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特開2023-142140トルクセンサ及びトルクセンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142140
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】トルクセンサ及びトルクセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01L3/10 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048857
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 優介
(72)【発明者】
【氏名】茂山 智史
(72)【発明者】
【氏名】重田 泰志
(57)【要約】
【課題】トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させること。
【解決手段】磁界を発生する検出コイル40と、検出コイル40を保持するヨーク42と、検出コイル40の内側の位置で入力軸82aを覆って配置され、且つ、トーションバー82cを介して入力軸82aに連結される出力軸82bに取り付けられるセンサスリーブ32と、を備え、入力軸82aにおけるセンサスリーブ32の内側に位置する部分には、径方向における外側に突出する複数の凸部31aが入力軸82aの周方向に並んで配置され、センサスリーブ32は、センサスリーブ32の周方向に並ぶ複数の窓孔33を有し、ヨーク42は、軸心方向における側方から検出コイル40を覆う底部42fと、径方向における外側から検出コイル40を覆う壁部42cとを有し、底部42fと壁部42cとの境界には、ヨーク42の厚み方向が深さ方向となる溝部42gが配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生する円環状の検出コイルと、
前記検出コイルを覆って前記検出コイルを保持すると共に前記検出コイルで発生した前記磁界の磁束を通すヨークと、
前記検出コイルの内側の位置で入力軸を覆って配置され、且つ、トーションバーを介して前記入力軸に連結される出力軸に取り付けられる円筒状のセンサスリーブと、
を備え、
前記入力軸における前記センサスリーブの内側に位置する部分には、前記入力軸の径方向における外側に突出する複数の凸部が前記入力軸の周方向に並んで配置され、
前記センサスリーブは、前記センサスリーブの周方向に並んで前記センサスリーブの厚み方向に貫通する複数の窓孔を有し、
前記ヨークは、前記検出コイルの軸心方向における側方から前記検出コイルを覆う底部と、前記検出コイルの径方向における外側から前記検出コイルを覆う壁部とを有し、
前記底部と前記壁部との境界には、前記ヨークの厚み方向が深さ方向となる溝部が配置されるトルクセンサ。
【請求項2】
前記検出コイルは、第1検出コイルと第2検出コイルとを有し、
前記ヨークは、前記第1検出コイルを保持する第1ヨークと、前記第2検出コイルを保持する第2ヨークとを有する請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記壁部は、前記底部からの高さが前記ヨークの周方向において周期的に変化する請求項1または2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記溝部は、前記ヨークの周方向における全周に亘って連続的に配置される請求項1から3のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記溝部は、前記ヨークの周方向における全周に亘って断続的に配置される請求項1から3のいずれか1項に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記溝部は、前記ヨークの周方向において前記底部からの前記壁部の高さが低い位置に配置される請求項3に記載のトルクセンサ。
【請求項7】
前記溝部は、前記ヨークの周方向において前記底部からの前記壁部の高さが低い位置での深さが、前記底部からの前記壁部の高さが高い位置での深さよりも深い請求項3に記載のトルクセンサ。
【請求項8】
磁界を発生する円環状の検出コイルと、
前記検出コイルを覆って前記検出コイルを保持すると共に前記検出コイルで発生した前記磁界の磁束を通すヨークと、
前記検出コイルの内側の位置で入力軸を覆って配置され、且つ、トーションバーを介して前記入力軸に連結される出力軸に取り付けられる円筒状のセンサスリーブと、
を備え、
前記入力軸における前記センサスリーブの内側に位置する部分には、前記入力軸の径方向における外側に突出する複数の凸部が前記入力軸の周方向に並んで配置され、
前記センサスリーブは、前記センサスリーブの周方向に並んで前記センサスリーブの厚み方向に貫通する複数の窓孔を有し、
前記ヨークは、前記検出コイルの軸心方向における側方から前記検出コイルを覆う底部と、前記検出コイルの径方向における外側から前記検出コイルを覆う壁部とを有するトルクセンサの製造方法であって、
