IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アイソレータ 図1
  • 特開-アイソレータ 図2
  • 特開-アイソレータ 図3
  • 特開-アイソレータ 図4
  • 特開-アイソレータ 図5
  • 特開-アイソレータ 図6
  • 特開-アイソレータ 図7
  • 特開-アイソレータ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141929
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20230928BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20230928BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230928BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20230928BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20230928BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20230928BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H05K1/16 B
H05K1/03 610N
H01F27/29 123
H01F30/10 D
H01F38/14
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048518
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 祐介
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳哉
【テーマコード(参考)】
4E351
5E070
5K012
【Fターム(参考)】
4E351AA04
4E351BB12
4E351CC06
4E351DD04
4E351DD06
4E351DD19
4E351DD20
4E351GG06
5E070AA11
5E070AB08
5E070CB12
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
5K012AA03
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】
【課題】絶縁耐圧を向上させることができるアイソレータを提供する。
【解決手段】実施形態のアイソレータは、第1配線板31と第2配線板32を備える。第1配線板31は、第1主面、第1主面の反対側の第2主面を有する絶縁層53と、第1主面に設けられた第1コイル311と、第1主面に設けられ、第1コイル311に電気的に接続されたパッド312aとを備える。第2配線板32は、第3主面、第3主面の反対側の第4主面を有する絶縁層63と、第3主面に設けられた第2コイル321と、第4主面に設けられ、第2コイル321に電気的に接続されたパッド322aとを備える。第1コイル311と第2コイル321とが対向するように配置され、第2配線板32の外形サイズは、第1配線板31の外形サイズより小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面、前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁層と、前記第1主面に設けられた第1コイルと、前記第1主面に設けられ、前記第1コイルに電気的に接続された第1パッドとを備えた第1配線板と、
第3主面、前記第3主面の反対側の第4主面を有する第2絶縁層と、前記第3主面に設けられた第2コイルと、前記第4主面に設けられ、前記第2コイルに電気的に接続された第2パッドとを備えた第2配線板と、
を具備し、
前記第1コイルと前記第2コイルとが対向するように配置され、
前記第2配線板の外形サイズは、前記第1配線板の外形サイズより小さいアイソレータ。
【請求項2】
前記第1配線板の前記第1パッドは、前記第1コイルと前記第2コイルとの間の高さに配置されている請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項3】
前記第1絶縁層の前記第1主面から前記第1パッドまでの距離は、前記第1絶縁層の前記第1主面から前記第2パッドまでの距離より短い請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項4】
前記第1絶縁層の前記第1主面は、前記第2絶縁層の前記第3主面と重ならない領域を有し、前記第1パッドは前記領域に配置されている請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項5】
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に設けられた第3絶縁層をさらに具備し、
前記第3絶縁層は、ポリイミドを含む請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項6】
