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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142104
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】残鉄穿孔用ビット
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/54 20060101AFI20230928BHJP
   C21B 7/00 20060101ALI20230928BHJP
   C21C 1/06 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
E21B10/54
C21B7/00 304
C21C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048802
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 悠起夫
(72)【発明者】
【氏名】古長 達廣
(72)【発明者】
【氏名】大出 哲也
(72)【発明者】
【氏名】榎田 忠宏
【テーマコード(参考)】
2D129
4K014
【Fターム(参考)】
2D129AA10
2D129AB16
2D129AC04
2D129BA04
2D129DA12
2D129DC13
2D129GA07
2D129GA25
2D129GB09
2D129GB14
4K014AD12
4K014AD21
(57)【要約】
【課題】連続孔の不連続部分を容易に除去することができる残銑穿孔用ビットを提供する。
【解決手段】本発明の残銑を穿孔する残銑穿孔用ビット1は、ソリッドビット110と、ソリッドビット110が挿入された筒状のメタルクラウン120と、を備えている。メタルクラウン120の先端は、ソリッドビット110の先端よりも先方に位置している。メタルクラウン120は、外周側メタルクラウン122と内周側メタルクラウン124とを備えている。外周側メタルクラウン122は内周側メタルクラウン124よりも肉厚が薄く構成されている。外周側メタルクラウン122の先端は内周側メタルクラウン124の先端よりも先方に位置している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
残銑を穿孔する残銑穿孔用ビットであって、
ソリッドビットと、
前記ソリッドビットが挿入された筒状のメタルクラウンと、
を備え、
前記メタルクラウンの先端は、前記ソリッドビットの先端よりも先方に位置することを特徴とする残鉄穿孔用ビット。
【請求項2】
請求項1に記載の残銑穿孔用ビットであって、
前記メタルクラウンは、外周側メタルクラウンと内周側メタルクラウンとを備え、
前記外周側メタルクラウンは前記内周側メタルクラウンよりも肉厚が薄く構成され、
前記外周側メタルクラウンの先端は前記内周側メタルクラウンの先端よりも先方に位置することを特徴とする残銑穿孔用ビット。
【請求項3】
請求項2に記載の残銑穿孔用ビットであって、
前記外周側メタルクラウンは前記内周側メタルクラウンと一体に接合されており、
前記内周側メタルクラウンは前記ソリッドビットと一体に接合されていることを特徴とする残銑穿孔用ビット。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の残銑穿孔用ビットであって、
前記ソリッドビットには給水孔が設けられており、
前記外周側メタルクラウンには、残銑の切り屑を前記メタルクラウンの外側に排出するための複数のスリットが、周方向に間隔を存して設けられていることを特徴とする残銑穿孔用ビット。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の残銑穿孔用ビットであって、
残銑に複数の孔を一部重複させながら環状の連続孔を設けて、切断面を形成する際に使用するものであり、
孔の位置がずれて不連続になっている範囲に合わせて前記外周側メタルクラウンを設置し、ガイド用の外周溝を切削させ、
前記内周側メタルクラウンで前記外周側メタルクラウンを補強しながら、前記外周溝の幅を広げ、