前記ヨークは、平板に前記平板の厚み方向が深さ方向となる溝部を形成し、前記溝部の位置で前記平板を折り曲げることにより、前記底部と前記壁部とを形成するトルクセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トルクセンサ及びトルクセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体に加わるトルクを検出するトルクセンサは、操舵装置が有する回転体に取り付けられ、回転体に対して回転トルクが作用した際における回転体の回転方向の角度の変位を検出することにより、トルクを検出することが可能になっている。例えば、特許文献1に記載されたトルク検出装置では、トーションバーを介して入力軸と出力軸とが連結されており、入力軸には、軸方向に延びた複数の凸条が形成され、出力軸には、複数個の窓が形成されると共に内側に入力軸が入り込む円筒部材が固定されている。また、円筒部材の周囲には、ヨークによって保持される検出コイルが配置されており、検出コイルの出力電圧を検出することにより、入力軸と出力軸との回転方向における相対的な角度の変位を検出し、入力軸に伝達されたトルクの検出が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-122869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたトルクセンサは、回転トルクが入力されてトーションバーが捩じれることにより入力軸と出力軸との間で相対的な角度が変化した際に、検出コイルで発生する磁界が変化することによって変化するインピーダンスの変化量を電気信号として読み取り、入力軸と出力軸との間で作用するトルクを検出している。トルクセンサは、このように入力軸に入力されるトルクの大きさを電気信号として読み取るため、トルクの検出を行うにあたっては、出力する電気信号の精度が重要になる。
【0005】
従ってトルクセンサは、出力する電気信号の精度が許容範囲内に収まらない場合には、当該トルクセンサは製品として用いることができなくなるため、出力する電気信号の精度は、トルクセンサの製造時における歩留まりにも影響する。このようにトルクセンサは、出力する電気信号の精度も歩留まりに対して影響があり、電気信号の精度が悪くなると歩留まりも悪化するため、トルクセンサは、製造時における歩留まりの観点で改良の余地があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることのできるトルクセンサ及びトルクセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のトルクセンサは、磁界を発生する円環状の検出コイルと、前記検出コイルを覆って前記検出コイルを保持すると共に前記検出コイルで発生した前記磁界の磁束を通すヨークと、前記検出コイルの内側の位置で入力軸を覆って配置され、且つ、トーションバーを介して前記入力軸に連結される出力軸に取り付けられる円筒状のセンサスリーブと、を備え、前記入力軸における前記センサスリーブの内側に位置する部分には、前記入力軸の径方向における外側に突出する複数の凸部が前記入力軸の周方向に並んで配置され、前記センサスリーブは、前記センサスリーブの周方向に並んで前記センサスリーブの厚み方向に貫通する複数の窓孔を有し、前記ヨークは、前記検出コイルの軸心方向における側方から前記検出コイルを覆う底部と、前記検出コイルの径方向における外側から前記検出コイルを覆う壁部とを有し、前記底部と前記壁部との境界には、前記ヨークの厚み方向が深さ方向となる溝部が配置される。
【0008】
この構成によれば、ヨークの底部と壁部との境界に溝部を配置することにより、ヨークの真円度を高めることができるため、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができる。これにより、操舵トルクを安定して検出することのできるトルクセンサを製造することができ、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0009】
望ましい形態として、前記検出コイルは、第1検出コイルと第2検出コイルとを有し、前記ヨークは、前記第1検出コイルを保持する第1ヨークと、前記第2検出コイルを保持する第2ヨークとを有する。
【0010】
この構成によれば、第1検出コイルを保持する第1ヨークと、第2検出コイルを保持する第2ヨークとのいずれも、底部と壁部との境界に溝部が配置されるため、第1ヨークと第2ヨークとのそれぞれで、外径の真円度を高めることができる。従って、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができ、操舵トルクを安定して検出することのできるトルクセンサを製造することができるため、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0011】
望ましい形態として、前記壁部は、前記底部からの高さが前記ヨークの周方向において周期的に変化する。
【0012】
この構成によれば、壁部の高さが周期的に変化するヨークであっても、底部と壁部との境界に溝部を配置することにより、ヨークの真円度を高めることができる。これにより、ヨークが有する壁部の高さが周期的に変化する場合であっても、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができ、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0013】
