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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141935
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ギヤドモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/108 20060101AFI20230928BHJP
   F16H 35/10 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02K7/108
F16H35/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048526
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 清康
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【テーマコード(参考)】
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J062AB01
3J062AC01
3J062BA19
3J062CA24
3J062CA34
3J062CF03
3J062CF07
3J062CF28
3J062CF34
3J062CF42
3J062CG83
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB10
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE03
5H607EE31
5H607EE36
5H607EE49
(57)【要約】
【課題】出力トルクが大きく、耐久性の高いギヤドモータを実現する。
【解決手段】ギヤドモータ1は、モータ20,多段減速機構30,トルクリミッタ機構40および出力部50を有する。多段減速機構30は、出力部50と同軸の最終ギヤ32を含む。また、トルクリミッタ機構40は、最終ギヤ32に設けられた第1摩擦面41と、出力部50に設けられた第2摩擦面42と、最終ギヤ32を付勢して第1摩擦面41を第2摩擦面42に押し付けるコイルばね43と、を含む。第1摩擦面41は、最終ギヤ32の回転軸を中心とする環状のテーパ面であり、第2摩擦面42は、出力部50の回転軸を中心とする環状のテーパ面である。コイルばね43は、最終ギヤ32を回転自在に支持する軸受80によって支持され、最終ギヤ32と一体的に回転可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ,多段減速機構,トルクリミッタ機構および出力部を有するギヤドモータであって、
前記多段減速機構は、前記出力部と同軸の最終ギヤを含み、
前記トルクリミッタ機構は、前記最終ギヤに設けられた第1摩擦面と、前記出力部に設けられた第2摩擦面と、前記最終ギヤを付勢して前記第1摩擦面を前記第2摩擦面に押し付けるコイルばねと、を含み、
前記第1摩擦面は、前記最終ギヤの回転軸を中心とする環状のテーパ面であり、
前記第2摩擦面は、前記出力部の回転軸を中心とする環状のテーパ面であり、
前記コイルばねは、前記最終ギヤを回転自在に支持する軸受によって支持され、前記最終ギヤと一体的に回転可能である、ギヤドモータ。
【請求項2】
前記軸受は、相対回転可能な内輪と外輪とを含む転がり軸受であり、
前記コイルばねの一端は、前記内輪によって支持され、前記コイルばねの他端は、前記最終ギヤに当接している、請求項1に記載のギヤドモータ。
【請求項3】
前記最終ギヤは、第1軸部と、前記第1軸部の一端に設けられた第1頭部と、を有し、
前記第1軸部は、前記コイルばねに挿通され、
前記第1頭部は、前記第1摩擦面を形成する内周面と、ギヤ歯が形成された外周面と、を備え、
前記出力部は、第2軸部と、前記第2軸部の一端に設けられた第2頭部と、を有し、
前記第2軸部は、前記第1軸部に挿通され、
前記第2頭部は、前記第2摩擦面を形成する外周面を有する、請求項1又は2に記載のギヤドモータ。
【請求項4】
前記最終ギヤと前記出力部との間に設けられたクリアランスを有し、
前記クリアランスは、前記第1摩擦面と前記第2摩擦面との少なくとも一方の摩耗に伴って前記最終ギヤが前記回転軸の方向に移動することを許容する、請求項1~3のいずれか一項に記載のギヤドモータ。
【請求項5】
前記出力部の回転角を検出する角度センサを有し、
