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特開2023-141916薬剤供給装置及びバルーンカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141916
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】薬剤供給装置及びバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20230928BHJP
【FI】
A61M25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048498
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA07
4C267BB27
4C267CC09
4C267GG16
4C267HH22
(57)【要約】
【課題】医療用デバイスの外周面の全域に亘って薬剤を供給することが可能な薬剤供給装置、及びバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】薬剤供給装置1Aは、管状を有し、基端部20Pから供給される薬剤を通過させる内腔20Lを有する供給管2Aと、供給管2Aの先端部20Dに設けられ、供給管2Aに供給された薬剤を医療用デバイスに向けて放出する放出部3Aと、医療用デバイスに対して薬剤供給装置を保持する保持部材4Aであって、供給管2Aのうち基端部20Pと先端部20Dとの間の何れかに設けられ、医療用デバイスと供給管2Aとを相対的に回転可能な状態で保持する保持部材4Aとを備える。薬剤供給装置1Aは、供給管2Aの中心を通過する中心軸C1と、保持部材4Aにより保持された供給管2Aが医療用デバイスに対して相対的に回転するときの回転軸である第1回転軸R11とが一致しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスに薬剤を供給する薬剤供給装置であって、
管状を有し、基端部から供給される前記薬剤を通過させる内腔を有する供給管と、
前記供給管のうち前記基端部と反対側の端部である先端部に設けられ、前記供給管に供給された前記薬剤を前記医療用デバイスに向けて放出する放出部と、
前記医療用デバイスに対して前記薬剤供給装置を保持する保持部材であって、
前記供給管のうち前記基端部と前記先端部との間の何れかに設けられ、
前記医療用デバイスと前記供給管とを相対的に回転可能な状態で保持する
前記保持部材と、
を備え、
前記供給管の中心を通過する中心軸と、前記保持部材により保持された前記供給管が前記医療用デバイスに対して相対的に回転するときの回転軸である第1回転軸とが一致しないことを特徴とする薬剤供給装置。
【請求項2】
前記保持部材は、第1貫通孔を有する環状部材を有し、
前記第1回転軸は、前記第1貫通孔の中心を通過し、
前記中心軸は、前記第1貫通孔を通過しないことを特徴とする請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項3】
前記保持部材は、
前記医療用デバイスと前記供給管とを、前記中心軸に沿った方向に相対移動可能な状態で保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤供給装置。
【請求項4】
前記放出部は、前記供給管に対して回転可能であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の薬剤供給装置。
【請求項5】
前記放出部が前記供給管に対して回転するときの回転軸である第2回転軸は、前記第1回転軸と平行に延びることを特徴とする請求項4に記載の薬剤供給装置。
【請求項6】
前記放出部は、前記供給管に対して回転可能であり、
前記放出部が前記供給管に対して回転するときの回転軸である第2回転軸は、前記第1回転軸と交差する方向に延びることを特徴とする請求項3に記載の薬剤供給装置。
【請求項7】
複数の前記放出部を有し、
前記供給管は、
前記先端部に、複数の前記放出部と連結する分岐部を有することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の薬剤供給装置。
【請求項8】
前記供給管に沿って設けられ、前記供給管よりも硬いシャフトを更に備えたことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の薬剤供給装置。
【請求項9】
前記放出部は、
管状を有し、前記供給管から供給される前記薬剤を通過させる内腔を有する通過管と、
前記通過管に設けられた貫通孔であって、前記通過管の内腔を通過する前記薬剤を外部に放出する第2貫通孔と
を備えたことを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の薬剤供給装置。
【請求項10】
前記医療用デバイスは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに設けられたバルーンとを備えたバルーンカテーテルであり、
前記環状部材は、前記カテーテルシャフトと前記供給管とを相対的に回転可能な状態で保持し、
前記環状部材の内径は、収縮した前記バルーンの外径よりも大きく、且つ、膨張した前記バルーンの外径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の薬剤供給装置。
【請求項11】
前記医療用デバイスは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに設けられたバルーンとを備えたバルーンカテーテルであり、
前記放出部は、前記バルーンに向けて前記薬剤を放出し、
前記放出部の外表面の少なくとも一部が尖った形状を有することを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の薬剤供給装置。
【請求項12】
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに設けられたバルーンと
管状を有し、基端部から供給される薬剤を通過させる内腔を有する供給管と、
前記供給管のうち前記基端部と反対側の端部である先端部に設けられ、前記供給管に供給された前記薬剤を前記バルーンに向けて放出する放出部と、
前記カテーテルシャフトに対して前記供給管を保持する保持部材であって、
前記供給管のうち前記基端部と前記先端部との間の何れかに設けられ、
前記カテーテルシャフトと前記供給管とを相対的に回転可能な状態で保持する
前記保持部材と、
を備え、
