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  • 特開-通信制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141853
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/44 20180101AFI20230928BHJP
   H04W 4/48 20180101ALI20230928BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20230928BHJP
   H04W 92/08 20090101ALI20230928BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20230928BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H04W4/44
H04W4/48
H04W84/10 110
H04W92/08
H04W72/04 131
H04M1/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048389
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長坂 具幸
【テーマコード(参考)】
5K067
5K127
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE25
5K067EE35
5K067HH22
5K127BA03
5K127BB22
5K127BB33
5K127CA27
5K127CB33
5K127DA13
5K127GB35
5K127HA11
5K127JA02
5K127JA04
5K127JA05
(57)【要約】
【課題】車載機器の通信機能を適切に制御すること。
【解決手段】通信制御装置である制御部20は、車両の車内において聞こえる車両の周辺音を取得する音声取得部25と、音声取得部25が取得した周辺音を分析する分析部27と、分析部27の分析結果から、周辺音に路面音が含まれる場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を可能な状態とし、周辺音に路面音が含まれない場合は、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を不可な状態、使用可能時間が制限された状態、および、通信量が制限された状態の少なくともいずれかに制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内において聞こえる前記車両の周辺音を取得する音声取得部と、
前記音声取得部が取得した前記周辺音を分析する分析部と、
前記分析部の分析結果から、前記周辺音に路面音が含まれる場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態にし、前記周辺音に前記路面音が含まれない場合は、広域の無線通信による前記外部の機器との通信または近距離無線通信による前記携帯情報端末との通信を第一状態より制限された第二状態にする通信制御部と、
を備える、通信制御装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記周辺音に、波長が前記車両の車室の長さよりも長い周波数帯域の前記路面音が含まれるか否かを分析する、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記第一状態は、通信可能な状態であり、
前記第二状態は、通信不可な状態、使用可能時間が制限された状態、および、通信量が制限された状態の少なくともいずれかである、
請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記分析部の分析結果から、前記周辺音に波長が車室の長さよりも長い周波数帯域の前記路面音が含まれていない場合、
広域の無線通信による前記外部の機器との通信または近距離無線通信による前記携帯情報端末との通信を前記第二状態にする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
所定の特定音が出力された場合に、前記音声取得部は、前記特定音の反射音を取得し、
