(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141936
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20230928BHJP
E05F 15/622 20150101ALI20230928BHJP
H05K 5/03 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
F16H25/20 Z
E05F15/622
F16H25/20 B
F16H25/20 E
H05K5/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048528
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】殿貝 佳英
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 彩▲ウェン▼
【テーマコード(参考)】
2E052
3J062
4E360
【Fターム(参考)】
2E052DA08
2E052DB08
2E052EA11
2E052EB01
2E052EC01
3J062AA33
3J062AB21
3J062AC07
3J062BA12
3J062CD02
3J062CD22
3J062CD44
4E360AB06
4E360AB33
4E360AB42
4E360BA02
4E360BA04
4E360BB04
4E360BB17
4E360BB20
4E360BB21
4E360BD03
4E360BD05
4E360EA18
4E360EC05
4E360EC11
4E360EC13
4E360ED02
4E360ED04
4E360ED07
4E360EE03
4E360EE13
4E360FA20
4E360GA01
4E360GA24
4E360GA52
4E360GB26
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC03
4E360GC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】開閉装置の小型化を図る。
【解決手段】カバー部材の開口部を開閉する開閉装置であって、前記カバー部材に取り付けられるフレーム部材と、電動モータに連結されるネジ軸と、前記ネジ軸に平行であるガイド軸と、前記ネジ軸および前記ガイド軸に取り付けられるスライドプレートと、を有する。前記スライドプレートの移動方向を第1方向とし、前記移動方向に直交する方向を第2方向とする。前記スライドプレートは、前記開口部を開閉するプレート本体と、前記プレート本体の前記第2方向の一端部に設けられて前記ネジ軸に取り付けられる雌ネジ部と、前記プレート本体の前記第2方向の他端部に設けられて前記ガイド軸に取り付けられるスライド部と、を備えている。前記雌ネジ部の前記第1方向の一端部には、第1切り欠き部が設けられており、前記雌ネジ部の前記第1方向の他端部には、第2切り欠き部が設けられている。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部材の開口部を開閉する開閉装置であって、
前記カバー部材に取り付けられるフレーム部材と、
前記フレーム部材に取り付けられ、電動モータに連結されるネジ軸と、
前記フレーム部材に取り付けられ、前記ネジ軸に平行であるガイド軸と、
前記ネジ軸および前記ガイド軸に取り付けられ、前記開口部を閉塞する閉位置と前記開口部を開放する開位置とに移動可能であるスライドプレートと、
を有し、
前記スライドプレートの移動方向を第1方向とし、前記移動方向に直交する方向を第2方向とする場合に、
前記スライドプレートは、
前記開口部を開閉するプレート本体と、
前記プレート本体の前記第2方向の一端部に設けられ、前記ネジ軸に取り付けられるネジ孔を備える雌ネジ部と、
前記プレート本体の前記第2方向の他端部に設けられ、前記ガイド軸に取り付けられるスライド孔を備えるスライド部と、
を備え、
前記雌ネジ部の前記第1方向の一端部には、第1切り欠き部が設けられており、
前記雌ネジ部の前記第1方向の他端部には、第2切り欠き部が設けられている、
開閉装置。
【請求項2】
前記ネジ孔が開口する前記雌ネジ部の一端面から、前記ネジ孔が開口する前記雌ネジ部の他端面までの距離を、第1距離とし、
前記スライド孔が開口する前記スライド部の一端面から、前記スライド孔が開口する前記スライド部の他端面までの距離を、第2距離とする場合に、
前記第1距離は、前記第2距離よりも短い、
請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記ネジ孔が開口する前記雌ネジ部の一端面から、前記ネジ孔が開口する前記雌ネジ部の他端面までの範囲を、第1範囲とし、
