(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141868
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ろ過装置、ろ過システム、及び、ろ過膜の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 65/04 20060101AFI20230928BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20230928BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20230928BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230928BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20230928BHJP
B01D 29/66 20060101ALI20230928BHJP
B01D 29/64 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B01D65/04
B01D65/02
B01D65/06
C02F1/44 A
B01D29/10 510A
B01D29/10 520B
B01D29/10 520C
B01D29/10 530A
B01D29/38 510C
B01D29/38 520E
B01D29/38 550A
B01D29/38 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048408
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 勘太
【テーマコード(参考)】
4D006
4D116
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA41
4D006JA53Z
4D006JA67Z
4D006KC03
4D006KC13
4D006KC16
4D006KC17
4D006KD15
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4D006KE02P
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4D116QC29D
4D116RR01
4D116RR04
4D116RR19
4D116RR21
4D116RR22
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】効果的にろ過性能を回復できるろ過装置、ろ過システム、及びろ過膜の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係るろ過装置は、ろ過槽と、前記ろ過槽内に設けられ、ろ過処理に用いられる膜と、前記膜の逆流洗浄処理中に、前記ろ過槽内の前記膜の表面を拭き取る拭き取り機器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過槽と、
前記ろ過槽内に設けられ、ろ過処理に用いられる膜と、
前記膜の逆流洗浄処理中に、前記ろ過槽内の前記膜の表面を拭き取る拭き取り機器と、
を備える、ろ過装置。
【請求項2】
前記膜は、外圧式であり、
前記拭き取り機器は、前記膜の表面を直接拭き取る、請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記拭き取り機器が前記膜に接触した状態で、液体が前記膜を通過することが可能な、請求項1又は請求項2に記載のろ過装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のろ過装置と、
原水を前記ろ過槽に供給する原水ポンプと、
前記ろ過槽の原水を吸い込み、前記膜で原水を膜処理するろ過ポンプと、
前記膜処理した処理水を貯留する処理水タンクと、
前記処理水タンクの前記処理水を前記膜に供給する逆洗ポンプと、
前記拭き取り機器を前記膜に対して移動させる駆動源と、
前記原水ポンプ、前記ろ過ポンプ、前記逆洗ポンプ及び前記駆動源を制御するコントローラと、
を備えるろ過システム。
【請求項5】
前記コントローラは、所定の時間、前記原水ポンプ及び前記ろ過ポンプを制御してろ過処理を行うとともに、前記所定の時間経過後、前記逆洗ポンプを制御して、前記ろ過処理とは逆方向に前記処理水を流すとともに、前記駆動源を制御して前記拭き取り機器により前記膜を拭き取る、請求項4に記載のろ過システム。
【請求項6】
前記ろ過槽のTMPを測定するTMP測定装置を備え、
前記コントローラは、前記原水ポンプ及び前記ろ過ポンプを駆動してろ過処理を行うとともに、前記TMP測定装置で測定したTMPが目標TMPの範囲内である場合には、前記ろ過処理を継続し、前記TMP測定装置で測定したTMPが前記目標TMPを超えた場合に、前記逆洗ポンプを制御して、前記ろ過処理とは逆方向に前記処理水を流すとともに、前記駆動源を制御して前記拭き取り機器により前記膜を直接拭き取る、請求項4に記載のろ過システム。
【請求項7】
前記処理水に薬品を添加する薬品ポンプを備え、
前記コントローラは、前記逆洗ポンプ及び前記薬品ポンプを制御して、前記ろ過処理とは逆方向に前記薬品を添加した前記処理水を流す、請求項5又は請求項6に記載のろ過システム。
【請求項8】
請求項4に記載のろ過システムのろ過膜の洗浄方法であって、
前記原水ポンプ及び前記ろ過ポンプを制御してろ過処理を行い、
前記逆洗ポンプを制御して、前記ろ過処理とは逆方向に前記処理水を流すとともに、前記駆動源を制御して前記拭き取り機器により前記膜を拭き取る、ろ過膜の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体をろ過するろ過装置、ろ過システム、及び、ろ過膜の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過方式によって浄水処理を行う場合、ろ過の継続に伴い膜表面および細孔内部にファウラント(膜汚染物質)が堆積する。ファウラントの堆積によって、ろ過性能の低下や処理水質の悪化等の問題が起こる。ファウラントによる膜の汚染を膜ファウリングという。膜ファウリングは、上述のような問題を起こすことから、浄水膜ろ過処理においてファウラントを除去し、膜ファウリングを抑制することが重要である。
