(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142056
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車載装置、プログラム、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B60R16/02 660A
B60R16/02 645D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048726
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 卓真
(57)【要約】
【課題】車載負荷に対する制御を効率的に行う車載装置等を提供する。
【解決手段】車載装置は、車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電される車載装置であって、前記車載ECUへの給電制御を行う制御部を備え、前記制御部は、前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電される車載装置であって、
前記車載ECUへの給電制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
車載装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記車載負荷に対する駆動要求を取得し、
取得した駆動要求に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記電源装置と前記車載ECUとは第1リレーを介して接続され、
前記電源装置と前記車載負荷とは、前記車載ECUにて開閉制御される第2リレーを介して接続され、
前記制御部は、
前記第1リレーの開閉制御を行うことにより、前記車載ECUへの給電制御を行い、
前記第2リレーの開閉制御を行うことにより、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
請求項1又は請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記第2リレーには、前記車載ECU及び前記車載装置それぞれから延設されることにより冗長化された制御線が接続される
請求項3に記載の車載装置。
【請求項5】
前記車載ECUの状態は、未起動状態、起動中状態、及び起動済状態を含み、
前記制御部は、前記車載ECUの状態が前記未起動状態又は前記起動中状態の際、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記車載ECUから前記車載負荷に対する制御の代替を許可する許可通知を取得した場合、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替した際、代替した旨を示す情報を前記車載ECUに出力する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項8】
前記車載ECUの状態は、故障状態を含み、
前記制御部は、前記車載ECUの状態が前記故障状態の際、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項9】
前記車両には、前記車両における全体制御を行う統合ECUが搭載されており、
前記統合ECUの機能部として構成される
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項10】
前記電源装置からの給電は、常時行われる
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項11】
車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電されるコンピュータに、
前記車載ECUへの給電制御に関する処理を実行し、
前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項12】
車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電されるコンピュータに、
前記車載ECUへの給電制御に関する処理を実行し、
前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置、プログラム、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば、ワイパー駆動装置、車両の内外の灯火装置、ドアロック装置、パワーウインドウ等のボディ系の装置の制御を統括して行う車載ECUであるボディECUが搭載されている(例えば特許文献1)。特許文献1のワイパー駆動装置は、車載ECU(ボデーECU)を含み、車載ECUに適用されている制御プログラムにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両に搭載される駆動装置及び車載ECUにおいては、ボディ系装置(車載負荷)それぞれに対する電源管理等に関する制御を効率的に行う点については考慮されていない。
【0005】
本開示は、車載負荷に対する制御を効率的に行うことができる車載装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載装置は、車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電される車載装置であって、前記車載ECUへの給電制御を行う制御部を備え、前記制御部は、前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、車載負荷に対する制御を効率的に行う車載装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る車載システム(電源管理システム)のシステム構成を例示する模式図である。
【
図2】車載装置(電源管理ECU)の内部構成を例示するブロック図である。
【
図3】車載装置及び車載ECU等による処理の流れ(シーケンス)を例示する説明図である。
【
図4】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図5】車載ECUの制御部の処理(車載負荷の故障検出)を例示するフローチャートである。
【
図6】実施形態2(統合ECU)に係る車載システムのシステム構成を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載装置は、車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電される車載装置であって、前記車載ECUへの給電制御を行う制御部を備え、前記制御部は、前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0011】
