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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142088
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】真空装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 41/20 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01J41/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048779
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 翔太
【テーマコード(参考)】
5C038
【Fターム(参考)】
5C038AA03
5C038AA04
5C038AA07
5C038AA09
5C038AA11
(57)【要約】
【課題】真空容器の真空度を良化させる過程で周囲に与える影響を低減できる真空装置を実現する。
【解決手段】真空装置(1)は、真空容器(11)と、真空容器内に配されている、材料にチタンを含む陰極(21)と、真空容器内に配されているフォトカソード(24)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器内に配されている、材料にチタンを含む陰極と、
前記真空容器内に配されているフォトカソードと、を備える真空装置。
【請求項2】
前記フォトカソードに光を入射させる光源をさらに備える請求項1に記載の真空装置。
【請求項3】
前記真空容器は、光が透過可能な透過部を備え、
前記フォトカソードは、前記透過部と対向している請求項1または2に記載の真空装置。
【請求項4】
前記透過部と前記陰極との間に、開閉可能なシャッターが設けられている請求項3に記載の真空装置。
【請求項5】
前記真空容器と連通する枝管をさらに備え、
前記透過部は、前記枝管の先端に位置する請求項3に記載の真空装置。
【請求項6】
前記枝管は、少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記屈曲部の内部には、光を反射させるミラーが配され、
前記フォトカソードは、前記透過部から入射し、前記ミラーにより反射された光の光路上に配される請求項5に記載の真空装置。
【請求項7】
前記真空容器は、陽極として機能する請求項1から6のいずれか1項に記載の真空装置。
【請求項8】
前記フォトカソードは、前記陰極上に配されている請求項1から7のいずれか1項に記載の真空装置。
【請求項9】
磁力線が前記フォトカソードの表面と交差する磁場を生成する磁場生成部をさらに備える請求項1から8のいずれか1項に記載の真空装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内の真空度を良化させる真空装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器内の真空度を良化させるポンプの一例として、ゲッタポンプが挙げられる。特許文献1には、ゲッタポンプの一例として、真空容器の内壁面に設けられた非蒸発型ゲッタ担体と、真空容器の外壁面に設けられ、真空容器の壁を介して熱伝導により非蒸発型ゲッタ担体を加熱するヒータと、を有する非蒸発型ゲッタポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-225337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているポンプでは、非蒸発型ゲッタ担体を加熱するために真空容器を加熱する必要がある。このため、例えば真空容器のろう付けが融解してリークが生じるなど、周囲の部材に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、真空容器の真空度を良化させる過程で周囲に与える影響を低減できる真空装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る真空装置は、真空容器と、前記真空容器内に配されている、材料にチタンを含む陰極と、前記真空容器内に配されているフォトカソードと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る真空装置によれば、真空容器の真空度を良化させる過程で周囲に与える影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る真空装置の構成の例を示す図である。
図2】実施形態1に係る真空装置の動作を示す図である。
図3】実施形態1の第1の変形例に係る真空装置の構成の例を示す図である。