【0003】
浄水膜ろ過システムでは、ろ過性能の回復を目的として定期的に膜の洗浄が実施される。膜の洗浄は、物理洗浄と薬品洗浄の2種類に分類される。物理洗浄は水流や気泡等によって、汚染された膜に物理的な力を与え、膜表面や細孔内部のファウラントを除去するものである。一方、薬品洗浄は次亜塩素酸ナトリウムやクエン酸等の薬品中に汚染された膜を曝露することによって、ファウラントを除去するものである。一般に、物理洗浄と比較して薬品洗浄の洗浄効果は大きい。しかし、薬品洗浄は、薬品自体のコストが加わるうえ、特に有機膜を用いる場合は膜へのダメージにより膜寿命の低下を招くことから、頻繁な薬品洗浄は控えることが望ましい。
【0004】
定期的な物理洗浄を行い、物理洗浄によるろ過性能の回復ができなくなった際に薬品洗浄を行うのが一般的であり、浄水膜ろ過システムの安定的な運転のためには物理洗浄によるろ過性能の回復が重要である。
【0005】
従来の物理洗浄の例として、逆流洗浄やろ過膜の下からの曝気(エアースクラビング)が挙げられる。逆流洗浄は、ろ過時と逆方向に比較的清澄な水(一般的にはろ過後の処理水だが、純水等の例もある)を流すことによって、膜内部や膜表面に堆積したファウラントの剥離・除去を目的としている。曝気による洗浄は、膜の下側から空気を添加することで、泡の膜への衝突や乱流の発生による膜表面のファウラントの除去を目的としている。また、曝気によるエネルギー消費の削減を目的として、曝気と粒状担体とを組み合わせた膜洗浄の効果が知られている。また、粒状担体の撹拌と膜モジュールの振動とを組み合わせたろ過処理や、逆流洗浄と2種類の曝気による洗浄とを組み合わせた方法が知られている。
【0006】
曝気や粒状担体等による膜表面の洗浄は、気泡や担体のランダムな動きとそれに伴う乱流の発生とにより膜との衝突・摩擦等を起こしファウラントの除去をねらうという特性上、局所的なファウラント除去にとどまる。よって、曝気や粒状担体等による膜表面の洗浄は、洗浄効果が限定的かつ確率的であり、ろ過性能が十分に回復しない可能性がある。また曝気を用いた場合、エネルギー消費が大きくなることによりコスト面で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-56371号公報
【特許文献2】特開2003-251157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、効果的にろ過性能を回復できるろ過装置、ろ過システム、及びろ過膜の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るろ過装置は、ろ過槽と、前記ろ過槽内に設けられ、ろ過処理に用いられる膜と、前記膜の逆流洗浄処理中に、前記ろ過槽内の前記膜の表面を拭き取る拭き取り機器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るろ過システムの構成を模式的に示す説明図。
【
図2】第1実施形態に係るろ過システムのろ過装置の要部構成を示す説明図。
【
図3】第1実施形態に係るろ過システムに用いられるコントローラの構成を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態に係るろ過システムの逆流洗浄及び拭き取り洗浄における水の流れと拭き取り機器の動作の一例を示す説明図。
【
図5】第1実施形態に係るろ過システムの制御の一例を示す流れ図。
【
図6】第2実施形態に係るろ過システムの構成を模式的に示す説明図。
【
図7】第2実施形態に係るろ過システムの逆流洗浄及び拭き取り洗浄における水の流れと拭き取り機器の動作の一例を示す説明図。
【
図8】他の実施形態に係るろ過システムの構成を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1実施形態に係るろ過システム1の構成を、
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係るろ過システム1の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、ろ過システム1のろ過装置11に用いられるろ過膜としての浄水膜32及び拭き取り機器33の構成を示す説明図である。
図3は、ろ過システム1に用いられるコントローラ20の構成を示すブロック図である。
図4は、ろ過システム1の逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理における水の流れと拭き取り機器33の動作の一例を示す説明図である。
【0012】
図1に示すように、ろ過システム1は、ろ過装置11と、原水タンク12と、原水ポンプ13と、ろ過ポンプ14と、処理水タンク15と、逆洗ポンプ16と、ドレン17と、配管18と、開閉弁19と、コントローラ20と、を備える。
【0013】
ろ過装置11は、ろ過槽31と、ろ過槽31内に収容される浄水膜32と、浄水膜32に対して移動可能な拭き取り機器33と、拭き取り機器33を移動させる駆動源34と、を備える。
【0014】
ろ過槽31は、原水ポンプ13、ろ過ポンプ14、逆洗ポンプ16及びドレン17に配管18を介して接続される。ろ過槽31には、原水ポンプ13から供給された原水タンク12内の被処理水である原水が供給される。ろ過槽31は、内部に設けられた浄水膜32の一次側が原水用の室となり、そして、浄水膜32の二次側が浄水膜32で処理された処理水用の室となる。ろ過槽31は、浄水膜32に接続される配管31aを有し、この配管31aが処理水用の室を構成し、ろ過ポンプ14に接続される。
【0015】
浄水膜32は、原水が通過することで、原水を処理し、清澄な処理水とするろ過膜である。浄水膜32は、外側から内側に水が流れる外-内式(外圧式)のろ過膜である。具体例として、浄水膜32は、多数の細孔を有する。浄水膜32は、膜表面および細孔により、原水に含まれるファウラント(膜汚染物質)の通過を遮断する。浄水膜32の材質は特に限定されないが、物理的耐性に優れたセラミック等で形成されることが望ましい。また浄水膜32の形状は、原水の処理が可能であれば、限定されないが、浄水膜32の表面を拭き取り機器33で直接拭き取りが容易な形状が望ましく、例えば、平膜構造が望ましい。
