(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141981
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G08G1/09 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048605
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 宗彦
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181MC18
(57)【要約】
【課題】車両の運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することが可能な、交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムを提供する。
【解決手段】交通設備の視認性判定装置は、交通設備情報取得部と3次元地図情報取得部と視認性判定部とを備える。交通設備情報取得部は、所定の交通設備の位置情報を取得する。3次元地図情報取得部は、交通設備および交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である第1判定対象区間を含むエリア内にある物体の形状情報および位置情報を示す3次元地図情報を取得する。視認性判定部は、第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに、車両の運転手の視点の位置から交通設備までの直線に基づいて特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を、交通設備の視認性が低い位置と判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の交通設備の位置情報を取得する交通設備情報取得部と、
前記交通設備および前記交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である第1判定対象区間を含むエリア内にある物体の形状情報および位置情報を示す3次元地図情報を取得する3次元地図情報取得部と、
前記交通設備情報取得部で取得した前記交通設備の位置情報および前記3次元地図情報取得部で取得した3次元地図情報に基づいて、前記第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに、車両の運転手の視点の位置から前記交通設備までの直線に基づいて特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する視認性判定部と、を備えた交通設備の視認性判定装置。
【請求項2】
前記3次元地図情報取得部で取得した3次元地図情報から、車両の運転手の視点の高さから前記交通設備の高さまでの間の情報を取得し、取得した情報に基づいて地面に水平な2次元地図情報を生成する2次元地図情報生成部と、
前記2次元地図情報生成部で生成した2次元地図情報に基づいて、前記第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに前記交通設備までの直線に基づいて特定される第2判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を前記交通設備の視認性が低い可能性がある位置と判定し、判定した位置に基づいて前記交通設備の視認性が低い可能性がある第2判定対象区間を特定する視認性予測部とをさらに備え、
前記視認性判定部は、前記3次元地図情報取得部で取得した3次元地図情報に基づいて、前記第2判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を前記交通設備の視認性が低い位置と判定する、請求項1に記載の交通設備の視認性判定装置。
【請求項3】
コンピュータに、
所定の交通設備の位置情報を取得する機能と、
前記交通設備および前記交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である第1判定対象区間を含むエリア内にある物体の形状情報および位置情報を示す3次元地図情報を取得する機能と、
取得した前記交通設備の位置情報および前記3次元地図情報に基づいて、前記第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに、車両の運転手の視点の位置から前記交通設備までの直線に基づいて特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する機能と、を実行させる視認性判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路などの交通機関には、車両の運転に関する指示を示す信号機や標識などの交通設備がある。これらは、交通の安全を確保するとともに交通の流れを円滑にするために必要な設備であるため、該当する指示を認識すべき区間である指示認識区間を走行する車両の運転手から視認可能になるように設置される。
【0003】
