(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141978
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法、音響反射影響の評価方法、及び音響反射影響の軽減システム
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20230928BHJP
H04R 29/00 20060101ALI20230928BHJP
H04R 1/44 20060101ALI20230928BHJP
H04B 11/00 20060101ALI20230928BHJP
H04B 17/15 20150101ALI20230928BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20230928BHJP
G01S 15/08 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
G10K11/16 150
H04R29/00 310
H04R29/00 320
H04R1/44 310
H04R1/44 320
H04B11/00 D
H04B17/15
H04B17/29
G01S15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048597
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】篠野 雅彦
【テーマコード(参考)】
5D061
5J083
【Fターム(参考)】
5D061BB40
5J083AC17
5J083AD04
(57)【要約】
【課題】水槽側面による音響反射影響を比較的簡便に軽減して水槽中での音響通信試験又は音響測位試験を行うことができる水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法、音響反射影響の評価方法、及び音響反射影響の軽減システムを提供すること。
【解決手段】水槽側面1Bの下部に設けた気泡発生装置10から供給される気泡41により、水槽側面1Bに沿った鉛直な気泡面40を形成させ、水槽側面1Bに沿った気泡面40の内側の水域で音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより水槽側面1Bによる音響反射影響を軽減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響を軽減する方法であって、水槽側面の下部に設けた気泡発生装置から供給される気泡により、前記水槽側面に沿った鉛直な気泡面を形成させ、前記水槽側面に沿った前記気泡面の内側の水域で前記音響通信試験又は前記音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより前記水槽側面による前記音響反射影響を軽減することを特徴とする水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法。
【請求項2】
前記気泡を前記水槽側面の下部に設けた前記気泡発生装置から離散的な気泡列として供給し前記気泡面を形成することを特徴とする請求項1に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法。
【請求項3】
前記気泡列の水平方向の間隔を前記音響通信試験又は前記音響測位試験に使用する音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法。
【請求項4】
前記音響通信試験又は前記音響測位試験のための送信波として、周波数10~30KHzの音波を用いたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法。
【請求項5】
前記気泡の直径を前記音響通信試験又は前記音響測位試験に用いる前記送信波の波長よりも小さく設定することを特徴とする請求項4に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法。
【請求項6】
前記水槽側面に突起物が設けられている場合に、前記突起物の下方に設けた前記気泡発生装置から供給される前記気泡により、前記突起物の前面又は前記突起物の突起端部に鉛直な前記気泡面を形成させ、前記水槽中の前記突起物を含まない前記水域で前記音響通信試験又は前記音響測位試験のための前記送信及び前記受信を行うことにより前記突起物による前記音響反射影響を軽減することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法。
【請求項7】
請求項6に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法における前記水槽側面に前記突起物が設けられている場合の評価方法であって、前記突起物の下方に設けた前記気泡発生装置から気泡を供給する場合と供給しない場合を比較することにより、前記突起物の前記前面又は前記突起物の前記突起端部に鉛直な前記気泡面を形成させた場合とさせない場合を比較し、前記水槽中において前記音響通信試験又は前記音響測位試験のための前記送信及び前記受信を行うことにより前記突起物による前記音響反射影響を評価することを特徴とする水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の評価方法。