中央の前記ソリッドビットで不連続孔の部分を穿孔、除去することを特徴とする残銑穿孔用ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の残銑の除去処理作業を行う際に、残銑に下穴などを穿孔するための穿孔ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
穿孔機のロッドの先端に穿孔用ビットを装着してこの穿孔用ビットをロッドと一体に回転させながら高炉の残銑に穿孔を行う場合、残銑の性質上、穿孔用ビットの摩耗が激しくて頻繁に交換する必要がある。このため、従来から交換等の取り扱いを容易にするためにできるだけ短尺の穿孔用ビットが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4693753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の穿孔用ビットでは、銑鉄表面の凹凸によって穿孔用ビットの先端部が目標の位置から外れたり、又は銑鉄内部の硬度が均一でないため、硬度の低い方に穿孔用ビットの進路が変わる場合があり、想定したとおりに残銑に穿孔することは困難であった。
【0005】
このため、穿孔が一部重なるようにして環状の連続孔を形成する予定であるにも関わらず、孔の途中から重なる部分がなくなってしまい、孔の底で切断線がつながっていない状態となることがある。この場合、環状の連続孔の底部を切断するためのワイヤを所定の位置に設置することができず、銑鉄塊を取り出すことができない。
【0006】
したがって、連続孔の繋がっていない部分を除去する必要があるが、幅が狭いため通常の従来の穿孔用ビットでは先端がずれてしまって正確に切除することが困難である。また、深さが2m以上ある場合もあり、酸素が供給されて先端が燃焼するランスで溶断することも困難である。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、連続孔の不連続部分を容易に除去することができる残銑穿孔用ビットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
残銑を穿孔する残銑穿孔用ビットであって、
ソリッドビットと、
前記ソリッドビットが挿入された筒状のメタルクラウンと、
を備え、
前記メタルクラウンの先端は、前記ソリッドビットの先端よりも先方に位置することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ソリッドビットよりも先方まで延びるメタルクラウンによって不連続部分を囲むように切削してからメタルクラウンに案内されるようにして不連続部分をソリッドビットで切削することができる。
【0010】
[2]また、本発明においては、
前記メタルクラウンは、外周側メタルクラウンと内周側メタルクラウンとを備え、
前記外周側メタルクラウンは前記内周側メタルクラウンよりも肉厚が薄く構成され、
前記外周側メタルクラウンの先端は前記内周側メタルクラウンの先端よりも先方に位置することが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、内周側メタルクラウンよりも肉厚の薄い外周側メタルクラウンによって、穿孔開始時の刃の食い付きをよくすることができるとともに、外周側メタルクラウンよりも肉厚の厚い内周側メタルクラウンによって穿孔中の振動を抑制することができる。
【0012】
[3]また、本発明においては、
前記外周側メタルクラウンは前記内周側メタルクラウンと一体に接合されており、
前記内周側メタルクラウンは前記ソリッドビットと一体に接合されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、ソリッドビットを回転させる動力でメタルクラウンも一体に回転させることができる。
【0014】
[4]また、本発明においては、
前記ソリッドビットには給水孔が設けられており、
前記外周側メタルクラウンには、残銑の切り屑を前記メタルクラウンの外側に排出するための複数のスリットが、周方向に間隔を存して設けられていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、穿孔中に発生する切り屑を含む水をスリットからメタルクラウンの外に排出することができる。
【0016】
[5]また、本発明においては、
残銑に複数の孔を一部重複させながら環状の連続孔を設けて、切断面を形成する際に使用するものであり、
