(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142054
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】自動運転装置、運行管理システム及び自動運転プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230928BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230928BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230928BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230928BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230928BHJP
B60W 50/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/16 C
G08G1/09 F
G05D1/02 P
G05D1/02 B
B60W60/00
B60W50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048724
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳憲
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA15
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5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
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5H181CC18
5H181CC24
5H181FF04
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5H181FF22
5H301AA03
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5H301FF15
5H301GG07
5H301KK08
5H301KK18
5H301KK19
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】走行範囲から外れるような場合でも、走行の維持を可能にする自動運転装置、これを搭載した自動運転車両の運行管理を行う運行管理システム、さらには、自動運転プログラムを提供すること。
【解決手段】自動運転装置100は、自動運転車両である車両VEに搭載されるものであって、走路誘導部である電磁誘導線IWから受信した電磁波RWに基づき車両VEを電磁誘導線IWに沿った誘導走行をさせる誘導走行部GDと、誘導走行からの離脱と、誘導走行への復帰とを行う離脱復帰部BCと、誘導走行から離脱して復帰するまでの間、車両VEを自律走行させる自律走行部ADとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両に搭載される自動運転装置であって、
走路誘導部から受信した電磁波に基づき前記自動運転車両を前記走路誘導部に沿った誘導走行をさせる誘導走行部と、
前記誘導走行からの離脱と、前記誘導走行への復帰とを行う離脱復帰部と、
前記誘導走行から離脱して復帰するまでの間、前記自動運転車両を自律走行させる自律走行部と
を備える自動運転装置。
【請求項2】
前記離脱復帰部は、走路に埋設される電磁誘導線を有する前記走路誘導部から地上に向けて発信される前記電磁波の受信可否に基づき、離脱の有無を判定する、請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項3】
障害物を検知する障害物検知部を備え、
前記離脱復帰部は、前記障害物検知部において走行上に障害物が検知された場合に、離脱の要否を判定し、離脱を要する場合、復帰位置の探索を開始する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【請求項4】
前記走路誘導部は、前記電磁波の発信区間の終端を示す終端通知部を有し、
前記離脱復帰部は、一の前記終端通知部からの通知を受けると、前記自動運転車両を離脱させ、他の前記終端通知部からの通知を受けると、前記誘導走行への復帰を完了したと判定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【請求項5】
前記自律走行部は、周囲環境についてのセンシング結果を、事前に登録している地図情報にマッチングさせて推定した前記自動運転車両の現在位置に基づき前記自動運転車両を自律走行させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【請求項6】
前記自律走行部は、路側装置との無線通信により提供された情報に基づき前記自動運転車両を自律走行させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動運転装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された自動運転装置を搭載した前記自動運転車両と通信して、車両運行を管理する管理部を備える、運行管理システム。
【請求項8】
自動運転車両用の自動運転プログラムであって、
走路誘導部から受信した電磁波に基づき前記自動運転車両を前記走路誘導部に沿った誘導走行をさせる誘導走行プログラムと、
前記誘導走行からの離脱と、前記誘導走行への復帰とを行う離脱復帰プログラムと、
前記誘導走行から離脱して復帰するまでの間、前記自動運転車両を自律走行させる自律走行プログラムと