前記供給管の中心を通過する中心軸と、前記保持部材により保持された前記供給管が回転するときの回転軸である第1回転軸とが一致しないことを特徴とするバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤供給装置及びバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内において、バルーンカテーテル等の医療用デバイスに薬剤を供給する為の装置が提案されている。特許文献1は、バルーンに供給した薬物を腫瘍に投与する為のカテーテルを開示する。カテーテルは、バルーン、第1の導管、及び第2の導管を有する。バルーンは、第1の導管の先端に接続され、第1の導管に形成された第1のルーメンと連通する。第1の導管には更に、第2の導管が挿通される第2のルーメンが形成される。第2の導管は、第2のルーメンの延びる方向(以下、延伸方向という。)に移動可能である。第2の導管の先端に薬物吐出口が形成される。薬物吐出口から吐出された薬物は、バルーンの外表面に付着する。バルーンが膨張して腫瘍を押圧することにより、バルーンの外表面の薬剤が腫瘍に投与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-157606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のカテーテルにおいて、薬物吐出口は延伸方向にのみ移動可能であり、延伸方向と直交する方向に移動できない。このため、バルーンの外周面の全域に亘って薬剤を供給することができない場合があるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、医療用デバイスの外周面の全域に亘って薬剤を供給することが可能な薬剤供給装置、及びバルーンカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る薬剤供給装置は、医療用デバイスに薬剤を供給する薬剤供給装置であって、管状を有し、基端部から供給される前記薬剤を通過させる内腔を有する供給管と、前記供給管のうち前記基端部と反対側の端部である先端部に設けられ、前記供給管に供給された前記薬剤を前記医療用デバイスに向けて放出する放出部と、前記医療用デバイスに対して前記薬剤供給装置を保持する保持部材であって、前記供給管のうち前記基端部と前記先端部との間の何れかに設けられ、前記医療用デバイスと前記供給管とを相対的に回転可能な状態で保持する前記保持部材と、を備え、前記供給管の中心を通過する中心軸と、前記保持部材により保持された前記供給管が前記医療用デバイスに対して相対的に回転するときの回転軸である第1回転軸とが一致しないことを特徴とする。
【0007】
薬剤供給装置は、医療用デバイスと供給管とを相対的に回転させることにより、供給管の先端部に設けられた放出部を、医療用デバイスに対して周方向の全域に亘って移動させることができる。この場合、薬剤供給装置は、供給管に供給される薬剤を、放出部を介して、医療用デバイスにおける周方向の全域に亘って供給できる。
【0008】
第1態様において、前記保持部材は、第1貫通孔を有する環状部材を有し、前記第1回転軸は、前記第1貫通孔の中心を通過し、前記中心軸は、前記第1貫通孔を通過しなくてもよい。この場合、薬剤供給装置は、医療用デバイスと供給管とを相対的に回転可能な状態で保持するための機構を、簡易な構成で実現できる。
【0009】
第1態様において、前記保持部材は、前記医療用デバイスと前記供給管とを、前記中心軸に沿った方向に相対移動可能な状態で保持してもよい。これにより、例えば、病変部の手前で薬剤供給装置により薬剤を医療用デバイスに塗布し、その後、医療用デバイスを病変部に向けて移動させることが可能となる。
【0010】
第1態様において、前記放出部は、前記供給管に対して回転可能であってもよい。この場合、薬剤供給装置は、医療用デバイスに薬剤を供給するときの放出部と医療用デバイスとの間の摩擦力を軽減できる。従って、薬剤供給装置は、医療用デバイスに対する薬剤の供給を漏れなく確実に行うことができる。
【0011】
第1態様において、前記放出部が前記供給管に対して回転するときの回転軸である第2回転軸は、前記第1回転軸と平行に延びてもよい。この場合、薬剤供給装置は、医療用デバイスと供給管とを相対的に回転させることにより、放出部を回転させながら医療用デバイスに薬剤を供給できる。
【0012】
第1態様において、前記放出部は、前記供給管に対して回転可能であり、前記放出部が前記供給管に対して回転するときの回転軸である第2回転軸は、前記第1回転軸と交差する方向に延びてもよい。この場合、薬剤供給装置は、医療用デバイスと供給管とが中心軸に沿った方向に相対移動することにより、放出部を回転させながら医療用デバイスに薬剤を供給できる。
【0013】
第1態様において、複数の前記放出部を有し、前記供給管は、前記先端部に、複数の前記放出部と連結する分岐部を有してもよい。この場合、薬剤供給装置は、複数の放出部を用いて効率良く医療用デバイスに薬剤を供給できる。
【0014】
第1態様において、前記供給管に沿って設けられ、前記供給管よりも硬いシャフトを更に備えてもよい。この場合、薬剤供給装置のユーザは、シャフトの剛性を利用することで、供給管及び放出部を所望する位置まで容易に送達させることができる。
【0015】
第1態様において、前記放出部は、管状を有し、前記供給管から供給される前記薬剤を通過させる内腔を有する通過管と、前記通過管に設けられた貫通孔であって、前記通過管の内腔を通過する前記薬剤を外部に放出する第2貫通孔とを備えてもよい。この場合、薬剤供給装置は、供給管から供給される薬剤を医療用デバイスに向けて放出する為の構成を、簡易な構成で容易に実現できる。
【0016】
第1態様において、前記医療用デバイスは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに設けられたバルーンとを備えたバルーンカテーテルであり、前記環状部材は、前記カテーテルシャフトと前記供給管とを相対的に回転可能な状態で保持し、前記環状部材の内径は、収縮した前記バルーンの外径よりも大きく、且つ、膨張した前記バルーンの外径よりも小さくてもよい。この場合、薬剤供給装置の使用者は、医療用デバイスに対する薬剤供給装置の位置決めを容易に行うことができる。
【0017】
第1態様において、前記医療用デバイスは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに設けられたバルーンとを備えたバルーンカテーテルであり、前記放出部は、前記バルーンに向けて前記薬剤を放出し、前記放出部の外表面の少なくとも一部が尖った形状を有してもよい。この場合、例えば放出部がバルーンの側面に配置された状態でバルーンを膨張させることにより、放出部の尖った部分を、血管内の病変部等に作用させて治療できる。
【0018】
本発明の第2態様に係るバルーンカテーテルは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに設けられたバルーンと、管状を有し、基端部から供給される薬剤を通過させる内腔を有する供給管と、前記供給管のうち前記基端部と反対側の端部である先端部に設けられ、前記供給管に供給された前記薬剤を前記バルーンに向けて放出する放出部と、前記カテーテルシャフトに対して前記供給管を保持する保持部材であって、前記供給管のうち前記基端部と前記先端部との間の何れかに設けられ、前記カテーテルシャフトと前記供給管とを相対的に回転可能な状態で保持する前記保持部材と、を備え、前記供給管の中心を通過する中心軸と、前記保持部材により保持された前記供給管が回転するときの回転軸である第1回転軸とが一致しないことを特徴とする。第2態様によれば、第1態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】薬剤供給装置1Aを示す図、及び、各部分の断面図である。
