(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142106
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】御札、お守り、絵馬、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 33/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A47G33/00 J
A47G33/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048804
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】519103953
【氏名又は名称】株式会社濱田カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】清水 淳史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正志
(72)【発明者】
【氏名】古川 力
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博
(57)【要約】
【課題】 木材と同等の外観や風合いを有する紙製の御札、お守り、絵馬を提供する。
【解決手段】複数の紙を積層して形成される板材を用いた紙製の御札であって、芯材である板紙層と、前記板紙層の両方の外側に貼り合わせられる白色紙層と、両側の前記白色紙層の外側に貼り合わせられる、透明性を有する化粧紙層と、を備え、前記白色紙層と前記化粧紙層とは、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって貼り合わせられ、前記化粧紙層の前記白色紙層側の面には、木目模様が印刷された印刷層が形成され、前記木目模様は化粧紙層を透過して視認されることを特徴とする御札。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙を積層して形成される板材を用いた紙製の御札であって、
芯材である板紙層と、前記板紙層の両方の外側に貼り合わせられる白色紙層と、両側の前記白色紙層の外側に貼り合わせられる、透明性を有する化粧紙層と、を備え、
前記白色紙層と前記化粧紙層とは、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって貼り合わせられ、
前記化粧紙層の前記白色紙層側の面には、木目模様が印刷された印刷層が形成され、前記木目模様は前記化粧紙層を透過して視認されることを特徴とする御札。
【請求項2】
前記化粧紙層は、パーチメント紙で構成され、前記パーチメント紙の前記印刷層が形成される面よりも光沢度の低い面が外側になるように貼り合わせられることを特徴とする請求項1に記載の御札。
【請求項3】
前記御札の端部には、前記印刷層に形成される前記木目模様の柄に対応した木目が印刷されることを特徴とする請求項1または2に記載の御札。
【請求項4】
前記印刷層に形成される前記木目模様は、前記御札の長手方向に沿って木目が延びる柾目であり、前記御札の長手方向の両端部に前記柾目に対応した年輪状の木目が印刷されることを特徴とする請求項3に記載の御札。
【請求項5】
複数の紙を積層して形成される板材を用いた紙製のお守りであって、
芯材である板紙層と、前記板紙層の両方の外側に貼り合わせられる白色紙層と、両側の前記白色紙層の外側に貼り合わせられる、透明性を有する化粧紙層と、を備え、
前記白色紙層と前記化粧紙層とは、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって貼り合わせられ、
前記化粧紙層の前記白色紙層側の面には、木目模様が印刷された印刷層が形成され、前記木目模様は前記化粧紙層を透過して視認されることを特徴とするお守り。
【請求項6】
複数の紙を積層して形成される板材を用いた紙製の絵馬であって、
芯材である板紙層と、前記板紙層の両方の外側に貼り合わせられる白色紙層と、両側の前記白色紙層の外側に貼り合わせられる、透明性を有する化粧紙層と、を備え、
前記白色紙層と前記化粧紙層とは、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって貼り合わせられ、
