(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141849
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】スラリーの製造方法及び排ガス浄化用触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B02C 17/16 20060101AFI20230928BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230928BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230928BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230928BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20230928BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B02C17/16 B
B01J37/00 A ZAB
B01J37/02 301D
B01J37/08
B01J23/63 A
B01J37/04 102
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048385
(22)【出願日】2022-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小原 恵津子
(72)【発明者】
【氏名】清水 理生
(72)【発明者】
【氏名】大久保 淳貴
【テーマコード(参考)】
4D063
4G169
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063FF35
4D063GA10
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4G169EB15Y
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4G169EB18Y
4G169FB05
4G169FB23
4G169FB30
4G169FB80
(57)【要約】
【課題】ミリング時間が短縮されたスラリーの製造方法を提供する。
【解決手段】ここで開示されるスラリーの製造方法は、第1無機酸化物粉末を含むスラリー製造用材料を準備する材料準備工程と、第1メディアを備える第1ミリング装置を用いて、スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下になるまで、スラリー製造用材料をミリングする第1ミリング工程と、第1ミリング工程後に、上記第1メディアよりも平均粒径が小さい第2メディアを備える第2ミリング装置を用いて、スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が1μm以下になるまで、スラリー製造用材料をミリングする第2ミリング工程と、を包含する。そして、さらに、第1ミリング工程前、または、第1ミリング工程後かつ第2ミリング工程前に、第2無機酸化物粉末をスラリー製造用材料に混合することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無機酸化物粉末と、該第1無機酸化物粉末よりも平均粒径の小さい第2無機酸化物粉末と、分散媒とを含むスラリーの製造方法であって、
前記第1無機酸化物粉末を含むスラリー製造用材料を準備する材料準備工程と、
第1メディアを備える第1ミリング装置を用いて、前記スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下になるまで、前記スラリー製造用材料をミリングする第1ミリング工程と、
前記第1ミリング工程後に、前記第1メディアよりも平均粒径が小さい第2メディアを備える第2ミリング装置を用いて、前記スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が1μm以下になるまで、前記スラリー製造用材料をミリングする第2ミリング工程と
を包含し、
さらに、前記第1ミリング工程前、または、前記第1ミリング工程後かつ前記第2ミリング工程前に、前記第2無機酸化物粉末を前記スラリー製造用材料に混合することを含む、スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記第1メディアの平均粒径が、1mm以上10mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2メディアの平均粒径が、0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2無機酸化物粉末の混合前において、前記第2無機酸化物粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1ミリング工程および前記第2ミリング工程で実施される粉砕の方式が、湿式粉砕である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2無機酸化物粉末の混合を、前記第1ミリング工程前に行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記第1ミリング装置と循環可能なように接続されたスラリータンクを準備し、前記スラリー製造用材料を、前記第1ミリング装置と前記スラリータンクとを循環させながらミリングを行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記スラリータンクと、前記第2ミリング装置とを循環可能なように接続し、前記スラリー製造用材料を、前記第2ミリング装置と前記スラリータンクとを循環させながらミリングを行う、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記スラリー製造用材料が、少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
内燃機関から排出される排ガスの浄化を行う排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
請求項9に記載の製造方法により、触媒層形成用スラリーを準備する工程と、
前記触媒層形成用スラリーを基材に塗布する工程と、
前記触媒層形成用スラリーが塗布された基材を焼成する工程と