図4】実施形態1の第2の変形例に係る真空装置の構成の例を示す図である。
図5】実施形態2に係る真空装置の構成の例を示す図である。
図6】実施形態2の第1の変形例に係る真空装置の構成の例を示す図である。
図7】実施形態2の第2の変形例に係る真空装置の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上かつB以下」を意味する。
【0010】
(真空装置1の構成)
図1は、実施形態1に係る真空装置1の構成の例を示す図である。図1において、符号101は斜視図、符号102は側面図、符号103は符号102におけるA-A線断面図である。図1に示すように、真空装置1は、真空容器11、陰極21、絶縁板22、およびフォトカソード24を備える。図1の符号101においては、視認性のため、真空容器11を透過して内部を描いている。
【0011】
真空容器11は、内部を密閉することが可能な容器である。真空容器11の材料は特に制限されず、例えばSUS304である。真空容器11は、開口12および透過部13を有する。開口12は、真空容器11の内部に陰極21を配するための開口である。透過部13は、真空容器11の壁面に設けられた、後述する光源14からの光が透過可能な部分である。透過部13は、例えばガラス窓である。この他、真空容器11は、他の真空容器またはポンプと連通するための、図示しない開口を有していてよい。
【0012】
絶縁板22は、絶縁体で形成された板である。絶縁体の例として、エポキシ樹脂またはアルミナが挙げられる。絶縁板22は、開口12を塞ぐ位置に配される。絶縁板22と真空容器11とが接触する領域に、当該領域をシールするためのOリングまたは銅ガスケットなどのシール部材が設けられる。絶縁板22が開口12を塞ぐことで、真空容器11の内部が密閉される。
【0013】
陰極21は、材料にチタンを含む電極である。陰極21は、例えばチタン板である。また、陰極21は、チタンを含む合金の板であってもよい。陰極21は、絶縁板22の、真空容器11の内側に位置する面に立設される。したがって、陰極21は、密閉された状態の真空容器11内に配される。
【0014】
端子23は、陰極21と電気的に接続された状態の端子である。端子23は、絶縁板22の、真空容器11の外側に位置する面に設けられる。端子23は、図1の符号103に示すように、絶縁板22を貫通した陰極21の端部であってよい。また、端子23は、陰極21とは別の部材であってもよい。
【0015】
図1に示す例では、真空容器11は、陽極として機能する。これにより、陽極を別途設ける必要が無くなり、真空装置1の部品点数を削減できる。ただし、真空装置1は、真空容器11とは別の陽極を備えていてもよい。その場合、当該陽極が真空容器11から絶縁されていれば、陰極21については真空容器11から絶縁させなくてもよい。
【0016】
フォトカソード24は、負電圧を印加された状態で光が入射した場合に、光電効果により光電子を放出する。フォトカソード24は、真空容器11内に配されている。フォトカソード24の種類については特に制限されない。長寿命かつ量子効率が高いという観点から、例えばCs-Te系半導体フォトカソードをフォトカソード24として用いることができる。
【0017】
図1においては、フォトカソード24は、陰極21上に配されている。このため、陰極21に負電圧を印加することで、フォトカソード24にも負電圧を印加することができる。したがって、フォトカソード24に負電圧を印加するための構成を別途備える必要がない。
【0018】
図1に示す例では、真空装置1は、光源14をさらに備える。光源14は、フォトカソード24に光を入射させる。光源14がフォトカソード24に入射させる光の種類は、フォトカソード24の種類に応じて決定される。例えばフォトカソード24が、上述したCs-Te系半導体フォトカソードである場合、光源14がフォトカソード24に入射させる光は紫外光である。光源14がフォトカソード24に入射させる光を可視光とする必要がある場合には、フォトカソード24を例えばCs-Sb系半導体フォトカソードとする。ただし、Cs-Sb系半導体フォトカソードは、寿命および量子効率の観点で、Cs-Te系半導体フォトカソードよりも劣る。
【0019】
真空装置1が光源14を備える場合、当該光源14がフォトカソード24に入射させる光は、真空装置1の設計者によって選択された、フォトカソード24の種類に応じた適切な光となる。したがって、真空装置1のユーザにとっての利便性が向上する。ただし、真空装置1は、必ずしも光源14を備えなくてもよい。真空装置1が光源14を備えない場合には、真空装置1のユーザが、フォトカソード24の種類に応じた光を出射することが可能な光源を、真空装置1と組み合わせればよい。
【0020】