本態様にあたっては、車載装置は、車載負荷の制御を行う車載ECU(個別ECU)と通信可能に接続され、当該車載ECUへの給電制御を行う電源管理ECUとして機能する。車載装置と車載ECUとは、例えばCANゲートウェイ等の中継装置を介して、間接的に通信可能に接続されものであってよく、又は車載装置と車載ECUとが同じCANバス等の通信線に接続され、直接的に通信可能に接続されものであってもよい。車載装置は、車両に搭載される電源装置から給電されているため、電源装置から車載ECUに対し給電がされていない場合、すなわち車載ECUの電源がオフの状態においても、起動している。車載装置は、車載ECUの状態に応じて、車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替するため、例えば車載ECUが電源オフの状態であっても、車載ECUに代わって、車載負荷に対する制御を代替する。これにより車載負荷に対する冗長制御を可能とし、当該車載負荷に対する制御を効率的に行うことができる。特に、車載負荷が例えばドアロック機構(ドアロックモータ)等の即時性又は即応性を要求されるものであり、当該ドアロックモータに対する駆動要求が行われた際に車載ECUが電源オフとなっている場合、車載ECUの起動に要する時間(起動時間)によって、駆動開始までの遅延が発生する。このような即時性等を要求される車載負荷に対する制御にて遅延が発生した場合、駆動要求から駆動開始までの所要時間(レスポンスタイム)が増加するものとなる。これに対し、電源装置から給電される車載装置の制御部は、電源オフ状態等の車載ECUの状態に応じて、車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替する。従って、車載ECUの起動時間による遅延の影響を受けることなく、車載負荷に対する制御にて要求される即時性等を担保することができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部は、前記車載負荷に対する駆動要求を取得し、取得した駆動要求に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0013】
本態様にあたっては、車載負荷に対する駆動要求は、例えば、車両に搭載されるセンサによる検出又はスイッチの操作等により行われるところ、車載装置の制御部は、当該駆動要求に応じて、車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替するため、車載負荷に対する制御を効率的に行うことができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載装置は、前記電源装置と前記車載ECUとは第1リレーを介して接続され、前記電源装置と前記車載負荷とは、前記車載ECUにて開閉制御される第2リレーを介して接続され、前記制御部は、前記第1リレーの開閉制御を行うことにより、前記車載ECUへの給電制御を行い、前記第2リレーの開閉制御を行うことにより、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0015】
本態様にあたっては、車載負荷は、電源装置から延設される電線に設けられた第2リレーが開閉(オン又はオフ)されることにより、駆動又は停止等による駆動制御が行われる。第2リレーの開閉制御は、車載ECUのみならず、車載装置(制御部)によっても行われるため、車載ECUと車載装置とにおいて、車載負荷に対する制御に関する処理態様を共通化することができ、車載負荷の制御を行うための制御機構を簡素化することができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載装置は、前記第2リレーには、前記車載ECU及び前記車載装置それぞれから延設されることにより冗長化された制御線が接続される。
【0017】
本態様にあたっては、車載負荷の駆動制御を行うための第2リレーには、車載ECUから延設された制御線と、車載装置から延設された制御線とが、接続される。すなわち、第2リレーには、2つの系統による制御線が接続されることにより、冗長化された接続形態を構成することができる。これにより、万が一、いずれかの制御線が不通となった場合であっても、他方の制御線を用いて、第2リレーの開閉制御を行うことができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ECUの状態は、未起動状態、起動中状態、及び起動済状態を含み、前記制御部は、前記車載ECUの状態が前記未起動状態又は前記起動中状態の際、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0019】
本態様にあたっては、車載ECUに対する電源装置からの給電は、第1リレーを介して行われ、当該第1リレーの開閉制御は、電源管理ECUとして機能する車載装置によって行われる。第1リレーが開(オフ)の状態においては、車載ECUに対する給電は行われず(電源オフ)、車載ECUは未起動となる停止状態(未起動状態)となる。車載装置が第1リレーを閉(オン)にすることにより、車載ECUに対する給電(電源オン)が行われ、車載ECUは初期化等の起動処理を開始し、起動中状態に遷移する。車載ECUは初期化等の起動処理を完了することにより、起動中状態から起動済状態に遷移する。起動済状態の車載ECUは、第2リレーの開閉制御、すなわち車載負荷の駆動制御を開始する。車載ECUは起動処理を完了した際、例えばCAN通信(CANメッセージの送信)を開始するため、車載装置は、第1リレーを閉(オン)にした後、車載ECUから最初のCANメッセージを受信することにより、車載ECUが起動済状態に遷移したことを検出(認識)することができる。又は、車載装置は、第1リレーを閉(オン)にした後、車載ECUの起動時間に相当する所定の時間が経過した際、車載ECUが起動済状態に遷移したと認識するものであってもよい。車載装置の制御部は、第1リレーの開閉状態、及び閉(オン)にした後、車載ECUから最初に受信したデータ又は信号等に基づき、車載ECUの状態、すなわち未起動状態、起動中状態、又は起動済状態のいずれの状態であるかを効率的に検出(特定)することができる。車載装置の制御部は、検出した車載ECUの状態、又は状態遷移に関する履歴状態を記憶部に記憶するものであってもよい。車載装置の制御部は、検出した車載ECUの状態に応じて、車載ECUが未起動状態又は起動中状態の際、車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替するものであり、すなわち車載ECUが車載負荷(第2リレー)の制御を行えない期間にて、車載ECUを代替する処理を行う。これにより、車載ECUが起動済状態の場合、車載装置の制御部は、車載負荷に対する制御を行わないため、車載負荷に対する駆動制御、すなわち第2リレーに対する開閉制御が、車載装置と車載ECUとにより重複して行われることを防止することができる。従って、車載装置と車載ECUとによる車載負荷に対する制御が衝突(コンフリクト)することを、確実に回避することができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部は、前記車載ECUから前記車載負荷に対する制御の代替を許可する許可通知を取得した場合、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0021】