しかし、これらの交通設備の設置から長期間が経過すると、設備近傍の樹木が伸びたり、周囲に新たな建築物が建設されたりすることで、指示認識区間内であっても対応する交通設備を視認できない、または視認し難い位置が発生する場合がある。
【0004】
このような位置の発生の有無を判定するため、車両に搭載したカメラ装置から進行方向を撮影した撮像情報を解析して信号機等の発光機の部分を検出し、発光面の角度の傾斜度合いに基づいて当該発光機の視認性を判定する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、運転手が認識すべき交通設備には発光機を有さない設備、例えば道路標識等もあり、これらの交通設備の視認性を判定するには作業員が道路や線路を移動しながら目視で確認しなければならず、多大な労力および時間を要するという問題があった。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、車両の運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することが可能な、交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る交通設備の視認性判定装置は、所定の交通設備の位置情報を取得する交通設備情報取得部と、前記交通設備および前記交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である第1判定対象区間を含むエリア内にある物体の形状情報および位置情報を示す3次元地図情報を取得する3次元地図情報取得部と、前記交通設備情報取得部で取得した前記交通設備の位置情報および前記3次元地図情報取得部で取得した3次元地図情報に基づいて、前記第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに、車両の運転手の視点の位置から前記交通設備までの直線に基づいて特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する視認性判定部とを備える。
【0009】
また前記視認性判定部は、前記3次元地図情報取得部で取得した3次元地図情報から、車両の運転手の視点の高さから前記交通設備の高さまでの間の情報を取得し、取得した情報に基づいて地面に水平な2次元地図情報を生成する2次元地図情報生成部と、前記2次元地図情報生成部で生成した2次元地図情報に基づいて、前記第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに前記交通設備までの直線に基づいて特定される第2判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を前記交通設備の視認性が低い可能性がある位置と判定し、判定した位置に基づいて前記交通設備の視認性が低い可能性がある第2判定対象区間を特定する視認性予測部とをさらに備え、前記視認性判定部は、前記3次元地図情報取得部で取得した3次元地図情報に基づいて、前記第2判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を前記交通設備の視認性が低い位置と判定してもよい。
【0010】
また本開示に係る交通設備の視認性判定プログラムは、コンピュータに、所定の交通設備の位置情報を取得する機能と、前記交通設備および前記交通設備の視認性の判定対象とする車両の走行区間である第1判定対象区間を含むエリア内にある物体の形状情報および位置情報を示す3次元地図情報を取得する機能と、取得した前記交通設備の位置情報および前記3次元地図情報に基づいて、前記第1判定対象区間内の車両が取り得る車両位置ごとに、車両の運転手の視点の位置から前記交通設備までの直線に基づいて特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、いずれかの物体があると判定した車両位置を、前記交通設備の視認性が低い位置と判定する機能とを実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の交通設備の視認性判定装置および交通設備の視認性判定プログラムによれば、車両の運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1および第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置に接続される装置を搭載した車両、および視認性判定装置が視認性判定対象とする区間を示した説明図である。
【
図2】第1および第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置を利用した視認性判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る交通設備の視認性判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る交通設備の視認性判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第1および第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置に接続される装置を搭載した車両が走行する際に通過する点を示す説明図である。