フォトカソード24は、透過部13と対向している。光源14は、真空容器11の外部に配され、透過部13を介してフォトカソード24に光を入射させる。このため、光源14の表面にチタンが付着することを防ぐことができる。また、光源14に何らかの不調が生じた場合に、真空容器11を大気開放することなく当該不調に対応できる。ただし、光源14は真空容器11の内部に配されていてもよい。その場合、真空容器11は、透過部13を備えなくてよい。
【0021】
(真空装置1の動作)
図2は、真空装置1の動作を示す図である。真空装置1は、10-10Pa程度の超高真空を達成するために使用される。以下に説明する真空装置1の動作を開始させる前に、予め他の真空ポンプなど(不図示)により、真空容器11内を1Pa程度の高真空の状態としておく。この状態の真空容器11内には、超高真空を達成する上で除去すべき気体分子31がまだ残留している。
【0022】
まず、図2の符号201に示すように、端子23に電源装置30を接続し、陰極21に負電圧を印加する。これにより、真空容器11と陰極21との間に、真空容器11の側を正とする電場を生じさせる。陰極21に印加する電圧の絶対値は、例えば100V~200Vとする。
【0023】
次に、図2の符号202に示すように、陰極21に負電圧を印加した状態で、フォトカソード24に対して光を入射させる。これにより、光電効果によりフォトカソード24から光電子32が放出される。フォトカソード24から放出された光電子32は、真空容器11と陰極21との間の電場により、真空容器11の内面へ向けて加速される。加速された光電子32が真空容器11内に残留している気体分子31と衝突すると、気体分子31はイオン33と二次電子34とに電離する。イオン33は、真空容器11と陰極21との間の電場により、陰極21へ向けて加速される。
【0024】
図2の符号203に示すように、陰極21へ向けて加速されたイオン33は、陰極21に衝突する。このとき、陰極21に含まれるチタン原子35が、陰極21から空間に飛び出す。
【0025】
図2の符号204に示すように、陰極21から飛び出したチタン原子35は、真空容器11の内面、および/または陰極21に堆積してゲッタ膜36を生成する。チタン原子35は化学的に活性であるため、ゲッタ膜36を生成する過程において、周囲の気体分子31を吸着する。チタン原子35に吸着される気体分子31の例として、水素、酸素、窒素および一酸化炭素などの分子が挙げられる。また、ヘリウムなどの不活性な気体の分子であっても、図2の符号202に示したようにイオン化され、チタン原子35に吸着される。その結果、真空容器11内の気体分子31が減少し、真空容器11内の真空度が良化される。
【0026】
(真空装置1の効果)
以上のとおり、真空装置1においては、真空容器11と陰極21との間に電圧を印加した状態で、真空容器11内に配されたフォトカソード24に光を入射させることで、真空容器11内の真空度が良化される。このため、真空容器11を加熱する必要がない。したがって、真空容器11内の真空度を良化する過程で周囲に与える影響を低減できる。
【0027】
また、上述したとおり、真空装置1においては、真空容器11(陽極)と陰極21との間に印加される電圧は、100V~200V程度である。この値は、例えば従来のイオンポンプにおいて電極間に印加される電圧(数kV)よりも低い。したがって、真空装置1によれば、従来のイオンポンプなどと比較して、真空度を良化する過程における安全性が向上する。加えて、数kVといった高電圧を印加することが可能な大型の電源装置が不要となるため、装置のコストを低減できる。
【0028】
また、一般に、電子の衝突による気体分子の電離効率は、電子のエネルギーが50eV~200eVである場合に高くなる。真空装置1においては、真空容器11と陰極21との間に印加される電圧を100V~200V程度とすることで、フォトカソード24から放出される光電子32のエネルギーが、上記の範囲内となる。その結果、光電子32の衝突による気体分子31の電離効率が高くなる。
【0029】
さらに、一般に、イオンにより原子の飛び出しを発生させるためには、イオンのエネルギーが、少なくとも10eV、好ましくは数100eV程度必要である。真空装置1においては、真空容器11と陰極21との間に印加される電圧を100V~200V程度とすることで、光電子32により気体分子31から電離したイオン33のエネルギーが、上記の範囲内となる。その結果、イオン33によるチタン原子35の飛び出しが発生するようになる。
【0030】
(変形例1)
図3は、実施形態1の第1の変形例に係る真空装置1Aの構成の例を示す図である。図3は、図1の符号103と同様の断面における断面図である。図3に示すように、真空装置1Aは、真空装置1の構成に加えて、磁場生成部25をさらに備える。
【0031】
磁場生成部25は、磁力線がフォトカソード24の表面と交差する磁場を生成する。特に、磁場生成部25は、磁力線がフォトカソード24の表面に垂直な磁場を生成することが好ましい。図1に示す例では、磁場生成部25は、フォトカソード24の、透過部13と対向している面とは逆側の面に配された磁石である。ただし、磁場生成部25はこれに限定されず、電流が流れることで磁場を生成するコイルなどであってもよい。