を包含する、排ガス浄化用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーの製造方法及び排ガス浄化用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有毒な排ガス成分が含まれている。そのため、排ガス成分を酸化または還元反応によって浄化可能な触媒金属を有する排ガス浄化用触媒が、内燃機関からの排気経路に配置されている。
【0003】
排ガス浄化用触媒は、典型的には、排ガスの流通経路となる複数のセルを有するハニカム基材と、当該セル内に形成された、触媒金属を有する触媒層とを備える。一般的に、触媒層は、触媒金属と、当該触媒金属を担持する無機酸化物とを含むスラリーを基材に塗布し、乾燥、焼成をすることで形成される。例えば、特許文献1には、ウォッシュコートスラリーを製造するステップにおいて、触媒金属粉末と、ウォッシュコート材料としてのγ-Al2O3とをミリングし、かかるミリングの途中で、混合物(CeO2及びZrO2-CeO2)を添加することを含む、排ガス浄化用触媒の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、触媒スラリーを調製する工程において、湿式粉砕、乾式粉砕、または湿式粉砕と乾式粉砕とを組み合わせることで、所定の粒度分布の触媒粉末を含有する触媒スラリーを調製する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-88384号公報
【特許文献2】国際公開第2018-159214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、触媒スラリーの調製において、触媒スラリーに含まれる粉末を1μm以下程度まで粉砕するには、長時間のミリングが必要となる。ミリング時間が長いことで、生産性が悪くなるため、ミリング時間を短縮する技術が望まれている。ミリング時間の短縮のために、ミリングに使用するメディア(例えばビーズ)の直径を小さくし、粉末とメディアの接触頻度を増大させる方法があるが、本発明者の検討によれば、粉末に粗大粒子が存在することで、ミリング装置のメディアと粉末とを分離するためのスリットが詰まる場合があるという問題が見出された。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、ミリング時間が短縮されたスラリーの製造方法を提供することにある。また、他の目的は、かかるスラリーの製造方法を利用した排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示されるスラリーの製造方法は、第1無機酸化物粉末と、該第1無機酸化物粉末よりも平均粒径の小さい第2無機酸化物粉末と、分散媒とを含むスラリーの製造方法であって、上記第1無機酸化物粉末を含むスラリー製造用材料を準備する材料準備工程と、第1メディアを備える第1ミリング装置を用いて、上記スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下になるまで、上記スラリー製造用材料をミリングする第1ミリング工程と、上記第1ミリング工程後に、上記第1メディアよりも平均粒径が小さい第2メディアを備える第2ミリング装置を用いて、上記スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が1μm以下になるまで、上記スラリー製造用材料をミリングする第2ミリング工程と、を包含する。そして、さらに、上記第1ミリング工程前、または、上記第1ミリング工程後かつ上記第2ミリング工程前に、上記第2無機酸化物粉末を上記スラリー製造用材料に混合することを含むことを特徴とする。
かかる構成によれば、第1ミリングにより、第2ミリング装置のメディアと粉末とを分離するためのスリットが詰まり難いサイズになるまで粉末を微細化した後、第2ミリングを実施するため、ミリングの効率が向上し、総ミリング時間を短縮することができる。
【0008】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、上記第1メディアの平均粒径が、1mm以上10mm以下である。かかる構成によれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末を効率よく5μm以上13μm以下の平均粒径まで微細化することができるため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0009】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、上記第2メディアの平均粒径が、0.1mm以上0.5mm以下である。かかる構成によれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径を1μm以下にまで微細化し易いため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0010】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、上記第2無機酸化物粉末の混合前において、上記第2無機酸化物粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下である。かかる構成によれば、第2無機酸化物粉末による第2ミリング装置のスリット詰まりを抑制することができる。
【0011】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、上記第1ミリング工程および上記第2ミリング工程で実施される粉砕の方式が、湿式粉砕である。かかる構成によれば、スラリー製造用材料中の粉末が凝集するのを抑制でき、粉末の微細化効率が向上するため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0012】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、上記第2無機酸化物粉末の混合を、上記第1ミリング工程前に行う。かかる構成によれば、第1ミリングと第2ミリングとを連続して実行できるため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0013】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、さらに、上記第1ミリング装置と循環可能なように接続されたスラリータンクを準備し、上記スラリー製造用材料を、上記第1ミリング装置と上記スラリータンクとを循環させながらミリングを行う。かかる構成によれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径をモニターしながら第1ミリングを実施することができるため、第1ミリングから第2ミリングへの切替を適切なタイミングで行うことができる。これにより、ミリング時間をより短縮することができる。
