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特開2023-141885弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、および弾性波デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141885
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、および弾性波デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20230928BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20230928BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20230928BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048451
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】川原 尚由
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 諭
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097BB02
5J097BB15
5J097BB17
5J097DD19
5J097DD28
5J097EE08
5J097EE09
5J097FF03
5J097HA02
5J097HA03
5J097HA04
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】電気抵抗が高くなることを抑制した弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】弾性波デバイス100は、上面30と下面32とを有し、上面30は、第1領域40と、第1領域40より下面32の近くに位置する第2領域42と、第1領域40と第2領域42との間の斜めに傾いた側面46を有する段差44と、を有する基板10と、第1領域40に設けられた弾性波素子18と、第2領域42に設けられた第1の部分52と、第1の部分52から連続し、段差44の側面46に沿って第1の部分52より盛り上がって設けられ、先端56が段差44の側面46上に位置する第2の部分54と、を有する金属層50と、金属層50の第1の部分52と第2の部分54とに重なって第2領域42から第1領域40にかけて設けられ、弾性波素子18に電気的に接続する金属層60とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面は、第1領域と、前記第1領域より前記第2面の近くに位置する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の斜めに傾いた側面を有する段差と、を有する基板と、
前記第1領域に設けられた弾性波素子と、
前記第2領域に設けられた第1の部分と、前記第1の部分から連続し、前記段差の前記側面に沿って前記第1の部分より盛り上がって設けられ、先端が前記段差の前記側面上に位置する第2の部分と、を有する第1金属層と、
前記第1金属層の前記第1の部分と前記第2の部分とに重なって前記第2領域から前記第1領域にかけて設けられ、前記弾性波素子に電気的に接続する第2金属層と、を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
前記基板は、支持基板と前記支持基板上に接合された圧電基板とを含み、前記第1領域は前記圧電基板の上面であり、前記段差は前記圧電基板を貫通して設けられ、前記段差の前記側面は前記圧電基板の側面を含む、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
平面視において、前記段差の前記側面では前記第2金属層の全体が前記第1金属層の前記第2の部分に重なっている、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
断面視において、前記第1金属層の前記第2の部分の前記先端側に位置する第1箇所での前記段差の前記側面に垂直な方向の厚さは、前記第1金属層の前記第2の部分の前記第1箇所より前記段差の下側に位置する第2箇所での前記段差の前記垂直な方向の厚さ以下である、請求項1から3のいずれか一向に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記基板内に前記第1面から前記第2面に貫通して設けられ、平面視において前記第1金属層の前記第1の部分と重なり、前記第1金属層の前記第1の部分に接触するビア配線を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【請求項8】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面は、弾性波素子が形成された第1領域と、前記第1領域より前記第2面の近くに位置する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の斜めに傾いた側面を有する段差と、を有する基板の前記第1面上に、前記第2領域を露出する開口を有し、前記開口の側面が前記段差の前記側面上に位置するマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして第1金属層を成膜する工程と、
前記第1金属層を成膜した後、前記マスク層を除去する工程と、
