(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142040
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】キャップ及び容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/34 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B65D41/34 112
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048704
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA06
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084AB07
3E084CA01
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084DB03
3E084DB12
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB08
3E084KA13
3E084KB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】本発明に係るキャップ及び容器によれば、製造工程において視認用のブリッジを破断させずに閉栓作業することができる。
【解決手段】本発明に係るキャップ1は、容器口部に取り付けられ、回転するキャップ本体2と、上下方向Zにおいてキャップ本体2の下側Z2に備えられたバンド3と、を備え、バンド3は、キャップ本体2と接続する第一接続部38と、閉栓側R2の回転を許容し、係止突起部と当接して開栓側R1の回転を規制する係止爪部と、回転方向Rに沿って配列された第一バンド32及び第一バンド32よりも閉栓側R2に備えられた第二バンド33と、第一バンド32と第二バンド33とを連結する第一ブリッジ34と、を有し、第二バンド33は、キャップ本体2に向かって突出する突出部50を備え、第一ブリッジ34は、係止爪部が容器口部の係止突起部と当接して回転が規制されると破断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止突起部を備えた容器口部に取り付けられるキャップであって、
前記容器口部に螺合して回転方向に回転するキャップ本体と、
前記回転方向に垂直な上下方向において前記キャップ本体の下側に備えられたバンドと、
を備え、
前記バンドは、
前記キャップ本体と前記バンドとを接続する第一接続部と、
前記回転方向において閉栓側の回転を許容し、前記係止突起部と当接して前記閉栓側と反対方向の開栓側の回転を規制する係止爪部と、
前記回転方向に沿って配列された第一バンド及び前記第一バンドよりも前記閉栓側に備えられた第二バンドと、
前記第一バンドと前記第二バンドとを連結する第一ブリッジと、
を有し、
前記第二バンドは、前記上下方向において上側に前記キャップ本体に向かって突出する突出部を備え、
前記第一ブリッジは、前記係止爪部が前記係止突起部と当接して前記開栓側への回転が規制されると破断する、
キャップ。
【請求項2】
前記回転方向における前記突出部の幅は、前記第二バンドの幅の半分の長さよりも短い、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記上下方向における前記突出部の高さは、キャップ本体と前記バンドとの間に形成される隙間の半分の高さよりも高い
請求項1または請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記回転方向における前記第二バンドの長さは、前記第一バンドの長さよりも短く、
前記キャップは、
前記キャップ本体と前記第二バンドとを接続する第二接続部を備えている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記キャップは、前記バンドを二つ以上備えている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項6】
前記バンドは、
さらに前記第一バンドと前記第一ブリッジとの間に、前記上下方向の幅が前記第一ブリッジの幅より太く、前記第一バンドの幅より細い中間バンドを有し、
前記第一接続部は、前記中間バンドの前記上側に備えられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のキャップを備え、
前記上側に前記容器口部を有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水やお茶あるいは清涼飲料水などの飲料用容器として、PETボトルなどのボトル容器やスパウト付き紙パック容器など開閉が可能なものが広く使用されている。それらの飲料容器の口部には、いたずらなどによる不正開封を抑止するための機能を備えたキャップが取り付けられている。キャップは、口部の外ネジに螺合する内ネジを有するキャップ本体と、このキャップ本体の周壁の下部に環状で破断可能なブリッジを有する不正開封防止バンド(タンパーエビデンスバンド、以下TEバンド)とからなるものが多く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、バンドが2つに分割され、そのバンドの間に設けられたブリッジが破断することで、開栓したことを目視で確認可能なTEバンドを備えたキャップが知られている。また、特許文献2に示すように、バンドを4つに分割して、さらにブリッジを増やすことでより視認性を向上させたTEバンドを備えたキャップが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-103721号公報
【特許文献2】特開2021-109667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のようなTEバンドを有するキャップは、製造工程の中で、容器に対して最初にキャップを取り付けるためキャップを閉栓側へ回転させる(キャッピング作業)際に、間に設けられたブリッジが破断してしまう恐れがあった。
【0006】
特に、特許文献2に示すようなTEバンドを有するキャップは、多数のブリッジを備えるため、1つあたりのバンドの長さがさらに短い。例えば、
図14(a)に示すように、特許文献2のようなキャップ1Aの有するバンド3Aのうちの1つの短バンド33Aは、キャップ本体2Aと接続部39Aによって接続されている。キャッピング作業時にキャップ1Aが回転すると、開閉方向においてキャップ本体2Aと接続部39Aと反対側の短バンド33Aの端部33Apが上下方向に振動する。すると、