を備える自動運転プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を自律走行させるための自動運転装置、自動運転装置を搭載した自動運転車両の運行管理を行う運行管理システム及び自動運転プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、走路に埋設された電磁誘導線に沿って走行する自動運転車両において、電磁誘導線を利用して、走行位置に関する補正を行っているものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1では、電磁誘導線に基づく走行範囲から外れる必要が生じた場合に対応した自動運転ができるか否かが不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、走行範囲から外れるような場合でも、走行の維持を可能にする自動運転装置、これを搭載した自動運転車両の運行管理を行う運行管理システム、さらには、自動運転プログラムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための自動運転装置は、自動運転車両に搭載される自動運転装置であって、走路誘導部から受信した電磁波に基づき自動運転車両を走路誘導部に沿った誘導走行をさせる誘導走行部と、誘導走行からの離脱と、誘導走行への復帰とを行う離脱復帰部と、誘導走行から離脱して復帰するまでの間、自動運転車両を自律走行させる自律走行部とを備える。
【0007】
上記自動運転装置では、例えば電磁誘導線等で構成される走路誘導部から発せられる電磁波に基づく走行をしながら、必要に応じて、走行範囲からの離脱と復帰とを行い、離脱から復帰までの間において自律走行を行う態様とすることで、例えば走路誘導部を利用した確実な位置での走行を原則としつつ、障害物の回避が必要な箇所や、走路誘導部からの受信が途切れた箇所等においては、走路誘導部に対する離脱から復帰までを自律走行により行うものとすることで、走行を維持させられる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、離脱復帰部は、走路に埋設される電磁誘導線を有する走路誘導部から地上に向けて発信される電磁波の受信可否に基づき、離脱の有無を判定する。この場合、走路誘導部を利用した走行と自律走行との切替えを適切なタイミングに行える。
【0009】
本発明の別の側面では、障害物を検知する障害物検知部を備え、離脱復帰部は、障害物検知部において走行上に障害物が検知された場合に、離脱の要否を判定し、離脱を要する場合、復帰位置の探索を開始する。この場合、走行範囲からの離脱と復帰とを利用して、検知した障害物を回避しつつ走行を継続できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、走路誘導部は、電磁波の発信区間の終端を示す終端通知部を有し、離脱復帰部は、一の終端通知部からの通知を受けると、自動運転車両を離脱させ、他の終端通知部からの通知を受けると、誘導走行への復帰を完了したと判定する。この場合、終端通知部を利用した離脱と復帰がなされる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、自律走行部は、周囲環境についてのセンシング結果を、事前に登録している地図情報にマッチングさせて推定した自動運転車両の現在位置に基づき自動運転車両を自律走行させる。この場合、外部から情報が得られない場合であっても、自律走行が可能となる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、自律走行部は、路側装置との無線通信により提供された情報に基づき自動運転車両を自律走行させる。この場合、路側装置から、例えば自動運転車両にとって死角となる位置についての情報の提供等が可能となり、より安全際の高き自律走行が可能となる。
【0013】
上記目的を達成するための運行管理システムは、上記いずれかの自動運転装置を搭載した自動運転車両と通信して、車両運行を管理する管理部を備える。この場合、走行範囲から外れるような場合でも、走行の維持を可能な自動運転車両を利用して、より的確な車両運行の管理を行うことが可能となる。
【0014】
上記目的を達成するための自動運転プログラムは、自動運転車両用の自動運転プログラムであって、走路誘導部から受信した電磁波に基づき自動運転車両を走路誘導部に沿った誘導走行をさせる誘導走行プログラムと、誘導走行からの離脱と、誘導走行への復帰とを行う離脱復帰プログラムと、誘導走行から離脱して復帰するまでの間、自動運転車両を自律走行させる自律走行プログラムとを備える。
【0015】
上記自動運転プログラムでは、これを搭載した自動運転車両について、例えば電磁誘導線等で構成される走路誘導部から発せられる電磁波に基づく走行をさせながら、必要に応じて、走行範囲からの離脱と復帰とを行い、離脱から復帰までの間において自律走行を行う態様とすることで、例えば走路誘導部を利用した確実な位置での走行を原則としつつ、障害物の回避が必要な箇所や、走路誘導部からの受信が途切れた箇所等においては、走路誘導部に対する離脱から復帰までを自律走行により行わせるものとすることで、当該車両の走行を維持させられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の自動運転装置及び運行管理システムの一構成例について示す概念図である。
【
図2】運行管理システムについて一構成例を示すブロック図である。
【
図3】運行管理システムについて示す概念的な平面図である。
【
図4】(A)~(D)は、自動運転装置を搭載した車両について一の動作例を示す概念的な平面図である。
【
図5】(A)及び(B)は、自動運転装置を搭載した車両について他の動作例を示す概念的な平面図である。
【
図6】(A)及び(B)は、自動運転装置の様子について概要を示す概念図である。
【
図7】自動運転装置を搭載した車両における一連の動作についての一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】自動運転装置を搭載した車両における一連の動作についての他の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第2実施形態の運行管理システムについて示す概念図である。
【
図10】自動運転装置及び運行管理システムの一構成例について示す概念図である。
【
図11】運行管理システムについて一構成例を示すブロック図である。
【
図12】自動運転装置を搭載した車両について一の動作例を示す概念的な平面図である。
【
図13】自動運転装置を搭載した車両について他の動作例を示す概念的な平面図である。
【
図14】自動運転装置及び運行管理システムの他の一構成例について示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、第1実施形態に係る自動運転装置及びこれを含む運行管理システムについて、一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る自動運転装置100の一構成例について示す概念図であり、
