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  • 特開-マイクロカプセル 図1
  • 特開-マイクロカプセル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141946
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】マイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/40 20060101AFI20230928BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230928BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 25/28 20060101ALI20230928BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20230928BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20230928BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20230928BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A01N37/40
A01P3/00
A01P17/00
A01N25/28
A01N25/04 102
B01J13/16
D06M23/12
D06M13/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048550
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】清水 尚悟
【テーマコード(参考)】
4G005
4H011
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA02
4G005BB03
4G005DA09W
4G005DC15W
4G005DC29Y
4G005DC32X
4G005DD57Z
4G005EA02
4G005EA03
4H011AA03
4H011AC06
4H011BB06
4H011BC19
4H011DA06
4H011DA15
4H011DH02
4L031DA12
4L033AC10
4L033BA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、水中での分散性に優れるマイクロカプセルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、式(1)
【化1】
[式中、Rは炭素原子数4~22のアルキル基または炭素原子数6~22のアリール基を示す]で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む内包物、および該内包物を被覆する壁膜を含有し、平均粒子径が100~10000nmである、マイクロカプセルに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、Rは炭素原子数4~22のアルキル基または炭素原子数6~22のアリール基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む内包物、および該内包物を被覆する壁膜を含有し、平均粒子径が100~10000nmである、マイクロカプセル。
【請求項2】
4-ヒドロキシ安息香酸エステルの塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩の含有量は、内包物の全質量を基準に20質量%以上である、請求項1または2のいずれかに記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
は炭素原子数4~6のアルキル基を示す、請求項1~3のいずれかに記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
は炭素原子数6のアルキル基を示す、請求項1~4のいずれかに記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
壁膜は、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびアルギン酸塩からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1~5のいずれかに記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
壁膜は、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1~6のいずれかに記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のマイクロカプセルが水系溶媒中に分散したマイクロカプセル分散液。
【請求項9】
0.026質量%マイクロカプセル分散液の濁度が30度以上である、請求項8に記載のマイクロカプセル分散液。
【請求項10】
0.026質量%マイクロカプセル分散液を25℃で7日間静置した後の濁度減少率が50%以下である、請求項8または9に記載のマイクロカプセル分散液。
【請求項11】
請求項1~7のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有する抗白癬菌剤。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有する害虫忌避剤。
【請求項13】
請求項1~7のいずれかに記載のマイクロカプセルが付着した繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-ヒドロキシ安息香酸エステルを含有するマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
パラベン(4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはパラオキシ安息香酸エステルとも呼ばれる)は抗菌・防腐効果に優れ、化粧品、医薬品、食品等の保存料として幅広く使用されている。また、近年ではダニやナメクジなどの害虫に対する忌避効果についても報告されている(特許文献1)。