前記マスク層を除去した後、前記第2領域に設けられた前記第1金属層の第1の部分と前記段差の側面に沿って前記第1の部分より盛り上がって設けられた前記第1金属層の第2の部分とに重なって前記第2領域から前記第1領域にかけて延びて前記弾性波素子に電気的に接続する第2金属層を形成する工程と、を備える弾性波デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記マスク層を除去する工程は、前記第1金属層の成膜によって前記第1金属層に形成されたバリが前記マスク層の除去後に前記段差の側面に沿って倒れているように前記マスク層を除去する、請求項8に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1金属層を成膜する工程は、スパッタリング法または蒸着法を用いて前記開口で露出した前記第2領域から前記開口の側面にかけて前記第1金属層を成膜し、
前記マスク層を除去する工程は、前記バリが前記マスク層の除去後に倒れているように液体を用いて前記マスク層を除去する、請求項9に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記マスク層を除去する工程は、前記バリが前記マスク層の除去後に倒れているように前記液体を乾燥させる工程を含む、請求項10に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、および弾性波デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持基板に圧電基板を接合した基板を用い、支持基板上から圧電基板の傾斜側面を介して圧電基板上に延びる配線を形成することが知られている(例えば特許文献1)。また、配線を形成したときに、配線の端部にバリと呼ばれる突起部が形成されることがある。そこで、バリの発生を抑制する製造方法が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/098678号
【特許文献2】特開2005-166972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の上面に、弾性波素子が形成された第1領域と第1領域よりも基板の下面の近くに位置する第2領域とが形成されている場合に、第2領域から第1領域と第2領域の間の段差の側面を介して第1領域に金属層を設ける場合がある。この場合に、金属層が第1領域と第2領域の間の段差の側面で薄くなり、電気抵抗が高くなってしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電気抵抗が高くなることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面は、第1領域と、前記第1領域より前記第2面の近くに位置する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の斜めに傾いた側面を有する段差と、を有する基板と、前記第1領域に設けられた弾性波素子と、前記第2領域に設けられた第1の部分と、前記第1の部分から連続し、前記段差の前記側面に沿って前記第1の部分より盛り上がって設けられ、先端が前記段差の前記側面上に位置する第2の部分と、を有する第1金属層と、前記第1金属層の前記第1の部分と前記第2の部分とに重なって前記第2領域から前記第1領域にかけて設けられ、前記弾性波素子に電気的に接続する第2金属層と、を備える弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記基板は、支持基板と前記支持基板上に接合された圧電基板とを含み、前記第1領域は前記圧電基板の上面であり、前記段差は前記圧電基板を貫通して設けられ、前記段差の前記側面は前記圧電基板の側面を含む構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、平面視において、前記段差の前記側面では前記第2金属層の全体が前記第1金属層の前記第2の部分に重なっている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、断面視において、前記第1金属層の前記第2の部分の前記先端側に位置する第1箇所での前記段差の前記側面に垂直な方向の厚さは、前記第1金属層の前記第2の部分の前記第1箇所より前記段差の下側に位置する第2箇所での前記段差の前記垂直な方向の厚さ以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記基板内に前記第1面から前記第2面に貫通して設けられ、平面視において前記第1金属層の前記第1の部分と重なり、前記第1金属層の前記第1の部分に接触するビア配線を備える構成とすることができる。
【0011】
本発明は、上記に記載の弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0012】
本発明は、上記に記載のフィルタを含むマルチプレクサである。
【0013】
本発明は、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面は、弾性波素子が形成された第1領域と、前記第1領域より前記第2面の近くに位置する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の斜めに傾いた側面を有する段差と、を有する基板の前記第1面上に、前記第2領域を露出する開口を有し、前記開口の側面が前記段差の前記側面上に位置するマスク層を形成する工程と、前記マスク層をマスクとして第1金属層を成膜する工程と、前記第1金属層を成膜した後、前記マスク層を除去する工程と、前記マスク層を除去した後、前記第2領域に設けられた前記第1金属層の第1の部分と前記段差の側面に沿って前記第1の部分より盛り上がって設けられた前記第1金属層の第2の部分とに重なって前記第2領域から前記第1領域にかけて延びて前記弾性波素子に電気的に接続する第2金属層を形成する工程と、を備える弾性波デバイスの製造方法である。