前記化粧紙層の前記白色紙層側の面には、木目模様が印刷された印刷層が形成され、前記木目模様は前記化粧紙層を透過して視認されることを特徴とする絵馬。
【請求項7】
一方の面に木目模様が印刷された透明性を有する化粧紙の、前記木目模様が印刷された面を、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって白色紙に貼り合わせて、貼り合わせ化粧紙を作製する工程と、
前記貼り合わせ化粧紙の前記化粧紙が外側になるように、板紙と前記貼り合わせ化粧紙とを貼り合わせて原紙を作製する工程と、
1組の前記原紙の板紙同士を貼り合わせて板材とする工程と、
前記板材を御札の形状にカットする工程と、
前記カットされた御札の端部に木目を印刷する工程と、を有することを特徴とする御札の製造方法。
【請求項8】
1組の前記原紙の間にさらに板紙を重ねて貼り合わせることにより、より厚みを有する前記板材を形成することを特徴とする請求項7に記載の御札の製造方法。
【請求項9】
一方の面に木目模様が印刷された透明性を有する化粧紙の、前記木目模様が印刷された面を、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって白色紙に貼り合わせて、貼り合わせ化粧紙を作製する工程と、
前記貼り合わせ化粧紙の前記化粧紙が外側になるように、板紙と前記貼り合わせ化粧紙とを貼り合わせて原紙を作製する工程と、
1組の前記原紙の板紙同士を貼り合わせて板材とする工程と、
前記板材をお守りの形状にカットする工程と、
前記カットされたお守りの端部に木目を印刷する工程と、を有することを特徴とするお守りの製造方法。
【請求項10】
一方の面に木目模様が印刷された透明性を有する化粧紙の、前記木目模様が印刷された面を、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって白色紙に貼り合わせて、貼り合わせ化粧紙を作製する工程と、
前記貼り合わせ化粧紙の前記化粧紙が外側になるように、板紙と前記貼り合わせ化粧紙とを貼り合わせて原紙を作製する工程と、
1組の前記原紙の板紙同士を貼り合わせて板材とする工程と、
前記板材を絵馬の形状にカットする工程と、
前記カットされた絵馬の端部に木目を印刷する工程と、を有することを特徴とする絵馬の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製の御札、お守り及び絵馬に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、神社や寺院で配布される、御札やお守りや絵馬などの材料として木材が使用されてきた。しかし、木材が高騰し入手が困難となっており代替材料が必要となっている。
【0003】
木材以外の材料で製造される御札等として、例えば特許文献1には板紙を複数枚重ね合わせた芯材に、文字や柄が印刷された紙を貼り合わせて形成される卒塔婆、絵馬、祈とう札が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の木製札の代替としての紙製札は、木製のものと外観や質感における違いが大きく、代替として十分ではなかった。
【0006】
本発明は、木材と同等の外観や質感、風合いを有する紙製の御札、お守り、絵馬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紙製の御札は、複数の紙を積層して形成される板材を用いた紙製の御札であって、芯材である板紙層と、前記板紙層の両方の外側に貼り合わせられる白色紙層と、両側の前記白色紙層の外側に貼り合わせられる、透明性を有する化粧紙層と、を備え、前記白色紙層と前記化粧紙層とは、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって貼り合わせられ、前記化粧紙層の前記白色紙層側の面には、木目模様が印刷された印刷層が形成され、前記木目模様は前記化粧紙層を透過して視認されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る紙製の御札の製造方法は、一方の面に木目模様が印刷された透明性を有する化粧紙の、前記木目模様が印刷された面を、ラミネート加工可能な透明性を有する樹脂によって白色紙に貼り合わせて、貼り