【0016】
拭き取り機器33は、浄水膜32と相対的に移動する。具体例として、拭き取り機器33は、駆動源34により駆動されることで、浄水膜32に対して移動する。例えば、拭き取り機器33は、浄水膜32に向かって一方向に往復移動する。拭き取り機器33は、浄水膜32と接触しながら移動することで、浄水膜32の表面を直接的に拭き取り、浄水膜32の表面に付着したファウラントを浄水膜32から分離又は除去する。拭き取り機器33は、ろ過装置11の逆流洗浄時において、浄水膜32の表面を拭き取る。拭き取り機器33は、ろ過槽31の容積に対して小さい。拭き取り機器33は、水中において、材質の成分が溶出しない材料で形成される。
【0017】
例えば、拭き取り機器33は、フレーム33aと、フレーム33aに設けられた拭き取り部材33bと、を備える。フレーム33aは、拭き取り部材33bを保持する。また、フレーム33aは、駆動源34に接続され、駆動源34によって浄水膜32に対して移動する。
【0018】
拭き取り部材33bは、例えば、浄水膜32を挟み込み、もしくは包み、上下または左右等に動かすことで膜表面の拭き取りを行う。例えば、拭き取り部材33bが浄水膜32に接触した状態で、浄水膜32を処理水が通過可能に、前記拭き取り部材33bは、処理水を通過可能に形成される。具体例として、拭き取り部材33bは、浄水膜32に接触した状態で、浄水膜32を通過する原水または処理水の流れを阻害しない形状、または、材料により形成される。拭き取り部材33bは、例えば、スポンジ状や海綿体状である。例えば、拭き取り部材33bは、柔軟性のある多孔物質である。なお、拭き取り部材33bは、刷毛状等に形成されてもよい。
【0019】
例えば、拭き取り部材33bは、フレーム33aに対して、着脱可能に形成される。換言すると、拭き取り部材33bの拭き取り効果の維持を目的として、洗浄や取り換えが可能に形成される。
【0020】
拭き取り部材33bは、浄水膜32との接触、摩擦により浄水膜32へダメージを与える可能性を考慮し、浄水膜32に過大な力がかからない配置や拭き取りにおける移動制御とするのが望ましい。
【0021】
駆動源34は、例えば、浄水膜32のろ過を阻害しない待機位置、及び、浄水膜32の拭き取りを行う拭き取り位置の間で、浄水膜32に対して拭き取り機器33を移動させる。例えば、ろ過時においては、駆動源34は、浄水膜32のろ過を阻害しない浄水膜32の上部等において、拭き取り機器33を停止させる。駆動源34は、例えば、モータである。
【0022】
例えば、拭き取り部材33bの待機位置は、ろ過槽31内としてもよく、また、ろ過槽31外としてもよい。例えば、ろ過槽31内を待機位置とすれば、ろ過槽31等の構成が比較的簡易となり、ろ過槽31外を待機位置とすれば、待機位置にあるときに、拭き取り部材33bのメンテナンスや交換が容易となる。
【0023】
原水タンク12は、ろ過槽31で処理する被処理水である原水を貯留する。原水ポンプ13は、原水タンク12の原水をろ過槽31内の浄水膜32へ供給する。原水ポンプ13は、モータ13aを有する。
【0024】
ろ過ポンプ14は、ろ過処理時に駆動される。ろ過ポンプ14は、ろ過槽31内の水を吸い込み、これにより、浄水膜32で原水を膜処理し、処理した処理水を処理水タンク15に供給する。ろ過ポンプ14は、逆流洗浄時は停止し、膜処理を停止する。ろ過ポンプ14は、モータ14aを有する。
【0025】
処理水タンク15は、浄水膜32により処理され、ろ過ポンプ14により供給された処理水を貯留する。
【0026】
逆洗ポンプ16は、逆流洗浄時に駆動される。逆洗ポンプ16は、処理水タンク15の水をろ過槽31の浄水膜32に供給する。即ち、逆洗ポンプ16により供給される処理水は、膜処理時とは逆方向に流れる。逆洗ポンプ16は、モータ16aを有する。
【0027】
ドレン17は、ろ過槽31内の水を排出する。ろ過処理を継続すると、ろ過槽31内の原水側に不純物が濃縮され、逆流洗浄を行うと、不純物が浄水膜32から剥離される。ろ過槽31内の不純物の濃度が高くなると浄水膜32の膜汚染が促進されるため、定期的にろ過槽31内の不純物の濃度の高くなった水をドレン17より系外へ排出する。
【0028】
配管18は、各構成を流体が流通可能に接続する。例えば、配管18は、原水用配管51と、処理水用配管52と、逆洗用配管53と、ドレン用配管54と、を備える。
【0029】
原水用配管51は、原水タンク12及びろ過槽31を接続する。原水用配管51には、原水ポンプ13が設けられる。
【0030】
処理水用配管52は、ろ過槽31及び処理水タンク15を接続する。処理水用配管52には、ろ過ポンプ14が設けられる。
【0031】
逆洗用配管53は、ろ過槽31及び逆洗ポンプ16を接続する。具体例として、逆洗用配管53は、ろ過槽31及びろ過ポンプ14の間の処理水用配管52と、処理水タンク15とを接続する。逆洗用配管53には、逆洗ポンプ16が設けられる。
【0032】
ドレン用配管54は、ろ過槽31及びドレン17を接続する。
【0033】
ここで、原水用配管51及びドレン用配管54は、ろ過槽31内の原水側の室に、換言すると、浄水膜32の外側(一次側)に接続される。また、配管18のうち、処理水用配管52及び逆洗用配管53は、ろ過槽31内の処理水側の室に、換言すると、浄水膜32の内側(二次側)に接続される。
【0034】
開閉弁19は、各配管51~54にそれぞれ設けられる。開閉弁19は、例えば、コントローラ20によって開閉される電磁開閉弁である。複数の開閉弁19は、例えば、原水用配管51に設けられる原水用開閉弁61と、処理水用配管52に設けられるろ過用開閉弁62と、逆洗用配管53に設けられる逆洗用開閉弁63と、ドレン用配管54に設けられるドレン用開閉弁64と、である。
【0035】
原水用開閉弁61は、例えば、原水用配管51の原水ポンプ13及びろ過槽31の間に配置される。ろ過用開閉弁62は、例えば、処理水用配管52の、ろ過槽31及びろ過ポンプ14の間に設けられる。また、ろ過用開閉弁62は、原水用配管51の逆洗用配管53が設けられる部位よりも二次側(ろ過ポンプ14側)に設けられる。
【0036】
