(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142066
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】壁体構築用芯材及び構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/20 20060101AFI20230928BHJP
E21D 5/11 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E02D5/20 102
E21D5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048743
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】平井 健太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博明
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049FA07
2D049GA15
2D049GB01
2D049GD03
2D049GE01
(57)【要約】
【課題】建て込みを効率よく行うことができる壁体構築用芯材及び構築方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る壁体構築用芯材は、孔壁に充填されたセメント系材料が硬化する前にセメント系材料に建て込まれる壁体構築用芯材である。壁体構築用芯材は、一方向に延在する鋼材部20と、鋼材部20の一端に接続された切削可能部10と、鋼材部20に取り付けられており鋼材部20の少なくとも切削可能部10とは反対側において一方向A1に沿って延在する錘部30と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔壁に充填されたセメント系材料が硬化する前に前記セメント系材料に建て込まれる壁体構築用芯材であって、
一方向に延在する鋼材部と、
前記鋼材部の一端に接続された切削可能部と、
前記鋼材部に取り付けられており前記鋼材部の少なくとも前記切削可能部とは反対側において前記一方向に沿って延在する錘部と、
を備える、
壁体構築用芯材。
【請求項2】
前記鋼材部は、前記一方向に沿って延在する側面を有し、
前記錘部は、前記側面に沿うように前記側面に固定される鋼製の板状部材である、
請求項1に記載の壁体構築用芯材。
【請求項3】
壁体構築用芯材の構築方法であって、
前記壁体構築用芯材は、一方向に延在する鋼材部、及び前記鋼材部の一端に接続された切削可能部を有し、
掘削によって孔壁を形成する工程と、
前記孔壁にセメント系材料を充填する工程と、
前記鋼材部に錘部を取り付ける工程と、
前記セメント系材料が硬化する前に、前記切削可能部に対して前記鋼材部を下方に向けた状態で前記セメント系材料に前記壁体構築用芯材を建て込む工程と、
を備える、
構築方法。
【請求項4】
前記孔壁を形成する工程では、前記壁体の面内方向に沿って掘削機を移動させながら前記掘削機によって掘削を行い、前記面内方向に沿って連続的に延びる孔壁を形成する、
請求項3に記載の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、孔壁に充填されたセメント系材料に建て込まれる壁体構築用芯材及び構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5133450号公報には、地中連続体造成方法が記載されている。地中連続体造成方法では、地中連続体造成装置を用いて地中に壁体を構築する。この地中連続体造成方法では、地中連続体造成装置の回転式カッターを地中に挿入する。そして、回転式カッターを回転させて地盤を切削しながら水平方向に連続した溝を形成する。このとき、溝が形成される地盤に掘削液を注入して回転式カッターで撹拌混合し、複数の芯材を溝の内部に立て込んで地中連続体を構築する。
【0003】
特許第3659826号公報には、TRD工法(ソイルセメント地中連続壁工法)が記載されている。TRD工法では、地表を移動可能であってチェーンソー型カッター及びカッターポストを備えたベースマシンが用いられる。チェーンソー型カッターはカッターポストを回転させながら地盤に押圧することにトレンチ(溝)を形成する。このとき、カッターポストの下端に設けられた地盤注入材吐出口から掘削用泥水を吐出してトレンチの掘削を補助し、更に、地盤固化液を吐出して掘削土との混合撹拌を行ってソイルセメント壁を構築する。
【0004】
特許第5513182号公報には、段階式固化施工法が記載されている。段階式固化施工法では、TRD掘削装置が用いられる。TRD掘削装置は掘削を行って溝を形成し、溝には固化液が供給される。固化液が固化する前に、H鋼を含む鋼材等の芯材が固化液中に建て込まれる。
【0005】
特開2004-360241号公報には、鋼製地中連続壁の構築工法が記載されている。この構築工法では、地盤に水平方向に延びる溝が掘削によって形成され、当該溝にソイルセメントからなる地盤改良体が充填される。そして、鋼材からなる鋼製地中連続壁エレメントが地盤改良体に挿入されて鋼製地中連続壁が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5133450号公報
【特許文献2】特許第3659826号公報
【特許文献3】特許第5513182号公報
【特許文献4】特開2004-360241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した各工法では、地盤改良体等のセメント系材料が硬化する前に鋼材等の芯材が挿入される。ところで、芯材の中には、シールド機で直接削ることが可能な切削可能部を備えたものが知られている。この種の芯材は、シールド機のカッタービットで直接切削することが可能であるため、切削時におけるカッタービットの摩耗が抑制される。