望ましい形態として、前記溝部は、前記ヨークの周方向における全周に亘って連続的に配置される。
【0014】
この構成によれば、ヨークの溝部が周方向における全周に亘って連続的に配置されるため、壁部の高さの変化の仕方に関わらずヨークの真円度を高めることができる。これにより、ヨークが有する壁部の高さの変化の仕方に関わらず、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができ、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0015】
望ましい形態として、前記溝部は、前記ヨークの周方向における全周に亘って断続的に配置される。
【0016】
この構成によれば、ヨークの溝部が周方向における全周に亘って断続的に配置されるため、検出コイルで発生した磁界の磁束がヨークを通る量を確保しつつ、ヨークの真円度を高めることができる。従って、トルクセンサによる操舵トルクの検出精度を確保しつつ、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0017】
望ましい形態として、前記溝部は、前記ヨークの周方向において前記底部からの前記壁部の高さが低い位置に配置される。
【0018】
この構成によれば、壁部の高さが低い位置に溝部を配置することにより、ブランク材を曲げて壁部を形成する際に、壁部において高さが低いことにより曲げづらい部分を曲げ易くすることができ、壁部をバランス良く効果的に曲げ易くすることができる。これにより、ヨークの真円度を高めることができるため、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができ、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0019】
望ましい形態として、前記溝部は、前記ヨークの周方向において前記底部からの前記壁部の高さが低い位置での深さが、前記底部からの前記壁部の高さが高い位置での深さよりも深い。
【0020】
この構成によれば、溝部は、壁部の高さが低い位置での深さが、壁部の高さが高い位置での深さよりも深いため、壁部の高さが高い部分と低い部分とのいずれの位置でも、壁部をバランス良く効果的に曲げ易くすることができる。これにより、ヨークの真円度を高めることができるため、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができ、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0021】
本開示のトルクセンサの製造方法は、磁界を発生する円環状の検出コイルと、前記検出コイルを覆って前記検出コイルを保持すると共に前記検出コイルで発生した前記磁界の磁束を通すヨークと、前記検出コイルの内側の位置で入力軸を覆って配置され、且つ、トーションバーを介して前記入力軸に連結される出力軸に取り付けられる円筒状のセンサスリーブと、を備え、前記入力軸における前記センサスリーブの内側に位置する部分には、前記入力軸の径方向における外側に突出する複数の凸部が前記入力軸の周方向に並んで配置され、前記センサスリーブは、前記センサスリーブの周方向に並んで前記センサスリーブの厚み方向に貫通する複数の窓孔を有し、前記ヨークは、前記検出コイルの軸心方向における側方から前記検出コイルを覆う底部と、前記検出コイルの径方向における外側から前記検出コイルを覆う壁部とを有するトルクセンサの製造方法であって、前記ヨークは、平板に前記平板の厚み方向が深さ方向となる溝部を形成し、前記溝部の位置で前記平板を折り曲げることにより、前記底部と前記壁部とを形成する。
【0022】
この構成によれば、ヨークは平板に溝部を形成し、溝部の位置で平板を折り曲げることによって底部と壁部とを形成するため、ヨークの真円度を高めることができる。これにより、トルクセンサからの出力の不必要な変動を抑えることができ、操舵トルクを安定して検出することのできるトルクセンサを製造することができる。この結果、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示に係るトルクセンサ及びトルクセンサの製造方法は、トルクセンサの製造時における歩留まりを向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係るステアリング装置の模式図である。
図2図2は、図1に示すトルクセンサ周りの要部断面図である。
図3図3は、図2に示すトルク検出部の構成部材を示す斜視図である。
図4図4は、トルク検出部の構成部材を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示すヨークの斜視図である。
図6図6は、図5のA-A断面図である。
図7図7は、ヨークの製造に用いるブランク材の平面図である。
図8図8は、図7のB-B断面図である。
図9図9は、センサスリーブに対してセンサシャフト部が相対回転をした状態を示す概念説明図である。
図10図10は、センサスリーブに対してセンサシャフト部が相対回転をした状態を示す概念説明図である。
図11図11は、比較例に係るトルクセンサが有するヨークの真円度を示す概念説明図である。
図12図12は、比較例に係るトルクセンサのセンサシャフト部とセンサスリーブとを無負荷の状態で等速回転させた場合における、トルクセンサから出力される電気信号の電圧を示す概念図である。
