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特開2023-141893センサユニット、軸受装置、ひずみ検出装置、モータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141893
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】センサユニット、軸受装置、ひずみ検出装置、モータ
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20230928BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20230928BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20230928BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20230928BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20230928BHJP
【FI】
G01B7/16 R
F16C19/06
F16C19/52
F16C41/00
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048464
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井口 洋二
(72)【発明者】
【氏名】滝本 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤裏 英雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋治
【テーマコード(参考)】
2F063
3J217
3J701
5H501
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA03
2F063BC02
2F063BC04
2F063CA34
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD03
2F063EC13
2F063EC14
2F063EC15
2F063EC18
2F063EC26
2F063LA19
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA15
3J217JA24
3J217JA38
3J217JB23
3J217JB26
3J217JB70
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA21
3J701FA24
3J701FA26
3J701GA24
5H501BB05
5H501DD01
5H501LL23
5H501LL45
5H501LL60
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】ひずみゲージをモータに容易に配置可能なセンサユニットを提供する。
【解決手段】本センサユニットは、軸受ハウジングの外周面に取り付けられる円筒状のゲージ固定用部材と、前記ゲージ固定用部材に取り付けられた、第1ひずみゲージ及び第2ひずみゲージと、を備え、前記第1ひずみゲージは応力センサであり、前記第2ひずみゲージはノイズセンサである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジングの外周面に取り付けられる円筒状のゲージ固定用部材と、
前記ゲージ固定用部材に取り付けられた、第1ひずみゲージ及び第2ひずみゲージと、を備え、
前記第1ひずみゲージは応力センサであり、前記第2ひずみゲージはノイズセンサである、センサユニット。
【請求項2】
軸受ハウジングの外周面に取り付けられる円筒状のゲージ固定用部材と、
前記ゲージ固定用部材に取り付けられた、第1ひずみゲージ及び第2ひずみゲージと、を備え、
前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージは、前記ゲージ固定用部材の中心軸方向において互いに離隔して配置されている、センサユニット。
【請求項3】
前記第1ひずみゲージは応力センサであり、前記第2ひずみゲージはノイズセンサである、請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記第1ひずみゲージ及び前記第2ひずみゲージは、Cr混相膜から形成された抵抗体を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記ゲージ固定用部材に取り付けられた、第3ひずみゲージ及び第4ひずみゲージを備え、
前記第3ひずみゲージと前記第4ひずみゲージは、前記ゲージ固定用部材の中心軸方向において互いに離隔して配置され、
前記第3ひずみゲージは応力センサであり、前記第4ひずみゲージはノイズセンサである、請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記第1ひずみゲージと前記第3ひずみゲージは、前記ゲージ固定用部材の中心軸方向の同じ位置、かつ前記ゲージ固定用部材の周方向の異なる位置に配置され、
前記第2ひずみゲージと前記第4ひずみゲージは、前記ゲージ固定用部材の周方向の異なる位置に配置されている、請求項5に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記第3ひずみゲージ及び前記第4ひずみゲージは、Cr混相膜から形成された抵抗体を有する、請求項5又は6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
回転軸と、
前記回転軸を支持する第1転がり軸受と、
前記第1転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングに取り付けられた請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサユニットと、を有し、
前記センサユニットにおいて、
前記ゲージ固定用部材は、前記回転軸の回転により前記第1転がり軸受に生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、前記ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有し、
前記ひずみ伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ひずみ非伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記第1ひずみゲージは、前記ひずみ伝達部に配置され、
前記第2ひずみゲージは、前記ひずみ非伝達部に配置されている、軸受装置。
【請求項9】
回転軸と、
前記回転軸を支持する第1転がり軸受及び第2転がり軸受と、
前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングに取り付けられた、2つの請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサユニットと、を有し、
前記センサユニットの一方において、
前記ゲージ固定用部材は、前記回転軸の回転により前記第1転がり軸受に生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、前記ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有し、
前記ひずみ伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ひずみ非伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記第1ひずみゲージは、前記ひずみ伝達部に配置され、
前記第2ひずみゲージは、前記ひずみ非伝達部に配置され、
前記センサユニットの他方において、
前記ゲージ固定用部材は、前記回転軸の回転により前記第2転がり軸受に生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、前記ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有し、
前記ひずみ伝達部は、径方向視で前記第2転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ひずみ非伝達部は、径方向視で前記第2転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記第1ひずみゲージは、前記ひずみ伝達部に配置され、
前記第2ひずみゲージは、前記ひずみ非伝達部に配置されている、軸受装置。
【請求項10】
回転軸と、
前記回転軸を支持する第1転がり軸受と、
前記第1転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、
請求項5乃至7の何れか一項に記載のセンサユニットと、を有し、
前記第1転がり軸受は、転動体を有し、
前記センサユニットにおいて、
前記ゲージ固定用部材は、前記回転軸の回転により前記第1転がり軸受に生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、前記ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有し、
前記ひずみ伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ひずみ非伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記第1ひずみゲージ及び前記第3ひずみゲージは、前記ひずみ伝達部に配置され、
前記第2ひずみゲージ及び前記第4ひずみゲージは、前記ひずみ非伝達部に配置されている、軸受装置。
【請求項11】
回転軸と、
前記回転軸を支持する第1転がり軸受及び第2転がり軸受と、
前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受を保持する軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングに取り付けられた、2つの請求項5乃至7の何れか一項に記載のセンサユニットと、を有し、
前記第1転がり軸受及び前記第2転がり軸受は、それぞれ転動体を有し、
前記センサユニットの一方において、
前記ゲージ固定用部材は、前記回転軸の回転により前記第1転がり軸受に生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、前記ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有し、
前記ひずみ伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ひずみ非伝達部は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記第1ひずみゲージ及び前記第3ひずみゲージは、前記ひずみ伝達部に配置され、
前記第2ひずみゲージ及び前記第4ひずみゲージは、前記ひずみ非伝達部に配置され、
前記センサユニットの他方において、
前記ゲージ固定用部材は、前記回転軸の回転により前記第2転がり軸受に生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、前記ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有し、
前記ひずみ伝達部は、径方向視で前記第2転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ひずみ非伝達部は、径方向視で前記第2転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記第1ひずみゲージ及び前記第3ひずみゲージは、前記ひずみ伝達部に配置され、