【0008】
しかしながら、芯材の切削可能部は、鋼材と比較して比重が小さいため、セメント系材料に挿入したときに効率よく建て込めないということが起こりうる。すなわち、セメント系材料に芯材を挿入したときに、当該芯材が浮力によって横移動することがあるので、建て込みの効率化の点において改善の余地がある。
【0009】
本開示は、建て込みを効率よく行うことができる壁体構築用芯材及び構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る壁体構築用芯材は、孔壁に充填されたセメント系材料が硬化する前にセメント系材料に建て込まれる壁体構築用芯材である。壁体構築用芯材は、一方向に延在する鋼材部と、鋼材部の一端に接続された切削可能部と、鋼材部に取り付けられており鋼材部の少なくとも切削可能部とは反対側において一方向に沿って延在する錘部と、を備える。
【0011】
この壁体構築用芯材は、一方向に延在する鋼材部と、鋼材部の一端に接続された切削可能部とを有する。従って、硬化する前のセメント系材料に壁体構築用芯材を建て込んだ後に、シールドマシンによって壁体構築用芯材の切削可能部を切削することが可能である。また、壁体構築用芯材は鋼材部に取り付けられている錘部を備え、錘部は鋼材部の少なくとも切削可能部とは反対側に設けられる。従って、切削可能部に対して鋼材部を下方に向けて壁体構築用芯材を建て込むときに鋼材部の少なくとも下側に錘部が位置するので、セメント系材料に壁体構築用芯材を挿入したときにおける浮力の影響を低減させることができる。すなわち、錘部が鋼材部の少なくとも下側に設けられた状態で建て込みが行われるので、壁体構築用芯材の全体的な比重を大きくして浮力による壁体構築用芯材の横移動を抑制できる。更に、錘部は鋼材部において一方向に沿って延在するように取り付けられる。従って、壁体構築用芯材を一方向に沿ってセメント系材料に挿入するときに、錘部による挿入抵抗を低減できる。その結果、壁体構築用芯材の建て込みを一層効率よく行うことができる。
【0012】
鋼材部は、一方向に沿って延在する側面を有し、錘部は、当該側面に沿うように当該側面に固定される鋼製の板状部材であってもよい。この場合、一方向に沿って延在する鋼材部の側面に沿うように鋼製の板状部材が錘部として取り付けられるので、セメント系材料への壁体構築用芯材の挿入時における錘部の挿入抵抗をより低減できる。従って、壁体構築用芯材の建て込みを更に効率よく行うことができる。
【0013】
本開示に係る壁体構築用芯材の構築方法では、壁体構築用芯材が、一方向に延在する鋼材部、及び鋼材部の一端に接続された切削可能部を有する。壁体構築用芯材の構築方法は、掘削によって孔壁を形成する工程と、孔壁にセメント系材料を充填する工程と、鋼材部に錘部を取り付ける工程と、セメント系材料が硬化する前に、切削可能部に対して鋼材部を下方に向けた状態でセメント系材料に壁体構築用芯材を建て込む工程と、を備える。
【0014】
この壁体構築用芯材の構築方法では、一方向に延在する鋼材部と、鋼材部の一端に接続された切削可能部とを有する壁体構築用芯材が用いられる。よって、セメント系材料に壁体構築用芯材を建て込んだ後に、壁体構築用芯材の切削可能部をシールドマシンによって切削することができる。この構築方法では、鋼材部に錘部が取り付けられる。従って、切削可能部に対して鋼材部を下方に向けて壁体構築用心材を建て込むときに壁体構築用芯材の下側に錘部が位置するので、セメント系材料に壁体構築用芯材を挿入したときにおける浮力の影響を低減させることができる。よって、錘部が鋼材部に取り付けられた状態で壁体構築用芯材の建て込みが行われるので、壁体構築用芯材の全体的な比重を大きくして浮力による壁体構築用芯材の横移動を抑制できる。従って、壁体構築用芯材の建て込みを一層効率よく行うことができる。
【0015】
孔壁を形成する工程では、壁体の面内方向に沿って掘削機を移動させながら掘削機によって掘削を行い、面内方向に沿って連続的に延びる孔壁を形成してもよい。この場合、TRD工法によって掘削機を水平方向に移動させて地中に連続した壁を造成することが可能である。従って、水平方向への連続性が確保された地中壁を構築できる。また、TRD工法では、水平方向に延びる連続的な孔壁が形成されるため、セメント系材料に壁体構築用芯材が挿入されたときに当該水平方向に壁体構築用芯材が移動する可能性がある。しかしながら、前述した壁体構築用芯材は鋼材部に錘部が取り付けられているので、壁体構築用芯材の当該水平方向への横移動を抑制することができる。その結果、TRD工法によって孔壁が形成される場合でも壁体構築用芯材の横移動を抑制できるので、壁体構築用芯材の建て込みを更に効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、建て込みを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る壁体構築用芯材及び構築方法が適用される現場の例を示す図である。
【
図2】(a)は、本実施形態に係る壁体構築用芯材の切削可能部を示す側面図である。(b)は、本実施形態に係る壁体構築用芯材を
図2(a)とは異なる方向から見た側面図である。
【
図3】(a)は、
図2(b)のA-A線断面図である。(b)は、
図2(b)のB-B線断面図である。
【
図4】(a)は、
図2(b)のC-C線断面図である。(b)は、
図2(b)のD-D線断面図である。
【
図5】本実施形態に係る壁体構築用芯材の鋼材部及び錘部を示す側面図である。
【
図6】
図5の鋼材部及び錘部を
図5とは異なる方向から見た図である。
【
図7】(a)、(b)及び(c)は、本実施形態に係る構築方法の工程の例を模式的に示す図である。
【
図8】(a)及び(b)は、本実施形態に係る構築方法の工程の例を模式的に示す図である。
【
図9】(a)は、変形例に係る壁体構築用芯材の鋼材部及び錘部を示す側面図である。(b)は、