【0003】
パラベン等の機能性化合物を合成樹脂に練り込むことによって、その効能を樹脂自体に担持させる技術が開発されている。例えば、第四級アンモニウム塩から選ばれた少なくとも一つの薬剤と、4-ヒドロキシ安息香酸エステル系化合物から選ばれた少なくとも一つの薬剤を含有することを特徴とする抗菌性樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方、羽毛や綿等の天然の繊維や既成製品においては、パラベンを繊維に練りこむことが困難であるため、これらの対象物にパラベンの効能を付与したい場合は、パラベンを溶媒に溶解させて、その溶液を塗布、散布、噴霧または浸漬する方法が考えられる。
【0005】
パラベンを溶解させる溶媒としては、安全面を考慮すると水が好ましいが、パラベンはアルキル鎖が長くなるにつれて水溶性が低下するため、水溶液中に必要量を溶解させることが困難となる場合があった。
【0006】
パラベンの水への溶解性を向上させるために、エチルアルコール、プロピレングリコールまたは酢酸などの親水性有機溶媒を添加する方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-69934号公報
【特許文献2】特開平10-237317号公報
【特許文献3】特開昭61-065802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アルキル基の炭素数が4以上のパラベンを完全に水中に溶解させることが困難であった。
【0009】
パラベンを溶解させずにスラリー状態(懸濁液)で使用した場合、パラベンの分散状態を安定に保つことが難しく、対象物にパラベンを均一に付着させることが困難であった。
【0010】
本発明の目的は、水中での分散性に優れるマイクロカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、アルキル基の炭素数が4以上のパラベンをマイクロカプセルに内包することによって、水中での分散性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕式(1)
【化1】
[式中、Rは炭素原子数4~22のアルキル基または炭素原子数6~22のアリール基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む内包物、および該内包物を被覆する壁膜を含有し、平均粒子径が100~10000nmである、マイクロカプセル。
〔2〕4-ヒドロキシ安息香酸エステルの塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、〔1〕に記載のマイクロカプセル。
[3]4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩の含有量は、内包物の全質量に基づき20質量%以上である、〔1〕または〔2〕のいずれかに記載のマイクロカプセル。
[4]Rは炭素原子数4~6のアルキル基を示す、[1]~[3]のいずれかに記載のマイクロカプセル。
[5]Rは炭素原子数6のアルキル基を示す、[1]~[4]のいずれかに記載のマイクロカプセル。
[6]壁膜は、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびアルギン酸塩からなる群から選択される1種以上を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のマイクロカプセル。
[7]壁膜は、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のマイクロカプセル。
[8][1]~[7]のいずれかに記載のマイクロカプセルが水系溶媒中に分散したマイクロカプセル分散液。
[9]0.026質量%マイクロカプセル分散液の濁度が30度以上である、[8]に記載のマイクロカプセル分散液。
[10]0.026質量%マイクロカプセル分散液を25℃で7日間静置した後の濁度減少率が50%以下である、[8]または[9]に記載のマイクロカプセル分散液。
[11][1]~[7]のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有する抗白癬菌剤。
[12][1]~[7]のいずれかに記載のマイクロカプセルを含有する害虫忌避剤。
[13][1]~[7]のいずれかに記載のマイクロカプセルが付着した繊維製品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水中での分散性に優れるマイクロカプセルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得た4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルマイクロカプセル分散液である。
図2】比較例1で得た4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル含有液である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のマイクロカプセルは式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む内包物および該内包物を被覆する壁膜を含有する。
【化2】
[式中、Rは炭素原子数4~22のアルキル基または炭素原子数6~22のアリール基を示す]
【0016】
は、抗菌効果に優れることから炭素原子数4~18のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数4~6のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素原子数6のアルキル基であることが特に好ましい。
【0017】
