(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141947
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】バッテリ管理装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230928BHJP
H04L 12/40 20060101ALI20230928BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230928BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230928BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H04L12/40 Z
H02H7/18
H01M10/42 P
B60R16/023 P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048551
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
(72)【発明者】
【氏名】亀田 健太
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
5K032
【Fターム(参考)】
5G053AA16
5G053BA09
5G053CA01
5G053DA01
5G053EC01
5G053FA05
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA14
5G503GD05
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5K032AA05
5K032BA06
5K032DA01
5K032EA03
(57)【要約】
【課題】誤動作の発生を抑制し、安全性を確保できるバッテリ管理装置を提供すること。
【解決手段】バッテリ管理装置は、車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックのそれぞれとCAN通信を行うバッテリ管理装置であって、前記複数のバッテリパックから受信したCANIDが全て同一であるか否かを判定する判定部と、前記CANIDが全て同一である場合、前記車両の走行を禁止する制御部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックのそれぞれとCAN通信を行うバッテリ管理装置であって、
前記複数のバッテリパックから受信したCANIDが全て同一であるか否かを判定する判定部と、
前記CANIDが全て同一である場合、前記車両の走行を禁止する制御部と、を有する、
バッテリ管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記複数のバッテリパックのリレー接続を実行しないことにより、前記車両の走行を禁止する、
請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両の走行が禁止された旨の報知を行うように車載報知装置を制御する、
請求項1または2に記載のバッテリ管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記車両の走行を禁止した後で、前記複数のバッテリパックから新たに受信したCANIDが全て異なるものとなった場合に、前記車両の走行の禁止を解除する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のバッテリ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、複数のバッテリパックが並列に接続され、各バッテリパックに搭載されたBMS(Battery Management System)が上位のコントローラとCAN(Controller Area Network)通信を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、通信線(例えば、ハーネス)に断線が生じた場合、誤動作が発生するリスクがあった。
【0005】
本開示の一態様の目的は、誤動作の発生を抑制し、安全性を確保できるバッテリ管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るバッテリ管理装置は、車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックのそれぞれとCAN通信を行うバッテリ管理装置であって、前記複数のバッテリパックから受信したCANIDが全て同一であるか否かを判定する判定部と、前記CANIDが全て同一である場合、前記車両の走行を禁止する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、誤動作の発生を抑制し、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態に係るバッテリパックシステムの構成を示す模式図
【
図2】本開示の実施の形態に係るMBMSの構成を示すブロック図
【
図3】本開示の実施の形態に係るMBMSの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、本実施の形態に係るバッテリパックシステム1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、バッテリパックシステム1の構成例を示す模式図である。
【0011】
図1に示すバッテリパックシステム1は、車両(例えば、電気自動車)に搭載される。
【0012】
バッテリパックシステム1は、1つのMBMS(Master Battery Management System)10、複数のバッテリパック20、1つのVCU(Vehicle Control Unit)30を有する。
【0013】
複数のバッテリパック20は、並列に接続されている。各バッテリパック20には、PBMS(Pack Battery Management System)21が含まれる。なお、図示は省略するが、各バッテリパック20には、充放電可能な二次電池、高電圧リレー(例えば、正極側リレー、負極側リレー)、抵抗器、電圧計、電流計等も含まれる。各バッテリパック20は、交換可能である。