コントローラ20は、例えば、ろ過運転として、一定時間(T)の間、原水ポンプ13及びろ過ポンプ14に運転指令を出し、浄水膜32で膜処理を行う。コントローラ20は、ろ過運転時に、原水用開閉弁61及びろ過用開閉弁62を開状態とし、逆洗用開閉弁63及びドレン用開閉弁64を閉状態とする。
【0037】
また、ろ過処理を継続すると、ろ過槽31内の原水側の室に不純物が濃縮され、浄水膜32の汚染が促進されるため、コントローラ20は、ろ過運転時に、所定の時間経過後、定期的に、ドレン用開閉弁64を開状態とする。コントローラ20は、定期的に、所定の時間の間、ドレン用開閉弁64を開状態とし、ろ過槽31の原水側の室内の不純物の濃度の高くなった水をドレン17より系外へ排出する。
【0038】
コントローラ20は、ろ過運転を一定時間(T)行った後、逆流洗浄運転として、原水ポンプ13及びろ過ポンプ14を停止し、一定時間(t)の間、逆洗ポンプ16に運転指令を出す。また、コントローラ20は、逆流洗浄運転時に、拭き取り機器33に移動指令、例えば、上下指令を出し、拭き取り位置で拭き取り機器33で浄水膜32を拭き取る。即ち、コントローラ20は、逆流洗浄時において、拭き取り機器33を駆動し、浄水膜32の表面を拭き取り部材33bが触れるよう移動させて、浄水膜32の表面の拭き取りを行う。コントローラ20は、逆流洗浄時に、原水用開閉弁61及びろ過用開閉弁62を閉状態とし、逆洗用開閉弁63及びドレン用開閉弁64を開状態とする。
【0039】
また、コントローラ20は、逆流洗浄運転終了後、逆洗ポンプ16及び駆動源34に停止指令を出し、逆洗ポンプ16を停止し、拭き取り機器33を待機置に移動させて停止する。
【0040】
これらのように、コントローラ20は、時間によってろ過及び物理洗浄を切り替え、一定時間(T)のろ過、一定時間(t)の物理洗浄、を繰り返し行う。
【0041】
例えば、このようなコントローラ20は、例えば、通信部71、入力部72、インターフェース73、表示部74、設定部75、メモリ76、プロセッサ77及び可変速駆動制御部78を備える。なお、コントローラ20は、一例として、全ての構成を筐内に実装してもよく、また他の例として、可変速駆動制御部78を各モータのモータケーシングに設け、その他の構成を筐体内に設ける構成であってもよい。
【0042】
通信部71は、プロセッサ77により制御され、無線通信技術を用いて、通信端末などの外部装置と通信可能な任意の通信インターフェースである。例えば、外部装置としては、管理サーバ、プログラマブルコントローラ、情報処理や入力処理を行う処理端末等である。通信部71は、例えば、通信モジュール又は通信基板等として実装されていてもよい。通信モジュールは、例えばコネクタを介してコントローラ20の制御基板に着脱自在に設けられてもよい。具体的には、通信部71は、例えば、Bluetooth(登録商標)(例えば、Bluetoothe Low Energyの規格(以下、BLE規格ともいう))、Wi-Fi(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信技術、及び、LTE(Long Term Evolution)(登録商標)等の携帯電話回線を含めた汎用無線通信技術やsigfox(登録商標)等の専用無線通信技術等を含む遠距離無線通信技術等の無線通信技術を用いて、通信端末等の外部装置に接続できる。
【0043】
入力部72は、例えば、ボタンを含む操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス、等のユーザ入力を受け付ける装置と、圧力センサ、マイクロフォン、カメラなどのセンサとの、少なくともいずれかを有する。入力部72は、パラメータ設定、各運転モードの設定等の任意のユーザからの指令であるユーザ入力を受け付ける装置である。
【0044】
インターフェース73は、例えば、駆動源34及び各開閉弁61~64が電気的に接続可能な端子または回路である。例えば、ろ過システム1が圧力センサ、流量センサ、温度センサ、水位検出センサ等を備える場合には、インターフェース73は、これらセンサに接続される。
【0045】
表示部74は、外部に情報や警報を発報する報知手段(報知部)である。表示部74は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどの表示デバイスを有する。また、表示部74は、表示デバイスに代えて、又は、表示デバイスに加えて、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)点灯部等を有していても良い。
【0046】
設定部75は、制御に関するパラメータを設定可能なスイッチ等である。なお、設定部75を設けず、入力部72により制御に関するパラメータを設定する構成としてもよい。
【0047】
メモリ76は、データの読出及び書込が可能な記憶媒体である。メモリ76は、プロセッサ77によって使用されるデータ、原水ポンプ13、ろ過ポンプ14、逆洗ポンプ16、駆動源34の運転データ、各種制御に用いる各種データやプログラム等を格納する。メモリ76は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、ROM(Read only memory)又はNAND型フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。また、メモリ76は、フラッシュメモリを搭載したSSD(Solid State Drive)を含む。また、メモリ76は、不揮発性メモリに加え、電源遮断時に消去してもよいデータが展開されるワークエリアを有するRAMを含み得る。
【0048】
プロセッサ77は、例えば、処理回路とメモリとを含む。プロセッサ77は、典型的にはマイコンであるが、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。プロセッサ77は、例えば、通信制御、表示制御、ポンプ制御などの任意の処理を行う。プロセッサ77は、例えば、インターフェース73等を介して、駆動源34及び各開閉弁61~64に接続される。また、プロセッサ77は、各可変速駆動制御部78のインバータユニットに接続される。
【0049】