前記特定音の出力から前記反射音の取得までの反射時間の長さに基づき、該特定音が前記車内で出力されたか否かを判定する判定部、を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットまたは携帯電話回線などの通信網を用いた通信機能を有する車載機器が普及している。搭乗者が車両に持ち込んだ携帯情報端末は、車内においては車載機器を介して通信網を使用可能である。この種の車載機器は、特定の車内に設置して使用することを想定しており、車載機器が車内から持ち出された場合、車載機器が有する通信機能の使用を制限するようにしている。特許文献1には、車載機器の加速度を検知することで、車両の走行状況を判断し、通信機能の使用を許可する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-154456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加速度を検知して車両の走行状況を判断する構成では、例えば、車両が、等速運動中は加速度データが変化しないため、車載機器が定速走行している車内にあるのか、車載機器が停車している車内にあるのか、もしくは、車載機器が車内から外に持ち出されているのか判別することが困難となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特定の車内に設置して使用すべき車載機器の通信機能を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る通信制御装置は、車両の車内において聞こえる車両の周辺音を取得する音声取得部と、音声取得部が取得した周辺音を分析する分析部と、分析部の分析結果から、周辺音に路面音が含まれる場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態にし、周辺音に路面音が含まれない場合は、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態より制限された第二状態にする通信制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車載機器の通信機能を適切に制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る通信制御装置を有する車載機器の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、路面音の騒音レベルと周波数との関係を示すグラフである。
図3図3は、本実施形態に係る通信制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る通信制御装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
<車載機器>
図1は、本実施形態に係る通信制御装置を有する車載機器の構成例を示すブロック図である。図2は、路面音の騒音レベルと周波数との関係を示すグラフである。車載機器10は、インターネットまたは携帯電話回線などの通信網を用いた通信機能を有する機器である。車載機器10は、例えば、可搬型で車両に持ち込んで使用されるドライブレコーダー、ナビゲーション装置または車両用無線通信装置等である。車載機器10は、例えば、車両にあらかじめ設置されているドライブレコーダー、ナビゲーション装置と、可搬型の通信装置として実装されていてもよい。車載機器10は、例えば、ドライブレコーダーおよびナビゲーションなどの機能を有していない、車両にあらかじめ設置されている通信装置として実装されていてもよい。本実施形態では、車載機器10は、可搬型で車両に持ち込んで使用されるドライブレコーダーとして説明する。
【0011】
本実施形態では、車載機器10は、ウインドシールドの上部であってルームミラーの裏側に取り付けられる。車載機器10は、カメラ11と、記録部12と、表示部13と、スピーカ(音声出力部)14と、マイク(収音部)15と、近距離通信部181と広域通信部182とを含む通信部18と、制御部(通信制御装置)20とを有する。車載機器10は、車両に搭載されている場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態にし、車両に搭載されていない場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態より制限された第二状態にする。
【0012】
第一状態は、通信可能な状態である。第二状態は、通信不可な状態、使用可能時間が制限された状態、および、通信量が制限された状態の少なくともいずれかである。本実施形態では、第二状態は、通信不可な状態または使用可能時間が制限された状態である。
【0013】
本実施形態では、車載機器10は、車両に搭載されている場合、近距離通信部181によって接続された携帯情報端末の広域通信部182を介した通信を可能とし、車両に搭載されていない場合、通信を不可にする場合について説明する。なお、車両に搭載されている場合、または車両に搭載されていない場合とは、制御部(通信制御装置)20の処理動作に伴い、それぞれ車両に搭載されていると判定された場合、または車両に搭載されていないと判定された場合を含むものとする。
【0014】
携帯情報端末は、搭乗者が使用する、例えば、スマートフォン、タブレット、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯用ゲーム機などの通信機能を有する情報端末である。