【請求項8】
水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響を軽減するシステムであって、水槽側面に沿った鉛直な気泡面を形成させるための気泡を供給する前記水槽側面の下部に設けた気泡発生装置と、前記水槽側面に沿って形成される前記気泡面の内側の水域に設けた音響通信手段又は音響測位手段とを備え、前記音響通信手段又は前記音響測位手段で送信及び受信を行う際に前記気泡面で前記音響反射影響を軽減することを特徴とする水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システム。
【請求項9】
前記気泡発生装置が離散的な開口を有したホースにより構成され、前記開口から前記気泡を気泡列として供給することにより前記気泡面を形成することを特徴とする請求項8に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システム。
【請求項10】
離散的な前記開口の水平方向の間隔が、前記音響通信手段又は前記音響測位手段の音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定されていることを特徴とする請求項9に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システム。
【請求項11】
前記音響通信手段又は前記音響測位手段の送信波が周波数10~30KHzの音波であることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システム。
【請求項12】
前記開口の形状が、前記気泡の直径が前記音響通信試験又は前記音響測位試験に用いる前記送信波の波長よりも小さくなる形状に設定されていることを特徴とする請求項9又は請求項10を引用する請求項11に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システム。
【請求項13】
前記水槽側面に突起物が設けられている場合に、前記突起物の下方に前記気泡発生装置を設け、前記気泡発生装置から供給される前記気泡により、前記突起物の前面又は前記突起物の突起端部に鉛直な前記気泡面を形成させることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響を軽減する水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法、音響反射影響の評価方法、及び音響反射影響の軽減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋や湖沼等において、調査水域に調査船からAUV(自律型無人潜水機)を投入し、水底の鉱物資源やエネルギー資源等を調査する水底探査が行われているところ、調査船とAUVとの間での通信や測位に用いられる水中音響通信装置及び通信音響測位装置に関して、実水域ではなく、水槽で動作試験を行いたいという状況が多く存在している。
しかし、ほとんどの水槽は、音源から水槽壁面(水槽側面)までの距離が短く、その水槽壁面(境界面)がコンクリート等で形成されているため、水槽壁面での水中音響の反射の影響が大きく、水中音響通信装置及び通信音響測位装置の動作試験等を実施することが難しい。
ここで、特許文献1には、水槽の側面、底面に沿って適宜隙間を存してそれぞれ張られたアクリル樹脂側壁板、アクリル樹脂底壁板と、水槽のすきまにそれぞれ適宜間隔で縦横に配設された複数の気泡発生器とを具えた無響水槽が開示されている。
また、特許文献2には、液体を二重壁容器中に充填し、液体中に泡を存在せしめ、液体による遮音と泡による遮音および音の減衰作用とにより音の伝播を阻止する泡による防音方法が開示されている。
また、特許文献3には、実質的に貯水可能に構成された二重壁間に水を満し、壁の長手方向全域に亘って壁間下部に多数の気泡噴出口を列設配備して気泡膜を形成せしめて成る遮音壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-297865号公報
【特許文献2】特開昭52-145002号公報
【特許文献3】実願昭57-106084号(実開昭59-12196号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、水中音響の壁面反射を軽減する方法としては、スポンジ状物質等の吸音性に優れた物質を水槽壁面一面に敷設する方法や、音響反射を全反射から乱反射(散乱)に近づけるために、水槽壁面に波型構造等の微細な構造を施す方法が取られている。しかし、これらの方法では、壁面反射音対策が施された専用の水中音響試験水槽を設けることになるため、水中音響通信装置及び通信音響測位装置に関する動作試験等は、その専用の水中音響試験水槽で実施する必要があり、それ以外の水槽では実施することができない。さらに、この専用の水中音響試験水槽を、模型船の曳航試験など、他の試験でも用いることは困難である。
また、特許文献1の無響水槽は、アクリル樹脂板を水槽の側面等に沿ってすきまを存して張る必要があるため、アクリル樹脂板の設置及び撤去作業等が大掛かりなものとなる。また、水槽側面が複雑な構造であったり、水槽側面に装置や器具等が取り付けられたりしている場合は、アクリル樹脂板を水槽の側面に沿って張ることが困難である。