【0014】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の好ましい一態様では、上記スラリータンクと、上記第2ミリング装置とを循環可能なように接続し、上記スラリー製造用材料を、上記第2ミリング装置と上記スラリータンクとを循環させながらミリングを行う。かかる構成によれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径をモニターしながら連続してミリングすることができる。これにより、過剰なミリングを防ぐことができるため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0015】
また、ここで開示されるスラリーの製造方法の一態様では、上記スラリー製造用材料が、少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属を含む。これにより、排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーを製造することができる。
【0016】
また、本開示により、排ガス浄化用触媒の製造方法が提供される。ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法は、内燃機関から排出される排ガスの浄化を行う排ガス浄化用触媒の製造方法であって、ここで開示されるスラリーの製造方法により、触媒層形成用スラリーを準備する工程と、上記触媒層形成用スラリーを基材に塗布する工程と、上記触媒層形成用スラリーが塗布された基材を焼成する工程と、を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るスラリーの製造方法の大まかな工程を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態に係るスラリーの製造装置の構成を示す模式図である。
【
図3】第2実施形態に係るスラリーの製造方法の大まかな工程を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法の大まかな工程を示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図6】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の筒軸方向に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図7】実施例1、実施例2、比較例1、および参考例におけるスラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)と、ミリング時間との関係についてのグラフである。
【
図8】実施例3、比較例2におけるスラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)と、ミリング時間との関係についてのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しつつ、ここで開示される技術について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において、数値範囲を「A~B(ここでA、Bは任意の数値)」と記載している場合は、「A以上B以下」を意味すると共に、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」の意味を包含する。
【0019】
ここで開示されるスラリーの製造方法は、第1無機酸化物粉末と、該第1無機酸化物粉末よりも平均粒径の小さい第2無機酸化物粉末と、分散媒とを含むスラリーの製造方法である。ここで開示されるスラリーの製造方法の一態様では、第1無機酸化物粉末を含むスラリー製造用材料を準備する材料準備工程と、第1メディアを備える第1ミリング装置を用いて、スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下になるまで、スラリー製造用材料をミリングする第1ミリング工程と、第1ミリング工程後に、第1メディアよりも平均粒径が小さい第2メディアを備える第2ミリング装置を用いて、スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が1μm以下になるまで、上記スラリー製造用材料をミリングする第2ミリング工程とを含む。また、第1ミリング工程前、または、第1ミリング工程後かつ第2ミリング前に、第2無機酸化物粉末をスラリー製造用材料に混合することを特徴とする。
【0020】
本技術によれば、第1ミリングにより、第2ミリング装置のメディアと粉末とを分離するためのスリットが詰まり難いサイズになるまで粉末を微細化した後、第2ミリングを実施することで、ミリングの効率が向上し、総ミリング時間を短縮することができる。また、第1ミリングを終えるタイミングを、スラリー製造用材料に含まれる粉末のレーザ回折・動乱法に基づく平均粒径が5μm以上13μm以下になったときとすることで、第1ミリングのミリング効率が著しく低下する前に第2ミリングに切り替えることができるため、総ミリング時間を短縮することができる。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るスラリーの製造方法の大まかな工程を示すフローチャートである。かかる実施形態は、材料準備工程S11と、第1ミリング工程S12と、第2ミリング工程S13とを含む。
【0022】
材料準備工程S11では、少なくとも第1無機酸化物粉末を含むスラリー製造用材料を準備する。第1実施形態では、第1無機酸化物粉末と第2無機酸化物粉末とを含むスラリー製造用材料を準備する。なお、ここで準備する第1無機酸化物粉末および第2無機酸化物粉末は、製造されるスラリーに含まれる粉末成分の原料である。
【0023】
ここで準備される第1無機酸化物粉末(即ちミリング前)は、準備される第2無機酸化物粉末(ミリング前)よりも平均粒径が大きいものが使用される。かかる第1無機酸化物粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば、15μm~150μmであって、20μm~80μmであってよく、30μm~60μmであってもよい。なお、本明細書において、特にことわりのない限り、「平均粒径」は、レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布における積算50%粒径(D50)のことをいう。
【0024】