【0014】
上記構成において、前記マスク層を除去する工程は、前記第1金属層の成膜によって前記第1金属層に形成されたバリが前記マスク層の除去後に前記段差の側面に沿って倒れているように前記マスク層を除去する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第1金属層を成膜する工程は、スパッタリング法または蒸着法を用いて前記開口で露出した前記第2領域から前記開口の側面にかけて前記第1金属層を成膜し、前記マスク層を除去する工程は、前記バリが前記マスク層の除去後に倒れているように液体を用いて前記マスク層を除去する構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記マスク層を除去する工程は、前記バリが前記マスク層の除去後に倒れているように前記液体を乾燥させる工程を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図、図1(b)は、図1(a)近傍における平面図である。
図2図2(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図2(b)は、図1(a)における段差近傍を拡大した断面図である。
図3図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図4図4(a)から図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図5図5(a)から図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図6図6(a)から図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その3)である。
図7図7(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図、図7(b)は、図7(a)における段差近傍を拡大した断面図である。
図8図8(a)は、比較例2に係る弾性波デバイスの断面図、図8(b)は、図8(a)における段差近傍を拡大した断面図である
図9図9(a)は、比較例3に係る弾性波デバイスの断面図、図9(b)は、図9(a)における段差近傍を拡大した断面図である。
図10図10(a)から図10(e)は、比較例3においてバリが形成される工程を示す断面図である。
図11図11(a)から図11(e)は、実施例1においてバリが形成される工程を示す断面図である。
図12図12は、金属層の第2の部分の他の形状の例を示す断面図である。
図13図13(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図、図13(b)は、実施例2における弾性波素子の断面図である。
図14図14は、実施例3に係るフィルタの回路図である。
図15図15は、実施例4に係るデュプレクサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0020】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の断面図、図1(b)は、図1(a)近傍における平面図である。図2(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の平面図、図2(b)は、図1(a)における段差44近傍を拡大した断面図である。図1(a)および図1(b)に示すように、弾性波デバイス100は、支持基板12の上面に圧電基板14が接合された基板10を備える。基板10は、支持基板12と圧電基板14の間に絶縁層16が設けられていてもよい。支持基板12は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、またはシリコン基板である。圧電基板14は、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。支持基板12の線膨張係数は圧電基板14の線膨張係数よりも小さい。絶縁層16は、例えば酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、または窒化シリコン層等の単層膜もしくはこれらを含む積層膜である。
【0021】
基板10は、支持基板12上に圧電基板14が設けられた領域と、圧電基板14が設けられていない領域と、を有する。このため、基板10の上面30は、略平坦な第1領域40と、第1領域40よりも基板10の下面32の近くに位置する略平坦な第2領域42と、を有する。基板10の上面30のうち第1領域40は圧電基板14の上面であり、第2領域42は支持基板12の上面である。第1領域40と第2領域42との間には段差44が形成されていて、段差44の側面46は斜めに傾いた傾斜面となっている。段差44の側面46は、圧電基板14の側面であり、絶縁層16が設けられている場合では圧電基板14と絶縁層16の側面である。基板10の下面32は略平坦である。図1(b)においては、図の明瞭化のために、第1領域40と第2領域42との間の段差44の側面46にハッチングを付している。
【0022】
圧電基板14の上面に弾性波素子18が設けられている。すなわち、基板10の上面30の第1領域40に弾性波素子18が設けられている。圧電基板14が設けられていない領域において、支持基板12を貫通するビア配線20が設けられている。すなわち、基板10の上面30の第2領域42の下方に、基板10の上面30から下面32にかけて貫通するビア配線20が設けられている。基板10の下面32に、ビア配線20に接触する端子22が設けられている。端子22は、弾性波素子18を外部と接続するためのフットパッドである。ビア配線20および端子22は、例えば銅層、アルミニウム層、白金層、ニッケル層、または金層等の金属層である。
【0023】