また、特許文献2の泡による防音方法、及び特許文献3の遮音壁は、水槽に適用しようとすれば、液体を充満した二重壁を水槽に設置する必要があるため、二重壁の設置及び撤去作業等が大掛かりなものとなる。また、水槽側面が複雑な構造であったり、水槽側面に装置や器具等が取り付けられたりしている場合は、二重壁を水槽の側面に沿って配置することが困難である。
そこで本発明は、水槽側面による音響反射影響を比較的簡便に軽減して水槽中での音響通信試験又は音響測位試験を行うことができる水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法、音響反射影響の評価方法、及び音響反射影響の軽減システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に対応した水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法においては、水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響を軽減する方法であって、水槽側面の下部に設けた気泡発生装置から供給される気泡により、水槽側面に沿った鉛直な気泡面を形成させ、水槽側面に沿った気泡面の内側の水域で音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより水槽側面による音響反射影響を軽減することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、水槽側面による音響反射影響を比較的簡便な方法で軽減することができる。このため、音響通信試験又は音響測位試験を専用の水中音響試験水槽ではなく一般的な水槽で行うことも可能となる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、気泡を水槽側面の下部に設けた気泡発生装置から離散的な気泡列として供給し気泡面を形成することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、気泡は上昇するに従い水平方向に揺らいで分布が適度に拡散して気泡列同士の間隔が狭まるため、連続的な気泡列として供給するよりも少ない気泡で十分に音響信号を吸収及び散乱させることができる。
【0007】
請求項3記載の本発明は、気泡列の水平方向の間隔を音響通信試験又は音響測位試験に使用する音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、気泡列の間隔を適切に設定することができる。
【0008】
請求項4記載の本発明は、音響通信試験又は音響測位試験のための送信波として、周波数10~30KHzの音波を用いたことを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、実機で用いられることの多い10~30KHzの周波数とすることで、試験を実際に近い条件で行うことができる。
【0009】
請求項5記載の本発明は、気泡の直径を音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さく設定することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、気泡による音響信号の吸収及び散乱をより十分なものとすることができる。
【0010】
請求項6記載の本発明は、水槽側面に突起物が設けられている場合に、突起物の下方に設けた気泡発生装置から供給される気泡により、突起物の前面又は突起物の突起端部に鉛直な気泡面を形成させ、水槽中の突起物を含まない水域で音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより突起物による音響反射影響を軽減することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、水槽側面の突起物による音響反射影響を軽減して音響通信試験又は音響測位試験を効率よく行うことができる。
【0011】
請求項7記載に対応した水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の評価方法においては、水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法における水槽側面に突起物が設けられている場合の評価方法であって、突起物の下方に設けた気泡発生装置から気泡を供給する場合と供給しない場合を比較することにより、突起物の前面又は突起物の突起端部に鉛直な気泡面を形成させた場合とさせない場合を比較し、水槽中において音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより突起物による音響反射影響を評価することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、突起物による音響反射影響を簡便に評価することができる。
【0012】
請求項8記載に対応した水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システムにおいては、水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響を軽減するシステムであって、水槽側面に沿った鉛直な気泡面を形成させるための気泡を供給する水槽側面の下部に設けた気泡発生装置と、水槽側面に沿って形成される気泡面の内側の水域に設けた音響通信手段又は音響測位手段とを備え、音響通信手段又は音響測位手段で送信及び受信を行う際に気泡面で音響反射影響を軽減することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、水槽側面による音響反射影響を比較的簡便な構成で軽減することができる。このため、音響通信試験又は音響測位試験を専用の水中音響試験水槽ではなく一般的な水槽で行うことも可能となる。
