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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141850
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電気機械変換器
(51)【国際特許分類】
   H04R 11/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H04R11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048386
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 行志
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 史考
(72)【発明者】
【氏名】石川 愼一
(72)【発明者】
【氏名】古山 慶
【テーマコード(参考)】
5D021
【Fターム(参考)】
5D021AA04
5D021AA11
(57)【要約】
【課題】大型の電気機械変換器にてアーマチュアを適切に変位させる技術の提供。
【解決手段】電気機械変換器100は、1対のヨーク110、2対の磁石120、コイル130等が一体的に配置された構造部と、その内部空間を貫くアーマチュア140と、構造部とアーマチュア140との間に配置される2対のバネ150とで構成される。アーマチュア140の2つの腕部は貫通孔を有しており、各貫通孔に対し上下の両側から1つずつブッシュ142が固定され、これらの中心部にシャフト144が通されて各ブッシュ142の外側にコイルバネ150が配置された状態でシャフト144の両端部が上下の押さえ板160に固定される。コイル130に交流電流を流すとアーマチュア140は上下に交互に変位して振動するが、ブッシュ142が設けられているため、アーマチュア140の動きをシャフト144の軸方向のみに規制でき、意図しない方向へのふらつきを防止できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、対をなす磁石と、対をなし前記磁石による磁束を導くヨークと、空芯のコイルと、複数のシャフトとが一体的に配置された構造部と、
所定の方向の両端部に突出した腕部と前記腕部に穿孔された孔とを有し、前記構造部の内部空間に配置されたアーマチュアと、
対をなし、各々が前記孔に配置された所定の部材の外周側に配置されて前記構造部と前記腕部とに接合した弾性部材と
を備えた電気機械変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記複数のシャフトは、
少なくとも一部のシャフトが前記孔を貫通し、
前記弾性部材は、
前記一部のシャフトの外周側に配置されることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機械変換器において、
前記孔に固定されたブッシュをさらに備え、
前記一部のシャフトは、
前記ブッシュの中心部を貫通し、
前記弾性部材は、
前記ブッシュの中心部を貫通した前記シャフトの外周側に配置されることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項4】
請求項1に記載の電気機械変換器において、
前記腕部に固定された、及び又は前記構造部に固定された、柱状又は筒状に形成されたガイド部材をさらに備え、
前記弾性部材は、
前記ガイド部材の外周側又は内周側に配置されることを特徴とする電気機械変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器に関し、特に、いわゆるバランスドアーマチュア型の電気機械変換器のうち、アーマチュアに係合させるバネの復元力を利用する構造を有した電気機械変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気機械変換器においては、板バネの復元力を利用していた。例えば、ヨーク、磁石、コイルが一体的に配置された構造部とアーマチュアとの間に2対の板バネが配置された電気機械変換器(特許文献1を参照。)や、1対の板バネが配置された電気機械変換器(特許文献2を参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-139041号公報