第2領域42から第1領域40と第2領域42の間との段差44の側面46にかけて金属層50が設けられている。金属層50は、第2領域42に設けられた第1の部分52と、第1の部分52から連続し、段差44の側面46に沿って第1の部分52より盛り上がって設けられた第2の部分54と、を有する。第1の部分52は、平面視において、ビア配線20に重なってビア配線20に接触している。第1の部分52は、平面視において、ビア配線20より大きく、ビア配線20全体を覆っている。第2の部分54の先端56は段差44の側面46上に位置している。金属層50はパッドとしての役割を担う。
【0024】
金属層50は、周縁部に突起部58を有する。突起部58は、金属層50を形成するときに生じたバリにより形成される。バリは、金属層50の第1の部分52の周縁部だけでなく、第2の部分54の周縁部にも形成される。しかしながら、第2の部分54に形成されたバリは、第1の部分52に形成されたバリに比べて倒れていて、段差44の側面46に沿うように設けられている。この点の詳細については後述する。金属層50は、例えばチタン層、窒化チタン層、ニッケル層、タングステン層、クロム層、錫層、または白金層等である。
【0025】
金属層50の第1の部分52と第2の部分54に重なり、第2領域42から段差44の側面46を経由して第1領域40に延びた金属層60が設けられている。金属層60は、弾性波素子18と金属層50とに接触している。したがって、弾性波素子18は、金属層60と金属層50とビア配線20とを介して端子22に電気的に接続されている。金属層60は、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する配線としての役割を担う。金属層60は、例えば金層、銅層、銀層、アルミニウム層、またはマグネシウム層等の電気抵抗率が比較的低い材料で形成されている。
【0026】
図1(a)、図1(b)、および図2(a)に示すように、基板10の周縁に、圧電基板14を囲んで環状金属層24が設けられている。環状金属層24上に環状接合層26が設けられている。環状接合層26上にリッド28が設けられている。図2(a)において、リッド28にハッチングを付している。図1(b)においては、リッド28を透視して、圧電基板14等を図示している。環状接合層26は、環状金属層24とリッド28とを接合する。環状金属層24は、例えばニッケル層または銅層である。環状接合層26は、例えば錫銀または錫銀銅等の半田である。リッド28は、例えばコバール等の金属板またはサファイア基板等の絶縁板である。環状金属層24、環状接合層26、およびリッド28により、弾性波素子18は空隙29に封止されている。
【0027】
図2(b)に示すように、金属層50の厚さT1は例えば0.05μm~2μmである。金属層60は、例えば金属層50よりも厚く、厚さT2は例えば0.2μm~10μmである。第1領域40と第2領域42との間の段差44の幅Wは例えば2μm~18μmである。圧電基板14の側面の傾斜角度に相当する段差44の側面46の傾斜角度θは例えば40°~70°である。圧電基板14の厚さに相当する段差44の高さH1は例えば2μm~15μmである。段差44の高さH1は、例えば金属層50の厚さT1と金属層60の厚さT2との和の1.5倍以上であり、2倍以上でもよい。金属層50の第2の部分54の先端56と段差44の側面46の下端との間の距離Lは、例えば段差44の幅Wの1/5以上2/3以下であり、1/4以上1/2以下でもよいし、1/3以上1/2以下でもよい。段差44の下から金属層50の第2の部分54の先端56までの高さH2は、例えば段差44の高さH1の1/5以上2/3以下であり、1/4以上1/2以下でもよいし、1/3以上1/2以下でもよい。
【0028】
金属層50の第2の部分54は、先端56に向かって細くなる先細りの形状をしている。すなわち、段差44の側面46に垂直な方向において、第2の部分54の先端56側に位置する箇所55での厚さは、箇所55よりも段差44の下側に位置する箇所57での厚さより小さくなっている。
【0029】
図3は、実施例1における弾性波素子18の平面図である。図3に示すように、実施例1における弾性波素子18は弾性表面波共振器である。圧電基板14上にIDT(Interdigital Transducer)70と反射器71が形成されている。IDT70は、互いに対向する一対の櫛型電極72を有する。櫛型電極72は、複数の電極指73と複数の電極指73を接続するバスバー74とを有する。反射器71は、IDT70の両側に設けられている。IDT70が圧電基板14に弾性表面波を励振する。弾性波の波長は一対の櫛型電極72のうちの一方の櫛型電極72の電極指73のピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は一対の櫛型電極72の電極指73のピッチの2倍にほぼ等しい。IDT70および反射器71は例えばアルミニウム膜、銅膜、またはモリブデン膜により形成される。圧電基板14上にIDT70および反射器71を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。
【0030】
[製造方法]
図4(a)から図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。図4(a)に示すように、支持基板12の上面にレーザ光を照射し穴90を形成する。レーザ光を照射して穴90を形成すると、穴90の側面はテーパ形状となる。穴90の内面および支持基板12の上面に例えばスパッタリング法を用いシード層91を形成する。シード層91上に例えばめっき法を用いめっき層92を形成する。シード層91およびめっき層92は同じ金属材料からなり例えば銅層である。シード層91と支持基板12との間にチタン層等の密着層を設けてもよい。支持基板12の上面が露出するように、支持基板12の上面に形成されためっき層92およびシード層91を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、穴90内にシード層91およびめっき層92からなる金属層93が形成される。以下の図面では、シード層91およびめっき層92の図示を省略し金属層93として図示する。