前記角度センサは、前記出力部と相対回転不能に連結されたセンサシャフトを備え、前記センサシャフトの回転角に応じた信号を出力する、請求項1~4のいずれか一項に記載のギヤドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特にギヤドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータと減速ギヤとが一体化されたギヤドモータが知られている。特許文献1には、歯車減速機構および摩擦式トルクリミッタ機構を備えたギヤドモータが記載されている。特許文献1に記載されているギヤドモータが備える歯車減速機構は、原動歯車を含む複数の平歯車によって構成されている。また、特許文献1に記載されているギヤドモータが備える摩擦式トルクリミッタ機構は、原動軸と一体的に回転するワッシャに原動歯車を押し付ける圧縮コイルスプリングを含んでいる。原動軸が回転すると、ワッシャと原動歯車との間の静止摩擦力により原動歯車が回転し、歯車減速機構にトルクが入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-56117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ギヤドモータには、出力トルクの増大や耐久性の向上が求められる。出力トルクを増大させるためには、トルクリミッタの設定トルク(伝達トルク容量)を増加させる必要がある。一方、トルクリミッタの設定トルクを増加させると、ギヤに過剰なトルクが掛かり、耐久性が低下する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、出力トルクが大きく、耐久性の高いギヤドモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態のギヤドモータは、モータ,多段減速機構,トルクリミッタ機構および出力部を有する。前記多段減速機構は、前記出力部と同軸の最終ギヤを含む。また、前記トルクリミッタ機構は、前記最終ギヤに設けられた第1摩擦面と、前記出力部に設けられた第2摩擦面と、前記最終ギヤを付勢して前記第1摩擦面を前記第2摩擦面に押し付けるコイルばねと、を含む。前記第1摩擦面は、前記最終ギヤの回転軸を中心とする環状のテーパ面であり、前記第2摩擦面は、前記出力部の回転軸を中心とする環状のテーパ面である。前記コイルばねは、前記最終ギヤを回転自在に支持する軸受によって支持され、前記最終ギヤと一体的に回転可能である。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、ギヤドモータの出力トルクの増大や耐久性の向上が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ギヤドモータの外観を示す斜視図である。
図2】ギヤドモータの構造を示す分解斜視図である。
図3】多段減速機構および出力部を示す斜視図である。
図4】主にトルクリミッタ機構を示す分解斜視図である。
図5】主にトルクリミッタ機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成には同一の符号を用いる。また、既に説明した構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0010】
<ハウジング>
図1は、本実施形態に係るギヤドモータ1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るギヤドモータ1の構造を示す分解斜視図である。
【0011】
ギヤドモータ1は、外殻を構成するハウジング10を有している。ハウジング10は、ケース11と、ケース11の一側に固定されたカバー12と、ケース11の他側に固定されたカバー13と、から構成される略直方体の箱である。図1に示されているハウジング10の長さ(L)は53.5mmであり、幅(W)は35.0mmであり、高さ(H)は35.5mmである。もっとも、ハウジング10の外寸は適宜変更することができる。
【0012】
なお、以下の説明では、カバー12を“下側カバー12”と呼び、カバー13を“上側カバー13”と呼んで区別する場合があるが、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0013】
下側カバー12の四隅は、4本のボルト14によってケース11の一方の端面に固定されている。同様に、上側カバー13の四隅は、4本のボルト15によってケース11の他方の端面に固定されている。
【0014】
ハウジング10の内部には、モータ20,多段減速機構30,トルクリミッタ機構40,出力部50,基板60,角度センサ70等のギヤドモータ1の構成要素が収容されている。上側カバー13には円形の開口部16が設けられている。出力部50は、開口部16を通してハウジング10の外に臨んでいる。
【0015】
開口部16には、出力部50を取り囲む位置決めリング17が装着されている。位置決めリング17は、上側カバー13の表面から突出している。よって、位置決めリング17を不図示の環状溝に嵌め込むことにより、ギヤドモータ1を所定位置に配置することができる。より特定的には、出力部50を所定位置に配置することができる。また、位置決めリング17を当該位置決めリング17よりも大径の位置決めリングの内側に嵌め込んだり、位置決めリング17を当該位置決めリング17よりも小径の位置決めリングの外側に被せたりすることによっても、ギヤドモータ1を所定位置に配置することができる。