図14(b)に示すように、ブリッジ34Aに上下方向に加えられた力によってバンド同士を接続していたブリッジ34Aが変形してしまう。そのため、
図14(c)のように、消費者がキャップ本体2Aを把持して容器から取り外す前の製造段階でブリッジ34Aが破断してしまう恐れがあった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、製造工程において視認用のブリッジを破断させずに閉栓作業することができるキャップ及び容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るキャップは、係止突起部を備えた容器口部に取り付けられるキャップであって、前記容器口部に螺合して回転方向に回転するキャップ本体と、前記回転方向に垂直な上下方向において前記キャップ本体の下側に備えられたバンドと、を備え、前記バンドは、前記キャップ本体と前記バンドとを接続する第一接続部と、前記回転方向において閉栓側の回転を許容し、前記係止突起部と当接して前記閉栓側と反対方向の開栓側の回転を規制する係止爪部と、前記回転方向に沿って配列された第一バンド及び前記第一バンドよりも前記閉栓側に備えられた第二バンドと、前記第一バンドと前記第二バンドとを連結する第一ブリッジと、を有し、前記第二バンドは、前記上下方向において上側に前記キャップ本体に向かって突出する突出部を備え、前記第一ブリッジは、前記係止爪部が前記係止突起部と当接して前記開栓側への回転が規制されると破断する。
【0009】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様に係るキャップは、前記回転方向における前記突出部の幅は、前記二バンドの幅の半分の長さよりも短い。
【0010】
本発明の第三の態様によれば、第一の態様または第二の態様に係るキャップは、前記上下方向における前記突出部の幅は、キャップ本体と前記バンドとの間に形成される隙間の半分の高さよりも高い。
【0011】
本発明の第四の態様によれば、第一の態様から第三の態様のいずれか一つに係るキャップは、前記回転方向における前記第二バンドの長さは、前記第一バンドの長さよりも短く、前記キャップは、前記キャップ本体と前記第二バンドとを接続する第二接続部を備えている。
【0012】
本発明の第五の態様によれば、第一の態様から第四の態様のいずれか一つに係るキャップは、前記バンドを二つ以上備えている。
【0013】
本発明の第六の態様によれば、第一の態様から第五の態様のいずれか一つに係るキャップは、前記バンドは、さらに前記第一バンドと前記第一ブリッジとの間に、前記上下方向の幅が前記第一ブリッジの幅より太く、前記第一バンドの幅より細い中間バンドを有し、前記第一接続部は、前記中間バンドの前記上側に備えられる。
【0014】
本発明の第七の態様に係る容器は、第一の態様から第六の態様のいずれか一つに係るキャップを備え、前記上側に前記容器口部を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るキャップ及び容器によれば、製造工程において視認用のブリッジを破断させずに閉栓作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャップを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のキャップを模式的に示す側面図である。
【
図3】
図1のキャップを上下方向の上側から見た状態を示す図である。
【
図4】
図1のキャップ未開栓時のバンドと容器口部を示す断面図である。
【
図5】
図1のI-I断面に沿う、
図1のキャップを模式的に示す断面図である。
【
図6】
図1のキャップのバンドを模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図1のキャップのバンドを模式的に示す側面図である。
【
図8】
図1のキャップのバンドを上下方向の下側から見た状態を示す図である。
【
図9】
図1のキャップのバンドを上下方向の上側から見た状態を示す図である。
【
図10】
図1のキャップのバンドの折れ曲がり部を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図1のキャップ未開栓時のバンドの第一接続部、第一係合部及び第二係合部の配置と容器口部の係止突起部の配置を下側から見た状態を模式的に示す図である。
【
図12】
図1のキャップのバンドの第一係合部が容器口部の係止突起部に係止した状態と、その時の第二係合部の配置を下側から見た状態を模式的に示す図である。
【
図13】(a)は、
図1のキャップの第二バンドが上下方向に振動する状態を説明する図である。(b)は、
図1のキャップの第二バンドが上下方向に振動して、上側に移動した状態を説明する図である。(c)は、
図1のキャップの第二バンドが上下方向に振動した後の状態を説明する図である。
【
図14】(a)は、従来のキャップのバンドが上下方向に振動する状態を説明する図である。(b)は、従来のキャップのバンドが上下方向に振動して、上側に移動した状態を説明する図である。(c)は、従来のキャップのバンドが上下方向に振動した後の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(一実施形態)
本発明の一実施形態について、
図1から
図13を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態や変形例において、相互に対応する構成については同一の符号を付し、重複部分については説明を省略する場合がある。さらに、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るキャップ1を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1のキャップ1を模式的に示す側面図である。
図3は、
図1のキャップ1を上下方向Zの上側Z1から見た状態を示す図である。
図4は、
図1のキャップ1未開栓時のバンド3と容器口部110を示す図である。
図5は、
図1のI-I断面に沿う、
図1のキャップ1を模式的に示す断面図である。
【0019】
[キャップ1]
以下のキャップ1の説明において、キャップ1の中心軸O1が延びる方向を上下方向Zとして、上方を上側Z1とし、下方を下側Z2とする。また、キャップ1の中心軸O1と直交する径方向を径方向Pとして、中心軸O1を向く方向を内側P1とし、中心軸O1と反対を向く方向を外側P2とする。さらに、キャップ1の中心軸O1を中心とする方向を開閉方向(回転方向)Rとし、