第1無機酸化物粉末の種類は特に限定されず、スラリーの使用用途にあわせ、適宜変更することができる。例えば、排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーである場合には、触媒金属を担持可能な無機酸化物や、酸素を吸蔵・放出可能な酸素ストレージ能(OSC:oxygen storage capacity)を有する無機酸化物(いわゆるOSC材)等が好適に用いられる。触媒金属を担持可能な無機酸化物としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等が挙げられる。また、イットリア(Y2O3)等の希土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物等であり得る。OSC材としては、例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物)等が挙げられる。また、例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)その他の希土類元素を含む酸化物が微量添加されたセリア、セリア-ジルコニア複合酸化物等のOSC材を好ましく採用することができる。
【0025】
準備される第2無機酸化物粉末(即ちミリング前)の平均粒径は、準備される第1無機酸化物粉末の平均粒径よりも小さいものが使用される。かかる第2無機酸化物粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~50μmであって、3μm~30μmであってよく、5μm~13μmであってもよい。
【0026】
第2無機酸化物粉末の種類は、特にスラリーの使用用途にあわせ、適宜変更することができる。例えば、排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーである場合には、上述の第1無機酸化物粉末で例示したもののいずれかであってよい。排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーの一好適例では、第1無機酸化物粉末として、触媒金属を担持可能な無機酸化物(例えばアルミナ)が採用され、第2無機酸化物粉末として、OSC材(例えばCZ複合酸化物)が採用される。
【0027】
スラリー製造用材料は、典型的には、分散媒を含む。分散媒を含むことで、ミリングとして、湿式粉砕を実施することができる。かかる分散媒としては、例えば、水、脱イオン水などの水系溶媒が好ましく採用される。スラリー製造用材料全体における分散媒の割合は、例えば、スラリー製造用材料の10wt%~90wt%であってよく、好ましくは25wt%~75wt%であり、より好ましくは40wt%~60wt%である。
【0028】
また、分散媒を100wt%としたとき、第1無機酸化物粉末の割合は、特に限定されるものではないが、例えば、10wt%~90wt%であってよく、20wt%~70wt%であってよく、30wt%~50wt%であってよい。また、分散媒を100wt%としたとき、第2無機酸化物粉末の割合は、特に限定されるものではないが、例えば、10wt%~90wt%であってよく、20wt%~70wt%であってよく、30wt%~50wt%であってよい。
【0029】
スラリー製造用材料は、さらに、その他成分を含み得る。例えば、排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーである場合には、その他成分として、少なくとも一種の排ガス成分を酸化若しくは還元し得る触媒として機能する触媒金属や、助触媒、バインダ、分散剤、増粘剤等が挙げられる。触媒金属としては、例えばパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)等の白金族元素に属する金属あるいはその他の酸化若しくは還元触媒として機能する金属が挙げられる。PdおよびPtは、一酸化炭素および炭化水素の浄化性能(酸化浄化能)に優れ、RhはNOxの浄化性能(還元浄化能)に優れるため、これらは三元触媒として特に好ましい触媒金属である。触媒金属は、粉末として混合されてもよく、焼成後に触媒金属粒子を生成する原料化合物(例えば硝酸Pd、硝酸Rhのような水溶性の金属塩)として混合されていてもよい。助触媒成分としては、例えば、硫酸バリウムが例示される。バインダとしては、アルミナゾルやシリカゾルが例示される。
【0030】
第1ミリング工程S12では、第1メディアを備える第1ミリング装置を用いて、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径が所定の範囲になるまでミリングを実施する。かかる所定の範囲としては、5μm以上13μm以下が好ましく、10μm以上13μm以下がより好ましい。かかる粉末の平均粒径が13μm以下であれば、第2ミリング工程S13で用いる第2ミリング装置のスリット詰まりが生じ難くなる。また、より早いタイミングで平均粒径がより小さいメディアによるミリングを実施して、総ミリング時間を短縮する観点から、かかる粉末の平均粒径は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0031】
第1ミリング装置としては、ボールミル、ビーズミル等が例示されるが、ビーズミルが好ましく採用される。ビーズミルは、ボールミルよりも粉砕力が高いため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0032】
第1ミリング装置が備える第1メディアの平均粒径は、例えば、1mm~10mmが好ましく、1mm~3mmがより好ましく、1mm~2mmがさらに好ましい。かかる平均粒径であれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末を、効率よく所定の平均粒径まで微細化することができる。なお、第1メディアの平均粒径は、市販されているメディアの直径の値を採用することもできる。
【0033】
第1メディアの材質としては、特に限定されず、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール等が挙げられる。
【0034】
第1ミリング装置の粉砕の方式は、特に限定されず、乾式粉砕、湿式粉砕等が例示されるが、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕であれば、粉末が凝集するのを抑制でき、粉末の微細化効率が向上するため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0035】