本態様にあたっては、車載ECUは、例えば、自ECUへの給電が停止(電源オフ)される前に、車載装置に対し、車載負荷に対する制御の代替を許可する許可通知を出力(送信)する。許可通知には、当該車載ECUに接続される1つ以上の車載負荷が列挙され、各車載負荷に対する代替可否を示すフラグ値(1:代替許可、0:代替不可)等の情報が記載されているものであってもよい。車載装置の制御部は、車載ECUから取得(受信)した許可通知を記憶部に記憶する。車載装置の制御部は、車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替する際、記憶部を参照することにより、車載ECUから許可通知を取得した場合のみ、当該代替する処理を行う。すなわち、車載装置の制御部は、事前に車載ECUから許可通知を取得していない場合、代替する処理を行わない。又は、車載装置の制御部は、取得した許可通知において、代替許可を示す情報が付与されている車載負荷に対してのみ、代替処理を行うものであってもよい。これにより、車載ECUに接続される車載負荷が故障中の場合、又はセキュリティの観点から代替処理が行われることが適切でない車載負荷等の理由により、いずれかの車載負荷を車載装置による代替処理の対象外とすることを、車載ECU側にて設定することができる。従って、故障中の車載負荷、又はセキュリティ等の他の要因により、代替処理が行われることが適切でない車載負荷に対し、車載装置が、当該車載負荷に対する車載ECUの制御を代替することを、防止することができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る車載装置は、前記制御部は、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替した際、代替した旨を示す情報を前記車載ECUに出力する。
【0023】
本態様にあたっては、車載装置の制御部は、車載負荷に対する車載ECの制御を代替した際、例えば、代替した回数(代替制御回数)、又は代替した日時等を示す時点情報(タイムスタンプ)による履歴情報(代替実績情報)を車載ECUに出力する。車載ECUは、車載装置から出力された代替実績情報を取得することにより、現時点までの、又は所定期間における車載装置による代替制御回数等を把握することができる。車載装置による代替処理が行われると、車載ECUによる駆動制御が行われていないにもかかわらず、車載負荷は駆動するものとなる。このような代替処理による車載負荷の駆動に対し、車載ECUは、当該車載負荷に対する異常検知を行うものとなるが、当該異常検知は、実質的には誤検知に相当するものである。これに対し、車載ECUは、車載装置から出力された代替実績情報(代替制御回数)と、異常検知した回数(異常検知回数)とを対比することにより、車載負荷において真の異常が発生したか否かを判定することができる。例えば、車載ECUは、代替制御回数と異常検知回数とが同じである場合、車載負荷は正常であると判定し、代替制御回数と異常検知回数とが異なる場合、車載負荷は異常であると判定するものであってもよい。
【0024】
(8)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ECUの状態は、故障状態を含み、前記制御部は、前記車載ECUの状態が前記故障状態の際、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0025】
本態様にあたっては、車載装置の制御部は、車載ECUと通信し、又は中継機能を有する統合ECU等と通信することにより、車載ECUが故障状態である旨を示す通知(故障通知)を取得し、記憶部に記憶する。車載装置の制御部は、当該故障通知を取得することにより、車載ECUの状態が故障状態であると判定し、当該車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替するため、車載負荷に対する制御の冗長化(フェールセーフ)を図ることができる。車載ECUに接続される車載負荷それぞれに対し、例えばASIL(Automotive Safety Integrity Level)等に応じた機能安全要求が行われるところ、車載ECUが故障した場合であっても、車載装置は、当該故障した車載ECUを代替して、車載負荷に対する制御を行うため、車両制御全般における耐障害性を担保することができる。
【0026】
(9)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車両には、前記車両における全体制御を行う統合ECUが搭載されており、前記統合ECUの機能部として構成される。
【0027】
本態様にあたっては、統合ECUは、複数の車載ECUと通信可能に接続され、各車載ECUから出力される情報に基づき、車両に関する全体制御を行う。統合ECUは、更にタッチセンサ等に接続される照合ECUと通信可能に接続され、当該照合ECUから出力された情報(センサ検出値)に基づき生成した制御信号を、各車載ECUに出力するものであってもよい。車載ECUへの給電制御を行うと共に当該車載ECUが車載負荷に対し行う制御を代替する車載装置を、統合ECUに含ませる、すなわち統合ECUの一機能部として構成することにより、車両に搭載される部品点数の削減を図ることができる。統合ECUが複数の車内通信部(CANトランシーバ等)を備え、これら車内通信部に接続される車載ECU間にて送受信されるデータの中継処理を行う場合、統合ECUは、これら車載ECUから送信されるデータの有無等に基づき、各車載ECUの状態を効率的に把握することができる。これにより、統合ECUの機能部として構成される(含まれる)車載装置は、各車載ECUの状態に応じた代理処理を効率的に行うことができる。
【0028】
(10)本開示の一態様に係る車載装置は、前記電源装置からの給電は、常時行われる。
【0029】