図1に示すように、右回転を開栓側R1とし、左回転を閉栓側R2とする。ただし、これは、あくまで説明の便宜のために上下方向Z及び開閉方向Rを定義したものであって、本発明のキャップ1が実際に装着されたときの設置姿勢を限定するものではない。また、径方向Pは、キャップ1の中心軸O1と直交していなくてもよい。また、開閉方向Rの開栓側R1及び閉栓側R2は、右回転と左回転が逆になっていてもよい。
【0020】
キャップ1は、
図1から
図5に示すように、容器100の容器口部110に装着され、容器口部110に対して開閉方向Rに回転し、容器100を開閉する。ここでキャップ1の回転方向は、開閉方向Rと一致する。キャップ1の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂等が用いられる。キャップ1は、キャップ本体2と、バンド3と、を備える。
【0021】
[容器100]
容器100は、
図4に示すように、内容物として液体、粉体等を収容する。容器100に収容された内容物は、容器100の上側Z1に溶着された中空円筒状の容器口部110の開口部110aから注出される。容器100は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂で形成されている。
【0022】
容器口部110は、例えば、ボトルの口部であってもよいし、また、袋状容器に溶着されているスパウトと呼ばれる筒状形状の注出具であってもよい。容器口部110は、外側P2に備えられた外側面111に雄ねじ部120と、係止突起部130とを備える。
【0023】
雄ねじ部120は、容器口部110の外側面111に備えられ、後述するキャップ本体2の雌ねじ部24と螺合する。
【0024】
係止突起部130は、雄ねじ部120よりも下側Z2に備えられた突起部分である。係止突起部130は、
図4に示すように、径方向Pの外側P2に突出して、先端に係止面130aを備える。また、係止突起部130は、開栓側R1に係止開側面130c(
図11参照)を備え、閉栓側R2に係止閉側面130b(
図11参照)を備える。係止開側面130bは、径方向Pの外側P2に向かって延びる面である。係止閉側面130cは、径方向Pの外側P2に沿って延び、開栓側R1に傾斜した面である。係止突起部130は、容器口部110の開閉方向Rにおいて4つ均等に配置されている。係止突起部130は、後述する第一係合部321及び第二係合部331を係止開側面130cと係止閉側面130bとに当接させて、キャップ1の開閉方向Rの回転を制御する。
【0025】
[キャップ本体2]
キャップ本体2は、
図1から
図5に示すように、容器100の容器口部110を上下方向Zの上側Z1から覆う。キャップ本体2は、天壁部21と、周壁部22と、を備える。
【0026】
天壁部21は、略円盤状であり、キャップ本体2の上側Z1に備えられる。天壁部21は、上側Z1から容器口部110の開口部110aを覆う。天壁部21は、下側Z2に備える天壁下面21bにインナーリング212を備える。
【0027】
インナーリング212は、
図4から
図5に示すように、後述する周壁部22よりも内側P1に備えられる。インナーリング212は、略中空円筒状であり、天壁部21から下側Z2に延在する。インナーリング212の上下方向Zの長さは、周壁部22よりも短い。インナーリング212は、キャップ1を上側Z1から容器口部110に取り付けた際に、容器口部110の内側P1の内側面112に摺動しながら当接する。この構成により、容器100の収納物は、容器100の外部に漏れることなく収容される。
【0028】
周壁部22は、
図1から
図3に示すように、キャップ1の中心軸O1を中心とする略中空円筒状に形成されている。周壁部22は、天壁部21の縁部21fから下側Z2に延在する。周壁部22は、天壁部21の縁部21fから下側Z2に向けて径方向Pの外側P2に開いたテーパー状に形成される。周壁部22は、周壁部22の外側P2に備えられた外周面221に突条部23を備える。また、周壁部22は、周壁部22の内側P1に備えられた内周面に雌ねじ部24を形成する。
【0029】
突条部23は、
図1から
図3に示すように、キャップ1の中心軸O1から径方向Pの外側P2に向けて略凸状に張り出した指掛けの部分である。各突条部23は、周壁部22の上側Z1から下側Z2にかけて直線状に形成している。突条部23は、所定の間隔をあけて、周壁部22の開閉方向Rに沿って複数配列している。各突条部23の径方向Pの外側P2に張り出した張り出し量は、それぞれ同一でなくてもよい。
【0030】
例えば、本実施形態では、
図1から
図3に示すように、複数の突条部23のうち、張り出し量が大となる突条部23を第一突条部23aとする。第一突条部23aは、開閉方向Rに沿って周壁部22の四方へ均等に配置される。次に、複数の突条部23のうち、張り出し量が大より小さな中となる突条部23を第二突条部23bする。第二突条部23bは、各第一突条部23aの間に、2つずつ均等に配置される。さらに、複数の突条部23のうち、張り出し量が中より小さな小となる突条部23を第三突条部23cする。第三突条部23cは各第一突条部23aの間に、1つずつ均等に配置される。そのため、図示しない消費者がキャップ本体2の周壁部22を把持して、キャップ1を開閉方向Rに開閉する際に、指先に滑りが生じないようにすることができる。なお、各突条部23の張り出し量は特に限定されず、すべて同一であってもよい。
【0031】
雌ねじ部24は、
図4から
図5に示すように、周壁部22の内側P1に備えられる。雌ねじ部24は、キャップ1を開閉方向Rに開閉する際に、容器口部110に備えられた雄ねじ部120と羅合する。この構成によって、キャップ1は、開閉方向Rの閉栓側R2に回転させると容器100に装着され、開閉方向Rの開栓側R1に回転させると容器100から取り外される。
【0032】
[バンド3]
図6は、
図1のキャップ1のバンド3を模式的に示す斜視図である。
図7は、
図1のキャップ1のバンド3を模式的に示す側面図である。
図8は、
図1のキャップ1のバンド3を上下方向Zの下側Z2から見た状態を示す図である。
図9は、
図1のキャップ1のバンド3を上下方向Zの上側Z1から見た状態を示す図である。
図10は、
図1のキャップ1のバンド3の折れ曲がり部60を模式的に示す斜視図である。
バンド3は、
図1または
図6から
図10に示すように、略環状であり、キャップ本体2の下側Z2に備えられる。バンド3は、上下方向Zにおいて、
図5に示すように、キャップ本体2との間に略等間隔の隙間S1をあけて備えられる。本実施形態では、上下方向Zの隙間S1の幅は、0.5mm程度に設定している。バンド3は、開栓側R1に回転されると、その行為が目視で判別可能となるタンパーエビデンス式のキャップに用いられる。バンド3は、
図6に示すように、バンド本体(バンド)30を2つ備える。なお、隙間S1の幅は、特に限定されないが、キャップ1の製造を容易にするため、0.2mm以上に設定するのが望ましい。