【特許文献2】特開2018-186378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した先行技術の構造は、電気機械変換器が小型の場合に特に有効であるが、電気機械変換器が大型化し、アーマチュアの変位量が数ミリメートル以上に大きくなると、それに応じたバネの設計が必要となる。しかしながら、板バネを使用する場合には、大きな変位を可能とするバネの設計は容易ではない。また、上述した構造の場合には、構成部品や組立具合の若干の非対称又は負荷の非対称等によって生じる、アーマチュアの意図した方向以外への変位が無視できなくなる。
【0005】
本発明は、これらの課題を鑑みてなされたものであり、大型の電気機械変換器においてアーマチュアを適切に変位させる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の電気機械変換器を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
本発明の電気機械変換器は、少なくとも、対をなす磁石と、対をなし磁石による磁束を導くヨークと、空芯のコイルと、複数のシャフトとが一体的に配置された構造部と、所定の方向の両端部に突出した腕部と腕部に穿孔された孔とを有し、構造部の内部空間に配置されたアーマチュアと、対をなし、各々が孔に配置された所定の部材の外周側に配置されて構造部と腕部とに接合した弾性部材とを備えている。
【0008】
この態様の電気機械変換器によれば、アーマチュアが有する腕部の孔に所定の部材が配置されており、弾性部材(例えば、コイルバネや板バネ)が所定の部材の外周側に配置されて構造部と腕部とに接合しているため、磁石からの吸引力と弾性部材からの反発力とを受けて変位するアーマチュアを所定の部材の中心軸の方向に沿って変位させ、アーマチュアが意図しない方向に変位するのを防止することができ、振動方向のブレ(変動)の小さい振動を得ることができる。
【0009】
好ましくは、上記の電気機械変換器において、複数のシャフトのうち少なくとも一部のシャフトは、孔を貫通し、弾性部材は、一部のシャフトの外周側に配置される。
【0010】
この態様の電気機械変換器においては、アーマチュアが有する腕部の孔を一部のシャフトが貫通し、その外周側に弾性部材が配置されるため、アーマチュアの動きをシャフトの軸方向のみに規制することができ、振動方向のブレ(変動)の小さい振動を得ることができる。
【0011】
より好ましくは、上記の電気機械変換器において、孔に固定されたブッシュをさらに備え、一部のシャフトは、ブッシュの中心部を貫通し、弾性部材は、ブッシュの中心部を貫通したシャフトの外周側に配置される。
【0012】
この態様の電気機械変換器においては、アーマチュアが有する腕部の孔にブッシュが固定されており、その中心部を一部のシャフトが貫通しているため、アーマチュアの動きをシャフトの軸方向のみに確実に規制することができるとともに、アーマチュアの動きをより滑らかにすることができ、振動方向のブレ(変動)の小さい振動を得ることができる。
【0013】
さらに好ましくは、上記の電気機械変換器において、腕部に固定された、及び又は構造部に固定された、柱状又は筒状に形成されたガイド部材をさらに備え、弾性部材は、ガイド部材の外周側又は内周側に配置される。
【0014】
この態様の電気機械変換器においては、ガイド部材が構造部、及び又は、アーマチュアが有する腕部に固定され、そのようなガイド部材の外周側又は内周側に弾性部材が配置されるため、弾性部材のずれを防止しながら、弾性部材による反発力を意図した方向だけに作用させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、大型の電気機械変換器においてアーマチュアを適切に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の電気機械変換器100を示す斜視図である。
図2】アーマチュア140及びその周辺の分解斜視図である。
図3】電気機械変換器100の分解斜視図である。
図4】第2実施形態の電気機械変換器200を示す斜視図である。
図5】アーマチュア240及びその周辺の分解斜視図である。
図6】電気機械変換器200の分解斜視図である。
図7】第3実施形態の電気機械変換器300を示す斜視図である。
図8】アーマチュア340を示す斜視図である。
図9】第4実施形態の電気機械変換器400を示す斜視図である。
図10】第5実施形態の電気機械変換器500を示す図である。
図11】第6実施形態の電気機械変換器600を示す図である。
図12】第7実施形態の電気機械変換器700を示す図である。
図13】電気機械変換器500を用いたバイブレータ800を示す図である。
図14】電気機械変換器500を用いた加振機900を示す図である。