本態様にあたっては、車載装置は、車両に搭載されるバッテリ等の電源装置から常時給電される構成となっており、所謂+B電源による電力が常に供給される。これにより、車両が停止中(IGオフ状態)であっても、車載装置には電源装置から電力が供給され、車載装置は起動している状態(起動済み状態)を維持することができ、初期化処理等の起動に要する遅延を発生させることなく、入力された信号に対する処理を行うことができる。このように車載装置を電源装置から常時給電される構成とすることにより、当該車載装置が起動している積算時間は、車載ECUが起動している積算時間よりも長いものとなる。車載装置は、電源装置から常時給電されるにあたり、車両が停止中(IGオフ状態)においては、例えば、制御部の動作クロック(周波数)を低減させることにより消費電力を低下させた省電力モードに遷移するものであってもよい。
【0030】
(11)本開示の一態様に係る情報処理方法は、車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電されるコンピュータに、前記車載ECUへの給電制御に関する処理を実行し、前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0031】
本態様にあたっては、コンピュータを、車載負荷に対する制御を効率的に行うことができる車載装置として機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0032】
(12)本開示の一態様に係るプログラムは、車両に搭載される車載負荷の制御を行う車載ECUと通信可能に接続され、前記車両に搭載される電源装置から給電されるコンピュータに、前記車載ECUへの給電制御に関する処理を実行し、前記車載ECUの状態に応じて、前記車載ECUが前記車載負荷に対し行う制御を代替する。
【0033】
本態様にあたっては、コンピュータを、車載負荷に対する制御を効率的に行うことができる車載装置として機能させることができる。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る車載システムSを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0035】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る車載システムS(電源管理システム)のシステム構成を例示する模式図である。
図2は、車載装置4(電源管理ECU)の内部構成を例示するブロック図である。車載システムSは、車両Cに搭載される1つ以上の車載ECU2(個別ECU)の電源管理に関する制御(給電制御)を行う車載装置4(電源管理ECU)を主たる装置とし、当該車載装置4と通信可能に接続される統合ECU1及び照合ECU5を含むものであってもよい。
【0036】
統合ECU1、照合ECU5、車載装置4、及び車載ECU2(個別ECU)は、例えば、CANバス等の通信線61によって、相互に通信可能に接続される。これら複数のバス状の通信線61によって、中継機能を有する統合ECU1を中心としたスター状の車載ネットワーク6が構成される。
【0037】
統合ECU1、照合ECU5、車載装置4、車載ECU2、及び車載負荷3に対し、電源装置7から延設される電線71が接続され、当該電線71を介して電源装置7からの電力が供給される。統合ECU1、照合ECU5及び車載装置4には、電源装置7からの電力が常時給電されるように構成されている。
【0038】
電源装置7から車載ECU2に延設される電線71には、電力の給電又は停止(遮断)を切り替える第1リレー20が設けられている。電源装置7から車載負荷3に延設される電線71には、電力の給電又は停止(遮断)を切り替える第2リレー30が設けられている。第1リレー20及び第2リレー30は、例えばFET(Field Effect Transistor)等の半導体スイッチ、又はメカリレーであってもよい。第1リレー20及び第2リレー30がFETである場合、車載ECU2及び車載装置4から延設される制御線72は、FETのゲート端子に接続される。
【0039】
車載ECU2は、車両Cに搭載される車載負荷3の制御を行い、当該車載負荷3に対する電力の供給及び遮断を行う第2リレー30の開閉制御を行う。このように車載ECU2は、1つ以上の車載負荷3の駆動制御を担う個別ECUとして機能する。車載ECU2から第2リレー30に対し、当該第2リレー30の開閉を制御するための信号が送信される制御線72が延設されている。
【0040】
車載装置4は、例えば統合ECU1からの制御信号に応じて、これら複数の車載ECU2に対する電力の供給及び遮断を行う第1リレー20の開閉制御を行うことにより、電源管理ECUとして機能する。車載装置4から第1リレー20に対し、当該第1リレー20の開閉を制御するための信号が送信される制御線72が延設されている。
【0041】
車載装置4は、更に、車載ECU2が開閉制御を行う第2リレー30に対しても、開閉制御を行うことにより、当該車載ECU2による車載負荷3に対する制御を代替する制御代替ECUとしても、機能する。
【0042】
車載装置4から第2リレー30に対し、当該第2リレー30の開閉を制御するための信号が送信される制御線72が延設されている。すなわち、第2リレー30に対し、車載ECU2から延設される制御線72と、車載装置4から延設される制御線72とにより、2系統の制御線72が接続される。当該2系統の制御線72によって、第2リレー30に対する冗長化構成が設けられる。
【0043】
車載装置4及び統合ECU1は、車両Cに搭載されるバッテリ等の電源装置7から常時給電される構成となっており、所謂+B電源による電力が常に供給される。これに対し、車載負荷3及び当該車載負荷3を制御する車載ECU2は、第1リレー20又は第2リレー30等のリレーを介して電源装置7に接続されており、当該リレーが閉(オン)となった場合、給電される。本実施形態において、車載装置4及び統合ECU1は、電源装置7から常時給電される構成であるとしたがこれに限定されず、例えば、バッテリの交換時又は、これら装置における初期化処理又はダイアグ(自己診断)処理を開始又は終了する際に一時的に給電が停止(非給電状態)されるものであってもよい。すなわち、車載装置4は、車載ECU2が非給電状態である期間において、給電状態(起動済み状態)となる期間を有するものであればよい。
【0044】
各種の車載負荷3において、例えば、ドアロックモータ等の駆動部品を含むドアロック機構においては、車両Cが停止中の場合においても、車外からの乗員の操作に応じてドアロックの駆動を行うものとなる。ドアロック機構(車載負荷3)を制御する車載ECU2が停止中(非給電状態)、すなわち未起動状態である場合、このようなドアロックの駆動要求に対し、車載ECU2を起動するために要する時間(起動時間)が処理遅延として発生することが懸念される。これに対し、本実施形態においては、電源装置7から常時給電される車載装置4が、駆動要求に応じて、未起動状態又は起動中状態である車載ECU2を代替する。これにより、車載ECU2の起動時間による遅延の影響を受けることなく、ドアロック機構等の車載負荷3に対する制御にて要求される即時性又は即応性を担保することができる。