【0015】
カメラ11は、車両の周辺を撮影するカメラである。カメラ11は、車両に搭載され、車両の進行方向の前方および後方を撮影する。本実施形態では、カメラ11は、車両の前方および後方に配置されている。カメラ11は、遠赤外線カメラ、可視光カメラ、または赤外線カメラおよび可視光カメラの組み合わせで構成される。カメラ11は、例えば、車両の進行方向である前方を撮影可能な位置に配置されている。カメラ11は、エンジンが始動してから停止するまでの間、つまり車両が動作している間は、映像を常時撮影する。カメラ11は、撮影した映像を制御部20の映像取得部21へ出力する。映像は、例えば毎秒30フレームの画像から構成される動画像である。
【0016】
記録部12は、車載機器10におけるデータの一時記憶などに用いられる。記録部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、メモリカードなどの記録部である。または、図示しない通信装置を介して無線接続される外部記録部であってもよい。記録部12は、制御部20の記録制御部22から出力された制御信号に基づいて、例えばループ記録データを記録する。
【0017】
表示部13は、一例としては、車載機器10に固有の表示装置、または、ナビゲーションシステムを含む他のシステムと共用した表示装置などである。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどを含むディスプレイである。表示部13は、制御部20の表示制御部23から出力された映像信号に基づいて、映像を表示する。表示部13は、カメラ11が撮影している映像、または、記録部12に記録された映像を表示する。表示部13は、通信状態が第一状態であるか、第二状態であるかを表示してもよい。本実施形態では、表示部13は、広域通信部182による通信の可能、不可能または制限の状態を表示してもよい。
【0018】
スピーカ14は、各種の音声を出力する装置である。スピーカ14は、複数設置されていてもよい。スピーカ14は、制御部20の音声出力制御部24から出力された音声信号に基づいて、音声を出力する。スピーカ14は、例えば、表示部13に表示された映像に対応する音声を出力する。本実施形態では、スピーカ14は、例えば、車載機器10を起動するたびに、特定音の音声を出力する。
【0019】
特定音は、例えば、車載機器10の起動音である。特定音は、数秒間程度の短い時間の音声であることが好ましい。特定音は、例えば、起動を示すメッセージ、チャイム音、または、ブザー音などである。車内の音響特性は、搭乗者の話し声、オーディオ機器から出力される音声、空調などの内部音、および、他車両、踏切、雨風などの外部音などによる影響を受けるので、その影響を低減するように、特定音は、音圧や位相、周波数などを調整した音でもよい。特定音は、連続的または断続的な音でもよい。
【0020】
マイク15は、車内において発生する聞こえる音声を収音するマイクロフォンである。ここで、車内とは搭乗者が搭乗する車室内をいい、エンジンルームやトランクルームを含むものではない。マイク15は、例えば、カメラ11が撮影する映像に対応する音声を収音する。本実施形態では、マイク15は、例えば、スピーカ14から特定音を出力した際に、スピーカ14から出力されて反射せずにマイク15の位置において直接聞こえる特定音と、特定音が車内の内壁などの物体において反射した反射音とを含む車内の音である周辺音とを収音する。マイク15が収音する周辺音には、搭乗者の話し声、オーディオ機器から出力される音声、空調機器の動作音などに加えて、例えば、路面音、エンジン音、風切音などの車内において聞こえる車両の走行音を含む。マイク15は、例えば、収音した音声を制御部20の音声取得部25へ出力する。
【0021】
例えば、車載機器10が車両から持ち出されて外部で使用されている場合、マイク15は、スピーカ14から出力されて反射せずにマイク15の位置において直接聞こえる特定音と、マイク15の周辺に存在する物体において特定音が反射した反射音とを含む周辺音を収音する。また、例えば、車載機器10が車両から持ち出されて周辺に物体が存在しない広い空間で使用されている場合、マイク15は、スピーカ14から出力されて反射せずにマイク15の位置において直接聞こえる特定音を含む周辺音を収音する。
【0022】
車内の音響は、スピーカ14などから出力された音が周囲に存在する物体などで吸音や反射して発生する。車内の音響は、車両固有の物体、例えば、車内の奥行、高さ、幅や形状、吸音性および反射性などに影響を与える材質、シートおよび内装品などのレイアウトなどに依存する。このため、同一車内であれば音響特性は略一致する。しかし、変動する可能性のある物体、例えば、搭乗者や荷物の数、ドアおよび窓の開閉状態による影響を受けることがあり、車内の音響特性は常に一定であるとは限らない。そこで、収音する際は、変動する可能性のある物体による音響特性の変化の影響を低減するために、スピーカ14およびマイク15を、所定方向に向かって配置してもよい。