図2】バルーンカテーテル9を示す図である。
図3】薬剤供給装置1A及びバルーンカテーテル9を示す図である。
図4】薬剤供給装置1Aの使用方法の第1例を説明するための図である。
図5】薬剤供給装置1Aの変形例を示す図である。
図6】薬剤供給装置1Aの使用方法の第2例を説明するための図である。
図7】薬剤供給装置1Bを示す図である。
図8】薬剤供給装置1Cを示す図である。
図9】薬剤供給装置1Dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る薬剤供給装置1の一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0021】
<薬剤供給装置1の概要>
血管、精管、ファロピーオ管、リンパ管等の脈管に形成された狭窄性の病変(以下、「狭窄病変」という。)を拡張し、脈管を再灌流化するためのデバイスとして、バルーンカテーテルが知られている。ここで、バルーンカテーテルによる狭窄病変の拡張性能は、バルーンの物理的な拡張能力に依存する。しかし、従来のバルーンカテーテルでは、拡張能力を強化したとしても、狭窄病変を拡張しきれない場合が発生し得る。その原因として、脈管の弾性、狭窄病変の細胞の異常増殖、治療後における病変の再狭窄等がある。
【0022】
これに対し、狭窄病変の形成要因を直接的に抑制して治療を効率化する為、薬剤を用いて狭窄病変を治療するデバイスが知られている。このようなデバイスの一例として、薬剤が塗布されたバルーンを有するバルーンカテーテルがある。このバルーンカテーテルでは、バルーンの拡張時、バルーンに塗布された薬剤を狭窄病変に付着させることにより、狭窄病変の治療を効果的に行うことができる。
【0023】
上記のようなバルーンカテーテルが用いられる場合において、バルーンに塗布された薬剤の量が、狭窄病変の治療に必要な量に対して不十分である可能性がある。ここで、バルーンに対する薬剤の補充が不可能である場合、バルーンの薬剤が治療に使用されたバルーンカテーテルを体内から抜去し、新たなバルーンカテーテルを体内に再挿入することが必要となる。この場合、バルーンカテーテルの使用者(術者)や患者の負担増加、治療効果の低下等といった不都合が生じる可能性がある。
【0024】
これに対し、本実施形態に係る薬剤供給装置1(図1等参照)は、バルーンカテーテル9(図2等参照)の体内からの抜去を要することなく、バルーン9Bに対する薬剤の補充を可能とする。又、薬剤供給装置1は、バルーン9Bの周方向の全域に亘って薬剤を塗布することができる。このため、バルーン9Bによる狭窄病変の治療を効果的に行うことができる。
【0025】
<第1実施形態-薬剤供給装置1A>
図1を参照し、第1実施形態に係る薬剤供給装置1Aについて説明する。薬剤供給装置1Aは、供給管2A、放出部3A、及び保持部材4Aを有する。
【0026】
供給管2Aは、可撓性を有する管状の部材である。供給管2Aは、断面が円形の内腔20Lを有する。供給管2Aの一方側の端部を「基端部20P」といい、他方側の端部を「先端部20D」という。基端部20Pには、供給管2Aに向けて薬剤を供給する為の非図示の薬剤ポンプが接続される。薬剤ポンプにより基端部20Pに供給された薬剤は、内腔20Lを通過し、先端部20Dに向けて流れる。
【0027】
供給管2Aは、先端部20Dの近傍の屈曲部21にて僅かに屈曲する。供給管2Aのうち、基端部20Pから屈曲部21までの間で延びる部分を、「第1管部201」という。供給管2Aのうち、屈曲部21から先端部20Dまでの間で延びる部分を、「第2管部202」という。第1管部201の内腔20Lの中心を通る仮想的な軸を、「中心軸C1」という。中心軸C1に沿って延びる方向を、「延伸方向」という。
【0028】
放出部3Aは、供給管2Aの先端部20Dに設けられる。放出部3Aは管状の部材である通過管30を有する。通過管30の材料として、例えばNiTiが用いられる。通過管30は、延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面が円形であり、内腔30Lを有する。通過管30の両端部のうち、供給管2Aに近接する側の端部を「基端部30P」といい、供給管2Aから離隔する側の端部を「先端部30D」という。供給管2Aの先端部20Dを含む一部は、放出部3Aの通過管30の内腔30L内に配置される。供給管2Aの内腔20Lを先端部20Dに向けて流れる薬剤は、通過管30の基端部30Pに供給され、内腔30Lを通過して先端部30Dに向けて流れる。
【0029】
放出部3Aの通過管30の内腔30Lの中心を通る仮想的な軸を、「第2回転軸R21」という。第2回転軸R21は延伸方向に沿って延びる。放出部3Aは、供給管2Aに対して回転可能に支持される(矢印Y21)。供給管2Aに対して放出部3Aが回転する場合の回転中心は、第2回転軸R21と一致する。放出部3Aは、第2回転軸R21を中心として回転可能である。
【0030】
通過管30は、内腔30Lに連通する複数の第2貫通孔31を有する。各第2貫通孔31の断面形状は、円形である。複数の第2貫通孔31は、周方向に等間隔に配置され、且つ、延伸方向に等間隔に配置される。通過管30の内腔30Lを流れる薬剤は、薬剤ポンプにより加えられる圧力に応じ、複数の第2貫通孔31を介して外部に放出される。
【0031】
保持部材4Aは、供給管2Aのうち基端部20Pと先端部20Dとの間の部分、より詳細には、供給管2Aの屈曲部21の一部に設けられる。保持部材4Aは、第1貫通孔4Hを有する環状の環状部材40を備える。環状部材40はステンレス製である。第1貫通孔4Hを延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面形状は、円形である。供給管2Aの中心軸C1は、第1貫通孔4Hを通過しない。
【0032】
第1貫通孔4Hの中心を通って延伸方向に延びる軸を、「第1回転軸R11」という。第1回転軸R11は、放出部3Aの第2回転軸R21と平行に延びる。又、第1回転軸R11は中心軸C1と一致せず、延伸方向と直交する方向(以下、「直交方向」という。)に離隔する。
【0033】
以下、延伸方向のうち放出部3Aの先端部30Dから供給管2Aの基端部20Pに向かう側を「基端側」という。延伸方向のうち基端側と反対側、言い換えれば、供給管2Aの基端部20Pから放出部3Aの先端部30Dに向かう側を「先端側」という。
【0034】
図2は、薬剤供給装置1Aにより薬剤が供給されるバルーン9Bを含むバルーンカテーテル9を示す。バルーンカテーテル9は、カテーテルシャフト9A及びバルーン9Bを有する。
【0035】