合わせ化粧紙を作製する工程と、前記貼り合わせ化粧紙の前記化粧紙が外側になるように、板紙と前記貼り合わせ化粧紙とを貼り合わせて原紙を作製する工程と、1組の前記原紙の板紙同士を貼り合わせて板材とする工程と、前記板材を御札の形状にカットする工程と、前記カットされた御札の端部に木目を印刷する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、木材と同等の外観や質感、風合いを有する紙製の御札、お守り、絵馬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の御札1の外観図であり、(a)は御札1の下端部1b側からの斜視図であり、(b)は上端部1a側からの斜視図である。
図2は、御札1の断面を模式的に示した断面図である。
【0012】
本実施形態の御札1は、神社や寺院で配布されるものであり、神札、木札などとも呼ばれる。本実施形態の御札1は、木製の御札を模した、木目模様22、24を有する紙製の札であり、異なる種類の紙を複数枚積層して接着することで形成される。本実施形態の御札1は、上端部1aに角を有する五角形の剣先型の形状のものを例示するが、形状は特に限定されず長方形の御札であってもよい。
【0013】
本実施形態の御札1は、化粧紙層2と、ポリエチレン層4と、白色紙層6と、板紙層8とが貼り合わせられて形成される。そして、化粧紙層2とポリエチレン層4と白色紙層6とによって貼り合わせ化粧紙層10が構成される。よって、本実施形態の御札1は、板紙層8の外側の両面に同じ積層構造の貼り合わせ化粧紙層10が貼り合わせられた構造である。
【0014】
化粧紙層2は、御札1の表・裏両側の外面を構成する。化粧紙層2の御札1の外面となる面には、神社などの名称等の文字や印などが描かれる。化粧紙層2は、白色紙層6の外側に、ポリエチレン層4によって貼り合わせられる。そして化粧紙層2は、白色紙層6側の面に、印刷層20を有する。印刷層20は、木目模様22や木材の白木の色(以下、木目模様と木材の色を合わせて「木目模様等」ともいう。)がインク等で描かれている層である。
【0015】
化粧紙層2は、印刷層20の木目模様等を透過して見えるように、透明性を有する薄手の紙である。本実施形態において透明性を有するとは、透明または木目模様が透けて見える程度に半透明であればよい。化粧紙層2は、木目模様等が印刷される印刷対象面と、印刷対象面よりも光沢度の低い面である低光沢面と、を有する。さらに、化粧紙層2は、耐水性を有するとともに、インクでの印刷やペン等での筆記が可能な紙であることが好ましい。化粧紙層2を構成する化粧紙の種類は、上記の性質を有するものであれば特に限定されないが、パーチメント紙であることが好ましい。また、化粧紙としてグラシン紙を用いてもよい。
【0016】
印刷層20は、上述の通り化粧紙層2の白色紙層6に面する印刷対象面に形成され、低光沢面側から化粧紙層2を通して印刷された木目模様等が視認されることになる。これにより、光沢が抑えられた状態で木目模様が見えるので、木材の断面の質感に極めて近い外表面を形成することができる。
【0017】
印刷層20の木目模様22は、木目の種類や向きなど特に限定されないが、一般的な木製の御札と同様に、御札1の長手方向に沿って木目が延びる柾目とすればよい。御札1の長手方向に沿った木目が印刷されることで、柾目材から形成された御札と同等の外観とすることができる。また、木目模様や木の色は再現したい木材の種類に応じて印刷されればよい。たとえば御札によく用いられるマツ科のモミ、スプルース、シロマツの木目模様等を模して印刷することができる。木目模様には茶色のインク、白木の地の色にはより薄い茶色のインクを用いて印刷されればよいが、木材と近い色味となるようにそれぞれインクが選択されればよい。印刷層20の印刷方法は限定されないが、顔料インクを用いたグラビア印刷で行うことができる。
【0018】
白色紙層6は、貼り合わせられることで化粧紙層2(貼り合わせ化粧紙層10)の強度を高めるとともに、印刷層20の木目模様等を、インクの色になるべく忠実にきれいに発色させるための層である。化粧紙層2は、上述の通り透明又は半透明の薄い紙であるため、白色紙層6によって補強されることで、ボール紙との貼り合わせ工程で掛かるストレスに耐える強度が得られる。白色紙層6は、化粧紙層2に形成される印刷層20及び後述のポリエチレン層4よりも御札1において内側であって、板紙層8の外側に貼り合わせられる。白色紙層6は、比較的強度の高い白色紙であればよいが、晒クラフト紙を用いることが好ましく、晒クラフト紙の一種である片艶晒クラフト紙やアート紙でもよい。