【
図6】第1および第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置が第1判定対象区間内の位置ごとに特定する第1判定対象エリアを示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る交通設備の視認性判定装置で表示された判定結果情報の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図9A】第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9B】第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置が第1判定対象区間内の位置ごとに特定する第2判定対象エリアを示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る交通設備の視認性判定装置で表示された第2判定対象区間および判定結果情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、第1および第2実施形態による交通設備の視認性判定装置を利用した視認性判定システムが、交通設備である信号機に対する所定の判定対象区間内からの視認性を判定する場合について説明する。
【0014】
《第1実施形態》
〈第1実施形態による視認性判定システムの構成〉
第1実施形態による交通設備の視認性判定装置を利用した視認性判定システムの構成について、
図1~3を参照して説明する。
図1は、本実施形態による視認性判定システムが視認性判定対象とする信号機SI、および信号機SIの視認性を判定する第1判定対象区間D1を示す図である。信号機SIは、道路Rの所定位置に設置された交通設備である。第1判定対象区間D1は、道路R内の位置PSから信号機SIの手前且つ近傍にある停止線L上の位置PEまでの点線で示す走行区間である。
【0015】
図2は、視認性判定システム1Aの構成を示すブロック図である。視認性判定システム1Aは、道路Rを走行する車両Cに設置された測距センサ11、位置情報取得装置12、および記録装置13と、記録装置13に通信接続可能に構成された3次元(3D)地図情報生成装置20と、3D地図情報生成装置20に接続された視認性判定装置30Aとを備える。
【0016】
測距センサ11は、例えば360°回転式のLiDAR(Light Detection And Ranging)で構成され、レーザ発振器と検出器の回転軸が車両Cの進行方向に合うように車両Cの前方に設置され、車両C周辺の物体までの距離を計測する。
【0017】
位置情報取得装置12は例えば、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System: GNSS)用の複数の衛星からのGNSS信号を受信して位置情報を算出することによって、車両Cの位置情報を取得する。GNSSは、一例としてGPS(Global Positioning System)である。
【0018】
記録装置13は、記録制御部131と、計測情報記録部132とを有する。記録制御部131は、車両Cが第1判定対象区間D1および信号機SIを含む区間内を走行する間、測距センサ11による計測情報と、位置情報取得装置12で取得された車両Cの位置情報とを同期をとって取得する。計測情報記録部132は、記録制御部131が取得した計測情報ごとに、対応する位置情報を計測位置情報として紐づけて計測情報記録部132に記録させる。
【0019】
3D地図情報生成装置20は、記録装置13と有線または無線で通信接続され、第1CPU21と、3D地図情報記憶部22とを有する。第1CPU21は、計測情報取得部211と、3D地図情報生成部212とを有する。計測情報取得部211は、記録装置13の計測情報記録部132に記録された計測情報を取得する。3D地図情報生成部212は、計測情報取得部211が取得した情報に基づいて、モービルマッピングシステムの技術を用いて第1判定対象区間D1および信号機SIを含むエリアに関する点群データによる3D地図情報を生成する。3D地図情報記憶部22は、3D地図情報生成部212で生成した3D地図情報を記憶する。
【0020】
図3は、視認性判定装置30Aの構成を示すブロック図である。視認性判定装置30Aは、信号機情報記憶部31と、第2CPU32Aと、表示部33とを有する。信号機情報記憶部31は、信号機SIの位置情報を記憶する。
【0021】
第2CPU32Aは、3D地図情報生成装置20と有線または無線で通信接続され、交通設備情報取得部としての信号機情報取得部321と、3D地図情報取得部322と、視認性判定部323と、判定結果情報生成部324とを有する。信号機情報取得部321は、信号機情報記憶部31に記憶された信号機SIの位置情報を取得する。3D地図情報取得部322は、3D地図情報生成装置20の3D地図情報記憶部22から第1判定対象区間D1を含むエリアの3D地図情報を取得する。
