(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141992
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】厚さ測定方法及び厚さ測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/08 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01B21/08 101
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048626
(22)【出願日】2022-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】391052622
【氏名又は名称】株式会社都ローラー工業
(71)【出願人】
【識別番号】312008833
【氏名又は名称】町田 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】町田 成康
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA46
2F069BB20
2F069CC06
2F069DD15
2F069DD16
2F069DD19
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG62
2F069JJ04
2F069JJ19
2F069MM04
2F069MM32
2F069PP06
(57)【要約】
【課題】 シート材又はシート材表面の塗膜のうち、当該シート材の搬送方向に直交又は略直交する方向の厚さを、推定によることなく直接測定することのできる厚さ測定方法及び厚さ測定装置を提供する。
【解決手段】 本発明の厚さ測定方法は、測定手段をシート材の搬送方向と同方向にシート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させながら、測定手段によってシート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する方法である。本発明の厚さ測定装置は、測定手段と測定手段をシート材の搬送方向にシート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させる第一アクチュエータを備えたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材又はシート材表面の塗膜の厚さ測定方法において、
搬送中のシート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する測定手段を当該シート材の搬送方向と同方向に当該シート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させながら、当該測定手段によって当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する、
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の厚さ測定方法において、
測定手段をシート材の搬送方向と交差する方向に移動させながら当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する、
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項3】
請求項1記載の厚さ測定方法において、
測定手段をシート材の搬送方向と直交又は略直交する方向に移動させながら当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する、
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項4】
シート材又はシート材表面の塗膜の厚さ測定装置において、
測定手段と当該測定手段を前記シート材の搬送方向に当該シート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させる第一アクチュエータを備えた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の厚さ測定装置において、
第一アクチュエータをシート材の搬送方向と交差する方向に移動させる第二アクチュエータを備えた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項6】