前記第2ひずみゲージ及び前記第4ひずみゲージは、前記ひずみ非伝達部に配置されている、軸受装置。
【請求項12】
前記第1ひずみゲージは、受感部となる第1抵抗体を有し、
前記第3ひずみゲージは、受感部となる第3抵抗体を有し、
前記第1ひずみゲージと前記第3ひずみゲージとは、同じタイミングで前記第1抵抗体及び前記第3抵抗体の直下を前記転動体が通過する位置に配置され、
前記回転軸の軸線方向から視て、前記第1抵抗体の中心と前記第3抵抗体の中心とがなす角θは、前記転動体の個数をN、nを1以上(N-1)以下の整数とすると、θ=(360×n)/Nである、請求項10又は11に記載の軸受装置。
【請求項13】
前記第1ひずみゲージは、受感部となる第1抵抗体を有し、
前記第3ひずみゲージは、受感部となる第3抵抗体を有し、
前記第1ひずみゲージと前記第3ひずみゲージとは、前記第1抵抗体の直下を前記転動体が通過するときに、前記第3抵抗体が隣接する2つの前記転動体の間に位置するように配置され、
前記回転軸の軸線方向から視て、前記第1抵抗体の中心と前記第3抵抗体の中心とがなす角θは、前記転動体の個数をN、nを0以上(N-1)以下の整数とすると、θ=(360×n)/N+360/2Nである、請求項10又は11に記載の軸受装置。
【請求項14】
前記軸受ハウジングは、第1外周面と、前記第1外周面から前記回転軸の側に窪む凹部の底面を形成する第2外周面とを有し、
前記第2外周面は、径方向視で少なくとも前記第1転がり軸受の外周面と重複する位置にあり、
前記ゲージ固定用部材の内周面は、前記第2外周面と当接する、請求項8乃至13の何れか一項に記載の軸受装置。
【請求項15】
前記軸受ハウジングは、前記第2外周面からさらに前記回転軸の側に窪む凹部の底面を形成する第3外周面と有し、
前記第3外周面は、径方向視で前記第1転がり軸受の外周面と重複しない位置にあり、
前記ゲージ固定用部材の内周面と前記第3外周面との間には空隙が形成されている、請求項14に記載の軸受装置。
【請求項16】
請求項8又は9に記載の軸受装置と、ブリッジ回路と、を有し、
前記第1ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第1出力電圧取出し点の一方の側の一辺を構成し、
前記第2ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第1出力電圧取出し点の他方の側の一辺を構成する、ひずみ検出装置。
【請求項17】
請求項12に記載の軸受装置と、ブリッジ回路と、を有し、
前記第1ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第1出力電圧取出し点の一方の側の一辺を構成し、
前記第4ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第1出力電圧取出し点の他方の側の一辺を構成し、
前記第2ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第2出力電圧取出し点の前記第1ひずみゲージ側の一辺を構成し、
前記第3ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第2出力電圧取出し点の前記第4ひずみゲージ側の一辺を構成する、ひずみ検出装置。
【請求項18】
請求項13に記載の軸受装置と、ブリッジ回路と、を有し、
前記第1ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第1出力電圧取出し点の一方の側の一辺を構成し、
前記第4ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第1出力電圧取出し点の他方の側の一辺を構成し、
前記第2ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第2出力電圧取出し点の前記第4ひずみゲージ側の一辺を構成し、
前記第3ひずみゲージは、前記ブリッジ回路の4辺のうち第2出力電圧取出し点の前記第1ひずみゲージ側の一辺を構成する、ひずみ検出装置。
【請求項19】
請求項8乃至15の何れか一項に記載の軸受装置、又は請求項16乃至18に記載のひずみ検出装置を有する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニット、軸受装置、ひずみ検出装置、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受を備えたモータにおいて、モータ回転時は、転がり軸受内の球体が自転し、転がり軸受に僅かにひずみを与える。そして、このようなひずみを検出するセンサを有するモータが提案されている。ひずみを検出するセンサは、例えば、転がり軸受の回転軸方向の側面とモータのハウジングとの間に設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-215057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ひずみを検出するセンサとしてひずみゲージを用いる場合、狭小かつ曲面部への貼り付け作業が必要になるため、ひずみゲージをモータ内部の所定位置に配置することは極めて困難である。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ひずみゲージをモータに容易に配置可能なセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本センサユニットは、軸受ハウジングの外周面に取り付けられる円筒状のゲージ固定用部材と、前記ゲージ固定用部材に取り付けられた、第1ひずみゲージ及び第2ひずみゲージと、を備え、前記第1ひずみゲージは応力センサであり、前記第2ひずみゲージはノイズセンサである。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ひずみゲージをモータに容易に配置可能なセンサユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るセンサユニットを例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るセンサユニットを例示する断面図である。
図3】円筒状の部材の例について説明する図(その1)である。
図4】円筒状の部材の例について説明する図(その2)である。
図5】第1実施形態に係る軸受装置を例示する斜視図である。
図6】第1実施形態に係る軸受装置を例示する断面図(その1)である。
図7】第1実施形態に係る軸受装置を例示する断面図(その2)である。
図8図7に示す軸受装置の軸線mに垂直な方向の断面図(その1)である。
図9図7に示すセンサユニットの近傍の部分拡大図である。
図10図7等に示す第1ひずみゲージ及び第2ひずみゲージ近傍の部分拡大図である。
図11】第1実施形態に係るひずみ検出装置を例示する模式図である。
図12図7に示す軸受装置の軸線mに垂直な方向の断面図(その2)である。
図13】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図14】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
図15】第1実施形態に係る軸受装置を搭載したモータを例示する断面図である。
図16】第1実施形態の変形例1に係る軸受装置を例示する断面図である。
図17】第1実施形態の変形例2に係る軸受装置を例示する断面図(その1)である。
図18】第1実施形態の変形例2に係る軸受装置を例示する断面図(その2)である。
図19】第1実施形態の変形例2に係る軸受装置を例示する断面図(その3)である。
図20】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その1)である。
図21】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その2)である。
図22】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その3)である。
図23】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その4)である。
図24】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その5)である。
図25】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その6)である。
図26】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その7)である。
図27】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その8)である。
図28】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その9)である。
図29】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その10)である。
図30】第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その11)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
(センサユニット)
図1は、第1実施形態に係るセンサユニットを例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係るセンサユニットを例示する断面図であり、ゲージ固定用部材110の中心軸を通る断面を示している。
【0011】
図1及び図2に示すように、センサユニット100は、ゲージ固定用部材110と、第1ひずみゲージ120Aと、第2ひずみゲージ120Bと、第3ひずみゲージ120Cと、第4ひずみゲージ120Dと、配線130A~130Dとを有している。
【0012】
ゲージ固定用部材110は、軸受ハウジング(後述)の外周面に取り付けられる円筒状の部材である。ゲージ固定用部材110は、例えば、中心軸方向の両端が開放された中空円柱状である。ゲージ固定用部材110は、外周面110a及び内周面110bを備えている。ゲージ固定用部材110は、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属により形成できる。ゲージ固定用部材110の材料としては、後述の軸受ハウジング40を形成する材料と線膨張係数が近い材料を選択することが好ましい。ゲージ固定用部材110の厚さは、ひずみの伝達性と必要な剛性とを考慮して適宜決定できるが、例えば、1mm程度としてもよい。
【0013】
なお、円筒状の部材には、例えば、中空円柱状の部材の一部に加工が施されているものも含む。加工とは、例えば、中空円柱状の部材の一部にスリット、溝、穴、突起、段差などが設けられている場合である。例えば、図3図4に示すゲージ固定用部材110も円筒状の部材に含まれる。図3に示す例では、中空円柱状のゲージ固定用部材110にスリット110xが設けられている。また、図4に示す例では、中空円柱状のゲージ固定用部材110に溝110yが設けられている。もちろん、ゲージ固定用部材110にスリットや溝を複数個設けてもよいし、両者が混在してもよい。また、ゲージ固定用部材110の中心軸方向の一部分にスリットや溝を設けてもよい。このようなスリットや溝は、例えば、配線130A~130Dの通路として使用することができる。
【0014】
図1及び図2の説明に戻り、第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dは、ゲージ固定用部材110の外周面110aに取り付けられている。第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dは、例えば、ゲージ固定用部材110の外周面110aに接着剤により固定される。