本発明に使用される式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸イソブチル、4-ヒドロキシ安息香酸ペンチル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸オクチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ノニル、4-ヒドロキシ安息香酸デシル、4-ヒドロキシ安息香酸イソデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ウンデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ドデシル、4-ヒドロキシ安息香酸トリデシル、4-ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ペンタデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプタデシル、4-ヒドロキシ安息香酸オクタデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ノナデシル、4-ヒドロキシ安息香酸イコシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘンイコシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸p-トリル、4-ヒドロキシ安息香酸m-トリル、4-ヒドロキシ安息香酸o-トリル、4-ヒドロキシ安息香酸1-ナフチルおよび4-ヒドロキシ安息香酸2-ナフチルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0018】
本発明に使用される式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの塩は、上記4-ヒドロキシ安息香酸エステルのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい。アルカリ金属の具体例としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムからなる群から選択される1種以上が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウムおよび/またはカルシウムが挙げられる。
【0019】
上述した4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩は、単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明で使用される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩は、市販のものを用いてもよく、また、特開2018-95581号公報や特開2016-210699号公報に記載されるように、触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸または4-ヒドロキシ安息香酸エステルとアルコール類とを反応させることによって得られたものを用いてもよい。
【0021】
本発明のマイクロカプセルの内包物は、4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩以外にも他の剤を含んでもよいが、4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩の含有量は、内包物全質量中20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがよりさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、80質量%以上であることがより特に好ましく、90質量%以上であることがさらに特に好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。
【0022】
他の剤としては、例えばパラベン以外の抗菌剤、抗黴剤、防虫剤、殺虫剤、防藻剤、殺藻剤、着色剤、難燃剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤(紫外線吸収剤等)、帯電防止剤、香料、離型剤等の各種添加剤、強化剤および粉末増量剤等が挙げられる。
【0023】
本発明のマイクロカプセルにおいて、内包物を被覆する壁膜としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびアルギン酸塩からなる群から選択される1種以上が挙げられ、得られるマイクロカプセルが微小かつ均一性に優れる点から、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0024】
本発明のマイクロカプセルは、コアセルベーション法、界面重合法、in-situ法、ゾルゲル法などの方法によって製造することができる。
【0025】
例えば、界面重合法やin-situ法においては、乳化剤または分散剤を用いて壁膜の原料および内包物を含む水中油滴型エマルジョンを得た後、分散状態を保ったまま各種重合を行い、マイクロカプセルを形成させる。
【0026】
乳化剤または分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カチオン化澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマー;ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、セチトリメチルアンモニウムハライド等の界面活性剤;炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、コロイダルシリカ、モンモリロナイト等の無機分散剤等が挙げられ、これらの中から1種以上を用いることができる。
【0027】
乳化剤または分散剤の使用量については特に限定されないが、一般的にその量は油相成分の合計に対して0.5~50質量%、好ましくは2.0~30質量%の範囲で調整される。
【0028】