【0033】
ここで、中心軸O1を通り、中心軸O1に垂直であって、バンド3の中心を通る軸線を第一軸線O2とする。バンド3は、
図6に示すように、第一軸線O2を線対称として、開閉方向Rに沿って2つのバンド本体30を後述する第二ブリッジ35で連結することで、略環状に形成している。本実施形態では、バンド3は、バンド本体30を2つ備えているが、特に限定されない。バンド3は、バンド本体30を1つのみ備えていてもよいし、2つ以上備えていてもよい。なお、以降の説明においては、2つのバンド本体30のうち1つのバンド本体30を説明する。もう一つのバンド本体30については、略同じ構成であるとして説明を省略する。バンド本体(バンド)30は、バンド側壁部31と、スリット部37と、第一接続部38と、第二接続部39と、を備える。
【0034】
バンド側壁部31は、
図6から
図10に示すように、バンド本体30の側壁であり、上下方向Zに延在する。バンド側壁部31は、中心軸O1から径方向Pに半円状に形成される。径方向Pにおけるバンド側壁部31の半径は、キャップ本体2の半径と略同じである。バンド側壁部31は、
図6に示すように、第一バンド(長バンド)32と、第二バンド(短バンド)33と、第一ブリッジ34と、第二ブリッジ35と、中間バンド36と、を有する。
【0035】
[第一バンド(長バンド)32]
第一バンド32は、バンド側壁部31の一部であり、径方向Pの幅が上下方向Z及び開閉方向Rの幅よりも短い略板状に形成されている。第一バンド32は、全体が中心軸O1における開閉方向Rに沿って弧を描くようにわずかに湾曲している。第一バンド32は、第一フランジ40aと、第一係合部(係止爪部)321とを備える。
【0036】
第一フランジ40aは、
図6に示すように、第一バンド32の上側Z1の上端32aに備えられる。第一フランジ40aは、上端32aから径方向Pの内側P1に突出し、延在している。第一フランジ40aの径方向Pの幅は、第一フランジ40aのどの部分も略同じになるように形成される。
【0037】
第一係合部(係止爪部)321は、
図8に示すように、第一バンド32の内側P1の第一バンド内側面32cに沿って延在する。第一係合部321の基端321pは、第一バンド内側面32cに連結される。第一係合部321の先端321qは、開閉方向Rの開栓側R1を向いている。また、第一係合部321の上端321aは、
図10に示すように、第一フランジ40aに連結する。第一係合部321は、弾性変形して、容器口部110の係止突起部130を乗り越えることができる程度の可撓性を備えている。ここで、第一係合部321は、
図8に示すように、第一バンド内側面32cに2つ配置されているが、これは係止突起部130に近い位置にある第一係合部321が係止し損ねた場合に、もう1つの第一係合部321を係止突起部130に係止させて後述する第一ブリッジ34を確実に破断するためである。
【0038】
第一係合部321は、製造工程の中で、容器100に対して最初にキャップ1を取り付けるためキャップ1を閉栓側R2へ回転させる(キャッピング作業)際に、係止突起部130の係止開側面130cに当接し係止する。しかし、係止開側面130cは開栓側R1に傾斜しているため、第一係合部321は、閉栓側R2の回転を許容し、係止突起部130をスムーズに乗り越えて移動する。このとき、第一係合部321は、わずかに弾性変形して係止突起部130を乗り越える。第一係合部321は、もとの形状に戻ろうとする復元力を発生させ、係止突起部130に作用する。係止突起部130は、作用した復元力の反力としてバンド3を外側P2に押し出すように付勢する。バンド3は、第一係合部321の復元力が発生している間、外側P2に拡径して開閉方向Rに沿って引っ張り力を与えられる。
【0039】
第一係合部321は、消費者によりキャップ1を開栓側R1へ回転される(以下、開栓作業)際に、係止突起部130の係止閉側面130bに当接して係止する。第一係合部321が係止突起部130に係止している状態で、さらにキャップ1を閉栓側R2へ回転させると、第一係合部321は、弾性変形して、係止突起部130を乗り越える。このとき、第一係合部321は、キャッピング作業時よりも大きく弾性変形して、係止突起部130を乗り越える。第一係合部321の復元力は、キャッピング作業よりも大きくなるため、バンド3が与えられる開閉方向Rに沿う引っ張り力も大きくなる。第一係合部321は、係止突起部130を乗り越えたのち、元の形状に復元する。
【0040】
以上の構成により、第一係合部321は、開閉方向Rにおいてキャッピング作業時の閉栓側R2の回転を許容し、開栓作業時の開栓側R1の回転を規制することができる。
【0041】
[第二バンド(短バンド)33]
第二バンド33は、バンド側壁部31の一部であり、第一バンド32と同様に、径方向Pの幅が上下方向Z及び開閉方向Rの幅よりも短い略板状に形成されている。第二バンド33は、全体が中心軸O1における開閉方向Rに沿って弧を描くようにわずかに湾曲している。第二バンド33は、開閉方向Rの幅が第一バンド32の幅よりも短い。また、第二バンド33は、第一バンド32よりも閉栓側R2に備えられる。第二バンド33は、第二フランジ40bと、第二係合部(係止爪部)331と、突出部50と、を備える。
【0042】
第二フランジ40bは、
図6に示すように、第二バンド33の上側Z1の上端33aに備えられる。第二フランジ40bは、径方向Pの内側P1に突出し、延在している。第二フランジ40bの径方向Pの幅は、第一フランジ40aと略同じになる。
【0043】
第二係合部(係止爪部)331は、
図8に示すように、第二バンド33の内側P1の第二バンド内側面33cに沿って延在する。第二係合部331の基端331pは、第二バンド内側面33cに連結される。第二係合部331の先端331qは、開閉方向Rの開栓側R1を向いている。また、第一係合部331の上端(不図示)は、第二フランジ40bに連結する。第二係合部331は、第一係合部321と同様に、弾性変形して、容器口部110の係止突起部130を乗り越えることができる程度の可撓性を備えている。また、第二係合部331は、
図8に示すように、第二バンド内側面33cに2つ配置されているが、これは係止突起部130に近い位置にある第二係合部331が係止し損ねた場合に、もう1つの第二係合部331を係止突起部130に係止させて後述する第二ブリッジ35を確実に破断するためである。
【0044】
第二係合部331は、第一バンド32の第一係合部321が係止突起部130に係止するとき、係止突起部130に非係止状態で近接する位置となる。例えば、
図12に示すように、第二係合部331は、非係止状態の時において、係止突起部130からズレ量Aだけずれている。
【0045】