図13図13は、実施形態に係るトルクセンサが有するヨークの真円度を示す概念説明図である。
図14図14は、実施形態に係るトルクセンサのセンサシャフト部とセンサスリーブとを無負荷の状態で等速回転させた場合における、トルクセンサから出力される電気信号の電圧を示す概念図である。
図15図15は、実施形態に係るトルクセンサの変形例であり、溝部が断続的に配置される場合におけるヨークのブランク材の平面図である。
図16図16は、実施形態に係るトルクセンサの変形例であり、壁部の高さが低い位置に溝部が配置される場合におけるヨークのブランク材の平面図である。
図17図17は、実施形態に係るトルクセンサの変形例であり、溝部の深さが周方向における位置によって変化する場合におけるヨークのブランク材の平面図である。
図18図18は、図17のC-C断面図である。
図19図19は、図17のE-E断面図である。
図20図20は、実施形態に係るトルクセンサの変形例であり、溝部の断面形状が二等辺三角形の形状で形成される場合における溝部の断面図である。
図21図21は、実施形態に係るトルクセンサの変形例であり、溝部の断面形状が直角三角形の形状で形成される場合における溝部の断面図である。
図22図22は、実施形態に係るトルクセンサの変形例であり、溝部の断面形状が四角形の形状で形成される場合における溝部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るステアリング装置80の模式図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、中間シャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を含みスタブシャフト87に接合されている。実施形態に係るステアリング装置80では、操舵力アシスト機構83は、ステアリングホイール81寄りの位置に設けられており、外部と隔てられた車室内に配置されている。
【0027】
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bと、トーションバー82c(図2参照)と、を含む。トーションバー82cは、入力軸82aと出力軸82bとの双方に連結されており、入力軸82aと出力軸82bとは、トーションバー82cを介して連結されている。入力軸82aは、一端がステアリングホイール81に連結されており、他端側からトーションバー82cが延びている。出力軸82bは、一端側からトーションバー82cが延びており、他端がユニバーサルジョイント84に連結されている。入力軸82aと出力軸82bとの間では、双方に連結されるトーションバー82cを介して回転トルクが伝達される。
【0028】
図1に示すように、中間シャフト85は、ユニバーサルジョイント84とユニバーサルジョイント86とを連結している。中間シャフト85の一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。スタブシャフト87の一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、スタブシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。ユニバーサルジョイント84及びユニバーサルジョイント86は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転が中間シャフト85を介してスタブシャフト87に伝わる。すなわち、中間シャフト85はステアリングシャフト82に伴って回転する。
【0029】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオンギヤ88aと、ラック88bとを含む。ピニオンギヤ88aは、スタブシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオンギヤ88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオンギヤ88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0030】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置91と、電動モータ94とを含む。減速装置91は、例えばウォーム減速装置である。減速装置91は、電動モータ94で生じたトルクを増加して出力軸82bに伝える。これにより、減速装置91は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。ステアリング装置80はコラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置である。なお、コラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置とは、ステアリングホイール81に接続されたステアリングシャフト82に、電動モータ94で発生させたアシストトルクを付与する態様のパワーステアリング装置を指す。