図15】電気機械変換器600を用いたスピーカユニット1000を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。また、説明の便宜のため、構造に関する方向を各図面の紙面上の方向に沿って、上、下、左、右として示す場合がある。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電気機械変換器100を示す斜視図である。
電気機械変換器100は、上下に略対称な構造を有しており、2つ(1対)のヨーク110、4つ(2対)の磁石120、空芯のコイル130等が一体的に配置された構造部の内部空間にアーマチュア140が配置され、さらに構造部とアーマチュア140との間に4つ(2対)のバネ150が配置されてなる。以下の説明においては、アーマチュア140が構造部の内部空間を貫く方向を「X方向」とし、2つのヨーク110が対向する方向を「Z方向」とし、X方向及びZ方向のいずれに対しても直交する方向を「Y方向」として示すこととする。
【0019】
図2は、アーマチュア140及びその周辺の分解斜視図である。
アーマチュア140は、中間部140aとその両端部から幅を少し狭めて外方に延びた2つの腕部140bとを有した平板形状をなしており、各腕部140bには貫通孔140cが穿孔されている。アーマチュア140がコイル130の空芯部を貫いて配置された後に、各貫通孔140cに対し上下の両側から1つずつブッシュ142が位置決めされて接着材等で固定され、2つのブッシュ142の中心部にシャフト144が通される。その上で、各ブッシュ142の外周側にコイルバネが配置されて、各腕部140bが上下の両面でコイルバネ150に接合することとなる。
【0020】
図3は、電気機械変換器100の分解斜視図である。なお、図3においては、スペースの制約から下側の一部の部位が分解されていないが、これらの部位の組み立て態様は上側の部位と同様である。また、図3においては、図2に示した部位も分解されておらず、アーマチュア140がコイル130の空芯部を貫いて配置された後にアーマチュア140の両端部にブッシュ142が固定されてシャフト144が通された状態が図示されている。
【0021】
各ヨーク110に対しては、アーマチュア140側の面、すなわち電気機械変換器100の完成状態における内側(以下、完成状態における内側又は外側を、単に「内側」又は「外側」と称する場合がある。)の面に、2つの磁石120が接着剤で固定される。各ヨーク110は、X方向の両端部においてそれぞれ2箇所ずつ突出した部位を有し、これらの部位の先端部に締結孔110aが穿孔されている。また、各ヨーク110の外側に配置される押さえ板160は、X方向の両端部にそれぞれ3つの締結孔を有しており、このうち2つの締結孔160aは、締結孔110aに対応する位置に穿孔されており、2つの締結孔160aの略中央に位置する締結孔160bは、シャフト144のネジ穴に対応する位置に穿孔されている。押さえ板160は、ヨーク110の外側に重ねられ、4つの締結孔160a,110aにボルト162が通されて、ナット164で締結されヨーク110に対して固定される。
【0022】
また、各ヨーク110に対しては、内側の面に固定された2つの磁石120に挟まれる位置に、コイル130が接着剤で固定される。そして、コイル130の空芯部を貫いて配置されたアーマチュア140に固定された4つのブッシュ142の外周側に、上下の両側から1つずつコイルバネ150が配置される。この状態で、ヨーク110が固定された2つの押さえ板160が、アーマチュア140の両端部に固定されたブッシュ142の中心部を貫通している2本のシャフト144を外側から挟み込み、各締結孔160bに通されるボルト162でシャフト144のネジ穴に締結され固定される。各コイルバネ150は、その自由長よりも圧縮された状態で、一端側がアーマチュアの腕部140bに接合し、他端側が押さえ板160に接合する。本実施形態においては、アーマチュア140、ブッシュ142、コイルバネ150以外の部品、すなわち、ヨーク110、磁石120、コイル130、シャフト144、押さえ板160、ボルト162及びナット164が一体となって、構造部を構成する。
【0023】
このような構造により、一対の押さえ板160の間隔、ひいては一対のヨーク110の間隔はシャフト144の長さで決まり、アーマチュア140は、上下に配置された各2つのコイルバネ150からの反発力がつり合う位置に保持される。また、コイル130は、アーマチュア140が上下に変位してもアーマチュア140と接触しない程度の空隙を有している。
【0024】