本発明のマイクロカプセルには壁膜を可塑化させる可塑剤を含有させてもよい。マイクロカプセルが可塑剤を含有することにより、壁膜を形成する樹脂(ポリマー)の分子間力を調整し、内包物のマイクロカプセル外への徐放性をコントロールすることが可能となる。可塑剤を含有させたマイクロカプセルにおいて、添加した可塑剤の一部が内包物中に存在していてもよい。このような可塑剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物及びその部分エステル化物;酢酸、酪酸、吉草酸、安息香酸等のモノカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、フタル酸等のジカルボン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸及びそれらのエステル化物;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、セロソルブ、カルビトール等のポリエチレングリコール及びそのモノエーテル化物;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、ジグライム等の水溶性エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノン等の低級ケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、N-メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、へキサメチルホスホンアミド等の非プロトン性極性溶媒;ピリジン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0029】
可塑剤の使用量は壁膜の種類、重合温度、可塑剤の種類等によって異なるが、例えば壁膜100質量部に対して1~100質量部が好ましい。
【0030】
メラミン樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、例えば、上記乳化剤または分散剤を用いてメラミンもしくはメラミンと尿素等との混合物と内包物を含有する油溶性液を水中に乳化分散させて水中油滴型エマルジョンを得た後、該エマルジョン中にホルムアルデヒドを添加し、液温を上昇させて油滴界面で高分子形成反応を起こすことによって製造することができる。
【0031】
(メタ)アクリル樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、例えば、上記乳化剤または分散剤を用いてアクリル酸およびその誘導体、アクリルアミド、メタクリル酸およびその誘導体、アクリロニトリル/ブタジエン等のビニル基を有するモノマーと内包物を含有する油溶性液を水中へ乳化分散させて水中油滴エマルジョンを得た後、重合開始剤により水中油滴界面で高分子化することにより製造される。
【0032】
(メタ)アクリル樹脂を得るためのモノマー成分としては、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルを含むものが好ましい。そのようなメタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルとして、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、モノ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、2-エチル(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)メタクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シアノエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート等が挙げられる。
【0033】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの油溶性アゾ系開始剤や過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、が用いられる。重合開始剤は、一般的に、モノマー1質量部に対して0.001~0.05質量部の範囲で使用するのが好ましい。重合開始剤はモノマー溶液を調製した後、水に分散させる直前に該モノマー溶液に添加するのが好ましい。重合温度および重合時間は使用する開始剤にもよるが、一般的に、30~100℃で3~24時間重合するのがよい。重合は通常、常圧下で行われる。
【0034】
ポリウレタン樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、例えば、上記乳化剤または分散剤を用いてヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、多価イソシアネートとポリオールとの付加物などのイソシアネート類およびこれと反応するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエステルポリオール、ヒマシ油などのポリオール類などと内包物を含有する油溶性液を水系溶媒中に乳化分散し、水中油滴型エマルジョンを得た後、液温を上昇させて油滴界面で高分子形成反応を起こすことによって製造される。
【0035】
本発明のマイクロカプセルの平均粒子径は、水中での分散性、並びにマイクロカプセルの内包物の保持性を高める観点から、100~10000nmであり、好ましくは150~5000nmであり、より好ましくは200~2000nmであり、さらに好ましくは250~1500nm、よりさらに好ましくは300~1000nm、特に好ましくは400~700nmである。
【0036】
本明細書において、平均粒子径とは、体積基準のメジアン径(D50)を意味し、例えば、粒度分布計MT3200(日機装株式会社製)によって測定される。
【0037】
マイクロカプセルの粒子径は、分散するエマルジョンの液滴の大きさによって決まる。分散は重合槽に付属の攪拌羽根で撹拌する、あるいは、マイルダー、ホモミキサー、超音汲ホモジナイザー等で撹拌することによって行われる。
【0038】
本発明のマイクロカプセルにおいて、内包物と壁膜の割合は、内包物100質量部に対して、壁膜が好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部となるように選択するのがよい。
【0039】
上記製法で得られたマイクロカプセル分散液は、各種製剤としてそのまま用いてもよく、また、濾過・乾燥等により分散液から溶媒を除去して、マイクロカプセル固形剤として用いてもよい。その際、必要に応じてイオン交換水等により洗浄を施してもよい。さらに、マイクロカプセル固形剤を再び水系溶媒に分散させた分散液として用いてもよい。
【0040】