【0022】
視認性判定部323は、取得した信号機SIの位置情報および3D地図情報に基づいて、第1判定対象区間D1内の位置ごとに、車両の運転手の視点に対応する高さ位置から信号機SIまでの直線に基づく第1判定対象エリアを特定する。第1判定対象エリアの特定方法については、後述する。視認性判定部323は、各位置の第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定し、該当する第1判定対象エリア内にいずれかの物体があると判定した車両位置を、信号機SIの視認性が低い位置と判定する。
【0023】
判定結果情報生成部324は、視認性判定部323で判定された判定結果情報に関する表示情報を生成し、表示部33に表示させる。
【0024】
〈第1実施形態による視認性判定システムの動作〉
次に、本実施形態による視認性判定システム1Aが実行する処理について説明する。視認性判定システム1Aは、視認性判定処理を実行するにあたり、まず第1判定対象区間D1を含むエリアの3D地図情報を生成する。
【0025】
視認性判定システム1Aが実行する、第1判定対象区間D1を含むエリアの3D地図情報の生成処理について説明する。まず、測距センサ11がレーザ発振器と検出器を回転させて車両C周辺の物体までの距離を計測するとともに、位置情報取得装置12が車両Cの位置情報を取得しながら、車両Cが第1判定対象区間D1および信号機SIを含む区間を走行して計測処理を実行する。計測処理において、測距センサ11におけるレーザ発振器と検出器の回転速度は例えば1秒あたり10回転程度であり、車両Cの走行速度は例えば時速60km程度である。
【0026】
記録装置13では、記録制御部131が、測距センサ11による計測情報と位置情報取得装置12取得された位置情報とを同期をとって取得する。計測情報記録部132は、記録制御部131が取得した計測情報ごとに、対応する位置情報を計測位置情報として紐づけて計測情報記録部132に記憶させる。
【0027】
次に、3D地図情報生成装置20の計測情報取得部211が、記録装置13の計測情報記録部132に記録された計測情報を取得する。そして、3D地図情報生成部212が、計測情報取得部211が取得した情報に基づいて第1判定対象区間D1および信号機SIを含むエリアに関する点群データによる3D地図情報を生成する。具体的には3D地図情報生成部212は、計測情報取得部211で取得した計測情報と、当該計測情報に紐づけられている計測位置情報とを同一の座標系で認識する。そして3D地図情報生成部212は、モービルマッピングシステムの技術を用いて、第1判定対象区間D1および信号機SIを含むエリア内にある物体の形状情報および位置情報を示す3D地図情報を生成する。3D地図情報生成部212は、生成した3D地図情報を、3D地図情報記憶部22に記憶させる。
【0028】
次に、視認性判定装置30Aが、3D地図情報生成装置20で生成された3D地図情報を用いて信号機SIに対する第1判定対象区間D1からの視認性を判定する。
図4は、視認性判定装置30Aが信号機SIに対する第1判定対象区間D1からの視認性を判定する際に実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0029】
まず信号機情報取得部321が信号機情報記憶部31から信号機SIの位置情報を取得し、3D地図情報取得部322が3D地図情報記憶部22から第1判定対象区間D1および信号機SIを含むエリアに関する3D地図情報を取得する(S1)。
【0030】
次に、視認性判定部323が、最初の判定対象位置として、
図5に示す位置P1を特定する(S2)。位置P1は、第1判定対象区間D1の開始位置PSに車両Cがある場合の運転手の視点の位置である。次に、視認性判定部323は、位置P1に関する第1判定対象エリアPA1を特定する(S3)。第1判定対象エリアPA1は、
図6に示すように、判定対象位置P1と、信号機SIの外枠である長方形の各頂点E1、E2、E3、およびE4それぞれまでの直線EL1、EL2、EL3、およびEL4とで形成される四角錐で示される空間エリアである。
【0031】
視認性判定部323は、第1判定対象エリアPA1内にいずれかの物体に関する点群データがあるか否かを判定する。ここで、いずれかの物体に関する点群データがないと判定すると、視認性判定部323はこの第1判定対象エリアPA1内には障害物がないと判定する(S4の「NO」)。
【0032】
視認性判定部323は、第1判定対象エリアPA1内に障害物がないと判定すると、第1判定対象区間D1内のすべての位置に関する視認性判定処理が終了していないため(S5の「NO」)、ステップS2に戻る。以降、視認性判定部323は、位置PSから位置PEまでの第1判定対象区間D1内の所定距離間隔ごとの各車両位置における車両の運転手の視点の位置P2、P3・・・について、ステップS2~S5の処理を実行する。
【0033】
その際、ステップS4において、第1判定対象エリア内にいずれかの物体に関する点群データがあると判定すると、視認性判定部323は当該第1判定対象エリア内に障害物があると判定する(S4の「YES」)。視認性判定部323は、第1判定対象エリア内に障害物があると判定すると、対応する位置を、信号機SIの視認性が低い位置と判定する(S6)。