【0013】
請求項9記載の本発明は、気泡発生装置が離散的な開口を有したホースにより構成され、開口から気泡を気泡列として供給することにより気泡面を形成することを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、気泡は上昇するに従い水平方向に揺らいで分布が適度に拡散して気泡列同士の間隔が狭まるため、連続的な気泡列として供給するよりも少ない気泡で十分に音響信号を吸収及び散乱させることができる。
【0014】
請求項10記載の本発明は、離散的な開口の水平方向の間隔が、音響通信手段又は音響測位手段の音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定されていることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、開口の間隔、ひいては気泡列の間隔を適切に設定することができる。
【0015】
請求項11記載の本発明は、音響通信手段又は音響測位手段の送信波が周波数10~30KHzの音波であることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、実機で用いられることの多い10~30KHzの周波数とすることで、試験を実際に近い条件で行うことができる。
【0016】
請求項12記載の本発明は、開口の形状が、気泡の直径が音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さくなる形状に設定されていることを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、気泡による音響信号の吸収及び散乱をより十分なものとすることができる。
【0017】
請求項13記載の本発明は、水槽側面に突起物が設けられている場合に、突起物の下方に気泡発生装置を設け、気泡発生装置から供給される気泡により、突起物の前面又は突起物の突起端部に鉛直な気泡面を形成させることを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、水槽側面の突起物による音響反射影響を軽減して音響通信試験又は音響測位試験を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法によれば、水槽側面による音響反射影響を比較的簡便な方法で軽減することができる。このため、音響通信試験又は音響測位試験を専用の水中音響試験水槽ではなく一般的な水槽で行うことも可能となる。
【0019】
また、気泡を水槽側面の下部に設けた気泡発生装置から離散的な気泡列として供給し気泡面を形成する場合には、気泡は上昇するに従い水平方向に揺らいで分布が適度に拡散して気泡列同士の間隔が狭まるため、連続的な気泡列として供給するよりも少ない気泡で十分に音響信号を吸収及び散乱させることができる。
【0020】
また、気泡列の水平方向の間隔を音響通信試験又は音響測位試験に使用する音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定する場合には、気泡列の間隔を適切に設定することができる。
【0021】
また、音響通信試験又は音響測位試験のための送信波として、周波数10~30KHzの音波を用いた場合には、実機で用いられることの多い10~30KHzの周波数とすることで、試験を実際に近い条件で行うことができる。
【0022】
また、気泡の直径を音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さく設定する場合には、気泡による音響信号の吸収及び散乱をより十分なものとすることができる。
【0023】
また、水槽側面に突起物が設けられている場合に、突起物の下方に設けた気泡発生装置から供給される気泡により、突起物の前面又は突起物の突起端部に鉛直な気泡面を形成させ、水槽中の突起物を含まない水域で音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより突起物による音響反射影響を軽減する場合には、水槽側面の突起物による音響反射影響を軽減して音響通信試験又は音響測位試験を効率よく行うことができる。
【0024】
また、本発明の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の評価方法によれば、突起物による音響反射影響を簡便に評価することができる。
【0025】
また、本発明の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減システムによれば、水槽側面による音響反射影響を比較的簡便な構成で軽減することができる。このため、音響通信試験又は音響測位試験を専用の水中音響試験水槽ではなく一般的な水槽で行うことも可能となる。
【0026】
また、気泡発生装置が離散的な開口を有したホースにより構成され、開口から気泡を気泡列として供給することにより気泡面を形成する場合には、気泡は上昇するに従い水平方向に揺らいで分布が適度に拡散して気泡列同士の間隔が狭まるため、連続的な気泡列として供給するよりも少ない気泡で十分に音響信号を吸収及び散乱させることができる。