【0019】
ラミネート加工可能な樹脂であるポリエチレン層4は、上記化粧紙層2と白色紙層6とを貼り合わせるための、透明性を有する樹脂の層である。ポリエチレン層4には、低密度ポリエチレンが溶融押出しされた溶融押出ポリエチレン(EXPE)を用いることができる。化粧紙層2と白色紙層6とを、押出ポリエチレンによってラミネート加工して接着することができる。ポリエチレン層4の厚みは特に限定されないが、5μm以上30μm以下とすることが好ましい。なお、本実施形態ではポリエチレンを用いたが、ラミネート加工が可能なポリプロピレン等の透明性を有する他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0020】
板紙層8は、御札1の芯材となる層である。板紙層8を構成する板紙は、1mm程度以上の厚みを有する板紙であれば特に限定されないが、たとえばチップボール紙80を用いることができる。本実施形態の板紙層8は、厚さ1mmのチップボール紙80を4枚重ねて形成される。所望の御札1の厚みに応じて、重ねるボール紙の枚数や使用するボール紙の厚みが設定される。十分な強度を確保するため、厚さ1mmのチップボール紙を用いる場合には、ボール紙を少なくとも4枚重ねることが好ましい。さらに厚い御札とする場合には、1mm厚のチップボール紙をさらに積層してもよいし、2mm程度のより厚いチップボール紙を積層してもよい。なお、後述の本実施形態の製造方法においては、貼り合わせ化粧紙と厚さ1mmのチップボール紙2枚を重ねて原紙を作製し、その原紙のチップボール紙同士を貼り合わせることで板紙層8を形成している。
【0021】
板紙層8と白色紙層6との接着および、板紙層8のチップボール紙80同士の接着は、紙を接着できる接着剤を用いればよいが、例えば酢酸ビニル系の接着剤を使用することができる。なお
図2においては、接着剤の層は図示していない。
【0022】
御札1の上端部1aの2箇所(2辺)、下端部1b、及び両サイドの側端部1cには、木材の場合にそれぞれの端部に現れるものと同様の木目模様や色が印刷される。すなわち、各端部は印刷層20に形成した木目に対応した模様・色に印刷される。具体的には、印刷層20の木目模様22を柾目とした場合には、上端部1a、下端部1bは木の板材であれば年輪が現れる断面となる。よって、上端部1a、下端部1bには、柾目材の場合と同様の年輪側の木目模様24が印刷されればよい。一方、両側の側端部1cは、木目模様22が柾目である場合は、木目がほとんど現れないので、木の色のみの印刷がされればよい。
【0023】
これらの端部にも、印刷層20の模様に合わせた木目模様24が印刷されることで、紙製であっても木材と同等の違和感のない外観や質感を有する御札を形成することができる。なお、上端部1a、下端部1b、側端部1cの模様は、例えば印刷層20に板目の模様を印刷する場合には、それぞれ板目に対応する模様が印刷されればよい。なお、
図1においては、印刷層20の木目模様24と各端部の木目模様とが柄合わせされているが、正確に木目が合っていなくてもよい。各面に、木材の断面に対応する木目が印刷されていれば、十分に木製の御札の外観に近いものとすることができる。
【0024】
以上の本実施形態の紙製の御札1は、木目模様22が印刷された化粧紙層2が両面に貼り合わせられており、さらに上端部1a、下端部1bおよび側端部1cにも年輪を模した木目模様24が形成されているので、木製の御札と同等の外観を有する。さらに印刷層20が内側に形成されており、木目模様22や木の色が、化粧紙層2を通して視認されることで、木材の場合と極めて近い外観や質感、風合いとなる。
【0025】