【0031】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ10と、車速センサ95と、を含む。電動モータ94、トルクセンサ10及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ10は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをアナログ信号によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に設けられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0032】
ECU90は、電動モータ94の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ10及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ94へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ94の誘起電圧の情報又は電動モータ94に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ94を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0033】
図2は、図1に示すトルクセンサ10周りの要部断面図である。トルクセンサ10は、トルクセンサ10を覆うハウジング20内に配置されている。ハウジング20は、トーションバー82cを介して連結される入力軸82aと出力軸82bとの連結部分を覆い、入力軸82aと出力軸82bとを支持している。ハウジング20は、ハウジング20で支持する入力軸82aや出力軸82bの軸心方向に2分割されており、入力軸82a側に位置する部分である入力軸側ハウジング部20aと、出力軸82b側に位置する部分である出力軸側ハウジング部20bとを有している。ハウジング20は、分割された入力軸側ハウジング部20aと出力軸側ハウジング部20bとが組み合わされることにより形成されている。
【0034】
ハウジング20が有する入力軸側ハウジング部20aの内部には軸受21aが配置されており、入力軸82aは、軸受21aによって回転自在に支持されている。入力軸側ハウジング部20aにより支持される入力軸82aは、入力軸側ハウジング部20aにおける出力軸側ハウジング部20bが位置する側の反対側に向かって入力軸側ハウジング部20aから突出する状態で支持されている。また、出力軸側ハウジング部20bの内部には軸受21bが配置されており、出力軸82bは、軸受21bによって回転自在に支持されている。出力軸側ハウジング部20bにより支持される出力軸82bは、出力軸側ハウジング部20bにおける入力軸側ハウジング部20aが位置する側の反対側に向かって出力軸側ハウジング部20bから突出する状態で支持されている。
【0035】
入力軸側ハウジング部20aと出力軸側ハウジング部20bとにより支持される入力軸82a及び出力軸82bは、入力軸82aの内部に配設されたトーションバー82cを介して連結されている。入力軸82a、トーションバー82c及び出力軸82bは、同軸に配置されており、入力軸82aとトーションバー82cとは、入力軸82aの内部に形成された孔にトーションバー82cが入り込み、ピン結合によって連結されている。また、トーションバー82cと出力軸82bとは、出力軸82bの内部に形成された孔にトーションバー82cが入り込み、セレーション圧入によって連結されている。ステアリングホイール81(図1参照)は、入力軸82aにおける出力軸82bが位置する側の反対側の端部、即ち、入力軸82aにおける入力軸側ハウジング部20aから露出している側の端部に取り付けられている。
【0036】
減速装置91は、電動モータ94(図1参照)で発生した駆動力を、ハウジング20内で出力軸82bに対して伝達することが可能になっている。詳しくは、減速装置91は、互いに噛み合うウォーム93とウォームホイール92とを有しており、ウォーム93は、電動モータ94の出力軸に取り付けられている。また、ウォームホイール92は、出力軸82bに対して同軸で出力軸82bと一体で回転可能に取り付けられており、出力軸側ハウジング部20b内でウォーム93と噛合している。ウォームホイール92は、金属製のハブ92aに合成樹脂製の歯部92bが一体的に固定されている。電動モータ94の駆動力は、出力軸側ハウジング部20b内で噛合するウォーム93及びウォームホイール92を介して出力軸82bに伝達され、電動モータ94の回転方向を適宜切り換えることにより、出力軸82bに対して任意の回転方向で操舵補助トルクが付与される。
【0037】
次に、入力軸82a及び出力軸82b間のトルクを検出するトルクセンサ10構成するトルク検出部30の構成について説明する。トルク検出部30は、入力軸82aに設けられたセンサシャフト部31と、入力軸側ハウジング部20aの内側に配置された検出コイル40と、センサシャフト部31と検出コイル40との間に配置されたセンサスリーブ32とを備える。センサシャフト部31は、入力軸82aにおけるセンサスリーブ32の内側に位置する部分になっており、換言すると、入力軸82aにおけるセンサスリーブ32の内側に位置する部分が、トルク検出部30が有するセンサシャフト部31を構成している。
【0038】