図9(a)の鋼材部及び錘部を
図9(a)とは異なる方向から見た図である。
【
図10】実施例に係る壁体構築用芯材に対する実験結果を示すグラフである。
【
図11】(a)、(b)及び(c)は、モーメントによる復元力計算から錘部の形状及び重量を算出する実施例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る壁体構築用芯材及び構築方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る壁体構築用芯材1及び構築方法が適用される例示的な現場Aを示している。現場Aでは、シールドトンネルSが構築される。一例として、シールドトンネルSを構築するシールドマシンは、発進立坑から発進して掘進を行い、回転立坑で回転する。一例として、現場Aでは当該回転立坑が構築される。
【0020】
回転立坑が構築される現場Aでは、例えば、TRD工法によって複数の壁体構築用芯材1が建て込まれる。TRD工法では、例えば、地中に挿入されたチェーンソー型のカッターポストがベースマシンに接続され、カッターポスト及びベースマシンが水平方向D1(横方向)に移動して、掘削による孔壁(溝)の形成と当該孔壁への固化液の注入を行う。そして、当該固化液と原位置土とが混合撹拌された後に、当該孔壁に壁体構築用芯材1が挿入されて地中壁が造成される。
【0021】
一例として、壁体構築用芯材1は、FFU(Fiber reinforcedFoamed Urethane)を含む。FFUは、ガラス繊維に含浸されたウレタンが発泡及び熱膨張して得られた構造材である。すなわち、FFUは、熱硬化性樹脂発泡体(硬質ウレタン樹脂)がガラス長繊維によって強化された軽量耐食構造材である。FFUを含む壁体構築用芯材1は、SEW(Shield Earth retaining Wall)とも称される。
【0022】
SEWである壁体構築用芯材1は、他の壁体構築用芯材と比較して、開口作業を削減できるので安全性を確保でき、経済性に優れている。更に、SEWである壁体構築用芯材1は、FFUが切削可能部として機能するため、切削を容易に行うことができ切削性の点においても優れている。
【0023】
しかしながら、SEWである壁体構築用芯材は、他の壁体構築用芯材(例えば鋼材)よりも比重が小さい。よって、SEWである壁体構築用芯材をセメント系材料に挿入して建て込みを行うときに、壁体構築用芯材が浮力の影響で横移動するという問題が生じうる。更に、地盤を掘削して孔壁を形成する掘削機の横移動に伴って壁体構築用芯材が移動するという問題も生じうる。
【0024】
特に、多くの壁体構築用芯材が水平方向D1に沿って建て込まれる現場Aでは、上記の問題によって壁体構築用芯材の効率的な建て込みが難しいという現状がある。これに対し、本実施形態に係る壁体構築用芯材1及び構築方法では、これらの問題を解消することが可能である。
【0025】
例えば、壁体構築用芯材1は、鉛直方向D2に沿って並ぶ切削可能部10及び鋼材部20を有する。切削可能部10は、シールドマシンによって切削可能とされている。例えば、切削可能部10は、鋼材部20の上方に設けられる。複数の壁体構築用芯材1の間において、切削可能部10の長さ、及び鋼材部20の長さは互いに異なっている。例えば、切削可能部10の比重は、鋼材部20の比重よりも小さい。
【0026】
図2(a)は、切削可能部10を拡大した側面図である。
図2(b)は、
図2(a)とは異なる方向から見た切削可能部10の側面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、切削可能部10は、一方向A1に延在する棒状を呈する。壁体構築用芯材1は、切削可能部10の一方向A1が鉛直方向D2に一致した状態で建て込まれる。
【0027】
一例として、切削可能部10は、一方向A1の一端に位置する第1接続部11と、第1切削可能部12と、第2切削可能部13と、第3切削可能部14と、第2接続部15と、第3接続部16とを備える。第1接続部11、第1切削可能部12、第2切削可能部13、第3切削可能部14、第2接続部15及び第3接続部16は、この順で一方向A1に沿って並んでいる。
【0028】
例えば、第1接続部11は、切削可能部10の上端に位置する部位である。第1接続部11は、切削可能部10の端部を構成する第1板部11bと、第1切削可能部12に接続される第2板部11cとを有する。第1板部11bは、第1切削可能部12から離隔するに従って方向A2への長さが短くなる三角形状を呈する。
【0029】
方向A2は、一方向A1に交差(一例として直交)する方向であり、例えば、切削可能部10の幅方向である。例えば、第1板部11bの第1切削可能部12とは反対側の端部に位置する角部11dは丸みを帯びている。また、第1板部11bは、一方向A1及び方向A2の双方に交差する方向A3に貫通する孔11fを有する。
【0030】
図3(a)は、一方向A1に直交する平面に沿って第2板部11c及び第1切削可能部12を切断したときの断面を示す図(
図2(b)のA-A線断面図)である。
図2(b)及び
図3(a)に示されるように、方向A3に沿って見た場合において、例えば、第2板部11cは方向A2に延びる長辺を有する長方形状を呈する。第2板部11cは第1切削可能部12の方向A3の両側のそれぞれに設けられる。方向A3に沿って並ぶ一対の第2板部11cのそれぞれはボルト孔11jを有する。
【0031】
一対の第2板部11cのボルト孔11j、及び第1切削可能部12を貫通したボルト11gがナット11hに締め付けられることによって一対の第2板部11cが第1切削可能部12に固定される。方向A2に沿って複数のボルト11gが並んでおり、一例としてボルト11gの数は3である。
【0032】
図3(b)は、一方向A1に直交する平面に沿って第1切削可能部12を切断したときの第1切削可能部12の断面12b(
図2(b)のB-B線断面図)を示している。
図2(a)、
図2(b)及び