【0015】
第1ひずみゲージ120Aと第2ひずみゲージ120Bは、ゲージ固定用部材110の中心軸方向において互いに離隔して配置されている。第3ひずみゲージ120Cと第4ひずみゲージ120Dは、ゲージ固定用部材110の中心軸方向において互いに離隔して配置されている。
【0016】
第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120Cは、ゲージ固定用部材110の周方向の異なる位置に配置されている。第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120Cは、例えば、ゲージ固定用部材110の中心軸方向の同じ位置に配置される。
【0017】
第2ひずみゲージ120Bと第4ひずみゲージ120Dは、ゲージ固定用部材110の周方向の異なる位置に配置されている。第2ひずみゲージ120Bと第4ひずみゲージ120Dは、ゲージ固定用部材110の中心軸方向の同じ位置に配置されてもよいし、異なる位置に配置されてもよい。
【0018】
第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは応力センサであり、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dはノイズセンサである。応力センサとノイズセンサについては、後述する。
【0019】
図1及び図2の例では、第1ひずみゲージ120Aと第2ひずみゲージ120Bは、それぞれの中心を結ぶ直線が、ゲージ固定用部材110の中心軸と平行になるように配置されているが、これには限定されない。また、第3ひずみゲージ120Cと第4ひずみゲージ120Dは、例えば、ゲージ固定用部材110の中心軸と平行になるように配置されているが、これには限定されない。
【0020】
第1ひずみゲージ120Aの電極には、配線130Aが接続されている。第2ひずみゲージ120Bの電極には、配線130Bが接続されている。第3ひずみゲージ120Cの電極には、配線130Cが接続されている。第4ひずみゲージ120Dの電極には、配線130Dが接続されている。
【0021】
なお、図1及び図2では図示が省略されているが、第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dは、それぞれ2つの電極を有する(図10等参照)。そのため、配線130A~130Dのそれぞれは、各ひずみゲージの2つの電極と接続される互いに絶縁された2本の導電線を含んでいる。
【0022】
(軸受装置)
図5は、第1実施形態に係る軸受装置を例示する斜視図である。図6は、第1実施形態に係る軸受装置を例示する断面図(その1)であり、回転軸20の軸線mを通る断面を示している。図7は、第1実施形態に係る軸受装置を例示する断面図(その2)であり、回転軸20の軸線mを通る断面を示している。なお、図5及び図6は、センサユニット100を軸受ハウジング40に取り付ける前の状態であり、図7は、センサユニット100を軸受ハウジング40の外周面に取り付けた後の状態である。
【0023】
図5図7に示すように、軸受装置1は、回転軸20と、第1転がり軸受30Aと、第2転がり軸受30Bと、軸受ハウジング40と、センサユニット100とを有している。
【0024】
回転軸20は、軸線m方向に互いに離隔して配置された第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bにより回転可能な状態で支持されている。第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、軸受ハウジング40に圧入や接着等により固定され、軸受ハウジング40に保持されている。軸受ハウジング40は、例えば、真鍮等の金属により形成された中空円柱状の部材である。軸受ハウジング40は、外輪31の外周面を全周に亘って押さえていることが好ましい。
【0025】
第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、軸線m方向において互いに離隔して軸受ハウジング40に保持されている。第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、例えば、軸受ハウジング40の内周面に設けられた段差部に位置決めされている。図5図7の例では、軸受ハウジング40において、第2転がり軸受30Bは軸線m方向の一方側に設けられており、第1転がり軸受30Aは軸線m方向の他方側に設けられている。以降では、説明の便宜上、第2転がり軸受30Bが設けられている側を上側、第1転がり軸受30Aが設けられている側を下側とする。
【0026】
第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bは、外輪31と、内輪32と、複数の転動体33とを有している。外輪31は、軸線mを中心軸とする円筒形の構造体である。内輪32は、外輪31の内周側に外輪31と同軸状に配置された円筒形の構造体である。複数の転動体33の各々は外輪31と内輪32との間に形成される軌道内に配置された球体である。軌道内にはグリース等の潤滑剤が封入される。
【0027】
軸受ハウジング40は、第1外周面40a、第2外周面40b、及び第3外周面40cを有している。第1外周面40a、第2外周面40b、及び第3外周面40cは、第2転がり軸受30B側から第1転がり軸受30Aに向かって順次配置されている。第2外周面40bは、第1外周面40aから回転軸20の側に窪む凹部の底面を形成し、第3外周面40cは、第2外周面40bからさらに回転軸20の側に窪む凹部の底面を形成している。
【0028】
センサユニット100は、軸受ハウジング40の軸線m方向の一方側に、着脱自在な状態で嵌めこむことができる。図7に示すように、センサユニット100が軸受ハウジング40に嵌めこまれると、ゲージ固定用部材110の内周面110bは、軸受ハウジング40の第2外周面40bに当接する。
【0029】
また、ゲージ固定用部材110の内周面110bと軸受ハウジング40の第3外周面40cとの間には空隙(後述の図9に示す空隙S)が形成される。空隙Sの幅は、例えば、0.5mm~1mm程度とすることができる。なお、センサユニット100を軸受ハウジング40の外周面に取り付けた状態では、ゲージ固定用部材110の中心軸は軸線mとおおよそ一致する。
【0030】
前述のように、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、第1転がり軸受30Aに生じるひずみを検出する応力センサであり、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、ノイズを検出するノイズセンサである。
【0031】
ここで、応力センサとは、主に対象物に生じるひずみを検出するセンサであるが、対象物の周辺に生じるノイズも検出される。また、ノイズセンサとは、主に対象物の周辺に生じるノイズを検出するセンサであるが、対象物に生じるひずみが検出される場合もある。応力センサで検出されるひずみは、ノイズセンサで検出されるひずみよりも大きい。これに対し、応力センサで検出されるノイズは、ノイズセンサで検出されるノイズとほぼ等しい。
【0032】
第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cの検出対象となるひずみは、転動体33の中心の側方(中心との距離が最小となる点の周辺)で最も大きくなる。そのため、図7に示すように、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、転動体33の中心の側方に配置することが好ましい。一方、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dはノイズセンサであり、ひずみをできるだけ検出しない方が良いため、転動体33の中心の側方から離れた位置に配置することが好ましい。
【0033】
また、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120Cとは、同じタイミングで各々の抵抗体の直下を転動体33が通過する位置に配置されることが好ましい。なお、抵抗体123については、図10等を参照して別途説明する。
【0034】
図8は、図7に示す軸受装置の軸線mに垂直な方向の断面図(その1)であり、第1転がり軸受30Aの各転動体33の中心を通る断面を示している。図8の例では、第1転がり軸受30Aの転動体33の個数が6個であり、第1ひずみゲージ120Aの抵抗体123と第3ひずみゲージ120Cの抵抗体123は、対向する位置に配置され、同じタイミングで各々の抵抗体123の直下を転動体33が通過する。
【0035】
図8において、θは、回転軸20の軸線m方向から視て、第1ひずみゲージ120Aの抵抗体123の中心と第3ひずみゲージ120Cの抵抗体123の中心とがなす角である。図8の例では、第1ひずみゲージ120Aの抵抗体123の中心と第3ひずみゲージ120Cの抵抗体123の中心とがなす角θは180度である。
【0036】
ただし、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120Cの好ましい配置は、θ=180度には限定されない。転動体33の個数をN、nを1以上(N-1)以下の整数とすると、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、θ=(360×n)/Nとなる位置に配置することができる。なお、ここでいう角θには、±3度の誤差を許容するものとする。例えば、θ=183度やθ=177度の場合は、θ=(360×n)/Nとなる位置に配置されているとみなす。
【0037】
図8の例では、N=6であるから、θ=60度、120度、180度、240度、300度の何れかとなる位置に、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cを配置することができる。なお、図8では、第1ひずみゲージ120Aの位置を固定したときに、第3ひずみゲージ120Cを配置することが好ましい位置を破線の四角で示している。
【0038】
なお、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dはノイズセンサであるため、後述のひずみ非伝達部112内であれば、上記のθとは無関係な任意の位置に配置してよい。
【0039】
図9は、図7に示すセンサユニットの近傍の部分拡大図である。図9に示すように、センサユニット100において、ゲージ固定用部材110は、回転軸20の回転により第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達するひずみ伝達部111と、回転軸20の回転により第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しないひずみ非伝達部112とを有している。
【0040】
ひずみ伝達部111、及びひずみ非伝達部112は、回転軸20が定格の回転数で回転するときのひずみの平均値が相対的に異なる部分である。具体的には、回転軸20が定格の回転数で回転するときのひずみの平均値を同一仕様のひずみゲージで測定したときに、ひずみ伝達部111で測定されるひずみの平均値に対してひずみの平均値が1/2以下になる部分をひずみ非伝達部112とする。つまり、『第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しないひずみ非伝達部112』は、ひずみが全く伝達されない部分を示すものではない。なお、回転軸20が定格の回転数で回転するときのひずみの平均値を同一仕様のひずみゲージで測定したときに、ひずみ非伝達部112で測定されるひずみの平均値は、ひずみ伝達部111で測定されるひずみの平均値に対して1/5以下であることが好ましい。