図3は、図2に示すトルク検出部30の構成部材を示す斜視図である。センサシャフト部31は磁性材料で構成されており、センサシャフト部31の表面には、図3に示すように、センサシャフト部31の径方向における外側に突出する複数の凸部31aが、センサシャフト部31の周方向に並んで配置されている。複数の凸部31aは、センサシャフト部31の軸心方向に延びて形成されており、周方向に沿って等間隔に配置されている。また、周方向に並ぶ凸部31a同士の間の部分は、溝部31bになっている。つまり、センサシャフト部31の表面には、センサシャフト部31の軸心方向に延びる複数の凸部31aがセンサシャフト部31の周方向に沿って等間隔で配置されることにより、センサシャフト部31の軸心方向に延びる複数の溝部31bが、センサシャフト部31の周方向に沿って等間隔で形成されている。本実施形態では、センサシャフト部31には、8個の凸部31aが配置されており、これに伴い溝部31bも8本が配置されている。なお、図3では、トルク検出部30の動作について後述するために、センサシャフト部31が有する複数の凸部31aのうち、1つの凸部31a(凸部31aa)にハッチングを施している。
【0039】
センサスリーブ32は、円筒状の形状で形成されており、検出コイル40の内側の位置で入力軸82aのセンサシャフト部31を覆って配置されている。センサスリーブ32は、導電性で且つ非磁性の材料、例えばアルミニウムより構成されており、センサシャフト部31に接近してセンサシャフト部31と同軸に配置されている。センサシャフト部31を覆って配置されるセンサスリーブ32は、図2に示すように、円筒状の形状で形成されるセンサスリーブ32の軸心方向における出力軸82b側の部分は出力軸82bが位置する側まで延びて、出力軸82bに連結される連結部32aとして設けられている。センサスリーブ32の連結部32aは、出力軸82bにおける入力軸82a側の端部付近を出力軸82bの径方向における外側から覆って出力軸82bに連結されている。これにより、センサスリーブ32は、出力軸82bと一体となって回転可能に出力軸82bに取り付けられている。
【0040】
検出コイル40は、円環状のコイルボビン41に巻かれることにより、円環状の形態で形成されている。コイルボビン41は、内径がセンサスリーブ32の外径に近く、且つ、センサスリーブ32の外径よりも大きい円環状の形状で形成されている。検出コイル40は、同一規格の第1検出コイル40aと第2検出コイル40bとの一対が設けられており、それぞれが個別にコイルボビン41に巻かれている。即ち、第1検出コイル40aは第1コイルボビン41aに巻き回され、第2検出コイル40bは第2コイルボビン41bに巻き回されている。これにより、一対の第1検出コイル40aと第2検出コイル40bとは、いずれも円環状の形態で形成されている。
【0041】
第1コイルボビン41aと第2コイルボビン41bとに巻き回される第1検出コイル40aと第2検出コイル40bは、センサスリーブ32の軸心方向に離隔して軸心方向に並んでセンサスリーブ32の径方向における外側に、センサスリーブ32と同軸に配置されている。
【0042】
コイルボビン41に巻き回された検出コイル40は、検出コイル40を覆うヨーク42によって保持されている。ヨーク42は、磁性材料で構成されており、第1検出コイル40aに対応する第1ヨーク42aと、第2検出コイル40bに対応する第2ヨーク42bとを有している。第1ヨーク42aは、第1コイルボビン41aに巻き回された第1検出コイル40aを覆って第1コイルボビン41aと共に第1検出コイル40aを保持している。第2ヨーク42bは、第2コイルボビン41bに巻き回された第2検出コイル40bを覆って第2コイルボビン41bと共に第2検出コイル40bを保持している。
【0043】
第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとは、図2に示すように、入力軸側ハウジング部20aの内側に配置され、入力軸側ハウジング部20aに固定されている。第1検出コイル40a及び第2検出コイル40bの出力線は、入力軸側ハウジング部20aの内部に配置された回路基板46の基板側コネクタ47に、コイル側コネクタ45を介して接続されている。また、別の方法として、図示しないが、コイルボビン41に圧入されたコイル側端子にコイル先端部分を絡げて半田固定した状態で、基板スルーホールに挿入し、半田付けで接続されていてもよい。ここで、基板側コネクタ47をはじめとして、回路基板46の電気回路を担う電子部品は、リフロー半田付けによる表面実装、若しくはリード半田付け等によって実装されている。
【0044】
第1コイルボビン41aと第2コイルボビン41bとの間には、カバーヨーク43が配置されている。カバーヨーク43は、磁性材料で構成されている。これにより、第1コイルボビン41aに巻かれる第1検出コイル40aと、第2コイルボビン41bに巻かれる第2検出コイル40bとは、それぞれ軸心方向における両側と径方向における外側が、磁性材料からなる第1ヨーク42a及び第2ヨーク42bとカバーヨーク43とにより囲まれている。さらに、第1検出コイル40aと第2検出コイル40bとの径方向における内側には、非磁性の材料からなるセンサスリーブ32を挟んで、磁性材料からなるセンサシャフト部31が配置されている。
【0045】