【0045】
本実施形態において、車載ECU2(個別ECU)が制御を担う車載負荷3は1つと記載しているが、これに限定されず、車載ECU2は、複数の車載負荷3の制御を行うものであってもよい。この場合、車載ECU2から、これら車載負荷3に接続される第2リレー30それぞれに対し、制御線72が延設される。当該車載ECU2を代替する車載装置4からも、これら車載負荷3に接続される第2リレー30それぞれに対し、制御線72が延設されるものとなる。又は、車載装置4からは、例えばASIL(Automotive Safety Integrity Level)が所定以上の車載負荷3に接続される第2リレー30に対してのみ制御線72が延設され、これらASILが所定以上の車載負荷3に対し車載ECU2が行う制御のみを、代替するものであってもよい。全ての車載負荷3に対し車載装置4から制御線72が延設される場合と比較して、例えばQM以外(ASILがA以上)の車載負荷3の第2リレー30に対してのみ制御線72を延設することにより、部品点数の削減及び車両C重量の低減を図りつつ、車両Cの安全性要件への対応を拡充することができる。
【0046】
統合ECU1は、照合ECU5、車載ECU2(個別ECU、制御ECU)、及び車載装置4(電源管理ECU、制御代替ECU)等の各種ECUから送信されるデータに基づき制御信号を生成し、当該生成した制御信号を対応するECUに出力するものであり、例えばヴィークルコンピュータ等の中央制御装置である。統合ECU1は、後述する車載装置4と同様に制御部、記憶部、入出力I/F及び車内通信部を含む。統合ECU1は、複数の車内通信部を備え、これら車内通信部それぞれに接続される通信線61を介して送受信されるデータを中継する中継機能を有し、例えば、CANゲートウェイ、レイヤー2イーサスイッチ、又はレイヤー3イーサスイッチとして機能する。
【0047】
照合ECU5は、統合ECU1及び車載装置4と同様に電源装置7から常時給電され、例えばタッチセンサ等のセンサ51及びRFアンテナが接続される。照合ECU5は、例えば、ドアノブ等に対する接触検知を行い、当該検知に応じて、RFアンテナにて受信したスマートキーからのシグナルを照合する処理を行う照合処理部を備える。照合ECU5は、照合処理の結果が肯定的である場合、例えばドアロック機構(ドアロックモータ)等の車載負荷3に対する駆動要求を行うための情報を統合ECU1に出力する。照合ECU5は、後述する車載装置4と同様に制御部、記憶部、入出力I/F及び車内通信部を含む。
【0048】
車載装置4は、制御部41、記憶部42、入出力I/F43及び車内通信部44を備え、統合ECU1から送信される制御信号に応じて、起動(電源オン)又は停止(電源オフ)する車載装置4(給電制御の対象となる車載装置4)に接続される第1リレー20の開閉制御を行うものであり、電源管理ECUとして機能する。更に車載装置4は、車載装置4が未起動状態又は起動中状態である場合、当該車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する制御代替ECUとして機能する。
【0049】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部42に予め記憶されたプログラムP(プログラム製品)及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。制御部41は、CPU等のソフトウェア処理を行うソフトウェア処理部のみに限定されず、FPGA、ASIC又はSOC等のハードウェア処理にて種々の制御処理及び演算処理等を行うハードウェア処理部を含むものであってもよい。
【0050】
記憶部42は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部42に記憶されたプログラムP(プログラム製品)は、車載装置4が読み取り可能な記録媒体から読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部42に記憶させたものであってもよい。
【0051】
入出力I/F43は、第1リレー20及び第2リレー30に対し、制御線72を介して信号を出力するための通信インターフェイスである。第1リレー20及び第2リレー30がFETである場合、FETのゲート端子に入力されるPWM信号等が、入出力I/F43を介して出力される。
【0052】
車内通信部44は、例えばCAN(Control Area Network)、CAN-FD、又はイーサネット(Ethernet/登録商標)の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイス(CANトランシーバ、イーサネットPHY)であり、制御部41は、車内通信部44を介して車載ネットワーク6に接続されている統合ECU1等と相互に通信する。
【0053】
車載ECU2(個別ECU)は、車載装置4と同様に制御部21、記憶部22、入出力I/F23及び車内通信部24を含む。車載ECU2は、統合ECU1からの制御信号(駆動要求)に応じて、制御線72を介して接続される第2リレー30を開閉制御することのより、駆動要求の対象となる車載負荷3の駆動制御を行う。詳細は後述するが、車載ECU2は、当該駆動制御の対象となる車載負荷3に対する異常検出を行い、当該異常検出した回数等を記憶部22に記憶する。
【0054】
車載負荷3は、例えば、モータ等の駆動部品を含むドアロック機構(ドアロックモータ)等のアクチュエータである。車載負荷3は、電線71を介して電源装置7と接続され、当該電線71には第2リレー30が設けられている。車載負荷3は、車載ECU2又は車載装置4による第2リレー30の開閉制御により、駆動又は停止等の駆動制御が行われる。車載負荷3は、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ライトセンサ、CMOSカメラ、赤外線センサ等の各種のセンサ及び、ドアSW(スイッチ)、ランプSW等のスイッチ、ランプ、ドア開閉装置、モータ装置等のアクチュエータを含むものであってもよい。
【0055】
電源装置7は、例えば12V(+B)の電圧を出力する鉛バッテリである。又は、電源装置7は、リチウムイオンバッテリ等の高圧バッテリ又はオルタネータから出力された電圧を、例えば12V等の所定の電圧に降圧するDCDCコンバータで又はレギュレータを含むものであってもよい。
【0056】
図3は、車載装置4及び車載ECU2等による処理の流れ(シーケンス)を例示する説明図である。車載システムSに含まれる統合ECU1、車載ECU2(個別ECU)及び車載装置4(電源管理ECU)は、車載ネットワーク6により通信可能に接続され、互いに連関して以下の処理を行う。
【0057】