請求項4記載の厚さ測定装置において、
第一アクチュエータをシート材の搬送方向と直交又は略直交する方向に移動させる第二アクチュエータを備えた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の厚さ測定装置において、
ベースを備え、
前記ベースの一面側に、測定手段、第一アクチュエータ及び第二アクチュエータが設けられ、
前記ベースの他面側に、前記測定手段、第一アクチュエータ及び第二アクチュエータによる振動を相殺又は減衰するカウンターユニットが設けられた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系フィルムに代表される樹脂製フィルムや各種金属箔(以下、これらをまとめて「シート材」という)又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する厚さ測定方法及び厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンや液晶TV等の電子機器、ハイブリッド車に搭載される電池の集電極板や燃料電池の電極等には、PETフィルムやTACフィルム等の樹脂製フィルムや、銅箔やアルミ箔等の金属箔が使用されている。
【0003】
この種のシート材では厚さの均一性が求められるため、製造工程において厚さ測定が行われる。従来、シート材の厚さを測定する方法として、センサをシート材の搬送方向に交差する方向に移動させながら、シート材の厚さの測定する方法(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の測定方法は、
図8に示すようなジグザグの測定点の測定値からシート材の厚さを推定する方法であり、シート材の搬送方向に直交又は略直交する方向における厚さを推定によることなく、直接測定することはできなかった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、シート材又はシート材表面の塗膜のうち、当該シート材の搬送方向に直交又は略直交する方向における厚さを、推定によることなく直接測定することのできる厚さ測定方法及び厚さ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[厚さ測定方法]
本発明の厚さ測定方法は、シート材又はシート材表面の塗膜の厚さ測定方法であって、搬送中のシート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する測定手段を当該シート材の搬送方向と同方向に当該シート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させながら、当該測定手段によって当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する方法である。
【0008】
[厚さ測定装置]
本発明の厚さ測定装置は、シート材又はシート材表面の塗膜の厚さ測定装置であって、測定手段と当該測定手段を前記シート材の搬送方向に当該シート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させる第一アクチュエータを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定手段をシート材の搬送方向と同方向に移動させながらシート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定するため、シート材又はシート材表面の塗膜のうち、当該シート材の搬送方向に直交又は略直交する方向における厚さを推定によることなく直接測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】(a)はTダイの一例を示す側面図、(b)はTダイの一例を示す正面図。
【
図5】(a)は本願における厚さ測定装置の動作説明図、(b)は本願における厚さ測定装置での測定軌跡の説明図。
【
図8】従来の厚さ測定装置での測定の軌跡の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。一例として
図1及び
図2に示すシート材製造装置は、樹脂製フィルム(シート材S)を製造するシート材製造装置である。
図1及び
図2において、11は押出し機、12はTダイ、13は冷却ロール、14はキャスティングロール、15は搬送ロール、16は厚さ測定装置、17は平行移動ユニット、18は巻取り装置である。ここに示す構成はシート材製造装置の主要な構成であり、シート材製造装置にはこれ以外の構成も含まれる。