第1ミリング装置がビーズミルである場合、ビーズミルの撹拌構造(アジテータ)の種類は、特に限定されるものではなく、ディスク型、ピン型、アニュラー型などが例示される。また、ビーズミルの粉砕室(ベッセル)の向きは特に限定されず、例えば、竪型であってよく、横型であってよい。
【0036】
第1ミリング装置の運転方式としては、循環運転、パス運転、バッチ運転などが例示されるが、循環運転が好ましく採用される。循環運転であれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径をモニターしながら第1ミリングを実施することができるため、第1ミリングから第2ミリングへの切替を適切なタイミングで行うことができる。これにより、ミリング時間をより短縮することができる。
【0037】
第2ミリング工程S13では、第2メディアを備える第2ミリング装置を用いて、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径を1μm以下(例えば0.1μm~0.6μm)になるまでミリングを実施する。第2ミリング装置に供給されるスラリー製造用材料に含まれる粉末は、第1ミリングにより、所定の平均粒径の範囲内となるよう微細化されている。そのため、第2ミリング装置のスリット詰まりが抑制される。
【0038】
第2ミリング装置としては、ボールミル、ビーズミル等が例示されるが、ビーズミルが好ましく採用される。ビーズミルは、ボールミルよりも粉砕力が高いため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0039】
第2ミリング装置が備える第2メディアの平均粒径は、例えば、0.1mm~0.5mmが好ましい。かかる平均粒径であれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径を1μm以下にまで微細化し易い。なお、第2メディアの平均粒径は、市販されているメディアの直径の値を採用することもできる。
【0040】
第2メディアの材質としては、特に限定されず、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール等が挙げられる。
【0041】
第2ミリング装置の粉砕の方式は、特に限定されず、乾式粉砕、湿式粉砕等が例示されるが、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕であれば、粉末が凝集するのを抑制でき、粉末の微細化効率が向上するため、ミリング時間をより短縮することができる。また、第1ミリング装置と第2ミリング装置の粉砕の方式をいずれも湿式粉砕とすることで、第1ミリングと第2ミリングとを連続して実施することができるため、スラリー製造時間を短縮することができる。
【0042】
第2ミリング装置がビーズミルである場合、ビーズミルの撹拌構造(アジテータ)の種類は、特に限定されるものではなく、ディスク型、ピン型、アニュラー型などが例示される。また、ビーズミルの粉砕室(ベッセル)の向きは特に限定されず、例えば、竪型であってよく、横型であってよい。
【0043】
第2ミリング装置の運転方式としては、循環運転、パス運転、バッチ運転などが例示されるが、循環運転が好ましく採用される。循環運転であれば、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径をモニターしながら連続してミリングすることができる。これにより、過剰なミリングを防ぐことができるため、ミリング時間をより短縮することができる。
【0044】
以上、一実施形態における製造方法について説明したが、ここで開示される製造方法は、任意の段階でさらにほかの工程を含んでいてもよい。例えば、第2ミリング工程S13の後に、製造されたスラリーに任意の成分を混合してもよい。任意の成分としては、例えば、バインダ、酸化防止剤、分散剤、増粘剤等が例示される。また、排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーである場合には、さらに、焼成後に触媒金属粒子を生成する原料化合物や、助触媒等を混合してもよい。
【0045】
図2は、一実施形態に係るスラリー製造装置の構成を示す模式図である。本技術は、例えば、図示されるスラリー製造装置100を用いて実施することができる。本実施形態では、スラリー製造装置100は、スラリータンク110と、ポンプ120と、第1ミリング装置140と、第2ミリング装置150とを備える。また、本実施形態におけるスラリー製造装置100は、切替要素130を備えている。スラリータンク110は、パイプ131を介してポンプ120と接続されている。ポンプ120は、パイプ132を介して切替要素130と接続されている。切替要素130は、パイプ133を介して第1ミリング装置140と接続され、第1ミリング装置140はパイプ134を介してスラリータンク110と接続されている。このようにして、スラリータンク110と第1ミリング装置140とが循環可能なように接続され、第1ミリング装置140の循環運転が実現される。また、図示されるように、切替要素130は、パイプ135を介して第2ミリング装置150と接続されており、第2ミリング装置150は、パイプ136を介してスラリータンク110と接続されている。このようにして、スラリータンク110と第2ミリング装置150とが循環可能なように接続され、第2ミリング装置150の循環運転が実現される。切替要素130は、パイプ133との接続と、パイプ135との接続とを切替可能なように構成されており、スラリータンク110を第1ミリング装置140または第2ミリング装置150のいずれかに接続するかを切り替えることができる。なお、
図2中の矢印は、スラリー製造用材料30が流通可能な方向を示している。
【0046】
スラリータンク110は、スラリー製造用材料30を貯蔵するためのタンクである。スラリータンク110は、撹拌翼112を備えており、スラリータンク110中のスラリー製造用材料を撹拌することができる。
【0047】
ポンプ120は、スラリー製造用材料30を循環させる動力源として機能し、スラリータンク110と第1ミリング装置140または第2ミリング装置150との循環運転を実現させることができる。本実施形態では、ポンプ120は切替要素130の前に1台設置されているが、例えば、切替要素130と第1ミリング装置140との間に1台、切替要素130と第2ミリング装置150との間に1台設置されてもよい。
【0048】
切替要素130は、任意に設置される要素であり、必須の構成ではない。切替要素130を備えることで、第1ミリングと第2ミリングとの切替がスムーズになり、結果として、ミリング時間を短縮することができる。切替要素130としては、例えば、切替バルブを用いることができる。なお、切替要素130を設置する代わりに、手動でパイプの接続を変更し、スラリータンク110と第1ミリング装置140との循環経路を、第2ミリング装置150との循環経路へ変更してもよい。
