(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142020
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】セグメント部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E21D 5/08 20060101AFI20230928BHJP
E21D 11/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E21D5/08
E21D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048673
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】蔦原 龍斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 諒
(72)【発明者】
【氏名】長屋 真宏
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB03
2D155KB04
(57)【要約】
【課題】直線形状のセグメントの寸法精度を容易に向上することができるセグメント部材の製造方法を提供する。
【解決手段】スキンプレート、一対の主桁、一対の継手板及び縦リブを型枠に固定する第1の工程と、型枠に固定されたスキンプレート、一対の主桁、一対の継手板及び縦リブを仮止め溶接してセグメント仮組体を製造する第2の工程と、セグメント仮組体を型枠から取り外す第3の工程と、セグメント仮組体を一対準備し、互いに背面合わせに固定する第4の工程と、スキンプレート、一対の主桁、一対の継手板及び縦リブを溶接する第5の工程とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びるスキンプレートと、前記スキンプレートの幅方向端部から立設する一対の主桁と、前記スキンプレートの長手方向の端部から立設する一対の継手板と、前記主桁を連結する縦リブとを有するセグメント部材の製造方法であって、
前記スキンプレート、一対の前記主桁、一対の前記継手板及び前記縦リブを型枠に固定する第1の工程と、
前記型枠に固定された前記スキンプレート、一対の前記主桁、一対の前記継手板及び前記縦リブを仮止め溶接してセグメント仮組体を製造する第2の工程と、
前記セグメント仮組体を前記型枠から取り外す第3の工程と、
前記セグメント仮組体を一対準備し、互いに背面合わせに固定する第4の工程と、
前記スキンプレート、一対の前記主桁、一対の前記継手板及び前記縦リブを溶接する第5の工程とを有することを特徴とするセグメント部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセグメント部材の製造方法において、
前記第4の工程は、前記セグメント仮組体の前記主桁同士を溶接することを特徴とするセグメント部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のセグメント部材の製造方法において、
前記第5の工程の後、前記セグメント仮組体の前記主桁同士の溶接を解除する工程を有することを特徴とするセグメント部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形立坑を構築する際に用いられる鋼製などのセグメント部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立坑、橋梁下部工及び橋梁補強などの地下構造物の施工方法として、鋼製のセグメント部材を用いて構築する方法が知られている。セグメント部材は、種々の形態が知られているが、例えば特許文献1に記載されているように、圧延鋼板を溶接することによって箱型に組み立てられ、スキンプレート、一対の主桁板、一対の継手板、縦リブなどを備えている。
【0003】
また、セグメント部材の製造に係る溶接に用いられる治具や溶接装置についても種々の形態が知られており、例えば特許文献2及び3に記載された治具や溶接装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-70475号公報
【特許文献2】特開平9-150264号公報
【特許文献3】特開2005-66639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のセグメント部材の製造方法は、円弧状のセグメント部材に関するものであり、矩形立坑を構築する直線形状のセグメント部材(以下、「S型セグメント」という)については、スキンプレートと主桁の直線部分の溶接の際に熱応力によって変形してしまい、所望の寸法精度を維持することが難しいという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、S型セグメント部材の溶接による変形を防止してセグメント部材の寸法精度を容易に向上することができるセグメント部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るセグメント部材の製造方法は、長手方向に延びるスキンプレートと、前記スキンプレートの幅方向端部から立設する一対の主桁と、前記スキンプレートの長手方向の端部から立設する一対の継手板と、前記主桁を連結する縦リブとを有するセグメント部材の製造方法であって、前記スキンプレート、一対の前記主桁、一対の前記継手板及び前記縦リブを型枠に固定する第1の工程と、前記型枠に固定された前記スキンプレート、一対の前記主桁、一対の前記継手板及び前記縦リブを仮止め溶接してセグメント仮組体を製造する第2の工程と、前記セグメント仮組体を前記型枠から取り外す第3の工程と、前記セグメント仮組体を一対準備し、互いに背面合わせに固定する第4の工程と、前記スキンプレート、一対の前記主桁、一対の前記継手板及び前記縦リブを溶接する第5の工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るセグメント部材の製造方法において、前記第4の工程は、前記セグメント仮組体の前記主桁同士を溶接すると好適である。
【0009】
また、本発明に係るセグメント部材の製造方法において、前記第5の工程の後、前記セグメント仮組体の前記主桁同士の溶接を解除する工程を有すると好適である。
【0010】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るセグメント部材の製造方法は、S型セグメント部材を溶接する際に、セグメント仮組体を互いに背面合わせに固定した状態で本溶接を行うので、互いのセグメント仮組体の熱応力による変形が相殺されて反りの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】矩形立坑を構築する際に用いられる直線形状のS型セグメント部材の構成を説明するための斜視図。