図2は、自動運転装置100及び運行管理システム500の一構成例について示すブロック図である。また、
図3は、自動運転装置100を含んで構成される運行管理システム500について一例を示す概念的な平面図である。
【0018】
図1等に示すように、自動運転装置100は、車両VEを自律走行可能な自動運転車両とすべく、これに搭載される装置であり、例えば自動運転プログラムAOや位置検知部PD等で構成される。自動運転装置100のうち例えば自動運転プログラムAOは、車両VEを構成するもののうち、ステアリング等の運転操作部DOの動作制御を担う電子制御ユニット(車両ECU:Electronic Control Unit)VCに対して、自動運転のための各種指令を出力する。これにより、車両VEの自動運転が可能となっている。また、ここでは、自動運転装置100は、走路ROの固定位置に埋設された電磁誘導線IWからの電磁波RWを、電磁波受信部である位置検知部PDにおいて検知することで、走路ROから外れることなく車両VEを走行できるものともなっている。つまり、電磁誘導線IWが走路ROに沿って車両VEを誘導する走路誘導部として機能している。以後、自動運転装置100による自動運転のうち、電磁誘導線IWからの電磁波RWを受けてこれに従った走行を、誘導走行とし、電磁波RWを受けずに他の情報等を利用して行う走行を、自律走行とする。なお、図示の一例では、自動運転装置100は、測距部DMや通信部TT等を利用することで、電磁波RWを受けない場合でも、自律走行による走行が可能となっている。すなわち、電磁波RWを受けて電磁誘導線IWに沿った誘導走行を行うだけでなく、電磁誘導線IW上の走路ROから逸れた箇所での自律走行も可能となっている。さらに、自律走行の状態から電磁誘導線IW上の走路ROに戻ること、すなわち電磁誘導線IWに沿った誘導走行への復帰も可能となっている。このような走行を可能とするための一構成例についての詳細は、
図2として示すブロック図等を参照して後述する。
【0019】
図1に戻って、本実施形態における運行管理システム500は、自動運転装置100に加え、管理部CTと、電波制御部RCと、既述の電磁誘導線IWと、マーカMKとを備える。
【0020】
運行管理システム500のうち、管理部CTは、車両運行を管理すべく、種々の信号指令の出力等を行う。ここでは、管理部CTは、自動運転車両である車両VEに各種指令を出して、車両運行を管理するものとなっており、例えば車両VEの自己位置についての位置情報を受け取ること等により、車両VEの走行状況について管理する。
【0021】
電波制御部RCは、矩形波状の電磁波RWを所定のタイミングで発生させる電磁波発生装置であり、電磁誘導線IWに接続されている。電波制御部RCは、一定の矩形波状の電磁波RWを発生させ、発生させた電磁波RWが電波制御部RCに接続された電磁誘導線IWから出力される。電磁誘導線IWからの電磁波RWは、既述のように、位置検知部PDにおいて受信されることで、車両VEは、自己の位置(車両位置)が走路RO上にあることを検知する。なお、検知結果は、電磁誘導線情報として車両VEの内部において出力されるものとなっている。
【0022】
電磁誘導線IWは、既述のように、走路ROに沿って埋設され、電磁波RWを発信する情報伝搬用部材である。
図3に示す一例では、リング状の走路ROに対応して電磁誘導線IWが埋設されており、車両VEは、位置検知部PDにより電磁誘導線IWからの電磁波RWを検知して走路ROに沿った巡回走行を行うものとなっている。
【0023】
また、走路ROには、電磁誘導線IWのほかに、複数のマーカMKが埋設されている。なお、
図3に示す一例では、10個のマーカMK(MK1~MK10)が、電磁誘導線IWに沿って車両VEの進行方向(矢印A1)の順に設置されている。各マーカMKは、10個の区間INk(1≦k≦10)で示される所定の間隔で、特定の位置に設置されており、例えばRFIDタグ等で構成されて個々のID情報を保有している。車両VEは、マーカMKの上を通過する際にこれを検知するとともに、各マーカMKのID情報を読み取り、読み取ったID情報から位置を特定する。この場合、マーカMKは、所定の箇所に埋め込まれた状態であることから、車両VEは、絶対的位置基準を示す情報(絶対位置情報)が取得できることになる。つまり、車両VE側では、各マーカMKk(1≦k≦10)を検知した時点においては自己の正確な位置把握が可能となり、当該検知の後、次のマーカMKを検知するまでは、直近のマーカMK(
図3ではマーカMK1)と次のマーカMK(
図3ではマーカMK2)の間に存在している、と推定できることになる。
【0024】
なお、上記のような態様で自動運転を行う車両VEとしては、種々考えられるが、典型的一例としては、ゴルフカートのようなものが想定できる。つまり、リング状の走路ROは、ゴルフ場における周回コースに沿って設けられている、といったことが想定される。ただし、これに限らず、通常の自動運転車両や、後述する自動運転車両を巡回バス(自動運転バス)とする場合のほか、低速自動運転(low speed automated driving)用の車両といった異なる種々の態様において、本実施形態の運行管理システム500は適用可能である。
【0025】
以下、
図2等を参照して、運行管理システム500のうち、特に車両VEに搭載されている自動運転装置100について詳細に説明する。
【0026】
自動運転装置100は、既述の自動運転プログラムAOや位置検知部PD、測距部DM、通信部TTのほか、例えば走行予定ルートに関する情報が格納された地図データMPや、マーカMK(
図1等参照)を検知するためのRFID受信部RRを併せて備えるものとする。
【0027】
自動運転プログラムAOは、自動運転に際しての各種動作に関する判断を可能とすべく、各部と接続されて情報を受け付けるとともに、受け付けた情報を処理するための各種プログラムで構成されている。ここでは、各種プログラムに関しては、一例として、自動運転制御部ACと、離脱復帰部BCと、自己位置推定部PEとを備える。これらのうち、自動運転制御部ACには、誘導走行部GDと自律走行部ADとが含まれているものとする。また、離脱復帰部BCには、判定部JGが含まれているものとする。また、自己位置推定部PEには、推定位置補正部ECが含まれているものとする。
【0028】
