なって蓄電池、主機関、船内負荷に電力を供給する一方、蓄電池の残量がほぼ満杯に達した後は、発電原動機は、蓄電池の残量が特定の容量まで少なくなるまで停止し、蓄電池が主機関、船内負荷に電力を供給するように制御することにより、発電原動機を最も効率の良い部分で長く運転することができ、結果として高い省エネ効果と機器の故障や修理の低減を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明は上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(6)の構成を有するものである。
(1)推進電動機である主機関と、蓄電池と、発電原動機と、船体を推進するための推進手段とを含む、電池搭載型電気推進船舶システムであって、
主機関は、推進手段に推進力を与えるように構成され、
蓄電池は、主機関及び/又は船内負荷に電力を供給するように構成され、
発電原動機は、発電を行なって主機関及び/又は蓄電池及び/又は船内負荷に電力を供給するように構成され、
(i)蓄電池の残量が定格容量の0~15%の中から選択される容量X以下になった場合、発電原動機は、蓄電池の残量が定格容量の90~100%の中から選択される容量Yになるまで発電を行なって蓄電池に電力を供給するとともに任意選択的に主機関及び/又は船内負荷に電力を供給し、(ii)蓄電池の残量が容量Yに到達した後は再び容量X以下になるまで発電原動機は、停止され、蓄電池が主機関及び/又は船内負荷に電力を供給し、その後は(i),(ii)の動作を繰り返すように構成されることを特徴とする電池搭載型電気推進船舶システム。
(2)(i)の場合に行なわれる発電原動機の発電が一定負荷で行なわれることを特徴とする(1)に記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
(3)少なくとも2台の発電原動機が船内に据え付けられ、そのうち第一発電原動機は、主機関及び/又は蓄電池及び/又は船内負荷に電力を供給するために優先的に使用され、第二発電原動機は、第一発電原動機の故障及び/又はメンテナンス時の代替の電力の供給源として、又は主機関の最大出力の80%以上で運転する高速航海時の主機関のアシスト電力の供給源として使用されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
(4)主機関の最大出力の50%以上で運転する常用航海時において、(i)蓄電池の残量が定格容量の0~15%の中から選択される容量X以下になった場合、発電原動機は、蓄電池の残量が定格容量の90~100%の中から選択される容量Yになるまで発電を行なって蓄電池に電力を供給するとともに主機関及び船内負荷に電力を供給し、(ii)蓄電池の残量が容量Yに到達した後は再び容量X以下になるまで発電原動機は、停止され、蓄電池が主機関及び船内負荷に電力を供給し、その後は(i),(ii)の動作を繰り返すように制御されることができることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
(5)10ノット以下の低速航海時において、蓄電池の残量が定格容量の5~15%の中から選択される容量X以下にならない限り、発電原動機は、停止され、蓄電池は、主機関及び船内負荷に電力を供給するように制御されることができることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
(6)総トン数が100T以上5000T未満の内航船に使用されることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の電池搭載型電気推進船舶システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の船舶システムは、発電原動機の負荷変動を少なくするような運転で発電できるので、以下のような様々な効果を期待することができる。
(i)燃料消費率が最も良い部分で燃焼できるため、省エネ効果が極めて高い。
(ii)発電原動機の不完全燃焼、ノッキングの要因が解消し、機関故障のリスクが下がる。
(iii)発電原動機の燃焼ポイントが最も良い部分で燃焼するため、ピストン、ライナー潤滑油などの修理コストが下がる。
また、蓄電池との併用により、以下の効果も期待することができる。
(iv)発電原動機の運転時間が減少し、船員労働時間の短縮効果が見込める。
(v)同上の効果により、修繕コストが下がる。
(vi)同上の効果により、発電原動機の運転のための補器類(ポンプ、クーラー、清浄機など)の運転時間が減少し、船員労働時間の短縮、修繕コストの低下に繋がる。
(vii)同上の効果により発電原動機運転のために必要な機器、冷却装置、燃料供給装置、ヒーティング装置、送風装置などの運転時間が減少し、消費エネルギーの減少、修繕コストの低減、船員労働時間の短縮などの効果が見込める。