カテーテルシャフト9Aは、外側チューブ91及び内側チューブ92を有する。外側チューブ91及び内側チューブ92は、それぞれ、可撓性を有する管状の部材である。外側チューブ91の内径は、内側チューブ92の外径よりも大きい。外側チューブ91の外径は、薬剤供給装置1Aの保持部材4Aの第1貫通孔4H(図1参照)の内径よりも小さい。内側チューブ92は、先端側の所定部分を除き、外側チューブ91の内腔に配置される。内側チューブ92の先端側の一部は、外側チューブ91の先端部から先端側に向けて突出する。内側チューブ92の先端側の一部は、外側チューブ91の先端部よりも先端側に配置される。内側チューブ92の内腔には、非図示のガイドワイヤが挿通される。カテーテルシャフト9Aの基端側の端部には、非図示の流体ハブが接続される。
【0036】
バルーン9Bは、カテーテルシャフト9Aの先端部に接続される。バルーン9Bのうち先端側の端部は、内側チューブ92の先端部に接続される。バルーン9Bのうち基端側の端部は、外側チューブ91の先端部に接続される。バルーン9Bは、内側チューブ92のうち外側チューブ91よりも先端側に突出する部分を覆う。
【0037】
流体ハブは、外側チューブ91の内腔のうち内側チューブ92の内腔以外の空間に圧縮流体を供給する。圧縮流体の供給に応じ、バルーン9Bは収縮状態から膨張状態に変形する。図2は、膨張状態のバルーン9Bを示す。図3Aは、収縮状態のバルーン9Bを示す。図3Aに示すように、収縮状態のバルーン9Bの外径は、薬剤供給装置1Aの保持部材4Aの第1貫通孔4Hの内径よりも小さい。
【0038】
なお、バルーン9Bの径は、圧縮流体の供給量に応じて変化する。例えば図3Bに示す膨張状態のバルーン9Bは、図2に示す膨張状態のバルーン9Bよりも圧縮流体の供給量が少ないため、図2に示す膨張状態のバルーン9Bよりも径が小さい。以下、図2に示すバルーン9Bの膨張状態を、「最大膨張状態」といい、図3Bに示すバルーン9Bの膨張状態を、「中間膨張状態」という。中間膨張状態及び最大膨張状態のバルーン9Bの外径は、薬剤供給装置1Aの保持部材4Aの第1貫通孔4H(図1参照)の内径よりも大きい。
【0039】
図2に示すように、バルーン9Bは、先端側コーン部93、膨張部94、及び基端側コーン部95を有する。バルーン9Bを膨張状態とした場合(図2図3B参照)、先端側コーン部93は、内側チューブ92の先端部との接続部分から基端側に向けて、拡径しながら延びる。基端側コーン部95は、外側チューブ91の先端部との接続部分から先端側に向けて、拡径しながら延びる。膨張部94は、先端側コーン部93の基端側の端部と、基端側コーン部95の先端側の端部との間に亘って延伸方向に延びる。
【0040】
図3A図3Bに示すように、薬剤供給装置1Aの保持部材4Aのうち環状部材40の第1貫通孔4Hに、バルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aが挿通する。薬剤供給装置1Aは、保持部材4Aによってバルーンカテーテル9に保持される。バルーン9Bは、保持部材4Aに対して先端側に配置される。バルーン9Bの膨張部94の位置は、延伸方向において、薬剤供給装置1Aの放出部3Aと一致する。
【0041】
薬剤供給装置1Aは、バルーンカテーテル9に対して回転可能である(矢印Y11)。薬剤供給装置1Aがバルーンカテーテル9に対して回転する時の回転軸は、保持部材4Aの第1回転軸R11と一致する。又、バルーンカテーテル9は、カテーテルシャフト9Aが保持部材4Aの環状部材40の第1貫通孔4Hに挿通した状態で、薬剤供給装置1Aに対して回転可能である(矢印Y12)。バルーンカテーテル9が薬剤供給装置1Aに対して回転する時の回転軸は、保持部材4Aの第1回転軸R11と一致する。即ち、第1回転軸R11は、バルーンカテーテル9と供給管2Aとが相対的に回転するときの回転軸に対応する。
【0042】
又、薬剤供給装置1Aはバルーンカテーテル9に対して、供給管2Aの中心軸C1に沿った方向、即ち延伸方向に移動可能である(矢印Y31)。
【0043】
図3Aに示すように、バルーンカテーテル9のバルーン9Bが収縮状態の場合、保持部材4Aによってカテーテルシャフト9Aに保持された薬剤供給装置1Aの放出部3Aは、バルーン9Bに対して直交方向に離隔する。一方、図3Bに示すように、バルーンカテーテル9のバルーン9Bが中間膨張状態の場合、保持部材4Aによってカテーテルシャフト9Aに保持された薬剤供給装置1Aの放出部3Aは、バルーン9Bの膨張部94に接触する。
【0044】
図4を参照し、薬剤供給装置1Aの使用方法について説明する。脈管8のうち、内壁の一部に発生した狭窄病変80により閉塞した部分を拡張する為に薬剤供給装置1A及びバルーンカテーテル9が使用される場合を例示する。
【0045】
薬剤供給装置1Aが保持された状態のバルーンカテーテル9が準備される。薬剤供給装置1Aの放出部3A、及び、バルーンカテーテル9のバルーン9Bは、脈管8内に配置される。バルーン9Bは収縮状態とされる。使用者は、薬剤供給装置1Aの供給管2A、及び、バルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aのそれぞれの基端側の端部を操作することにより、脈管8内の薬剤供給装置1A及びバルーンカテーテル9を狭窄病変80に向けて遠位側に移動させる。狭窄病変80に対して近位側に近接した位置に放出部3A及びバルーン9Bが到達した場合、使用者は、薬剤供給装置1A及びバルーンカテーテル9の移動を停止させる(図4A参照)。
【0046】
次に、図4Bに示すように、使用者は流体ハブを操作し、バルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aに対して圧縮流体を供給する。バルーン9Bは、収縮状態から中間膨張状態まで膨張する。バルーン9Bの膨張部94は、放出部3Aに接触する。次に、使用者は、カテーテルシャフト9Aの基端側の端部を操作し、第1回転軸R11を中心としてバルーン9Bを回転させる(矢印Y12)。バルーン9Bが回転することに応じ、バルーン9Bに接触した状態の放出部3Aは、供給管2Aに対して、第2回転軸R21を中心として回転する(矢印Y21)。
【0047】
次に、使用者は薬剤ポンプを操作し、薬剤供給装置1Aの供給管2Aに対して薬剤を供給する。供給管2Aに供給された薬剤は、更に放出部3Aの通過管30の内腔30Lに供給される。内腔30Lに供給された薬剤は、通過管30に設けられた複数の第2貫通孔31を介してバルーン9Bに放出される。放出された薬剤は、バルーン9Bの膨張部94に付着する。なお、バルーン9Bは第1回転軸R11を中心として回転しているため、放出部3Aから放出された薬剤は、バルーン9Bの周方向の全域に亘って付着する。
【0048】
バルーン9Bの周方向の全域に薬剤が付着した後、使用者は薬剤ポンプを操作し、薬剤供給装置1Aの供給管2Aに対する薬剤の供給を停止させる。又、使用者はバルーンカテーテル9の回転を停止させる。次に、使用者は流体ハブを操作し、バルーン9Bから圧縮流体を除去する。バルーン9Bは中間膨張状態から収縮し、収縮状態となる。
【0049】