【0031】
図4(b)に示すように、支持基板12の上面と圧電基板14の下面を例えば表面活性化法を用いた常温接合により接合する。例えば、支持基板12の上面と圧電基板14の下面とをその間に絶縁層16を介して接合する。支持基板12と圧電基板14とは数nmのアモルファス層等を介して直接接合されてもよい。圧電基板14の上面を例えばCMP法により平坦化する。これにより、圧電基板14を所望の厚さとする。支持基板12と絶縁層16と圧電基板14により基板10が形成される。次いで、圧電基板14の上面に弾性波素子18を例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い形成する。
【0032】
図4(c)に示すように、圧電基板14および絶縁層16を貫通する開口94を例えばウエットエッチング法またはドライエッチング法を用い形成する。このとき、支持基板12はほとんどエッチングされない。開口94は、金属層93が露出するように形成される。開口94の側面はテーパ状となる。これにより、基板10の上面30は、圧電基板14の上面に対応する略平坦な第1領域40と、支持基板12の上面に対応し、第1領域40に対して凹んだ略平坦な第2領域42と、を有するようになる。第1領域40と第2領域42との間には段差44が形成され、段差44の側面46はテーパ状となる。基板10の下面32には金属層93は露出していない。
【0033】
図5(a)に示すように、基板10上に、金属層50を形成する領域に開口95を有するマスク層96を形成する。マスク層96は例えばレジスト膜である。マスク層96の開口95は、基板10の上面30の第2領域42の少なくとも一部を露出する。マスク層96の開口95の側面の少なくとも一部は第1領域40と第2領域42との間の段差44の側面46上に設けられる。
【0034】
図5(b)に示すように、マスク層96をマスクとして、基板10上に例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い金属層50を成膜する。マスク層96の開口95の側面にはバリ97が形成される。
【0035】
図5(c)に示すように、エッチング溶液を用いてマスク層96を除去し、純水を用いて洗浄した後、乾燥処理によって純水を取り除く。マスク層96を除去した後、金属層50に形成されたバリ97のうち段差44の側面46上に位置するバリ97は、段差44の側面46に沿うように倒れて、少なくとも一部が側面46に接する。この理由については後述する。これにより、金属層50は、基板10の上面30の第2領域42に形成された第1の部分52と、第1の部分52から連続し、段差44の側面46に沿って第1の部分52より盛り上がり、先端56が段差44の側面46上に位置する第2の部分54と、を有するようになる。金属層50の第2の部分54以外の周縁の少なくとも一部にはバリ97からなる突起部58が形成される。金属層50の第1の部分52は、金属層93と重なり、金属層93に接触する。
【0036】
図6(a)に示すように、基板10上に、金属層50の第1の部分52と第2の部分54とに重なって第2領域42から第1領域40にかけて延びた金属層60を例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い形成する。金属層60は、弾性波素子18と、金属層50および金属層93と、を電気的に接続する。
【0037】
図6(b)に示すように、基板10の周縁部に環状金属層24および環状接合層26を例えばめっき法を用い形成する。次いで、環状接合層26上にリッド28を搭載し、加熱することで、環状接合層26とリッド28とを接合させる。これにより、弾性波素子18は空隙29に封止される。
【0038】
図6(c)に示すように、支持基板12の下面を研磨または研削する。これにより、支持基板12は薄膜化する。基板10の下面32から金属層93が露出し、金属層93は基板10の上面30から下面32に貫通するビア配線20となる。基板10の下面32にビア配線20に接触する端子22を例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い形成する。以上により、実施例1に係る弾性波デバイス100が形成される。
【0039】
[比較例1]
図7(a)は、比較例1に係る弾性波デバイス1000の断面図、図7(b)は、図7(a)における段差44近傍を拡大した断面図である。図7(a)に示すように、比較例1では、金属層50が設けられていない。基板10の上面30の第2領域42から段差44の側面46を経由して第1領域40にかけて延びた金属層60が、第2領域42においてビア配線20に接触している。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0040】
図7(b)に示すように、第2領域42での金属層60の厚さをT3、段差44の側面46の傾斜角度をθとすると、段差44の側面46上での金属層60の厚さT4は、T4=T3×cosθ程度となる。θは例えば40°~70°であることから、段差44の側面46上における金属層60の厚さT4は、第2領域42における金属層60の厚さT3より薄くなる。また、金属層60の厚さT4は、段差44の側面46の下側ほど薄くなる。このため、比較例1では、段差44の側面46上における金属層60の電気抵抗が高くなり、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する金属層60(配線)の電気抵抗が高くなってしまう。
【0041】
[比較例2]