前記スライド孔が開口する前記スライド部の一端面から、前記スライド孔が開口する前記スライド部の他端面までの範囲を、第2範囲とする場合に、
前記第1範囲の全ては、前記第2方向において前記第2範囲に重なっている、
請求項1または2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記カバー部材に備えられる前記開口部の内周縁には、前記スライドプレートに接触するシール部材が取り付けられている、
請求項1~3の何れか1項に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記ネジ軸と前記ガイド軸との軸間距離をLaとし、
前記スライド孔が開口する前記スライド部の一端面から、前記スライド孔が開口する前記スライド部の他端面までの距離をLbとし、
前記ガイド軸の材料と前記スライド部の材料との動摩擦係数をμとする場合に、
前記動摩擦係数は、以下の式を満足している、
μ<Lb/2La
請求項1~4の何れか1項に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記プレート本体は、
前記開口部よりも大きな閉塞プレート部と、
前記閉塞プレート部に連なって設けられ、前記開口部に対向するスライド開口部を備える開口プレート部と、
を備えている、
請求項1~5の何れか1項に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を開閉する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータによってスライダを往復させるスライド装置が提案されている。このスライド装置には、モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジが組み込まれている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、開口部を開閉する開閉装置においても、ボールネジ等を用いてプレートを往復させることにより、開口部をプレートによって開閉させることが考えられている。しかしながら、ボールネジ等を用いてプレートを往復させることは、ボールネジ等を支持する軸受とプレートとの干渉を回避する必要があることから、開閉装置の大型化を招く要因となっていた。
【0005】
本発明の目的は、開閉装置の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の開閉装置は、カバー部材の開口部を開閉する開閉装置であって、前記カバー部材に取り付けられるフレーム部材と、前記フレーム部材に取り付けられ、電動モータに連結されるネジ軸と、前記フレーム部材に取り付けられ、前記ネジ軸に平行であるガイド軸と、前記ネジ軸および前記ガイド軸に取り付けられ、前記開口部を閉塞する閉位置と前記開口部を開放する開位置とに移動可能であるスライドプレートと、を有し、前記スライドプレートの移動方向を第1方向とし、前記移動方向に直交する方向を第2方向とする場合に、前記スライドプレートは、前記開口部を開閉するプレート本体と、前記プレート本体の前記第2方向の一端部に設けられ、前記ネジ軸に取り付けられるネジ孔を備える雌ネジ部と、前記プレート本体の前記第2方向の他端部に設けられ、前記ガイド軸に取り付けられるスライド孔を備えるスライド部と、を備え、前記雌ネジ部の前記第1方向の一端部には、第1切り欠き部が設けられており、前記雌ネジ部の前記第1方向の他端部には、第2切り欠き部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、雌ネジ部の第1方向の一端部には、第1切り欠き部が設けられており、雌ネジ部の第1方向の他端部には、第2切り欠き部が設けられている。これにより、開閉装置の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である開閉装置が組み込まれた情報端末を示す図である。
【
図3】
図3は、開閉装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、スライドプレートを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施形態である開閉装置を構成するスライドプレートを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、スライドプレートが開位置に移動した開閉装置を示す断面図である。
【
図11】
図11は、スライドプレートが閉位置に移動した開閉装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[開閉装置の適用例]