前記第1配線板は、前記第2主面に設けられた第1配線層を備え、前記第1パッドは、前記第1配線層を介して前記第1コイルに電気的に接続され、
前記第2配線板は、前記第4主面に設けられた第2配線層を備え、前記第2パッドは、前記第2配線層を介して前記第2コイルに電気的に接続される請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項7】
前記第1配線層は第1方向に延伸し、
前記第2配線層は前記第1方向に延伸し、
前記第1方向において、前記第2配線板の長さは、前記第1配線板の長さより短い請求項6に記載のアイソレータ。
【請求項8】
前記第1配線板は、前記第1絶縁層内に設けられ、前記第1コイルと前記第1配線層との間を接続する第1ビアと、前記第1絶縁層内に設けられ、前記第1パッドと前記第1配線層との間を接続する第2ビアとを有し、
前記第2配線板は、前記第2絶縁層内に設けられ、前記第2コイルと前記第2配線層との間を接続する第3ビアを有する請求項6に記載のアイソレータ。
【請求項9】
前記第1配線板は、前記第1コイル及び第1配線層を挟む第4絶縁層と第5絶縁層を備え、
前記第2配線板は、前記第2コイル及び第2配線層を挟む第6絶縁層と第7絶縁層を備える請求項6に記載のアイソレータ。
【請求項10】
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第1配線層、及び前記第2配線層は銅を含む請求項6に記載のアイソレータ。
【請求項11】
前記第1コイル及び前記第2コイルの各々の厚さは、6μm以上12μm以下である請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項12】
前記第1コイル及び前記第2コイルは銅を含む請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項13】
前記第1配線板及び前記第2配線板は、フレキシブルプリント配線板である請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項14】
前記第1配線板の前記第1パッドに第1ワイヤを介して接続された第1半導体チップと、
前記第2配線板の前記第2パッドに第2ワイヤを介して接続された第2半導体チップと、
をさらに具備する請求項1に記載のアイソレータ。
【請求項15】
前記第1半導体チップは送信回路を有し、
前記第2半導体チップは受信回路を有し、
前記第1パッドは前記送信回路に電気的に接続され、
前記第2パッドは前記受信回路に電気的に接続されている請求項14に記載のアイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
送信側回路と受信側回路との間を絶縁した状態で、送信側回路から受信側回路へ信号を伝送するアイソレータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9035422号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁耐圧を向上させることができるアイソレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のアイソレータは、第1配線板と第2配線板を備える。前記第1配線板は、第1主面、前記第1主面の反対側の第2主面を有する第1絶縁層と、前記第1主面に設けられた第1コイルと、前記第1主面に設けられ、前記第1コイルに電気的に接続された第1パッドとを備える。前記第2配線板は、第3主面、前記第3主面の反対側の第4主面を有する第2絶縁層と、前記第3主面に設けられた第2コイルと、前記第4主面に設けられ、前記第2コイルに電気的に接続された第2パッドとを備える。前記第1コイルと前記第2コイルとが対向するように配置され、前記第2配線板の外形サイズは、前記第1配線板の外形サイズより小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態のアイソレータを示す平面図である。
図2】実施形態のアイソレータを示す側面図である。
図3】実施形態のアイソレータにおける配線板の平面図である。
図4図3におけるA-A線に沿った断面図である。
図5】実施形態における配線板が含む第1配線板の平面図である。
図6】実施形態における配線板が含む第2配線板の平面図である。
図7】実施形態における第1、第2配線板及びこれらが貼合された配線板の平面図である。
図8】実施形態と比較される構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、以下に示す実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、及び配置等を下記のものに特定するものではない。
【0008】
実施形態のアイソレータについて説明する。実施形態では、信号を伝送するトランスがプリント配線板(または、プリント基板)に形成された構造を有するアイソレータについて説明する。アイソレータは、送信側回路(または、1次側回路)と受信側回路(または、2次側回路)との間を絶縁した状態で、磁界(または、磁気信号)の変化を利用して信号を伝送する。