水系溶媒とは、水を含む溶媒を意味し、水単独であってもよく、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。水の種類は特に制限されず、蒸留水、純水、超純水、イオン交換水、水道水等のいずれも用いることができる。水と水混和性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、当該混合溶媒における水の割合は50容量%以上が好ましく、60容量%以上がより好ましく、70容量%以上がさらに好ましく、80容量%以上が特に好ましく、水のみを水系溶媒として用いるのが最も好ましい。
【0041】
水混和性有機溶媒としては、常温で水に混和できるものであれば特に制限されず、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール;テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトンなどのケトン;ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミドが挙げられる。
【0042】
本発明のマイクロカプセル分散液は、マイクロカプセルの含有量を0.026質量%に調製した場合の濁度が30度以上であることが好ましく、35度以上であることがより好ましく、40~300度であることがさらに好ましい。マイクロカプセル分散液の濁度が上記範囲にあることで、マイクロカプセルが溶媒中で均一に分散し、パラベンの抗菌性等の各種効果をムラなく発現させることができる。
【0043】
本発明のマイクロカプセル分散液は、マイクロカプセルの含有量を0.026質量%に調製し、25℃で7日間静置した後の[(静置前の濁度-静置後の濁度)/静置前の濁度]×100(%)で示される濁度減少率が50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。マイクロカプセル分散液の濁度減少率が上記範囲にあることで、長時間分散状態を保つことが可能である。
【0044】
本明細書において、「濁度」とは、JIS K 0101(工業用水試験方法)に準拠し、ホルマジン標準液を用いて測定した値のことを意味する。濁度は、例えばNanoDrop2000(ThermoFisherSCIENTIFIC製)等の分光光度計を用いることにより測定することができる。
【0045】
濁度の測定は、まず、ホルマジン標準液(400度)を所定の濃度に希釈した希釈液(20~400度)を調製し、各希釈液の吸光度(波長660nm)に基づく検量線を作成する。その後、マイクロカプセル分散液の吸光度(波長660nm)を測定し、上記検量線から濁度を算出する。なお、ホルマジン標準液(400度)は市販の物を用いることができる。
【0046】
本発明のマイクロカプセルを含む各種製剤は、必要によりその他の添加剤、例えば分散剤、界面活性剤、増粘剤、パラベン以外の防腐剤、比重調節剤等を含有することができる。
【0047】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性物、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアガムおよびアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0048】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0049】
増粘剤としては、例えばアルミニウムマグネシウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクトライト、乾式法シリカ等の鉱物質微粉末、アルミナゾルなどの水中で増粘効果のある物質が挙げられる。
【0050】
パラベン以外の防腐剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、サリチル酸誘導体などが挙げられる。
【0051】
比重調節剤としては、例えば硫酸ナトリウム等の水溶性塩類、グルコース等の多糖類、尿素等の水溶性肥料等が挙げられる。
【0052】
本発明のマイクロカプセルは、例えば抗菌剤、抗黴剤、殺虫剤、除草剤、防藻剤、害虫忌避剤等の各種製剤として使用され得る。
【0053】
上述した本発明のマイクロカプセルを含有する製剤は、スプレー剤、エアゾール剤、ポンプ剤、液剤、塗布剤、マット剤、シート剤、テープ剤、粉剤、顆粒剤、ゲル剤、クリーム剤、フィルム、容器、塗料等の剤型に調製することができる。
【0054】
本発明のマイクロカプセルを含有する製剤は、特に抗白癬菌剤として好適に使用される。
【0055】
対象となる白癬菌としては、例えばトリコフィトン トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン バイオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン ルブラム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン ベルコーズム(Trichophyton verrucosum)、ミクロスポルム カニス(Microsporum canis)およびミクロスポルム ジプセウム(Microsporum gypseum)が挙げられる。
【0056】
本発明のマイクロカプセルを含有する抗白癬菌剤は、白癬菌が生育可能な、もしくは白癬菌により汚染され得る被処理領域または被処理体にこれを適用し、白癬菌による汚染を防除することができる。
【0057】
被処理領域または被処理体としては、風呂場やリビング等の住環境、衣類や履物等の衣類など幅広い製品に適用することができる。具体的には、スーツ、ワイシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、スラックス、スカート、下着などの衣類;靴下、足袋、靴、ブーツ、サンダル、ゾウリ、スリッパ、インソール等の履物類;帽子、マフラー、手袋などの装身具;布団、ソファ、毛布、枕などの寝具;タオル、バスマット、玄関マット、カーペットなどの繊維・革靴製品;畳、タイル、床材、壁材、フローリングなどの建材等が挙げられる。
【0058】
本発明のマイクロカプセルを含有する抗白癬菌剤の被処理領域への適用手段としては、撒布、噴霧、塗布等の方法が挙げられ、被処理体への適用手段としては、混練、撒布、噴霧、塗布または含侵等の方法が挙げられる。
【0059】
本発明のマイクロカプセルは、特に繊維製品に付着させることが好ましい。
【0060】