【0012】
前記押出し機11は樹脂ペレットを溶融してTダイ12に押し出す装置であり、樹脂ペレットを溶融する溶融部と、樹脂ペレットを溶融部に誘導するホッパーを主要構成として備えている。
【0013】
前記Tダイ12は、押出し機11から押し出された溶融樹脂を幅方向に広げて吐出するものである。一例として
図3(a)(b)に示すTダイ12は、押出し機11から流入した溶融樹脂が流入する樹脂流入路12aと、樹脂流入路12aから流入した溶融樹脂を幅方向に分散するマニホールド12bと、マニホールド12bから流入した溶融樹脂を吐出するリップ12cを主要構成として備えている。Tダイ12内の溶融樹脂は図示しないヒータによって溶融状態が保たれるようにしてある。
【0014】
リップ12cは間隔をあけて対向配置された対向パーツで構成されている。各対向パーツは長手方向に沿って設けられた複数の分割パーツを備えている。各分割パーツには対向する分割パーツとの間隔を調整する間隔調整具12dが設けられている。間隔調整具12dは図示しないアクチュエータで動作するようにしてあり、アクチュエータの制御によって間隔調整具12dの両対向パーツの間隔(リップ間隔)を調整することで、シート材Sの厚さを調整できるようにしてある。ここで示すTダイ12の構成は一例であり、Tダイ12はこれ以外の構成であってもよい。
【0015】
前記冷却ロール13はTダイ12から供給された溶融樹脂を急冷して固化するロール、キャスティングロール14はシート材Sの温度を均一化しながらシート状に成形するロール、搬送ロール15はシート材Sを搬送するロール、巻取り装置18は成形されたシート材Sをロール状に巻き取る装置である。冷却ロール13やキャスティングロール14、搬送ロール15、巻取り装置18には既存のものを用いることができる。
【0016】
前記厚さ測定装置16は、巻取り装置18の手前(上流)で、製造過程にあるシート材Sの厚さを測定する装置である。一例として
図4に示す厚さ測定装置16は、ベース16aの上面側に設けられた交差方向アクチュエータ16bと、交差方向アクチュエータ16b上に設けられた搬送方向アクチュエータ16cと、搬送方向アクチュエータ16c上に設けられた測定手段16d~16hを備えている。
【0017】
前記ベース16aは、搬送方向アクチュエータ16cや交差方向アクチュエータ16b等を載せる平板状の台である。ベース16aの上面であって搬送方向後方側には、前記交差方向アクチュエータ16bがシート材Sの搬送方向に交差する方向に沿って取り付けられている。
【0018】
前記交差方向アクチュエータ16bは、搬送方向アクチュエータ16cを搬送方向に交差する方向に移動させるものである。交差方向アクチュエータ16bには、既存のリニアガイド等を用いることができる。この実施形態の交差方向アクチュエータ16bは、搬送方向に交差する向きに設けられた交差方向ガイド16iと、交差方向ガイド16iに沿って移動する交差方向スライダ16jを備えている。
【0019】
前記交差方向スライダ16jには、搬送方向アクチュエータ16c(具体的には、後述する搬送方向ガイド16k)が取り付けられている。交差方向スライダ16jは、図示しない駆動源によって交差方向ガイド16iに沿って往復移動できるようにしてある。
【0020】
前記搬送方向アクチュエータ16cは、測定手段16d~16hを搬送方向に移動させるものである。搬送方向アクチュエータ16cには、既存のリニアガイド等を用いることができる。この実施形態の搬送方向アクチュエータ16cは、搬送方向に沿って設けられた搬送方向ガイド16kと、搬送方向ガイド16kに沿って移動する搬送方向スライダ16mを備えている。前記搬送方向スライダ16mには、測定手段16d~16hを載置するための載置台16nが取り付けられている。
【0021】
前記測定手段16d~16hはシート材Sの厚さを測定するものである。測定手段16d~16hには、分光干渉膜厚計等の光学干渉を利用したセンサのほか、赤外線膜厚測定センサ等の赤外線センサ、変位センサ等の既存のセンサを用いることができる。シート材Sが不透明材料からなる場合、β線やX線等を利用したセンサ等を用いることもできる。
【0022】
この実施形態では、五つの測定手段16d~16hを用いる場合を一例としているが、測定手段16d~16hは五つより多くても少なくてもよい。この実施形態の五つの測定手段16d~16hは、交差方向に長い載置台16nの上面に、その長手方向に間隔をあけて設けられている。測定手段16d~16hの設置間隔に特に限定はないが、たとえば、100mm、150mm、200mm、250mm、300mm程度とすることができる。測定手段16d~16hはこれより広い間隔で設置することも、狭い間隔で設置することもできる。