なお、自動運転プログラムAOは、上記のような各種実行プログラムが実装された回路基板、あるいはCPUや各種ストレージデバイス等で構成される。見方を変えると、例えば自動運転制御部ACのうち、誘導走行部GDや自律走行部ADは、誘導走行プログラムや自律走行プログラムで構成されており、離脱復帰部BCやこれに含まれる判定部JGは、離脱復帰プログラムや判定プログラムで構成されている、つまり、各部は、各種実行プログラムで構成されていると言える。
【0029】
自動運転制御部ACのうち、誘導走行部GDは、位置検知部PDにおいて電磁波RWを受けて誘導走行を行う間において車両VEの動作制御を行うための各種プログラムで構成されている。
【0030】
一方、自律走行部ADは、位置検知部PDにおいて電磁波RWを受けない自律走行を行う間において車両VEの動作制御を行うための各種プログラムで構成されている。
【0031】
離脱復帰部BCは、誘導走行からの離脱(自律走行の開始)と、誘導走行への復帰(自律走行の終了)とを行うための、すなわち誘導走行と自律走行との切替えを行うための各種プログラムで構成されている。離脱復帰部BCにおいて、判定部JGは、誘導走行とすべきか自律走行とすべきかについて判定を行うための各種プログラムで構成されている。
【0032】
自己位置推定部PEは、既述のように、測距部DMからの周囲環境情報と地図データMP内の情報とを照合して、自己位置を推定する。なお、自己位置推定部PEは、さらに推定位置補正部ECを有しており、例えばRFID受信部RRで取得したマーカMKすなわちRFIDを利用したID情報に基づく絶対位置情報から自己推定についてのずれが確認された場合に、これを補正する。すなわち、推定位置補正部ECは、地図データ上の位置ずれを修正するためのプログラムである。
【0033】
位置検知部PDは、既述のように、電磁波RWを検知するための装置であり、検知結果を、自動運転プログラムAOに対して出力する。
【0034】
測距部DMは、例えばLiDAR等で構成され、走行する車両VEの周囲状況について、検知を行う。なお、検知結果は、車両VEの周囲状況を示す周囲環境情報として、自動運転プログラムAOに対して出力される。また、測距部DMにより、走行上において支障となる障害物が存在するか否かについても併せて検知される。
【0035】
通信部TTは、管理部CTとの通信を可能とするための装置である。つまり、車両VEは、通信部TTを介した管理部CTとの通信から、自己の位置について推定した結果としての位置情報を、管理部CTに対して送信する。また、一方で、管理部CTから地図情報や経路情報について授受可能な態様としてもよい。
【0036】
地図データMPについては、例えば走行予定ルートとして含まれ得る範囲についての地図情報や、これに加えて、物標情報等の走行する周囲についての各種情報の蓄積が可能となっている。なお、これらの情報(地図情報等)については、事前に登録されているものとすることもでき、また、必要に応じて、通信部TTを介した管理部CTとの通信により、管理部CTから取得するものとしてもよい。例えば自動運転プログラムAOに含まれるプログラム(例えば上記自己位置推定部PE)にしたがって、地図データMPとして格納された各種情報が、既述のように、測距部DMで取得された周囲環境情報と照合されることで、車両VEにおける自己位置の推定が可能となっている。したがって、例えば地図データMPにおいて事前に登録されている情報を利用する場合、自律走行に際して、自律走行部ADは、測距部DMにおける周囲環境についてのセンシング結果を、地図データMPに事前に登録している地図情報にマッチングさせて推定した車両VEの現在位置に基づき車両を走行させる、といった態様となる。
【0037】
RFID受信部RRは、走路ROに埋設されているマーカMK(
図3等参照)についてのID情報を検知し、検知結果(読取結果)が、絶対位置情報として、自動運転プログラムAOに対して出力される。
【0038】
以上のようにして、自動運転プログラムAOには各部で取得された情報が集約され、自動運転のための各種判断のために利用される。つまり、自動運転プログラムAOのうち、自動運転制御部ACは、これらの情報から自動運転制御の内容を決定する。
【0039】
車両VEは、上記のような自動運転装置100のほか、運転(走行)を可能とすべく、既述のように、電子制御ユニットVCと、運転操作部DOとを備える。
【0040】
電子制御ユニットVCは、自動運転プログラムAOでの判断結果に従って、運転操作部DOを構成する各部の操作に対応するエンジン動作の制御を行うべく、集積回路等で構成されている。
【0041】
運転操作部DOは、ステアリングや、アクセル、ブレーキ等の通常の運転のための各種操作に必要な各部で構成されている。
【0042】
ここで、上記態様では、自動運転装置100が、走路誘導部である電磁誘導線IWに沿った走行(誘導走行)をさせる誘導走行部GDと、誘導走行からの離脱と誘導走行への復帰とを行う離脱復帰部BCとを備えており、さらに、自律走行部ADを備え、自律走行部ADにより、誘導走行から離脱して復帰するまでの間、自動運転車両である車両VEを自律走行させることが可能となっている。これにより、走路誘導部である電磁誘導線IWに対する離脱から復帰までを自律走行により行うものとすることで、走行を維持させられるものとなる。
【0043】
以下、
図4を参照して、自動運転装置100を搭載した車両VEにおいて、誘導走行からの離脱と誘導走行への復帰とを行う態様の一動作例について説明する。
【0044】
図4(A)~
図4(D)は、一例として、電磁誘導線IWが埋設された走路RO上に障害物OBが存在し、これを車両VEが回避すべく一旦誘導走行から離脱し、再度、電磁誘導線IWが埋設された走路RO上に戻る、すなわち誘導走行に復帰する場合について示している。なお、車両VEあるいは自動運転装置100は、電磁誘導線IWの位置(あるいはこれが埋設されている走路RO)についての位置情報を有していることで、電磁誘導線IWが埋設された走路RO上に戻ることが可能となっているものとする。
【0045】
まず、
図4(A)に示すように、矢印A1に示す方向を進行方向とする車両VEにおいて、測距部DMでの測距により、先方に存在する障害物OBを検知すると、これを回避すべく、自動運転装置100は、車両VEの進路を矢印B1に示す方向に変更して誘導走行から離脱して自律走行に切り替えつつ、
図4(B)に示すように、測距部DMによる障害物OBの測距を継続する。この際、車両VEの進路を矢印B2に示すように、順次変更していく(進路を更新していく)。すなわち、測距部DMによる測距結果と地図データMPとして格納された各種情報と測距部DMで取得された周囲環境情報と照合をしつつ、車両VEにおける自己位置の推定しながら自律走行を行う。