【0027】
また、離散的な開口の水平方向の間隔が、音響通信手段又は音響測位手段の音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定されている場合には、開口の間隔、ひいては気泡列の間隔を適切に設定することができる。
【0028】
また、音響通信手段又は音響測位手段の送信波が周波数10~30KHzの音波である場合には、実機で用いられることの多い10~30KHzの周波数とすることで、試験を実際に近い条件で行うことができる。
【0029】
また、開口の形状が、気泡の直径が音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さくなる形状に設定されている場合には、気泡による音響信号の吸収及び散乱をより十分なものとすることができる。
【0030】
また、水槽側面に突起物が設けられている場合に、突起物の下方に気泡発生装置を設け、気泡発生装置から供給される気泡により、突起物の前面又は突起物の突起端部に鉛直な気泡面を形成させる場合には、水槽側面の突起物による音響反射影響を軽減して音響通信試験又は音響測位試験を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態による音響反射影響の軽減システムが設けられた水槽にて音響通信試験又は音響測位試験を行う状態を示す図
【
図3】同水槽側面に突起物が設けられている場合の気泡面の形成を示す図
【
図4】同音響反射影響の軽減システムが設けられた水槽における音響通信試験又は音響測位試験で取得される信号の例を示す図
【
図5】比較例として音響反射影響の軽減システムが設けられていない水槽にて音響通信試験又は音響測位試験を行う状態を示す図
【
図6】同音響反射影響の軽減システムが設けられていない水槽における音響通信試験又は音響測位試験で取得される信号の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態による水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法、音響反射影響の評価方法、及び音響反射影響の軽減システムについて説明する。
図1は音響反射影響の軽減システムが設けられた水槽にて音響通信試験を行う状態を示す図である。
図2は気泡発生装置周辺を示す図であり、
図2(a)は正面図、
図2(b)は上面図、
図2(c)は側面図である。
水槽1は、上面視で矩形の底面1Aと、底面1Aに対して垂直に立設した計四面の水槽側面(内壁面)1Bを有し、水が張られている。底面1A及び水槽側面1Bはコンクリート製である。
水槽1には音響反射影響の軽減システムが設けられている。音響反射影響の軽減システムは、水槽1に貯留されている水に気泡41を発生させる気泡発生装置10と、水中にて音響通信を行う音響通信手段(水中音響通信機)20を備える。
なお、音響通信手段20の動作確認等を行う音響通信試験を実施する場合は、
図1のように音響通信手段20を水中に配するが、音響通信手段20に代えて音響測位手段(水中音響測位機)を水中に配することにより、音響測位手段の動作確認等を行う音響測位試験を実施することもできる。
【0033】
気泡発生装置10は、水槽側面1Bの下部に設けられている。気泡発生装置10は、水槽側面1Bに隣接し底面1Aに載置されたホース固定台11と、ホース固定台11の上面に固定されたホース12を有しており、ホース固定台11及びホース12は、水槽側面1Bの一方の端部側から他方の端部側へ水平に延びている。水槽1の外にはホース12へ圧縮空気等の気体を供給するコンプレッサー30が配置されており、コンプレッサー30とホース12は配管31で接続されている。
ホース12には、開口13が軸方向に複数設けられている。開口13の配列は離散的、すなわち開口13同士が近接せず所定距離をあけた配列となっている。開口13同士の間隔Lは一定であり、例えばL=50cmとする。
水槽1の底面1Aに配設されているホース12に対してコンプレッサー30から気体の送出が開始されると、その気体がホース12の開口13から水中へ噴出して気泡41が連続的に発生する。この気泡41が水面側へ上昇していくことにより、水槽側面1Bに沿った複数の気泡列42からなる鉛直な気泡面40が形成される。
なお、気泡面40は、気泡41が水中を遊動することにより厳密には鉛直とならないことも多いが、水槽側面1Bに沿って概ね鉛直方向に形成されていればよい。
【0034】
音響通信手段20は、送信機21と受信機22を有する。送信機21と受信機22は、水槽1の底面1Aからの高さ、換言すると深度が同じであり、送信機21から受信機22へ向けて水平方向に信号が送信される。
音響通信手段20の送信波は、周波数10KHz~30KHzの音波としている。実機で用いられることの多い10KHz~30KHzの周波数とすることで、試験を実際に近い条件で行うことができる。
【0035】
送信機21と受信機22は、水槽側面1Bに沿って形成される気泡面40よりも内側(水槽1の中央側)の水域に設ける。
送信機21から受信機22へ向けて送信された音響信号の一部は、受信機22で直接受信されずに受信機22よりも奥側に位置する水槽側面1Bへ向かうが、水槽側面1Bの直前には気泡面40が形成されているため、気泡面40に達した音響信号は気泡41によって吸収及び散乱される。これにより、音響信号が水槽側面1Bで反射することによる音響反射影響を軽減し、音響通信試験又は音響測位試験を実施しやすくなる。