【0009】
図1は、実施形態のアイソレータを示す平面図である。図2は、実施形態のアイソレータを示す側面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、アイソレータ1は、半導体チップ10、半導体チップ20、及びプリント配線板30を備える。半導体チップ10は、半導体基板に形成された第1回路11を有する。第1回路11は、例えば、送受信回路及び変復調回路を有する。半導体チップ20は、半導体基板に形成された第2回路21を有する。第2回路21は、例えば、送受信回路及び変復調回路を有する。プリント配線板30は、例えば、柔軟性を有するフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)で構成される。例えば、アイソレータ1は、半導体チップ10、半導体チップ20、及び配線板30が樹脂(不図示)によって封止された半導体パッケージにより構成される。以降、このフレキシブルプリント配線板で構成されたプリント配線板を、単に配線板と称す。配線板30の詳細については後述する。
【0011】
半導体チップ10は、ダイパッド12上に絶縁性の接着材13にて固着されている。半導体チップ20は、ダイパッド22上に絶縁性の接着材23にて固着されている。配線板30は、半導体チップ10及び半導体チップ20上に設けられる。
【0012】
半導体チップ10と配線板30との間には、ボンディングワイヤ14が設けられる。半導体チップ10の第1回路11と配線板30との間は、ボンディングワイヤ14により電気的に接続される。半導体チップ20と配線板30との間には、ボンディングワイヤ24が設けられる。半導体チップ20の第2回路21と配線板30との間は、ボンディングワイヤ24により電気的に接続される。
【0013】
半導体チップ10とリードフレーム15との間には、ボンディングワイヤ16が設けられる。半導体チップ10の第1回路11とリードフレーム15との間は、ボンディングワイヤ16により電気的に接続される。さらに、半導体チップ20とリードフレーム25との間には、ボンディングワイヤ26が設けられる。半導体チップ20の第2回路21とリードフレーム25との間は、ボンディングワイヤ26により電気的に接続される。
【0014】
以下に、アイソレータ1における配線板30について説明する。
【0015】
図3は、実施形態のアイソレータにおける配線板30を示す平面図である。図4は、図3におけるA-A線に沿った断面図であり、配線板30の断面構造を示す。図3及び図4において、相互に直交し、かつ配線板30の上面に平行な2方向をX方向及びY方向とし、これらX方向及びY方向(XY面)に対して直交する方向、すなわち配線板30内の導体層及び絶縁層が積層された方向をZ方向(または、積層方向)とする。
【0016】
図3及び図4に示すように、配線板30は、第1配線板31、第2配線板32、及び絶縁層(例えば、シリコンペースト材)33を有する。第1配線板31は、柔軟性を有するフレキシブル配線板で構成される。第2配線板32も、同様に、柔軟性を有するフレキシブル配線板で構成される。
【0017】
第1配線板31上に、絶縁層33を介して第2配線板32が設けられる。第1配線板31と第2配線板32は、絶縁層33により固着されている。また、X方向において、第2配線板32の外形サイズは、第1配線板31の外形サイズより小さい。さらに、Y方向において、第2配線板32の外形サイズは、第1配線板31の外形サイズより小さい。言い換えると、X方向において、第2配線板32の長さは、第1配線板31の長さより短い。さらに、Y方向において、第2配線板32の長さは、第1配線板31の長さより短い。なお、第1配線板31及び第2配線板32の断面構造については後述する。
【0018】
図5及び図6に、第1配線板31及び第2配線板32の平面図をそれぞれ示す。これらの図は、絶縁層を透過して見た図である。
【0019】
図5に示す第1配線板31は、第1コイル311、パッド(または、端子)312a、312b、及び配線層313a、313bを有する。パッド312aは、配線層313aを介して第1コイル311に電気的に接続される。さらに、第1コイル311は、配線層313bを介してパッド312bに電気的に接続される。
【0020】
第1コイル311は、XY面に沿って螺旋状に巻かれた2つの導体(以下、螺旋状導体と記す)を含む。第1コイル311が含む2つの螺旋状導体は、所定のインダクタンスを有する。2つの螺旋状導体は、外周部の一端にて互いに接続される。一方の螺旋状導体の中央部の一端は、配線層313aを介してパッド312aに電気的に接続される。さらに、他方の螺旋状導体の中央部の一端は、配線層313bを介してパッド312bに電気的に接続される。
【0021】
図6に示す第2配線板32は、第2コイル321、パッド(または、端子)322a、322b、及び配線層323a、323bを有する。パッド322aは、配線層323aを介して第2コイル321に電気的に接続される。さらに、第2コイル321は、配線層323bを介してパッド322bに電気的に接続される。
【0022】