【0046】
障害物OBを測距した結果、障害物OBの存在範囲が判明すると、自動運転装置100は、
図4(C)に示すように、矢印B2,B3…に示す進路について、誘導走行に復帰可能な位置に向くように、変更していく。この結果、最終的に矢印B7に示すように、電磁誘導線IWの埋設位置に到達すると、
図4(D)に示すように、その後は、誘導走行に復帰する、すなわち自律走行から誘導走行に切り替えて、電磁誘導線IWに沿った走行を再開する。
【0047】
また、上記態様の場合、測距部DMあるいはこれによる検知結果を取得する自動運転プログラムAOは、障害物OBを検知する障害物検知部として機能し、離脱復帰部BCは、障害物検知部としての測距部DMにおいて走行上に障害物OBが検知された場合に、離脱の要否を判定し、離脱を要する場合、復帰位置の探索を開始するものとなっている。
【0048】
以下、
図5を参照して、自動運転装置100を搭載した車両VEにおいて、誘導走行からの離脱と誘導走行への復帰とを行う態様の他の一動作例について説明する。
図5(A)及び
図5(B)は、他の一例として、車両VEが交差点CSを通過する場合について示している。なお、図示の一例では、Y方向を垂直方向とするXZ面において、車両VEが交差点CSを-X方向に直進しようとする場合を示している。
【0049】
走路ROに埋設される電磁誘導線IWについては、種々の態様とすることが考えられるが、例えば1つのループ状とする態様(
図3参照)とすることが考えられる。このため、例えば、
図5(A)に示すような交差点CSにおいては、電磁誘導線IWの交錯を回避すべく、複数のループ状の電磁誘導線IW(図示では4つの電磁誘導線IW1~IW4)を道路ごとに交差点CSの直近手前で折り返すように配置した埋設とし、交差点CS内には、電磁誘導線IWが存在しない態様としている。このような態様において、図示の一例では、電磁誘導線IWのうち交差点CS側の端部(終端)に、マーカMKを併せて埋設している。当該マーカMKとしては、例えばRFIDタグ等のようにID情報を保有し、車両VEの通過に際して、車両VE側で当該ID情報を取得可能としている。つまり、車両VEすなわち自動運転装置100は、マーカMKからの情報を取得することで、電磁誘導線IWの端部に到達して交差点CSに入り、電磁波RWが受信されなくなる、あるいは既に受信されなくなっており、誘導走行から一旦離脱することを認識できる。ここで、上記のような電磁誘導線IWの終端、すなわち電磁波RWの発信区間の終端を示すマーカMKを、終端通知部TNとする。図示のように、車両VEが交差点CSを-X方向に直進する場合、図中の8つのマーカMKのうち、車両VEの交差点CSへの入口側にあるマーカMKと、交差点CSへの出口側にあるマーカMKとが、車両VEにとっての終端通知部TNということになる。ここでは、入口側の終端通知部TNをTN1とし、出口側の終端通知部TNをTN2とする。
【0050】
この場合、例えば
図5(A)において実線で示すように、車両VEが交差点CSの入口直近手前に到達し、離脱復帰部BC(
図2参照)がRFID受信部RRを介して、一の終端通知部TNである終端通知部TN1からの通知を受けると、判定部JGにおいて、電磁波RWの発信がなくなり誘導走行が終了したものと判定し、車両VEを誘導走行から離脱させ自律走行に切り替える。その後、例えば
図5(B)において実線で示すように、車両VEが交差点CSの出口直近手前に到達し、離脱復帰部BC(
図2参照)がRFID受信部RRを介して、他の終端通知部である終端通知部TN2からの通知を受けると、判定部JGにおいて、再び電磁波RWが受信されるようになる、あるいは既に受信されるようになっており、誘導走行への復帰を完了したと判定する。また、この場合、離脱復帰部BCは、走路ROに埋設される電磁誘導線IWにより構成される走路誘導部から地上に向けて発信される電磁波RWの受信可否に基づき、判定部JGにおいて、離脱の有無を判定するものとなっている、とも言える。
【0051】
以上のように、上記一例においても、一旦誘導走行から離脱し、再度、電磁誘導線IWが埋設された走路RO上に戻る、すなわち誘導走行に復帰する態様となる。
【0052】
以下、
図6を参照して、上述した自動運転装置100について概要を説明する。
図6(A)は、自動運転装置100が誘導走行を行っている状態を示す概念図である。つまり、図示においてハッチングで示す誘導走行部GDに基づき運転制御がなされている状態が示されている。
図6(B)は、自動運転装置100が自律走行を行っている状態を示す概念図である。つまり、図示においてハッチングで示す自律走行部ADに基づき運転制御がなされている状態が示されている。
【0053】
図示のように、また、既述のように、本実施形態の自動運転装置100は、自動運転車両である車両VEに搭載されるものであって、走路誘導部である電磁誘導線IWから受信した電磁波RWに基づき車両VEを電磁誘導線IWに沿った誘導走行をさせる誘導走行部GDと、誘導走行からの離脱と、誘導走行への復帰とを行う離脱復帰部BCと、誘導走行から離脱して復帰するまでの間、車両VEを自律走行させる自律走行部ADとを備えている。上記自動運転装置100では、電磁誘導線IWで構成される走路誘導部から発せられる電磁波RWに基づく走行をしながら、必要に応じて、走行範囲からの離脱と復帰とを行い、離脱から復帰までの間において自律走行を行う態様とすることで、例えば電磁誘導線IWを利用した確実な位置での走行(
図6(A)に示す誘導走行)を原則としつつ、障害物OBの回避が必要な箇所(
図4参照)や、電磁誘導線IWからの受信が途切れた箇所(
図5参照)等においては、電磁誘導線IWに対する離脱から復帰まで(離脱中)を、
図6(B)に示す自律走行により行うものとすることで、走行を維持させられる。
【0054】
以下、
図7として示すフローチャートを参照して、自動運転装置100を搭載した車両VEにおける一連の動作についての一例を説明する。なお、
図7として示すフローチャートは、
図4に例示した動作について対応する一例を示している。
【0055】
まず、前提として、自動運転装置100は、電磁誘導線IWに沿った誘導走行から動作を開始するものとし、また、必要に応じて、管理部CTより地図や経路に関する情報を受信し、地図データMPに格納する(ステップS101)ものとする。その上で、測距部DMによるセンシング(測距)を行うことで(ステップS102)、障害物OBの検知をしつつ、これに基づく位置推定等を行いつつ進路を進んでいき、現在位置の更新がなされる(ステップS103)。
【0056】