【0023】
図5(b)に示すように、この実施形態では、仮想的にシート材Sをその幅方向に五つの領域に区分けした場合に、第一の測定手段16dでシート材Sの第一領域S1の厚さが、第二の測定手段16eでシート材Sの第二領域S2の厚さが、第三の測定手段16fでシート材Sの第三領域S3の厚さが、第四の測定手段16gでシート材Sの第四領域S4の厚さが、第五の測定手段16hでシート材Sの第五領域S5の厚さが測定されるようにしてある。
【0024】
前記厚さ測定装置16はこれだけでも成立するが、この実施形態では、ベース16aの下面側に、カウンターユニットとして、下部交差方向アクチュエータ16pと、下部搬送方向アクチュエータ16rと、カウンターウェイト16sが設けられている。カウンターユニットは、交差方向アクチュエータ16b、搬送方向アクチュエータ16c及び測定手段16d~16hの動作によって生じる振動を打ち消す又は減衰するための機構である。
【0025】
前記下部交差方向アクチュエータ16pはベース16aの上面側に設けられた交差方向アクチュエータ16bに相当するものであり、交差方向アクチュエータ16bと同様の下部交差方向ガイド16tと、下部交差方向ガイド16tに沿って移動する下部交差方向スライダ16uを備えたものを用いている。下部交差方向アクチュエータ16pは、交差方向アクチュエータ16bと点対称となる向き及び位置に設けられている。
【0026】
前記下部搬送方向アクチュエータ16rはベース16a上面側に設けられた搬送方向アクチュエータ16cに相当するものであり、搬送方向アクチュエータ16cと同様の下部搬送方向ガイド16vと、下部搬送方向ガイド16vに沿って移動する下部搬送方向スライダ16wを備えたものを用いている。下部搬送方向アクチュエータ16rは、搬送方向アクチュエータ16cと点対称になる向き及び位置に設けられている。
【0027】
この実施形態では、下部交差方向アクチュエータ16pや下部搬送方向アクチュエータ16rは、交差方向アクチュエータ16b、搬送方向アクチュエータ16cと点対称に配置する場合を一例としているが、アクチュエータの性能によっては、非対称の向き及び位置に設けることもできる。
【0028】
前記カウンターウェイト16sは、ベース16aの上面側に設けられた測定手段16d~16h及び載置台16nとのつり合いを取るものであり、測定手段16d~16h及び載置台16nの重さと同じ重さの重りを用いている。
【0029】
図5(a)に示すように、この実施形態の厚さ測定装置16は、交差方向アクチュエータ16bによって測定手段16d~16hを搬送方向と交差する方向に移動させるとともに、搬送方向アクチュエータ16cによって測定手段16d~16hを搬送方向に移動させながら、シート材Sの厚さを測定するようにしてある。測定手段16d~16hは搬送方向及び搬送方向に交差する方向のいずれか一方にのみ移動するようにすることもできる。
【0030】
測定手段16d~16hの搬送方向への搬送速度は、シート材Sの搬送方向への搬送速度と等速又は略等速とするのが好ましい。測定手段16d~16hの搬送方向への搬送速度を、シート材Sの搬送速度と等速又は略等速とした場合、測定手段16d~16hを交差方向に移動させながら測定したときの測定軌跡が、
図5(b)に示すようなシート材Sに直交又は略直交する軌跡になるため、シート材Sの測定漏れの範囲を最小限に抑えることができ、高精度の測定が可能である。
【0031】
前記平行移動ユニット17は、巻取り装置18の手前で、成形されたシート材Sをオシレート(揺動)してシート材Sの巻き取り厚を調整する装置である。一例として
図1に示す平行移動ユニット17は、回転体17aと、回転体17aに取り付けられたフレーム17bと、フレーム17bに上下方向に間隔開けて保持された二本のガイドロール17c、17dを備えている。
【0032】
この実施形態では、回転体17aとして、モータによって水平回転可能な回転体17a(ターンテーブル)を備えた駆動装置を用いている。回転体17aはモータによって正逆方向に回転するようにしてある。
【0033】
前記フレーム17bはガイドロール17c、17dを保持するものであり、前記回転体17aに取り付けられている。一例として
図1に示すフレーム17bは、回転体17aに固定された横材と横材の長手方向両端から立ち上がる縦材を備えた上向きコ字状の部材であり、対向する二枚の縦材間に二本のガイドロール17c、17dが上下方向に間隔をあけて設けられている。
【0034】