第2コイル321は、XY面に沿って螺旋状に巻かれた2つの螺旋状導体を含む。第2コイル321が含む2つの螺旋状導体は、所定のインダクタンスを有する。2つの螺旋状導体は、外周部の一端にて互いに接続される。一方の螺旋状導体の中央部の一端は、配線層323aを介してパッド322aに電気的に接続される。さらに、他方の螺旋状導体の中央部の一端は、配線層323bを介してパッド322bに電気的に接続される。
【0023】
図7に示すように、第1配線板31と第2配線板32は貼合されて、配線板30が形成される。
【0024】
以下に、図4を参照して、配線板30の断面構造について説明する。前述したように、第1配線板31上に、絶縁層33を介して第2配線板32が設けられている。
【0025】
先ず、第1配線板31の構造を述べる。第1配線板31は、2層の導体層を持つ多層配線構造(または、両面配線構造)を有する。すなわち、第1配線板31は、絶縁層51、接着材52、配線層313a(及び313b)を含む第1導体層、絶縁層53、第1コイル311及びパッド312a(及び312b)を含む第2導体層、接着材54、及び絶縁層55を有する。第1導体層は、配線層313a(及び313b)を含む。第2導体層は、第1コイル311及びパッド312a(及び312b)を含む。
【0026】
これら絶縁層51、接着材52、配線層313a、絶縁層53、第1コイル311及びパッド312a、接着材54、及び絶縁層55は、Z方向に順に積層されている。詳述すると、絶縁層51上には、配線層313aが設けられる。配線層313a上には、絶縁層53が設けられる。すなわち、絶縁層51と絶縁層53との間に配線層313aが配置され、絶縁層53と絶縁層51間、及び配線層313aと絶縁層51間が接着材52により固着されている。
【0027】
絶縁層53上には、第1コイル311及びパッド312aが設けられる。第1コイル311上には、絶縁層55が設けられる。パッド312a上の絶縁層55は除去され、パッド312a上は開口されている。すなわち、絶縁層53と絶縁層55との間に第1コイル311及びパッド312aが配置され、絶縁層53と絶縁層55間、及び第1コイル311と絶縁層55間が接着材54により固着されている。
【0028】
第1コイル311は、例えば銅を含む。第1コイル311の厚さは、例えば、6μm~12μm(6μm以上12μm以下)である。第1コイル311は、例えば、絶縁層53に固着された銅箔で形成されている。
【0029】
配線層313aは、螺旋状に巻かれた第1コイル311の中央部からパッド312aまでX方向に延伸している。配線層313aは、Z方向に積層された導体層313aa及び導体層313abを有する。例えば、導体層313aa及び313abは銅を含む。導体層313aaは、絶縁層53に固着された銅箔で形成され、導体層313abはメッキにより形成される。第1コイル311と配線層313aとの間には、絶縁層53を貫通するビア313acが設けられる。
【0030】
パッド312aは、Z方向に積層された導体層312aa及び導体層312abを有する。例えば、導体層312aaは銅を含む。導体層312abは、積層されたニッケル、パラジウム、及び金を含む。導体層312aaは、絶縁層53に固着された銅箔で形成され、導体層312abはメッキにより形成される。パッド312aと配線層313aとの間には、絶縁層53を貫通するビア312acが設けられる。
【0031】
導体層313ab、ビア312ac、及びビア313acは、例えば、同一工程のメッキにより形成され、一体化されている。これにより、パッド312aは、ビア312ac、配線層313a、ビア313acを介して第1コイル311に電気的に接続される。
【0032】
絶縁層51、53及び55は、例えば、ポリイミドあるいはポリイミド化合物を含む。絶縁層51の厚さは、例えば、6μm~25μm(6μm以上25μm以下)である。絶縁層53の厚さは、例えば、6μm~25μm(6μm以上25μm以下)である。絶縁層55の厚さは、例えば、6μm~25μm(6μm以上25μm以下)である。
【0033】
次に、第2配線板32の構造を述べる。第2配線板32は、第1配線板31と同様に、2層の導体層を持つ多層配線構造(または、両面配線構造)を有する。すなわち、第2配線板32は、絶縁層61、接着材62、第3導体層、絶縁層63、第4導体層、パッド322a(及び322b)、接着材64、及び絶縁層65を有する。第3導体層は、第2コイル321を含む。第4導体層は、配線層323a(及び323b)を含む。
【0034】
これら絶縁層61、接着材62、第2コイル321、絶縁層63、配線層323a、接着材64、及び絶縁層65は、Z方向に順に積層されている。詳述すると、絶縁層61上には、第2コイル321が設けられる。第2コイル321上には、絶縁層63が設けられる。すなわち、絶縁層61と絶縁層63との間に第2コイル321が配置され、絶縁層63と絶縁層61間、及び第2コイル321と絶縁層61間が接着材62により固着されている。
【0035】
絶縁層63上には、配線層323aが設けられる。配線層323a上には、絶縁層65が設けられる。また、配線層323a上には、パッド322aが設けられる。パッド322a上の絶縁層65は除去され、パッド322a上は開口されている。すなわち、絶縁層63と絶縁層65との間に配線層323aが配置され、絶縁層63と絶縁層65間、及び配線層323aと絶縁層65間が接着材64により固着されている。