図1は、本発明の一実施形態である開閉装置10が組み込まれた情報端末11を示す図である。
図2Aは開閉装置10を正面側から示す斜視図であり、
図2Bは開閉装置10を背面側から示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、スマートフォンやタブレットPC等の情報端末11には、スライドプレート12を備えた開閉装置10が組み込まれている。
図2Aおよび
図2Bに示すように、開閉装置10は、カバー開口部(開口部)13が形成されるカバー部材14と、これに取り付けられるメインフレーム(フレーム部材)15と、を有している。また、メインフレーム15とカバー部材14との間には、矢印D1a,D2a方向に移動するスライドプレート12が設けられている。スライドプレート12を矢印D1a方向に移動させることにより、スライドプレート12によってカバー開口部13を閉じることができる。一方、スライドプレート12を矢印D1b方向に移動させることにより、カバー開口部13からスライドプレート12を離してカバー開口部13を開くことができる。なお、スライドプレート12は、シャッターとも呼ばれている。
【0012】
スライドプレート12を備えた開閉装置10は、情報端末11の冷却性能を高めるために用いることが可能である。例えば、情報端末11には、プロセッサ等の熱を拡散させるベイパーチャンバーが組み込まれるとともに、このベイパーチャンバーの近傍に開閉装置10が取り付けられている。そして、プロセッサ等の発熱によってベイパーチャンバーの温度が所定値を上回る場合には、スライドプレート12を矢印D1b方向つまり開方向に移動させることにより、カバー部材14に形成されたカバー開口部13が開放される。これにより、ベイパーチャンバーを外気によって冷却することができ、ベイパーチャンバーの温度上昇を抑えてプロセッサ等を適切に冷却することができる。なお、ベイパーチャンバーの温度が所定値を下回る場合には、スライドプレート12を矢印D1a方向つまり閉方向に移動させることにより、スライドプレート12によってカバー開口部13が閉塞される。
【0013】
[開閉装置の構造]
図3は開閉装置10の内部構造を示す分解斜視図である。
図4Aは開閉装置10を示す平面図であり、
図4Bは
図4AのA-A線に沿って開閉装置10を示す断面図である。また、
図5Aはスライドプレート12を示す平面図であり、
図5Bはスライドプレート12を示す正面図である。さらに、
図6はスライドプレート12を示す斜視図である。なお、
図3、
図4B、
図5Bおよび
図6に示される第1方向D1とは、スライドプレート12の移動方向である。また、
図3、
図4A、
図4B、
図5A、
図5Bおよび
図6に示される第2方向D2とは、スライドプレート12の移動方向に直交する方向である。
【0014】
図3に示すように、開閉装置10は、リードスクリュー20やガイドシャフト21,22等が取り付けられるメインフレーム15を有している。
図3、
図4Aおよび
図4Bに示すように、メインフレーム15は、第2方向D2の一方に位置するナット収容部23と、第2方向D2の他方に位置するスライダ収容部24と、ナット収容部23とスライダ収容部24とを互いに連結する連結部25と、を有している。ナット収容部23とスライダ収容部24との間に設けられる連結部25には、前述したカバー開口部13に対向するフレーム開口部26が形成されている。
【0015】
メインフレーム15のナット収容部23には、ボールベアリング30を収容する軸受収容孔31が形成されるとともに、シリコーンゴム製のスリーブ部材32を収容する軸受収容孔33が形成されている。軸受収容孔31に収容されるボールベアリング30には、リードスクリュー20の一端部20aが支持されており、軸受収容孔33に収容されるスリーブ部材32には、リードスクリュー20の他端部20bが支持されている。つまり、ボールベアリング30だけでなくスリーブ部材32についても、リードスクリュー20を支持する軸受として機能している。また、ナット収容部23の軸受収容孔33には、減速機構34を備えた電動モータ35が取り付けられており、減速機構34の出力軸34aとリードスクリュー20の他端部20bとは互いに連結されている。このように、メインフレーム15には、電動モータ35に連結されるリードスクリュー(ネジ軸)20が取り付けられている。なお、リードスクリュー20を回転させる電動モータ35として、ステッピングモータが用いられている。
【0016】