【0041】
ひずみ伝達部111は、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複する位置にある。ひずみ伝達部111は、回転軸20の回転により第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しやすい部分である。
【0042】
図9の例では、軸受ハウジング40の外側段部41bの位置は、軸線mの方向において、第1転がり軸受30Aの上端部と当接する軸受ハウジング40の内側段部41aの位置と同一である。また、軸受ハウジング40の外側段部41cの位置は、軸線mの方向において、第1転がり軸受30Aの下端部の位置と同一である。
【0043】
つまり、図9の例では、軸受ハウジング40の第2外周面40bの全体が、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複する位置にある。また、軸受ハウジング40の第3外周面40cは、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複しない位置にある。軸受ハウジング40の第2外周面40bが設けられている部分は、第1外周面40aが設けられている部分よりも肉薄であるため、第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しやすい。
【0044】
なお、軸受ハウジング40において、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複する位置にある部分を肉薄とすればよいため、軸受ハウジング40の外側段部41bの位置は、軸線mの方向において、軸受ハウジング40の内側段部41aの位置よりも上側(第2転がり軸受30B側)にあってもよい。
【0045】
ひずみ非伝達部112は、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複しない位置にある。ひずみ非伝達部112は、回転軸20の回転により第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しにくい部分である。
【0046】
第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、ひずみ伝達部111に配置されている。つまり、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しやすい位置に配置されている。これに対して、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、ひずみ非伝達部112に配置されている。つまり、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、第1転がり軸受30Aに生じひずみが伝達しにくい位置に配置されている。
【0047】
図9の例では、ゲージ固定用部材110の内周面110bと軸受ハウジング40の第3外周面40cとの間には空隙Sが形成されている。空隙Sは、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複しない位置に設けられている。空隙Sを設けることにより、第1転がり軸受30Aに生じるひずみは、ゲージ固定用部材110の外周面110aに配置された第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dに一層伝達されにくくなる。空隙Sは、径方向視で第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dと重複する領域のみ、又は、その領域とその領域の近傍のみに設けてもよい。
【0048】
軸線m方向において、ゲージ固定用部材110の下側は開放端である。ゲージ固定用部材110の開放端には、第1転がり軸受30Aのひずみはほとんど伝達されない。そのため、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、ひずみ非伝達部112の中でも、ひずみが特に伝達しにくいゲージ固定用部材110の開放端の近傍に配置することが好ましい。
【0049】
ここで、開放端の近傍は、図9に示すように、開放端と第1転がり軸受30Aの開放端側の端部との軸線m方向の距離をLとしたときに、開放端からL/2の範囲とする。第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、開放端からL/3の範囲内に配置することがより好ましく、開放端からL/4の範囲内に配置することがさらに好ましい。
【0050】
このように、ゲージ固定用部材110のひずみ伝達部111に第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cを配置することにより、第1転がり軸受30Aのひずみは、ゲージ固定用部材110を介して第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cに伝わる。これにより、第1転がり軸受30Aのひずみを第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cで検出可能となる。本実施形態では、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、第1転がり軸受30Aのひずみを抵抗体123の抵抗値の変化として検出する。
【0051】
図10は、図7等に示す第1ひずみゲージ及び第2ひずみゲージ近傍の部分拡大図である。図10に示すように、第1ひずみゲージ120Aにおいて、抵抗体123は、長手方向(ゲージ長方向)をゲージ固定用部材110の周方向に向けて配置されていることが好ましい。ゲージ固定用部材110の周方向は軸線m方向よりも伸縮し易いため、抵抗体123の長手方向をゲージ固定用部材110の周方向に向けて配置することで、大きなひずみ波形を得ることができる。
【0052】
第1ひずみゲージ120Aは、配線124を介して抵抗体123の両端に接続された一対の端子部125を有しており、各々の端子部125には、はんだ等により、配線130Aが電気的に接続されている。配線130Aは、例えば、同軸ケーブルであってもよいし、フレキシブル基板の少なくとも一方側にベタ状のGNDが形成された構造等であってもよい。図7等に示す第3ひずみゲージ120Cについても、第1ひずみゲージ120Aと同様の構造である。
【0053】
第2ひずみゲージ120Bは、第1ひずみゲージ120Aと同様に抵抗体123、配線124、及び端子部125を備えている。第2ひずみゲージ120Bは、例えば、第1ひずみゲージ120Aと同一の構造、かつ同一の大きさとすることができる。第2ひずみゲージ120Bにおいて、抵抗体123の長手方向は、例えば、第1ひずみゲージ120Aにおける抵抗体123の長手方向と同一とすることができる。
【0054】
第2ひずみゲージ120Bの各々の端子部125には、はんだ等により、配線130Bが電気的に接続されている。配線130Bは、例えば、同軸ケーブルであってもよいし、フレキシブル基板の少なくとも一方側にベタ状のGNDが形成された構造等であってもよい。図7等に示す第4ひずみゲージ120Dについても、第2ひずみゲージ120Bと同様の構造である。
【0055】
第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dは、電磁ノイズの干渉を受ける。そのため、第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dの出力には、第1転がり軸受30Aのひずみに加え、電磁ノイズが含まれる。ここでいう電磁ノイズとは、例えば、軸受装置1がモータに搭載された場合、モータのコイル等から発生するノイズである。
【0056】
しかし、軸受装置1では、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、ひずみ非伝達部112に配置されている。そのため、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは第1転がり軸受30Aのひずみをほとんど検出せず、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dの出力は、ほぼ電磁ノイズのみとなる。
【0057】
なお、前述のように、抵抗体123の長手方向を軸受ハウジング40の周方向に向けて配置することで、大きなひずみ波形を得ることができる。したがって、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dで検出されるひずみをさらに低減するために、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、抵抗体123の長手方向を軸線mの方向に向けて配置してもよい。
【0058】
第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dは、何れもゲージ固定用部材110に固定されているため、電磁ノイズの影響はほぼ同じである。そこで、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cをゲージ固定用部材110のひずみ伝達部111に配置し、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dをゲージ固定用部材110のひずみ非伝達部112に配置することにより、両者の出力を用いて電磁ノイズの影響を除去し、S/N比のよいひずみを検出することができる。以下に、具体的な回路接続例を示す。
【0059】
図11は、第1実施形態に係るひずみ検出装置を例示する模式図である。図11に示すように、ひずみ検出装置3は、軸受装置1と、ブリッジ回路2とを有している。なお、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dの何れかの抵抗体123に対応する。
【0060】
つまり、図11において、軸受装置1の第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dは、ブリッジ回路2の4辺の何れかを構成している。抵抗R1と抵抗R2の接続部と、抵抗R3と抵抗R4の接続部との間には、直流電圧Eが供給される。これにより、ブリッジ回路の出力として、抵抗R1と抵抗R4の接続部と、抵抗R2と抵抗R3の接続部との間から、出力電圧eを得ることができる。
【0061】
第1ひずみゲージ120Aは、ブリッジ回路2の4辺のうち第1出力電圧取出し点の一方の側の一辺を構成し、第4ひずみゲージ120Dは、ブリッジ回路2の4辺のうち第1出力電圧取出し点の他方の側の一辺を構成する。また、第2ひずみゲージ120Bは、ブリッジ回路2の4辺のうち第2出力電圧取出し点の第1ひずみゲージ120A側の一辺を構成し、第3ひずみゲージ120Cは、ブリッジ回路の4辺のうち第2出力電圧取出し点の第4ひずみゲージ120D側の一辺を構成する。
【0062】
具体的には、例えば、図11において、抵抗R1と抵抗R4の接続部を第1出力電圧取出し点、抵抗R2と抵抗R3の接続部を第2出力電圧取出し点とすると、図11において、R1を第1ひずみゲージ120A、R2を第2ひずみゲージ120B、R3を第3ひずみゲージ120C、R4を第4ひずみゲージ120Dとすることができる。ただし、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120C、第2ひずみゲージ120Bと第4ひずみゲージ120Dの位置を入れ替えても同様の出力電圧eが得られる。
【0063】