【0036】
第2コイル321は、例えば銅を含む。第2コイル321の厚さは、例えば、6μm~12μm(6μm以上*12μm以下)である。第2コイル321は、例えば、絶縁層63に固着された銅箔で形成されている。
【0037】
配線層323aは、螺旋状に巻かれた第2コイル321の中央部からパッド322aまでX方向に延伸している。配線層323aは、Z方向に積層された導体層323aa及び導体層323abを有する。例えば、導体層323aa及び323abは銅を含む。導体層323aaは、絶縁層63に固着された銅箔で形成され、導体層323abはメッキにより形成される。第2コイル321と配線層323aとの間には、絶縁層63を貫通するビア323acが設けられる。
【0038】
パッド322aは、導体層、例えば、積層されたニッケル、パラジウム、及び金を含む。パッド322aは、例えばメッキにより形成される。
【0039】
導体層323ab、及びビア323acは、例えば、同一工程のメッキにより形成され、一体化されている。これにより、パッド322aは、配線層323a及びビア323acを介して第2コイル321に電気的に接続される。
【0040】
絶縁層61、63及び65は、例えば、ポリイミドあるいはポリイミド化合物を含む。絶縁層61の厚さは、例えば、6μm~25μm(6μm以上25μm以下)である。絶縁層63の厚さは、例えば、6μm~25μm(6μm以上25μm以下)である。絶縁層65の厚さは、例えば、6μm~25μm(6μm以上25μm以下)である。
【0041】
また、図4に示すように、第1配線板31の第1コイル311と第2配線板32の第2コイル321とが対向するように配置されている。第1コイル311と第2コイル321との間には、絶縁層55、33及び61が配置されている。第1コイル311と第2コイル321間の絶縁層55、33及び61の厚さは、例えば、13μm~80μm(13μm以上80μm以下)である。これにより、第1コイル311と第2コイル321間は、十分な絶縁状態にある。
【0042】
例えば、第1コイル311が1次側コイル、第2コイル321が2次側コイルであり、これら第1コイル311と第2コイル321によりトランスが構成されている。第1コイル311に流れる電流によって、第2コイル321に誘導起電力が発生し、第2コイル321に電流が流れる。これにより、第1コイル311と第2コイル321間を絶縁状態に保ったままで、第1コイル311に流れる電流に応じた電流を、第2コイル321に発生させることができる。
【0043】
なお、実施形態の構成は、以下のように表現することも可能である。
【0044】
実施形態のアイソレータは、第1配線板31と第2配線板32を備える。第1配線板31は、第1主面、第1主面の反対側の第2主面を有する絶縁層53と、第1主面に設けられた第1コイル311と、第1主面に設けられ、第1コイル311に電気的に接続されたパッド312aとを備える。第2配線板32は、第3主面、第3主面の反対側の第4主面を有する絶縁層63と、第3主面に設けられた第2コイル321と、第4主面に設けられ、第2コイル321に電気的に接続されたパッド322aとを備える。第1コイル311と第2コイル321とが対向するように配置され、第2配線板32の外形サイズは、第1配線板31の外形サイズより小さい。
【0045】
第1配線板31のパッド312aは、第1コイル311と第2コイル321との間の高さに配置されている。
【0046】
絶縁層53の第1主面からパッド312aまでの距離は、絶縁層53の第1主面からパッド322aまでの距離より短い。
【0047】
絶縁層53の第1主面は、絶縁層63の第3主面と重ならない領域を有し、パッド312aは前記領域に配置されている。
【0048】
第1配線板31は、第2主面に設けられた配線層313aを備え、パッド312aは、配線層313aを介して第1コイル311に電気的に接続される。第2配線板32は、第4主面に設けられた配線層323aを備え、パッド322aは、配線層323aを介して第2コイル321に電気的に接続される。
【0049】
第1配線板31は、絶縁層53内に設けられ、第1コイル311と配線層313aとの間を接続するビア313acと、絶縁層53内に設けられ、パッド312aと配線層313aとの間を接続するビア312acとを有する。第2配線板32は、絶縁層63内に設けられ、第2コイル321と配線層323aとの間を接続するビア323acを有する。
【0050】
第1配線板31は、第1コイル311及び配線層313aを挟む絶縁層51と絶縁層55を備え、第2配線板32は、第2コイル321及び配線層323aを挟む絶縁層61と絶縁層65を備える。
【0051】
実施形態のアイソレータ1の動作について説明する。ここでは、例えば半導体チップ10の第1回路11から送信された電気信号が、配線板30の第1コイル311及び第2コイル321を介して、半導体チップ20の第2回路21へ伝送されるまでの動作を説明する。この場合、第1回路11は、送信回路及び変調回路として働き、第2回路21は、受信回路及び復調回路として働く。
【0052】