車載ECU2は、冗長制御に関する許可通知を出力する(S01)。車両Cが起動状態にある際、車載ECU2は、統合ECU1から出力(送信)される制御信号(車載負荷3に対する駆動要求)を取得(受信)し、当該駆動要求に応じて、自ECU(車載ECU2自身)に接続されている車載負荷3の駆動制御を行う。当該車載負荷3の駆動制御を行うにあたり、車載ECU2は、電源装置7から車載負荷3に延設された電線71に設けられた第2リレー30の開閉制御を行う。
【0058】
車載ECU2は、例えば、統合ECU1からIGオフ信号等、車両Cが停止(Sleep)状態になる旨を示すデータを取得した場合、又は定期的に、冗長制御に関する許可通知を車載装置4に出力する。当該許可通知は、車載装置4に対し、自ECU(車載ECU2自身)が車載負荷3に対し行う制御を代替することを許可する通知である。車載ECU2が、複数の車載負荷3の駆動制御を行う場合、許可通知には、これら複数の車載負荷3が列挙され、各車載負荷3に対する代替可否を示すフラグ値(1:代替許可、0:代替不可)等の情報が記載されているものであってもよい。
【0059】
車載ECU2は、自ECU(車載ECU2自身)が制御を行う車載負荷3において、故障中の車載負荷3、又はセキュリティの観点から代替処理が行われることが適切でない車載負荷3等においては、許可通知を出力しない。これにより、いずれかの車載負荷3を車載装置4による代替処理の対象外とすることを、車載ECU2側にて設定することができ、代替処理が行われることが適切でない車載負荷3に対し、車載装置4が制御を代替することを防止することができる。
【0060】
車載装置4は、車載ECU2から送信された許可通知を取得する(S02)。車載装置4は、車載ECU2から送信された許可通知を取得し、当該取得した許可通知を記憶部42に記憶する。車載装置4が、複数の車載ECU2に対し代理する処理を行う場合、車載装置4は、各車載ECU2から取得した許可通知それぞれに対し、送信元となる車載装置4の識別情報を関連付けて、記憶部42に記憶するものであってもよい。更に、車載装置4は、許可通知を記憶するにあたり、当該許可通知を取得した日時(タイムスタンプ)等を示す時点情報を関連付けて、記憶するものであってもよい。
【0061】
車載装置4は、このように複数の車載ECU2から取得した許可通知それぞれを集約し、例えばテーブル形式(許可通知管理テーブル)にて、記憶部42に記憶するものであってもよい。このように許可通知管理テーブルにて、各車載ECU2にて制御される車載負荷3それぞれに対する許可の有無を集約し、最新情報となるように更新して管理することにより、車載装置4は、車載負荷3それぞれに対する代替の可否を効率的に管理することができる。車載装置4は、当該許可通知管理テーブルにおいて、車載ECU2が故障中であるか否かを示す状態情報についても含めて、記憶部42に記憶するものであってもよい。
【0062】
車載装置4は、車載ECU2を非給電状態(電源オフ)にする(S03)。車載装置4は、例えば、IGオフ信号又は車載ECU2を停止(非給電状態)させる停止信号等を、統合ECU1から取得した場合、車載ECU2を非給電状態(電源オフ)にする。車載ECU2を非給電状態にするにあたり、車載装置4は、電源装置7から車載ECU2に延設された電線71に設けられた第1リレー20を開(オフ)にする。第1リレー20が開(オフ)にされることにより、車載ECU2への給電は停止し(遮断され)、車載ECU2は、非給電状態(電源オフ)、すなわち未起動となる停止状態(未起動状態)となる。車載装置4は電源装置7と常時接続され、電源装置7からの電力が常時供給(常時給電)されるため、車両Cが停止(Sleep)状態であっても、起動状態を維持する。
【0063】
照合ECU5は、タッチセンサ等のセンサ51にて検出した検出値に対する照合結果を統合ECU1に出力する(S04)。照合ECU5も、車載装置4又は統合ECU1と同様に電源装置7からの電力が常時供給(常時給電)されるため、車両Cが停止(Sleep)状態であっても、起動状態を維持する。照合ECU5には、例えばタッチセンサ等のセンサ51及びRFアンテナが接続され、例えば、ドアノブ等に対する接触検知を行い、当該検知に応じて、RFアンテナにて受信したスマートキーからのシグナルを照合する処理を行う。照合ECU5は、照合処理の結果が肯定的である場合、例えばドアロック機構(ドアロックモータ)に対する駆動要求を行うための情報を統合ECU1に出力する。
【0064】
統合ECU1は、照合ECU5から出力された照合結果に応じて、車載負荷3の駆動要求を出力する(S05)。統合ECU1は、照合ECU5から出力された情報に基づき制御信号(駆動要求)を生成し、当該駆動要求を車載装置4に出力する。統合ECU1は、駆動要求を車載装置4に出力する際、マルチキャスト又はブロードキャストを用いて出力するものであってもよい。このようにマルチキャスト等を用いることにより、車載ECU2が起動済み状態である場合は、車載装置4のみならず、車載ECU2も駆動要求を取得(受信)するものとなる。
【0065】
車載装置4は、統合ECU1から出力された駆動要求を取得する(S06)。車載装置4は、統合ECU1から出力された駆動要求を取得し、取得した駆動要求を記憶部42に記憶する。統合ECU1から出力された駆動要求には、例えば、対象となる車載負荷3を特定するための識別情報(負荷ID)、及び当該車載負荷3の駆動制御を行う車載ECU2を識別情報(ECUID)が含まれ、又は関連付けられている。車載装置4は、駆動要求を参照することにより、代替対象となる車載ECU2及び車載負荷3を特定することができる。
【0066】
車載装置4は、車載ECU2を給電状態(電源オン)にする(S07)。車載装置4は、駆動要求に基づき特定した車載ECU2を給電状態(電源オン)にする。車載ECU2を給電状態(電源オン)にするにあたり、車載装置4は、第1リレー20を閉(オン)にする。第1リレー20が閉(オン)にされることにより、車載ECU2への給電は開始され、車載ECU2は初期化等の起動処理を開始し、起動中状態に遷移する。
【0067】
車載装置4は、既に取得している許可通知に基づき、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する処理を開始する(S08)。車載装置4は、既に取得し、車載装置4の記憶部42に記憶されている許可通知に基づき、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を、代替する処理を開始する。車載装置4は、電源装置7から、代替処理の対象となる車載負荷3に延設された電線71に設けられた第2リレー30の開閉制御を行う。これにより、当該車載負荷3は、駆動要求に応じた駆動を開始する。車載装置4は、このような代替制御を行った場合、代替した回数(代替制御回数)、又は代替した日時等を示す時点情報(タイムスタンプ)による履歴情報(代替実績情報)を記憶部42に記憶する。車載装置4は、当該車載負荷3に対する許可通知を取得していない場合、代替する処理を実行しない。