ステップS103における現在位置の更新がなされるごとに、自動運転装置100は、障害物OBの有無を確認し(ステップS104)、障害物OBが検知されなければ(ステップS104:No)、自動運転装置100は、当初の誘導走行を維持(継続)し(ステップS105)、一連の処理を終える。すなわち、ステップS101からの動作に戻る。なお、ステップS101について、特に2回目以降は不要であれば、処理を省略し、ステップS102以降の動作から再開するものとしてもよい。
【0057】
一方、ステップS104において、障害物OBが検知された場合(ステップS104:Yes)、自動運転装置100は、離脱復帰部BCの判定部JGにおいて、誘導走行からの離脱の要否について判断する(ステップS106)。
【0058】
ステップS106において、離脱不要と判定した場合(ステップS106:No)、自動運転装置100は、当初の誘導走行を維持(継続)し(ステップS105)、一連の処理を終える。
【0059】
一方、ステップS106において、離脱を要すると判定した場合(ステップS106:Yes)、自動運転装置100は、離脱復帰部BCにおいて、誘導走行から自律走行による自動運転にモード切替をする処理を行う(ステップS107)。その上で、再度、測距部DMによるセンシング(測距)が行われる(ステップS108)。つまり、
図4(A)~
図4(C)に例示した動作が行われる。ただし、ステップS108では、測距部DMによるセンシングにより、障害物OBの検知を継続するのみならず、走行する車両VEの周囲状況についての周囲環境情報が取得され、自動運転プログラムAOに対して出力される。既述のように、自動運転プログラムAOでは、自律走行に際して、自己位置の推定を行うために、当該周囲環境情報が利用される。つまり、当該周囲環境情報等に基づく位置推定等を行いつつ進路作成(進路の変更内容の決定)がなされ(ステップS109)、これに従って進んでいくことで、現在位置の更新がなされる(ステップS110)。
【0060】
ステップS110における現在位置の更新の後、誘導走行への復帰が可能であるか否かが確認され(ステップS111)、復帰可能と判定されると(ステップS111:Yes)、誘導走行への切替えすなわち復帰処理がなされ(ステップS112)、これが維持される(ステップS105)。つまり、
図4(D)に例示した状態となる。
【0061】
一方、ステップS111において、復帰不可能と判定されると(ステップS111:No)、自動運転装置100は、ステップS108からの動作に戻り、復帰可能となるまで上記動作を繰り返す。
【0062】
以下、
図8として示すフローチャートを参照して、自動運転装置100を搭載した車両VEにおける一連の動作についての他の一例を説明する。なお、
図8として示すフローチャートは、
図5に例示した動作について対応する一例を示している。
【0063】
まず、
図7の場合と同様に、自動運転装置100は、電磁誘導線IWに沿った誘導走行から動作を開始するものとし、また、必要に応じて、管理部CTより情報を受信した上で、測距部DMによるセンシング(測距)を行い、現在位置の更新がなされる(ステップS201~S203)。
【0064】
ステップS203における現在位置の更新がなされるごとに、自動運転装置100は、一の終端RFIDからの情報受信すなわち終端通知部TN1からの通知を受けたか否かを、RFID受信部RRを介して離脱復帰部BCにおいて確認し(ステップS204)、終端通知部TN1からの通知が確認されなければ(ステップS204:No)、自動運転装置100は、当初の誘導走行を維持(継続)し(ステップS205)、一連の処理を終え、ステップS201からの動作に戻る。
【0065】
一方、ステップS204において、終端通知部TN1からの通知が確認された場合(ステップS204:Yes)、すなわち離脱復帰部BCの判定部JGにおいて誘導走行からの離脱が確認された場合、自動運転装置100は、離脱復帰部BCにおいて、誘導走行から自律走行による自動院展にモード切替をする処理を行う(ステップS206)。その上で、測距部DMによるセンシング(測距)(ステップS207)や、進路作成(ステップS208)、さらには、現在位置の更新(ステップS209)がなされる。
【0066】
ステップS209における現在位置の更新の後、自動運転装置100は、他の終端RFIDからの情報受信すなわち終端通知部TN2からの通知を受けたか否かを、RFID受信部RRを介して離脱復帰部BCにおいて確認し(ステップS210)、確認がなされると(ステップS210:Yes)、誘導走行への切替えがなされ(ステップS211)、これが維持される(ステップS205)。つまり、
図5(B)に例示した状態となる。
【0067】
一方、ステップS210において、終端通知部TN2からの通知が確認されない場合(ステップS210:No)、自動運転装置100は、ステップS207からの動作に戻り、終端通知部TN2からの通知が確認されるまで上記動作を繰り返す。
【0068】
〔第2実施形態〕
以下、
図9等を参照して、第2実施形態に係る自動運転装置100及び運行管理システム500について一例を説明する。
図9は、自動運転装置100及び運行管理システム500について示す概念図である。また、
図10は、本実施形態の自動運転装置100及びこれを含む運行管理システム500の一構成例について示す概念図であり、
図1に対応する図である。
図11は、運行管理システム500の一構成例を示すブロック図であり、
図2に対応する図である。
【0069】
本実施形態に係る自動運転装置100を含む運行管理システム500は、インフラ側と車両側との間で双方向的に通信を行って、自動運転をインフラ側から支援しつつ、運行管理を行うためのシステムが構築されており、特に、車両VEの走行経路上に設けられた路側装置70から車両VEに対して情報の提供がなされる点において、第1実施形態の場合とは異なっている。
【0070】
以下、本実施形態に係る運行管理システム500の全体概要について説明する。例えば
図9や
図10等に示すように、本実施形態の運行管理システム500は、第1実施形態の場合と同様に、車両VEに搭載される自動運転装置100に加え、管理部CTと、電波制御部RCと、電磁波受信部である位置検知部PDと、電磁誘導線IWとを備える。さらにこれらに加えて、本実施形態の運行管理システム500は、既述のように、路側装置70を備えている。また、車両VEは、通信部TTにおいて、管理部CTのみならず、路側装置70との通信も可能となっている。
【0071】
なお、ここでは、一例として、