メインフレーム15のナット収容部23には、ガイドシャフト21の一端部21aを保持する嵌合孔41aが形成されるとともに、ガイドシャフト21の他端部21bを保持する嵌合孔41bが形成されている。また、メインフレーム15のスライダ収容部24には、ガイドシャフト22の一端部22aを保持する嵌合孔42aが形成されるとともに、ガイドシャフト22の他端部22bを保持する嵌合孔42bが形成されている。さらに、リードスクリュー20、ガイドシャフト21およびガイドシャフト22は、互いに平行となっている。このように、メインフレーム15には、リードスクリュー20に平行であるガイドシャフト21が取り付けられるとともに、リードスクリュー20に平行であるガイドシャフト(ガイド軸)22が取り付けられている。
【0017】
また、メインフレーム15には両面に粘着層を備えた粘着シート43が貼り付けられており、この枠状の粘着シート43にはカバー部材14が貼り付けられている。つまり、メインフレーム15には、粘着シート43を介してカバー部材14が取り付けられている。なお、粘着シート43の基材は、ポリウレタン等からなる発泡材料を用いて形成されている。また、カバー部材14に形成されるカバー開口部13の内周縁13aには、シリコーンゴム製のシール部材44が取り付けられている。このシール部材44はスライドプレート12に対して接触しており、シール部材44によってカバー部材14とスライドプレート12との隙間が塞がれている。また、メインフレーム15には、リードスクリュー20およびガイドシャフト21を覆う化粧カバー45が取り付けられている。
【0018】
図5A、
図5Bおよび
図6に示すように、スライドプレート12は、平板状のプレート本体50と、プレート本体50の第2方向D2の一端部50aに設けられるナット部(雌ネジ部)51と、プレート本体50の第2方向D2の他端部50bに設けられるスライド部52と、を有している。スライドプレート12のナット部51には、リードスクリュー20を挿入する雌ネジ孔(ネジ孔)53が形成されるとともに、ガイドシャフト21を挿入するスライド孔54が形成されている。また、ナット部51の第1方向D1の一端部61aには、第1切り欠き部61が設けられており、ナット部51の第1方向D1の他端部62aには、第2切り欠き部62が設けられている。さらに、スライドプレート12のスライド部52には、ガイドシャフト22を挿入するスライド孔55が形成されている。なお、スライド孔55の断面形状は円形状であり、スライド孔54の断面形状は第2方向D2に延びる長孔形状である。
【0019】
スライドプレート12のプレート本体50は、金属材料を用いて形成されている。また、スライドプレート12のナット部51およびスライド部52は、合成樹脂材料を用いて形成されている。さらに、プレート本体50、ナット部51およびスライド部52からなるスライドプレート12は、所謂インサート成形によって製造されている。つまり、金型内にプレート本体50を収容した状態のもとで、金型内に射出された樹脂材料によってプレート本体50の一端部50aおよび他端部50bを覆うことにより、プレート本体50に対してナット部51およびスライド部52が一体に成形されている。また、
図6に示すように、樹脂材料によって覆われるプレート本体50の一端部50aおよび他端部50bは、折り曲げられるとともに貫通孔56a,56bが形成されている。これにより、ナット部51およびスライド部52に対するプレート本体50の埋め込み量が少ない場合であっても、プレート本体50に対してナット部51およびスライド部52を強固に固定することができる。すなわち、スライドプレート12の強度を維持したままナット部51およびスライド部52の小型化を達成することができる。
【0020】
[スライドプレートの開位置および閉位置]
スライドプレート12の開位置および閉位置について説明する。
図4Bに破線Paで示すように、スライドプレート12は、プレート本体50をフレーム開口部26に対向させる閉位置、つまりプレート本体50をカバー開口部13に対向させる閉位置に移動可能である。換言すれば、スライドプレート12の閉位置とは、カバー開口部13の全てにプレート本体50が重なる位置である。また、
図4Bに一点鎖線Pbで示すように、スライドプレート12は、プレート本体50をフレーム開口部26に対向させない開位置、つまりプレート本体50をカバー開口部13に対向させない開位置に移動可能である。換言すれば、スライドプレート12の開位置とは、カバー開口部13に対してプレート本体50の全てが重ならない位置である。
【0021】
スライドプレート12を閉位置や開位置に移動させる際には、電動モータ35によってリードスクリュー20が回転駆動される。つまり、
図4Bに示すように、リードスクリュー20を矢印Ra方向に回転させることにより、スライドプレート12を矢印D1a方向つまり閉方向に移動させることができ、スライドプレート12を開位置から閉位置まで移動させることができる。一方、リードスクリュー20を矢印Rb方向に回転させることにより、スライドプレート12を矢印D1b方向つまり開方向に移動させることができ、スライドプレート12を閉位置から開位置まで移動させることができる。