次に使用者は、カテーテルシャフト9Aの基端側の端部を操作することにより、バルーン9Bを狭窄病変80に向けて遠位側に移動させる。なお、薬剤供給装置1Aは操作されず、移動しない。バルーン9Bが狭窄病変80に到達した場合、使用者は、バルーンカテーテル9の移動を停止させる(図4C参照)。
【0050】
次に、図4Dに示すように、使用者は流体ハブを操作し、バルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aに対して圧縮流体を供給する。バルーン9Bは、収縮状態から中間膨張状態を経て最大膨張状態まで膨張する。バルーン9Bは、狭窄病変80に内側から接触して外側に押す。又、バルーン9Bは、膨張部94の表面に付着した薬剤を狭窄病変80に作用させる。これにより、脈管8のうち狭窄病変80により閉塞した部分は拡張する。
【0051】
次に、使用者は流体ハブを操作し、バルーン9Bから圧縮流体を除去する。バルーン9Bは最大膨張状態から収縮し、収縮状態となる。次に、使用者は、カテーテルシャフト9Aの基端側の端部を操作することにより、バルーン9Bを近位側に移動させる。バルーン9Bが、延伸方向において薬剤供給装置1Aの放出部3Aと重なる位置まで移動した場合、使用者は、バルーンカテーテル9の移動を停止させる(図4E参照)。
【0052】
ここで、バルーン9Bを狭窄病変80に再度接触させて脈管8を拡張させる必要がある場合、使用者は流体ハブを操作し、バルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aに対して圧縮流体を供給する。図4Bに示すように、バルーン9Bは、収縮状態から中間膨張状態まで膨張し、膨張部94が放出部3Aに接触する。次に、使用者は、第1回転軸R11を中心としてバルーン9Bを回転させる(矢印Y12)。バルーン9Bが回転することに応じ、放出部3Aも第2回転軸R21を中心として回転する(矢印Y21)。次に、使用者は薬剤ポンプを操作し、薬剤供給装置1Aの供給管2Aに対して薬剤を供給する。供給管2Aに供給された薬剤は、放出部3Aの通過管30の複数の第2貫通孔31を介して、バルーン9Bに放出される。放出された薬剤は、バルーン9Bの周方向の全域に亘って付着する。
【0053】
以後、図4C図4D図4Eを参照して説明した動作と同じ動作が実行される。これにより、薬剤が付着したバルーン9Bは、狭窄病変80に内側から再度接触する。又、バルーン9Bは、膨張部94の表面に付着した薬剤を狭窄病変80に再度作用させる。
【0054】
<第1実施形態の作用、効果>
薬剤供給装置1Aでは、供給管2Aの第1管部201の中心を通る中心軸C1と、供給管2Aとバルーンカテーテル9とが相対的に回転するときの第1回転軸R11とが相違する。薬剤供給装置1Aの使用者は、中間膨張状態のバルーン9Bを薬剤供給装置1Aに対して回転させる操作を行うことにより、供給管2Aの先端部20Dに設けられた放出部3Aを、バルーン9Bの周方向の全域に亘って相対移動させることができる。従って薬剤供給装置1Aは、放出部3Aから放出される薬剤を、バルーン9Bの周方向の全域に亘って放出することができるので、バルーン9Bの周方向の全域に亘って薬剤を付着させることができる。
【0055】
保持部材4Aは、第1貫通孔4Hを有する環状部材40を有し、バルーンカテーテル9に対して供給管2Aを相対的に回転可能な状態で保持する。第1回転軸R11は、第1貫通孔4Hの中心を通過するのに対し、供給管2Aの中心軸C1は第1貫通孔4Hを通過しない。これにより、中間膨張状態のバルーン9Bの周方向の全域に亘って放出部3Aから薬剤を放出させることを可能としつつ、簡易な構成で、バルーンカテーテル9に対して薬剤供給装置1Aを回転可能に保持できる。又、環状部材40は、バルーンカテーテル9の回転時においてカテーテルシャフト9Aとの接触部分に生じる摩擦力を抑制できるので、薬剤供給装置1Aに対してバルーンカテーテル9をスムーズに回転させることができる。更に、保持部材4Aとして環状部材40を用いることにより、薬剤供給装置1Aからバルーンカテーテル9を容易に脱離させることができる。
【0056】
保持部材4Aは、バルーンカテーテル9に対して薬剤供給装置1Aを、供給管2Aの第1管部201の中心軸C1に沿った方向、即ち延伸方向に移動可能な状態で保持する。この場合、例えば使用者は、狭窄病変80の手前で薬剤供給装置1Aにより薬剤をバルーン9Bに付着させ(図4B)、その後、バルーン9Bのみを狭窄病変80に向けて移動させ(図4C)、バルーン9Bにより狭窄病変80を治療することが可能となる。
【0057】
放出部3Aは、供給管2Aに対して回転可能である。第1回転軸R11を中心とするバルーン9Bの回転に応じ、バルーン9Bに接触した状態の放出部3Aは、第2回転軸R21を中心として回転する(矢印Y21)。このため薬剤供給装置1Aは、バルーン9Bに薬剤を付着させるときの放出部3Aとバルーン9Bとの間の摩擦力を軽減できる。この場合、バルーン9Bに対する薬剤の供給を、漏れなく確実に行うことができる。
【0058】
放出部3Aが供給管2Aに対して回転するときの回転軸である第2回転軸R21は、バルーンカテーテル9が薬剤供給装置1Aに対して回転するときの回転軸である第1回転軸R11と平行に延びる。この場合、放出部3Aとバルーン9Bとが延伸方向の広い領域で接触した状態を維持しつつ、バルーン9B及び放出部3Aの回転が可能となる。従って、薬剤供給装置1Aは、バルーン9Bの回転に応じて放出部3Aをスムーズに回転させ、バルーン9Bに薬剤を付着させることができる。
【0059】
放出部3Aは、複数の第2貫通孔31が形成された通過管30を有する。放出部3Aは、通過管30の内腔30Lを通過する薬剤を、複数の第2貫通孔31を介してバルーン9Bに放出する。この場合、薬剤供給装置1Aは、供給管2Aから供給される薬剤をバルーン9Bに向けて放出する為の構成を、簡易な構成で容易に実現できる。
【0060】
例えば、バルーンカテーテル9に対する薬剤供給装置1Aの位置決めは、例えば以下の方法により実行される。使用者は、中間膨張状態のバルーン9Bに対して基端側から先端側に向けて薬剤供給装置1Aを近づける。ここで、第1貫通孔4Hの内径は、中間膨張状態及び最大膨張状態のバルーン9Bの外径よりも小さい(図3B参照)。このため、バルーン9Bの基端側の端部の位置に保持部材4Aの環状部材40が到達した時点で、環状部材40はバルーン9Bに引っ掛かり、薬剤供給装置1Aの先端側に向けた移動は抑制される。この状態で、薬剤供給装置1Aの放出部3Aは、延伸方向においてバルーン9Bと重なる位置に配置される。このように使用者は、バルーンカテーテル9に対する薬剤供給装置1Aの位置決めを容易に実現できる。
【0061】
一方、保持部材4Aの環状部材40の第1貫通孔4Hの内径は、収縮状態のバルーン9Bの外径よりも大きい(図3A参照)。従って使用者は、例えば、薬剤供給装置1Aを体内に残しつつ、バルーンカテーテル9のみを体外に取り出すことができる。
【0062】