図9に示すように、車両VEは、例えば巡回バスBUであり、予め定められているルートを走行するものとし、当該ルートに沿って電磁誘導線IWが埋設されているものとする。ただし、これに限らず、例えばラストワンマイルを担う配送車両等、異なる種々の態様において、本実施形態の自動運転装置100およびこれを用いた運行管理システム500は適用可能である。
【0072】
路側装置70は、
図9に例示するように、バス停(停留所)BSを特定の順で巡っていく巡回バスBUとしての車両VEが走行する場合において、巡回バスBUの既定ルート上に存在するバス停BSや交差点の信号機SG等に設けられて、近距離通信により近隣を通過する車両VEとの通信が可能になっているとともに、管理部CTとも通信可能に接続されている。なお、管理部CTとの接続は図示のように、有線とする場合に限らず、無線通信となっていてもよい。
【0073】
路側装置70は、各種回路基板やCPU、ストレージデバイス等で構成され、例えばバス停BSにおける発着状況に関する情報や、交差点の信号機SGの灯色切替のタイミング等を示す信号情報を、近隣を通過する車両VEに対して情報を提供する。すなわち、路側装置70は、車両VEとの無線通信を行って情報を提供するための装置であり、ここでは、特に信号情報を提供するものとなっている。車両VEは、自己の通行可否や出発タイミング等を路側装置70から与えられた情報に基づいて判定して動作する、あるいは路側装置70での判定結果をもらってこれにしたがって動作する。つまり、路側装置70は、情報提供装置あるいは判定装置として機能する。なお、路側装置70についてのより具体的な一構成例については、
図11を参照して後述する。
【0074】
また、車両VEは、第1実施形態の場合と同様に、管理部CTとの間においても通信可能となっている。すなわち、車両VEは、管理部CTからの指令に従って、管理部CTの管理下で走行しつつ、実際に走行している箇所の近隣に路側装置70が存在する場合には、当該箇所及びその周辺に関する情報について、路側装置70から受け取っている。以上のように、車両VEは、管理部CTや路側装置70から各種情報を受けることで、より安定し、かつ、安全性の高い自律走行を可能にしている。
【0075】
以下、
図11を参照して、車両VEやインフラ側の設備について、一構成例を説明する。図示のように、また、既述のように、車両VEには、位置検知部PDのほかに、自動運転プログラムAOと、電子制御ユニットVCと、測距部DMと、運転操作部DOと、地図データMPと、RFID受信部RRとが設けられており、さらに、管理部CTや路側装置70との通信を行うための通信部TTが搭載されている。
【0076】
ここで、車両VEは、通信部TTを介した管理部CTとの通信を行うが、これとは別に、路側装置70と近距離通信を行うものとなっている。すなわち、車両VEは、路側装置70と通信可能な範囲に到達すると、自己の位置についての位置情報を、路側装置70に対して送信する(問合せをする)ことで、路側装置70から情報提供を受ける。図示では、一例として、信号機SGに取り付けられた路側装置70について示している。
【0077】
図示における一例の路側装置70は、各種回路基板やCPU、ストレージデバイス等で構成されるとともに路側装置70を構成する他の各部と接続されて、各種動作処理を行う主制御部70Aと、車両VEや管理部CTとの通信を行うための通信部70tと、路側装置70(信号機SG)の設置された箇所付近についての地形データ等を含む地図データ部70mと、信号機SGの周辺についての監視を行う路側センサー70sとを備える。特に、ここでは、路側装置70は、信号機SGに接続されて、信号機SGから信号情報を受け取る態様となっており、車両VEからの問合せに応じて、信号機SGに関する信号情報等を車両VEに提供する。また、路側装置70は、路側センサー70s等により、信号機SGの周辺(信号機SGのある交差点及びその周囲)についての監視を行い、監視結果を車両VEに対して周辺における交通状況に関する情報等の提供を併せて行うものとしてもよい。以上のように、路側装置70は、インフラ側から車両側へ情報を提供するI2V(Infrastructure to Vehicle)通信により、車両VEに対して情報提供を行う装置となっている。
【0078】
なお、車両VEには、第1実施形態の場合と同様に、位置検知部PDが搭載されていることで、これに基づく誘導走行も可能となっている。
【0079】
上記態様となるように、図示の車両VEでは、自動運転プログラムAOにおいて、自動運転制御部AC等に加え、離脱復帰部BCや自己位置推定部PEが設けられている。つまり、誘導走行に加え、自律走行が可能となっており、さらには、これらの切替えも可能である。また、上記に際して、自律走行部ADは、路側装置70との無線通信により提供された情報に基づき車両VEを自律走行させることで、より安全性の高い走行ができる。
【0080】
以下、
図12を参照して、自動運転装置100を搭載した車両VEについて、一の動作例を説明する。なお、
図12は、
図5に対応する図であり、車両VEが交差点CSを通過する場合についての一例を示している。なお、ここでは、図示のように、交差点CSに設けた信号機SGに接続される路側装置70が設けられており、車両VEすなわち自動運転装置100は、路側装置70と通信して、情報の提供を受ける態様となっているものとする。
【0081】
この場合、
図5を参照して説明した態様と同様に、車両VEが、交差点CSを-X方向に直進して通過する際に、終端通知部TN1からの通知を受けて、一旦誘導走行から離脱し、終端通知部TN2からの通知を受けることで、再度、電磁誘導線IWが埋設された走路RO上に戻る、すなわち誘導走行に復帰する態様となる。この際、車両VEは、さらに、路側装置70から各種情報(信号情報等)を取得できる。
【0082】
以下、
図13を参照して、自動運転装置100を搭載した車両VE(バスBU)について、他の動作例を説明する。図示の一例では、車両VE(バスBU)が、交差点CSを+Z方向に直進して通過し、さらに、その先へ進むに際して、駐車(停止)している車両GMが存在し、これが障害物OBとなっており、矢印C1に示すように、交差点CSの通過後において、これを迂回(回避)すべく、バスBUが、反対車線にはみ出して走行する場合について示している。さらに、上記一例では、車両GMとして、2台の車両GM1,GM2が縦列した状態で存在しており、ハッチングの領域DD1に存在するZ方向について2台目の車両GM2については、1台目の車両GM1によりバスBUにとって死角となり、バスBUの測距部DMでは確認できない状態になっているものとする。