【0023】
所定方向とは、スピーカ14から出力された音が反響してマイク15によって収音される際に、スピーカ14とマイク15との間の空間において、収音ごとに変動する可能性のある物体が少ない、または存在しない方向である。所定方向は、例えば、車載機器10の取り付け位置からウインドシールドに向かう方向、言い換えると、ルームミラーの裏側からウインドシールドに向かう方向である。
【0024】
ウインドシールドに向かって配置されたスピーカ14は、車載機器10の起動時に、特定音を出力する。ウインドシールドに向かって配置されたマイク15は、車載機器10の起動中に、常に周辺音を収音する。ウインドシールドに向かって配置されたスピーカ14から特定音が出力され、ウインドシールドに向かって配置されたマイク15によって収音されることにより、変動する可能性のある物体による音響特性の変化の影響を低減して、車両固有の音響特性を取得可能である。
【0025】
スピーカ14およびマイク15は一体型でもよいし、有線または無線の分離型でもよい。通常のドライブレコーダーのマイク、スピーカと兼用してもよい。
【0026】
通信部18は、近距離無線通信または広域無線通信を行う。本実施形態では、通信部18は、近距離通信部181と広域通信部182とを含む。
【0027】
近距離通信部181は、近距離無線通信を行う通信ユニットである。近距離通信部181は、図示しない携帯情報端末との間で情報の通信を行う。近距離通信部181は、例えば、Wi-Fi(登録商標)などの通信モジュールで構成され、携帯情報端末に対して、広域通信部182を介して広域の無線通信を提供する。言い換えると、近距離通信部181と広域通信部182とは、携帯情報端末に対して、無線LAN(Local Area Network)ルータとして機能する。近距離通信部181は、携帯情報端末の通信部とは予めペアリング等を行い互いに通信可能な状態で使用する。
【0028】
広域通信部182は、広域の無線通信を行う通信ユニットである。広域通信部182は、インターネットまたは携帯電話回線などいずれの方法で通信を行ってもよい。広域通信部182は、制御部20の広域通信制御部282によって通信を制御される。広域通信部182は、近距離通信部181を介して車載機器10と接続された携帯情報端末に対して、広域の無線通信を提供する。
【0029】
<通信制御装置>
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置(制御装置)である。制御部20は、記憶されているプログラムをメモリにロードして、プログラムに含まれる命令を実行する。制御部20には図示しない内部メモリが含まれ、内部メモリは制御部20におけるデータの一時記憶などに用いられる。このため、制御部20は、車載機器10による通信制御方法を実行させる。また、制御部20は、本発明にかかるプログラムを動作させるコンピュータである。制御部20は、車両に搭載されている場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態にし、車両に搭載されていない場合、広域の無線通信による前記外部の機器との通信または近距離無線通信による前記携帯情報端末との通信を第一状態より制限された第二状態にする。本実施形態では、制御部20は、車載機器10が車両に搭載されている場合、近距離通信部181によって接続された携帯情報端末の広域通信部182を介した通信を可能にし、車載機器10が車両に搭載されていない場合、通信を不可にする。
【0030】
制御部20は、映像取得部21と、記録制御部22と、表示制御部23と、音声出力制御部24と、音声取得部25と、判定部26と、分析部27と、近距離通信制御部281と広域通信制御部282とを含む通信制御部28と、を有する。
【0031】
映像取得部21は、車両の周辺を撮影した映像を取得する。映像取得部21は、カメラ11が出力した映像を取得する。映像取得部21は、制御部20が備える内部メモリに、映像取得部21が取得した一定時間分の映像を、更新しながら一時的に記録する。
【0032】
記録制御部22は、映像を記録部12に記録させる制御を行う。より詳しくは、記録制御部22は、図示しないバッファメモリが一時的に記憶している映像を、任意の方式のコーデックで符号化して、例えばMP4形式などの任意のファイル形式に変換する。記録制御部22は、バッファメモリが一時的に記憶している映像から、一定時間分のファイルとした映像を生成する。具体例として、記録制御部22は、バッファメモリが一時的に記憶している映像を、記録順に60秒間の映像を1ファイルとして生成する。ファイルとして生成される映像の期間は、一例として60秒としたが、これには限定されない。記録制御部22は、車両のアクセサリ電源がオン(ON)であるときなど、ループ記録処理を実行する期間は、ファイル化された映像を記録部12に上書き可能に記録する。記録制御部22は、ループ記録処理を実行する期間は、生成した映像を記録部12に記録し続け、記録部12の容量が一杯になった場合、最も古い映像に新しい映像を上書きしてループ記録データを記録する。