また、図11において、抵抗R1と抵抗R4の接続部を第2出力電圧取出し点、抵抗R2と抵抗R3の接続部を第1出力電圧取出し点とすると、図11において、R1を第2ひずみゲージ120B、R2を第1ひずみゲージ120A、R3を第4ひずみゲージ120D、R4を第3ひずみゲージ120Cとすることができる。ただし、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120C、第2ひずみゲージ120Bと第4ひずみゲージ120Dの位置を入れ替えても同様の出力電圧eが得られる。
【0064】
例えば、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cでひずみεと電磁ノイズNが検出され、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dで電磁ノイズNのみが検出される場合、電磁ノイズNはキャンセルされ、出力電圧e=E/2×Ks×εとなる。Ksはゲージ率である。
【0065】
このように、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cをひずみ伝達部111に配置し、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dをひずみ非伝達部112に配置することで、電磁ノイズNの影響を低減可能な信号を出力する軸受装置1を実現できる。そして、軸受装置1を用いてひずみ検出装置3を構成することで、電磁ノイズNの影響が除去されたS/N比のよいひずみεを、出力電圧εとして検出することができる。
【0066】
ひずみ検出装置3は、さらに直流電圧Eを供給可能な電源、出力電圧eを増幅する増幅器、増幅器の出力をデジタル信号に変換するA/D変換器、A/D変換器の出力に対して演算等を行う信号処理部等を有してもよい。ブリッジ回路2の出力電圧eを、例えば信号処理部でFFT解析(高速フーリエ変換)することで、第1転がり軸受30Aの状態を監視できる。
【0067】
図12は、図7に示す軸受装置の軸線mに垂直な方向の断面図(その2)であり、第1転がり軸受30Aの各転動体33の中心を通る断面を示している。第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、図8とは異なり、図12のように配置してもよい。つまり、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120Cとは、第1ひずみゲージ120Aの抵抗体123の直下を転動体33が通過するときに、第3ひずみゲージ120Cの抵抗体123が隣接する2つの転動体33の間に位置するように配置してよい。
【0068】
図12の例では、第1転がり軸受30Aの転動体33の個数が7個であり、第1ひずみゲージ120Aの抵抗体123と第3ひずみゲージ120Cの抵抗体123は、対向する位置に配置されている。つまり、図12の例では、第1ひずみゲージ120Aの抵抗体123の中心と第3ひずみゲージ120Cの抵抗体123の中心とがなす角θは180度である。
【0069】
ただし、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120Cの好ましい配置は、θ=180度には限定されない。転動体33の個数をN、nを0以上(N-1)以下の整数とすると、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、θ=(360×n)/N+360/2Nとなる位置に配置することができる。なお、ここでいう角θには、±3度の誤差を許容するものとする。例えば、θ=183度やθ=177度の場合は、θ=(360×n)/N+360/2Nとなる位置に配置されているとみなす。
【0070】
図12の例では、N=7であるから、θ=約26度、約77度、約129度、180度、約231度、約283度、約334度の何れかとなる位置に、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cを配置することができる。なお、図12では、第1ひずみゲージ120Aの位置を固定したときに、第3ひずみゲージ120Cを配置することが好ましい位置を破線の四角で示している。
【0071】
なお、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dはノイズセンサであるため、ひずみ非伝達部112内であれば、上記のθとは無関係な任意の位置に配置してよい。
【0072】
第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cを図12のように配置した場合も、図11の回路で出力電圧eを得ることができる。ただし、図11の回路において、第1ひずみゲージ120Aは、ブリッジ回路2の4辺のうち第1出力電圧取出し点の一方の側の一辺を構成し、第4ひずみゲージ120Dは、ブリッジ回路2の4辺のうち第1出力電圧取出し点の他方の側の一辺を構成する。また、第2ひずみゲージ120Bは、ブリッジ回路2の4辺のうち第2出力電圧取出し点の第4ひずみゲージ120D側の一辺を構成し、第3ひずみゲージ120Cは、ブリッジ回路2の4辺のうち第2出力電圧取出し点の第1ひずみゲージ120A側の一辺を構成する。
【0073】
具体的には、例えば、図11において、抵抗R1と抵抗R4の接続部を第1出力電圧取出し点、抵抗R2と抵抗R3の接続部を第2出力電圧取出し点とすると、図11において、R1を第1ひずみゲージ120A、R2を第3ひずみゲージ120C、R3を第2ひずみゲージ120B、R4を第4ひずみゲージ120Dとすることができる。ただし、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120C、第2ひずみゲージ120Bと第4ひずみゲージ120Dの位置を入れ替えても同様の出力電圧eが得られる。
【0074】
また、図11において、抵抗R1と抵抗R4の接続部を第2出力電圧取出し点、抵抗R2と抵抗R3の接続部を第1出力電圧取出し点とすると、図11において、R1を第2ひずみゲージ120B、R2を第4ひずみゲージ120D、R3を第1ひずみゲージ120A、R4を第3ひずみゲージ120Cとすることができる。ただし、第1ひずみゲージ120Aと第3ひずみゲージ120C、第2ひずみゲージ120Bと第4ひずみゲージ120Dの位置を入れ替えても同様の出力電圧eが得られる。
【0075】
例えば、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cでひずみεと電磁ノイズNが検出され、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dで電磁ノイズNのみが検出される場合、電磁ノイズNはキャンセルされ、出力電圧e=E/2×Ks×εとなる。Ksはゲージ率である。
【0076】
(ひずみゲージ)
図13は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図14は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図13のA-A線に沿う断面を示している。なお、以下では第1ひずみゲージ120Aについて説明するが、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120Dも第1ひずみゲージ120Aと同様の構造とすることができる。ただし、各ひずみゲージは、必要に応じ、部分的に異なる構造としてもよい。例えば、基材の大きさやカバー層の有無、その他の仕様は必要に応じて変えてよい。
【0077】
図13及び図14を参照すると、第1ひずみゲージ120Aは、基材121と、機能層122と、抵抗体123と、配線124と、端子部125とを有している。但し、機能層122は、必要に応じて設ければよい。
【0078】
なお、図13及び図14の説明では、便宜上、第1ひずみゲージ120Aにおいて、基材121の抵抗体123が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体123が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体123が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体123が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、第1ひずみゲージ120Aは天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を基材121の上面121aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材121の上面121aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0079】
基材121は、抵抗体123等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材121の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材121の厚さが5μm~200μmであると、接着層150を介して基材121の下面に接合される起歪体表面(例えば、ゲージ固定用部材110の外周面110a)からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0080】
基材121は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0081】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材121が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材121は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0082】
基材121の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材121の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材121上に、例えば、絶縁膜が形成される。
【0083】
機能層122は、基材121の上面121aに抵抗体123の下層として形成されている。すなわち、機能層122の平面形状は、図13に示す抵抗体123の平面形状と略同一である。
【0084】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体123の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層122は、更に、基材121に含まれる酸素や水分による抵抗体123の酸化を防止する機能や、基材121と抵抗体123との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層122は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0085】
基材121を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体123がCr(クロム)を含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層122が抵抗体123の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0086】
機能層122の材料は、少なくとも上層である抵抗体123の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0087】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0088】
機能層122が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層122の膜厚は抵抗体の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層122に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