【0049】
本実施形態では、第1ミリング装置140と第2ミリング装置150の2台が並列に設置されている。これにより、第1ミリング工程S12と第2ミリング工程13とを連続して実施することができるため、スラリー製造時間の短縮に寄与することができる。なお、第1ミリング装置140は第1ミリング工程S12に用いる装置であり、上述したものと同様であればよい。また、第2ミリング装置150は、第2ミリング工程S13に用いる装置であり、上述したものと同様であればよい。
【0050】
スラリー製造装置100では、第1ミリング工程S12または第2ミリング工程S13を実施しながら、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径をモニターすることができる。例えば、スラリータンク110内のスラリー製造用材料の一部を適宜採取してもよく、インラインで粒径をモニターしてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係るスラリーの製造方法の大まかな工程を示すフローチャートである。第2実施形態は、材料準備工程S21と、第1ミリング工程S22と、第2無機酸化物粉末添加工程S23と、第2ミリング工程S24とを含む。上述した第1実施形態では、第1ミリング工程S12より前の材料準備工程S11において、第1無機酸化物粉末と、第2無機酸化物粉末とを含むスラリー製造用材料を準備した。一方で、第2実施形態では、材料準備工程S21で第1無機酸化物粉末を含むスラリー製造用材料を準備し、第1ミリング工程S22後、かつ、第2ミリング工程S24より前に、第2無機酸化物粉末をスラリー製造用材料に混合する。これにより、第1無機酸化物粉末よりも平均粒径の小さい第2無機酸化物粉末を過剰に微細化することを抑制することができる。なお、第2実施形態の材料準備工程S21は、第2無機酸化物粉末以外の事項は、上述の材料準備工程S11と同様であってよい。また、第1ミリング工程S22は上述の第1ミリング工程S12と同様であってよく、第2ミリング工程S24は、上述の第2ミリング工程S13と同様であってよい。
【0052】
第2実施形態においては、第2無機酸化物粉末に対して第1ミリングを実施しないため、第2ミリングにおける第2ミリング装置のスリット詰まり防止の観点から、第2無機酸化物粉末の平均粒径は5μm~13μmであることが好ましい。
【0053】
ここで開示されるスラリーの製造方法は、内燃機関から排出される排ガスの浄化を行う排ガス浄化用触媒の触媒層形成用スラリーの製造方法として好適に採用される。そこで、本開示では、ここで開示されるスラリーの製造方法を含む排ガス浄化用触媒の製造方法が提供される。
【0054】
図4は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法の大まかな工程を示すフローチャートである。ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法は、触媒層形成用スラリーを準備する工程(以下、「スラリー準備工程S31」ともいう)と、当該触媒層形成用スラリーを基材に塗布する工程(以下、「塗布工程S32」ともいう)と、当該触媒層形成用スラリーが塗布された基材を焼成する工程(以下、「焼成工程S34」ともいう)とを包含する。また、
図4に示すように、当該触媒層形成用スラリーが塗布された基材を乾燥する乾燥工程S33を含み得る。また、ここで開示される排ガス浄化用触媒は、任意の段階でさらにほかの工程を含んでいてもよい。
【0055】
スラリー準備工程S31は、ここで開示されるスラリーの製造方法によって触媒層形成用スラリーを準備すればよい。触媒層形成用スラリーは、平均粒径1μm以下の粉末を含むため、典型的には、多孔質な隔壁の内部の触媒層の形成に好適に用いられるが、隔壁の表面の触媒層の形成にも用いることができる。
【0056】
塗布工程S32では、排ガス浄化用触媒の骨組みを構成する基材に触媒層形成スラリーを塗布する。
図5は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の構成を模式的に示す斜視図である。
図6は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒1の筒軸方向に沿った断面を模式的に示す図である。図中の符号Aは、排ガスの流通方向Aを示している。ここで準備される基材としては、
図5に示すような、排ガスの流通方向Aに沿って伸びる円筒形の基材10であり得る。基材10は、流体(例えば排ガス)の流路となるセルが複数集合したハニカム構造を有し得る。なお、基材の外形は、円筒形に限定されず、楕円筒形、多角筒形などであってもよい。また、基材10の全長や容量も、特に限定されず、内燃機関の性能やの寸法等に応じて適宜変更することができる。また、基材10は、排ガス浄化用触媒の基材に使用され得る従来公知の素材を特に制限なく使用できる。かかる基材10の素材の一例として、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウムなどのセラミックや、ステンレス鋼などの合金に代表されるような高耐熱性素材が挙げられる。例えば、コージェライトは、熱衝撃に対する耐久性に優れているため、高温の排ガスが供給されやすいガソリンエンジン用の排ガス浄化用触媒の基材の素材として特に好適に使用できる。
【0057】
基材10は、
図6に示されるような、ウォールフロー型の基材であり得る。具体的には、
図5および6に示すように、基材10は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル12と、排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル14と、入側セル12と出側セル14とを仕切る多孔質な隔壁16とを備えている。具体的には、入側セル12は、排ガス流入側の端部が開口し、かつ、排ガス流出側の端部が封止部12aで塞がれたガス流路である。一方、出側セル14は、排ガス流入側の端部が封止部14aで塞がれ、かつ、排ガス流出側の端部が開口したガス流路である。また、隔壁16は、排ガスが通過可能な細孔が複数形成された仕切り材である。この隔壁16は、入側セル12と出側セル14とを連通させる細孔を複数有している。なお、
図5に示される排ガス浄化用触媒1では、隔壁16の延伸方向(筒軸方向X)に垂直な断面における入側セル12(出側セル14)の形状が正方形である。しかし、延伸方向に垂直な断面における当該入側セル(出側セル)の形状は、正方形に限定されず、種々の形状を採用できる。例えば、平行四辺形、長方形、台形などの矩形状、三角形状、その他の多角形状(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状であってもよい。