【0033】
表示制御部23は、表示部13における映像の表示を制御する。表示制御部23は、映像を表示部13に出力させる映像信号を出力する。より詳しくは、表示制御部23は、カメラ11が撮影している映像を表示部13に表示させる。
【0034】
音声出力制御部24は、スピーカ14からの音声の出力を制御する。音声出力制御部24は、音声をスピーカ14に出力させる音声信号を出力する。より詳しくは、音声出力制御部24は、アクセサリ電源がオンに操作されると、所定の特定音をスピーカ14から出力させる。
【0035】
音声取得部25は、マイク15が収音した音声を取得する。音声取得部25は、スピーカ14から特定音が出力された際にマイク15によって収音された反射音を取得する。また、音声取得部25は、アクセサリ電源がオンに操作されて、車載機器10(制御部20)が起動した後に、マイク15によって収音された周辺音を取得する。
【0036】
判定部26は、反射音の取得により、車載機器10が車両に搭載されているか否かを判定する。具体的には、判定部26は、特定音が出力されてから反射音を取得するまでの反射時間を算出し、この反射時間と基準反射時間とを比較して、一定レベル以上の差異を検出した場合、車載機器10が車両に搭載されていないと判定する。また、判定部26は、一定レベル以上の差異を検出しない場合、車載機器10が車両に搭載されていると判定する。上記したように、スピーカ14から出力された特定音は、車室の壁や天井などの物体に反射し、反射音としてマイク15に収音される。通常、開放された空間では、反射音は非常に少なく、車室等のある一定の大きさの空間では、その距離に応じた反射時間が測定される。このため、判定部26は、反射時間と基準反射時間との差異の大きさを検出することにより、車載機器10が閉空間(車室)にあること、及び該閉空間のおおよその大きさを判定することができる。
【0037】
ここで、判定部26は、所定の閾値として基準反射時間を記憶しており、この基準反射時間は、例えば、セダンやハッチバックなど車両の形式に応じて事前に設定された値を使用することができる。また、判定部26は、例えば、車載機器10を特定の車両に設置後の1回目の起動時である初期設定時に反射時間を測定し、この反射時間を基準反射時間として使用してもよい。この構成によれば、車両固有の閾値(基準反射時間)を設定することができる。
【0038】
分析部27は、車載機器10の起動中、所定時間間隔で車両の車内(車室内)において聞こえる車両の路面音を分析する。分析部27は、マイク15が収音した周辺音から車両が走行中に聞こえる路面音の有無を分析する。さらに、具体的には、分析部27は、例えば、周辺音から所定の周波数帯域の路面音の有無を分析する。
【0039】
図2を用いて、車両の走行中に車内で聞こえる路面音について説明する。路面音は、車両が走行中に発生する路面からの音であり、路面とタイヤにより発生するランダム性の音である。路面音は、図2に示すように、A帯域(約100Hz)、B帯域(約250Hz)、C帯域(約350Hz)の周波数帯域に騒音レベルの高いピークが現れることが知られている。ここで、B帯域及びC帯域の路面音は、波長が1~2m程度となっているため、一般的な車両の車室の長さ(例えば3m程度)よりも短くなっている。このように、車室の長さよりも短い波長では、車室内で定在波(定常波ともいう)が発生しやすくなるため、音の大きな部分(ピーク)と音の小さなまたは鳴らない部分(ディップ)とが生じ、周辺音から路面音の有無を正確に分析することが困難となる。
【0040】
一方、A帯域の路面音は、波長が3m以上であり、一般的な車両の車室の長さよりも長くなっているため、車室内で定在波の発生を抑制することができ、周辺音から路面音の有無を正確に分析することができる。このため、本実施形態では、分析部27は、周辺音に、波長が車室の長さよりも長い周波数帯域の路面音が含まれるか否かを分析することにより、マイク15が収音した周辺音に含まれる路面音の有無から、車両の停車または走行を判定することができる。より詳しくは、分析部27は、所定の周波数帯域の路面音があると分析した場合、車両が走行していると判定する。また、分析部27は、所定の周波数帯域の路面音がないと分析した場合、車両が停車していると判定する。
【0041】
通信制御部28は、近距離通信部181または広域通信部182を制御する。より詳しくは、通信制御部28は、判定部26の判定結果、及び分析部27の分析結果から、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を第一状態、または第一状態より制限された第二状態に制御する。通信制御部28は、近距離通信制御部281と広域通信制御部282とを含む。
【0042】