図8(a)は、比較例2に係る弾性波デバイス1100の断面図、図8(b)は、図8(a)における段差44近傍を拡大した断面図である。図8(a)および図8(b)に示すように、比較例2では、金属層50の第2の部分54の表面は第1の部分52の表面と同一面となっていて、第2の部分54は第1の部分52より盛り上がっていない。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0042】
比較例2では、金属層50の第2の部分54の表面が第1の部分52の表面と同一面となっているため、比較例1と同様に、段差44の側面46上における金属層60の厚さT4が側面46の下側ほど薄くなる。よって、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する金属層60(配線)の電気抵抗が高くなる。
【0043】
[比較例3]
図9(a)は、比較例3に係る弾性波デバイス1200の断面図、図9(b)は、図9(a)における段差44近傍を拡大した断面図である。図9(a)および図9(b)に示すように、比較例3では、金属層50が第2領域42にのみ設けられ、第1領域40と第2領域42との間の段差44の側面46には設けられていない。金属層50の周縁には、バリからなる突起部58が形成されている。このため、金属層60は突起部58に重なって形成される。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0044】
比較例3では、金属層50が第2領域42にのみ設けられているため、比較例1と同様に、段差44の側面46上における金属層60の厚さT4が側面46の下側ほど薄くなる。よって、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する金属層60(配線)の電気抵抗が高くなる。また、金属層60はバリからなる突起部58に重なって設けられるため、突起部58近傍での金属層60の厚さが薄くなり、場合によっては金属層60が途切れてしまうこともある。これによっても、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する金属層60(配線)の電気抵抗が高くなる。
【0045】
[金属層50に形成されるバリについて]
実施例1および比較例3において、金属層50の周縁に形成されるバリについて説明する。実施例1と比較例3ではバリの形成され具合が異なるようになる。このことについて、図10(a)から図11(e)を用いて説明する。
【0046】
図10(a)から図10(e)は、比較例3においてバリ97が形成される工程を示す断面図である。図10(a)に示すように、比較例3では、基板10の上面30の第2領域42に開口95を有し、開口95の側面が第2領域42上に位置するマスク層96を形成する。その後、マスク層96をマスクとして、スパッタリング法または真空蒸着法を用い金属層50を成膜する。このときに、マスク層96の開口95の側面にバリ97が形成される。
【0047】
図10(b)に示すように、エッチング溶液を用いてマスク層96を除去した後、エッチング溶液を純水98によって洗い流す。
【0048】
図10(c)から図10(e)に示すように、スピン乾燥等の乾燥処理によって純水98を取り除く。このときに、バリ97の両側には同程度の量の水滴99が付き、この水滴99が徐々に取り除かれる。バリ97の両側に同程度の量の水滴99が付くため、水滴99が取り除かれる過程において、バリ97は両側から同程度の大きさの力により引っ張られる。このため、比較例3では、バリ97が突起状のまま残存するようになると考えられる。
【0049】
したがって、比較例3では、図9(b)のように、金属層50の周縁にバリからなる突起部58が形成される。このため、金属層60は突起部58が形成された箇所で薄くなり、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する金属層60(配線)の電気抵抗が高くなる。また、突起部58が大きい場合等では、突起部58によって金属層60が途切れて、弾性波素子18とビア配線20との間を電気的に接続する金属層60(配線)に断線が生じることもある。
【0050】
図11(a)から図11(e)は、実施例1においてバリ97が形成される工程を示す断面図である。図11(a)に示すように、実施例1では、基板10の上面30の第2領域42に開口95を有し、開口95の側面が第1領域40と第2領域42との間の段差44の側面46上に位置するマスク層96を形成する。その後、マスク層96をマスクとして、スパッタリング法または真空蒸着法を用い金属層50を成膜する。このときに、マスク層96の開口95の側面にバリ97が形成される。
【0051】
図11(b)に示すように、エッチング溶液を用いてマスク層96を除去した後、エッチング溶液を純水98によって洗い流す。
【0052】
図11(c)から図11(e)に示すように、スピン乾燥等の乾燥処理によって純水98を取り除く。このときに、バリ97は段差44の側面46上に形成されているため、バリ97の両側に付着する水滴99の量は段差44の側面46側において少なくなる。これにより、水滴99が取り除かれる過程において、バリ97は間隔が狭くて水滴99の量が少ない段差44の側面46側に引っ張られるようになる。このため、段差44の側面46上のバリ97は側面46に沿うように倒れると考えられる。
【0053】
したがって、実施例1によれば、図1(a)および図2(b)のように、金属層50(第1金属層)は、基板10の上面30の第2領域42に設けられた第1の部分52と、第1の部分52から連続し、段差44の側面46に沿って第1の部分52より盛り上がって設けられ、先端56が段差44の側面46上に位置する第2の部分54と、を有する構造となる。金属層60(第2金属層)は、金属層50の第1の部分52と第2の部分54とに重なって第2領域42から第1領域40にかけて設けられる。金属層60が段差44の側面46に設けられた金属層50の第2の部分54に重なることで、図2(b)のように、段差44の側面46の下側において金属層60が薄くなることが抑制される。よって、弾性波素子18とビア配線20とを電気的に接続する金属層60(配線)の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0054】