【0014】
VCU30は、自動車の全般的な制御を行うコンピュータである。
【0015】
MBMS10は、主に、各バッテリパック20の管理を行うコンピュータである。なお、MBMS10は、「バッテリ管理装置」の一例に相当する。
【0016】
PBMS21は、主に、バッテリパック20の状態を監視したり、高電圧リレーの駆動を制御したりするコンピュータである。バッテリパック20の状態としては、例えば、バッテリパック20内の電流、電圧、温度や、劣化度、充電量(SOC:State Of Charge)等が挙げられる。
【0017】
MBMS10と、VCU30、PBMS21のそれぞれとは、CAN(Controller Area Network)による通信を行う。
【0018】
PBMS21からMBMS10へ向けて送信される情報(例えば、バッテリパック20の状態を示す情報)には、CANIDが含まれる。CANIDは、PBMS21毎に異なるものが設定される。これにより、MBMS10は、受信した情報がどのPBMS21(バッテリパック20)から送信されたものであるかを認識できる。
【0019】
以上、バッテリパックシステム1の構成について説明した。
【0020】
次に、本実施の形態に係るMBMS10の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、MBMS10の構成例を示すブロック図である。
【0021】
図示は省略するが、MBMS10は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)等を有する。以下に説明する機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。
【0022】
図2に示すように、MBMS10は、判定部110および制御部120を有する。
【0023】
判定部110は、複数のバッテリパック20(具体的には、PBMS21)から受信したCANIDが全て同一であるか否かを判定する。
【0024】
制御部120は、受信したCANIDが全て同一である場合、車両の走行を禁止する。具体的には、制御部120は、全てのバッテリパック20のリレー接続を実行しないようにする。これにより、車両の走行が禁止される。
【0025】
また、制御部120は、車両の走行が禁止された旨の報知を行うように車載報知装置(図示略)を制御する。これにより、車両の乗員は、車両の走行が禁止された旨を容易に認識できる。なお、車載報知装置としては、例えば、車室内に設けられた計器類(メーターパネル)が挙げられ、報知の態様としては、車両の走行が禁止された旨を表すマーク(画像)の表示が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
また、制御部120は、車両の走行を禁止した後で、複数のバッテリパック20から新たに受信したCANIDが全て異なるものとなった場合に、車両の走行の禁止を解除する。また、制御部120は、車載報知装置における報知(例えば、上記マークの表示)を停止するように車載報知装置を制御する。
【0027】
以上、MBMS10の構成について説明した。
【0028】
次に、MBMS10の動作について、
図3を用いて説明する。
図3は、MBMS10の動作を示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すフローは、車両の起動中、繰り返し行われる。
【0030】
まず、判定部110は、複数のバッテリパック20から受信したCANIDが全て同一であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0031】
受信したCANIDが全て同一ではない場合(ステップS1:NO)、フローは、終了する。この場合、再び、ステップS1からフローが開始される。
【0032】
一方、受信したCANIDが全て同一である場合(ステップS1:YES)、制御部120は、車両の走行を禁止する(ステップS2)。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態のMBMS10は、車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックのそれぞれとCAN通信を行うバッテリ管理装置であって、複数のバッテリパックから受信したCANIDが全て同一であるか否かを判定する判定部110と、CANIDが全て同一である場合、車両の走行を禁止する制御部120と、を有することを特徴とする。
【0034】
例えば、各PBMS21は、自分自身が搭載されたバッテリパック20がバッテリパックシステム1に接続された際に、バッテリパック20のID(以下、パックIDという)を認識する機能を備えている。これを前提として、MBMS10とPBMS21との間の通信線(例えば、ハーネス等)に断線が生じた場合、パックIDの重複が生じ、それを元にCANIDの重複が発生するおそれがある。より具体的には、第1のバッテリパックと第2のバッテリパックとがある場合、通信線の断線により、第2のバッテリパックのPBMS21は、自身が設けられているバッテリパックのパックIDを第2のバッテリパックのパックIDではなく第1のバッテリパックのパックIDと誤認識し、その第1のバッテリパックのパックIDに対応するCANIDを使用してしまう。これにより、第1のバッテリパックからMBMS10へ送信される情報に含まれるCANIDと、第2のバッテリパックからMBMS10へ送信される情報に含まれるCANIDとが同一となり、MBMS10からは、第1のバッテリパックが2つ存在するように見えてしまう。その結果、誤動作のリスクがある。
【0035】
これに対し、本実施の形態のMBMS10では、上記特徴により、CANIDが全て同一である場合には、車両の走行を禁止するため、誤動作の発生を抑制し、安全性を確保できる。
【0036】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本開示のバッテリ管理装置は、通信線に断線が生じた際の対策技術として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 バッテリパックシステム
10 MBMS
20 バッテリパック
21 PBMS
30 VCU
110 判定部
120 制御部