図3(b)に示されるように、例えば、第1切削可能部12は、FFUによって構成されたFFU部材である。一例として、第1切削可能部12はFFUのみによって構成されている。例えば、第1切削可能部12の比重は1.0以下である。
【0033】
断面12bは、例えば、方向A2に延びる長辺12c、及び方向A3に延びる短辺12dを有する長方形状を呈する。例えば、断面12bの面積は、一方向A1に直交する平面に沿って鋼材部20を切断したときの鋼材部20の断面の面積よりも大きい。一例として、長辺12cの長さは700mmであり、短辺12dの長さは240mmである。
【0034】
図4(a)は、一方向A1に直交する平面に沿って第2切削可能部13を切断したときの第2切削可能部13の断面図(
図2(b)のC-C線断面図)である。
図2(a)、
図2(b)及び
図4(a)に示されるように、第2切削可能部13は、例えば、FFUのみによって構成された部位であるFFU部13bと、FFU部13bの少なくとも一部を覆うシート部材13cと、シート部材13cをFFU部13bに固定する固定部材13dとを有する。
【0035】
例えば、FFU部13bは、第1切削可能部12の一方向A1の延長上に設けられる。シート部材13cは、例えば、樹脂シートである。一例として、シート部材13cは、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)シートである。この場合、シート部材13cは、ガラス繊維がポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はフェノール樹脂によって固められた素材(GFRP)によって構成されている。一例として、シート部材13cは、FFU部13bの方向A3の両側のそれぞれに設けられる。
【0036】
固定部材13dは、例えば、FFU部13b及び一対のシート部材13cを貫通するボルト13fと、シート部材13cにボルト13fを締め付けるナット13gとを有する。方向A3に沿って見た場合において、第2切削可能部13では、複数の固定部材13d(複数のボルト13f、及び複数のナット13g)が設けられる。第3切削可能部14は、例えば、第1切削可能部12と同様、FFU部材である。一例として、第3切削可能部14の構成は、第1切削可能部12の構成と同一である。
【0037】
図4(b)は、一方向A1に直交する平面に沿って第2接続部15を切断したときの第2接続部15の断面図(
図2(b)のD-D線断面図)である。
図2(a)、
図2(b)及び
図4(b)に示されるように、第2接続部15は、FFUのみによって構成されたFFU部15bと、FFU部15bの内部において一方向A1及び方向A2に延在する第1鋼板15cと、FFU部15bの内部において第1鋼板15cの方向A3の両側のそれぞれに位置する第2鋼板15dとを有する。例えば、第1鋼板15cは、第2接続部15の方向A3の中央において方向A2に延在している。第2鋼板15dは、一方向A1及び方向A2に延在している。一例として、第1鋼板15cの厚さは、第2鋼板15dの厚さよりも厚い。
【0038】
第2接続部15は、FFU部15bの方向A3の両側のそれぞれに設けられる第3鋼板15fと、FFU部15bの方向A2の両側のそれぞれに設けられる第4鋼板15gとを有する。第3鋼板15f、第2鋼板15d及び第1鋼板15cのそれぞれには方向A3に延びる貫通孔15hが形成されており、貫通孔15hにはボルト15jが挿通されている。
【0039】
ボルト15jはナット15kによって第3鋼板15fに締め付けられる。例えば、方向A2に沿って、2個の貫通孔15h、2個のボルト15j、及び2個のナット15kが設けられる。例えば、第1鋼板15cは、方向A2の両端のそれぞれにフランジ部15mを有する。第4鋼板15gは、フランジ部15m、第2鋼板15d及び第3鋼板15fに載せられた状態において一方向A1に延在している。
【0040】
第3接続部16は、切削可能部10の下端に位置する部位であり、鋼材部20に接続される。第3接続部16は、一例として、第2接続部15に接続されると共に方向A2に沿って並ぶ一対の第5鋼板16bと、一対の第5鋼板16bの間において一方向A1及び方向A2に延在する第6鋼板16cとを有する。例えば、第3接続部16は、一方向A1に対して傾斜するように第6鋼板16cから延在する一対のテーパ鋼板16dを有する。一対のテーパ鋼板16dは、第2接続部15に向かうに従って互いに離隔する方向に傾斜している。
【0041】
以上、切削可能部10が第1接続部11、第1切削可能部12、第2切削可能部13、第3切削可能部14、第2接続部15及び第3接続部16を備える例について説明した。しかしながら、切削可能部の構成は、前述した第1接続部11、第1切削可能部12、第2切削可能部13、第3切削可能部14、第2接続部15及び第3接続部16に限られず適宜変更可能である。
【0042】
図5は、切削可能部10に接続される鋼材部20を示す側面図である。
図5に示されるように、鋼材部20は一方向A1に延在しており、切削可能部10の第3接続部16の延長上に設けられる。例えば、鋼材部20は、切削可能部10(第3接続部16)に接続される接続部21と、接続部21から切削可能部10とは反対側(
図5では左側)に延在する鋼材本体部22とを有する。
【0043】
接続部21は、例えば、第3接続部16及び鋼材本体部22に当てられる複数のスプライスプレート21bと、スプライスプレート21bを第3接続部16に締結する複数の第1ボルトナット21cと、スプライスプレート21bを鋼材本体部22に締結する複数の第2ボルトナット21dとを有する。
【0044】
例えば、鋼材本体部22はH形鋼である。この場合、鋼材本体部22は、一方向A1及び方向A3に延在すると共に方向A2に沿って並ぶ一対のフランジ22bと、一対のフランジ22bを互いに接続すると共に一方向A1及び方向A2に延在するウェブ22cとを有する。一対のフランジ22b及びウェブ22cのそれぞれに切削可能部10から延びるスプライスプレート21bが当てられて複数の第2ボルトナット21dによってスプライスプレート21bが鋼材本体部22に接合されることにより、切削可能部10に鋼材部20が連結される。