第二係合部331は、キャッピング作業において、係止突起部130の係止開側面130cに当接し係止する。しかし、係止開側面130cは開栓側R1に傾斜しているため、第二係合部331は、閉栓側R2の回転を許容し、係止突起部130をスムーズに乗り越えて移動する。このとき、第二係合部331は、わずかに弾性変形して係止突起部130を乗り越える。第二係合部331は、もとの形状に戻ろうとする復元力を発生させ、係止突起部130に作用する。係止突起部130は、作用した復元力の反力としてバンド3を外側P2に押し出すように付勢する。バンド3は、第二係合部331の復元力が発生している間、外側P2に拡径して開閉方向Rに沿って引っ張り力を与えられる。
【0046】
第二係合部331は、開栓作業において、係止突起部130の係止閉側面130bに当接して係止する。第二係合部331が係止突起部130に係止している状態で、さらにキャップ1を閉栓側R2へ回転させると、第二係合部331は、弾性変形して、係止突起部130を乗り越える。このとき、第二係合部331は、キャッピング作業時よりも大きく弾性変形して係止突起部130を乗り越える。第二係合部331の復元力は、キャッピング作業よりも大きくなるため、バンド3が与えられる開閉方向Rに沿う引っ張り力も大きくなる。第二係合部331は、係止突起部130を乗り越えたのち、元の形状に復元する。
【0047】
以上の構成により、第二係合部331は、開閉方向Rにおいてキャッピング作業時の閉栓側R2の回転を許容し、開栓作業時の開栓側R1の回転を規制することができる。
【0048】
突出部50は、上下方向Zにおいて第二バンド33の上側Z1に備えられる。また、突出部50は、第二バンド33の閉栓側R2の端部に備えられる。突出部50は、上下方向Zにおいて上側Z1に配置されたキャップ本体2に向かって突出する。突出部50は、上側Z1から見て矩形状に形成されており、突出部50の径方向Pの幅は、第二バンド33の上側Z1に備えられた第二フランジ40bの幅と略同じである。なお、突出部50は、上側Z1から見て矩形状に形成されなくてもよく、円形状や三角形状に形成されていてもよい。また、突出部50は、上側Z1に向かって先端が下側Z2よりも細くなるように形成されていてもよい。この構成により、材料である樹脂等の使用量を削減できる。また、突出部50の開閉方向Rの幅は、第二バンド33の幅よりも短い。より具体的には、突出部50の開閉方向Rの幅は、第二バンド33の幅の半分の長さよりもさらに短く形成されているのがよい。この構成により、材料である樹脂等の使用量を削減したり、キャップ1のその他の部材に当たりうまくキャップ1が開閉できなくなったりすることを防ぐことができる。
【0049】
突出部50の上下方向Zの高さH1は、キャップ本体2とバンド3との間に備えられた隙間S1よりも小さくなるように形成されている。より具体的には、突出部50の高さH1は、0.2mm程度となるように設定されている。突出部50の材料は、本実施形態では、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂を採用しているが、ポリプロピレン(PP)樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE、LLDPE)であってもよい。なお、突出部50の高さH1は、特に限定されず、樹脂使用量の削減のため、0.2mmよりもさらに低くなるように設定してもよいし、高くなるように設定してもよい。例えば、突出部50の高さH1は、上下方向Zにおいてキャップ本体2とバンド3との間に備えられた隙間S1の半分の高さよりも高く設定してもよい。突出部50の高さH1は、隙間S1の半分の高さよりも高く設定することで、後述する第二バンド33の上下方向Zの振動をより抑えることができる。
【0050】
ここで、第一バンド32が有する第一フランジ40aと第二バンド33が有する第二フランジ40bとは、
図5に示すように、2つのバンド本体30が連結し、バンド3が形成された際に、略中空円盤状の1つのフランジ40を形成する。
【0051】
[第一ブリッジ34]
第一ブリッジ34は、
図6及び
図7に示すように、バンド側壁部31の一部であり、第二バンド33よりも開栓側R1に備えられる。第一ブリッジ34は、後述する中間バンド36を介して、第一バンド32と第二バンド33とを連結する。上下方向Zにおける第一ブリッジ34の幅H2は、第一バンド32、第二バンド33及び中間バンド36よりも細い。また、第一ブリッジ34は、従来の高さよりも高くなるように設定されている。具体的には、第一ブリッジ34の幅H2は、従来の0.33mm程度に対して0.39mm程度に設定されている。ただし、第一ブリッジ34の幅H2は、特に限定されない。
【0052】
第一ブリッジ34は、キャッピング作業時に、第一係合部321が弾性変形して復元力を発生させ、バンド3に引っ張り力が与えられると、上下方向Zにおいて幅の細い第一ブリッジ34により力が加わる。しかし、第一係合部321は、係止突起部130をスムーズに乗り越えて移動できるため、第一ブリッジ34は破断しない。
【0053】
第一ブリッジ34は、開栓作業時に、第一係合部321が係止突起部130に当接してキャップ1の開栓側R1への回転が規制され、弾性変形すると、バンド3に引っ張り力が与えられる。すると、上述したように第一ブリッジ34に引っ張り力が加わる。第一ブリッジ34は、第一係合部321が係止突起部130を乗り越えるときに、開閉方向Rに発生する引っ張り力によって破断する。
【0054】
[第二ブリッジ35]
第二ブリッジ35は、バンド側壁部31の一部であり、第二バンド33の閉栓側R2に備えられる。上下方向Zにおける第二ブリッジ35の幅H3は、第一バンド32、第二バンド33及び中間バンド36よりも細く、さらに第一ブリッジ34の幅H2よりも細い。具体的には、第二ブリッジ35の幅H3は、従来の0.33mm程度に設定されている。ただし、第二ブリッジ35の幅H3は、特に限定されない。
【0055】
第二ブリッジ35は、キャッピング作業時に、第二係合部331が弾性変形して復元力を発生させ、バンド3に引っ張り力が与えられると、上下方向Zにおいて幅の細い第二ブリッジ35により力が加わる。しかし、第二係合部331は、係止突起部130をスムーズに乗り越えて移動できるため、第二ブリッジ35は破断しない。
【0056】
第二ブリッジ35は、開栓作業時に、まず、第一係合部321が係止突起部130に当接して第一ブリッジ34に引っ張り力が加わり、破断したのち第二係合部331が係止突起部130に当接する。すると、キャップ1の開栓側R1への回転が規制され、弾性変形し、バンド3に引っ張り力が与えられる。その後、第二ブリッジ35に引っ張り力が加わる。第二ブリッジ35は、第二係合部331が係止突起部130を乗り越えるときに、開閉方向Rに発生する引っ張り力によって破断する。
【0057】
[中間バンド36]