【0058】
基材10の隔壁16は、粒子状物質(PM:Particulate Matter)の捕集性能や圧損抑制性能などを考慮して形成されていることが好ましい。例えば、隔壁16の厚みは、100μm~350μm程度が好ましい。さらに、隔壁16の気孔率は、20体積%~70体積%程度が好ましく、50体積%~70体積%がより好ましい。また、隔壁16の通気性を十分に確保して圧損の増大を抑えるという観点から、細孔の平均細孔径は、8μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。一方、適切なPM捕集性能を確保するという観点から、細孔の平均細孔径の上限値は、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。なお、隔壁16の気孔率および平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値のことをいう。
【0059】
なお、基材はウォールフロー型に限られず、複数の貫通孔が集合した、所謂ストレートフロー型の基材であってもよい。
【0060】
基材10への触媒層形成用スラリーの塗布方法は、従来この種の技術で実施されているものと同様であってよく、例えば、ウォッシュコート法や、吸引コート法等が挙げられる。ウォッシュコート法では、基材10を触媒層形成用スラリーに浸漬させた後に、基材10を取り出して、過剰なスラリーをエアブローで除去することにより触媒層形成用スラリーを塗布することができる。また、吸引コート法では、基材10の端部に触媒層形成用スラリーを供給し、他方の端部から吸引することによってスラリーを基材10の内部に引き込むことで、触媒層形成用スラリーを塗布することができる。なお、このとき、触媒層形成用スラリーを浸漬する範囲の調整や、吸引時間の調整を行うことにより、形成される触媒層20の配置を調整することができる。
【0061】
また、触媒層形成用スラリーの粘度によって、触媒層の厚みを適宜調整することができ、例えば、市販されるコーンプレート型粘度計を用いて、回転数1~100rpm、室温(25℃)、せん断速度380s-1において測定した粘度が10mPa~1000mPa程度であることが適当である。
【0062】
乾燥工程S33は、従来この種の技術で実施されている乾燥と同様の条件で実施することができ、特に限定されない。例えば、50℃~200℃の温度で、1分~30分程度で乾燥を行うことができる。
【0063】
焼成工程S34は、従来この種の技術で実施されている焼成と同様の条件で実施することができ、特に限定されない。例えば、400℃~1000℃の温度で、30秒~5時間程度の焼成を行うことができる。
【0064】
このようにして、例えば、
図6に示すような排ガス浄化用触媒1を製造することができる。
図6に示す排ガス浄化用触媒1では、隔壁16の内部に触媒層20が形成されており、隔壁16の筒軸方向Xの全長および筒軸方向Xと直交する隔壁16の厚み全体にわたって触媒層20が形成されているが、これは一例に過ぎず、製造される排ガス浄化用触媒はこれに限られない。例えば、触媒層20は、隔壁16の表面に形成されていてもよい。また、触媒層20は、隔壁16の筒軸方向Xの全長に対して所定の割合(例えば10%~90%)で形成されてもよい。さらに、排ガス浄化用触媒1は、触媒層20と異なる組成を有する第2の触媒層を触媒層20とは異なる位置に備えていてもよい。
【0065】
排ガス浄化用触媒1は、触媒層20の組成によって様々な用途で使用することができ、例えば、三元触媒、NOx触媒、酸化触媒、還元(SCR)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)として使用することができる。
【0066】
以下、ここで開示される技術に関するいくつかの実施例について説明するが、ここで開示される技術をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0067】
(試験1)
[スラリー製造用材料の準備]
アルミナ粉末(平均粒径:約32μm)と、セリア-ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)粉末(平均粒径:約12.8μm)と、硝酸Pdと、水とを混合し、スラリー製造用材料を準備した。かかるスラリー製造用材料は、質量比において、アルミナ粉末:CZ複合酸化物粉末:硝酸Rh:水=20:23:2:55で構成されるように調製した。かかるスラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D50)をレーザ回折・動乱法に基づく粒度分布測定装置で測定した結果を、初期粒径として表1に示す。かかるスラリー製造用材料を用いて、以下の実施例1、2、比較例1、参考例におけるミリングを実施した。なお、製造するスラリーは、平均粒径(D50)が0.6μm以下の粉末を含むスラリーとした。
【0068】
<実施例1>
第1ミリング用のミリング装置として、直径1mmのジルコニアビーズ(第1メディア)を備える第1ビーズミルを準備した。また、第2ミリング用のミリング装置として、直径0.5mmのジルコニアビーズ(第2メディア)を備える第2ビーズミルを準備した。さらに、上記準備したスラリー製造用材料が充填されたスラリータンクを準備した。このスラリータンクを、充填されたスラリー製造用材料が循環可能なように第1ビーズミルと接続した。また、同様に、スラリータンクを、充填されたスラリー製造用材料が循環可能なように第2ビーズミルと接続した。なお、スラリータンクと第1ビーズミルとの循環経路と、スラリータンクと第2ビーズミルとの循環経路との切替ができるように切替バルブを配置した。まず、スラリー製造用材料をスラリータンクから第1ビーズミルへ供給し、第1ミリングを実施した。スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)が12.88μmになるまで第1ミリングを実施した後、第2ビーズミルとの循環経路に切り替え、第2ミリングを実施した。第2ミリングは、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)が0.6μmになるまで実施した。このようにして、スラリーを調製した。なお、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径は、ミリング中のスラリー製造用材料の一部を回収し、レーザ回折・動乱法に基づく粒度分布測定装置で測定した。
図7に、平均粒径(D
50)と、ミリング時間との関係についてのグラフを示す。なお、後述の各例についても同様に、結果を