【0045】
図6は、切削可能部10とは反対側から鋼材部20を見た図である。
図5及び
図6に示されるように、鋼材部20には錘部30が取り付けられる。錘部30は、鋼材部20の少なくとも切削可能部10とは反対側(
図5では左側)において一方向A1に沿って延在する。
【0046】
錘部30の総重量は、例えば、2000kg以上且つ3000kg以下である。錘部30の総重量が2000kg以上であることにより、壁体構築用芯材1の横移動をより確実に抑制できる。錘部30の総重量が3000kg以下であることにより、錘部30の総重量を重くなりすぎないようにできる。一例として、錘部30の総重量は2506kgである。しかしながら、錘部30の総重量の値は特に限定されない。
【0047】
例えば、鋼材部20は、一方向A1に沿って延在する側面22dを有する。一例として、側面22dはウェブ22cの表面であり、鋼材部20の方向A3の両側のそれぞれに設けられる。方向A3に沿って並ぶ一対の側面22dのそれぞれに錘部30が取り付けられる。すなわち、ウェブ22cの一方の側面22d及び他方の側面22dのそれぞれに錘部30が取り付けられる。このように、鋼材部20には複数の錘部30が取り付けられる。例えば、複数の錘部30は一方向A1に沿って並ぶように鋼材部20に取り付けられる。
図5の例では、一方向A1に沿って4つの錘部30が並んでいる。しかしながら、鋼材部20に取り付けられる錘部30の数は特に限定されない。
【0048】
壁体構築用芯材1は、錘部30を鋼材部20に締結する締結部材31を備える。例えば、鋼材部20は締結部材31が通される貫通孔23を有し、錘部30は締結部材31が通される貫通孔32を有する。貫通孔23及び貫通孔32のそれぞれは、鋼材部20(ウェブ22c)及び錘部30のそれぞれを方向A3に貫通している。
【0049】
例えば、錘部30は、側面22dに沿うように側面22dに固定される板状部材である。一例として、錘部30は、錘部30の板厚方向が側面22d(ウェブ22c)の板厚方向に一致した状態で鋼材部20に取り付けられる。例えば、錘部30は一方向A1に延びる長辺を有する長方形状を呈する。
【0050】
例えば、錘部30は、壁体構築用芯材1の外側に露出する主面30bと、主面30bと交差する方向を向く一対の第1端面30cと、主面30b及び第1端面30cの双方と交差する方向を向く一対の第2端面30dとを有する。一例として、主面30bの面積は第1端面30cの面積よりも大きく、第1端面30cの面積は第2端面30dの面積よりも大きい。
【0051】
例えば、錘部30は、第1端面30cが方向A2を向くと共に第2端面30dが一方向A1を向く状態で鋼材部20に取り付けられる。この場合、面積が最も小さい第2端面30dが一方向A1に向いた状態で錘部30が鋼材部20に取り付けられるので、一方向A1に壁体構築用芯材1を挿入したときにおける錘部30の挿入抵抗を一層低減できる。
【0052】
一例として。錘部30は、板厚方向から錘部30を見た場合における錘部30の隅部のそれぞれに締結部材31が接合される複数の貫通孔32を有する。例えば、各貫通孔32は、錘部30の四隅のそれぞれに形成されている。例えば、締結部材31は、貫通孔23及び貫通孔32に通されるボルト31bと、貫通孔23及び貫通孔32に通されたボルト31bを錘部30に締結するナット31cとを含む。壁体構築用芯材1は、例えば、複数の締結部材31を備える。複数の締結部材31は、一方向A1に沿って並ぶと共に方向A2に沿って並んでいる。
【0053】
次に、本実施形態に係る壁体構築用芯材の構築方法の例について、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)、
図8(a)及び
図8(b)を参照しながら説明する。以下では、TRD工法によって地盤Gに壁体構築用芯材1を建て込んで壁体(地中壁)を構築する例について説明する。一例として、TRD工法の3パス施工が行われてもよい。
【0054】
まず、
図7(a)に示されるように、掘削機Xを用意する(掘削機を用意する工程)。なお、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)、
図8(a)及び
図8(b)では掘削機X及び壁体構築用芯材1の図示を簡略化している。例えば、掘削機Xは、機器本体X1と、機器本体X1から鉛直下方に延びると共に鉛直方向D2に沿って循環移動するカッタービットX2と、地盤Gに固化液を注入する注入部X3とを有する。注入部X3はカッタービットX2の先端部(下端部)に設けられる。
【0055】
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、掘削によって孔壁41を形成する(孔壁を形成する工程)。具体例として、カッタービットX2が鉛直方向D2に沿うように地盤GにカッタービットX2を挿入する。そして、地盤Gに挿入したカッタービットX2を循環移動させることによって地盤Gの掘削及び排土を行うと共に、機器本体X1を水平方向D1(横方向)に移動させる。
【0056】
孔壁41の形成と共に孔壁41にセメント系材料42を充填する(セメント系材料を充填する工程)。具体例として、前述した孔壁41の形成と共に注入部X3から固化液(セメント系スラリー等)を孔壁41に注入し、掘削した地盤G(原位置土)と共に固化液を混合撹拌して水平方向D1に連続したソイルセメント壁を構築する。
【0057】
一方、壁体構築用芯材1を用意する(壁体構築用芯材を用意する工程)。このとき、例えば前述した方法によって、鋼材部20に錘部30を取り付ける(錘部を取り付ける工程)。そして、
図7(c)に示されるように、セメント系材料42が硬化する前に、切削可能部10に対して鋼材部20(錘部30)を下方に向けた状態でセメント系材料42に壁体構築用芯材1を建て込んでいく(壁体構築用芯材を建て込む工程)。