【0089】
機能層122が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層122の膜厚は抵抗体の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層122に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
【0090】
機能層122が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層122の膜厚は抵抗体の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗体に流れる電流の一部が機能層122に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
【0091】
機能層122が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層122の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層122にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
【0092】
機能層122が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層122の膜厚は、1nm~0.8μmとすることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層122にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
【0093】
機能層122が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層122の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層122にクラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
【0094】
なお、機能層122の平面形状は、例えば、図13に示す抵抗体の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層122の平面形状は、抵抗体の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層122が絶縁材料から形成される場合には、抵抗体の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層122は少なくとも抵抗体が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層122は、基材121の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0095】
又、機能層122が絶縁材料から形成される場合に、機能層122の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層122の厚さと表面積が増加するため、抵抗体が発熱した際の熱を基材121側へ放熱できる。その結果、第1ひずみゲージ120Aにおいて、抵抗体の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
【0096】
抵抗体123は、機能層122の上面に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。
【0097】
抵抗体123は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体123は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0098】
以降は、抵抗体123がCr混相膜である場合を例にして説明する。ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。又、Cr混相膜に、機能層122を構成する材料の一部が拡散されてもよい。この場合、機能層122を構成する材料と窒素とが化合物を形成する場合もある。例えば、機能層122がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0099】
抵抗体123の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体123の厚さが0.1μm以上であると抵抗体123を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体123を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材121からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0100】
機能層122上に抵抗体123を形成することで、安定な結晶相により抵抗体123を形成できるため、ゲージ特性(ゲージ率、ゲージ率温度係数TCS、及び抵抗温度係数TCR)の安定性を向上できる。
【0101】
例えば、抵抗体123がCr混相膜である場合、機能層122を設けることで、α-Cr(アルファクロム)を主成分とする抵抗体123を形成できる。α-Crは安定な結晶相であるため、ゲージ特性の安定性を向上できる。
【0102】
ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗体123がCr混相膜である場合、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体123はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0103】
又、抵抗体123がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
【0104】
又、CrN及びCrN中のCrNの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCrN中のCrNの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCrNにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減がなされる。
【0105】
一方で、膜中に微量のNもしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
【0106】
又、機能層122を構成する金属(例えば、Ti)がCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性を向上できる。具体的には、第1ひずみゲージ120Aのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0107】
端子部125は、配線124を介して抵抗体123の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体123及び配線124よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部125は、ひずみにより生じる抵抗体123の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。抵抗体123は、例えば、端子部125及び配線124の一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の配線124及び端子部125に接続されている。端子部125の上面を、端子部125よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。
【0108】
なお、抵抗体123と配線124と端子部125とは便宜上別符号としているが、これらは同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0109】
抵抗体123及び配線124を被覆し端子部125を露出するように基材121の上面121aにカバー層126(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層126を設けることで、抵抗体123及び配線124に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層126を設けることで、抵抗体123及び配線124を湿気等から保護できる。なお、カバー層126は、端子部125を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0110】
カバー層126は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0111】
第1ひずみゲージ120Aを製造するためには、まず、基材121を準備し、基材121の上面121aに機能層122を形成する。基材121及び機能層122の材料や厚さは、前述の通りである。但し、機能層122は、必要に応じて設ければよい。
【0112】
機能層122は、例えば、機能層122を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材121の上面121aをArでエッチングしながら機能層122が成膜されるため、機能層122の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0113】
但し、これは、機能層122の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層122を成膜してもよい。例えば、機能層122の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材121の上面121aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層122を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0114】
次に、機能層122の上面全体に抵抗体123、配線124、及び端子部125となる金属層を形成後、フォトリソグラフィによって機能層122並びに抵抗体123、配線124、及び端子部125を図13に示す平面形状にパターニングする。抵抗体123、配線124、及び端子部125の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体123、配線124、及び端子部125は、同一材料により一体に形成できる。抵抗体123、配線124、及び端子部125は、例えば、抵抗体123、配線124、及び端子部125を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。抵抗体123、配線124、及び端子部125は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0115】
機能層122の材料と抵抗体123、配線124、及び端子部125の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層122としてTiを用い、抵抗体123、配線124、及び端子部125としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0116】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体123、配線124、及び端子部125を成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体123、配線124、及び端子部125を成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNの割合、並びにCrN及びCrN中のCrNの割合を調整できる。