検出コイル40の内側の配置されるセンサスリーブ32は、センサスリーブ32の周方向に並んでセンサスリーブ32を形成する板の厚み方向に貫通する複数の窓孔33を有しており、複数の窓孔33は、センサスリーブ32の周方向に並んで配置されている。各窓孔33は、長方形の孔の形状で形成されている。窓孔33は、センサスリーブ32の径方向において、第1検出コイル40aの内側に配置される第1窓孔33aと、第1窓孔33aと同じ形状で第2検出コイル40bの内側に配置される第2窓孔33bとを有している。即ち、窓孔33は、センサスリーブ32の軸心方向において互いに異なる位置に配置される第1窓孔33aと第2窓孔33bとを有している。
【0046】
第1窓孔33aと第2窓孔33bとは、センサシャフト部31に配置される凸部31aの数と同じ数の第1窓孔33aと、凸部31aの数と同じ数の第2窓孔33bとが、それぞれセンサスリーブ32の周方向に等間隔で配置されている。また、第1窓孔33aと第2窓孔33bとは、センサスリーブ32の周方向における位置が互いに異なる位置に配置されている。つまり、第1窓孔33aと第2窓孔33bとは、センサスリーブ32の周方向における位相が互いに異なる位置に、それぞれ複数配置されている。窓孔33は、これらのようにセンサスリーブ32に配置されることにより、第1窓孔33aは第1検出コイル40aに包囲され、第2窓孔33bは第2検出コイル40bに包囲される。
【0047】
図4は、トルク検出部30の構成部材を示す斜視図である。コイルボビン41は、プラスチック等の不導体からなるリール状の部材になっており、入力軸側ハウジング部20aに入力軸82aや出力軸82bと同軸に固定される。コイルボビン41は、一対のフランジ部41cを有し、フランジ部41cの間の溝部に、検出コイル40が巻き回されている。
【0048】
本実施形態のトルク検出部30では、検出コイル40がそれぞれ巻き回された同一形状の2つのコイルボビン41を、互いに向かい合わせて用いる。詳しくは、コイルボビン41としては、第1検出コイル40aに対応する第1コイルボビン41aと、第2検出コイル40bに対応する第2コイルボビン41bとが設けられており、第1検出コイル40aは第1コイルボビン41aに巻き回され、第2検出コイル40b第2コイルボビン41bに巻き回されている。
【0049】
2つのコイルボビン41がそれぞれ有する一対のフランジ部41cのうち、互いに他方のコイルボビン41が位置する側に配置されるフランジ部41cの側面端部には、基板側コネクタ47と接続可能なコイル側コネクタ45を構成する後述する端子取付部41gが設けられている。また、コイルボビン41における端子取付部41gが設けられるフランジ部41cの側面端部には、端子取付部41gをコイルボビン41の上端部に位置させた状態でのコイルボビン41の中心を通る垂線を対称軸とする線対称の位置に、規制部41fが形成されている。
【0050】
規制部41fは、2つのコイルボビン41を、フランジ部41cを対向させて同一軸上に配置してトルク検出部30の組み立てを行った際に、双方のコイルボビン41の規制部41f同士が接触して係合する。これにより、規制部41fは、2つのコイルボビン41の周方向における相対位置を決定し、且つ、コイルボビン41の周方向における相対回転を規制することが可能になっている。なお、規制部41fは、1つのコイルボビン41に対して2つ以上であれば、その数は適宜選択可能である。
【0051】
端子取付部41gは、フランジ部41cからコイルボビン41の径方向における外側に突出する部材になっており、径方向における外側の端面には、基板側コネクタ47と接続するための2本のコイル側端子41hが圧入固定されている。基板側コネクタ47に配置される2本のコイル側端子41hは、互いに平行に配設され、端子取付部41gからコイルボビン41の径方向における外側に突出するように固定されている。このように、2つのコイルボビン41にそれぞれ設けられる端子取付部41g及びコイル側端子41hは、コイル側コネクタ45を構成している。
【0052】
第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとは、同一形状の部材になっており、第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとは、それぞれコイルボビン41の径方向における外側からコイルボビン41に嵌る壁部42cと、コイルボビン41を保持する際に、軸心方向における外側を向く端部に形成されたリング状の底部42fとを有している。壁部42cは、略円筒形の形状で形成され、内径がコイルボビン41の外径と同程度の大きさになっており、これによりヨーク42は、壁部42cの内側にコイルボビン41に嵌め込んだ状態でコイルボビン41を保持することが可能になっている。即ち、略円筒形の形状で形成される壁部42cは、コイルボビン41をヨーク42で保持することにより、コイルボビン41に巻き回される検出コイル40を、検出コイル40の径方向における外側から覆うことができる。また、底部42fは、内径がコイルボビン41の内径と同程度の大きさになっており、コイルボビン41をヨーク42で保持する状態において、コイルボビン41に巻き回される検出コイル40の軸心方向における側方から検出コイル40を覆うことができる。
【0053】