さらに、主機関として内燃機関を使わず推進電動機を使う船舶は、商船の世界では初めての取り組みであり、船舶の電動化は、車と同様に様々な取り組み(CASEなど)につながる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの基本構成の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの蓄電池の残量が少ない場合の制御を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの蓄電池の残量が十分にある場合の制御を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの常用航海時の制御を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの低速航海時の制御を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの停泊時の制御を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の電池搭載型電気推進船舶システムを説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の船舶システムは、船舶の大きさや種類に関係なく様々な船舶に適用可能であるが、現実的な実現性の観点から総トン数が100T以上、特に総トン数が100T以上5000T未満の内航船(特に内航貨物船)を対象とすることが好ましい。
【0016】
内航船の運航時における要求船速に対する主機関の出力は、気象や海象の影響を多分に受けるため、状況に応じて大きく変動することが一般的である。加えて運航計画により要求船速も変動するため、通常は運航計画における最大船速、最大出力における使用を考慮し主機関を選定しているケースが多い。ただ一方では少数ではあるが、気象海象等の悪条件下においては、要求船速を満たす航海を諦めて避難することを念頭とし、小型の主機関を搭載するケースも存在する。いずれにしても運航状況に応じて必要な出力が容易に変化するために、燃料消費量の変動が比較的大きくなる特徴を有している。
【0017】
本発明の船舶システムは、船舶の推進に必要な推進エネルギーと、船内での活動に必要な船内エネルギー(船内負荷)のいずれも電気エネルギーを利用する電池搭載型電気推進船舶を対象とするものである。本発明の船舶システムは、電気供給源として発電原動機による発電と蓄電池を併せ持ち、蓄電池の残量に応じて電気供給源を切り替えて省エネ効果を発揮するものである。以下、本発明の船舶システムの基本構成、蓄電池の残量に応じた制御、航海状況に応じた制御の例を説明する。
【0018】
(船舶システムの基本構成)
図1は、本発明の電池搭載型電気推進システムの基本構成の概略説明図である。図中、1は、主機関であり、本発明では内燃機関ではなく、推進電動機が採用される。主機関1は、クラッチ(図示せず)を介して推進手段2(例えばプロペラ)に推進力を与えることができる。クラッチ及び推進手段2は、特に限定されず、船舶に従来採用されているものを適宜採用することができる。
【0019】
3は、蓄電池であり、1回限りの使用ではなく、充電を行うことにより電気を繰り返し蓄えることができ、しかも蓄えられた電気を繰り返し取り出して使用することができる電池である。例えば鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池などのリチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池などの従来公知の蓄電池を使用することができる。本発明では、蓄電池として重量あたりの蓄電量の大きさからリチウムイオン蓄電池を使用することが好ましい。蓄電池3は、インバータ(INV)を介して主機関1及び/又は船内負荷4に電力を供給するように構成される。従って、蓄電池3は、船舶の推進力として有効に機能でき、かつ船内電力として電気を十分に供給できる容量を持つことが好ましく、その容量は、100kW~1000000kWであることが好ましい。
【0020】
5は、発電原動機であり、一般的に燃料を使用して力学的エネルギーを発生する内燃機関が使用される。発電原動機5は、発生した力学的エネルギーを発電機6で電気エネルギーに変換し、コンバーター(CNV)を介して主機関1及び/又は蓄電池3及び/又は船内負荷4に電力を供給するように構成される。
【0021】
図2,
図3は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの蓄電池の残量が少ない場合と十分にある場合のそれぞれの制御を概略的に示す。本発明では、(i)蓄電池3の残量が定格容量の0~15%、好ましくは3~12%、より好ましくは4~10%の中から選択される容量X以下のように少なくなった場合、発電原動機5は、発電を行なって
図2の矢印に示すように、蓄電池3に電力を供給するとともに任意選択的に主機関1及び/又は船内負荷4に電力を供給するように構成される。このとき、蓄電池3は、他に電力を供給せず、もっぱら電力の供給を受けて蓄電に専念する。この発電原動機5の発電と電力の供給は、蓄電池3の残量が定格容量の90~100%、好ましくは92~99%、より好ましくは93~98%の中から選択される容量Yのように十分になるまで継続する。