【0117】
これらの方法では、Tiからなる機能層122がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層122を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、第1ひずみゲージ120Aのゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。
【0118】
なお、抵抗体123がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層122は、抵抗体123の結晶成長を促進する機能、基材121に含まれる酸素や水分による抵抗体123の酸化を防止する機能、及び基材121と抵抗体123との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層122として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0119】
その後、必要に応じ、基材121の上面121aに、抵抗体123及び配線124を被覆し端子部125を露出するカバー層126を設けることで、第1ひずみゲージ120Aが完成する。カバー層126は、例えば、基材121の上面121aに、抵抗体123及び配線124を被覆し端子部125を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層126は、基材121の上面121aに、抵抗体123及び配線124を被覆し端子部125を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0120】
このように、抵抗体123の下層に機能層122を設けることにより、抵抗体123の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体123を作製できる。その結果、第1ひずみゲージ120Aにおいて、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、機能層122を構成する材料が抵抗体123に拡散することにより、第1ひずみゲージ120Aにおいて、ゲージ特性を向上できる。
【0121】
なお、抵抗体123の材料としてCr混相膜を用いた第1ひずみゲージ120Aは、高感度化(従来比500%以上)かつ、小型化(従来比1/10以下)を実現している。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、第1ひずみゲージ120Aでは0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。又、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、第1ひずみゲージ120Aの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化できる。
【0122】
このように、抵抗体123の材料としてCr混相膜を用いた第1ひずみゲージ120Aは小型であるため、特に、直径(外輪31の外径)が30mm以下である小型の第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bを用いた軸受装置1に使用すると好適である。又、抵抗体123の材料としてCr混相膜を用いた第1ひずみゲージ120Aは高感度であり、小さい変位を検出できるため、従来は検出が困難であった微小なひずみを検出可能である。すなわち、抵抗体123の材料としてCr混相膜を用いた第1ひずみゲージ120Aを有することにより、ひずみを精度よく検出する機能を備えた軸受装置1を実現できる。
【0123】
(モータ)
軸受装置1は、モータに搭載することができる。図15は、第1実施形態に係る軸受装置を搭載したモータを例示する断面図である。図15に示すように、モータ5は、軸受装置1と、インペラ10と、ステータ50と、ロータ60と、ケーシング70とを有する軸流ファンモータである。なお、軸受装置1は、軸流ファンモータ以外のモータにも搭載可能である。
【0124】
インペラ10は、ロータハウジング11と、ロータハウジング11の外周に設けられた羽根12とを有している。インペラ10の中心には、軸受装置1が固定されている。ステータ50は、インシュレータ51と、ステータコア52と、コイル53とを有し、軸受装置1の軸受ハウジング40の外周に配置されている。ステータコア52は、例えば、軸受ハウジング40の外周に圧入等により固定されている。
【0125】
ロータ60は、ロータハウジング11の内側に一体的に設けられたロータヨーク61と、ロータヨーク61の内側に装着されたロータマグネット62とを有している。なお、図15の例では、ロータヨーク61は、ロータハウジング11の内側に一体的に設けられているが、これには限定されず、ロータヨーク61はロータハウジング11の内側に装着されてもよい。又、回転軸20は、ロータヨーク61に装着されてロータハウジング11の中心に固定されているが、回転軸20はロータハウジング11に直接固定してもよい。
【0126】
ケーシング70は、インペラ10の外周を覆うケーシング外枠71と、軸受ハウジング40を固定するベース部ハブ72と、ケーシング外枠71とベース部ハブ72とを連結する静翼73とを有している。
【0127】
なお、図15の例では、ケーシング外枠71とベース部ハブ72とが、静翼73で連結されている場合を示しているが、ケーシング外枠71とベース部ハブ72とは、連結シャフトのような棒状の構造で連結されてもよい。
【0128】
又、軸受装置1の軸受ハウジング40は、ケーシング70を樹脂で射出成形するときに、ベース部ハブ72に一体化するように固定してもよいが、先にケーシング70を成形しておき、後からベース部ハブ72の部分に固定するようにしてもよい。
【0129】
モータ5において、ステータ50とロータ60とでモータ部80が構成されており、電源部(図示せず)からコイル53に電流を供給することにより、軸受ハウジング40内に回転自在に支持された回転軸20の中心軸を軸線mとしてインペラ10が回転する。すなわち、モータ5は、所謂アウターロータ型のモータである。
【0130】
モータ5において、図15の上側が吸込み口側であり、下側が吹出し口側である。従って、モータ5では、ケーシング外枠71の空気の吸込み口側にインペラ10が設けられ、吹出し口側にベース部ハブ72が設けられている。
【0131】
図7等に示した配線130A~130Dがシールド部分を有する場合、電磁ノイズの影響を抑制する観点から、第1ひずみゲージ120A等が固定されているゲージ固定用部材110は、配線130A~130Dのシールド部分と同電位のGNDとすることが好ましい。例えば導電性接着剤によりゲージ固定用部材110と配線130A~130Dのシールド部分とを接着することで、両者を同電位のGNDとすることができる。導電性接着剤としては、例えば銀、ニッケル、金、銅、カーボンブラック等の粒子が接着剤中に分散したペーストが挙げられる。
【0132】
なお、配線130A~130Dは、例えば、センサユニット100からモータ5の外部に直接引き出されてもよいし、モータ5の内部に配置された回路基板と電気的に接続されてもよい。
【0133】
軸受装置1において、軸受ハウジング40とセンサユニット100は別部品である。そのため、モータ5を組み立てる際には、センサユニット100に搭載された各ひずみゲージをモータ5に容易に配置可能である。すなわち、ハウジングとなるベース部ハブ72に軸受ハウジング40を圧入した後に、軸受ハウジング40に、ひずみゲージが搭載されたセンサユニット100を取り付けることができる。
【0134】
このように、モータ5では、軸受ハウジング40とセンサユニット100が別部品であるため、センサユニット100が取り扱いやすく、センサユニット100を用いてモータ5にひずみゲージを容易に配置することができる。そのため、モータ5の組立工数を削減することができる。また、軸受ハウジング40にセンサユニット100を取り付けることにより、軸受ハウジング40の剛性を高くすることができる。また、軸受ハウジング40にセンサユニット100を着脱自在な状態で取り付けることにより、必要な時にセンサユニット100を交換することも可能である。
【0135】
なお、モータ5は、ひずみ検出装置3を有してもよい。すなわち、軸受装置1に加えてモータ5に図11に示したブリッジ回路2を搭載することも可能である。ひずみ検出装置3を用いて第1転がり軸受30Aのひずみ波形の変化をモニタリングすることで、第1転がり軸受30Aの異常を検知し、モータ5が回転不具合を発生する前に異常を検知することが可能となる。例えば、サーバの冷却等に用いられる軸流ファンモータは、常に動作しており、一時的にでもストップすると冷却能力が下がる。この場合、軸流ファンモータの異常を少しでも早く検知したいため、第1転がり軸受30Aの状態をモニタリングすることは特に有効である。
【0136】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、2つのひずみゲージを有するセンサユニットの例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0137】
図16は、第1実施形態の変形例1に係る軸受装置を例示する断面図であり、回転軸20の軸線mを通る断面を示している。なお、図16は、センサユニット100Aを軸受ハウジング40の外周面に取り付けた後の状態である。
【0138】
図16に示す軸受装置1Aは、センサユニット100がセンサユニット100Aに置換された点が、軸受装置1(図7等参照)と相違する。センサユニット100Aは、第1ひずみゲージ120A及び第2ひずみゲージ120Bを有しているが、第3ひずみゲージ120C及び第4ひずみゲージ120Dは有していない。センサユニット100Aは、これ以外の点ではセンサユニット100と同様である。
【0139】
軸受装置1Aの第1ひずみゲージ120A及び第2ひずみゲージ120Bのみを用いても、第1実施形態と同様、電磁ノイズNの影響が除去されたS/N比のよいひずみεを、出力電圧εとして検出することができる。
【0140】
具体的には、図11に示すブリッジ回路2のR1を第1ひずみゲージ120A、R4を第2ひずみゲージ120B、R2及びR3を固定抵抗Rとする。これにより、ブリッジ回路2の出力として、出力電圧eを得ることができる。例えば、第1ひずみゲージ120Aでひずみεと電磁ノイズNが検出され、第2ひずみゲージ120Bで電磁ノイズNのみが検出される場合、電磁ノイズNはキャンセルされ、出力電圧e=E/4×Ks×εとなる。
【0141】
このように、センサユニットに設けるひずみゲージは、2つであっても4つであってもよい。ひずみ伝達部111とひずみ非伝達部112に、少なくとも1つずつひずみゲージを配置することで、電磁ノイズNの影響を低減することができる。4つのひずみゲージを有するセンサユニットは、大きな出力電圧eが得られる点で有利である。一方、2つのひずみゲージを有するセンサユニットは、部品点数を低減できる点で有利である。したがって、要求仕様に応じて、何れかのセンサユニットを選択することが好ましい。
【0142】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、2つのセンサユニットを備えた軸受装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0143】