近距離通信制御部281は、近距離通信部181を制御して、携帯情報端末との間の近距離通信を制御する。より詳しくは、近距離通信制御部281は、近距離通信部181から所定範囲内に位置する携帯情報端末の通信部とペアリング等を行い互いに通信可能な状態にするよう制御する。
【0043】
広域通信制御部282は、判定部26の判定結果、及び分析部27の分析結果に基づいて、広域通信部182を制御して、通信網を介した広域の無線通信を制御する。より詳しくは、広域通信制御部282は、車載機器10が車両に搭載され、かつ車両が走行していると判定される場合、広域通信部182を介した携帯情報端末と外部の機器との通信を可能(第一状態)にする。本実施形態では、広域通信制御部282は、車載機器10が車両に搭載され、かつ車両が走行中であると判定された場合、無線LANルータとしての無線通信機能の使用可能時間を制限しない。
【0044】
また、広域通信制御部282は、車載機器10が車両に搭載されていないと判定される場合、広域通信部182を介した携帯情報端末と外部の機器との通信を不可(第二状態)にし、車両が停車していると判定される場合、広域通信部182を介した携帯情報端末と外部の機器との通信を制限(第二状態)する。
【0045】
すなわち、広域通信制御部282は、車載機器10が車両に搭載されていないと判定される場合には、車載機器10が車両の外に持ち出されているため、無線LANルータとしての無線通信機能を停止するように制御する。一方、車両は通常、信号や交通法規に従って運転操作されるため、分析部27が路面音の有無を分析した際に、たまたま車両が停車していることも想定される。このため、一度、車両が停車していると判定されたことで、広域通信部182を介した携帯情報端末と外部の機器との通信を一切不可とするのは、車載機器10の使い勝手が悪くなる。このため、本実施形態では、広域通信制御部282は、車両が停止中であると判定された場合、例えば、無線LANルータとしての無線通信機能の使用可能時間に所定の制限時間を設けても良い。広域通信制御部282は、無線通信機能の使用可能時間を超過した場合、無線LANルータとしての無線通信機能を制限、停止するように制御する。このように、無線通信機能の使用可能時間を制限したとしても、次回以降の路面音の分析時に、車両が走行していると判定される可能性が高く、車載機器10の使い勝手の向上を図ることができる。
【0046】
<制御部における処理>
次に、図3を用いて、制御部20における処理の流れについて説明する。図3は、本実施形態に係る通信制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
車両のアクセサリ電源がオン(ステップS11)に操作されて、車載機器10が起動(ステップS12)すると、制御部20は、スピーカ14から予め定められた特定音を出力する(ステップS13)。制御部20は、ステップS14に進む。
【0048】
制御部20は、スピーカ14から出力された特定音が車室内で反射した反射音を取得する(ステップS14)。より詳しくは、制御部20は、音声取得部25によって、特定音が車室内で反射した際に、マイク15によって収音した反射音を取得する。制御部20は、ステップS15に進む。
【0049】
制御部20は、特定音の出力から反射音の取得までの時間、即ち反射時間と、基準反射時間との差異が一定レベル以上であるか否かを判定する(ステップS15)。より詳しくは、制御部20は、判定部26によって、特定音の出力から反射音の取得までの反射時間と、所定の基準反射時間とを比較して、一定レベル以上の差異を検出しない(ステップS15;No)場合、車載機器10が車両に搭載されていると判定する。制御部20は、車載機器10が車両に搭載されていると判定した場合、ステップS16に進む。
【0050】
一方、制御部20は、判定部26によって、一定レベル以上の差異を検出した(ステップS15;Yes)場合、車載機器10が車両に搭載されていないと判定する。制御部20は、車載機器10が車両に搭載されていないと判定した場合、ステップS17に進む。
【0051】
制御部20は、車載機器10が車両に搭載されていないと判定した場合、通信を第二状態に制御し、この第二状態を維持する(ステップS17)。より詳しくは、制御部20は、広域通信制御部282によって、広域通信部182による外部の機器との通信を不可にし、この通信不可の状態を維持する。すなわち、制御部20は、広域通信制御部282によって、無線LANルータとしての無線通信機能を停止するように制御する。これにより、車載機器10が車両から持ち出された状態では、無線LANルータとしての無線通信機能が停止される。制御部20は、ステップS21に進む。
【0052】
制御部20は、車載機器10が車両に搭載されていると判定した場合、分析部27によって、車室内において聞こえる車両の周辺音を分析する(ステップS16)。より詳しくは、制御部20は、分析部27によって、所定時間間隔でマイク15が収音した周辺音を取得し、この周辺音を分析する。制御部20は、ステップS18に進む。
【0053】