本発明のマイクロカプセルを繊維材料へ付着させる方法としては、一般に繊維の加工方法として用いられている各種方法が適用可能であるが、中でもパディング法、スプレー法、コーティング法、浴中吸着・吸尽法が好ましく用いられる。さらに通常の生産工程を考慮した場合、繊維材料の形態が織物、編物など布帛の場合にはパディング法が好ましく、繊維材料が糸(カセ、チーズ、ビームを含む)やパンティーストッキング、タイツ等の形態の場合には浴中吸着・吸尽法が好ましく用いられる。また、均一な加工処理のために、マイクロカプセルの付与に先立ち、繊維材料の糊抜き、精練、漂白等の前処理を行うのが良い。
【0061】
繊維材料の種類は特に限定されるものではなく、合成繊維、再生繊維、天然繊維等、特に限定されることなく使用することができる。具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、ビニロン、塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、ジアセテート、トリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ、テンセル等の再生繊維、綿、麻、ケナフ、パルプ、羊毛、絹、等の天然繊維が挙げられる。またこれらを任意の割合で2種以上、混練、混繊、混紡、交編織して用いても良い。なお、かかる繊維の形態としては、織物、編物、不織布等、如何なる形態のものであってもよい。
【0062】
本発明のマイクロカプセルを含有する製剤は、特に防藻剤として好適に使用される。
【0063】
対象となる藻としては、藍植植物門、紅色植物門、クリプト植物門、褐色植物門、ミドリムシ植物門、プラシノ植物門および緑藻植物亜門に属する藻類(例えば、藍藻類、ミドリムシ藻類、緑藻類、珪藻類、プラシノ藻類などの綱に属する薬類)などであり、具体的には以下の藻類が挙げられる。
【0064】
オシラトリア・ラエテヴイレンス(Oscillatoria laetevirens)などのオシラトリア(Oscillatoria)属、ノストック・コミュン(Nostoc commune)などのネンジュモ(Nostoc)属などを含む藍藻類。ユーグレナグラシリス(Euglena gracilis)などのユーグレナ(Euglena)属などを含むミドリムシ藻類。
【0065】
クロレラ・ヴルガリス(Chlorella vulgaris)などのクロレラ(Chlorella)属、クラミドモナス・レインハルドティー(Chlamydomonas reinhardtii)などのクラミドモナス(Chlamydomonas)属、ウロスリックス・ヴァリアビリス(Ulothrix variabilis)などのウロスリックス(Ulothrix)属などを含む緑藻類。
【0066】
エオリムナ・ミニマ(Eolimna minima)などのエオリムナ(Eolimna)属、ゴンフォネマ・パルプルム(Gomphonema parvulum)などのゴンフォネマ(Gomphonema)属、タベラリア・フロキューサ(Tabellaria flocculosa)などのタペラリア(Tabellaria)属、メロシラ・グラニュラータ(Melosira granulata)などのメロシラ(Melosira)属を含む珪藻類。
【0067】
これらの中でも、オシラトリア(Oscillatoria)属、ネンジュモ(Nostoc)属、クロレラ(Chlorella)属、エオリムナ(Eolimna)属、ゴンフォネマ(Gomphonema)属が好適に防藻され、エオリムナ(Eolimna)属がより好適に防藻される。
【0068】
また、上記の藻類と共生または上記の藻類を餌とするヒドラ、イソギンチャク、サンゴなどの腔腸動物、フサケコムシ、ナギサコケムシ、チゴケムシ、ヒドラコケムシなどの触手動物、タテジマフジツボ、サンカクフジツボ、サラサフジツボ、アカフジツボ、ニボシガイ、ドロクダムシ、エビ、カニなどの節足動物、ウズマキゴカイ、カサネカンザシ、ウロコムシ、シリス、カンザシゴカイなどの環形動物、ムラサキイガイ、イガイ、マガキ、キヌマトイガイなどの軟体動物、シロボヤ、ユウレイボヤ、アカイタボヤなどの原索動物、ムラサキカイメン、サミイソカイメンなどの海綿類などにも有効である。
【0069】
本発明のマイクロカプセルを含有する防藻剤は、藻類が育成可能な被処理領域または被処理体に適用し、藻類を防徐または藻類の発生を予防することができる。
【0070】
被処理領域または被処理体としては、例えば、船舶(特に船底)、プール、水槽、漁網、海苔網、漁業用カゴ、釣り具、水中の岩礁、海中構造物、海水導入管、浮標等、住宅(特に外壁、屋根、厨房、洗面所、ベランダ、物置など)、植木鉢、プランター、育苗鉢の底部または周辺部、排水口の内側等が挙げられる。また、藻類の栄養源となり得る生物自体や該生物の周辺部に適用することができる。
【0071】
本発明のマイクロカプセルを含有する防藻剤の被処理領域への適用手段としては、撒布、噴霧、塗布等の方法が挙げられ、被処理体への適用手段としては、混練、撒布、噴霧、塗布または含侵等の方法が挙げられる。
【0072】
本発明のマイクロカプセルを含有する製剤は、特に害虫忌避剤として好適に使用される。
【0073】
対象となる害虫としては、例えばナメクジ、カタツムリ、マイマイ、ダニ、ゴキブリ、ハチ、ハエ、ハエ幼虫、蚊、アブ、ノミ、ムカデ、ナンキンムシ、サシバエ、イガ、ワラジムシ、アリ、シロアリ、ヨコバイ、コナジラミ、ヤスデ、ダンゴムシおよびコクヌストモドキが挙げられる。
【0074】
本発明のマイクロカプセルを含有する害虫忌避剤を被処理領域または被処理体に付与することによって害虫をその被処理領域または被処理体から忌避させることができる。また、害虫忌避剤を不織布、シート、無機担体等の担体に担持させ、害虫を忌避させたい場所にそれらを設置してもよい。
【0075】
被処理領域または被処理体としては、例えば、植木鉢やプランター、育苗鉢の底部または周辺部、該底部と土との間、排水口の内側、枯葉の下等が挙げられる。また、害虫の栄養源となり得る生物それ自体または該生物の周辺部も本発明における被処理領域または被処理体に含まれる。例えば、農作物自体やそれが栽培されている畑、果樹園、花卉等の生育している花壇等が挙げられる。
【0076】
また、屋内での被処理領域または被処理体としては、一般家庭や食堂等の厨房、洗面所、ベランダ、物置等が挙げられる。
【0077】
本発明のマイクロカプセルを含有する害虫忌避剤の被処理領域への付与方法としては、撒布、噴霧、塗布等の方法が挙げられ、被処理体への適用手段としては、混練、撒布、噴霧、塗布または含侵等の方法が挙げられる。
【実施例0078】