なお、水槽側面1Bは計四面あるが、気泡発生装置10は、すべての水槽側面1Bの下部に設けるのではなく、送信機21から受信機22へ送信される音響信号の進行方向に位置する水槽側面1Bの下部と、その水槽側面1Bと向かい合う水槽側面1Bの下部だけに設けてもよい。
【0036】
上述のように、本実施形態においては気泡発生装置10が離散的な開口13を有したホース12により構成され、開口13から気泡41を気泡列42として供給することにより気泡面40が形成される。開口13が離散的に設けられていることにより、開口13同士が近接して連続的に設けられている場合と比べて気泡列42同士の間隔が大きくなるが、気泡41は上昇するに従って水平方向に揺らいで分布が適度に拡散し、気泡列42同士の間隔が狭まる。例えば、開口13同士の間隔Lが50cmであっても、水槽1の底面1Aから所定距離上方の位置においては、気泡列42同士の間隔は約数cmとなる。このため、離散的な開口13から供給される比較的量の少ない気泡41でも十分に音響信号を吸収及び散乱させることができる。
【0037】
離散的な開口13の軸方向の間隔L、すなわち水平に配設されているホース12における開口13の水平方向の間隔Lは、音響通信手段20の音の周波数と通信距離の少なくとも一方に基づいて設定することが好ましい。また、音響通信手段20に代えて音響測位手段を用いる場合は、当該間隔Lを音響測位手段の音の周波数と測位距離の少なくとも一方に基づいて設定することが好ましい。これにより、開口13の間隔L、ひいては気泡列42の間隔を適切に設定することができる。
また、気泡列42の間を通り抜けた音響信号は回折現象を起こし、気泡列42も揺らぐため水槽側面1Bからの反射は軽減され、さらに気泡列42の内側の水域に向う反射波も再び回折され反射影響がさらに軽減されるものと推定される。回折現象は、音響信号の波長(周波数)にも影響を受けるところ、気泡列42の間隔(開口13の間隔L)を音響信号の波長(周波数)に基づいて設定することが好ましく、気泡列42と水槽側面1Bの距離を適宜設定することが好ましい。
さらに、回折だけではなく散乱の効果も重なることが考えられる。開口13から供給された気泡列42はきちんと規則的に並んでいるわけではなく、気泡41は上昇中に水平方向に振動するという特性があり、位置分布のランダム性が増え、散乱の効果も増す。気泡41の直径が2~3mmで、音響の進行方法分解精度(音響の波長)が5~15cm、音響の進行方向と垂直面内分解精度(音響ヘッドの大きさ)が5~10cmであるため、水中音響に対して個々の気泡41は、十分小さな散乱体と考えてよい。
また、例えば、通信距離や測位距離が短い場合は、水槽1の一部で通信や測位が行われるため、水槽側面1Bと通信や測位が行われる位置との距離が大きく取れ、反射影響がはじめから低いため、開口13の間隔Lは大きくすることも可能である。
なお、音響通信手段20の音の周波数は、例えば、上述のように実機で用いられることの多い10KHz~30KHzの周波数とする。また、通信距離又は測位距離は、実際の使用距離を想定し、例えば3m~10mとする。
【0038】
開口13は、上面視で送信波の波長よりも小さい直径の正円形とするなど、水槽1へ供給する気泡41の直径が音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さくなる形状に設定されていることが好ましい。
気泡発生装置10から水槽1内の水に供給する気泡41の直径を、音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さく設定することで、気泡41による音響信号の吸収及び散乱をより十分なものとすることができる。
【0039】
図3は水槽側面に突起物が設けられている場合の気泡面の形成を示す図である。なお、コンプレッサー等の図示は省略している。
水槽側面1Bは、それ自体が突起物2の設けられた複雑な構造をしている場合がある。また、水槽側面1B自体は平面であっても、造波装置や昇降梯子等、複雑な形状の装置や器具等が取り付けられることにより、突起物2が設けられているのと同視し得る場合がある。
そのように突起物2が水槽側面1Bに設けられている場合は、
図3(a)に示すように開口13が突起物2の突起端部2Aの真下よりも少し水槽1の中央寄り、又は
図3(b)に示すように開口13が突起物2の突起端部2Aの真下よりも水槽側面1B寄りに位置するようにホース12を敷設することが好ましい。開口13を突起端部2Aの真下よりも少し水槽1の中央寄りに位置させた場合は、突起物2の前面に鉛直な気泡面40を形成させることができ、開口13を突起端部2Aの真下よりも水槽側面1B寄りに位置させた場合は、突起物2の突起端部2Aに鉛直な気泡面40を形成させることができる。なお、
図3(b)に示すように開口13を突起端部2Aの真下よりも水槽側面1B寄りに位置させた場合、鉛直な気泡面40は、開口13から突起物2の下面までと、突起物2の下面よりも上方とに形成され、上側の鉛直な気泡面40は下側の鉛直な気泡面40よりも水槽1の中央側に位置する。
このように、水槽側面1Bが複雑な構造をしている水槽1や、水槽側面1Bに装置又は器具等が取り付けられている水槽1であっても、突起物2の下方に気泡発生装置10を設け、気泡発生装置10から供給される気泡41により、突起物2の前面又は突起物2の突起端部2Aに鉛直な気泡面40を形成させることで、水槽側面1Bの突起物2による音響反射影響を軽減して音響通信試験又は音響測位試験を効率よく行うことができる。