制御部20は、分析部27によって、周辺音に所定周波数帯域(例えば100Hz)の路面音が含まれているかを分析する(ステップS18)。この100Hzあたりの周波数帯域の路面音は、波長が3m以上であり、一般的な車両の車室の長さよりも長くなっている。このため、この周波数帯域の波長は、車室内で定在波の発生を抑制することができ、周辺音から路面音の有無を正確に分析することができる。制御部20は、分析部27によって、所定周波数帯域(例えば100Hz)の路面音が含まれていると判定した場合(ステップS18;Yes)、車両は走行していると判定する。制御部20は、車両は走行していると判定した場合、ステップS19に進む。
【0054】
制御部20は、車両は走行していると判定した場合、通信を第一状態に制御する(ステップS19)。より詳しくは、制御部20は、広域通信制御部282によって、広域通信部182による外部の機器との通信を可能にする。すなわち、制御部20は、広域通信制御部282によって、無線LANルータとしての無線通信機能を開始するように制御する。本実施形態では、車載機器10が車両に搭載され、かつ車両が走行していると判定されるため、無線LANルータとしての無線通信機能が利用可能になり、搭乗者は、車載機器10を介して、車内に持ち込んだ携帯情報端末で広域の無線通信を行うことができる。制御部20は、ステップS21に進む。
【0055】
一方、制御部20は、分析部27によって、所定周波数帯域(例えば100Hz)の路面音が含まれていないと判定した場合(ステップS18;No)、すなわち車両は停車していると判定した場合、通信を第二状態に制御する(ステップS20)。ここで、制御部20は、車両が走行しているか否かを判定(路面音の有無を判定)する前に、車載機器10が車両に搭載されていると判定している。このため、制御部20は、車載機器10が車両に搭載され、かつ、車両は停車していると判定した場合、広域通信制御部282によって、広域通信部182による外部の機器との通信の使用可能時間を所定時間(例えば30分)に制限する。すなわち、制御部20は、広域通信制御部282によって、無線LANルータとしての無線通信機能の使用可能時間を制限するように制御する。制御部20は、広域通信制御部282によって、無線通信機能の使用可能時間を超過した場合、無線LANルータとしての無線通信機能を制限、停止するように制御する。制御部20は、ステップS21に進む。
【0056】
制御部20は、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS21)。詳しくは、制御部20は、終了条件として、アクセサリ電源がオフ、または車載機器10への電源の遮断を満たすか否かを判定する。電源の遮断とは、例えば、車載機器10の電源スイッチのオフ操作や、車載機器10へ電力を供給する電線の取り外し、切断など、車載機器10を動作させる電力の供給が遮断されることをいう。終了条件を満たしていれば(ステップS21;Yes)、制御部20は処理を終了する。また、制御部20は、終了条件を満たしていない、すなわちアクセサリ電源がオフになっておらず、かつ車載機器10への電源の遮断もなされていない場合(ステップS21;No)、処理をステップS16に戻してステップS16~ステップS21を繰り返し実行する。この構成によれば、無線通信機能の使用可能時間を制限されたとしても、次回以降の路面音の分析時に、車両が走行していると判定され、無線通信機能を制限なく利用することが可能となる。また、ステップS16~ステップS21を繰り返し実行している間に、車載機器10が車両の外に持ち出された場合は、車載機器10への電源が遮断されるため、ステップS21にて処理が終了する。このため、車載機器10に再度電源が投入されたとしても、上記したステップ15の判定で通信を第二状態に制御するように切り替えられるため、広域通信部182による外部の機器との通信を不可にすることができる。なお、アクセサリ電源がオンである期間中に、一度でも車両が走行中であると判定された場合には、制御部20は、広域通信制御部282によって、通信を第一状態、すなわち無線LANルータとしての無線通信機能を利用可能な状態に維持するように制御してよい。
【0057】
上述したように、本実施形態に係る制御部20(通信制御装置)は、車両の車内において聞こえる車両の周辺音を取得する音声取得部25と、音声取得部25が取得した周辺音を分析する分析部27と、分析部27の分析結果から、周辺音に路面音が含まれる場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を可能な状態とし、周辺音に路面音が含まれない場合は、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を不可な状態、使用可能時間が制限された状態、および、通信量が制限された状態の少なくともいずれかに制御する。本実施形態によれば、周辺音に路面音が含まれない、すなわち車両が停車している場合に、携帯情報端末による車載機器10を介した広域の無線通信の通信網の使用を制限することができる。このようにして、本実施形態は、車載機器の通信機能を適切に制御することができる。