図7に示す。また、表1に、ミリング条件、第1ミリング終了時におけるスラリー製造用材料に含まれる粉末の粒度分布に基づく粒径、および、第2ミリング終了時における平均粒径(D
50)の結果を示す。なお、後述の各例についても同様に表1にミリング条件および結果を示す。
【0069】
<実施例2>
実施例1のうち、第1ミリングから第2ミリングへの切替のタイミングを、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D50)が5μmになった時に変更した以外は同様にして、スラリーを調製した。
【0070】
<比較例1>
実施例1のうち、第1ミリングから第2ミリングへの切替のタイミングを、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D50)が15.12μmになった時に変更した以外は同様に実施した。しかしながら、第2ビーズミルにスリット詰まりが発生したため、第2ミリングを途中で中断した。
【0071】
<参考例>
第1ビーズミルにより、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D50)が0.5μmになるまでミリングを実施し、スラリーを調製した。即ち、参考例では、直径1mmのジルコニアビーズを備える1台のビーズミルで、スラリーを調製した。
【0072】
【0073】
図7および表1に示すように、1mmのビーズを備えるビーズミル1台で所定の平均粒径(ここでは0.5mm)になるまでミリングした参考例と比較して、1mmのビーズを備える第1ビーズミルと、0.5mmのビーズを備える第2ビーズミルの2台を使用した実施例1、2の方が、総ミリング時間が著しく短縮されることがわかる。しかしながら、比較例1のように、第1ミリングから第2ミリングに切り替える際に、スラリー製造用材料中の粉末の平均粒径が大きすぎる場合には、第2ビーズミルにスリット詰まりが発生してしまった。そのため、実施例1、2に示されるように、第1ミリングから第2ミリングへ切り替えるタイミングは、第1ミリングによりスラリー製造用材料中の粉末の平均粒径が5μm~13μmとなるまでミリングしたときが適切であることがわかる。
【0074】
(試験2)
<実施例3>
[スラリー製造用材料の準備]
アルミナ粉末(平均粒径:約32μm)と、水とを混合し、スラリー製造用材料を準備した。かかるスラリー製造用材料は、質量比において、アルミナ粉末:水=20:55で構成されるように調製した。かかるスラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D50)をレーザ回折・動乱法に基づく粒度分布測定装置で測定した結果を、初期粒径として表2に示す。かかるスラリー製造用材料を用いて、以下の実施例3、比較例2におけるミリングを実施した。なお、製造するスラリーは、平均粒径(D50)が0.6μm以下の粉末を含むスラリーとした。
【0075】
<実施例3>
実施例1と同じ第1ビーズミルおよび第2ビーズミルと、上記準備したスラリー製造用材料が充填されたスラリータンクとを準備した。このスラリータンクを、スラリー製造用材料が循環可能なように第1ビーズミルと接続した。また、同様に、スラリータンクを、充填されたスラリー製造用材料が循環可能なように第2ビーズミルと接続した。なお、スラリータンクは、第1ビーズミルとの循環経路と、第2ビーズミルとの循環経路とを所望のタイミングで切替可能なように構成した。まず、スラリー製造用材料をスラリータンクから第1ビーズミルへ供給し、第1ミリングを実施した。スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)が10.40μmになるまで第1ミリングを実施した。その後、第1ミリング後のスラリー製造用材料に、CZ複合酸化物粉末(平均粒径:約12.8μm)を添加し、質量比において、アルミナ粉末:CZ複合酸化物粉末:水=20:25:55となるようにした。CZ酸化物添加後のスラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)は、11.76μmであった。次に、第2ビーズミルとの循環経路に切り替え、第2ミリングを実施した。第2ミリングは、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)が0.6μmになるまで実施した。このようにして、スラリーを調製した。なお、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径は、ミリング中のスラリー製造用材料の一部を回収し、レーザ回折・動乱法に基づく粒度分布測定装置で測定した。
図8に、平均粒径(D
50)と、ミリング時間との関係についてのグラフを示す。なお、
図8において、ミリング時間34分でプロットが2点あるのは、CZ複合酸化物の混合前後を示しており、CZ複合酸化物混合後の方が、平均粒径が大きくなっていることを示す。また、表2に、ミリング条件、第1ミリング終了時(CZ複合酸化物混合前)におけるスラリー製造用材料に含まれる粉末の粒度分布に基づく粒径、および、第2ミリング終了時における平均粒径(D
50)の結果を示す。
【0076】
<比較例2>
参考例と同様に、第1ビーズミルのみを用いてミリングを実施した。上記スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)が9.8μmになるまでミリングを実施した後、スラリー製造用材料に、CZ複合酸化物を添加し、質量比において、アルミナ粉末:CZ複合酸化物:水=20:25:55となるようにした。そして、第1ビーズミルを用いたミリングを続けて実施し、スラリー製造用材料に含まれる粉末の平均粒径(D
50)が0.58μmになるまで実施した。結果を
図8および表2に示す。なお、比較例2においては、CZ複合酸化物粉末を混合した後の第1ビーズミルによるミリングを第2ミリングとして呼称して示している。
【0077】
【0078】
表2および
図8からわかるように、アルミナ粉末よりも平均粒径の小さいCZ複合酸化物を第1ミリング後に混合した場合であっても、第2ミリングにおいて、第1ミリングで用いたビーズよりも小さいビーズを用いることで、総ミリング時間が短くなることがわかる。
【0079】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 排ガス浄化用触媒
10 基材
12 入側セル
12a 封止部
14 出側セル
14a 封止部
16 隔壁
20 触媒層
30 スラリー製造用材料
100 スラリー製造装置
110 スラリータンク
112 撹拌翼
120 ポンプ
130 切替要素
131、132、133、134、135、136 パイプ
140 第1ミリング装置
150 第2ミリング装置