【0040】
図4は
図1に示す音響反射影響の軽減システムが設けられた水槽における音響通信試験又は音響測位試験で取得される信号の例を示す図である。
また、
図5は比較例として音響反射影響の軽減システムが設けられていない水槽にて音響通信試験又は音響測位試験を行う状態を示す図、
図6は
図5に示す音響反射影響の軽減システムが設けられていない水槽における音響通信試験又は音響測位試験で取得される信号の例を示す図である。
図4及び
図6に示す信号例は、信号周波数を10KHz~30KHz、送信時間を1秒、通信距離を3m、送信機21又は受信機22から水槽側面1Bまでの距離を3m、水中音速vを1,500m/sと想定している。
【0041】
図5に示す比較例においては、水槽1に気泡発生装置10を備えていないため、水槽側面1Bに沿った鉛直な気泡面40は形成されない。
この水槽1において水中で送信機21から受信機22へ音波を送信した場合、水槽側面1Bにおける音響信号(水中音波)の反射角と入射角はほぼ等しい。
図6においては、比較例における、送信機21からの送信信号St(t)、水槽側面1Bで反射することなく受信機22に直接受信された直接受信信号S
1(t)、一方の水槽側面1Bで一回反射した後に受信機22で受信された1回反射受信信号S
2(t)、他方の水槽側面1Bで一回反射した後に受信機22で受信された1回反射受信信号S
3(t)、一方の水槽側面1Bで一回反射した後に他方の水槽側面1Bで一回反射して受信機22で受信された2回反射受信信号S
4(t)、受信機22における受信信号Sr(t)、並びに音響及び電気雑音Nrを示している。なお、S
0は送信機21からの送信信号である。
また、送信機21と受信機22との距離をL
1、送信機21と一方の水槽側面1Bとの距離をL
2、受信機22と他方の水槽側面1Bとの距離をL
3とすると、直接受信信号S
1(t)の伝播時間t
1はL
1/v、1回反射受信信号S
2(t)の伝播時間t
2は(L
1+2*L
2)/v、1回反射受信信号S
3(t)の伝播時間t
3は(L
1+2*L
3)/v、2回反射受信信号S
4(t)の伝播時間t
4は(L
1+2*L
2+2*L
3)/vとなる。
比較例のように気泡面40がない場合、受信信号Sr(t)に関して、SN比=Sr(t)/N
rは、最も高くなる。ただし、比較例における受信信号Sr(t)は、期待されている直接受信信号S
1(t)以外に、1回反射受信信号S
2(t)や、1回反射受信信号S
3(t)、2回反射受信信号S
4(t)等が合成されることで、信号が崩れて解読できなくなるという問題が生じる。
【0042】
一方、本発明を適用して気泡面40を形成する場合、水槽側面1Bの近傍においては気泡41による音響乱反射(散乱)が生じる。
図5においては、本発明における、送信機21からの送信信号St(t)、音響乱反射することなく受信機22に直接受信された直接受信信号S
1(t)、一方の水槽側面1Bに沿って形成された気泡面40により音響乱反射した後に受信機22で受信された1回散乱受信雑音N
2(t)、他方の水槽側面1Bに沿って形成された気泡面40により音響乱反射した後に受信機22で受信された1回散乱受信雑音N
3(t)、受信機22における受信信号Sr(t)、並びに散乱音響及び電気雑音N
r(t)を示している。なお、S
0は送信機21からの送信信号である。
また、送信機21と受信機22との距離をL
1、送信機21と一方の水槽側面1Bの直前に形成された鉛直な気泡面40との距離をL
2、受信機22と他方の水槽側面1Bの直前に形成された鉛直な気泡面40との距離をL
3とすると、直接受信信号S
1(t)の伝播時間t
1はL
1/v、1回散乱受信雑音N
2(t)の伝播時間t
2は(L
1+2*L
2)/v、1回散乱受信雑音N
3(t)の伝播時間t
3は(L
1+2*L
3)/vとなる。
【0043】
水槽側面1Bの直前に略鉛直の気泡面40を形成した場合は、上述のように壁面反射が気泡41による音響乱反射(散乱)となる。よって、比較例の場合の壁面反射角は一定であるのに対し、本発明の場合の散乱角はランダムである。これにより、水槽側面1Bの近傍での1回散乱による受信信号への影響は、水槽側面1Bの全ての場所が少しずつ寄与することになる。この場合、散乱場所によって経路長(例:L1+2*L2)が少しずつ異なるため、1回散乱の受信信号は、位相が少しずつ異なった信号の合成波となり、雑音として取り扱うことが可能になる。ただし、散乱音響及び電気雑音Nr(t)=N2(t)+N3(t)+…+Nrより、雑音レベルは増加する。このため、SN比=Sr(t)/Nrは、気泡面40が形成されていない場合に比べて低くなる。
しかしながら、通常、音響通信手段20及び音響測位手段は、距離1km程度以上の使用距離を想定しており、一方の水槽側面1Bから他方の水槽側面1Bまでの距離が10m程度の水槽試験では十分なSN比を確保できる。このため、SN比の低下は、水槽1を用いた音響通信試験及び音響測位試験に大きな影響を与えないと考えられる。
なお、気泡41が水槽1の中央部にも拡散し、送信機21と受信機22の間に位置すると、直接受信信号S1(t)を散乱することになるため、音響通信試験及び音響測位試験に影響を及ぼす。このため、中央部に気泡41が拡散しないように充分に広い水槽1を使用することが好ましいが、充分に広い水槽1を使用できない場合でも、中央部に気泡41が拡散して直接受信信号S1(t)に散乱の影響が出始めたら一旦試験を中断し、中央部に拡散した気泡41がさらに上昇して水面に到達するのを待って試験を再開する等の対処も可能である。