【
図3】矩形立坑を構築する際に用いられるL字形状のL型セグメント部材の構成を説明するための斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係るS型セグメントの製造方法を説明するための図であって、(a)は、セグメント仮組体の仮溶接の方法を説明する図であり、(b)は、セグメント仮組体の本溶接の方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、矩形立坑の概要を説明するための斜視図であり、
図2は、矩形立坑を構築する際に用いられる直線形状のS型セグメント部材の構成を説明するための斜視図であり、
図3は、矩形立坑を構築する際に用いられるL字形状のL型セグメント部材の構成を説明するための斜視図であり、
図4は、本発明の実施形態に係るS型セグメントの製造方法を説明するための図であって、(a)は、セグメント仮組体の仮溶接の方法を説明する図であり、(b)は、セグメント仮組体の本溶接の方法を説明する図である。
【0015】
図1から3に示すように、本実施形態に係るセグメント部材の製造方法によって製造されるセグメント部材は、
図2に示すS型セグメント2及び
図3に示すL型セグメント3を縦目地が上下で連続しないように重ね合わせて配置される矩形立坑1に好適に用いられる。
【0016】
矩形立坑1は、マンホールやエレベータの設置工事や歩道橋基礎工事などに用いられる土留め材であり、S型セグメント2及びL型セグメント3は、互いにボルトで接合されている。
【0017】
S型セグメント2は、圧延鋼板を溶接して箱型に組み合わされており、一枚板のスキンプレート11、スキンプレート11の長手方向に沿って溶接された一対の主桁12、一対の主桁12の長手方向端部に幅方向に沿って溶接された一対の継手板13および、一対の継手板13と略平行に所定の間隔で溶接された縦リブ14とを有している。
【0018】
また、主桁12及び継手板13には、所定の間隔で継手孔15が形成されており、隣り合うS型セグメント2又はL型セグメント3の当該継手孔15同士に図示しない棒状の継手部材を挿入することでS型セグメント2又はL型セグメント3同士を組み合わせている。
【0019】
L型セグメント3は、セグメント片としての一対のL側ピース21及びS側ピース22を互いに直角に溶接して構成されている。L側ピース21とS側ピース22の当接部には、コーナ部材23が取り付けられている。
【0020】
L側ピース21は、S型セグメント2と同様に、圧延鋼板を溶接して箱型に組み合わされており、一枚板のスキンプレート11、スキンプレート11の長手方向に沿って溶接された一対の主桁12、一対の主桁12の一方の長手方向端部に幅方向に沿って溶接された継手板13および、継手板13と略平行に所定の間隔で溶接された縦リブ14とを有している。なお、L側ピース21は、継手板13は、一方の長手方向端部に溶接され、他方の長手方向端部は、開放端となっている。
【0021】
S側ピース22は、L側ピース21と同様に圧延鋼板を溶接して箱型に組み合わされており、一枚板のスキンプレート11、スキンプレート11の長手方向に沿って溶接された一対の主桁12、一対の主桁12の一方の長手方向端部に幅方向に沿って溶接された継手板13および、継手板13と略平行に溶接された縦リブ14とを有している。なお、S側ピース21は、L側ピース21と同様に、継手板13は、一方の長手方向端部に溶接され、他方の長手方向端部は、開放端となっている。
【0022】
さらに、L側ピース21及びS側ピース22は、S型セグメント2と同様に、主桁12及び継手板13には、所定の間隔で継手孔15が形成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係るS型セグメント2の製造方法について説明を行う。まず、
図4(a)に示すように、型枠30にスキンプレート11,一対の主桁12,継手板13及び縦リブ14を配置する(第1の工程)。このとき、主桁12及び継手板13に形成された継手孔15を用いて型枠30内に位置決めされると好適である。
【0024】
次に、スキンプレート11,一対の主桁12,継手板13及び縦リブ14をスポット溶接等によって仮止め溶接してセグメント仮組体32を製造し(第2の工程)、型枠30からセグメント仮組体32を取り外す(第3の工程)。
【0025】
その後、
図4(b)に示すように、2つのセグメント仮組体32を互いに背面合わせとなるように配置し、固定部材31を取り付けて主桁12同士を固定する(第4の工程)。また、セグメント仮組体32の中央部分は、シャコ万などのクランプ部材33で固定すると好適である。固定部材31は、背面合わせにした一対のセグメント仮組体32を互いに固定することができれば、種々の構成を採用することができるが、例えば、圧延鋼板で構成された板状部材や棒材などが好適に用いられる。また、固定部材31の固定方法は、固定部材31を主桁12に溶接によって固定されると好適である。さらに、中央部分の固定方法は、セグメント仮組体32の幅が大きい場合には、クランプ部材33を用いずに固定部材31を溶接しても構わない。
【0026】
次に、固定部材31で一対のセグメント仮組体32を固定した状態で、スキンプレート11,一対の主桁12,継手板13及び縦リブ14を隅肉溶接等によって本溶接を行う(第5の工程)。このとき、溶接による熱応力によって、セグメント仮組体32が長手方向に反りが発生するが、一対のセグメント仮組体32が固定部材31で固定されているため、セグメント仮組体32が互いに反る力が相殺されて反りの発生を防止する。その後、固定部材31を取り外してS型セグメント2が製造される。
【0027】
このように、本実施形態に係るセグメント部材の製造方法によれば、熱応力によって生じた変形を背面合わせに固定したセグメント仮組体同士が相殺するので、溶接による変形を抑えたセグメント部材を製造することが可能となる。
【0028】
なお、以上の実施の形態では、主桁12に2カ所の固定部材31を取り付けた場合について説明を行ったが、固定部材31の数は、必要に応じて適宜増加させても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1 矩形立坑, 2 S型セグメント, 3 L型セグメント, 11 スキンプレート, 12 主桁, 13 継手板, 14 縦リブ, 15 継手孔, 21 L側ピース, 22 S側ピース, 23 コーナ部材, 30 型枠, 31 固定部材, 32 セグメント仮組体。