【0068】
又は、車載装置4は、統合ECU1から車載ECU2が故障中(故障状態)である旨を示す情報を取得した場合、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を、代替する処理を開始するものであってもよい。このように車載ECU2が故障中の場合、車載装置4は、許可通知を取得していなくても、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する処理を開始するものであってもよい。
【0069】
車載ECU2は、車載装置4との通信を開始する(S09)。車載ECU2は、初期化等の起動処理を完了した後、車載装置4及び統合ECU1との通信を開始する。
【0070】
車載装置4は、車載ECU2から取得した通信データに基づき、車載ECU2は起動済状態であると判定する(S10)。車載装置4は、対象となる車載ECU2に接続される第1リレー20を閉(オン)にした後、当該車載ECU2から最初のCANメッセージ等の通信データを取得することにより、車載ECU2は起動済状態であると判定する。
【0071】
車載装置4は、車載ECU2を代替する処理を終了する(S11)。車載装置4は、車載ECU2は起動済状態であると判定した後、当該車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する処理を終了(中止)する。すなわち、車載装置4は、車載ECU2が起動済状態である場合、車載負荷3に対する代替制御を実行しない。これにより、車載装置4と車載ECU2とによる車載負荷3に対する制御が衝突(コンフリクト)することを防止することができる。
【0072】
車載ECU2は、車載負荷3に対する制御を開始する(S12)。本処理によって、車載負荷3に対する制御が車載装置4によって代替された場合、車載ECU2による駆動制御が行われていないにもかかわらず、車載負荷3は駆動するものとなる。車載装置4の代替処理による車載負荷3の駆動に対し、当該車載負荷3に対する制御を開始しようとする車載ECU2は、車載負荷3が誤動作等により駆動したものとして、車載負荷3において異常が発生したと判定(異常検知)するものとなる。そこで、車載ECU2は、車載負荷3に対する制御を開始するにあたり、車載装置4から出力される代替制御回数等を取得し、当該代替制御回数と、異常検知した回数(異常検知回数)とを対比することにより、車載負荷3において真の異常が発生したか否かを判定する。
【0073】
車載ECU2は、例えば、代替制御回数と異常検知回数とが同じである場合、車載負荷3は正常であると判定し、代替制御回数と異常検知回数とが異なる場合、車載負荷3は異常(故障確定)であると判定する。これにより、車載装置4の代替処理による車載負荷3の駆動を、車載負荷3の異常として誤検知することを回避することができる。車載ECU2は、車載負荷3は正常であると判定した後、車載負荷3に対する制御を開始するものであってもよい。
【0074】
図4は、車載装置4の制御部41の処理を例示するフローチャートである。車載装置4(電源管理ECU)は、例えば車両Cが停止状態(IGスイッチが)、又は起動状態(IGスイッチがオン)において、定常的に以下の処理を行う。
【0075】
車載装置4の制御部41は、車載負荷3に対する駆動要求を取得したか否かを判定する(S101)。統合ECU1は、例えば照合ECU5から出力された情報に基づき制御信号(駆動要求)を生成し、車載装置4に出力する。車載装置4の制御部41は、統合ECU1から出力される駆動要求を待ち受ける処理を行っており、統合ECU1から駆動要求が出力された場合、当該駆動要求を取得する。駆動要求を取得していない場合(S101:NO)、車載装置4の制御部41は、再度S101の処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0076】
駆動要求を取得した場合(S101:YES)、車載装置4の制御部41は、車載ECU2は故障中であるか否かを判定する(S102)。車載ネットワーク6に接続される車載ECU2それぞれが故障中であるか否を示す故障情報は、これら車載ECU2と統合ECU1とが常時通信することにより、統合ECU1に集約されて保存及び更新され、一元管理されている。車載装置4の制御部41は、統合ECU1から車載ECU2が故障中(故障状態)である旨を示す情報を取得している場合、車載ECU2は故障中であると判定する。又は、車載装置4の制御部41は、以前に行った車載ECU2とのポーリング等の通信結果等に基づき、車載ECU2は故障中であるか否かを判定するものであってもよい。
【0077】
車載ECU2が故障状態でない場合(S102:NO)、車載装置4の制御部41は、車載ECU2は未起動状態(電源オフ)であるか否かを判定する(S1021)。車載装置4の制御部41は、車載ECU2の給電制御を行う第1リレー20に対し、制御線72を介して信号を送信しているか否かに基づき、車載ECU2は未起動状態(電源オフ)あるか否か(電源オン)であるかを判定する。又は、車載装置4の記憶部42には、当該車載ECU2の第1リレー20に対する開閉制御(オンオフ制御)の制御ログが記憶されており、当該制御ログに基づき、車載ECU2が未起動状態(電源オフ)あるか否か(電源オン)であるかを判定するものであってもよい。
【0078】
車載ECU2が未起動状態(電源オフ)である場合(S1021:YES)、車載装置4の制御部41は、車載ECU2を起動する(S1022)。車載ECU2が未起動状態(電源オフ)である場合、車載装置4の制御部41は、車載ECU2に接続された第1リレー20を閉(オン)にすることにより、車載ECU2を起動する。
【0079】
車載ECU2が未起動状態(電源オフ)でない場合(S1021:NO)、車載装置4の制御部41は、車載ECU2は起動中状態であるか否かを判定する(S1023)。車載ECU2が未起動状態(電源オフ)でない場合、すなわち、車載装置4の制御部41は、既に車載ECU2に接続された第1リレー20を閉(オン)にしている場合、第1リレー20を閉(オン)にした後、当該車載ECU2から最初のCANメッセージ等の通信データを取得したか否かに基づき、車載ECU2は起動中状態であるか否かを判定する。
【0080】
車載装置4の制御部41は、当該最初の通信データを取得していない場合、車載ECU2は、例えば初期化処理を行っている際中であり、起動中状態であると判定する。車載装置4の制御部41は、当該最初の通信データを取得した場合、車載ECU2は、起動中状態でない、すなわち起動済み状態であると判定する。
【0081】