【0044】
以上説明したように、音響反射影響の軽減システムにおいては、水槽側面1Bの近傍に形成される気泡面40の気泡41の働きによって水槽側面1Bでの反射音が吸収及び散乱されるため、音響通信手段20等を用いた音響通信試験又は音響測位試験の際に、水槽側面1Bでの水中音響の反射の影響(音響反射影響)を軽減することができる。
また、気泡発生装置10のホース12を水槽1の底面1Aに設置して開口13から気体を噴出するだけで、気泡41は鉛直方向に移動し、水槽側面1Bを全深度において覆うことができるため、水槽側面1Bが複雑な構造をしていたり、水槽側面1Bに造波装置等が取り付けられていたりしても、気泡41の発生には問題がない。
また、気泡41は、自己変形によって発生した流体抵抗の不均一のために、上昇中に水平方向に揺らぐ。この性質により、気泡41の分布を適度に拡散させることができるため、開口13を間隔Lで配置することで発生量を少なくした気泡41でも十分に音響信号を散乱させることが可能となる。
【0045】
また、本発明による水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法は、例えば本発明による音響反射影響の軽減システムを用いて行うことができる。
本発明の水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の軽減方法によれば、水槽側面1Bの下部に設けた気泡発生装置10から供給される気泡41により、水槽側面1Bに沿った鉛直な気泡面40を形成させ、水槽側面1Bに沿った気泡面40の内側の水域で音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより水槽側面1Bによる音響反射影響を軽減することで、音響通信試験又は音響測位試験を専用の水中音響試験水槽ではなく一般的な水槽で行うことが可能となる。
また、気泡41を水槽側面1Bの下部に設けた気泡発生装置10から離散的な気泡列42として供給し気泡面40を形成することで、気泡41は上昇するに従い水平方向に揺らいで分布が適度に拡散して気泡列42同士の間隔が狭まり、場合によっては異なる気泡列42の気泡41が混じることもあり得るため、連続的な気泡列42して供給するよりも少ない気泡41で十分に音響信号を吸収及び散乱させることができる。
また、気泡列42の水平方向の間隔を音響通信試験又は音響測位試験に使用する音の周波数、通信距離、及び測位距離の少なくとも1つに基づいて設定することで、気泡列42の間隔を適切に設定することができる。
また、音響通信試験又は音響測位試験のための送信波として、周波数10~30KHzの音波を用いることで、試験を実際に近い条件で行うことができる。
また、気泡41の直径を音響通信試験又は音響測位試験に用いる送信波の波長よりも小さく設定することで、気泡41による音響信号の吸収及び散乱をより十分なものとすることができる。
また、水槽側面1Bに突起物2が設けられている場合に、突起物2の下方に設けた気泡発生装置10から供給される気泡41により、突起物2の前面又は突起物2の突起端部2Aに鉛直な気泡面40を形成させ、水槽1中の突起物2を含まない水域で音響通信試験又は音響測位試験のための送信及び受信を行うことにより突起物2による音響反射影響を軽減することで、音響通信試験又は音響測位試験を効率よく行うことができる。
【0046】
また、本発明による水槽中での音響通信試験又は音響測位試験における音響反射影響の評価方法は、水槽側面1Bに突起物2が設けられている場合の評価方法である。
本評価方法は、突起物2の下方に設けた気泡発生装置10から気泡41を供給する状態、すなわち突起物2の前面又は突起物2の突起端部2Aに鉛直な気泡面40を形成させた状態で、水槽1において音響通信試験又は音響測位試験として送信機21による送信と受信機22による受信を行った場合の結果と、突起物2の下方に設けた気泡発生装置10から気泡41を供給しない状態、すなわち鉛直な気泡面40を形成させない状態で、水槽1において音響通信試験又は音響測位試験として送信機21による送信と受信機22による受信を行った場合の結果とを比較し、評価する。
これにより、突起物2による音響反射影響を簡便に評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
水面上の調査船と水底近傍のAUVの間で通信あるいは測位するための音響通信手段又は音響測位手段に関し、その動作試験などの音響通信試験又は音響測位試験を水槽で行いたい場合において、従来は大掛かりであった水槽側面での音響反射影響の軽減対策を、本発明を利用することで比較的簡便に実現することができる。
また、音響通信試験又は音響測位試験を水槽で行う場合、従来は壁面反射音対策が施された専用の水中音響試験水槽で実施する必要があったが、本発明を利用すれば、通常の水槽に気泡発生装置等を設置するだけで容易に音響通信試験又は音響測位試験を行うことができる。さらに、気泡発生を止めれば気泡発生装置を設置する前の元の水槽状態へ復旧できるため、模型船の曳航試験等、他の水槽試験への影響も少ないなど、利便性が向上する。
【符号の説明】
【0048】
1 水槽
2 突起物
2A 突起端部
1B 水槽側面
10 気泡発生装置
12 ホース
13 開口
20 音響通信手段
40 気泡面
41 気泡
42 気泡列