アーマチュア140の上下で対をなすコイルバネ150のスティフネス(バネ定数)が同じとすると、アーマチュア140とその上下で対をなす2対の磁石120との間には、それぞれ略等間隔の空隙170が設けられる。ヨーク110、磁石120、コイル130、アーマチュア140及び空隙170によって、電気機械変換器100の磁気回路が構成される。各押さえ板160は、左右2つのコイルバネ150から力を受けて若干たわむが、このたわみ量をコイルバネ150の変位量より十分に小さくすべく、十分に大きい剛性を持つよう設計される。
【0025】
2対(左右各1対)の磁石120は、相互に逆向きに着磁されており、アーマチュア140は、上下で対をなすコイルバネ150からの反発力と上下で対をなす磁石120からの吸引力を受ける。コイル130に電流が流れていない状態では、アーマチュア140に作用する上下の磁石120からの吸引力はつり合うように調整されるため、アーマチュア140の位置は、コイルバネ150による力のつり合いの位置と略同一となる。ここで、例えば、左側の1対の磁石120が上向きに磁化され、右側の1対の磁石120が下向きに磁化されているとし、コイル130に電流を流して(電気信号を入力して)アーマチュア140を右から左に向かう磁束が発生したとすると、アーマチュア140は、上向きの力を受けて上側に変位する。これに対し、電流の向きを逆にすると、アーマチュア140は、下向きの力を受けて下側に変位する。
【0026】
アーマチュア140と構造部との間に配置される2対のコイルバネ150は、アーマチュア140と構造部との間での相対的な変位に対して反発し、アーマチュア140が構造部に対して変位したとき、反発力がその変位を戻す方向に作用する。静的には、電気入力によりアーマチュア140と構造部との間に作用する磁気力とコイルバネ150による反発力とがつり合う位置まで、アーマチュア140が構造部に対して変位する。コイル130に交流電流を流せば(交流信号を入力すれば)、アーマチュア140は構造部に対し交互に変位して振動する。
【0027】
本実施形態においては、アーマチュア140の両端部(各腕部140b)における上下の両側にブッシュ142が設けられているため、アーマチュア140の変位量が大きい場合でも、アーマチュア140の構造部に対する運動をシャフト144の軸方向のみに規制して、アーマチュア140をシャフト144の軸方向のみに滑らかに変位させることができ、アーマチュア140が意図しない方向にふらつくことを防止することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、アーマチュア140、ブッシュ142、コイルバネ150を除いた部品が一体的に構成されて構造部をなしているが、アーマチュア140と構造部との間の変位量が大きくなると、構造部の一部をなすコイル130とアーマチュア140との間の空隙も大きくなり、結果としてコイル130の巻数に対する抵抗成分が大きくなることから、電気機械変換器100の駆動効率が悪くなる、という課題がある。一方、構造部に対して変位するアーマチュア側の質量は軽い方がよいため、コイル130は通常は構造部の一部としてヨーク110に固定されるが、アーマチュア140に固定されれば、アーマチュア側の質量が増すことにはなるもののコイル130の巻数に対する抵抗成分を小さくできるため、上述した課題は解決される。このように、コイル130は、構造部又はアーマチュアのいずれに固定しても一長一短がある。したがって、コイル130は、構造部に固定してもよいし、アーマチュアに固定してもよい。
【0029】
そして、本実施形態の構造によれば、アーマチュア140の変位量を大きくする等の目的でアーマチュア140とヨーク110との間の空隙長を変更する場合に、容易に対応することができる。上記の特許文献1及び2の構造(以下、「従来構造」と称する。)においては、予め決定された空隙長に応じて、ヨークにおけるバネとの接合部や上下のヨーク同士の接合部位をプレス加工等により形成していたため、空隙長を変更する場合には、ヨークの金型から製作し直さなければならない。これに対し、本実施形態の構造においては、空隙長の変更に応じて構成部品の寸法を変更する必要はあるものの、空隙長を多少変更する程度であれば、ヨークやアーマチュアは変更することなくそのまま用いることができ、他の部品の変更についても比較的容易に対応が可能である。
【0030】
ヨーク110及びアーマチュア140は、磁気回路の一部をなすため、例えば電磁純鉄又は3%ケイ素鋼等の軟磁性材料で形成される。また、例えば、磁石120にはネオジム磁石が使用され、コイル130には自己融着銅線が使用され、シャフト144には黄銅又はステンレス鋼が使用され、バネ150にはバネ用ステンレス鋼(SUS301等)が使用され、押さえ板160にはステンレス鋼が使用される。なお、シャフト144及び押さえ板160には、非磁性の材料を使用することが望ましい。
【0031】