図17は、第1実施形態の変形例2に係る軸受装置を例示する断面図(その1)であり、回転軸20の軸線mを通る断面を示している。図18は、第1実施形態の変形例2に係る軸受装置を例示する断面図(その2)であり、図17のB-B線に沿う断面の一例である。図19は、第1実施形態の変形例2に係る軸受装置を例示する断面図(その3)であり、図17のB-B線に沿う断面の他の例である。なお、図17は、2つのセンサユニット100を軸受ハウジング40の外周面に取り付けた後の状態である。
【0144】
図17図19に示すように、軸受装置1Bは、回転軸20と、第1転がり軸受30Aと、第2転がり軸受30Bと、軸受ハウジング40と、2つのセンサユニット100とを有している。
【0145】
センサユニット100の一方は、軸受ハウジング40の軸線m方向の一方側(第1転がり軸受30A側)に、着脱自在な状態で嵌めこむことができる。センサユニット100の一方の近傍の構造は、図6等に示す軸受装置1と同様である。センサユニット100の他方は、軸受ハウジング40の軸線m方向の他方側(第2転がり軸受30B側)に、着脱自在な状態で嵌めこむことができる。
【0146】
センサユニット100の他方において、ゲージ固定用部材110は、回転軸mの回転により第2転がり軸受30Bに生じるひずみが伝達するひずみ伝達部と、ひずみが伝達しないひずみ非伝達部と、を有している。ひずみ伝達部は、径方向視で第2転がり軸受30Bの外周面と重複する位置にあり、ひずみ非伝達部は、径方向視で第2転がり軸受30Bの外周面と重複しない位置にある。そして、第1ひずみゲージ120A及び第3ひずみゲージ120Cは、ひずみ伝達部に配置され、第2ひずみゲージ120B及び第4ひずみゲージ120Dは、ひずみ非伝達部に配置されている。
【0147】
図18に示すように、センサユニット100の他方(第2転がり軸受30B側のセンサユニット)において、各ひずみゲージの電極に接続される線材(配線130A等)は、例えば、軸受ハウジング40に設けた溝40xを通して、第1転がり軸受30A側に引き回すことができる。或いは、図19に示すように、軸受ハウジング40に設けた穴40yを通して、第1転がり軸受30A側に引き回してもよい。
【0148】
このように、第1転がり軸受30A及び第2転がり軸受30Bのそれぞれのひずみを検出するセンサユニット100を設けてもよい。また、2つのセンサユニット100に代えて、図16に示すセンサユニット100Aを2つ用いてもよい。すなわち、それぞれのセンサユニットは、4つのひずみゲージ(第1ひずみゲージ120A、第2ひずみゲージ120B、第3ひずみゲージ120C、及び第4ひずみゲージ120D)を有してもよいし、2つのひずみゲージ(第1ひずみゲージ120A及び第2ひずみゲージ120B)を有してもよい。
【0149】
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、ひずみ伝達部とひずみ非伝達部のバリエーションの例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0150】
図20は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その1)である。図21は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その2)である。
【0151】
図20に示すように、センサユニット100において、ゲージ固定用部材110は、回転軸20の軸線m方向において、第1ひずみゲージ120Aと第2ひずみゲージ120Bとの間に位置する領域に、内周面110bから回転軸20とは反対側に窪む溝110cを有してもよい。この場合、溝110cよりもさらに下側が、ひずみ非伝達部112となる。溝110cは、軸線m方向に離隔して複数個配置されてもよい。この場合、最も下側に配置される溝110cよりもさらに下側が、ひずみ非伝達部112となる。また、1又は複数の溝110cは、全周に設けてもよいし、第1ひずみゲージ120Aと第2ひずみゲージ120Bとが対向する部分のみに設けてもよい。
【0152】
図21に示すように、センサユニット100において、ゲージ固定用部材110は、回転軸20の軸線m方向において、第1ひずみゲージ120Aと第2ひずみゲージ120Bとの間に位置する領域に、外周面110aから回転軸20の側に窪む溝110dを有してもよい。この場合、溝110dよりもさらに下側が、ひずみ非伝達部112となる。溝110dは、軸線m方向に離隔して複数個配置されてもよい。この場合、最も下側に配置される溝110dよりもさらに下側が、ひずみ非伝達部112となる。また、1又は複数の溝110dは、全周に設けてもよいし、第1ひずみゲージ120Aと第2ひずみゲージ120Bとが対向する部分のみに設けてもよい。
【0153】
図20図21に示す構造とすることで、ゲージ固定用部材110の溝110cや溝110dの部分にひずみが集中するため、ひずみ非伝達部112へのひずみ伝達をさらに低減可能となる。溝の断面形状や長さは任意に決定することができる。例えば、図22に示す溝110eや図23に示す溝110fのように、軸線m方向において、ひずみ非伝達部112よりも長さが長い溝を設けてもよい。なお、ゲージ固定用部材110において、第3ひずみゲージ120Cと第4ひずみゲージ120Dの固定部も図20図23と同様の構造とすることができる。
【0154】
図24は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その5)である。図24に示すように、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複する位置に肉薄部110gを設け、肉薄部110gに第1ひずみゲージ120Aを配置してもよい。この場合、ゲージ固定用部材110の肉薄部110gがひずみ伝達部111となる。このように、回転軸20の回転により第1転がり軸受30Aに生じるひずみをより伝達しやすくするために、ひずみ伝達部111は、ひずみ非伝達部112より肉薄であってもよい。なお、ゲージ固定用部材110において、第3ひずみゲージ120Cと第4ひずみゲージ120Dの固定部も図24と同様の構造とすることができる。
【0155】
図25は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その6)である。図25に示すように、径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複しない位置において、ゲージ固定用部材110に外周側に窪む肉薄部110hを設け、肉薄部110hに第2ひずみゲージ120Bを配置してもよい。この場合、ゲージ固定用部材110の肉薄部110hがひずみ非伝達部112となる。径方向視で第1転がり軸受30Aの外周面と重複するゲージ固定用部材110の外周面に比べて肉薄部110hには、第1転がり軸受30Aに生じるひずみが伝達しにくい。また、肉薄部110hを設けることで、第2ひずみゲージ120Bを配置しやすい。なお、ゲージ固定用部材110において、第3ひずみゲージ120Cと第4ひずみゲージ120Dの固定部も図25と同様の構造とすることができる。
【0156】
図26は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その7)である。図26に示すように軸受ハウジング40は、第3外周面40cを有していなくてもよい。この場合、第2外周面40bは段差を有していない連続する面であり、第2外周面40bの全体がゲージ固定用部材110の内周面110bと当接するため、図9に示すような空隙Sは形成されない。このように、図9に示す空隙Sは必要に応じて設けられる。図26のように空隙Sを設けない構造の場合、軸受ハウジング40及びゲージ固定用部材110の剛性を高くすることができる。
【0157】
図27は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その8)である。図27に示すように、空隙Sを設けず、さらにひずみ伝達部111とひずみ非伝達部112との間において、ゲージ固定用部材110の外周面110aを外側に突起させてもよい。この構造では、軸受装置をモータのハウジング140に固定すると、ゲージ固定用部材110の外周面110aがモータのハウジング140の内周面と当接するため、軸受ハウジング40及びゲージ固定用部材110の剛性を高くすることができる。なお、図27の構造の場合のひずみゲージと接続する配線を通すために、ゲージ固定用部材110の外周側の領域M1に溝や穴を設けてもよい。あるいは、モータのハウジング140の内周側の領域M2に溝や穴を設けてもよい。
【0158】
図28は、第1実施形態の変形例3に係るひずみ伝達部及びひずみ非伝達部の部分拡大図(その9)である。図28に示すように、ゲージ固定用部材110の端面にはひずみが伝達しにくいため、ゲージ固定用部材110の端面はひずみ非伝達部112となる。したがって、第2ひずみゲージ120Bは、ひずみ非伝達部であるゲージ固定用部材110の端面に配置してもよい。
【0159】
ゲージ固定用部材110の端面に第2ひずみゲージ120Bを配置する場合、第2ひずみゲージ120Bの貼り代を確保するために、図28のようにゲージ固定用部材110の全体を肉厚にする構造に代えて、図29に示すように、ゲージ固定用部材110の外周面110aの下端部から外側に周状に突起する突起部110iを設けたフランジタイプとしてもよい。
【0160】
また、図30に示すように、ひずみ伝達部111以外の部分において、ゲージ固定用部材110の外周面110aを外側に突起させてもよい。この構造では、軸受装置をモータのハウジング140に固定すると、ゲージ固定用部材110の外周面110aがモータのハウジング140の内周面と当接するため、軸受ハウジング40及びゲージ固定用部材110の剛性を高くすることができる。なお、図30の構造の場合のひずみゲージと接続する配線を通すために、ゲージ固定用部材110の外周側の領域M3に溝や穴を設けてもよい。あるいは、モータのハウジング140の内周側の領域M4に溝や穴を設けてもよい。
【0161】
なお、図20図30に示した構造は、技術的に可能な範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0162】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0163】
例えば、ゲージ固定用部材110の内周面110bと軸受ハウジング40の第3外周面40cとの間に空隙Sが形成されている場合、第2ひずみゲージ120Bおよび第4ひずみゲージ120Dは、ゲージ固定用部材110の内周面110bに配置されていてもよい。
【0164】
例えば、本発明は、第1転がり軸受及び第2転がり軸受の何れか一方のみを有する軸受装置、ひずみ検出装置、及びモータにも適用できる。
【符号の説明】
【0165】
1,1A,1B 軸受装置、2 ブリッジ回路、3 ひずみ検出装置、5 モータ、10 インペラ、11 ロータハウジング、12 羽根、20 回転軸、30A 第1転がり軸受、30B 第2転がり軸受、31 外輪、32 内輪、33 転動体、40 軸受ハウジング、40a 第1外周面、40b 第2外周面、40c 第3外周面、40x 溝、40y 穴、41a 内側段部、41b,41c 外側段部、51 インシュレータ、52 ステータコア、53 コイル、60 ロータ、61 ロータヨーク、62 ロータマグネット、70 ケーシング、71 ケーシング外枠、72 ベース部ハブ、73 静翼、80 モータ部、100,100A センサユニット、110 ゲージ固定用部材、110a 外周面、110b 内周面、110c,110d,110e,110f 溝、110g,110h 肉薄部、110i 突起部、110x スリット、110y 溝、111 ひずみ伝達部、112 ひずみ非伝達部、120A 第1ひずみゲージ、120B 第2ひずみゲージ、120C 第3ひずみゲージ、120D 第4ひずみゲージ、121 基材、122 機能層、123 抵抗体、124 配線、125 端子部、126 カバー層、130A,130B,130C,130D 配線
図1
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