前記ガイドロール17c、17dは、シート材Sを巻取り装置18に向けて案内するロールである。この実施形態では、ガイドロール17c、17dとして、非接触の状態でシート材Sを案内できるロール、具体的には、外周面に複数のエア噴出孔を備えた円筒状ロールを用いている。
【0035】
図示は省略しているが、両ガイドロール17c、17dの一端側にはエア供給管が接続され、エア供給管が接続された図示しないエア供給装置からガイドロール17c、17d内にエアを供給できるようにしてある。ここに示すガイドロール17c、17dは一例であり、接触した状態でシート材Sを案内する既存のロール等、これ以外のものを用いることもできる。
【0036】
この実施形態の平行移動ユニット17は、シート材Sの搬送中に回転体17aが正逆方向に首振りするようにしてあり、巻取り装置18に巻き取られた際に、シート材Sの厚さムラに起因するゲージバンド(巻き取られた際に現れる凸状の帯)の発生を極力抑えられるようにしてある。
【0037】
この実施形態では、測定手段16d~16hでの測定結果に基づいて、Tダイ12や平行移動ユニット17が制御されるようにしてある。ここで説明する厚さ測定装置16及びTダイ12は一つの装置(リップ間隔制御装置)として機能し、厚さ測定装置16及び平行移動ユニット17は一つの装置(平行移動装置)として機能する。
【0038】
たとえば、測定手段16d~16hでの測定結果に基づいてTダイ12の制御を行う場合、測定手段16fによって
図5(b)の第三領域S3が他の部分に比べて厚いと測定された場合、Tダイ12のリップ12cのうち、第三領域S3に相当する部分のリップ12cの隙間を狭くし、それ以降にTダイ12から吐出されるシート材Sの第三領域S3に相当する部分の厚さがそれ以前よりも薄くなるようにすることができる。
【0039】
これとは反対に、測定手段16fによって第三領域S3が他の部分に比べて薄いと測定された場合、Tダイ12のリップ12cのうち、第三領域S3に相当する部分のリップ12cの隙間を広くし、それ以降にTダイ12から吐出されるシート材Sの第三領域S3に相当する部分の厚さがそれ以前よりも厚くなるようにすることができる。
【0040】
また、測定手段16d~16hでの測定結果に基づいて平行移動ユニット17の制御を行う場合、たとえば、測定手段16dによってシート材Sの厚さムラが検出された際に、回転体17aの回転(具体的には、回転速度や回転方向等)を変えて、巻き取り厚が均等になるように(ゲージバンドが発生しないように)制御することができる。
【0041】
シート材Sに厚さムラがある場合、巻取り装置18に巻き取られた際にゲージバンドが発生し、その部分に他の部分よりも大きな負荷がかかり、シート材Sにダメージを与えることがある。シート材Sへのダメージは製品不良の一因となるため、シート材Sは可能な限り厚さムラがないことが望まれる。
【0042】
この点、本実施形態のシート材製造装置ではシート材Sの厚さを高精度で測定できるため、Tダイ12のリップ12cや平行移動ユニット17を高精度で制御することができ、結果として厚さムラが少ないシート材Sを製造することができる。
【0043】
(動作)
次に、本実施形態のシート材製造装置の動作について説明する。この実施形態のシート材製造装置では、供給された樹脂ペレットが押出し機11で加熱溶融されてTダイ12に供給され、供給された溶融樹脂がTダイ12で幅方向に広げられて吐出される。Tダイ12から吐出された溶融樹脂は冷却ロール13で冷却されてシート状に成形され、キャスティングロール14で温度調節されたのち、縦横方向に引き延ばされながら搬送ロール15で先方に搬送されて巻取り装置18に巻き取られる。
【0044】
この実施形態では、前記シート材Sの製造過程において、厚さ測定装置16でシート材Sの厚さが測定される。具体的には、
図5(b)に示すように、第一の測定手段16dでシート材Sの第一領域S1の厚さが、第二の測定手段16eでシート材Sの第二領域S2の厚さが、第三の測定手段16fでシート材Sの第三領域S3の厚さが、第四の測定手段16gでシート材Sの第四領域S4の厚さが、第五の測定手段16hでシート材Sの第五領域S5の厚さが測定される。
【0045】
この実施形態では、厚さ測定装置16での測定結果に基づいてTダイ12のリップ12c及び平行移動ユニット17が制御される。測定結果に基づいてTダイ12のリップ間隔が制御されることで、シート材Sの製造過程においてシート材Sの厚さが調整され、測定結果に基づいて平行移動ユニット17、より具体的には、平行移動ユニット17の回転速度や回転方向が制御されることで、ゲージバンドが発生しにくくなる。
【0046】
(実施形態2)
本発明の実施形態の他例を、図面を参照して説明する。一例として