【0022】
[開閉装置の小型化]
図5Bに示すように、ナット部51の第1方向D1の一端部61aには、第1切り欠き部61が形成されており、ナット部51の第1方向D1の他端部62aには、第2切り欠き部62が形成されている。これにより、
図4Bに符号Xaで示すように、スライドプレート12を閉位置まで移動させた場合には、スライドプレート12に第1切り欠き部61が形成されていることから、ボールベアリング30およびその近傍とスライドプレート12との干渉を回避することができる。また、
図4Bに符号Xbで示すように、スライドプレート12を開位置まで移動させた場合には、スライドプレート12に第2切り欠き部62が形成されていることから、スリーブ部材32およびその近傍とスライドプレート12との干渉を回避することができる。
【0023】
換言すれば、
図5Bに示すように、雌ネジ孔53が開口するナット部51の一端面51aから、雌ネジ孔53が開口するナット部51の他端面51bまでの長さつまり距離は、距離(第1距離)Lcである。また、スライド孔55が開口するスライド部52の一端面52aから、スライド孔55が開口するスライド部52の他端面52bまでの長さつまり距離は、距離(第2距離)Lbである。このとき、ナット部51の距離Lcは、スライド部52の距離Lbよりも短く設定されている。これにより、スライドプレート12を開位置や閉位置に移動させた場合であっても、ボールベアリング30やスリーブ部材32とスライドプレート12との干渉を回避することができる。
【0024】
前述したように、スライドプレート12に切り欠き部61,62を形成することにより、ボールベアリング30やスリーブ部材32とスライドプレート12との干渉を回避することができる。また、ナット部51の距離Lcをスライド部52の距離Lbよりも短くすることにより、ボールベアリング30やスリーブ部材32とスライドプレート12との干渉を回避することができる。このように、ボールベアリング30やスリーブ部材32とスライドプレート12との干渉を回避することにより、スライドプレート12の移動量を確保しつつリードスクリュー20の全長を短縮することができる。これにより、リードスクリュー20を収容するメインフレーム15の小型化を達成することができ、開閉装置10の小型化を達成することができる。
【0025】
[シール部材]
カバー部材14に取り付けられるシール部材44について説明する。
図7は
図2AのB-B線に沿って開閉装置10を示す断面図である。前述したように、カバー部材14に形成されるカバー開口部13の内周縁13aには、シリコーンゴム製のシール部材44が取り付けられている。
図7の拡大部分に示すように、シール部材44には凸状のシールリップ44aが形成されており、このシールリップ44aはスライドプレート12のプレート本体50に対して接触している。
【0026】
シール部材44の密封機能を適切に発揮させるためには、シールリップ44aを適切な力でプレート本体50に押し付けることが必要である。そこで、スライドプレート12を支持するメインフレーム15と、シール部材44を支持するカバー部材14との間には、柔軟性を有する粘着シート43が設けられている。つまり、プレート本体50に対してシールリップ44aが過度に押し付けられた場合には、粘着シート43の柔軟性によってメインフレーム15とカバー部材14との隙間を拡げることができ、シールリップ44aを適切な力でプレート本体50に押し付けることができる。これにより、シールリップ44aの押し付け力を安定させることができ、シール部材44を適切に機能させることができる。
【0027】
また、スライド孔55の断面形状は円形状に形成される一方、スライド孔54の断面形状は第2方向D2に延びる長孔形状に形成されている。これにより、一対のガイドシャフト21,22によってスライドプレート12を支持する場合であっても、スライド孔54によって寸法上のバラツキを吸収させることができ、スライドプレート12を滑らかに開閉させることができる。また、スライド孔54を第2方向D2に延びる長孔に形成することにより、スライドプレート12の厚み方向における移動を規制することができる。これにより、カバー部材14からスライドプレート12が離れてシールリップ44aの押し付け力を過度に弱めることがなく、シール部材44を適切に機能させることができる。
【0028】
なお、シール部材44が接触するプレート本体50の表面には、シール部材44との摩擦を低減する観点から、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)等の表面処理が施されている。また、前述の説明では、シール部材44の材料としてシリコーンゴムを挙げているが、これに限られることはなく、フッ素ゴムや合成ゴム等のエラストマーを材料に用いてシール部材44を形成しても良い。