中間バンド36は、バンド側壁部31の一部であり、第一バンド32と第一ブリッジ34との間に備えられる。上下方向Zにおける中間バンド36の幅は、第一ブリッジ34の幅H2及び第二ブリッジ35の幅H3より太く、第一バンド32の幅より細い。そのため、開栓作業の際に、引っ張り力は、より第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35にかかるため、中間バンド36は破断せずに第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35が破断する。
【0058】
[スリット部37]
スリット部37は、バンド側壁部31の上側Z1から下側Z2に向かって形成されたスリットである。スリット部37の開閉方向Rの幅は、後述する第一接続部38がスリット部37に収まり、さらに、開閉方向Rにおいて第一接続部38の両側に隙間を有する程度の大きさに形成される。
【0059】
[第一接続部38]
第一接続部38は、キャップ本体2とバンド3とを接続する。第一接続部38は、中間バンド36の上側Z1に備えられ、スリット部37に収まる。第一接続部38は、
図10に示すように、連結部381と、折れ曲がり部60とを備える。
【0060】
連結部381は、第一接続部38の上側Z1に備えられ、上端がキャップ本体2に連結する。連結部381の下端は、折れ曲がり部60に連結する。
【0061】
[折れ曲がり部60]
折れ曲がり部60は、連結部381の下端に備えられ、中間バンド38の上端に連結している。折れ曲がり部60は、
図10に示すように、連結部381の下端から分岐して受け板部61と、支柱部62とを備える。
【0062】
受け板部61は、上下方向Zにおいて、上側Z1の上端を連結部381に連結し、下側Z2の下端を下側Z2に向けて形成している。受け板部61は、径方向Pの内側P1と外側P2とに内面61a及び外面61bを有し、略板状に形成されている。受け板部61は、キャッピング作業前の状態では、
図10に示すように、上下方向Zにおいて下端と上端とは略同一直線上に配列される。また、受け板部61は、キャッピング作業後のキャップ1の閉栓状態(以下、未開栓状態)では、
図4に示すように、受け板部61の内面61aが径方向Pにおいて容器口部110の係止突起部130の係止面130aに当接する。このとき、係止突起部130が受け板部61の下端を外側P2に押し込む。そのため、受け板部61の下端は、上端よりも外側P2に配置される。この状態において、開閉方向Rに沿う第一接続部38の中心軸線O3は、開閉方向Rと平行になる。
【0063】
受け板部61は、
図9に示すように、開閉方向Rの両側の端部がR付けされて断面円弧の表面形状に設けられている。そのため、キャップ1の開閉操作の際に受け板部61が係止突起部130に係止しない。この構成により、受け板部61は、係止突起部130を乗り越えたり、係止突起部130の外側P2に有する係止面130aに適正に配置できたりすることができる。なお、受け板部61は、キャッピング作業時に、係止突起部130に係止しない形状であればよく、上述した形状に限定されない。
【0064】
支柱部62は、バンド3の外側P2向けて撓み変形可能な支柱である。支柱部62の上端は、受け板部61の外面61bの上側Z1に連結している。また、支柱部62の下側Z2の下端は、中間バンド36の上側Z1に連結している。支柱部62は、径方向Pにおいて上側Z1の上端が下端よりも内側P1に備えられ、中心軸O1に傾いて形成している。開閉方向Rにおける支柱部62の幅は、受け板部61の幅よりも小さい。
【0065】
本実施形態では、
図11に示すように、未開栓状態を含めてキャップ本体2が容器口部110を適正に閉栓する角度位置にしたとき、開閉方向Rにおける位置関係において、係止突起部130と折れ曲がり部60とが、径方向Pに配列されるように設定されている。支柱部62は、未開栓状態において、撓んでおり、この撓みを元に戻そうとする復元力によって、折れ曲がり部60に連結している中間バンド36を、外側P2に向けて付勢する。
【0066】
[第二接続部39]
第二接続部39は、
図6及び
図7に示すように、キャップ本体2と第二バンド33とを接続する。第二接続部39の上側Z1の上端は、キャップ本体2の一部に連結される。第二接続部39の下側Z2の下端は、第二バンド33の上端であって、開閉方向Rの閉栓側R2に連結される。
【0067】
[キャップ1の動作及び作用]
(作用1)
ここで、
図11から
図12を参照して、キャップ1の動作及び作用について説明する。まず、本実施形態において、バンド3の第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35の破断の作用を説明する。
図11は、
図1のキャップ1未開栓時のバンド3の第一接続部38、第一係合部321及び第二係合部331の配置と容器口部110の係止突起部130の配置を下側Z2から見た状態を模式的に示す図である。
図12は、
図1のキャップ1のバンド3の第一係合部321が容器口部110の係止突起部130に係止した状態と、その時の第二係合部331の配置を下側Z2から見た状態を模式的に示す図である。第一係合部321及び第二係合部331の開閉方向Rの配置は、開栓時に、キャップ本体2が開栓側R1に回転する動きに伴う。具体的には、第一バンド32の第一係合部321が係止突起部130に係止するとき、第二係合部331は、係止突起部130に非係止状態で近接する位置となる。
図12に示すように、第二係合部331は、第一係合部321が係止突起部130に係止するとき非係止状態であり、係止突起部130からズレ量Aだけずれている。
【0068】
まず、製造工程の中で、キャップ1が容器100に対して最初に取り付けられる(キャッピング作業)。キャップ1は、容器100に閉栓側R2へ回転させることで取り付けられる。このとき、第一バンド32の第一係合部321及び第二バンド33の第二係合部331は、容器口部110の係止突起部130に係止するが、弾性変形して、容器口部110の係止突起部130を乗り越えることができる程度の可撓性を備えている。第一係合部321及び第二係合部331は、係止突起部130の係止開側面130cに当接し係止する。しかし、係止開側面130cは開栓側R1に傾斜しているため、第一係合部321及び第二係合部331は、バンド3の閉栓側R2の回転を許容し、係止突起部130をスムーズに乗り越えて移動する。第一係合部321及び第二係合部331が弾性変形して復元力を発生させ、バンド3に引っ張り力が与えられると、上下方向Zにおいて第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35により力が加わる。しかし、第一係合部321及び第二係合部331は、係止突起部130をスムーズに乗り越えて移動できるため、第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35は、破断しない。