【0058】
また、本実施形態では、分析部27は、周辺音に、波長が車両の車室の長さよりも長い周波数帯域の路面音が含まれるか否かを分析するため、車室内で定在波の発生を抑制することができ、周辺音から路面音を正確に分析することができる。
【0059】
また、本実施形態では、通信制御部28は、分析部27の分析結果から、周辺音に、波長が車室の長さよりも長い周波数帯域の路面音が含まれていない場合、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を制限することができる。このようにして、本実施形態は、車載機器の通信機能を適切に制御することができる。
【0060】
また、本実施形態では、所定の特定音が出力された場合に、音声取得部25は、特定音の反射音を取得し、特定音の出力から反射音の取得までの反射時間の長さに基づき、該特定音が車内で出力されたか否かを判定する判定部26を備える。本実施形態によれば、判定部26は、特定音が出力されてから反射音を取得するまでの反射時間と基準反射時間とを比較して、一定レベル以上の差異を検出した場合、特定音が車内で出力されていない、すなわち車載機器10が車両に搭載されていないと判定する。このため、通信制御部28は、判定部26の判定結果により、車載機器10が車両に搭載されていないと判定された場合に、例えば、広域通信部182を介した携帯情報端末と外部の機器との通信を不可にすることができる。特に、本実施形態では、車載機器10が車両に搭載されており、かつ、車両が走行している場合に、広域の無線通信による外部の機器との通信または近距離無線通信による携帯情報端末との通信を可能な状態とするため、車載機器の通信機能を適切に制御することができる。
【0061】
これまで本発明に係る車載機器について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0062】
図示した車載機器の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0063】
車載機器の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0064】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。
【0065】
上記の車載機器10の無線LANルータとしての無線通信機能は、車載機器10とは別体の通信装置であってもよい。別体の通信装置は、近距離通信部181、広域通信部182、近距離通信制御部281および広域通信制御部282の機能を有する。車載機器10と別体の通信装置とは、近距離通信によって通信可能である。
【0066】
上記の車載機器10は、近距離無線通信を行う機能を有していなくてもよい。この場合、車載機器10は、無線LANルータとしての無線通信機能を備えない。車載機器10が車両から持ち出されたときに、車載機器10の通信を不可にする。または、車両が停車中に、車載機器10の通信を制限する。
【0067】
上記の車載機器10において、通信制御部28は、判定部26の判定結果、及び分析部27の分析結果に基づいて、広域通信部182を制御するものとして説明したが、近距離通信部181を制御してもよい。より詳しくは、近距離通信制御部281は、車載機器10が車両に搭載され、かつ車両が走行していると判定される場合、近距離通信部181を介した携帯情報端末と車載機器10との通信を第一状態にする。また、近距離通信制御部281は、車載機器10が車両に搭載されていないと判定される場合、近距離通信部181を介した携帯情報端末と車載機器10との通信を不可(第二状態)にし、車両が停車していると判定される場合、近距離通信部181を介した携帯情報端末と車載機器10との通信を制限(第二状態)する。このようにしても、車載機器10が車両に搭載されていないと判定される場合、もしくは、車両が停車していると判定される場合に、携帯情報端末による車載機器10を介した広域の無線通信の通信網の使用を制限することができる。
【0068】
上記の車載機器10において、周辺音を収音するマイク15は、車外または車内のどちらに設置しても良い。例えば、特定音および反射音を収音する第1マイクと、路面音を収音する第2マイクとを備えた構成とし、第1マイクを車内に配置し、第2マイクは車内、車外どちらに配置してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 車載機器
11 カメラ
12 記録部
13 表示部
14 スピーカ(音声出力部)
15 マイク(収音部)
18 通信部
181 近距離通信部
182 広域通信部
20 制御部(通信制御装置)
21 映像取得部
22 記録制御部
23 表示制御部
24 音声出力制御部
25 音声取得部
26 判定部
27 分析部
28 通信制御部
281 近距離通信制御部
282 広域通信制御部
図1
図2
図3