孔の位置がずれて不連続になっている範囲に合わせて前記外周側メタルクラウンを設置し、ガイド用の外周溝を切削させ、
前記内周側メタルクラウンで前記外周側メタルクラウンを補強しながら、前記外周溝の幅を広げ、
中央の前記ソリッドビットで不連続孔の部分を穿孔、除去することが好ましい。
【0017】
本発明によれば、不連続部分を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】発明の実施形態の内部に銑鉄塊が固化した混銑車を示す模式縦断面図。
図2】銑鉄塊に連続孔を形成している状態を示す模式縦断面図。
図3】連続孔及び拡大孔を形成した状態を示す模式上面図。
図4】ワイヤソーで切断している状態を示す模式縦断面図。
図5】銑鉄塊を引き上げる状態を示す模式縦断面図。
図6】本実施形態の残銑穿孔用ビットを示す説明図。
図7】本実施形態の残銑穿孔用ビットを分解して示す説明図。
図8】本実施形態のソリッドビットを示す説明図。
図9】本実施形態の不連続部分を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照して、発明の実施形態の残銑穿孔用ビットを説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態の残銑穿孔用ビット1(図2参照)は、外形が魚雷形状のためトピードカー(TPC)とも称される混銑車10の内部で固化した銑鉄塊Aを、混銑車10をなるべく傷つけることなく解体・排出して、混銑車10を再度利用可能にする混銑車10の再生時に使用されるものである。
【0020】
混銑車10は、製鉄所において、高炉工場から製鋼工場までによって搬送する際に使用されるものであり、搬送中に、脱珪処理、脱燐処理、脱硫処理などの溶銑から不純物を取り除く予備処理を行う。
【0021】
混銑車10は、溶銑を貯留する容器である炉体11、炉体11内の溶銑を排出する際に炉体11を回転させるための回転装置12、及び、炉体11及び回転装置12を支持する台車13などから構成されている。炉体11の外形が魚雷に類似した形状であり、これから、混銑車10は、トピードカーとも称されている。混銑車10は、図示しないが、台車13が図示しない機関車に牽引されることなどによって軌道上を走行する。
【0022】
炉体11は、鋼板を溶接等の方法で接合して外形を形成する鉄皮14と、鉄皮14の内面に内張りされた耐火レンガなどの耐火物15とから主に構成されている。炉体11の端部は回転装置12の軸受に支持されており、回転装置12によって炉体11が長軸回りに回転するように構成されている。炉体11の中央部には、溶銑の注入口及び排出口として機能する上面視で楕円形状の炉口としての開口16が設けられている。
【0023】
製鉄所などが停電などの際に、安全確保のために操業を長期間に亘って停止させた場合、混銑車10の炉体11の内部に収容されている溶銑が固化して、銑鉄塊Aとなる。なお、図1において2点鎖線で示された銑鉄塊Aの部分A1は、後述するようにして切断して除去される部分である。
【0024】
本実施形態で用いられる混銑車10の再生産方法は、銑鉄塊Aを混銑車10の内部から除去するものである。この混銑車10の再生産方法は、連続孔形成工程、拡大孔形成工程、切断工程及び引上工程を備えている。
【0025】
まず、図2及び図3を参照して、開口16を介して、削孔装置20を用いて、銑鉄塊Aに上面視で内方の部分の周囲を全体に亘って取り囲むように連続した連続孔31を形成する連続孔形成工程について説明する。
【0026】
この連続孔形成工程においては、開口16を介して上面が露出する銑鉄塊Aに対して、削孔装置20を用いて、銑鉄塊Aの上面から底部に向かって所定の深さまで垂直方向に延びる孔を順次、連続して形成する。この際、隣り合う孔が部分的に重なり合って連続するように形成する。これにより上面視で内方の部分の周囲を全体に亘って取り囲む連続孔31が形成される。連続孔31は、炉体11の底部に位置する耐火物15を損傷しない程度に銑鉄塊Aの底部付近まで達するような同じ深さに形成する。
【0027】
ここでは、連続孔31は、銑鉄塊Aに上面視で円環状に形成されている。ただし、連続孔31は、上面から見て円環状である場合に限定されず、例えば、開口16などに沿った楕円環状でもよく、さらに多角形の環状などの他の形状であってもよい。
【0028】