【0069】
キャッピング作業後のキャップ1の閉栓状態(以下、未開栓状態)は、
図11に示すように、径方向Pにおいて容器口部110の係止突起部130の係止面130aに当接し、係止突起部130が受け板部61の下端を外側P2に押し込んだ状態になる。
【0070】
次に、消費者によって、キャップ1の未開栓状態からキャップ1が開栓側R1へ回転される(開栓作業)。開栓側R1へキャップ本体2を回転させると、第一バンド32と第二バンド33とは、第一接続部38及び第二接続部39に連結されたキャップ本体2の動きに伴って開栓側R1に回転する力が加わる。すると、
図12に示すように、最初に第一係合部321と係止突起部130とが係止し、この係止によって第一バンド32の開栓側R1の回転が規制されて停止する。このとき、第二係合部331は、係止突起部130に係止していない。第一係合部321が係止突起部130に係止している状態で、さらにキャップ1を閉栓側R2へ回転させると、第一係合部321は、弾性変形して、係止突起部130を乗り越える。このとき、第一係合部321は、キャッピング作業時よりも大きく弾性変形して係止突起部130を乗り越える。さらに、第一係合部321は、バンド3を外側P2に押し出すように付勢する。バンド3には、開閉方向Rに引っ張り力が与えられ、第一ブリッジ34が破断する。
【0071】
第一ブリッジ34が破断すると、バンド3は2つに割れる。バンド3は、後述する折れ曲がり部60の作用によって、中間バンド36がバンド3の外側P2に張り出る。これにより、中間バンド36の開栓側R1に配置された第一バンド32の第一係合部321が係止突起部130から外れ易くなる。第一ブリッジ34が先に破断した後も、キャップ本体2の開栓側R1への回転が行われると、第二バンド33は、第二接続部39によってキャップ本体2に連結されているため、開栓側R1に回転する。その後、第二係合部331と係止突起部130とが係止する。第二係合部331は、弾性変形して、係止突起部130を乗り越える。このとき、第二係合部331は、キャッピング作業時よりも大きく弾性変形して係止突起部130を乗り越える。これにより、第二ブリッジ35に引っ張り力が加わり、第二ブリッジ35が破断する。第二ブリッジ35の破断によって、第二係合部331も係止突起部130から外れる。以上により、消費者はキャップ1を容器100から取り外すことができる。
【0072】
このように第一ブリッジ34は、第二ブリッジ35よりも先に破断し、第二ブリッジ35が、第一ブリッジ34の破断後に遅れて破断するようにして、破断タイミングをずらすことができる。なお、第一ブリッジ34が切れるときと、第二ブリッジ35が切れるときとの破断タイミングのズレ時間は短時間になるように設けられており、スムーズな開栓操作が損なわれないように図られている。
【0073】
(作用2)
次に、第一接続部38の折れ曲がり部60の作用を説明する。
本実施形態では、未開栓のキャップ1を開閉方向Rに回転させることで、第一ブリッジ34が破断するとともに、第二ブリッジ35が破断する。その後、容器口部110から取り外したキャップ本体2を、再度容器口部110に取り付けて閉栓側R2に回転させる。キャップ本体2が容器口部110を適正に閉栓する角度位置にしたとき、開閉方向Rにおける位置関係において、係止突起部130と折れ曲がり部60とは、径方向Pに径方向Pに配列される。
【0074】
折れ曲がり部60の受け板部61は、係止突起部130の係止面130aに当接する。第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35は、既に破断されているため、受け板部61の支柱部62は、撓むことなく傾斜した状態となる。すると、第一接続部38の下側Z2の中間バンド36は、バンド3の外側P2に張り出る。さらに、中間バンド36に連結している第一バンド32も、バンド3の外側P2に張り出る状態となる。そのため、一旦開栓した後にキャップ1を容器100に取り付けても、第一バンド32が外側P2に張り出ており、キャップ1が容器100から開栓済みであることが目視で容易に確認できる。
【0075】
また張り出た第一バンド32を内側P1に押し込んでも、開閉方向Rにおいて係止突起部130に重なる第一接続部38の折れ曲がり部60が復元力の作用によって第一バンド32を押し出し、最初の開栓前のバンド3の状態に復元させることが不可能となる。また、第一接続部38の中心軸線O3は、未開栓状態において、開閉方向Rと平行であったが、開栓作業後には、ブリッジの破断によって、中心軸線O3が開閉方向Rに対してずれ、平行ではない状態になる。
【0076】
(作用3)
次に、
図13を参照して、製造時のキャッピング作業におけるバンドの動作及び作用を説明する。
図13(a)は、
図1のキャップ1の第二バンド33が上下方向Zに振動する状態を説明する図である。
図13(b)は、
図1のキャップ1の第二バンド33が上下方向Zに振動して、上側Z1に移動した状態を説明する図である。
図13(c)は、
図1のキャップ1の第二バンド33が上下方向Zに振動した後の状態を説明する図である。
【0077】
製造工程において、充填機によって容器100に液体が充填されると、キャップ1が、高速キャッピング機によって閉栓側R2に回転される(キャッピング作業)。本実施形態では、高速キャッピング機によるキャッピング作業のキャップ1の回転速度は、500rpm程度に設定されている。
【0078】
図13(a)に示すように、キャッピング作業中にキャップ1は回転されることによって、バンド3が振動する。キャップ1は、キャップ本体2とバンド3との間に隙間S1を有している。すると、バンド3は、上下方向Zにおいても振動する。特に、第二バンド33は、開閉方向Rにおける幅が第一バンド32よりも短く形成されている。そのため、振動による上下方向Zの動きが第一バンド32よりも激しくなる。
【0079】
図13(b)において、第二バンド33が開栓側R1においてキャップ本体2と連結する第二接続部39を起点にして上下方向Zに振動する。しかし、第二バンド33の開栓R1側の上側Z1には、突出部50が備えられている。突出部50は、上下方向Zに高さを有しており、隙間S1よりも第二バンド33からキャップ本体2までの隙間の幅を小さくして変位させる。すると、上下方向Zの振動が抑制される。
【0080】
そのため、
図13(c)において、高速キャッピング機による閉栓作業が完了した後も、バンド3の第一ブリッジ34は破断することなく、第二バンド33と中間バンド36とを連結する。すなわち、第二バンド33とキャップ本体2との上下方向Zの隙間の幅を変位させる突出部50が第一ブリッジ34に与える影響が大きくなる。これにより、本実施形態のキャップ1は、キャッピング作業時に第一ブリッジ34が破断するのを防ぐことができる。