【0016】
ケース11の側面には、2つの固定リブ18が一体成形されている。それぞれの固定リブ18には貫通孔18aが設けられており、貫通孔18aに挿通させたボルト(不図示)によってギヤドモータ1を所定位置に固定することができる。
【0017】
<モータ>
モータ20の回転角度や回転速度は、基板60に設けられている配線を介して駆動ドライバに入力される電気信号(パルス信号)に基づいて制御される。つまり、モータ20はステッピングモータである。より特定的には、モータ20は、バイポーラ型のステッピングモータであって、駆動電圧は12V、ステップ数は20である。もっとも、モータ20の仕様や性能は、適宜変更することができる。
【0018】
なお、基板60にはコネクタ61が設けられている。基板60は、コネクタ61を介して外部の電気回路や電子機器などと接続される。もっとも、コネクタ61が省略される実施形態もある。かかる実施形態では、外部の電気回路や電子機器などに繋がるリード線の一端が基板60に直に接続される。
【0019】
<多段減速機構>
図3は、多段減速機構30及び出力部50を示す斜視図である。多段減速機構30は、複数の平歯車(外歯車)から構成される6段減速機構である。より特定的には、多段減速機構30は、入力ギヤ31と、出力ギヤ32と、入力ギヤ31と出力ギヤ32との間に配置された4つの中間ギヤ33と、から構成されている。
【0020】
多段減速機構30を構成しているギヤは、全て樹脂ギヤである。また、多段減速機構30を構成しているギヤは、それぞれが回転自在に支持されている。もっとも、出力ギヤ32以外のギヤは軸(シャフト)によって回転自在に支持されているのに対し、出力ギヤ32は軸受80によって回転自在に支持されている。
【0021】
入力ギヤ31は、モータ20によって回転駆動されるピニオンギヤ21と噛み合っている。一方、出力ギヤ32は、トルクリミッタ機構40を介して出力部50に接続される。つまり、出力ギヤ32は、多段減速機構30の最終ギヤ(ファイナルギヤ)である。そこで、以下の説明では、出力ギヤ32を“最終ギヤ32”と呼ぶ場合がある。
【0022】
最終ギヤ32は、第1軸部34と、第1軸部34の一端(上端)に設けられた第1頭部35と、を有する。もっとも、第1軸部34及び第1頭部35は、樹脂材料によって一体成形されている。第1軸部34及び第1頭部35は、回転軸Xを中心とする筒形状を有する。より特定的には、最終ギヤ32は、全体として円筒形又は略円筒形の外観を呈している。もっとも、第1軸部34は、回転軸Xの方向を長手方向とする細長い形状を有している。一方、第1頭部35は、第1軸部34よりも大径であって、第1軸部34に比べて扁平な形状を有している。
【0023】
第1頭部35の内周面36は、回転軸Xを中心とする環状のテーパ面であり、後述するトルクリミッタ機構40の第1摩擦面41を形成している。一方、第1頭部35の外周面には、中間ギヤ33と噛み合うギヤ歯37が形成されている。
【0024】
<出力部>
既述のとおり、多段減速機構30の最終ギヤ32は、トルクリミッタ機構40を介して出力部50に接続される。この結果、出力部50は、多段減速機構30及びトルクリミッタ機構40を介してモータ20に接続される。別の見方をすると、モータ20から出力される駆動力(トルク)が多段減速機構30及びトルクリミッタ機構40を経由して出力部50に伝達される。
【0025】
出力部50は、第2軸部51と、第2軸部51の一端(上端)に設けられた第2頭部52と、を有する。もっとも、第2軸部51及び第2頭部52は、樹脂材料によって一体成形されている。
【0026】
出力部50は、最終ギヤ32の内側に配置されており、最終ギヤ32と共通の回転軸Xを中心に回転可能である。つまり、最終ギヤ32と出力部50とは同軸である。
【0027】
最終ギヤ32と出力部50との間にはトルクリミッタ機構40が介在している。トルクリミッタ機構40の構造や作用については後に改めて説明するが、出力部50は、トルクリミッタ機構40を介して入力されるトルクによって最終ギヤ32と一体的に回転するとともに、最終ギヤ32から切り離されて単体でも回転する。別の見方をすると、トルクリミッタ機構40は、最終ギヤ32と出力部50とを動力伝達可能に接続するとともに、最終ギヤ32と出力部50とを切り離して両者間の動力伝達を遮断する摩擦クラッチである。
【0028】
出力部50の説明に戻る。第2軸部51及び第2頭部52は、回転軸Xを中心とする筒形状を有する。より特定的には、出力部50は、全体として円筒形又は略円筒形の外観を呈している。もっとも、第2軸部51は、回転軸Xの方向を長手方向とする細長い形状を有している。一方、第2頭部52は、第2軸部51よりも大径であって、第2軸部51に比べて扁平な形状を有している。
【0029】
第2頭部52の外周面53は、回転軸Xを中心とする環状のテーパ面であり、後述するトルクリミッタ機構40の第2摩擦面42を形成している。一方、第2頭部52の上面54には、十字形状の係合部55が設けられている。
【0030】
<トルクリミッタ機構>