【0058】
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、水平方向D1に沿って並ぶように複数の壁体構築用芯材1をセメント系材料42に挿入して孔壁41に建て込んでいく。そして、退避掘削及びラップ施工を行ってセメント系材料42が硬化した後に壁体構築用芯材1の建て込みに関する一連の工程が完了する。
【0059】
次に、本実施形態に係る壁体構築用芯材1及び構築方法から得られる作用効果について説明する。
図5及び
図6に示されるように、本実施形態に係る壁体構築用芯材1及び構築方法は、一方向A1に延在する鋼材部20と、鋼材部20の一端に接続された切削可能部10とを有する。従って、硬化する前のセメント系材料42に壁体構築用芯材1を建て込んだ後に、シールドマシンによって壁体構築用芯材1の切削可能部10を切削することが可能である。
【0060】
また、壁体構築用芯材1は鋼材部20に取り付けられている錘部30を備え、錘部30は鋼材部20の少なくとも切削可能部10とは反対側に設けられる。なお、錘部30は鋼材部20の略全面に設けられてもよい。従って、切削可能部10に対して鋼材部20を下方に向けて壁体構築用芯材1を建て込むときに鋼材部20の少なくとも下側に錘部30が位置するので、セメント系材料42に壁体構築用芯材1を挿入したとおける浮力の影響を低減させることができる。本実施形態では、セメント系材料42として、テーブルフロー値が現行より大きいもの(一例として240mm程度のもの)を用いることが可能である。
【0061】
すなわち、錘部30が鋼材部20の少なくとも下側に設けられた状態で建て込みが行われるので、壁体構築用芯材1の全体的な比重を大きくして浮力による壁体構築用芯材1の横移動を抑制できる。更に、錘部30は鋼材部20において一方向A1に沿って延在するように取り付けられる。従って、壁体構築用芯材1を一方向A1に沿ってセメント系材料42に挿入するときに、錘部30による挿入抵抗を低減できる。その結果、壁体構築用芯材1の建て込みを一層効率よく行うことができる。
【0062】
本実施形態では、鋼材部20は、一方向A1に沿って延在する側面22dを有し、錘部30は、側面22dに沿うように側面22dに固定される鋼製の板状部材である。よって、一方向A1に沿って延在する鋼材部20の側面22dに沿うように鋼製の板状部材が錘部30として取り付けられるので、セメント系材料42への壁体構築用芯材1の挿入時における錘部30の挿入抵抗をより低減できる。従って、壁体構築用芯材1の建て込みを更に効率よく行うことができる。
【0063】
本実施形態に係る構築方法では、
図7(a)~
図7(c)に示されるように、孔壁41を形成する工程において、壁体の面内方向に沿って掘削機Xを移動させながら掘削機Xによって掘削を行い、当該面内方向に沿って連続的に延びる孔壁41を形成する。従って、TRD工法によって掘削機Xを水平方向D1に移動させて地中に連続した壁を造成することが可能である。
【0064】
よって、水平方向D1への連続性が確保された地中壁を構築できる。また、TRD工法では、水平方向D1に延びる連続的な孔壁41が形成されるため、セメント系材料42に壁体構築用芯材が挿入されたときに水平方向D1に壁体構築用芯材が移動する可能性がある。しかしながら、壁体構築用芯材1は鋼材部20に錘部30が取り付けられているので、壁体構築用芯材1の水平方向D1への横移動を抑制することができる。その結果、TRD工法によって孔壁41が形成される場合でも壁体構築用芯材1の横移動を抑制できるので、壁体構築用芯材1の建て込みを更に効率よく行うことができる。
【0065】
次に、変形例に係る壁体構築用芯材について
図9(a)及び
図9(b)を参照しながら説明する。
図9(a)は、変形例に係る壁体構築用芯材の鋼材部50を示す側面図である。
図9(b)は、
図9(a)とは異なる方向から見た鋼材部50の側面図である。変形例に係る壁体構築用芯材は、前述した鋼材部20とは異なる鋼材部50を備える。変形例に係る壁体構築用芯材の一部の構成は、前述した壁体構築用芯材1の一部の構成と同一である。よって、以下では、壁体構築用芯材1の構成と重複する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0066】
鋼材部50は、鋼材部20と同様、接続部21及び鋼材本体部22を有し、鋼材本体部22は一対のフランジ22b及びウェブ22cを有する。鋼材部50には、前述した錘部30とは異なる錘部60が取り付けられる。錘部60は、鋼材部50の切削可能部10とは反対側において一方向A1に沿って延在する。
【0067】
例えば、錘部60は、方向A3に沿って並ぶ複数の板状部材によって構成されている。錘部60を構成する板状部材は、鋼材部50に沿うように鋼材部50に固定される。すなわち、錘部60を構成する板状部材は、当該板状部材の板厚方向が鋼材部50(ウェブ22c)の板厚方向に一致した状態で鋼材部50に取り付けられる。
【0068】
一例として、複数の錘部60は、2つの第1板状部材61、2つの第2板状部材62、2つの第3板状部材63、及び2つの第4板状部材64を含む。第4板状部材64は、鋼材部50の側面(ウェブ22cの表面)に取り付けられる。第3板状部材63は第4板状部材64から見て鋼材部50とは反対側に取り付けられ、第2板状部材62は第3板状部材63から見て第4板状部材64とは反対側に取り付けられる。そして、第1板状部材61は、第2板状部材62から見て第3板状部材63とは反対側に取り付けられる。
【0069】
変形例に係る壁体構築用芯材は、錘部60を鋼材部50に締結する締結部材65を備える。第1板状部材61、第2板状部材62、第3板状部材63、第4板状部材64及び鋼材部50(ウェブ22c)のそれぞれは、締結部材65が通される貫通孔を有する。締結部材65は、前述した締結部材31と同様、ボルト及びナットを有し、上記の貫通孔に通された締結部材65のボルトがナットによって錘部60に締結される。これにより、鋼材部50に複数の錘部60を固定させることが可能である。