【0034】
第1判定対象区間D1内のすべての位置に関する視認性判定処理が終了すると(S5の「YES」)、判定結果情報生成部324は、判定結果情報に基づいて信号機SIの視認性が低い位置を示した表示情報を生成し、表示部33に表示させる(S7)。表示された表示情報の一例を、
図7に示す。
【0035】
図7の表示情報では、樹木Tにより信号機SIの視認性が低くなる位置として、道路R内の位置P10から位置P15までの間が示されている。
【0036】
以上の第1実施形態によれば、視認性判定装置は、視認性判定処理の対象区間を含むエリア内の3D地図情報を用いて、判定対象区間内にある車両の運転手の視点から信号機までの直線で示されるエリア内にいずれかの物体があるか否かを判定する。このように判定処理を行うことにより、視認性判定装置は、運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することができる。
【0037】
《第2実施形態》
〈第2実施形態による視認性判定システムの構成〉
第2実施形態による視認性判定システム1Bの構成は、
図2に示す視認性判定装置30Aに替えて視認性判定装置30Bを備える他は、第1実施形態で説明した視認性判定システム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態における視認性判定装置30Bの構成は、
図8に示すように、第2CPU32Bが2次元(2D)地図情報生成部325および視認性予測部326を有する他は、第1実施形態で説明した視認性判定装置30Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0039】
2D地図情報生成部325は、3D地図情報取得部322で取得した3D地図情報から、車両の運転手の視点の高さから信号機SIの上部の高さまでの間の情報を取得し、取得した情報に基づいて地面に水平な2D地図情報を生成する。
【0040】
視認性予測部326は、2D地図情報生成部325で生成した2D地図情報に基づいて、第1判定対象区間D1内の車両が取り得る車両位置ごとに信号機SIまでの直線に基づいて特定される第2判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定する。視認性予測部326は、第2判定対象エリア内にいずれかの物体があると判定した車両位置を、信号機SIの視認性が低い可能性がある位置と判定する。視認性予測部326は、所定距離内にある、信号機SIの視認性が低い可能性がある位置をクラスタリングし、クラスタリングした位置を含む第1判定対象区間D1内の最小区間を第2判定対象区間D2として特定する。
【0041】
視認性判定部323は、視認性予測部326で判定された第2判定対象区間D2内の位置ごとに、車両の運転手の視点に対応する高さ位置から信号機SIまでの直線に基づいて特定される第1判定対象エリア内にいずれかの物体があるか否かを判定する。視認性判定部323は、第1判定対象エリア内にいずれかの物体があると判定した位置を、信号機SIの視認性が低い位置と判定する。
【0042】
〈第2実施形態による視認性判定システムの動作〉
次に、本実施形態による視認性判定システム1Bにより実行される処理について、
図9Aおよび
図9Bのフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、第2CPU32Bの信号機情報取得部321が信号機情報記憶部31から信号機SIの位置情報を取得し、3D地図情報取得部322が3D地図情報記憶部22から第1判定対象区間D1を含むエリアに関する3D地図情報を取得する(S11)。これらの情報を取得すると、第2CPU32Bは、視認性予測処理を開始する。
【0044】
視認性予測処理が開始すると、まず2D地図情報生成部325が、3D地図情報取得部322で取得した3D地図情報から、車両の運転手の視点の高さから信号機SIの上部の高さまでの間の情報を取得する。2D地図情報生成部325は、取得した情報に基づいて地面に水平な2D地図情報を生成する(S12)。
【0045】
次に、視認性予測部326が、2D地図情報生成部325で生成した2D地図情報に基づいて、最初の判定対象位置として、
図5に示す位置P1を特定する(S13)。次に視認性予測部326は、位置P1に関する第2判定対象エリアPA2を特定する(S14)。第2判定対象エリアPA2は、
図10に示すように、判定対象位置P1と、2D地図情報内における信号機SIの左端E5までの直線EL5および右端E6までの直線EL6とで形成される三角形で示されるエリアである。
【0046】
視認性予測部326は、第2判定対象エリアPA2内にいずれかの物体に関する点群データがあるか否かを判定する。ここで、いずれかの物体に関する点群データがないと判定すると、視認性予測部326はこの第2判定対象エリアPA2内には障害物がないと判定する(S15の「NO」)。
【0047】