図6に示すコーターは、樹脂製フィルム(シート材S)の表面に塗膜を形成する装置であって、本願の厚さ測定装置30を実装したものである。
図6において、21は繰出し装置、22は巻取り装置、23は搬送ロール、24は圧胴ロール、25は塗液用容器、26はグラビアロール、27はブレード、28はタッチロール、29は乾燥炉、30は厚さ測定装置、31は平行移動ユニットである。
【0047】
前記繰出し装置21はロール状に巻かれたシート材Sを繰り出す装置であり、巻取り装置はシート材Sを巻き取る装置である。繰出し装置21及び巻取り装置22には、既存のものを用いることができる。繰出し装置21と巻取り装置22の間には、シート材Sを搬送するための複数本の搬送ロール23が配置されている。
【0048】
前記繰出し装置21の先方には、圧胴ロール24、塗液用容器25、グラビアロール26、ブレード27を備えた塗工手段が設けられている。塗工手段はシート材Sの表面に塗液を塗布するための手段である。圧胴ロール24、塗液用容器25、グラビアロール26、ブレード27には既存のものを用いることができる。
【0049】
ここで示す塗工手段は一例であり、塗工手段はこれ以外の構成とすることもできる。たとえば、
図7に示すように圧胴ロール24とスロットダイ32を塗工手段として用いることができる。スロットダイ32には既存のものを用いることができる。なお、
図7のその他の構成は
図6のコーターと同様であるため、同一の構成に同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
塗工手段の先方には、シート材Sに塗布された塗液を乾燥させて塗膜とするための乾燥炉29が設けられている。乾燥炉29には、既存のものを用いることができる。
【0051】
乾燥炉29の先方には、シート材Sの表面の塗膜の厚さを測定する厚さ測定装置30が設けられ、厚さ測定装置30の先方には、シート材Sを揺動する平行移動ユニット31が設けられている。
【0052】
厚さ測定装置30及び平行移動ユニット31の構成は、それぞれ、実施形態1の厚さ測定装置16及び平行移動ユニット17の構成と同様である。ただし、この実施形態の厚さ測定装置30は、その下側を通過するシート材Sの塗膜の厚さを測定できるように、実施形態1の厚さ測定装置16とは上下が逆になっている。
【0053】
この実施形態の塗工手段は、図示しない制御手段によって制御されるようにしてある。具体的には、厚さ測定装置30での測定によって得られる実測値に基づき、塗工手段や平行移動ユニット31を制御される。たとえば、厚さ測定装置30で測定された塗膜の厚さ(実測値)にムラがある場合、圧胴ロール24やグラビアロール26の角度や間隔、ブレード27の押圧力等が制御される。
【0054】
同様に、この実施形態の平行移動ユニット31も図示しない制御手段によって制御されるようにしてある。具体的には、厚さ測定装置30での測定によって得られる実測値に基づき、平行移動ユニット31の回転(具体的には、回転速度や回転方向等)を変えて、巻き取り厚が均等になるように(ゲージバンドが発生しないように)制御される。
【0055】
なお、この実施形態では、制御手段によって塗工手段と平行移動ユニット31の双方が制御される場合を一例としているが、塗工手段と平行移動ユニット31のいずれか一方のみが制御されるようにすることもできる。
【0056】
(動作)
図6に示すコーターでは、繰出し装置21から繰り出されたシート材Sが圧胴ロール24及びグラビアロール26の間を通過する際に、塗液用容器25内の塗液がグラビアロール26でピックアップされ、その塗液がシート材Sの表面に塗布(転写)される。
【0057】
塗液が塗布されたシート材Sは先方に搬送され、乾燥炉29を通過する。シート材Sの表面に塗布された塗液は、乾燥炉29内で乾燥し塗膜となる。
【0058】
乾燥炉29を通過したシート材Sは厚さ測定装置30の下側を通過し、当該厚さ測定装置30によってシート材Sの表面の塗膜の厚さが測定される。具体的には、厚さ測定装置30によって、シート材Sの表面の塗膜のうち、当該シート材Sの搬送方向に直交若しくは略直交する方向、又は、平行移動ユニット31若しくは塗工手段(具体的には、塗工手段を構成する圧胴ロール24やグラビアロール26)の長手方向と平行若しくは略平行な方向における厚さが測定される。
【0059】
塗膜の厚さの測定は、厚さ測定装置30(具体的には、厚さ測定装置30の測定手段)は、シート材Sの搬送方向と同方向に当該シート材Sの搬送速度と等速又は略等速で移動させながら行うのが好ましい。さらに好ましくは、厚さ測定装置30の測定手段を、シート材Sの搬送方向と直交又は略直交する方向に移動させながら塗膜の厚さの測定を行う。