【0070】
一例として、複数の錘部60において、第1板状部材61が方向A3の最も外側に位置し、第2板状部材62が方向A3の2番目に外側に位置する。そして、複数の錘部60において、第4板状部材64が方向A3の最も内側に位置し、第3板状部材63が方向A3の2番目に内側に位置する。すなわち、第4板状部材64が鋼材部20に接触し、第3板状部材63が第4板状部材64に接触している。そして、第2板状部材62が第3板状部材63に接触し、第1板状部材61が第2板状部材62に接触している。
【0071】
第1板状部材61の一方向A1への長さは第2板状部材62の一方向A1への長さよりも短く、第2板状部材62の一方向A1への長さは第3板状部材63の一方向A1への長さよりも短い。そして、第3板状部材63の一方向A1への長さは第4板状部材64の一方向A1への長さよりも短い。すなわち、一方向A1への長さについては、第4板状部材64が最も長く、第3板状部材63が2番目に長く、第2板状部材62が3番目に長く、第1板状部材61が最も短い。
【0072】
例えば、第1板状部材61、第2板状部材62、第3板状部材63及び第4板状部材64の切削可能部10側(
図9(a)及び
図9(b)では右側)の端面は揃えられている。また、第1板状部材61、第2板状部材62、第3板状部材63及び第4板状部材64の切削可能部10とは反対側(
図9(a)及び
図9(b)では左側)の端面は、互いにずれている。
【0073】
第2板状部材62の切削可能部10とは反対側の端面は第1板状部材61の切削可能部10とは反対側の端面から突出しており、第3板状部材63の切削可能部10とは反対側の端面は第2板状部材62の切削可能部10とは反対側に端面から突出している。そして、第4板状部材64の切削可能部10とは反対側の端面は、第3板状部材63の切削可能部10とは反対側の端面から突出している。
【0074】
方向A3の中央側に位置する第4板状部材64が最も切削可能部10とは反対側に突出しており、方向A3の中央側から2番目に位置する第3板状部材63が2番目に切削可能部10とは反対側に突出している。そして、方向A3の中央側から3番目に位置する第2板状部材62が3番目に切削可能部10とは反対側に突出している。従って、複数の錘部60の全体としての太さは、切削可能部10の反対側の端部から切削可能部10に向かうに従って太くなっている。よって、一方向A1に鋼材部50を挿入したときにおける錘部60の挿入抵抗を一層低減できる。
【0075】
(実施例)
続いて、本開示に係る壁体構築用芯材の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例の内容に限定されない。実施例では、壁体構築用芯材1の試験施工を行った。試験施工では、前述したように孔壁41を掘削機Xによって形成し、孔壁41にベントナイトを含む掘削液(第1混合液)と、セメントを含む造成液(第2混合液)を注入してセメント系材料42とした。一方、壁体構築用芯材1に錘部30及び計測管を取り付けてセメント系材料42に対して建て込みを行い、そのときにおける壁体構築用芯材1の横移動の有無について測定を行った。
【0076】
上記の測定の結果の例を
図10に示している。
図10は、壁体構築用芯材1の上端を固定した場合における壁体構築用芯材1の建て込み後の水平方向への移動量を示している。
図10のグラフの縦軸は地盤Gの深さを示しており、
図10のグラフの横軸は水平方向D1への変位を示している。
図10に示されるように、建込み完了時から退避横行開始までの間に壁体構築用芯材1の下端は-95mmから-107mmまで移動した。そして、退避横行終了から引抜き開始前までの間に壁体構築用芯材1の下端は-95mmから-72mmまで移動した。以上のように、錘部30が取り付けられた壁体構築用芯材1では壁体構築用芯材1の横移動を数cm程度に抑えられることが分かった。
【0077】
次に、錘部30の形状及び重量を算出する方法の実施例について
図11(a)、
図11(b)、
図11(c)及び
図12を参照しながら説明する。以下では、モーメントによる復元力計算で錘部の形状及び重量を算出する方法について説明する。具体的には、横移動したFFU芯材が元に戻ろうとする力(復元力)を算出し、この復元力について比較を行った。
【0078】
図11(a)は錘部及びFFUを有しないH鋼のみからなる一般部を示しており、
図11(b)はH鋼及びFFUを有するSEW壁部を示しており、
図11(c)はH鋼、FFU及び錘部を有するSEW壁部を示している。
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、FFUはH鋼よりも比重が小さいため、SEW壁部の重心GBの位置は一般部の重心GAよりも高くなる。
図11(b)及び
図11(c)に示されるように、錘部がH鋼の下端に付けられる場合、重心GC及び浮心CCの位置は、錘部がないSEW壁の重心GB及び浮心CBよりも低くなる。
【0079】
復元力はソイルモルタル中における自重が浮心の位置に影響を及ぼすので、芯材が正規位置に戻ろうとする力を芯材上端部における回転モーメントMA,MB,MCとして評価した。MAは一般部の回転モーメント、MBは錘部を有しないSEW壁部の回転モーメント、MCは錘部が付けられたSEW壁部の回転モーメント、をそれぞれ示す。MA,MB,MCは以下の式によって算出される。
MA=La×Wh-La'×Vh×ρs
MB=Lb×(W1+W2+W3+W4-ww)-Lb'×(V1+V2+V3+V4-vw)×ρs
MC=Lc×(W1+W2+W3+W4)-Lc'×(V1+V2+V3+V4)×ρs