可変速駆動制御部78は、例えば、制御するポンプと同数設けられる。可変速駆動制御部78は、原水ポンプ13、ろ過ポンプ14及び逆洗ポンプ16を可変速駆動する。各可変速駆動制御部78は、原水ポンプ13のモータ13a、ろ過ポンプ14のモータ14a、逆洗ポンプ16のモータ16aを制御する。可変速駆動制御部78は、例えば、パワー素子基板と、コンデンサ基板と、リアクトルと、ノイズフィルタ基板と、制御操作基板と、を備える。可変速駆動制御部78は、パワー素子基板、コンデンサ基板、リアクトル及びノイズフィルタ基板の各回路や素子等の実装品によって、インバータユニット(インバータ)を構成する。
【0050】
次に、このように構成されたろ過システム1の制御方法の一例を、
図5に示す流れ図を用いて説明する。ここで、ろ過システム1の制御方法の一例として、ろ過処理及び物理洗浄処理(逆流洗浄処理)の切り替えを、各処理における経過時間で切り替える例を説明する。
【0051】
まず、コントローラ20は、ろ過処理を行う(ステップST11)。具体例として、プロセッサ77は、原水用開閉弁61及びろ過用開閉弁62を制御して開とし、逆洗用開閉弁63及びドレン用開閉弁64を制御して閉とする。また、プロセッサ77は、原水ポンプ13及びろ過ポンプ14を駆動制御する。原水ポンプ13によりろ過槽31に供給された原水は、ろ過ポンプ14により浄水膜32から処理水側に引き抜かれる。これにより、原水タンク12内の被処理水である原水が、ろ過槽31内の浄水膜32を通過して膜ろ過処理されて、処理水が得られる。そして、処理水は、処理水タンク15に供給され、処理水タンク15に貯留される。浄水膜32には、細孔が開いており、原水(被処理水)を細孔の空いた浄水膜32に通すことにより、細孔よりサイズの小さい物質(水分子、イオン、一部の溶存有機物等)だけが浄水膜32を通り抜け、細孔よりサイズの大きい物質は原水側にとどまる。本実施形態において、浄水膜32を通り抜けた水を処理水として扱う。
【0052】
また、プロセッサ77は、ろ過処理開始から一定時間(T)経過したか否かを判定する(ステップST12)。具体例として、プロセッサ77は、ろ過処理を開始したときから計時を開始し、計時した時間が、メモリ76に記憶された一定時間(T)を超えたか否かを判定する。ろ過処理開始から一定時間(T)が経過していない場合(ステップST12のNO)には、プロセッサ77は、ろ過処理を継続する。
【0053】
ここで、膜ろ過処理の継続により浄水膜32の表面や浄水膜32の膜(細孔)内部に懸濁物質や溶存物質等の膜汚染物質(ファウラント)が堆積する。ファウラントの堆積により浄水膜32のろ過抵抗が増加し、ろ過にかかるエネルギーの増加や処理水質の悪化を招く。一般に、ファウラントの堆積による影響を軽減するため、定期的に浄水膜32の物理洗浄として、ろ過時と逆方向に比較的清澄な水(一般的にはろ過後の処理水だが、純水等であってもよい)を流す「逆流洗浄」等が行われる。このため、一定時間(T)は、ろ過にかかるエネルギーの増加や処理水質の悪化を招く前の時間であり、浄水膜32の構成、原水の懸濁物の含有量、原水ポンプ13及びろ過ポンプ14による原水(処理水)の流量等の種々の条件に基づいて、あらかじめ設定され、メモリ76に記憶される。なお、一定時間(T)は、原水の流量等の実際の運転データに基づいてプロセッサ77が設定する構成としてもよい。
【0054】
ろ過処理開始から一定時間(T)が経過した場合(ステップST12のYES)には、プロセッサ77は、ろ過処理を停止し、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を行う(ステップST13)。
【0055】
具体例として、プロセッサ77は、逆流洗浄処理として、ろ過ポンプ14を停止し、原水用開閉弁61及びろ過用開閉弁62を制御して閉とし、逆洗用開閉弁63及びドレン用開閉弁64を制御して開とする。また、プロセッサ77は、逆洗ポンプ16を駆動制御する。
【0056】
逆洗ポンプ16により、ろ過槽31に貯留された処理水が浄水膜32に供給され、そして、浄水膜32を通過することで、浄水膜32に付着したファウラントが浄水膜32から除去され、ろ過槽31の原水側に移動する。そして、浄水膜32から除去されたファウラントを含む水が、ドレン17から排出される。
【0057】
また、プロセッサ77は、逆流洗浄処理と併せて、拭き取り洗浄処理として、駆動源34を駆動制御し、拭き取り部材33bを
図2に示す待機位置から
図4に示す拭き取り位置に移動するとともに、
図4に示すように、拭き取り位置で拭き取り部材33bを移動、例えば、一方向に往復動させる。例えば、プロセッサ77は、拭き取り機器33の上下指令を駆動源34に出力し、拭き取り部材33bを上下移動させて、浄水膜32の表面を拭き取り部材33bで拭き取る。このとき、逆流洗浄処理により、浄水膜32の内側から外側に向かって処理水が流れることから、拭き取り部材33bで拭き取られたファウラントが浄水膜32内に移動することが抑制される。
【0058】
また、プロセッサ77は、逆流洗浄及び拭き取り洗浄開始から一定時間(t)経過したか否かを判定する(ステップST14)。具体例として、プロセッサ77は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を開始したときから計時を開始し、計時した時間が、メモリ76に記憶された一定時間(t)を超えたか否かを判定する。逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理開始から一定時間(t)が経過していない場合(ステップST14のNO)には、プロセッサ77は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を継続する。
【0059】
逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理開始から一定時間(t)が経過した場合(ステップST14のYES)には、プロセッサ77は、駆動源34を制御して、拭き取り機器33を定位置としての待機位置に移動して停止し(ステップST15)、逆洗ポンプ16を停止する(ステップST16)。これらのように、プロセッサ77は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を終了し、ステップST11に戻り、ろ過処理を行う。
【0060】