以下、実施例等により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0079】
実施例等において示した平均粒子径、抗白癬菌性および濁度は、以下に記載の方法で測定した。
<平均粒子径>
実施例で調整したマイクロカプセル分散液中のマイクロカプセルの平均粒子径(D50)を粒度分布計(日機装株式会社製 MT3200)を用いて測定した。
<抗白癬菌性>
実施例で製造したマイクロカプセル分散液(マイクロカプセル濃度26%)1.0mL、滅菌水9.0mLをサンプル管へ投入し、ボルテックスミキサーにて1分間撹拌し、10倍希釈液を作製した。同様の操作により、10倍希釈液(マイクロカプセル濃度0.026ppm)まで作製した。各試験対象白癬菌類に対し、96ウェルマイクロプレートの左から1列目~6列目のウェルに上から順に10倍ずつ濃度が薄くなっていくようにマイクロカプセル分散液もしくはマイクロカプセル分散希釈液を90μL入れた。また、他のウェルに滅菌水90μLのみを入れ、ブランクとした。
すべてのウェルへソイビーンカゼインダイジェスト(SCD)培地80μL、試験対象白癬菌類の懸濁液(2.5×10cfu/mL)10μLずつ加えた後、30℃で72時間培養した。培養後の白癬菌の生育を目視にて観察してブランクに白癬菌が発育したことを確認後、最小発育阻止濃度(MIC:μg/mL)を算出した。なお、最小発育阻止濃度は日本化学療法学会標準法(微量液体希釈法)に準じ、測定を実施した。
【0080】
用いた試験対象の白癬菌類を以下に示す。
〔試験対象の白癬菌類〕
白癬菌類1:Trichophyton mentagrophytes:トリコフィトン メンタグロフィテス NBRC-32409
白癬菌類2:Trichophyton rubrum:トリコフィトン ルブルム NBRC-9185
【0081】
<濁度>
ホルマジン標準液(濁度400度、富士フィルム和光純薬株式会社製)を、精製水を用いて2、4、8および16倍に希釈して、濁度200、100、50および25度の標準液をそれぞれ作製し、下記の吸光度測定機器を用いて各濁度の標準液の吸光度(測定波長:660nm)を測定し検量線式を作成した。
実施例で製造したマイクロカプセル分散液1μLと精製水999μLをサンプル管に投入し、ボルテックスミキサーにて30秒攪拌し、1000倍希釈液を作製した(マイクロカプセル0.026質量%)。その吸光度(測定波長:660nm)を測定し、作成した検量線式に当てはめて濁度を決定した。測定した試料は25℃で静置し、1日後、7日後に再度吸光度を測定して濁度を決定した。
吸光度測定機器:分光光度計NanoDrop2000(ThermoFisherSCIENTIFIC製)
【0082】
[マイクロカプセル分散液の製造]
[実施例1]
スターラー、温度計、還流冷却器および不活性ガス挿入物を装備した300mLフラスコ内に、ポリビニルアルコール0.6gおよび蒸留水120mLを加え、溶解するまで撹拌し、ポリビニルアルコール溶液を得た。そこへ、メタクリル酸メチル21g、メタクリル酸9g、過酸化ベンゾイル0.9g、プロピレングリコール17.5gおよび4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル18.8gからなる混合溶液を、500rpmで継続的に攪拌しながら加えた。引き続き攪拌しながら65℃で5時間加熱した後、懸濁液を室温まで冷却し、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセル分散液について、マイクロカプセルの平均粒子径、抗白癬菌性および濁度を測定した。結果を表1に示す。また、マイクロカプセル分散液の外観を図1に示す。
【0083】
[実施例2]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸ブチルに変更した以外は実施例1と同様にして4-ヒドロキシ安息香酸ブチルマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセル分散液について、マイクロカプセルの平均粒子径、抗白癬菌性および濁度を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例3]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルに変更した以外は実施例1と同様にして4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセル分散液について、マイクロカプセルの平均粒子径および濁度を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
精製水1mL、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル0.1gをサンプル管へ投入し、ボルテックスミキサーにて30秒攪拌したが、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルの結晶が沈降し、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルが分散した状態の液体は得られなかった。外観を図2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
本発明のマイクロカプセル分散液(実施例1~3)は、マイクロカプセルの平均粒子径が100~10000nmと小さく、また、時間経過による濁度の減少率が低いため、水中での分散性に優れていることが分かる。また、実施例1、2については、マイクロカプセル化した状態でも白癬菌類に対する抗菌効果を示すことが理解される。また、実施例3で得たマイクロカプセルは、特に害虫忌避剤としての使用に極めて有用である。
【0088】
マイクロカプセル粉体の取得
[実施例4]
実施例1と同様にして得られたマイクロカプセル分散液を濾過し、得られた固体を200mLのイオン交換水を用いて洗浄後、減圧下60℃で乾燥することにより、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルマイクロカプセル粉体28.3gを得た。
【0089】
[実施例5]
実施例2と同様にして得られたマイクロカプセル分散液を濾過し、得られた固体を200mLのイオン交換水を用いて洗浄後、減圧下60℃で乾燥することにより、4-ヒドロキシ安息香酸ブチルマイクロカプセル粉体27.4gを得た。
図1
図2