<第1実施形態の特記事項>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。薬剤供給装置1Aにより薬剤が供給する対象は、バルーンカテーテル9に限定されず、他の様々な医療用デバイスであってもよい。例えば薬剤供給装置1Aは、スコアリングバルーンカテーテル、ステント、ロータブレーター、医療用エキシマレーザ等、血管内インターベンションに用いられる周知の医療用デバイスに薬剤を供給するために用いられてもよい。
【0063】
薬剤供給装置1Aによりバルーン9Bに供給される薬剤は、特定の薬剤に限定されず、狭窄病変80に作用する周知の薬剤が用いられてもよい。また、薬剤供給装置1Aは、複数の薬剤を放出部3Aからバルーン9Bに放出してもよい。この場合、任意のタイミングで複数の薬剤をバルーン9Bに付着させ、それぞれの薬剤を、狭窄病変80の任意の場所に作用させることにより、狭窄病変80の治療効果を高められることができる。又、事前に複数の薬剤が混合して使用される場合と比べて、複数の薬剤の混合時に発生する様々な不都合を軽減できるため、好ましい。又、使用者は、1つの薬剤供給装置1Aを用いるのみで、複数の狭窄病変80のそれぞれに異なる薬剤を作用させることが可能になるので、患者や使用者自身の負担を軽減させることができる。更に使用者は、治療の経過や患者の容態に合わせて、薬剤の種類や量を選択できる。このため、狭窄病変80の治療を、よりリアルタイムで積極的に行うことができるため好ましい。
【0064】
例えば、狭窄病変80が血管内石灰化病変である場合、薬剤供給装置1Aは以下のように使用されてもよい。薬剤として、狭窄病変80の内壁の肥厚を抑制するための細胞増殖阻害薬(Paclitaxel、シロリムス等。以下「第1薬剤」という。)と、狭窄病変80の内壁の早期内皮化を促進するための血管内皮細胞の遊走因子(各種成長因子、細胞外基質等。以下、「第2薬剤」という。)とが用いられてもよい。なお、低分子薬剤である第1薬剤と、タンパク性薬剤である第2薬剤とは、混合により凝集したり、治療効果が減少したりする可能性がある。これに対し、薬剤供給装置1Aを用い、第1薬剤をバルーン9Bに付着させて狭窄病変80に作用させ、その後、第2薬剤をバルーン9Bに付着させて狭窄病変80に作用させてもよい。この場合、はじめに第1薬剤により狭窄病変80の内壁の肥厚を抑制し、その後、第2薬剤により狭窄病変80の内壁を早期に内皮化させて血管修復を行うことができる。また、第1薬剤及び第2薬剤を段階的に狭窄病変80に作用させることにより、それぞれの薬剤の層を狭窄病変80の内壁に形成させることができる。又、それぞれの薬剤を高粘度の溶媒に溶解または分散させることが可能となるので、それぞれの薬剤の効果をより向上させることができる。
【0065】
バルーンカテーテル9と供給管2Aとの相対的な回転を可能とする為の機構を、環状部材40とは異なる部材により実現してもよい。例えば環状部材40の代わりに、延伸方向に延びる筒状部材が用いられてもよい。なお、筒状部材とすることによって、環状部材40と比べて、バルーンカテーテル9に対して薬剤供給装置1Aを安定的に保持できる。
【0066】
保持部材4Aの環状部材40の少なくとも一部は、供給管2Aに埋め込まれていてもよい。これにより、バルーンカテーテル9に対する供給管2Aの保持力を向上させることができる。環状部材40の周方向の一部を、開閉可能としてもよい。この場合、バルーンカテーテル9に対する薬剤供給装置1Aの着脱を容易化できる。環状部材40は、供給管2Aに複数接続されてもよい。この場合、複数の環状部材40のそれぞれは、隣接する他の環状部材40と延伸方向に離隔してもよい。例えば複数の環状部材40は、延伸方向に等間隔に配置されてもよい。
【0067】
薬剤供給装置1Aは、バルーンカテーテル9に対して延伸方向に相対移動不可能であってもよい。この場合、放出部3Aの少なくとも一部は、常に、延伸方向においてバルーン9Bと重なる位置に配置されてもよい。放出部3Aは、供給管2Aに対して回転不可能であってもよい。
【0068】
上記実施形態において、放出部3Aの通過管30の内腔30Lを流れる薬剤は、薬剤ポンプにより加えられる圧力に応じて供給管2Aから供給され、複数の第2貫通孔31を介して外部に放出される。これに対し、放出部3Aは、薬剤ポンプにより加えられる力に代えて、磁力、静電気力、浸透圧等の相互作用により、複数の第2貫通孔31を介して外部に放出されてもよい。
【0069】
薬剤供給装置1Aの放出部3Aは、中間膨張状態のバルーン9Bの膨張部94に接触した。これに対し、放出部3Aは、収縮状態のバルーン9Bの膨張部94に接触してもよい。これにより、薬剤供給装置1Aは、収縮状態のバルーン9Bに対して薬剤を付着させることができる。
【0070】
放出部3Aに形成される貫通孔の形状は、複数の第2貫通孔31のように円形である場合に限定されない。例えば図5Aに示すように、放出部3Aの通過管30には、延伸方向に延びる細長い貫通孔32が複数形成されてもよい。又、例えば図5Bに示すように、放出部3Aの通過管30には、螺旋状に延びる貫通孔33が形成されてもよい。又、例えば図5Cに示すように、放出部3Aの通過管30には、周方向に延びる細長い貫通孔34が複数形成されていてもよい。この場合、それぞれの貫通孔34は、通過管30の1周分の長さより短くてもよい。
【0071】
更に、通過管30に形成される複数の貫通孔の形状は、不均一であってもよい。例えば放出部3Aは、内腔30Lから外部に向けて薬剤を浸透させることが可能な材料により形成されてもよい。例えば、放出部3Aはスポンジ製でもよい。なお、スポンジは多孔質性を有するので、放出部3A自体がバルーン9Bから力を受けて変形した場合でも、薬剤をバルーン9Bに適切に放出できる。
【0072】
収縮状態のバルーン9Bの外形は、保持部材4Aの環状部材40うち第1貫通孔4Hの内径よりも大きくてもよい。この場合、収縮状態のバルーン9Bが環状部材40よりも近位側に移動しようとしたときに、バルーン9Bは環状部材40に引っ掛かる。このため、薬剤供給装置1Aからバルーンカテーテル9が脱離し難くできる。
【0073】
上記では、バルーン9Bを中間膨張状態とした状態で、第1回転軸R11を中心としてバルーン9Bを回転させ(矢印Y12)、バルーン9Bに薬剤を付着させた。これに対し、バルーン9Bを中間膨張状態とした状態で、第1回転軸R11を中心として薬剤供給装置1Aを回転させることで(矢印Y11、図3A参照)、バルーン9Bに薬剤を付着させてもよい。
【0074】
薬剤供給装置1Aは、図4に示す方法と異なる方法で使用されてもよい。図6を参照し、薬剤供給装置1Aの使用方法の変形例について説明する。
【0075】
薬剤供給装置1Aによってバルーン9Bに薬剤が付着された後(図4B参照)、バルーン9Bは、狭窄病変80の位置で収縮状態から最大膨張状態まで膨張する(図4C図6A参照)。次に、使用者は流体ハブを操作し、バルーン9Bから圧縮流体を除去する。図6Bに示すように、バルーン9Bは最大膨張状態から収縮し、収縮状態となる。
【0076】
ここで、狭窄病変80にバルーン9Bを再度接触させて脈管8を拡張させる必要がある場合、使用者は、薬剤供給装置1Aの基端部20Pを操作することにより、放出部3Aを遠位側に移動させる。図6Cに示すように、延伸方向においてバルーン9Bと重なる位置に放出部3Aが到達した場合、使用者は、薬剤供給装置1Aの移動を停止させる。