視認性予測部326は、第2判定対象エリアPA2内に障害物がないと判定すると、第1判定対象区間D1内のすべての位置に関する視認性予測処理が終了していないため(S16の「NO」)、ステップS13に戻る。以降、視認性予測部326は、位置PSから位置PEまでの第1判定対象区間D1内の所定距離間隔ごとの各位置における車両の運転手の視点の位置P2、P3・・・について、ステップS13~S16の処理を実行する。
【0048】
その際、ステップS15において、第2判定対象エリア内にいずれかの物体に関する点群データがあると判定すると、視認性予測部326は当該第2判定対象エリア内に障害物があると判定する(S15の「YES」)。視認性予測部326は、第2判定対象エリア内に障害物があると判定すると、対応する位置を、信号機SIの視認性が低い可能性がある位置と予測する(S17)。
【0049】
第1判定対象区間D1内のすべての位置に関する視認性予測処理が終了すると(S16の「YES」)、視認性予測部326は、2D地図情報内で所定距離内にある、信号機SIの視認性が低い可能性がある位置をクラスタリングする。そして視認性予測部326は、クラスタリングした位置を含む第1判定対象区間D1内の最小区間を、信号機SIの視認性が低い可能性がある第2判定対象区間D2として特定する(S18)。視認性予測部326が特定した第2判定対象区間D2の例を、
図11に示す。
【0050】
上述したステップS13~S17の処理は2D地図情報を用いて実行するため、第1実施形態において説明した3D地図情報を用いて実行するステップS2~S6の処理よりも、大幅に少ない処理負荷で実行することができる。
【0051】
その後、視認性判定部323が、第2判定対象区間D2内の所定距離間隔ごとの各位置について、第1実施形態で説明したステップS2~S6と同様の処理を実行して視認性判定処理を行う(S19~S23)。そして、第2判定対象区間D2内のすべての位置に関する視認性判定処理が終了すると(S22の「YES」)、判定結果情報生成部324は、判定結果情報に基づいて信号機SIの視認性が低い位置を示した表示情報を生成し、表示部33に表示させる(S24)。
図11では、樹木Tにより信号機SIの視認性が低くなる位置として、第2判定対象区間D2内の位置P10から位置P15までの間が示されている。
【0052】
以上の第2実施形態によれば、視認性判定装置は、視認性判定処理の第1判定対象区間を含むエリア内の2D地図情報を用いて信号機の視認性が低い可能性がある第2判定対象区間を特定する。そして視認性判定装置は、特定した第2判定対象区間に関し、3D地図情報を用いて詳細に視認性判定処理を行う。このように判定処理を行うことにより、視認性判定装置は少ない処理負荷で、運転手が運転中に視認すべき交通設備の視認性を簡易な処理で精度良く判定することができる。
【0053】
上述した実施形態では、交通設備が信号機の場合について説明したが、これには限定されず、道路標識等でもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、車両Cが道路を走行する車両であり、車両Cに設置した位置情報取得装置12がGPS等を用いて車両Cの位置情報を取得する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、車両が鉄道車両の場合は、車両の車軸の回転数に基づいてロータリエンコーダが線路上のキロ程としての位置を算出することで、車両の位置情報を取得してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、車両Cに設置した測距センサ11および位置情報取得装置12で取得した情報に基づいて3D地図情報生成装置20が3D地図情報を生成する場合について説明した。しかしこれには限定されず、ドローン等の飛行する移動体に測距センサおよび位置情報取得装置を設置し、これらで取得した情報に基づいて3D地図情報生成装置20が3D地図情報を生成してもよい。また、複数の車両または飛行体に設置された測距センサおよび位置情報取得装置で取得された情報を統合して、3D地図情報生成装置20が3D地図情報を生成してもよい。このように様々な移動体に設置した装置で取得した情報を用いることで、精度の高い3D地図情報を生成することができる。
【0056】
上述した視認性判定装置の機能構成をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータを視認性判定装置として機能させる視認性判定プログラムを構築することも可能である。
【0057】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0058】
本開示は、例えば持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B 視認性判定システム
11 測距センサ
12 位置情報取得装置
13 記録装置
20 3D地図情報生成装置
21 第1CPU
22 3D地図情報記憶部
30A、30B 視認性判定装置
31 信号機情報記憶部
32A、32B 第2CPU
33 表示部
131 記録制御部
132 計測情報記録部
211 計測情報取得部
212 3D地図情報生成部
321 信号機情報取得部
322 3D地図情報取得部
323 視認性判定部
324 判定結果情報生成部
325 2D地図情報生成部
326 視認性予測部