車載ECU2が起動中状態である場合(S1023:YES)、又はS1022の処理の実行後、車載装置4の制御部41は、冗長制御の許可があるか否かを判定する(S1024)。車載ECU2が起動中状態である場合、又は車載ECU2を起動した直後、車載装置4の制御部41は、車載ECU2から冗長制御の許可(許可通知)を取得しているか否かを判定する。
【0082】
車載ECU2は、例えば、統合ECU1からIGオフ信号等、車両Cが停止(Sleep)状態になる旨を示すデータを取得した場合、又は定期的に、冗長制御に関する許可通知を車載装置4に出力する。車載装置4の制御部41は、車載ECU2から送信された許可通知を取得し、当該取得した許可通知を車載装置4の記憶部42に記憶する。従って、車載装置4の制御部41は、車載装置4の記憶部42を参照することにより、車載ECU2から冗長制御の許可(許可通知)を事前に取得しているか否かを判定する。
【0083】
冗長制御の許可がある場合(S1024:YES)、又は車載ECU2が故障状態である場合(S102:YES)、車載装置4の制御部41は、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する(S103)。冗長制御の許可(許可通知を取得)がある場合、又は車載ECU2が故障状態である場合、車載装置4の制御部41は、駆動要求の対象となる車載負荷3の第2リレー30を開閉制御することにより、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する。
【0084】
車載装置4の制御部41は、車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替した回数を記憶する(S104)。車載装置4の制御部41は、車載負荷3に対する車載ECの制御を代替した際、例えば、代替した回数(代替制御回数)、又は代替した日時等を示す時点情報(タイムスタンプ)による履歴情報(代替実績情報)を車載装置4の記憶部42に記憶する。車載装置4の制御部41は、代替した回数(代替制御回数)に関する情報を、車載ECU2に出力(送信)する。
【0085】
冗長制御の許可がない場合(S1024:NO)、車載ECU2が起動中状態でない場合(S1023:NO)すなわち起動済状態である場合、又はS104の処理の実行後、車載装置4の制御部41は、本フローにおける一連の処理を終了する。又は、車載装置4の制御部41は、冗長制御の許可がない場合(S1024:NO)、車載ECU2が起動中状態でない場合(S1023:NO)、又はS104の処理の実行後、再度S101からの処理を実行すべく、ループ処理を行うものであってもよい。
【0086】
図5は、車載ECU2の制御部21の処理(車載負荷3の故障検出)を例示するフローチャートである。車載ECU2(個別ECU)は、例えば車両Cが起動状態(IGスイッチがオン)において、定常的に以下の処理を行う。
【0087】
車載ECU2の制御部21は、車載負荷3に対する異常を検出したか否かを判定する(T101)。車載ECU2の制御部21は、例えば、起動時に行う初期化処理を終了した後、駆動対象となる車載負荷3に接続される第2リレー30に対しテスト用の信号を出力することにより、当該車載負荷3における異常の検出を試みる。車載ECU2の制御部21は、当該テスト用の信号の出力結果に基づき、車載負荷3における異常の有無を検出するものであってもよい。
【0088】
車載負荷3に対する異常を検出しなかった場合(T101:NO)、再度、T101の処理を実行すべく、ループ処理を行う。車載負荷3に対する異常を検出しなかった場合、車載ECU2の制御部21は、車載負荷3は正常であると判定し、当該判定結果を車載ECU2の記憶部22に記憶するものであってもよい。
【0089】
車載負荷3に対する異常を検出した場合(T101:YES)、車載ECU2の制御部21は、異常を検出した回数(異常検知回数)を記憶する(T102)。車載負荷3に対する異常を検出した場合、車載ECU2の制御部21は、現時点までの、又は所定期間内において異常を検出した回数(異常検知回数)を車載ECU2の記憶部22に記憶する。
【0090】
車載ECU2の制御部21は、車載装置4から代替制御回数を取得する(T103)。車載ECU2の制御部21は、対象となる車載負荷3、すなわち異常検知回数に対応する車載負荷3に対し車載装置4が代替した回数(代替制御回数)に関する情報を、車載装置4から取得する。車載ECU2の制御部21は、取得した代替制御回数を車載ECU2の記憶部22に記憶する。
【0091】
車載ECU2の制御部21は、異常検知回数と代替制御回数とが一致するか否かを判定する(T104)。一致すると判定した場合(T104:YES)、車載ECU2の制御部21は、車載負荷3は正常であると判定する(T105)。一致しないと判定した場合(T104:NO)、車載ECU2の制御部21は、車載負荷3は異常(故障確定)であると判定する(T1041)。本実施形態において、異常検知回数と代替制御回数とが一致するか否かの判定結果に基づき故障確定を行うとしたが、これに限定されず、車載ECU2の制御部21は、車載装置4と通信し、車載装置4から代替制御(制御肩代わり)の有無の通知を受け取ることにより故障確定を行うものであってもよい。
【0092】
(実施形態2)
図6は、実施形態2(統合ECU1)に係る車載システムSのシステム構成を例示する模式図である。本実施形態においては、電源管理ECU及び制御代替ECUとして機能する車載装置4は、統合ECU1に含まれる。車載装置4が統合ECU1に含まれるにあたり、当該車載装置4は、統合ECU1の一機能部として構成されるものであってもよい。車載装置4を含む統合ECU1からは、第1リレー20及び第2リレー30それぞれに対し、制御線72が延設される。車載装置4を含む統合ECU1は、実施形態1と同様に、第1リレー20を開閉制御することにより車載ECU2に対する給電制御を行い、第2リレー30を開閉制御することにより当該車載ECU2が車載負荷3に対し行う制御を代替する。
【0093】
統合ECU1は、照合ECU5との通信に基づき、車載負荷3の駆動要求を生成すると共に、車載ECU2が故障中であるかを示す故障情報を集約する。その上で、統合ECU1は、車載装置4が行う電源管理及び代替制御に関する機能についても担うことにより、各車載ECU2の状態に応じた代理処理を効率的に行うことができる。
【0094】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
C 車両
S 車載システム(電源管理システム)
1 統合ECU
2 車載ECU(個別ECU、制御ECU)
20 第1リレー
21 制御部
22 記憶部
23 入出力I/F
24 車内通信部
3 車載負荷
30 第2リレー
4 車載装置(電源管理ECU、制御代替ECU)
41 制御部
42 記憶部
43 入出力I/F
44 車内通信部
5 照合ECU
51 センサ
6 車載ネットワーク
61 通信線
7 電源装置
71 電線
72 制御線