このように構成されたろ過システム1は、逆流洗浄処理として、ろ過時と逆方向に比較的清澄な水として、処理水を流すことによって、浄水膜32の内部や浄水膜32の表面に堆積したファウラントの剥離・除去を行うことができる。また、ろ過システム1は、逆流洗浄時にスポンジ等の拭き取り部材33bで浄水膜32を挟み込み、もしくは包み、上下または左右等に動かすことにより、拭き取り部材33bで浄水膜32の表面の拭き取りを行う拭き取り洗浄処理を行う。これら逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理によって、浄水膜32のファウラントの剥離及び除去を効率よく行うことができることから、効果的にろ過性能を回復できる。
【0061】
なお、ファウリングが進行した浄水膜32の表面を拭き取り部材33bによって押さえつけることによって、ファウラントが浄水膜32の内部に侵入し、浄水膜32の内部のファウリングを進行させる恐れがある。しかしながら、本実施形態のろ過システム1においては、逆流洗浄時と併せて拭き取り洗浄処理を行うことで、浄水膜32の内側から外側への処理水の流れが生じていることから、拭き取り洗浄においてファウラントが浄水膜32の内部への侵入を抑えることができる。
【0062】
また、拭き取り部材33bは、浄水膜32を内側から外側へと通過する処理水の流れを阻害しない形状、または、材料により形成される。このため、逆流洗浄処理と同時に拭き取り洗浄処理を行っても、浄水膜32の細孔内を通る液体の流れが阻害されることを抑制し、逆流洗浄による洗浄効果を阻害しない。また、拭き取り部材33bをフレーム33aに対して着脱可能とすることで、ろ過装置11は、メンテナンスが容易となる。
【0063】
また、ろ過システム1は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を行うことで、局所的でなく浄水膜32の膜表面全体の一律なファウラント除去が可能となり、より効果的なろ過性能の回復が期待できる。またろ過システム1は、物理洗浄時にエネルギー消費の大きい曝気を必要としない。
【0064】
以上説明した第1実施形態によれば、浄水膜32を逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を同時に行うことで、効果的にろ過性能を回復できる。
【0065】
なお、実施形態は上述した構成に限定されない。例えば、上述したろ過システム1では、浄水膜32の洗浄処理として、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を行う構成を説明したが、さらに、薬液による浄水膜32の薬品逆流洗浄処理を行う構成としてもよい。また、上述したろ過システム1では、時間によってろ過処理及び物理洗浄処理(逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理)を切り替える例を説明したがこれに限定されず、例えば、TMP(膜間差圧:Trans-membrane pressure)によりろ過処理及び物理洗浄処理を切り替える構成としてもよい。
【0066】
以下、
図6及び
図7を用いて、第2実施形態に係る薬液逆流洗浄処理を行うとともに、TMPによりろ過処理及び物理洗浄処理を切り替えるろ過システム1の例を説明する。
図6は、第2実施形態に係るろ過システム1Aの構成を模式的に示す説明図であり、
図7は、第2実施形態に係るろ過システム1Aの制御の一例を示す流れ図である。なお、第2の実施形態に係るろ過システム1Aの構成のうち、上述した第1の実施形態に係るろ過システム1と同様の構成には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図6に示すように、ろ過システム1Aは、ろ過装置11と、原水タンク12と、原水ポンプ13と、ろ過ポンプ14と、処理水タンク15と、逆洗ポンプ16と、ドレン17と、配管18と、開閉弁19と、コントローラ20と、TMP測定装置21と、薬品タンク22と、薬品ポンプ23と、を備える。
【0068】
配管18は、薬品タンク22、薬品ポンプ23及び逆洗用配管53を接続する薬品用配管55をさらに備える。薬品用配管55は、逆洗ポンプ16及び逆洗用開閉弁63の間に接続される。
【0069】
複数の開閉弁19は、薬品用配管55に設けられる薬品用開閉弁65をさらに有する。薬品用開閉弁65は、薬品ポンプ23及び逆洗用配管53の間に配置される。
【0070】
TMP測定装置21は、ろ過処理時、及び、物理洗浄後のTMP(膜間差圧)を継続的に測定し、測定した膜間差圧値に対応する信号をコントローラ20に出力する。なお、TMP測定装置21は、浄水膜32の一次側及び二次側の圧力を測定することで、膜間差圧値を求める構成であってもよい。
【0071】
薬品タンク22は、薬品逆流洗浄において処理水に添加する薬品を貯めるタンクである。ここで、薬品は、例えば次亜塩素酸ナトリウムやクエン酸等である。
【0072】
薬品ポンプ23は、薬品タンク22内の薬品を所定の添加量だけ、処理水に添加する。例えば、薬品ポンプ23は、コントローラ20より、逆洗用配管53を流れる処理水に対する薬品の濃度が所定の濃度となるように駆動制御される。
【0073】
このようなろ過システム1Aのコントローラ20は、例えば、プロセッサ77により、ろ過処理時において、TMP測定装置21からの入力信号により現在のTMPとメモリ76に記憶された目標TMPを比較し、目標TMPが実測値であるTMPよりも大きい間、ろ過ポンプ14に運転指令を出し、ろ過ポンプ14を駆動制御する。また、プロセッサ77は、目標TMPよりも実測値であるTMPが大きくなると、ろ過ポンプ14に停止指令を出し、そして、逆洗ポンプ16運転指令を出し、逆流洗浄処理を一定時間(t)の間行う。また、プロセッサ77は、逆流洗浄処理時に、駆動源34に移動指令(上下指令)を行い、駆動源34を駆動制御し、拭き取り機器33を待機位置から拭き取り位置に移動させるとともに、拭き取り位置において、拭き取り部材33bを移動させて、浄水膜32の拭き取り洗浄処理を行う。
【0074】
プロセッサ77は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を一定時間(t)の間行った後、TMP測定装置21から入力された信号(TMPの実測値)が一定値以内であれば逆洗ポンプ16に停止指令を行うとともに、駆動源34を制御して拭き取り機器33を待機位置に移動させる。そして、プロセッサ77は、ろ過ポンプ14に運転指令を出してろ過処理を行う。