【0029】
[スライドプレートの開閉移動]
続いて、スライドプレート12の開閉移動について説明する。
図8Aは開閉装置10を示す平面図であり、
図8Bは
図4AのA-A線に沿って開閉装置10を示す断面図である。スライドプレート12を閉位置や開位置に向けて滑らかに移動させるためには、スライドプレート12およびガイドシャフト21,22の寸法や材料を適切に設定することが必要である。
【0030】
ここで、
図5Bに示すように、リードスクリュー20とガイドシャフト22との軸間距離は距離Laである。また、スライド孔55が開口するスライド部52の一端面52aから、スライド孔55が開口するスライド部52の他端面52bまでの距離は、距離Lbである。この場合において、ガイドシャフト22の材料とスライド部52の材料との動摩擦係数μは、以下の式(1)を満足している。つまり、以下の式(1)を満たすように、リードスクリュー20とガイドシャフト22との軸間距離La、スライド部52の一端面52aから他端面52bまでの距離Lb、ガイドシャフト22とスライド部52との動摩擦係数μが設定されている。これにより、スライドプレート12を滑らかに開閉移動させることができ、開閉装置10を適切に作動させることができる。
μ<Lb/2La ・・(1)
【0031】
すなわち、リードスクリュー20とガイドシャフト22との軸間距離Laが長い場合や、スライド部52の一端面52aから他端面52bまでの距離Lbが短い場合には、スライドプレート12を移動させる際にスライド部52が傾き易くなることから、スライド部52とガイドシャフト22とが互いに強く接触する虞がある。このため、軸間距離Laが大きくなるほどに、ガイドシャフト22とスライド部52との動摩擦係数μが小さく設定されている。また、スライド部52の距離Lbが小さくなるほどに、ガイドシャフト22とスライド部52との動摩擦係数μが小さく設定されている。これにより、軸間距離Laおよびスライド部52の距離Lbに応じて動摩擦係数μを適切に設定することができ、スライドプレート12を滑らかに開閉移動させることができる。なお、ガイドシャフト22は、ステンレススチールや真鍮等の金属材料を用いて形成される。また、スライド部52は、ポリアミドやポリアセタール等の合成樹脂材料を用いて形成される。また、ガイドシャフト22とスライド部52との動摩擦係数μについては、例えば、日本産業規格「JIS K7125」に則って測定される。
【0032】
また、
図5Bに示すように、雌ネジ孔53が開口するナット部51の一端面51aから、雌ネジ孔53が開口するナット部51の他端面51bまでの範囲は、範囲(第1範囲)R1である。また、スライド孔55が開口するスライド部52の一端面52aから、スライド孔55が開口するスライド部52の他端面52bまでの範囲は、範囲(第2範囲)R2である。このとき、範囲R1の全ては、第2方向D2において第2範囲R2に重なっている。これにより、スライドプレート12を閉方向に移動させたときに作用する力のモーメントと、スライドプレート12を開方向に移動させたときに作用する力のモーメントとを、互いに近づけることができる。これにより、スライドプレート12を開閉移動させる際の挙動を安定させることができる。
【0033】
[他の実施形態]
前述の説明では、スライドプレート12を開位置に移動させたときに、スライドプレート12がシール部材44から離れているが、これに限られることはなく、スライドプレート12を開位置まで移動させたときに、スライドプレート12がシール部材44に接触していても良い。ここで、
図9は本発明の他の実施形態である開閉装置70を構成するスライドプレート71を示す斜視図である。また、
図10はスライドプレート71が開位置に移動した開閉装置70を示す断面図であり、
図11はスライドプレート71が閉位置に移動した開閉装置70を示す断面図である。なお、
図10および
図11には、
図4Bと同じ部位の断面が示されている。また、
図9~
図11において、
図4Bおよび
図6に示す部材や部位と同様の部材や部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図9に示すように、スライドプレート71は、閉塞プレート部72および開口プレート部73からなるプレート本体74と、プレート本体74の第2方向D2の一端部74aに設けられるナット部51と、プレート本体74の第2方向D2の他端部74bに設けられるスライド部52と、を有している。プレート本体74の閉塞プレート部72は、カバー開口部13よりも大きく形成されている。つまり、プレート本体74の閉塞プレート部72の面積は、カバー開口部13の開口面積よりも大きく形成されている。また、プレート本体74の開口プレート部73には、開位置においてカバー開口部13に対向するスライド開口部73aが形成されている。なお、スライド開口部73aの開口面積は、カバー開口部13の開口面積より小さくても良く、カバー開口部13の開口面積と同一であっても良い。