【0060】
厚さ測定装置30によってシート材Sの表面の塗膜の厚さが測定されると、その測定値に基づいて、塗工手段と平行移動ユニット31の双方又はいずれか一方が制御される。塗工手段が制御される場合、その後に形成される塗膜の厚さが平滑化され、ゲージバンドの発生が抑制される。同様に、平行移動ユニット31が制御される場合、巻取り装置22での巻取りムラの発生が低減され、ゲージバンドの発生が抑制される。
【0061】
本実施形態のコーターには、ゲージバンドの発生を抑制できる以外の効果も期待できる。一般に、塗工された塗液の膜厚のバラツキは製造するシート材の品質低下につながると言われている。たとえば、光学系分野におけるシート材の製造においては、シート材の光透過性の向上を目的として光透過性機能を有する塗液をシート材の表面に塗工する。このとき、塗液の膜厚にバラツキが生じると、部分的に光の透過性が阻害されるおそれがある。
【0062】
このようなことが生じないよう、シート材の表面に塗布される塗膜には均一性が要求されるが、本願における厚さ測定装置30が実装されたコーターによれば、膜厚の測定精度が高く、塗工手段を従来のコーターよりも高精度で制御できるため、塗液の膜厚のバラツキが生じにくいという効果が期待できる。
【0063】
また、塗工用途によっては、シート材の一部に、極端に厚く塗液を塗布することが求められることがあり、この場合、塗液塗工の膜厚分布測定の度に製造ラインを停止して確認するのでは効率が悪いため、インラインで塗液の膜厚管理を行えることが望まれる。
【0064】
この点、本願の厚さ測定装置30を実装したコーターでは、シート材Sを搬送しながらその表面の塗液の膜厚を測定できる、言い換えれば、インラインで塗液の膜厚を測定できるため、インラインで塗液の膜厚管理が望まれるケースでも十分な効果が期待できる。
【0065】
(その他の実施形態)
前記実施形態1では、ベース16aの裏面側に、交差方向アクチュエータ16b、搬送方向アクチュエータ16c及び測定手段16d~16hの動作によって生じる振動を打ち消すため又は減衰するカウンターユニットが設けられた場合を一例としているが、カウンターユニットは必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することができる。前記実施形態2の場合も同様である。
【0066】
前記実施形態1では、厚さ測定装置16をシート材Sの下側(裏側)に配置し、シート材Sの厚さを下側から測定する場合を一例としているが、厚さ測定装置16をシート材Sの上側(表側)に配置し、シート材Sの厚さを上側から測定するような構成とすることもできる。前記実施形態2の場合も、塗膜の形成位置に応じて測定方向を設定することができる。
【0067】
前記実施形態1では、厚さ測定装置16の測定手段16d~16hとして、シート材Sを片面側から測定するものを用いる場合を一例としているが、厚さ測定装置16には、シート材Sの上側に配置される装置(たとえば発光部)とシート材Sの下側に配置される装置(たとえば受光部)を備えたものを用いることもできる。前記実施形態2の場合も同様である。
【0068】
前記実施形態1では、測定手段16d~16hをシート材Sの搬送方向に交差する方向に移動させながらシート材Sの厚さを測定する場合を一例としているが、測定手段の数を増やすことによって、測定手段を移動させなくてもシート材Sの幅方向全体の厚さを測定できる場合には、測定手段はシート材Sの搬送方向に交差する方向に移動させなくてもよい。前記実施形態2の場合も同様である。
【0069】
同様に、前記実施形態1の測定手段16d~16hよりも広範囲の測定が可能な一又は二以上の測定手段を用いることによって、測定手段を移動させなくてもシート材Sの幅方向全体の厚さを測定できる場合にも、測定手段はシート材Sの搬送方向に交差する方向に移動させなくてもよい。前記実施形態2の場合も同様である。
【0070】
前記実施形態1では、シート材Sが樹脂フィルムの場合を一例としているが、シート材Sには金属箔等の樹脂フィルム以外のものも含まれる。たとえば、シート材Sが金属箔の場合、Tダイ12は用いないため、金属箔の厚さの測定結果をTダイ12の制御に用いることはないが、金属箔の場合も平行移動ユニット17を用いることはあるため、この場合には、金属箔の厚さの測定結果に基づいて平行移動ユニット17、より具体的には、回転体17aの回転速度や回転方向等を制御することができる。前記実施形態2の場合も同様である。
【0071】