【0077】
次に、図6Dに示すように、使用者は流体ハブを操作し、バルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aに対して圧縮流体を供給する。バルーン9Bは、収縮状態から中間膨張状態まで膨張し、膨張部94が放出部3Aに接触する。次に、使用者は、第1回転軸R11を中心としてバルーン9Bを回転させる(矢印Y12)。バルーン9Bが回転することに応じ、放出部3Aも第2回転軸R21を中心として回転する(矢印Y21)。次に、使用者は薬剤ポンプを操作し、薬剤供給装置1Aの供給管2Aに対して薬剤を供給する。薬剤は、放出部3Aの通過管30の複数の第2貫通孔31を介して、バルーン9Bに放出される。放出された薬剤は、バルーン9Bの周方向の全域に亘って付着する。
【0078】
バルーン9Bの周方向の全域に薬剤が付着した後、使用者は薬剤ポンプを操作し、供給管2Aに対する薬剤の供給を停止させる。又、使用者はバルーン9Bの回転を停止させる。次に、使用者は流体ハブを操作し、バルーン9Bから圧縮流体を除去する。バルーン9Bは中間膨張状態から収縮し、収縮状態となる。
【0079】
次に、図6Eに示すように、使用者は、薬剤供給装置1Aの基端部20Pを操作することにより、薬剤供給装置1Aを近位側に移動させる。狭窄病変80から近位側に離隔した位置まで放出部3Aが移動した場合、使用者は、薬剤供給装置1Aの移動を停止させる。以後、図6A図6Bを参照して説明した動作と同じ動作が実行される。
【0080】
薬剤供給装置1Aは、バルーンカテーテル9と一体化してもよい。つまり、薬剤供給装置1Aの供給管2A、放出部3A、及び保持部材4Aは、バルーンカテーテル9の構成の一部であってもよい。
【0081】
<第2実施形態-薬剤供給装置1B>
図7を参照し、第2実施形態に係る薬剤供給装置1Bについて説明する。図7Aに示すように、薬剤供給装置1Bは、供給管2B、放出部3B、及び保持部材4Bを有する。
【0082】
供給管2Bは、薬剤供給装置1Aにおける供給管2Aの第2管部202(図1参照)の代わりに、第2管部203、204を有する。第2管部203、204のそれぞれの基端側の端部は、屈曲部21において、第1管部201の先端側の端部に連結する。第2管部203、204はそれぞれ、第1管部201との連結部分から先端側に向けて、異なる方向に延びる。第1管部201と第2管部203、204とのそれぞれの内腔20Lは連通する。
【0083】
保持部材4Bは、薬剤供給装置1Aにおける保持部材4A(図1参照)と同一形状であり、環状部材40を有する。保持部材4Bは、供給管2Bの屈曲部21に設けられる。環状部材40の第1貫通孔4Hの中心を通って延伸方向に延びる軸は、第1回転軸R11である。
【0084】
放出部3Bは、薬剤供給装置1Aにおける放出部3A(図1参照)の延伸方向の長さを短くした形状を有する。放出部3Bは、第2管部202、203のそれぞれの先端部の間に保持される。放出部3Bは、供給管2Bの第1管部201の中心軸C1と直交する方向に延びる。放出部3Bは、第2管部202、203に対して回転可能である。放出部3Bが第2管部202、203に対して回転するときの回転軸を、「第2回転軸R22」という。第2回転軸R22は、第1回転軸R11と直交する。
【0085】
図7Bに示すように、例えば使用者は、バルーン9Bを中間膨張状態まで膨張させて放出部3Bにバルーン9Bを接触させた後、薬剤供給装置1Bの供給管2Bに対して薬剤を供給する。薬剤は、第1管部201及び第2管部203、204を介して放出部3Bに供給され、通過管30の複数の第2貫通孔31を介して放出される。次にユーザは、第1回転軸R11を中心としてバルーン9Bを回転させつつ(矢印Y11)、バルーンカテーテル9に対して薬剤供給装置1Bを、第1管部201の中心軸C1に沿った方向(即ち延伸方向)に往復移動させる(矢印Y31)。これにより、バルーン9Bに接触した状態の放出部3Bは、供給管2Aに対して、第2回転軸R22を中心として回転する(矢印Y22)。放出部3Bから放出された薬剤は、バルーン9Bの周方向及び延伸方向の夫々の全域に亘って付着する。
【0086】
以上のように、薬剤供給装置1Bは、バルーンカテーテル9に対して薬剤供給装置1Bを中心軸C1に沿った方向に往復移動することにより、バルーン9Bに薬剤を付着させることができる。又、薬剤供給装置1Bは、バルーン9Bの延伸方向のうち所望する部位のみに薬剤を付着させることができるので、狭窄病変80のうち所望する部位にのみ薬剤を作用させて治療を行うことが可能となる。
【0087】
なお、放出部3Bの回転軸である第2回転軸R22は、第1回転軸R11と交差していればよく、直交していなくてもよい。
【0088】
<第3実施形態-薬剤供給装置1C>
図8を参照し、第3実施形態に係る薬剤供給装置1Cについて説明する。薬剤供給装置1Cは、供給管2C、放出部3C、3D、3E、及び保持部材4Cを有する。
【0089】
供給管2Cは、薬剤供給装置1Aにおける供給管2Aの第2管部202(図1参照)の代わりに、第2管部205、206、207を有する。第2管部205~207のそれぞれの基端側の端部は、屈曲部21において、第1管部201の先端側の端部に連結する。第2管部205~207はそれぞれ、第1管部201との連結部分から先端側に向けて、異なる方向に延びる。第1管部201と第2管部205~207とのそれぞれの内腔20Lは連通する。
【0090】
保持部材4Cは、薬剤供給装置1Aにおける保持部材4Aと同一形状であり、環状部材40を有する。保持部材4Bは、供給管2Cの屈曲部21に設けられる。環状部材40の第1貫通孔4Hの中心を通って延伸方向に延びる軸は、第1回転軸R11である。
【0091】
放出部3C、3D、3Eは、それぞれ、管状の部材である通過管36を有する。通過管36の材料として、例えばNiTiが用いられる。通過管36は、延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面形状が三角形となる角筒状であり、内腔36Lを有する。通過管36の3つの側面のうち1つ(以下、「底面361」という。)は、第1管部201の中心を通過する中心軸C1に近接する。通過管36の3つの角のうち、底面361の両端部に対応する角を除く角362は、底面361に対して中心軸C1と反対側に位置する。このため、通過管36を延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面は、中心軸C1と反対側が尖った形状となる。
【0092】
放出部3Cの基端部は、第2管部205の先端部に回転可能に保持される。放出部3Dの基端部は、第2管部206の先端部に回転可能に保持される。放出部3Eの基端部は、第2管部207の先端部に回転可能に保持される。放出部3C~3Eは、それぞれ、基端部から先端部に向けて、中心軸C1と平行に延びる。
【0093】