【0075】
プロセッサ77は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を一定時間(t)の間行った後、TMP測定装置21から入力された信号(TMPの実測値)が一定値よりも大きい場合には、逆洗ポンプ16の駆動を継続するとともに、薬品ポンプ23に運転指令を出し、一定時間(t’)薬品を処理水に添加した薬品逆流洗浄処理を行う。薬品ポンプ23に運転指令を出した際は、プロセッサ77は、一定時間(t’)後に薬品ポンプ23の停止指令及び逆洗ポンプ16の停止指令を行い、ろ過ポンプ14の運転指令を出す。なお、プロセッサ77は、逆洗ポンプ16の停止指令を行い、及び/又は、ろ過ポンプ14の運転指令を出すときに、ドレン用開閉弁64を制御して開とすることで、ろ過槽31内や処理水用配管52内の薬品が混合した水をドレン17より系外へ排出する。
【0076】
次に、このように構成された、ろ過システム1Aの制御方法の一例を、
図7に示す流れ図を用いて説明する。ここで、ろ過システム1Aの制御方法の一例として、ろ過処理及び物理洗浄処理(逆流洗浄処理)の切り替えを、TMPに基づいて切り替え、そして、逆流洗浄処理、拭き取り洗浄処理及び薬品添加逆流洗浄処理の停止を経過時間で切り替える例を説明する。
【0077】
まず、コントローラ20は、ステップST11と同様に、ろ過処理を行う(ステップST21)。また、プロセッサ77は、TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)とメモリ76に記憶された目標TMPから、浄水膜32の表面や内部に懸濁物等のファウラントが堆積したか否かを判定する(ステップST22)。即ち、膜ろ過処理の継続により浄水膜32の表面や内部に懸濁物等の膜汚染物質(ファウラント)が堆積すると、ファウラントの堆積によりろ過抵抗が増加し、TMPが上昇する。このため、プロセッサ77は、TMPの変化によって、ろ過処理の継続時間に関係なく、目標とするTMPの値を超えた時点で物理洗浄に切り替える。
【0078】
TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMPの範囲内である場合(ステップST22のNO)には、プロセッサ77は、ろ過処理を継続する。TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMPを超えた場合(ステップST22のYES)には、プロセッサ77は、ステップST13と同様に、ろ過処理を停止し、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を行う(ステップST23)。
【0079】
また、プロセッサ77は、ステップST14と同様に、逆流洗浄及び拭き取り洗浄開始から一定時間(t)経過したか否かを判定する(ステップST24)。逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理開始から一定時間(t)が経過していない場合(ステップST24のNO)には、プロセッサ77は、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を継続する。
【0080】
逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理開始から一定時間(t)が経過した場合(ステップST24のYES)には、プロセッサ77は、駆動源34を制御して、拭き取り機器33を定位置としての待機位置に移動して停止し(ステップST25)、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理後のTMP測定装置21で測定したTMP(実測値)がメモリ76に記憶された目標TMP以上であるか否かを判定する(ステップST26)。即ち、プロセッサ77は、ステップST26において、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理によって、浄水膜32の表面や内部に堆積した懸濁物等のファウラントが除去できたか否かを判定する。
【0081】
TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMPの範囲内である場合(ステップST26のNO)には、十分な洗浄効果があったと判断し、プロセッサ77は、ステップST21に戻り、ろ過処理を行う。TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMP以上である場合(ステップST26のYES)には、物理洗浄では除去しきれないファウラントの堆積が深刻であると判断し、プロセッサ77は、逆流洗浄よりも強力な薬品による膜洗浄である薬品逆流洗浄を行う(ステップST27)。
【0082】
具体例として、プロセッサ77は、薬品ポンプ23を駆動するとともに、薬品用開閉弁65を開き、所定量の薬品を、逆洗用配管53内を流れる処理水に添加し、薬品が添加された処理水で逆流洗浄を行う。なお、薬品を用いた浄水膜32の洗浄は、薬品自体のコスト増加だけでなく、特に浄水膜32に有機膜を用いる場合には、浄水膜32にダメージを与えるため、頻繁に行うと浄水膜32の寿命に影響し、膜交換によるランニングコストの増加を招く。そのため本実施形態の例では、ステップST26及びステップST27のように、薬品を用いた洗浄は、深刻な膜汚染により物理洗浄のみでは十分な洗浄効果が得られないと判断した場合に行う。
【0083】
また、プロセッサ77は、薬品逆流洗浄開始から一定時間(t’)経過したか否かを判定する(ステップST28)。逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理開始から一定時間(t’)が経過していない場合(ステップST28のNO)には、プロセッサ77は、薬品逆流洗浄処理を継続する。
【0084】
薬品逆流洗浄処理開始から一定時間(t’)が経過した場合(ステップST28のYES)には、プロセッサ77は、薬品ポンプ23に停止指令を行い、薬品ポンプ23を停止する(ステップST29)。また、ドレン17から薬品が添加された水を排出した後、プロセッサ77は、逆洗ポンプ16を停止し、ステップST21に戻り、ろ過処理を行う。