【0083】
このような場合、例えば路側センサー70s(
図11参照)により、車両GM2の存在を検知し、検知結果をバスBUに送信することで、障害物OBとしての車両GMを回避すべく、誘導走行から離脱して自律走行を行うに際して有用な情報提供がなされるようにしてもよい。
【0084】
さらに、上記態様において、路側装置70が、対向車線の状況や、バスBUである車両VEのサイズや性能まで踏まえて情報を提供するものとしてもよい。
【0085】
また、一方、バスBUである車両VEからも自身に関する種々の情報を路側装置70に送信することで、より的確な情報の取得が可能となるようにしてもよい。
【0086】
例えば、車両VE自身についての現在位置や現在位置に基づく今後の進路予定の情報等で構成される将来位置情報を路側装置70に対して提供する一方、路側装置70は、これと周辺状況等を勘案して、車両VEの交差点CSの通過可否や、その後の障害物OBとしての車両GMの回避可否に関する情報を提供するような態様が考えられる。より具体的には、路側装置70において、車両VEの通行が現状では不能であると判断された場合に、より的確な停止位置(仮想停止線の位置)や、これが解消される出発可能時間の情報を提供する、といった態様とすることが考えられる。
【0087】
本実施形態においても、例えば電磁誘導線IWを利用した確実な位置での走行を原則としつつ、障害物OBの回避が必要な箇所や、電磁誘導線IWからの受信が途切れた箇所等においては、電磁誘導線IWに対する離脱から復帰まで(離脱中)を、自律走行により行うものとすることで、走行を維持させられる。特に、本実施形態では、路側装置70から種々の情報を取得することが可能となっている。
【0088】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0089】
まず、上記において、自動運転装置100あるいは運行管理システム500の使用態様を、車両VEとしてのゴルフカートや巡回バス等としているが、これらに限らず、種々の態様において、自動運転装置100あるいは運行管理システム500を利用することができる。
【0090】
また、上記では、走路誘導部の一例として、電磁誘導線IWを利用した場合について説明しているが、これに限らず、例えば、複数の磁気マーカやRFIDタグを利用した複数のマーカを、電磁誘導線IWに代えて、走路ROに沿うように埋設する態様とすることも考えられる。
【0091】
また、マーカMKについて、上記ではRFIDを利用して絶対位置基準を示す態様としているが、マーカMKとしては、上記のようなRFIDを検知するようなものに限らず、種々の態様が考えられ、例えば走行上に存在する各種ランドマークを車載のカメラ等で検知することで、絶対位置基準とすることも考えられる。
【0092】
また、上記のうち、第1実施形態において、
図4と
図5あるいは
図7と
図8を個別に説明したが、これらの動作を併せて行い、どちらの場合についても対応可能とすることができる。具体的には、
図7のステップS101~S103の処理と
図8のステップS201~S203の処理とを共有化し、S104以後の動作及びS204以後の動作を同時並行的に行うことで、双方のケースについて対応できるものにできる。
【0093】
また、第2実施形態に示した一例におけるマーカMKの配置についても、種々の態様とすることができ、例えば
図9に例示した各マーカMKを、交差点CSの直近に設けたものとは別途に用意し、車両VEの進行方向(矢印A1)について、バス停BSや信号機SGの手前であって、路側装置70との通信可能となる起点位置に配置することで、車両VEが、当該各マーカMKを検知して絶対的基準に基づく位置補正をするとともにこれをトリガーとして、対応する路側装置70との通信を開始するようにしてもよい。
【0094】
また、第1実施形態や第2実施形態等に例示した各態様を、矛盾のない範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0095】
また、自動運転装置100を構成するものとしては、上記以外にも種々の態様が考えられ、例えば、信号機SGにおいて、監視用のセンサー部が設けられている場合には、これを路側センサー70sとして援用する態様としてもよい。
【0096】
また、管理部CTについても、種々の態様が可能であり、例えば遠隔した場所に管理センター(管理サーバ)等として設けたり、あるいは、クラウド上において、各種処理やデータ保管を行ったりすることも考えられる。
【0097】
また、上記のうち、車両VEの自己位置推定に関しては、測距部DMからの周囲環境情報と地図データMP内の情報とを照合する場合について説明しているが、これに限らず、例えば
図1に対応する
図14に示すように、車両VEに、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)IMや、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)SS、あるいは車速計測装置VSといったものが搭載され、これらにおける測定結果を必要に応じて適宜組み合わせることで、自律位置推定に利用する態様としてもよい。また、自己位置推定においては、測距部DM等によるものに代えて、慣性計測装置IM等を採用する態様とすることも考えられる。
【0098】
また、上記のうち、第2実施形態において、車両VEは、路側装置70と近距離通信を行うものとしているが、これに限らず、4GLTE等の公衆通信網で構成される広域通信を利用する態様としてもよい。
【符号の説明】
【0099】
70…路側装置、70A…主制御部、70m…地図データ部、70s…路側センサー、70t…通信部、100…自動運転装置、500…運行管理システム、A1…矢印、AC…自動運転制御部、AD…自律走行部、AO…自動運転プログラム、B1,B2,B3,B7…矢印、BC…離脱復帰部、BS…バス停(停留所)、BU…巡回バス(バス)、C1…矢印、CS…交差点、CT…管理部、DD1…領域、DM…測距部、DO…運転操作部、EC…推定位置補正部、GD…誘導走行部、GM,GM1,GM2…車両、IM…慣性計測装置、INk…区間、IW,IW1~IW4…電磁誘導線、JG…判定部、MK,MK1,MK2,MKk…マーカ、MP…地図データ、OB…障害物、PD…位置検知部、PE…自己位置推定部、RC…電波制御部、RO…走路、RR…RFID受信部、RW…電磁波、SG…信号機、SS…衛星測位システム、TN,TN1,TN2…終端通知部、TT…通信部、VC…電子制御ユニット、VE…車両、VS…車速計測装置