放出部3Cの通過管36の内腔36Lの中心を通る仮想的な軸を、「第2回転軸R23」という。放出部3Cは供給管2Cに対して、第2回転軸R23を中心として回転可能である(矢印Y23)。放出部3Dの通過管36の内腔36Lの中心を通る仮想的な軸を、「第2回転軸R24」という。放出部3Dは供給管2Cに対して、第2回転軸R24を中心として回転可能である(矢印Y24)。放出部3Eの通過管36の内腔36Lの中心を通る仮想的な軸を、「第2回転軸R25」という。放出部3Eは供給管2Cに対して、第2回転軸R25を中心として回転可能である(矢印Y25)。なお、放出部3C~3Eのそれぞれの通過管36が第2回転軸R23、R24、R25を中心として回転することに応じ、中心軸C1に対するそれぞれの通過管36の角362の位置は変化する。
【0094】
放出部3C~3Eのそれぞれの通過管36は、内腔36Lに連通する複数の第2貫通孔37を有する。各第2貫通孔37の断面形状は、円形である。通過管36の内腔36Lを流れる薬剤は、薬剤ポンプにより加えられる圧力に応じ、複数の第2貫通孔37を介して外部に放出される。
【0095】
保持部材4Cの環状部材40の第1貫通孔4Hにバルーンカテーテル9のカテーテルシャフト9Aが挿通された状態で、収縮状態のバルーン9Bは、放出部3C~3Eのそれぞれに対し、中心軸C1を中心とした半径方向の内側に配置される。バルーン9Bが収縮状態から中間膨張状態まで膨張した場合、バルーン9Bの膨張部94は、放出部3C~3Eのそれぞれに対して、中心軸C1を中心とした半径方向において内側から接触する。
【0096】
薬剤供給装置1Cの使用方法については、薬剤供給装置1Aの使用方法と同一であるので、説明を省略する。この場合、薬剤供給装置1Cは、放出部3C~3Eを用いて効率良くバルーン9Bに薬剤を供給できる。
【0097】
なお、薬剤供給装置1Cは、薬剤供給装置1Aとは別の方法により使用されてもよい。例えば使用者は、薬剤供給装置1Cによりバルーン9Bに薬剤を付着させた後、延伸方向においてバルーン9Bと放出部3C~3Eとが重なった状態を維持しつつ、バルーンカテーテル9及び薬剤供給装置1Cを遠位側に移動させてもよい。使用者は、バルーン9B及び放出部3C~3Eが狭窄病変80に到達した場合、バルーンカテーテル9及び薬剤供給装置1Cの移動を停止させてもよい。この状態で使用者は、バルーン9Bを最大膨張状態まで膨張させてもよい。
【0098】
この場合、放出部3C~3Eは、狭窄病変80とバルーン9Bとの間に挟まれた状態となる。なお、放出部3C~3Eの外表面の一部、より詳細には、放出部3C~3Eのそれぞれの通過管36の角362は尖っている。このため、例えば図8に示す配置となるように放出部3C~3Eがそれぞれ回転した状態でバルーン9Bが最大膨張状態まで膨張した場合、膨張したバルーン9Bと狭窄病変80との間に挟まれた放出部3C~3Eの尖った角362は、狭窄病変80に食い込む。例えば使用者は、この状態で薬剤ポンプから薬剤を供給し、放出部3C~3Eから薬剤を放出させる。この場合、狭窄病変80のうち放出部3C~3Eが食い込んだ部分に薬剤を適切に作用させて治療を行うことが可能となる。
【0099】
なお上記の場合、例えば複数の薬剤を用い、狭窄病変80の深部に異なる種類の薬剤を送達することで、狭窄病変80の治療効果を高めることができる。即ち、放出部3C~3Eが深部に薬剤を到達させることができるので、バルーン9Bによる狭窄病変80の拡張能力を高めることができる。ここで狭窄病変80の深部とは、狭窄病変80の拡張前には露出していない部分を示す。
【0100】
一般に、狭窄病変80の表面と深部では、病因が異なる場合が多い。このため例えば、バルーン9Bのみによる狭窄病変80の拡張時にバルーン9Bに付着させる薬剤と、バルーン9Bと放出部3C~3Eとを用いた狭窄病変80の拡張時に放出部3C~3Eから放出させる薬剤とを異ならせることで、特に狭窄病変80の深部において病因に合わせた薬剤を提供できることができる。
【0101】
具体的には、例えば、バルーンカテーテル9及び薬剤供給装置1Cが卵管狭窄症の治療に用いられる場合、バルーン9Bのみによって狭窄病変80を拡張する場合にバルーン9Bに付着させる薬剤(表面治療薬)として、主原因クラミジアの殺菌や静菌のための卵管表面用薬剤(シタフロキサシン、エリスロマイシン等)が用いられてもよい。一方、バルーン9Bと放出部3C~3Eとを用いた狭窄病変80の拡張時に放出部3C~3Eから放出させる第1段階の薬剤として、細胞の増殖を阻害することが可能な薬剤(卵管内膜の肥厚抑制、Paclitaxel等)が用いられてもよい。更に、バルーン9Bと放出部3C~3Eとを用いた狭窄病変80の拡張時に放出部3C~3Eから放出させる第2段階の薬剤として、内分泌ホルモンに起因する症状を抑制するためのホルモン製剤(エストラジオール誘導体、プロゲステロン製剤等)が用いられてもい。
【0102】
なお、放出部3C~3Eの断面形状は三角形に限定されず、四角形等、他の多角形でもよい。
【0103】
第3実施形態における第2管部205、206、207は、本発明の「分岐部」の一例である。
【0104】
<第4実施形態-薬剤供給装置1D>
図9を参照し、第4実施形態に係る薬剤供給装置1Dについて説明する。薬剤供給装置1Dは、供給管2D、放出部3F、保持部材4D、及びシャフト5Dを有する。供給管2D、放出部3F、及び保持部材4Dは、それぞれ、薬剤供給装置1Aの供給管2A、放出部3A、及び保持部材4Aと同一形状を有する。薬剤供給装置1Dは、シャフト5Dを新たに有するという点で、薬剤供給装置1Aと相違する。
【0105】
シャフト5Dは、供給管2Dの第1管部201の側面に設けられ、延伸方向に沿って延びる。シャフト5Dの延伸方向の長さは、第1管部201の延伸方向の長さと同一である。シャフト5Dの基端部50Pの位置は、延伸方向において、供給管2Dの基端部20Pと一致する。シャフト5Dの先端部50Dの位置は、延伸方向において、供給管2Dの屈曲部21と一致する。シャフト5Dの硬さは、供給管2Dよりも硬い。
【0106】
例えば使用者は、シャフト5Dの剛性を利用することで、供給管2Dが折れ曲がることを抑制しつつ、供給管2Dの基端部20Pを押し込んで薬剤供給装置1Dを遠位側に移動させることができる。従って、使用者は、薬剤供給装置1Dの放出部3Dを、狭窄病変80まで容易に送達させることができる。
【0107】
なおシャフト5Dは、供給管2Dの内部に設けられてもよい。シャフト5Dの先端部50Dは、供給管2Dの先端部20Dまで延びていてもよい。即ち、シャフト5Dは、供給管2Dにおける延伸方向の全域に亘って設けられてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1、1A、1B、1C、1D :薬剤供給装置
2A、2B、2C、2D :供給管
3A、3B、3C、3D、3E、3F :放出部
4A、4B、4C、4D :保持部材
4H :第1貫通孔
5D :シャフト
9 :バルーンカテーテル
9A :カテーテルシャフト
9B :バルーン
30、36 :通過管
31、37 :第2貫通孔
40 :環状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9