【0085】
このように構成されたろ過システム1Aは、上述したろ過システム1と同様の効果を奏するとともに、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理でファウラントを除去しきれないときに、薬液を添加して浄水膜32を洗浄する薬液逆流洗浄処理を行う。これにより、逆洗処理よりも強力に、浄水膜32に堆積したファウラントを除去することができる。
【0086】
また、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理後に、薬液逆流洗浄処理を行うかをプロセッサ77が判定することで、浄水膜32の寿命が低下することを極力抑制できる。
【0087】
また、TMP測定装置21で測定したTMPによって、逆流洗浄処理、拭き取り洗浄処理及び薬品逆流洗浄処理を行うか否かを判定することで、時間によらず、浄水膜32の状態に基づいて浄水膜32のろ過性能を回復することができる。
【0088】
以上説明した第2実施形態によれば、浄水膜32に逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を同時に行うとともに、逆流洗浄処理、拭き取り洗浄処理及び薬品逆流洗浄処理を選択的に行うことで、効果的にろ過性能を回復できる。
【0089】
なお、実施形態は上述した複数の構成に限定されない。例えば、上述した第2の実施形態においては、TMP測定装置21で測定したTMPによって、逆流洗浄処理、拭き取り洗浄処理及び薬品逆流洗浄処理を行うか否かを判定し、そして、経過時間によって、逆流洗浄処理、拭き取り洗浄処理及び薬品逆流洗浄処理の停止を判定する例を説明した。しかしながら、ろ過システムは、経過時間によらず、TMPによって逆流洗浄処理、拭き取り洗浄処理及び薬品逆流洗浄処理の停止を判定してもよく、また、薬液添加逆洗をTMPによらず、逆流洗浄及び拭き取り洗浄の回数によって実施する構成としてもよい。
【0090】
また、上述したろ過システム1、1Aは、各種運転データを、管理サーバ、プログラマブルコントローラ、情報処理や入力処理を行う処理端末等の外部装置に送信する例を説明した。ここで、ろ過システム1、1Aは、逆流洗浄、拭き取り洗浄及び/又は薬液逆流洗浄の回数を運転データとして外部装置に送信してもよい。また、ろ過システム1Aは、薬液逆流洗浄処理後として、ステップST28の後に、TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)及び目標TMPを比較し、TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMP以上である場合に、表示部74において警報を発報するとともに、通信部71から警報を外部装置に送信する構成としてもよい。このように警報を外部に送信することで、管理システムとして、遠隔地等においても、メンテナンス情報等を取得可能となる。
【0091】
また、ろ過システム1Aは、ステップST26及びステップST27の間に、複数回、逆流洗浄及び拭き取り洗浄をリトライして、浄水膜32のファウラントの除去を行い、浄水膜32が回復させる制御を行ってもよい。例えば、このような構成とする場合には、ステップST26のYESとして、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理後にTMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMP以上である場合に、プロセッサ77は、ステップST23に戻り、TMP測定装置21で測定したTMP(実測値)が目標TMPの範囲内となるまで、所定の回数nだけ、逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を繰り返す。そして、所定の回数nだけ逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を繰り返しても、TMP(実測値)が目標TMP以上である場合に、プロセッサ77は、ステップST27へと進み、薬品を処理水に添加して、薬品逆流洗浄処理を行う構成とすればよい。
【0092】
また、例えば、
図8に示す他の実施形態に係るろ過システム1Bのように、ろ過槽31の二次側に、ドレン17に接続されるドレン用配管56及びドレン用開閉弁66をさらに備える構成としてもよい。例えば、ろ過槽31の二次側にさらにドレン用配管56及びドレン用開閉弁66を設けることで、逆流洗浄や薬品逆流洗浄において、ろ過槽31の処理水側の室、浄水膜32の内部及び処理水用配管52等の浄水膜32の二次側にファウラントが含まれる処理水や薬品が含まれる処理水が残存することを防止できる。このようなドレン用配管56は、例えば、処理水用配管52であって、ろ過槽31と、ろ過用開閉弁62及び逆洗用配管53と、の間に接続される。
【0093】
また、上述したろ過システム1は、浄水に用いる例を説明したがこれに限定されない。即ち、膜を用いて水をろ過する構成であって、且つ、膜を逆流洗浄及び拭き取り洗浄を行うことが可能なろ過システムであれば、ろ過システムの使用方法は限定されない。
【0094】
以上説明したいずれかの実施形態によれば、膜に逆流洗浄処理及び拭き取り洗浄処理を同時に行うことで、効果的にろ過性能を回復できる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1、1A、1B…ろ過システム、11…ろ過装置、12…原水タンク、13…原水ポンプ、13a…モータ、14…ろ過ポンプ、14a…モータ、15…処理水タンク、16…逆洗ポンプ、16a…モータ、17…ドレン、18…配管、19…開閉弁、20…コントローラ、21…TMP測定装置、22…薬品タンク、23…薬品ポンプ、31…ろ過槽、31a…配管、32…浄水膜、33…拭き取り機器、33a…フレーム、33b…拭き取り部材、34…駆動源、51…原水用配管、52…処理水用配管、53…逆洗用配管、54…ドレン用配管、55…薬品用配管、56…ドレン用配管、61…原水用開閉弁、62…ろ過用開閉弁、63…逆洗用開閉弁、64…ドレン用開閉弁、65…薬品用開閉弁、66…ドレン用開閉弁、71…通信部、72…入力部、73…インターフェース、74…表示部、75…設定部、76…メモリ、77…プロセッサ、78…可変速駆動制御部。