なお、開口16の付近に存在する鉄皮14の一部や耐火物15を除去することにより、開口16を拡げたうえで、この開口16を介して、連続孔31を形成してもよい。この場合、開口16を構成する円筒状の鉄皮14よりも開口16の中心部側に存在する鉄皮14の一部や耐火物15を上下方向全体に亘って除去すればよい。これにより、引上工程において除去することが可能な銑鉄塊A1の容積を大きくすることが可能となるが、除去した鉄皮14の一部や耐火物15を補修する必要が生じる。
【0029】
削孔装置20として、例えば、固化した銑鉄や鋼鉄を削孔するための公知の削孔装置20を使用することが好ましい。削孔装置20は、例えば、混銑車10の上端と同程度の高さの作業架台を走行可能に設置すればよい。
【0030】
削孔装置20は、クローラー式の走行体21に穿孔装置22を搭載したものである。ここでは、走行体21に設置された旋回アーム23の先端に案内支柱24が取り付けられており、この案内支柱24に沿って、回転力によって穿孔する穿孔機25が進退するように構成されている。
【0031】
そして、穿孔機25は、案内支柱24に摺動可能に設けられたモータ26を備えており、このモータ26は、中空ロッド27を回転させる機構を有する。また、中空ロッド27のモータ26側の端部には水が供給され、この供給された水が中空ロッド27を経て中空ロッド27の先端に設けられた残銑穿孔用ビット1の給水孔112から排出される。この水により、残銑穿孔用ビット1の回転力により銑鉄塊Aを穿孔するときに、粉砕粉を吹き飛ばす。また同時に、水によって銑鉄塊Aとの摩擦で高温になる残銑穿孔用ビット1を冷却して、穿孔性能を維持する。
【0032】
次に、図3及び図4を参照して、銑鉄塊Aに形成された連続孔31の少なくとも1か所、望ましくは2か所に、上面視で円環状の内外の少なくとも何れかの方向に拡大させた拡大孔32を形成する拡大孔形成工程が行われる。これら拡大孔32は、後述するワイヤソー40のプーリ42A,42Bがそれぞれ挿入することが可能な大きさである。ここでは、拡大孔32は、上面視で円環状の連続孔31の中心点を点対称の中心とする2点を中心に形成されているが、このような位置に形成されることに限定されない。
【0033】
拡大孔32は、ここでは、連続孔31を構成する個々の孔(単孔31a)よりも直径が大きい上面視で円状に形成されている。このような拡大孔32は、連続孔31の単孔31aを形成した際に用いた穿孔機25の残銑穿孔用ビット1を大径のものに取り換えて削孔することにより形成することができる。ただし、連続孔31を形成した際に用いた削孔装置20を残銑穿孔用ビット1なども含めて同じものを用い、複数個の孔を一部重ねて開けることによって、上面視で円状ではなく矩形状などの拡大孔32を形成してもよい。
【0034】
次に、図4を参照して、2か所の拡大孔32の底部にそれぞれ後述するワイヤソー40のプーリ42A,42Bが設置され、連続孔31の底部にて銑鉄塊Aを水平方向にワイヤソー40を用いて切断する切断工程が行われる。
【0035】
ワイヤソー40は、主に、被切断物を切断するためのワイヤ41(高張力鋼線)、ワイヤ41を巻き架けた2個のプーリ42A、42B(溝付き滑車)、プーリ42A、42Bの上流側と下流側にそれぞれ配置されワイヤ41に張力を付与するテンションローラ43A、43B、及びワイヤ41を循環運動又は往復運動させるワイヤ運動機構44を備えている。
【0036】
このようなワイヤソー40を用いて、2か所の拡大孔32の底部にそれぞれ設置したプーリ42A、42Bにワイヤ41を巻き架け、このワイヤ41を、作業架台に設置したワイヤ運動機構44によって循環運動又は往復運動させることにより、銑鉄塊Aの底部を半分ずつ切断する。
【0037】
具体的には、最初は、プーリ42A、42Bに巻き架けられたワイヤ41は、連続孔32の底部の一方側に沿って半円弧状に位置している。この状態でワイヤ41を循環運動又は往復運動させると、ワイヤ41が銑鉄塊Aの底部を順次中心側に向って水平方向に切断する。これにより、2つの拡大孔32を直径の両端とした半円状に銑鉄塊Aの底部が切断される。
【0038】
さらに、ワイヤ41が存在する位置を連続孔31の反対側の半円弧状の底部に沿って位置させる。そして、この状態でワイヤ41を循環運動又は往復運動させると、2つの拡大孔32を直径の両端とした半円状に銑鉄塊Aの反対側の底部が切断される。
【0039】