【0032】
磁場生成部25が生成する磁場の強度は、光電子32の旋回運動の直径(Larmor半径の2倍)が真空容器11内に収まるよう、真空装置1Aの設計者により決定されればよく、例えば数ガウス程度である。
【0033】
真空装置1Aにおいては、光電効果によりフォトカソード24から放出された光電子32(図2参照)は、磁場生成部25が生成した磁場により旋回運動しながら真空容器11の内壁へ加速される。このため、真空装置1Aにおいては、磁場生成部25を備えない真空装置1と比較して、当該光電子32が気体分子31(図2参照)と衝突する確率が向上する。その結果、単位時間当たりのイオン33の生成量、当該イオン33が陰極21に入射することによりチタン原子35が陰極21から飛び出す量、および当該チタン原子35がゲッタ膜36を生成する過程で吸着する気体分子31の量が増加する。したがって、真空装置1Aによれば、真空装置1よりも短時間で真空容器11内の真空度を良化することができる。
【0034】
(変形例2)
図4は、実施形態1の第2の変形例に係る真空装置1Bの構成の例を示す図である。図4に示すように、真空装置1Bは、陰極21を2つ備える。2つの陰極21は、真空容器11内の、互いに対向する2つの内壁のそれぞれに、真空容器11から絶縁された状態で配されている。また、フォトカソード24は、陰極21が配されている2つの内壁のいずれとも異なる内壁に、真空容器11から絶縁された状態で配されている。さらに、2つの陰極21およびフォトカソード24のそれぞれが、電源装置30に接続されている。
【0035】
以上の構成により、真空装置1Bにおいては、2つの陰極21およびフォトカソード24のそれぞれに負電圧が印加される。この場合、真空装置1とは異なり、フォトカソード24を陰極21上に配する必要がない。このような真空装置1Bも、真空装置1と同様の効果を奏する。
【0036】
なお、フォトカソード24を陰極21上に設けない場合であっても、真空装置1Bが備える陰極21の数を1または3以上としてよい。また、フォトカソード24を陰極21上に設ける場合であっても、真空装置1が備える陰極21の数を2以上としてよい。特に、複数の陰極21をフォトカソード24に対して均等に配置し、電場をフォトカソード24に対して対称に近づけることで、フォトカソード24から放出された光電子32を偏りなく拡散できる。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。実施形態2では、透過部13へチタン原子35が付着する可能性を低減できる構成について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さないか、または図示を省略している。
【0038】
図5は、実施形態2に係る真空装置2の構成の例を示す図である。図5に示すように、真空装置2は、真空容器11の代わりに真空容器41を備えるとともに、開閉可能なシャッター43をさらに備える点で真空装置1と相違する。真空容器41は、開口12とは別の開口42を有する点で真空容器11と相違する。透過部13は、シャッター43を介して開口42に装着されるビューポートである。換言すれば、真空装置2においては、透過部13と陰極21との間に、開閉可能なシャッター43が設けられている。
【0039】
実施形態1において上述したとおり、真空装置1の動作においては、陰極21から空間にチタン原子35が飛び出す。チタン原子35が透過部13に付着すると、透過部13を介してフォトカソード24に入射する光量が減少し、真空装置1の動作に支障が生じる可能性がある。真空装置2においては、シャッター43を適切なタイミングで開閉することで、チタン原子35が透過部13に付着する可能性を低減できる。
【0040】
(変形例1)
図6は、実施形態2の第1の変形例に係る真空装置2Aの構成の例を示す図である。真空装置2Aは、シャッター43の代わりに、真空容器41と連通する枝管44を備える点で、真空装置2と相違する。枝管44は、開口42に設けられる。真空装置2Aにおいて、透過部13は、枝管44の先端に位置する。
【0041】
真空装置2Aにおいては、透過部13が枝管44の先端に位置するため、真空装置1と比較して、透過部13と陰極21との間の距離が大きい。このため、真空装置2Aにおいては、チタン原子35が透過部13に到達しにくくなる。したがって、真空装置2Aによれば、シャッターを開閉することなく、チタン原子35が透過部13に付着する可能性を低減できる。
【0042】
(変形例2)