また、化粧紙層2や強度のある白色紙層6が芯材となる板紙層8の両側に、同じ積層構造で貼り合わせられているため、両面から均等に張力がかかり、御札1は湿度変化による反りが起きにくいという優れた特徴を有する。特に、御札(及び後述のお守りや絵馬など)は、数か月~年単位の期間にわたって使用されるものであり、湿度による反りなどに対する長期間の耐久性が必要とされる。本実施形態の場合、板紙層8の両側に、化粧紙層2と、ポリエチレン層4と、強度のある白色紙層6を積層させた貼り合わせ化粧紙層10が貼り合わせられた構造であることにより、上記のような長期間の使用でも反りが起こりにくい。また、本実施形態の御札1は、反りが起こりにくいことにより、長期間使用しても各層間の剥離が起こりにくいという優れた性質も有する。よって、本実施形態によれば、湿度の変化に対する優れた耐久性を有する御札1を形成することができる。また、反りなどが生じにくいことによって、御札1の表面に神社名などを印刷する際の位置決めが行い易く、印刷不良が出にくいという利点も得られる。
【0026】
また、同じ板厚で同じ大きさ・形状の木板に対して、本実施形態の紙製の御札1の場合には重量が200%前後となり、十分な強度と重厚感を有するものとすることができる。
【0027】
また、木板の場合は木材に含まれる油分や水分の影響で、木板表面に描かれた文字等のインクがにじむことがある。また、高温下で保管されると木に含まれる油分等の成分が印刷インクと混ざり合って軟化し、重ねた木札の裏面あるいは木札に巻かれた和紙にインク移り起こる。しかし、本実施形態の紙製の御札1の場合には油分や水分が少なく、文字等がにじんだり、色移りしたりすることはほとんどない。よって、色移りが起こることなく御札同士を重ねて保管することができ、管理が容易である。また、板紙層8としてチップボール紙を用いた場合には、御札1の大部分が古紙を原料とした紙で構成されるので、省資源であり環境に優しい。
【0028】
次に、本実施形態の御札1の製造方法を説明する。本実施形態の製造方法の概要は、(1)化粧紙に木目模様および木の色を印刷し、(2)化粧紙と白色紙とを貼り合わせて貼り合わせ化粧紙を作製し、(3)2枚のチップボール紙と(2)で作製した貼り合わせ化粧紙とを接着剤で貼り合わせて原紙を作成する。(4)(3)で作製された原紙同士を接着剤で接着して、御札用の板材を作製する。(5)(4)で作製した板材を御札1の形状にカットし、(6)カットされた端部に木目を印刷する。以上が、御札1の製造方法の概要である。
【0029】
各工程を具体的に説明する。まず工程(1)では、化粧紙層2を構成する化粧紙の印刷対象面に木目模様および木目より薄い色の白木の地色を印刷し、印刷層20を形成する。印刷層20の印刷方法は特に限定されないが、グラビア印刷法を用いることができる。
【0030】
次に工程(2)では、木目模様等が印刷された化粧紙と、白色紙層6を構成する晒クラフト紙等の白色紙とを、押出ポリエチレンを用いたラミネート加工により貼り合わせて、貼り合わせ化粧紙を作製する。印刷層20が形成された面を白色紙に向けて、印刷層20が貼り合わせ化粧紙において内側となるように貼り合わせる。貼り合わせには、一般的な押出ラミネート装置を用いることができる。すなわちロール状の化粧紙とロール状の白色紙を巻き出し、間に溶融したポリエチレンをフィルム状に押し出し、冷却ローラ等で固化させて貼り合わせることができる。この貼り合わせ化粧紙は、最終的に御札1において貼り合わせ化粧紙層10を構成する。貼り合わせ化粧紙は、再びロール状に巻き取って次の工程に利用される。
【0031】
次に、工程(3)では、チップボール紙2枚と、(2)で作製した貼り合わせ化粧紙とを貼り合わせる。貼り合わせ化粧紙は御札1の外面となるので、貼り合わせ化粧紙が外側に来るように、チップボール紙2枚と貼り合わせる。つまり、貼り合わせ化粧紙の白色紙層6側の面とチップボール紙とを貼り合わせる。チップボール紙同士および、チップボール紙と貼り合わせ化粧紙との接着は、紙を接着できる接着剤であればよいが、上述の通り酢酸ビニル系の接着剤を用いればよい。この貼り合わせ工程で作製された紙が、御札1を製造する際の基本単位の原紙となる。なお、本工程もロール状の貼り合わせ化粧紙と、2つのロール状のチップボール紙からそれぞれ紙を巻き出し、それぞれの接着面に接着剤を塗布した後、圧着して貼り合わせればよい。
【0032】
次に工程(4)では、(3)で作製した原紙2枚を1組として、原紙のチップボール紙の面同士を接着する。接着剤については工程(3)と同様のものでよい。工程(4)によって、御札1をカットする前の紙製の板材が作製される。
【0033】
次に工程(5)では、(4)で作製した板材を御札1の形状にカットする。カットは、鋸刃による切断でもよいし、金型等による打ち抜きでもよい。(4)で作製された板材から御札1が取れる分だけカットを行う。
【0034】