前記各実施形態の構成は一例であり、本発明はこれら実施形態の構成に限定されるものではない。本発明は所期の目的を達成できる範囲で、構成の省略や入れ替え、追加等の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本願における厚さ測定装置16は各種シート材製造装置に実装して利用することができ、厚さ測定装置16での測定結果は、Tダイ12のリップ間隔や平行移動ユニット17、塗工手段の制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
11 押出し機
12 Tダイ
12a 樹脂流入路
12b マニホールド
12c リップ
12d 間隔調整具
13 冷却ロール
14 キャスティングロール
15 搬送ロール
16 厚さ測定装置
16a ベース
16b 交差方向アクチュエータ
16c 搬送方向アクチュエータ
16d (第一の)測定手段
16e (第二の)測定手段
16f (第三の)測定手段
16g (第四の)測定手段
16h (第五の)測定手段
16i 交差方向ガイド
16j 交差方向スライダ
16k 搬送方向ガイド
16m 搬送方向スライダ
16n 載置台
16p 下部交差方向アクチュエータ
16r 下部搬送方向アクチュエータ
16s カウンターウェイト
16t 下部交差方向ガイド
16u 下部交差方向スライダ
16v 下部搬送方向ガイド
16w 下部搬送方向スライダ
17 平行移動ユニット
17a 回転体
17b フレーム
17c ガイドロール
17d ガイドロール
18 巻取り装置
21 繰出し装置
22 巻取り装置
23 搬送ロール
24 圧胴ロール
25 塗液用容器
26 グラビアロール
27 ブレード
28 タッチロール
29 乾燥炉
30 厚さ測定装置
31 平行移動ユニット
32 スロットダイ
S シート材
S1 第一領域
S2 第二領域
S3 第三領域
S4 第四領域
S5 第五領域
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを、厚さ測定装置を用いて測定する厚さ測定方法において、
前記厚さ測定装置は測定手段とカウンターユニットを備え、
前記測定手段を前記シート材の搬送方向と同方向に当該シート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させながら、当該測定手段によって当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定し、
前記シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する際に生じる振動を前記カウンターユニットによって相殺又は減衰する、
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の厚さ測定方法において、
測定手段をシート材の搬送方向と交差する方向に移動させながら当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する、
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項3】
請求項1記載の厚さ測定方法において、
測定手段をシート材の搬送方向と直交又は略直交する方向に移動させながら当該シート材又はシート材表面の塗膜の厚さを測定する、
ことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項4】
シート材又はシート材表面の塗膜の厚さ測定装置において、
シート材又はシート材の表面の塗膜の厚さを測定する測定手段と、
前記測定手段を移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータによる振動を相殺又は減衰するカウンターユニットを備えた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の厚さ測定装置において、
アクチュエータとして、測定手段を前記シート材の搬送方向に当該シート材の搬送速度と等速又は略等速で移動させる第一アクチュエータ及び第一アクチュエータをシート材の搬送方向と交差する方向に移動させる第二アクチュエータを備え、
前記測定手段、第一アクチュエータ及び第二アクチュエータがベースの一面側に設けられ、
前記ベースの他面側にカウンターユニットが設けられた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の厚さ測定装置において、
第二アクチュエータとして、第一アクチュエータをシート材の搬送方向と直交又は略直交する方向に移動させるアクチュエータを備えた、
ことを特徴とする厚さ測定装置。