続いて、他の様々な実施形態の電気機械変換器について説明する。他の実施形態の電気機械変換器はいずれも、上下に略対称な構造を有しており、ヨーク、磁石、空芯のコイル等が一体的に配置された構造部の内部空間を貫いてアーマチュアが配置され、構造部とアーマチュアとの間にバネが配置される点、コイルとアーマチュアとの間にアーマチュアが上下に変位してもコイルに接触しない程度の空隙が設けられる点で、第1実施形態の電気機械変換器100と共通するが、構成部品の種類や数、形状等が様々に異なっている。
【0032】
以下の説明においては、第1実施形態と共通する点についての説明を適宜省略する。また、他の実施形態の構成部品のうち、第1実施形態の構成部品と同等のものについては、その符号の下2桁以下を第1実施形態の構成部品と同じ値で表すこととする。例えば、ヨークは下2桁が「10」の符号で表され、アーマチュアは下2桁が「40」の符号で表され、アーマチュアがX方向の両端部に有する各腕部は下2桁以下が「40b」の符号で表される。
【0033】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態の電気機械変換器200を示す斜視図である。
電気機械変換器200は、アーマチュアの形状や、構造部とアーマチュアとの間にコイルバネが8つ(4対)配置される点において、第1実施形態の電気機械変換器100(図1)と特に異なっている。また、これらの相違点に関連して、他の構成部品も形状や数等が異なっている。
【0034】
図5は、アーマチュア240及びその周辺の分解斜視図である。
アーマチュア240は、中間部240aと、中間部240aのX方向の両側に突出した2つの第1腕部240bと、中間部240aのY方向の両側に細い部位で接続した第2腕部240dとを有した平板形状をなしており、各第1腕部240b及び各第2腕部240dには貫通孔240cが穿孔されている。アーマチュア240のX方向の両側からコイル230が1つずつ配置された後に、各貫通孔140cに対して円柱状のシャフト244が通される。その上で、アーマチュア240を貫いた各シャフト244の外周側に上下の両側からコイルバネ250が配置され、各第1腕部240b及び各第2腕部240dが上下の両面でコイルバネ250に接合することとなる。アーマチュア240は、4本のシャフト244の軸方向にガタつき無く、滑らかに変位することができる。
【0035】
図6は、電気機械変換器200の分解斜視図である。なお、図6においては、図5に示した部位が分解されておらず、アーマチュア240の中間部を囲むようにして2つのコイルが配置された後にアーマチュア240の4つの腕部をシャフト244が貫いた状態が図示されている。
【0036】
各ヨーク210に対し、内側の面に2つの磁石220が接着剤で固定され、これらの磁石220に挟まれる位置に2つのコイル230が接着剤で固定される。そして、2つのコイル230の空芯部を貫いて配置されたアーマチュア240に通された4本のシャフト244に対し、それぞれの上下からコイルバネ250が配置される。
【0037】
各ヨーク210の外側に配置される押さえ板260は、略円形状をなしており、その外縁部に等間隔で4つの嵌合孔260aを有しているとともに、一部の板を内側に曲げてなる8つの起立部260dを有している。各ヨーク210は、8つの起立部260dの内側に嵌め込まれて固定され、各シャフト244の先端部は、嵌合孔260aに嵌め込まれてレーザー溶接等により固定される。
【0038】
2つのコイル230は、電気的に直列接続又は並列接続され、電気の入力に対して同じ向きの磁束が発生するよう接続される。なお、電気機械変換器200においてアーマチュア240が保持される位置や、アーマチュア240が上下に変位する原理は、第1実施形態の電気機械変換器100と同様である。
【0039】
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態の電気機械変換器300を示す斜視図である。また、図8は、電気機械変換器300の一部をなすアーマチュア340を示す斜視図である。
電気機械変換器300は、第2実施形態の電気機械変換器200(図4)を変形させたものであり、アーマチュアの形状、コイルの形状及び数、コイルバネの数において、電気機械変換器200と異なっている。
【0040】
具体的には、図8に示されるように、アーマチュア340は、中間部340a及びそのX方向の両側に突出した2つの腕部340bを有しており、各腕部340bには貫通孔340cが穿孔されているが、中間部340aのY方向に接続した腕部は有していない。このような形状により、図7に示されるように、アーマチュア340は2つの腕部340bでコイルバネ350に接合するため、コイルバネ350は2つの腕部340bに対応して2対(4つ)設けられている。また、アーマチュア340がY方向に腕部を有していないことから、そのような腕部を挟むためにコイルを2つに分割する必要がないため、コイル330は第1実施形態のコイル130と同様の形状をなしている。