【0081】
本実施形態では、キャップ1のバンド3が第一係合部321及び第二係合部331を備えている。そのため、第一係合部321及び第二係合部331は、開閉方向Rにおいてバンド3の閉栓側R2の許容し、開栓側R1の回転を規制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、第一ブリッジ34及び第二ブリッジ35のそれぞれが、破断タイミングにズレが生じるように設けられている。そのため、キャップ本体2を開栓側R1に回転させるときの回転力は、大きな力を要しない。これにより、消費者はキャップ1を容器100から容易に開栓することができる。
【0083】
また、本実施形態では、スリット部37に第一接続部38が形成されている。そのため、消費者はキャップ1を容器から一度開栓して再度閉栓した際に、第一接続部38がスリット部37から外側P2にずれるため、一度開閉したことを目視で確認しやすい。
【0084】
また、本実施形態では、受け板部61の中心軸線O3は、未開栓状態において、開閉方向Rと平行であったが、開栓作業後には、ブリッジの破断によって、中心軸線O3が開閉方向Rに対してずれ、平行ではない状態になる。そのため、消費者は受け板部61の中心軸線O3のずれを目視で確認することで、一度キャップ1を容器100から開栓したこと判別することができる。
【0085】
また、本実施形態では、第二バンド33の上側Z1に突出部50が形成されている。そのため、製造時のキャッピング作業の際に、第二バンド33が上下方向Zに振動しても振動を抑制する。そのため、キャッピング作業において第一ブリッジ34が破断するのを防ぐことができる。
【0086】
また、本実施形態では、第一ブリッジ34が、従来の高さよりも高くなるように設定されている。そのため、高速キャッピング機によるキャッピング作業において、バンド3に上下方向Zに振動が与えられても、第一ブリッジ34は従来よりも変形しにくい。そのため、第一ブリッジ34は破断することなく、第二バンド33と中間バンド36とを連結することができる。
【0087】
いずれの上記形態においても、本発明に係るキャップ及び容器によれば、製造工程において視認用のブリッジを破断させずに閉栓作業することができる。
【実施例0088】
本発明のキャップ1について、表1及び表2を示しながら、実施例を用いてさらに説明する。なお、本発明の技術的範囲は、実施例の内容によって何ら制限されない。
【0089】
(実験)
第二バンド33に備えられた突出部50の効果を確認するために、製造工程におけるキャッピング作業時の第一ブリッジ34の破断を確認する実験を行った。
【0090】
バンド3は、比較例1、比較例2及び実施例1を用いて実験行った。実験において、比較例1、比較例2及び実施例1に使用されるキャップ1のキャップ本体2はすべて同一である。また、比較例1、比較例2及び実施例1に使用されるキャップ1の材料等についてもすべて同一である。なお表1及び表2のブリッジ高さとは、一実施形態における第一ブリッジの幅H2及び第二ブリッジの幅H3のことである。また、突出部50の高さH1は、一実施形態と同様に0.2mmに設定する。
【0091】
【0092】
比較例1は、表1に示すように、従来のバンド3であり、第二バンドの上側Z1に突出部50を形成しないバンド3である。このとき、比較例1のバンド3の第一ブリッジのブリッジ高さは、0.36mm、第二ブリッジのブリッジ高さは、0.30mmに設定されている。比較例2は、突出部50を形成しないバンド3である。比較例2のバンド3の第一ブリッジのブリッジ高さは、0.30mmから0.41mmに高さを上げて変更する。比較例2のバンド3の第二ブリッジのブリッジ高さは、0.30mmから0.35mmに高さを上げて変更する。比較例2の第一ブリッジ及び第二ブリッジの断面積は、変更前と比較して15%増加している。また、実施例1は、突出部50を形成するバンド3である。実施例1のバンド3の第一ブリッジのブリッジ高さは、0.33mmから0.39mmに高さを上げて変更する。実施例1のバンド3の第二ブリッジのブリッジ高さは、0.33mmから変更しない。そのため、実施例1のバンド3の第二ブリッジは、第一ブリッジよりも細い。実施例1は、変更前と比較して、第一ブリッジ及び第二ブリッジの断面積を9%増加している。
【0093】
比較例1、比較例2及び実施例1対して、製造工程におけるキャッピング作業して実験を行った。本実験では、比較例1を10850個、比較例2を9780個及び実施例1を9810個ずつ検査し実験した。実験の結果を表2に示す。
【0094】
【0095】
表2の従来品である比較例1は、検査数10850個のうちキャッピング作業後の第一ブリッジの破断の発生個数が19個であった。この時のブリッジ破断率(ブリッジ破断の発生個数÷検査数×100%)は、0.18%であった。比較例2は、検査数9780個のうちキャッピング作業後の第一ブリッジの破断の発生個数が30個であった。この時のブリッジ破断率は、0.31%であった。実施例1は、検査数9810個のうちキャッピング作業後の第一ブリッジの破断の発生個数が0個であった。この時のブリッジ破断率は、0%であった。
【0096】
比較例1及び比較例2の結果より、突出部50を形成せず、比較例2のように第一ブリッジ及び第二ブリッジに対して断面積を大きくすると、従来の比較例1よりもブリッジ破断の発生率が高くなることが分かった。そのため、第一ブリッジ及び第二ブリッジに対して断面積を大きくするのみでは、キャッピング作業後の第一ブリッジの破断は防ぐことができず、むしろ第一ブリッジの破断を増加させてしまうことが考察される。
【0097】
つぎに、比較例1、比較例2及び実施例1の結果より、実施例1のように第二バンド33の上側Z1に突出部50を形成し、第一ブリッジのみに対してブリッジ高さを高くし、断面積を大きくすると、発生個数が0個になることが分かった。そのため、突出部50は、キャッピング作業中の第二バンドの振動を抑え、第一ブリッジの破断を防ぐことができることを確認した。加えて、第一ブリッジのみに対してブリッジ高さを高くすることについても、第二バンドが振動する際に第一ブリッジが変形しにくくなり、第一ブリッジの破断を減少できることが考察される。
【0098】
(変形例)
本発明のキャップは、特に限定されず、TEバンドを有するキャップ以外にも適用することができる。
【0099】
また、本発明のキャップを取り付ける容器の容器口部は、例えば、ボトルの口部であってもよいし、袋状容器に溶着されているスパウトと呼ばれる筒状形状の注出具であってもよい。
【0100】
また上述の実施形態のバンドは、バンド本体を2つ備えるが、特に限定されず、バンド本体を1つのみ備えていてもよいし、2つ以上備えていてもよい。