このようにして、銑鉄塊Aの底面が半円状ずつ2回に分けて切断され、円筒状の銑鉄塊A1がその周りの銑鉄塊Aから分離される。このように2回に分けて切断することにより、拡大孔32を1か所だけで形成する場合と比較して、ワイヤ41の長さの短縮化を図ることが可能となるとともに、ワイヤ41の破断による切断作業の遅延などの抑制を図ることが可能となる。
【0040】
なお、ワイヤソー40による切断時において、ワイヤ41の上下は銑鉄塊Aに挟まれることになるが、切断時に発生する切断粉が切断面の間に存在するので、ワイヤ41による切断ができない程度にワイヤ41の運動が不可能になることはない。なお、ワイヤソー40による切断がある程度進行した後に、銑鉄塊Aの底部に形成された隙間にスペーサなどを挿入してもよい。
【0041】
この場合、例えば、銑鉄塊Aの上面からワイヤソー40による切断面下端までの距離より長い棒材の先端にスペーサを直角に設置したものを用いる。スペーサの長手方向を連続孔による円弧方向に沿わせるようにして挿入し、切断面の底部に達した段階で棒材を90度回転させることで、スペーサをワイヤソー40による切断面の間に挿入する。このようなスペーサを数か所設けることにより、ワイヤソー40の切断部分を外側から支持することができる。
【0042】
さらに、銑鉄塊Aの底部はワイヤソー40によって半円状に2回に亘って切断されるが、切断終了時に、中央部から切断されずに残存する部分があってもよい。この場合、上面側を削孔して残存部分を切削するなどを行うことによって除去すればよい。また、拡大孔32を3か所以上に形成して、これら拡大孔32のうちの2か所の底部に順次プーリ42A、42Bを設置して、銑鉄塊Aの底部を3回以上に分けて切断してもよい。
【0043】
次に、図5を参照して、切断した円筒状の銑鉄塊A1を混銑車10に対して引き上げる引上工程を行われる。この引上工程においては、連続孔形成工程において外周側面を全面に亘って切断され、且つ切断工程において底面が全面に亘って切断された円筒状の銑鉄塊A1を、この銑鉄塊A1の外側に残存した銑鉄塊Aを有する混銑車10に対して引き上げることによって、分離させる。
【0044】
なお、引上工程の開始時には、切断された銑鉄塊A1の底面と混銑車10の底部の上面に残存した銑鉄塊A2との間に一部が切断されていない部分が少しであれば残存していてもよい。この残存した銑鉄塊Aの部分が引きちぎれる、又は引き裂かれるなどによって破断するように、銑鉄塊A1を大型クレーンなどの引上装置50を用いて引き上げる。
【0045】
切断された円筒状の銑鉄塊A1が除去された混銑車10は、特に鉄皮14には破損などの不具合などがないので、残存する銑鉄塊A2を除去したうえで良好に再利用することができる。銑鉄塊A2の除去は、手持ち式の溶融切断装置(ランスなど)や銑鉄用ドリルなどを用いるなどの適宜な方法で行えばよい。
【0046】
なお、切断した円筒状の銑鉄塊A1を引き上げるときには、円筒状の銑鉄塊A1にアンカー51を設置して、このアンカー51を利用して引上装置50で円筒状の銑鉄塊A1を引き上げることが好ましい。アンカー51は、例えば、円筒状の銑鉄塊A1の上面に穴に形成し、この穴に溶剤の入ったカプセルを挿入し、アンカー51を穴に差し込んでアンカー51によってカプセルを破壊することにより、溶剤が化学反応を起こしてアンカー51を銑鉄塊A1に固定させるケミカルアンカー(登録商標)を用いて円筒状の銑鉄塊A1にアンカー51を設置すればよい。
【0047】
本実施形態の方法によれば、上述したように、連続孔31を外周面として底面がワイヤソー40で切断された状態にあるので、円筒状の銑鉄塊A1が混銑車10から容易に取り出すことが可能となる。さらに、この部分の銑鉄塊Aを切断する際に、混銑車10に破損などの不具合が生じず、混銑車10を良好に再利用することが可能となる。
【0048】
図6図9を参照して、本実施形態の残銑穿孔用ビット1は、ソリッドビット110と、ソリッドビット110が挿入された筒状のメタルクラウン120とを備えている。メタルクラウン120は、外周側メタルクラウン122と、外周側メタルクラウン122の内側に重ねて配置された内周側メタルクラウン124と、を備えている。外周側メタルクラウン122の先端と内周側メタルクラウン124の先端とには、超硬チップが埋め込まれている。
【0049】
外周側メタルクラウン122の肉厚は、内周側メタルクラウン124の肉厚よりも薄く構成されている。外周側メタルクラウン122の先端は、内周側メタルクラウン124の先端よりも先方に位置している。また、外周側メタルクラウン122の先端はソリッドビット110の先端よりも先方に位置している。内周側メタルクラウン124の先端はソリッドビット110の先端と同一位置に設定されている。