次に工程(6)では、板材から切り抜かれた御札1の上端部1a、下端部1b、両側の側端部1cに木目模様等の印刷を行う。印刷方法は、御札1の各端部に印刷できれば特に限定されないが、パッド印刷方法を用いることができる。各端部の木目模様や色は、印刷層20に形成した木目模様に合わせて印刷される。上端部1aの2箇所(2辺)と下端部1cについては、まず白木の地色に対応する薄い茶色で端部全体に印刷する。そして、その上に地色より濃い茶色で木目模様を印刷する。木目模様の無い両側の側端部1cには、薄い茶色の印刷のみを行う。
【0035】
以上が本実施形態の御札1の製造方法の流れである。なお、工程(6)の後に製造された御札1の表や裏に、必要に応じて文字や印が記載、印字される。以上の本実施形態の製造方法によれば、木材の御札と同等の外観や質感を有する御札1を効率よく製造することができる。
【0036】
なお、御札1の厚さをより厚くする場合には、工程(4)で原紙同士を貼り合わせる際に、1組の原紙の間に、必要な厚み分のチップボール紙をさらに挟んで、貼り合わせればよい。例えば、厚さ2mmのチップボール紙(または1mmのチップボール紙2枚)をさらに間に貼り合わせれば、1mm×4枚+2mm×1枚(または1mm×2枚)で計6mmの厚みの板紙層8が形成される。組み合わせる板紙の厚みや枚数で、所望の厚みの御札を製造することができる。
【0037】
(他の実施形態)
本実施形態では、紙製板材から形成された御札1を説明したが、神社等で配布される御札以外の札状、板状のものにも適用することができる。
図3は、御札1に用いた紙製の板材を用いた他の実施形態であるお守り100の外観図である。
図3には、お守り100として、小型の長方形の板状のものを示している。断面構造は、
図2と同様である。御札1と同様にお守り100の表・裏の面や、上端部、下端部などに木目模様22、24があらわれるため、木材のお守りの場合と同等の外観や質感を有する。なお、
図3には示していないが、お守り100の表や裏の外面には必要に応じて文字や図柄が印刷される。
【0038】
図4は、同じく他の実施形態である絵馬102の外観図である。御札1に用いた紙製の板材を用いて形成することで、木製の絵馬と同等の外観や質感を有するものとすることができる。なお絵馬の場合には通常は木目が横方向に延びた板材が使用されるので、本実施形態の絵馬102についても木目模様22は横方向に延びるように印刷されている。この場合、両サイドの側端部に年輪に対応した木目模様26が印刷されればよい。また、さらに、上端部の2辺についても対応する年輪の木目を印刷してもよい。なお、お守り100や絵馬102については、必要に応じて吊るす紐を通す穴を形成してもよい。また、
図4には示していないが、絵馬102の表・裏の面には必要に応じて絵柄や文字などが描かれたり印刷されたりする。
【0039】
さらに、これら以外にも、通常は木材で作製される護摩札や護摩木、卒塔婆など、他の札状の神仏用具・飾りものを本実施形態の紙製の板材を用いて形成しても良い。
【実施例0040】
以下、実施例を示して本発明についてさらに説明する。実施例として、上記実施形態の御札1を複数枚作製し、御札1の表面に神社名などの印刷を行い、和紙・水引加工したものを、インキュベーターで40℃湿度90%の環境下で1ケ月間保管する加速試験を行った。この加速試験条件の場合、常温の6か月間の保管に相当する。試験を行った御札1は、
図1に示す板紙層8(1mm×4枚)の間にさらに1mm×2枚のチップボール紙を重ねて計6mmの厚みの板紙層8とした御札を用いた。
【0041】
加速試験後の複数枚の御札について、(1)御札の反りの有無、(2)御札の層間剥離の有無、(3)印字の滲みの有無について目視で確認した。また、御札を複数枚重ねて同様の条件で加速試験を行い、(4)重ねた上の板へのインクの色移りの有無についても目視で確認した。
【0042】
加速試験後の御札の写真を
図5に示す(
図5において神社名の印字部分は固有名称のため隠している)。
図5の写真にも示す通り加速試験後のいずれも御札にも、御札を構成する紙板の反りや層間剥離は生じなかった。また、
図5に示すように、印字の滲みも生じなかった。また、複数重ねた場合のインクの色移りも生じなかった。よって、本発明によれば、高温多湿の場所に保管しても、反りや剥離、色移りなどが起こりにくい、耐久性の高い御札が得られることが確認できた。