金属層60が薄くなることを抑制する点から、図2(b)における金属層50の第2の部分54の先端56と段差44の側面46の下端との間の距離Lは、段差44の幅Wの1/5以上が好ましく、1/4以上がより好ましく、1/3以上が更に好ましい。距離Lが長くなり過ぎると、金属層60が薄くなることを抑制する効果が弱まることから、距離Lは、段差44の幅Wの2/3以下が好ましく、1/2以下がより好ましい。また、金属層60が薄くなることを抑制する点から、図2(b)における段差44の下からの金属層50の第2の部分54の先端56までの高さH2は、段差44の高さH1の1/5以上が好ましく、1/4以上がより好ましく、1/3以上が更に好ましい。高さH2が高くなり過ぎると、金属層60が薄くなることを抑制する効果が弱まることから、高さH2は、段差44の高さH1の2/3以下が好ましく、1/2以下がより好ましい。
【0055】
また、実施例1によれば、図1(b)のように、段差44の側面46において、金属層60の全体が金属層50の第2の部分54に重なっている。これにより、段差44の側面46において金属層60が薄くなることが抑制され、弾性波素子18とビア配線20とを接続する金属層60の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0056】
また、実施例1によれば、図11(a)から図11(e)で説明したように、金属層50の第2の部分54は、金属層50の形成過程で発生したバリ97を含む。この場合、バリ97は段差44の側面46に沿うように倒れて形成されていることから、金属層60がバリ97によって薄くなることが抑制される。よって、弾性波素子18とビア配線20とを接続する金属層60の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0057】
また、実施例1によれば、図2(b)のように、金属層50の第2の部分54は、断面視において、先端56に向かって細くなる先細りの形状をしている。この場合、金属層50の第2の部分54に重なる金属層60が薄くなりにくくなる。なお、金属層50の第2の部分54は、このような先細りの形状以外の形状をしていてもよい。図12は、金属層50の第2の部分54の他の形状の例を示す断面図である。図12に示すように、金属層50の第2の部分54は、先端56に向かって厚さがほとんど変化しない場合でもよい。この場合、段差44の側面46に垂直な方向において、第2の部分54の先端56側に位置する箇所での厚さは、この先端56側に位置する箇所よりも段差44の下側に位置する箇所での厚さとほぼ等しくなる。このように、金属層50の第2の部分54の先端56側に位置する第1箇所での段差44の側面46に垂直な方向の厚さが、第2の部分54の第1箇所よりも段差44の下側に位置する第2箇所での段差44の側面46に垂直な方向の厚さ以下となることで、金属層50の第2の部分54に重なる金属層60が薄くなりにくくなる。
【0058】
また、実施例1によれば、図1(a)のように、基板10内に上面30から下面32にかけて貫通するビア配線20が設けられている。ビア配線20は、平面視において金属層50の第1の部分52と重なり、第1の部分52に接触している。この場合、金属層50はパッドとしての役割を担う。このような金属層50を、第1の部分52と第2の部分54とを有する構造とすることで、金属層50上に設けられて配線としての役割を担う金属層60が薄くなることを抑制でき、弾性波素子18とビア配線20とを接続する配線の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0059】
また、実施例1によれば、図1(a)のように、基板10は、支持基板12と支持基板12上に接合された圧電基板14とを含む。基板10の上面30の第1領域40は圧電基板14の上面であり、段差44は圧電基板14を貫通して設けられ、段差44の側面46は圧電基板14の側面を含む。特性上の理由等から支持基板12上に圧電基板14が接合された基板10を用いる場合がある。このような場合に、本実施例1に示した金属層50と金属層60を用いることで、金属層60(配線)の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0060】
実施例1の製造方法によれば、図5(a)のように、基板10の上面30上に、第2領域42を露出する開口95を有し、開口95の側面が第1領域40と第2領域42との間の段差44の側面46上に位置するマスク層96を形成する。図5(b)のように、マスク層96をマスクとして金属層50を成膜する。図5(c)のように、金属層50を成膜した後、マスク層96を除去する。図6(a)のように、マスク層96を除去した後、第2領域42に設けられた金属層50の第1の部分52と段差44の側面46に沿って第1の部分52より盛り上がって設けられた金属層50の第2の部分54とに重なって第2領域42から第1領域40にかけて延びて弾性波素子18に電気的に接続する金属層60を形成する。これにより、段差44の側面46において金属層60が薄くなることを抑制できる。よって、弾性波素子18とビア配線20とを接続する金属層60の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0061】
また、実施例1の製造方法によれば、図5(b)および図5(c)のように、金属層50の成膜によって金属層50に形成されたバリ97がマスク層96の除去後に段差44の側面46に沿って倒れているようにマスク層96を除去する。このように、バリ97が段差44の側面46に沿うように倒れることで、金属層60がバリ97によって薄くなることが抑制される。よって、弾性波素子18とビア配線20とを接続する金属層60の電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0062】