【0050】
外周側メタルクラウン122は内周側メタルクラウン124と溶接によって一体に接合されている。内周側メタルクラウン124はソリッドビット110と溶接によって一体に接合されている。
【0051】
図8を参照して、ソリッドビット110には給水孔112が設けられている。また、図6及び図7に示すように、外周側メタルクラウン122には、残銑の切り屑をメタルクラウン120の外側に排出するための複数のスリット123が、周方向に間隔を存して設けられている。
【0052】
図9を参照して、残銑穿孔用ビット1は、残銑に複数の単孔31aを一部重複させながら環状の連続孔31を形成するために使用するもので、単孔31aの位置がずれて不連続になっている範囲(不連続部分140)を改めて穿孔し直すことで連続させるものである。残銑穿孔用ビット1は、不連続部分140に合わせて外周側メタルクラウン122が位置するように設置されて、ガイド用の外周溝130を切削させる。外周側メタルクラウン122は内周側メタルクラウン124で補強されている。内周側メタルクラウン124は外周側メタルクラウン122で切削された外周溝130の幅を広げるように切削する。そして、中央に位置するソリッドビット110で不連続部分140を穿孔、除去する。
【0053】
本実施形態の残銑穿孔用ビット1によれば、ソリッドビット110よりも先方まで延びる外周側メタルクラウン122によって不連続部分140を囲むように切削してからメタルクラウン120に案内されるようにして不連続部分をソリッドビット110で切削することができる。
【0054】
また、ソリッドビット110よりも先端が先方に延びる外周側メタルクラウン122の肉厚が内周側メタルクラウン124の肉厚よりも薄いため、穿孔開始時の外周側メタルクラウン122の刃の食い付きをよくすることができ、目的とする位置から正確に穿孔を開始できる。さらに、外周側メタルクラウン122よりも肉厚の厚い内周側メタルクラウン122によってメタルクラウン120の全体的な肉厚を厚くすることができるので穿孔時の反力による変形が生じ難くなるとともに、穿孔中の残銑穿孔用ビット1の振動を抑制することができる。特に、内周側メタルクラウン122の先端とソリッドビット110の先端は同一位置にあるため、ソリッドビット110が残銑の穿孔を行う際に生じる残銑穿孔用ビット1の振動を効果的に抑制することができる。
【0055】
また、ソリッドビット110と内周側メタルクラウン124と外周側メタルクラウン122とが一体に接合されているため、ソリッドビット110を回転させる動力でメタルクラウン120も一体に回転させることができる。
【0056】
ソリッドビット110には給水孔112が設けられており、外周側メタルクラウン122には、残銑の切り屑をメタルクラウン120の外側に排出するための複数のスリット123が、周方向に間隔を存して設けられている。これにより、穿孔中に発生する切り屑を含む水をスリット123からメタルクラウン120の外に排出することができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した方法に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、穿孔装置20は、穿孔機25のみでもよい。また、中空ロッド27を経由して残銑穿孔用ビット1に水を供給するのではなく圧縮空気を供給してもよく、この場合、効果は同様である。
【符号の説明】
【0058】
1 残銑穿孔用ビット
10 混銑車
11 炉体
12 回転装置
13 台車
14 鉄皮
15 耐火物
16 開口
20 削孔装置
21 走行体
22 穿孔装置
23 旋回アーム
24 案内支柱
25 穿孔機
26 モータ
27 中空ロッド
31 連続孔
31a 単孔
32 拡大孔
40 ワイヤーソー
41 ワイヤ
42A、42B プーリ
43A、43B テンションローラ
44 ワイヤ運動機構
51 アンカー
110 ソリッドビット
112 給水孔
120 メタルクラウン
122 外周側メタルクラウン
123 スリット
124 内周側メタルクラウン
130 外周溝
140 不連続部分
A 銑鉄塊
A1 銑鉄塊の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9