上記の式において、ρsはソイルセメントの密度であり、本実施例では1650kg/m3(1.65)とした。また、hはH鋼長(全長)、h1はH鋼長(上部)、h2はFFU長、h3はH鋼長(下部)、h4はH鋼長(錘部)、WhはH鋼重量(全長)、W1はH鋼重量(上部)、W2はFFU重量、W3はH鋼重量(下部)、W4はH鋼重量(錘部)、wwは錘部重量、VhはH鋼体積(全長)、V1はH鋼体積(上部)、V2はFFU体積、V3はH鋼体積(下部)、V4はH鋼体積(錘部)、vwは錘部体積、をそれぞれ示す。
【0080】
また、一般部における芯材上端部から芯材重心までの距離をLa、錘部を有しないSEW壁における芯材上端部から芯材重心までの距離をLb、錘部が付けられたSEW壁における芯材上端部から芯材重心までの距離をLc、とすると、La、Lb及びLcは以下の式によって示される。
La=h/2
Lb={W1×h1/2+W2×(h1+h2/2)+(W3+W4-ww)×(h1+h2+(h3+h4)/2}/(W1+W2+W3+W4-ww)
Lc={W1×h1/2+W2×(h1+h2/2)+W3×(h1+h2+h3/2)+W4(h1+h2+h3+h4/2)}/(W1+W2+W3+W4)
【0081】
また、一般部における芯材上端部から芯材浮心までの距離をLa'、錘部を有しないSEW壁における芯材上端部から芯材浮心までの距離をLb'、錘部が付けられたSEW壁における芯材上端部から芯材浮心までの距離をLc'、とすると、La'、Lb'及びLc'は以下の式によって示される。
La'=h/2
Lb'={V1×ρs×h1/2+V2×ρs×(h1+h2/2)+(V3+V4-vw)×ρs×(h1+h2+(h3+h4)/2)}/((V1+V2+V3+V4-vw)×ρs)
Lc'={V1×ρs×h1/2+V2×ρs×(h1+h2/2)+V3×ρs×(h1+h2+h3/2)+V4×ρs×(h1+h2+h3+h4/2)}/((V1+V2+V3+V4)×ρs)
【0082】
また、H鋼及びFFUの条件は以下とした。
H鋼の断面積s=0.023(m2)、H鋼の重量w=182(kg/m)、FFUの高さHf=0.700(m)、FFUの幅Bf=0.240(m)、FFUの密度ρf=1000kg/m3(1.00)
【0083】
以上の条件より実施例1~7に対して復元力等を計算した結果を
図12に示す。
図12の実施例1~7では、錘条件、部材長、部材重量及び部材体積のそれぞれが互いに異なっている。
図12より、一般部より錘部が付けられたSEW壁の回転モーメントMCを高くしてMC≧MAを満たすためには、
図12の錘条件を満たす錘部をH鋼に付ける必要があることが分かった。
【0084】
以上、本開示に係る壁体構築用芯材及び構築方法の実施形態、変形例及び実施例について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態、変形例又は実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において更に変形されたものであってもよい。すなわち、壁体構築用芯材の各部の構成、形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、構築方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0085】
例えば、前述の実施形態では、鋼材部20の鋼材本体部22がH形鋼である例について説明した。しかしながら、鋼材部は、H形鋼以外の鋼材であってもよく、例えば、断面箱形の鋼材であってもよい。このように、鋼材部を構成する鋼材の種類は適宜変更可能である。
【0086】
例えば、前述の変形例では、複数の錘部60が第1板状部材61、第2板状部材62、第3板状部材63及び第4板状部材64を含む例について説明した。しかしながら、錘部の板状部材の数は、1枚以上且つ3枚以下、又は5枚以上であってもよく適宜変更可能である。
【0087】
前述の実施形態では、TRD工法によって複数の壁体構築用芯材1が建て込まれる例について説明した。しかしながら、壁体構築用芯材はTRD工法以外の工法によって建て込まれてもよい。例えば、壁体構築用芯材はSMW工法(ソイルミキシングウォール工法)によって建て込まれてもよく、本開示に係る壁体構築用芯材及び構築方法は種々の工法に適用可能である。前述の実施形態では、回転立坑が構築される現場Aにおいて複数の壁体構築用芯材1が建て込まれる例について説明した。しかしながら、本開示に係る壁体構築用芯材及び構築方法は、前述した現場Aに限られず、種々の現場に適用させることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…壁体構築用芯材、10…切削可能部、11…第1接続部、11b…第1板部、11c…第2板部、11d…角部、11f…孔、11g…ボルト、11h…ナット、11j…ボルト孔、12…第1切削可能部、12b…断面、12c…長辺、12d…短辺、13…第2切削可能部、13b…FFU部、13c…シート部材、13d…固定部材、13f…ボルト、13g…ナット、14…第3切削可能部、15…第2接続部、15b…FFU部、15c…第1鋼板、15d…第2鋼板、15f…第3鋼板、15g…第4鋼板、15h…貫通孔、15j…ボルト、15k…ナット、15m…フランジ部、16…第3接続部、16b…第5鋼板、16c…第6鋼板、16d…テーパ鋼板、20…鋼材部、21…接続部、21b…スプライスプレート、21c…第1ボルトナット、21d…第2ボルトナット、22…鋼材本体部、22b…フランジ、22c…ウェブ、22d…側面、23…貫通孔、30…錘部、30b…主面、30c…第1端面、30d…第2端面、31…締結部材、31b…ボルト、31c…ナット、32…貫通孔、41…孔壁、42…セメント系材料、50…鋼材部、60…錘部、61…第1板状部材、62…第2板状部材、63…第3板状部材、64…第4板状部材、65…締結部材、A…現場、A1…一方向、A2…方向、A3…方向、D1…水平方向、D2…鉛直方向、G…地盤、S…シールドトンネル、X…掘削機、X1…機器本体、X2…カッタービット、X3…注入部。