図7は、実施形態2の第2の変形例に係る真空装置2Bの構成の例を示す図である。真空装置2Bは、枝管44の代わりに枝管45を備える点で、真空装置2Aと相違する。枝管45は、屈曲部45aを有する。屈曲部45aの内部には、光を反射させるミラー46が配されている。フォトカソード24は、透過部13から入射し、ミラー46により反射された光の光路上に配される。換言すれば、フォトカソード24は、ミラー46を介して透過部13と対向している。
【0043】
このような真空装置2Bにおいては、真空装置2Aよりもさらに、チタン原子35が透過部13に到達しにくくなる。したがって、真空装置2Bによれば、チタン原子35が透過部13に付着する可能性をさらに低減できる。
【0044】
なお、図7に示した例では、枝管45は屈曲部45aを1つのみ有する。しかし、枝管45は、屈曲部45aを複数有していてもよい。その場合、複数の屈曲部45aの、それぞれの内部にミラー46が配される。
【0045】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る真空装置は、真空容器と、前記真空容器内に配されている、材料にチタンを含む陰極と、前記真空容器内に配されているフォトカソードと、を備える。
【0046】
上記の構成によれば、フォトカソードから放出される光電子により、真空容器内の気体分子がイオン化される。イオン化された気体分子が陰極に衝突することで、陰極に含まれるチタン原子が空間に飛び出し、当該チタン原子が真空容器の内壁などにゲッタ膜を生成する。ゲッタ膜の生成の過程で、チタン原子が真空容器内の気体分子を吸着する。
【0047】
以上の過程により、真空容器の真空度が良化される。当該過程において、真空容器を加熱する必要はない。したがって、真空容器の真空度を良化させる過程で周囲に与える影響を低減できる。
【0048】
本発明の態様2に係る真空装置は、前記フォトカソードに光を入射させる光源をさらに備える。
【0049】
上記の構成によれば、フォトカソードの種類に応じた適切な光を入射させる光源を、真空装置の設計者が選択することで、ユーザの利便性が向上する。
【0050】
本発明の態様3に係る真空装置において、前記真空容器は、光が透過可能な透過部を備え、前記フォトカソードは、前記透過部と対向している。
【0051】
上記の構成によれば、真空容器の外部に配された光源から、透過部を介してフォトカソードに光を入射させることができる。したがって、光源に不調が生じた場合に、真空容器を大気開放することなく当該不調に対応できる。
【0052】
本発明の態様4に係る真空装置においては、前記透過部と前記陰極との間に、開閉可能なシャッターが設けられている。
【0053】
上記の構成によれば、シャッターを適切なタイミングで開閉することで、陰極から飛び出したチタン原子が透過部に付着する可能性を低減できる。
【0054】
本発明の態様5に係る真空装置は、前記真空容器と連通する枝管をさらに備え、前記透過部は、前記枝管の先端に位置する。
【0055】
上記の構成によれば、陰極から飛び出し、枝管を通り抜けて透過部に到達したチタン原子のみが透過部に付着することとなる。したがって、チタン原子が透過部に付着する可能性を低減できる。
【0056】
本発明の態様6に係る真空装置において、前記枝管は、少なくとも1つの屈曲部を有し、前記屈曲部の内部には、光を反射させるミラーが配され、前記フォトカソードは、前記透過部から入射し、前記ミラーにより反射された光の光路上に配される。
【0057】
上記の構成によれば、屈曲した枝管を通り抜けて透過部に到達したチタン原子のみが透過部に付着することとなる。したがって、チタン原子が透過部に付着する可能性をさらに低減できる。
【0058】
本発明の態様7に係る真空装置において、前記真空容器は、陽極として機能する。
【0059】
上記の構成によれば、陽極を別途備える必要がなくなり、真空装置の部品点数を削減できる。
【0060】
本発明の態様8に係る真空装置において、前記フォトカソードは、前記陰極上に配されている。
【0061】
上記の構成によれば、陰極に負電圧を印加することでフォトカソードにも負電圧が印加される。したがって、フォトカソードに負電圧を印加するための構成を別途備える必要がなくなり、真空装置の部品点数を削減できる。
【0062】
本発明の態様9に係る真空装置は、磁力線が前記フォトカソードの表面と交差する磁場を生成する磁場生成部をさらに備える。
【0063】
上記の構成によれば、フォトカソードから放出された光電子は、旋回運動しながら真空容器の内壁へ加速される。このため、光電子が気体分子に衝突する確率が向上し、真空装置の動作が速くなる。
【0064】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B,2,2A,2B 真空装置
11、41 真空容器
13 透過部
14 光源
21 陰極
24 フォトカソード
25 磁場生成部
43 シャッター
44、45 枝管
45a 屈曲部
46 ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7