【0022】
そして、(ii)蓄電池3の残量が容量Yのように十分になった後は、発電原動機5は、停止し、
図3の矢印に示すように、蓄電池3が主機関1及び/又は船内負荷4に電力を供給するように構成される。このとき、発電原動機5は停止しているため発電を行なわず、電力の供給は、もっぱら蓄電池3が行なう。この蓄電池3からの電力の供給は、蓄電池3の残量が再び容量Xのように少なくなるまで継続する。この後は、これらの(i),(ii)の一連の動作を繰り返すように構成される。
【0023】
上記の(i)の場合に行なわれる発電原動機の発電は、一定負荷で、最も燃料効率の良い状態で実施されることが好ましい。これにより、発電原動機の燃料消費率が改善し、燃費性能が向上する。また、上記の(ii)の場合には、発電原動機の発電は停止するため、内燃機関を全く使用しない運転が可能となり、その際には振動騒音の軽減による船内居住環境の良化、メンテナンス業務の低減、簡素化など、昨今問題となっている船員不足によるハード的な問題に対する効果も期待できる。
【0024】
上述の主機関及び/又は蓄電池及び/又は船内負荷に電力を供給できる発電原動機は、船内に2台以上据え付けることが好ましい。この場合、第一発電原動機は、主機関及び/又は蓄電池及び/又は船内負荷に電力を供給するために優先的に使用され、第二発電原動機は、第一発電原動機の故障及び/又はメンテナンス時の代替の電力の供給源として、又は主機関の最大出力の80%以上で運転する高速航海時の主機関のアシスト電力の供給源として使用されることが好ましい。
【0025】
(常用航海時の制御)
図4は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの常用航海時の制御を概略的に示す。
図4では、エネルギーの流れが矢印で示されている。常用航海では、主機関1は、その最大出力の50%以上で運転され、主機関1は、運転によりそのエネルギーをクラッチを介して推進手段2に与える。従って、主機関1に必要な電力は比較的多く、主機関1及び船内負荷4への電力の供給は、蓄電池3の残量が前述の容量X以下のように少なくなった場合、
図4に示すように、蓄電池3から行なわず、発電原動機5からの電力で行なわれるように構成される。この発電原動機5からの電力の供給は、蓄電池3の残量が前述の容量Yのように十分になるまで継続する。そして、蓄電池3の残量が十分になった後は、
図3に示すように、発電原動機5は、停止され、主機関1及び船内負荷4は、発電原動機5から電力を供給されず、もっぱら蓄電池3が電力を供給する。常用航海時では、このような要領で上述の一連の動作(i),(ii)は、繰り返される。
【0026】
(低速航海時の制御)
図5は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの低速航海時の制御を概略的に示す。
図5では、エネルギーの流れが矢印で示されている。低速航海とは、10ノット以下、さらには3~10ノット程度の連力の航海を言う。低速航海は、一般に港内や湾内等の短距離航海で行なわれる。低速航海では、主機関1に必要な電力は比較的少なく、蓄電池の残量が前述の容量X以下のように少なくならない限り、
図5に示すように、発電原動機5は、停止するため、発電原動機5からの電力の供給はなく、主機関1及び船内負荷4の電力は、蓄電池3から供給されるように制御される。低速航海時では、このような要領で上述の一連の動作(i),(ii)は繰り返される。
【0027】
(停泊時の制御)
図6は、本発明の電池搭載型電気推進船舶システムの停泊時の制御を概略的に示す。
図6では、エネルギーの流れが矢印で示されている。停泊時には、船舶を推進する必要がないため、主機関1は使用されない。従って、発電原動機5は、蓄電池3の残量が前述の容量X以下のように少なくならない限り、
図6に示すように、停止し、船内負荷にのみ電力を供給するように制御されることができる。また、停泊時には、蓄電池3及び/又は船内負荷4は、陸上電源(図示せず)から電力を供給されることができる。停泊時では、このような要領で上述の一連の動作(i),(ii)は繰り返される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の電池搭載型電気推進船舶システムは、船舶の推進に関して内燃機関を用いずにもっぱら電動機で行なうようにしながら、蓄電池の残量や運航状況に応じて、発電原動機の運転と電力の供給を最も効率良く行なえるように制御しているので、省エネ効果が高く、維持コストの低い電気推進船舶を提供することができ、当業界において極めて有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 主機関
2 推進手段
3 蓄電池
4 船内負荷
5 発電原動機
6 発電機
CNV コンバーター
INV インバータ