図4は、主にトルクリミッタ機構40を示す分解斜視図である。図5は、主にトルクリミッタ機構40を示す断面図である。なお、図5に示されている断面は、図1中のA-A線に沿う断面である。
【0031】
トルクリミッタ機構40は、最終ギヤ32に設けられた第1摩擦面41,出力部50に設けられた第2摩擦面42,最終ギヤ32を付勢するコイルばね43等から構成されている。
【0032】
既述のとおり、第1摩擦面41は、最終ギヤ32の第1頭部35の内周面36によって形成されている。また、第2摩擦面42は、出力部50の第2頭部52の外周面53によって形成されている。つまり、第1摩擦面41及び第2摩擦面42は、回転軸Xを中心とする環状のテーパ面である。
【0033】
さらに、第1頭部35の内周面36(第1摩擦面41)は、上側カバー13に向かって次第に拡径するテーパ面である。また、第2頭部52の外周面53(第2摩擦面42)も、上側カバー13に向かって次第に拡径するテーパ面である。
【0034】
第1摩擦面41を備える最終ギヤ32は、軸受80によって回転自在に支持されている。より特定的には、第1軸部34は、コイルばね43に挿通されており、その一端(下端)はコイルばね43の一端(下端)から突出している。そして、コイルばね43の下端から突出している第1軸部34の下端が軸受80によって支持されている。
【0035】
軸受80は、相対回転可能な内輪81と外輪82とを含む転がり軸受である。より特定的には、軸受80は、内輪81と外輪82との間に介在する転動体をさらに含むボールベアリングであって、外輪82は、ケース11によって回転不能に保持されている。
【0036】
コイルばね43の下端から突出している第1軸部34の下端は、軸受80の内輪81に挿入されている。一方、コイルばね43の下端は、軸受80の内輪81に載せられている。但し、コイルばね43の下端と内輪81との間にはワッシャ83が介在している。なお、切断位置の影響により、図5には、軸受80の内輪81に載せられているコイルばね43の下端は表れていない。
【0037】
ワッシャ83は、小径部83aと、小径部83aの周囲に設けられた大径部83bと、を有する段付きワッシャである。そして、軸受80の内輪81の端面にワッシャ83の小径部83aが載せられており、ワッシャ83の大径部83bにコイルばね43の下端が載せられている。
【0038】
コイルばね43の他端(上端)は、最終ギヤ32に当接している。より特定的には、コイルばね43の上端は、第1頭部35の下面に当接している。この結果、最終ギヤ32は、回転軸方向の一方側に向かって付勢されている。例えば、図5に示されている最終ギヤ32は、紙面上側に向かって付勢されている。なお、切断位置の影響により、図5には、最終ギヤ32に当接しているコイルばね43の上端は表れていない。
【0039】
第2摩擦面42を備える出力部50は、最終ギヤ32の内側に配置されている。より特定的には、出力部50の第2軸部51は、最終ギヤ32の第1軸部34に挿通されている。また、出力部50の第2頭部52は、最終ギヤ32の第1頭部35の内側に収容されている。
【0040】
この結果、第1頭部35の内周面36(第1摩擦面41)と第2頭部52の外周面53(第2摩擦面42)とが対向している。別の見方をすると、環状の第1摩擦面41が同じく環状の第2摩擦面42を取り囲んでいる。
【0041】
さらに、第1摩擦面41が設けられている最終ギヤ32は、コイルばね43による付勢を受けている。よって、第1摩擦面41が第2摩擦面42に押し付けられる。別の見方をすると、コイルばね43は、最終ギヤ32を付勢して第1摩擦面41を第2摩擦面42に押し付ける。
【0042】
コイルばね43の付勢によって第1摩擦面41が第2摩擦面42に押し付けられると、2つの摩擦面間に生じる摩擦力により、最終ギヤ32と出力部50とが動力伝達可能に接続される。つまり、多段減速機構30から出力されるトルクが出力部50に入力され、出力部50が回転する。
【0043】
このとき、最終ギヤ32を支持している軸受80によって支持されているコイルばね43は、最終ギヤ32と一体的に回転する。より具体的には、最終ギヤ32,コイルばね43,ワッシャ83及び内輪81が等速回転する。つまり、本実施形態のギヤドモータ1には摺動箇所が少なく、損失トルクの低減や耐久性の向上が図られている。
【0044】
また、第1摩擦面41及び第2摩擦面42がテーパ形状を有しているので、第1頭部35や第2頭部52の大径化を抑制しつつ、より大きな接触面積や面圧が確保されている。つまり、本実施形態のギヤドモータ1では、大型化を回避しつつ、出力トルクの増大に必要なトルクリミッタの設定トルクの増加が図られている。
【0045】
一方、外部から出力部50に設定トルクを上回るトルクが入力されると、第1摩擦面41と第2摩擦面42との間でスリップが生じ、出力部50が空転する。したがって、設定トルクを上回るトルクが最終ギヤ32に入力されることはない。なお、本実施形態における設定トルクは、約100mNmである。つまり、出力部50に100mNm前後のトルクが入力されると、第1摩擦面41と第2摩擦面42との間でスリップが生じる。このように、本実施形態のギヤドモータ1では、最終ギヤ32を含む多段減速機構30の破損や変形の防止が図られている。