【0041】
〔第4実施形態〕
図9は、第4実施形態の電気機械変換器400を示す斜視図である。
電気機械変換器400は、第3実施形態の電気機械変換器300(図7)を変形させたものであり、アーマチュアの動きを規制する構造(コイルバネに通される部品)及びシャフトの数において、電気機械変換器300と異なっている。
【0042】
具体的には、コイルバネ450を貫通しない2本のシャフト444が押さえ板460に固定される。これにより、一対の押さえ板460の間隔、ひいては対をなす上下の磁石420間の距離は、シャフト444の長さで決定される。また、本実施形態においては、各コイルバネ450の内側に、シャフトは無くガイド446が2つずつ配置され、一方はアーマチュア440に固定され、他方は押さえ板460に固定される。ガイド446は、4つのコイルバネに対応して全部で8個(4対)配置される。ガイド446を設けることにより、コイルバネ450のずれを防止することができる。アーマチュア440の形状はアーマチュア340(図8)と同様であり、貫通孔はガイド446の位置決めに用いられる。ガイド446は、金属や樹脂等の材料で形成され、金属の場合にはレーザー溶接等により固定される一方、樹脂等の場合には接着剤で固定される。なお、ガイドは、コイルバネ450の外側に配置してもよい。
【0043】
〔第5実施形態〕
図10は、第5実施形態の電気機械変換器500を示している。このうち、(A)は、電気機械変換器500を示す斜視図であり、(B)は、(A)中のX-X線に沿う垂直断面図である。
電気機械変換器500は、第2実施形態の電気機械変換器200(図4)を変形させたものであり、アーマチュアの動きを規制する構造及びシャフトの固定態様において、電気機械変換器200と異なっている。
【0044】
具体的には、アーマチュア540の貫通孔にリニアブッシュ548が固定されており、リニアブッシュ548の中心部をシャフト544が貫通している。このような構造により、アーマチュア540と構造部との間で生じうるシャフト544に沿った相対的な動きをより滑らかにすることができる。また、シャフト544は、押さえ板560に対しボルト562を用いてより強固に固定されている。
【0045】
〔第6実施形態〕
図11は、第6実施形態の電気機械変換器600を示している。このうち、(A)は、電気機械変換器600を示す斜視図であり、(B)は、(A)中のXI-XI線に沿う垂直断面図である。
電気機械変換器600は、第2実施形態の電気機械変換器200(図4)を変形させたものであり、アーマチュアの動きを規制する構造において、電気機械変換器200と異なっている。
【0046】
具体的には、各コイルバネ650の内側にブッシュ642及びガイド646が1つずつ配置されており、各シャフト644は、上下で対をなす2つのコイルバネ650の内側に配置された2つのブッシュ642の中心部を貫通している。ブッシュ642は、全部で8個配置され、アーマチュア640に固定される。一方、ガイド646は、全部で8個押さえ板660側に配置され、押さえ板660又はシャフト644に固定される。このような構造により、コイルバネ650のずれをより確実に防止することができるとともに、アーマチュア640と構造部との間で生じうるシャフト644に沿った相対的な動きを滑らかにすることができる。
【0047】
〔第7実施形態〕
図12は、第7実施形態の電気機械変換器700を示す図である。
電気機械変換器700は、第2実施形態の電気機械変換器200(図4)を変形させたものであり、コイルバネに代えて板バネが設けられている点において、電気機械変換器200と異なっている。
【0048】
具体的には、上下で対をなす2つ(1対)の板バネ752がアーマチュア740を挟むようにして配置されている。板バネ752は、略環状をなしており、相互に異なる方向に屈曲した部位が略等間隔で交互に形成されている。一方の部位の屈曲端である第1部位752aは押さえ板760に接合し、他方の部位の屈曲端である第2部位752bは、アーマチュア740の第1腕部740bに接合する。このような構造によっても、アーマチュア740の動きを適切に規制しつつ、所望の大きさの振動(駆動力)を発生させることができる。
【0049】
〔電気機械変換器の応用例〕
続いて、上述した実施形態の電気機械変換器の応用例について説明する。電気機械変換器は、各種の機器の駆動部として適用され、アーマチュアが有する各腕部の先端部が振動伝達部として作用する。
【0050】