先ず、半導体チップ10の第1回路11が含む変調回路は、入力段に接続された回路から電気信号としての第1信号を受け取る。変調回路は、第1信号を変調して第2信号に変換し、第2信号を第1回路11の送信回路に出力する。送信回路は、第2信号を、ボンディングワイヤ14及び配線層313aを介して、第1コイル311に送信する。第1コイル311は、受信した第2信号を、磁気信号としての第3信号に変換する。
【0053】
第3信号は、第2コイル321により、電気信号としての第4信号に変換される。第4信号は、配線層323a及びボンディングワイヤ24を介して、半導体チップ20の第2回路21が含む受信回路に受信される。受信回路は、受信した第4信号を第2回路21の復調回路に出力する。復調回路は、第4信号を復調して第5信号に変換し、第5信号を第2回路21の出力段に接続された回路に出力する。この第5信号は、第1回路11の変調回路により変調される前の第1信号に対応する信号である。
【0054】
これにより、半導体チップ10の第1回路11と半導体チップ20の第2回路21とが絶縁された状態で、半導体チップ10の第1回路11から送信された電気信号が、配線板30の第1コイル311及び第2コイル321を介して、半導体チップ20の第2回路21へ伝送される。
【0055】
本実施形態によれば、絶縁耐圧を向上させることができるアイソレータを提供できる。
【0056】
以下に、本実施形態の効果について説明する。図8に、本実施形態と比較される構造の一例を示す。例えば、4層の導体層を持つ4層構造の配線板100でトランスを形成する場合、1層目の導体層L1が引き出し配線W1、2層目の導体層L2が第1コイルC1、3層目の導体層L3が第2コイルC2、4層目の導体層L4が引き出し配線W2という構造を持つ。
【0057】
このような構造では、配線板100と半導体チップあるいは他の配線板とを接続するためのパッドP1、P2を配線板100に設ける場合、組み立てを容易にするために、パッドP1、P2は同じ表層、例えば4層目の導体層L4に設けるのが望ましい。この場合、導体層L1の引き出し配線W1と導体層L4のパッドP2とを接続する貫通ビアPVを設ける構造となる。このような構造を有する配線板では、第2コイルC2と貫通ビアPVとの距離が近いと、第2コイルC2と貫通ビアPV間の絶縁性が保てず、放電が発生する場合がある。
【0058】
これに対して、本実施形態の構成によれば、1層目の導体層と2層目の導体層を接続するビア、及び3層目の導体層と4層目の導体層を接続するビアを設けているが、1層目の導体層と4層目の導体層を接続する貫通ビアを設けない構造を備えているため、コイルと貫通ビアとの間に絶縁耐圧の問題が発生することはない。これにより、送信側回路と受信側回路との間の絶縁耐圧を向上できる。したがって、実施形態では、絶縁耐圧を向上させることができるアイソレータを提供できる。
【0059】
本実施形態の構成によれば、1層目の導体層から4層目の導体層に至る貫通ビアを設けないことにより、X方向(あるいは、配線層313aの延伸方向)の耐電圧の弱さを低減できる。これにより、X方向における配線板30の長さを短くでき、配線板30の小型化が可能である。
【0060】
さらに、本実施形態の構成によれば、4層の導体層を持つ4層構造の配線板を用いず、2層の導体層を持つ2層構造の配線板31及び32を用いて、第1コイル311及び第2コイル321を有する配線板30を形成している。2層構造の配線板は、4層構造の配線板と比べて構造及び製造工程が簡素であるため、設計ルールが緩和され、配線層のライン及びスペースを小さくすることができる。これにより、配線板30の小型化が可能である。さらに、配線板30に関する設計の自由度も向上できる。
【0061】
以上述べたように、本実施形態によれば、送信側回路と受信側回路との間の絶縁耐圧を向上させることができるアイソレータを提供できる。さらに、アイソレータの小型化が可能である。
【0062】
前述の実施形態では、トランスを有する配線板として、柔軟な基板から形成されたフレキシブルプリント配線板を用いた例を説明したが、フレキシブルプリント配線板に限らず、硬質な基板から形成されたリジッドプリント配線板を用いることもできる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…アイソレータ、10…半導体チップ、11…第1回路、12…ダイパッド、13…接着材、14…ボンディングワイヤ、15…リードフレーム、16…ボンディングワイヤ、20…半導体チップ、21…第2回路、22…ダイパッド、23…接着材、24…ボンディングワイヤ、25…リードフレーム、26…ボンディングワイヤ、30…プリント配線板、31…第1配線板、32…第2配線板、33…絶縁層、51…絶縁層、52…接着材、53…絶縁層、54…接着材、55…絶縁層、61…絶縁層、62…接着材、63…絶縁層、64…接着材、65…絶縁層、311…第1コイル、312a…パッド、312aa…導体層、312ab…導体層、312ac…ビア、312b…パッド、313a…配線層、313aa…導体層、313ab…導体層、313ac…ビア、313b…配線層、321…第2コイル、322a…パッド、322b…パッド、323a…配線層、323aa…導体層、323ab…導体層、323ac…ビア、323b…配線層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8