【0035】
このスライドプレート71を開閉装置70に組み込むことにより、
図10に示すように、スライドプレート71を開位置に移動させた場合であっても、開口プレート部73の枠体をシール部材44のシールリップ44aに接触させることができる。これにより、シール部材44による開閉装置70の密封機能を高めることができる。また、本実施形態においては、
図11に示すように、スライドプレート71を閉位置に移動させると、開口プレート部73がメインフレーム15から突出する構造であるが、これに限られることはない。例えば、メインフレーム15を第1方向D1に拡張することにより、スライドプレート71を閉位置に移動させた場合であっても、メインフレーム15内に開口プレート部73を収めるようにしても良い。
【0036】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。前述の説明では、スマートフォン等の情報端末11に開閉装置10を取り付けているが、これに限られることはなく、他の装置に対して開閉装置10を取り付けても良い。前述の説明では、リードスクリュー20に対してナット部51を直に噛み合わせることにより、電動モータ35の回転によってスライドプレート12を開閉移動させているが、これに限られることはない。例えば、リードスクリュー20とナット部51との間にボールを組み込むボールネジを用いても良い。
【0037】
図示する例では、スライドプレート12に設けられるスライド部52の中間部分が切り欠かれているが、これに限られることはなく、中間部分を切り欠くことなくスライド部52を形成しても良い。図示する例では、リードスクリュー20をボールベアリング30およびスリーブ部材32によって支持しているが、これに限られることはなく、リードスクリュー20を一対のボールベアリングによって支持しても良い。前述の説明では、電動モータ35としてステッピングモータを用いているが、これに限られることはなく、他の形式の電動モータを用いても良い。
【0038】
前述の説明では、金属材料を用いてプレート本体50を形成し、合成樹脂材料を用いてナット部51およびスライド部52を形成しているが、これに限られることはない。例えば、合成樹脂材料を用いてプレート本体50、ナット部51およびスライド部52を形成しても良く、金属材料を用いてプレート本体50、ナット部51およびスライド部52を形成しても良い。例えば、金属材料を用いてプレート本体50、ナット部51およびスライド部52を形成する際には、金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)を用いることが可能である。なお、合成樹脂材料としては、ポリアミドやポリアセタール等を用いることができ、金属材料としては、ステンレススチールや真鍮等を用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
10…開閉装置、11…情報端末、12…スライドプレート、13…カバー開口部(開口部)、13a…内周縁、14…カバー部材、15…メインフレーム(フレーム部材)、20…リードスクリュー(ネジ軸)、20a…一端部、20b…他端部、21…ガイドシャフト、21a…一端部、21b…他端部、22…ガイドシャフト(ガイド軸)、22a…一端部、22b…他端部、23…ナット収容部、24…スライダ収容部、25…連結部、26…フレーム開口部、30…ボールベアリング、31…軸受収容孔、32…スリーブ部材、33…軸受収容孔、34…減速機構、34a…出力軸、35…電動モータ、41a,41b…嵌合孔、42a,42b…嵌合孔、43…粘着シート、44…シール部材、44a…シールリップ、45…化粧カバー、50…プレート本体、50a…一端部、50b…他端部、51…ナット部(雌ネジ部)、51a…一端面、51b…他端面、52…スライド部、52a…一端面、52b…他端面、53…雌ネジ孔(ネジ孔)、54…スライド孔、55…スライド孔、56a,56b…貫通孔、61a…一端部、62a…他端部、61…第1切り欠き部、62…第2切り欠き部、70…開閉装置、71…スライドプレート、72…閉塞プレート部、73…開口プレート部、73a…スライド開口部、74…プレート本体、D1…第1方向、D2…第2方向、La…距離(軸間距離)、Lc…距離(第1距離)、Lb…距離(第2距離)、μ…動摩擦係数、R1…範囲(第1範囲)、R2…範囲(第2範囲)