図13は、第5実施形態の電気機械変換器500(図10)を駆動部として用いたバイブレータ800を示す図である。このうち、(A)は、バイブレータ800の斜視図であり、(B)は、バイブレータ800の外殻をなすハウジング810の一部を破断してその内部の様子を示している。
【0051】
ハウジング810の内部には、電気機械変換器500が配置されており、アーマチュア540の4つの端部(より正確には、2つの第1腕部540b及び2つの第2腕部540dの各端部)は、上ハウジング810aと下ハウジング810bとの間に挟まれて固定されている。端子板532に対しては、2つのコイル530の各リード線がはんだ付けされるとともに、2つの電気入力端子にそれぞれリード線534がはんだ付けされてハウジング810の外に引き出されている。
【0052】
リード線534を通して電気を入力すると、アーマチュア540及びハウジング810と構造部との間に駆動力が発生する。交流信号を入力すれば、アーマチュア540及びハウジング810と構造部との間に相対振動が発生し、ハウジング810を振動板等の物体に接触又は固定させれば、その物体を振動させることができる。
【0053】
図14は、第5実施形態の電気機械変換器500(図10)を駆動部として用いた加振機900を示す図である。このうち、(A)は、加振機900の斜視図であり、(B)は、加振機900の外殻をなすハウジング910の一部を破断してその内部の様子を示している。
【0054】
ハウジング910の内部には、電気機械変換器500が配置されており、ハウジング910の底部に固定されている。アーマチュア540の4つの端部(より正確には、2つの第1腕部540b及び2つの第2腕部540dの各端部)は、連結部材930に固定されている。また、ハウジング910には、外部から電気を入力するためのコネクタ920が設けられており、端子板532に接続されている。
【0055】
コネクタ920を通して交流信号を入力すると、構造部とアーマチュア540等との間に相対振動が発生し、連結部材930と一体的に設けられた先端チップ940に振動が伝達される。先端チップ940に加速度ピックアップ等の物体を固定又は接触させれば、その物体に振動を加えることができる。
【0056】
本応用例においては、下側の押さえ板560に対し、第5実施形態のものを少し変形して絞り加工が施されており、その外縁部がハウジング910の底部にボルトで固定されている。押さえ板に絞り加工を施すことにより、押さえ板及びその周辺部の剛性をより高めることができる。
【0057】
図15は、第6実施形態の電気機械変換器600(図11)を駆動部として用いたスピーカユニット1000を示す図である。このうち、(A)は、スピーカユニット1000を正面側から見た斜視図であり、(B)は、スピーカユニット1000を背面側から見た斜視図であり、(C)は、(B)に示した図のうち電気機械変換器600の周辺部のみを拡大しつつフレーム1010の一部を破断してその内部の様子を示している。
【0058】
本応用例においては、上側の押さえ板660に対し、第6実施形態のものを少し変形して絞り加工が施されており、その外周面660fとフレーム1010とがレーザー溶接等により固定されている。アーマチュア640の4つの端部(より正確には、2つの第1腕部640b及び2つの第2腕部640dの各端部)は、略円筒形状をなす連結部1030の一端側に接着剤で固定されており、振動板1020は、連結部1030の他端側に接着剤で固定されている。
【0059】
図示されていない端子板を通じてコイルに交流信号を入力すると、フレーム1010に固定された構造部に対してアーマチュア640が振動し、連結部1030を通して振動板1020を振動させ、これにより音圧を発生させることができる。
【0060】
上述したように、各実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1)第1実施形態の電気機械変換器100によれば、アーマチュアの各腕部140bにおける上下の両側にブッシュ142が設けられているため、アーマチュア140の変位量が大きい場合でも、アーマチュア140の動きをシャフト144の軸方向のみに規制することができる。
【0061】
(2)第2実施形態の電気機械変換器200によれば、アーマチュア240が4つの腕部(2つの第1腕部240b、及び、2つの第2腕部240d)を有しており、4つの腕部に対して4対のコイルバネ250が配置されるため、2つの腕部に対して2対のコイルバネが配置された第1実施形態の電気機械変換器100と比較して、コイルバネからの反発力をより多くの箇所に与えることができ、したがって、アーマチュア240のシャフト244の軸方向に沿った動きをより安定させることができる。
【0062】