【0046】
<クリアランス>
図5に示されるように、最終ギヤ32と出力部50との間には、クリアランスが設けられている。より特定的には、2つのクリアランス85,86が最終ギヤ32と出力部50との間に設けられている。
【0047】
クリアランス85は、第2頭部52の底部と、これに対向する第1頭部35の底部との間に設けられている。一方、クリアランス86は、第2軸部51の下端部と、これに対向する第1軸部34の下端部との間に設けられている。つまり、回転軸方向の異なる2箇所に環状のクリアランス85,86が設けられている。
【0048】
クリアランス85,86は、いずれも環状のクリアランスである。より特定的には、クリアランス85は、出力部50の第2軸部51を取り囲む環状のクリアランスである。また、クリアランス86は、後述する角度センサ70のセンサシャフト72を取り囲む環状のクリアランスである。
【0049】
クリアランス85,86は、第1摩擦面41と第2摩擦面42との少なくとも一方の摩耗に伴う最終ギヤ32の移動を許容する。第1摩擦面41や第2摩擦面42が摩耗すると、コイルばね43によって付勢されている最終ギヤ32は、クリアランス85,86の範囲内で回転軸Xの方向に移動する。より特定的には、最終ギヤ32は、第1摩擦面41や第2摩擦面42の摩耗の進行に伴って回転軸Xの方向に次第に移動し、上側カバー13に近接する。
【0050】
別の見方をすると、第1摩擦面41や第2摩擦面42の摩耗が最終ギヤ32のスラスト方向への移動によって吸収される。この結果、第1摩擦面41と第2摩擦面42との接触状態(接触面積や面圧など)が長期間に亘って一定に保たれる。つまり、トルクリミッタ機構40の初期性能が長期間に亘って維持される。
【0051】
<角度センサ>
図4に示されるように、ギヤドモータ1は、出力部50の回転角を検出する角度センサ70を備えている。角度センサ70は、センサ本体71と、センサシャフト72と、を有する。
【0052】
センサシャフト72は、出力部50と相対回転不能に連結されている。センサシャフト72の上部には、径方向外側に突出する係合凸部72aが形成されている。センサシャフト72の上部は、出力部50の第2軸部51に挿入されており、係合凸部72aは、第2軸部51の内周面に形成されている係合凹部に係合している。この結果、出力部50とセンサシャフト72とは、相対回転不能に連結されている。
【0053】
センサシャフト72の下部はセンサ本体71に挿通されている。センサ本体71は、センサシャフト72の回転角に応じた信号を出力する。つまり、角度センサ70は、出力部50の回転角に応じた信号を出力するポテンショセンサである。角度センサ70から出力された信号は、基板60(コネクタ61)を介して外部に出力される。
【0054】
出力部50とセンサシャフト72とが相対回転不能に連結されているので、最終ギヤ32と出力部50との間でスリップが発生しても、センサ本体71から出力される信号は、出力部50の実際の回転角を正確に示す。したがって、最終ギヤ32と出力部50との間にトルクリミッタ機構40が介在していても、出力部50の実際の回転角と角度センサ70によって検出される出力部50の回転角との間にずれが生じることはない。
【0055】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、多段減速機構30を構成するギヤの1つ又は2つ以上を金属ギヤに置換して強度や耐久性の向上を図ることもできる。また、多段減速機構30の減速段数や減速比などは、必要に応じて適宜変更することができる。
【0056】
トルクリミッタ機構40の設定トルクも必要に応じて適宜変更することができる。例えば、第1摩擦面41及び第2摩擦面42のテーパ角度や摩擦係数、コイルばね43のばね圧などを変更することによって、設定トルクを変更することができる。さらには、第1摩擦面41や第2摩擦面42に潤滑材を塗布したり、塗布する潤滑材の種類や量を変更したりすることによっても、設定トルクを変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…ギヤドモータ、10…ハウジング、11…ケース、12…カバー(下側カバー)、13…カバー(上側カバー)、14,15…ボルト、16…開口部、17…位置決めリング、18…固定リブ、18a…貫通孔、20…モータ、21…ピニオンギヤ、30…多段減速機構、31…入力ギヤ、32…出力ギヤ(最終ギヤ)、33…中間ギヤ、34…第1軸部、35…第1頭部、36…内周面、37…ギヤ歯、40…トルクリミッタ機構、41…第1摩擦面、42…第2摩擦面、50…出力部、51…第2軸部、52…第2頭部、53…外周面、54…上面、55…係合部、60…基板、70…角度センサ、71…センサ本体、72…センサシャフト、72a…係合凸部、80…軸受、81…内輪、82…外輪、83…ワッシャ、83a…小径部、83b…大径部、85,86…クリアランス、X…回転軸
図1
図2
図3
図4
図5