また、実施例1の製造方法によれば、図5(b)および図11(a)のように、マスク層96の開口95で露出した第2領域42から開口95の側面にかけてスパッタリング法または蒸着法を用いて金属層50を成膜する。その後、図5(c)および図11(b)から図11(e)のように、金属層50に形成されたバリ97がマスク層96の除去後に倒れているように液体を用いてマスク層96を除去する。マスク層96をマスクとして金属層50をスパッタリング法または蒸着法を用い成膜すると、金属層50にバリ97が形成されやすいが、液体を用いてマスク層96を除去することでバリ97がマスク層96の除去後に段差44の側面46に沿って倒れやすくなる。
【0063】
また、実施例1の製造方法によれば、金属層50に形成されたバリ97がマスク層96の除去後に倒れているようにマスク層96の除去に用いた液体を乾燥させる。これにより、バリ97が段差44の側面46に沿って倒れやすくなる。
【0064】
なお、実施例1において、金属層50のうち金属層60と重ならない周縁部の少なくとも一部が段差44の側面46上に設けられていてもよい。これにより、金属層50の周縁に形成される突起部58が減少する。また、金属層60は弾性波素子18がビア配線20に電気的に接続されるように第1領域40から第2領域42にかけて形成される場合に限られず、第1領域40に形成された2つの弾性波素子18を電気的に接続させるように、第1領域40から第2領域42を経由して第1領域40に伸びて形成される場合でもよい。
【実施例0065】
図13(a)は、実施例2に係る弾性波デバイス200の断面図、図13(b)は、実施例2における弾性波素子18の断面図である。図13(a)に示すように、実施例2では、支持基板12の上面に圧電基板14が接合されてなく、基板10は支持基板12により構成されている。基板10の上面30に凹部34が形成され、凹部34下においてビア配線20が形成されている。凹部34が形成されることで、基板10の上面30は、略平坦な第1領域40と、第1領域40より下面32の近くに位置する略平坦な第2領域42と、を有する。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0066】
図13(b)に示すように、実施例2における弾性波素子18は圧電薄膜共振器である。基板10上に圧電膜76が設けられている。圧電膜76を挟むように下部電極75および上部電極77が設けられている。下部電極75と基板10との間に空隙78が形成されている。圧電膜76の少なくとも一部を挟み下部電極75と上部電極77とが対向する領域が共振領域79である。共振領域79において、下部電極75および上部電極77は圧電膜76内に厚み縦振動モードの弾性波を励振する。基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板、またはシリコン基板である。下部電極75および上部電極77は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜76は例えば窒化アルミニウム膜である。空隙78の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。
【実施例0067】
図14は、実施例3に係るフィルタ300の回路図である。図14に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1、P2が並列に接続されている。実施例3のフィルタ300に実施例1および実施例2の弾性波デバイスを用いてもよい。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に示したが、フィルタは多重モード型フィルタでもよい。
【実施例0068】
図15は、実施例4に係るデュプレクサ400のブロック図である。図15に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ80が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ82が接続されている。送信フィルタ80は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ82は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ80および受信フィルタ82の少なくとも一方を実施例3のフィルタとすることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したが、トリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0069】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 基板
12 支持基板
14 圧電基板
16 絶縁層
18 弾性波素子
20 ビア配線
22 端子
24 環状金属層
26 環状接合層
28 リッド
29 空隙
30 基板の上面
32 基板の下面
34 凹部
40 第1領域
42 第2領域
44 段差
46 段差の側面
50 金属層
52 第1の部分
54 第2の部分
55 箇所
56 先端
57 箇所
58 突起部
60 金属層
80 送信フィルタ
82 受信フィルタ
95 開口
96 マスク層
97 バリ
98 純水
99 水滴
100、200、1000、1100、1200 弾性波デバイス
300 フィルタ
400 デュプレクサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15