(3)第3実施形態の電気機械変換器300によれば、アーマチュア340が2つの腕部340bを有しており、4本のシャフト344のうち2本がアーマチュア340の腕部を貫通し、これらの外周側に2対のコイルバネ350が配置されるため、アーマチュア340の動きをシャフト344の軸方向のみに規制しつつ、部品数を減らすことができ、製造コストを削減することが可能となる。
【0063】
(4)第4実施形態の電気機械変換器400によれば、2本のシャフト444の長さによって構造部の一部をなす上下磁石間の距離が決められ、各コイルバネ450の内側にガイド446が2つずつ配置され、その一方がアーマチュア440に固定されて他方が押さえ板460に固定されるため、コイルバネ450のずれを防止しながら、アーマチュア440の動きを押さえ板460に固定されたガイド446の略中心に沿った方向(中心軸の方向)に規制することができる。
【0064】
(5)第5実施形態の電気機械変換器500によれば、アーマチュア540の貫通孔にリニアブッシュ548が固定されており、その中心部をシャフト544が貫通しているため、シャフト544の軸方向に沿ってアーマチュア540が変位する際に生じる摩擦をより小さくして動きをより滑らかにすることができる。
【0065】
(6)第6実施形態の電気機械変換器600によれば、各コイルバネ650の内側に2つのブッシュ642及びガイド646が1つずつ配置され、ブッシュ642がアーマチュア640に固定され、ガイド646が押さえ板660又はシャフト644に固定されるため、アーマチュア440の動きをシャフト644の軸方向のみに規制しながら、コイルバネ650のずれをより確実に防止することができる。
【0066】
(7)各実施形態によれば、アーマチュアの動きをシャフトの軸方向のみに規制することができるため、大きな出力を要する機器や大きな変位量を必要とする機器においても、振動方向のブレ(変動)が小さい、質の良い振動を発生させることができる。
【0067】
(8)各実施形態の電気機械変換器によれば、大きな出力を要するオーディオスピーカ等の機器において、上記の従来構造と比較して音質を改善することができ、バランスドアーマチュア型であっても所望の音質を確保することができる。
【0068】
本発明は、上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0069】
上述した各実施形態においては、アーマチュアが軟磁性材料で形成されているが、アーマチュアのうち磁気回路の一部を構成するのはX方向における磁石と対向した一部分に限られるため、その他の部分は磁性材料で形成されなくてもよい。また、アーマチュアを複数の部品を組み立てて構成し、これらの部品が一体的に作用するようにしてもよい。
【0070】
例えば、アーマチュアのうち、磁気回路の一部を構成する部分(各実施形態における中間部に対応する部品)には磁性材料を使用しつつ、その他の部分(各実施形態における腕部に対応する部品)には他の材料を使用してもよい。このような構成とすることにより、中間部に対応する部品の周りにコイルを配置した後にアーマチュアを組み立てることが可能となるため、アーマチュアを構成する各部品の板厚や形状等に関する設計の自由度を高めることができる。
【0071】
上述した第1及び第6実施形態においては、シャフトの外周側にブッシュが設けられているが、ブッシュには、電気機械変換器のサイズ等に応じて、樹脂製の滑りブッシュ(滑り軸受)を用いてもよいし、ボール循環型のリニアブッシュ(転がり軸受)を用いてもよい。
【0072】
上述した第7実施形態においては、アーマチュア740に反発力を与える弾性部材として、上下で対をなす2つ(1対)の板バネ752を用いているが、他の実施形態と同様にアーマチュアにブッシュを固定して、その外周側に板バネを配置してもよい。
【0073】
各実施形態においては、アーマチュアと構造部との間での相対的な変位に対する復元力を得るために、コイルバネ又は板バネを用いているが、復元力が得られる部材であればよく、その他の種類のバネを用いてもよいし、バネ以外の弾性部材を用いてもよい。
【0074】
各実施形態に用いられるシャフトやガイドは、略円柱状の形状であってもよいし、略円筒状の形状であってもよい。
【0075】
その他、電気機械変換器100,200,300,400,500,600,700の各構成部品の例として挙げた材料や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
100 電気機械変換器
110 ヨーク
120 磁石
130 コイル
140 アーマチュア
142 ブッシュ
144 シャフト
150 コイルバネ
160 押さえ板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15