図5は、図4に示すヨーク42の斜視図である。第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとのそれぞれのヨーク42は、壁部42cにおける底部42fが位置する側の反対側の端部に、凹部42dが形成されている。凹部42dは、壁部42cにおける底部42fが位置する側の反対側の端部が、底部42fが位置する側に凹むことにより形成されている。壁部42cには、このように形成される凹部42dが3箇所に配置されており、3箇所の凹部42dは、ヨーク42の周方向において所定の角度ずつ互いに離隔している。壁部42cに形成される3つの凹部42dは、ヨーク42の周方向において、コイルボビン41が有する端子取付部41gと2つの規制部41fに対応する位置に配置されている。
【0054】
さらに、ヨーク42の壁部42cには、複数の嵌合部42eが形成されている。嵌合部42eは、壁部42cにおける底部42fが位置する側の反対側の端部が、底部42fが位置する側に、凹部42dよりも浅い深さで凹むことにより形成されている。嵌合部42eは、凹部42dと同様に壁部42cの3箇所に配置されており、3箇所の嵌合部42eは、ヨーク42の周方向に隣り合う凹部42d同士の間に1つずつが配置されている。即ち、ヨーク42の壁部42cに配置される凹部42dと嵌合部42eとは、ヨーク42の周方向において交互に配置されている。
【0055】
ヨーク42の壁部42cは、これらのように凹部42dと嵌合部42eとがそれぞれ複数配置されているため、底部42fからの高さが、ヨーク42の周方向において周期的に変化して形成されている。
【0056】
カバーヨーク43は、略リング状の部材になっており、外周面に、互いに周方向に所定の角度ずつ離隔する3つの突起部43aが配置されている。カバーヨーク43は、突起部43aを第1ヨーク42aの嵌合部42eと第2ヨーク42bの嵌合部42eに嵌合させた状態で、第1ヨーク42a及び第2ヨーク42bの壁部42cの径方向における内側の部分に圧入される。
【0057】
即ち、カバーヨーク43が第1ヨーク42a及び第2ヨーク42bに圧入されるときの圧入深さは、カバーヨーク43の突起部43aと、第1ヨーク42a及び第2ヨーク42bの嵌合部42eとによって規制される。具体的には、第1ヨーク42a及び第2ヨーク42bに形成される嵌合部42eの軸心方向の深さは、製造公差も含めて、カバーヨーク43の厚みの半分程度になっている。なお、本実施形態では、カバーヨーク43の突起部43a及びヨーク42の嵌合部42eは、それぞれ3つずつ設けているが、突起部43a及び嵌合部42eを設置する数や設置する角度は適宜設定可能である。
【0058】
回路基板46には、基板側コネクタ47が実装されている。基板側コネクタ47はメス端子を有するものであり、回路基板46の基板側コネクタ47にコイル側コネクタ45を、回路基板46の厚み方向に接続することにより、トルク検出部30と回路基板46との間の電気的接続が得られる。また、別の方法として、コイルボビン41に圧入されたコイル側端子にコイル先端部分を絡げて半田固定した状態で、基板スルーホールに挿入し、半田付けで接続されていてもよい。
【0059】
ここで、ヨーク42についてより詳細に説明する。図6は、図5のA-A断面図である。ヨーク42における底部42fと壁部42cとの境界には、ヨーク42を形成する板の厚み方向が深さ方向となる溝部42gが配置されている。即ち、溝部42gは、ヨーク42を形成する板の厚み方向が深さ方向となり、ヨーク42の周方向における位置が同じ位置で底部42fや壁部42cに沿った方向が幅方向となる溝状の形状で形成されている。
【0060】
なお、ここでいう底部42fと壁部42cとの境界とは、底部42fと壁部42cとの間で曲げられている範囲をいう。つまり、底部42fと壁部42cとの境界とは、後述するブランク材42h(図7参照)に対して折り曲げ加工を行うことによって底部42fと壁部42cと形成する際に、折り曲げ加工により底部42fと壁部42cとの間で曲げられる部分をいう。
【0061】
溝部42gは、ヨーク42の径方向における底部42fの外周端と、ヨーク42の軸心方向における壁部42cの底部42fが位置する側の端部とが接続されている部分に配置されている。具体的には、溝部42gは、底部42fの厚み方向における壁部42cが位置する側の面と、壁部42cの厚み方向における底部42fが位置する側の面とが接続される部分に配置されており、即ち、底部42fと壁部42cとによって形成される角部における、劣角側の部分に配置されている。このようにヨーク42の底部42fと壁部42cとの境界に配置される溝部42gは、ヨーク42の周方向における全周に亘って連続的に配置されている。
【0062】
次に、ヨーク42の製造方法について説明する。図7は、ヨーク42の製造に用いるブランク材42hの平面図である。ヨーク42は、第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとのいずれも、平板からなる部材であるブランク材42hを折り曲げ加工することにより製造する。ブランク材42hは、ブランク材42hの形状にする前の板材料より、壁部42cになる部分と底部42fになる部分とを有する状態で切り出す。なお、ブランク材42hを板材料から切り出す方法として、板材料の厚み方向から抜型を押し当ててブランク材42hを打ち抜く、いわゆる打ち抜き加工を用いることができる。
【0063】
このため、ブランク材42hでは、壁部42cは、底部42fと同一平面となって形成されており、ブランク材42hは、底部42fとなる部分の径方向における外側に、底部42fの全周に亘って壁部42cとなる部分が配置された、円板状、或いは円環状の部材になっている。壁部42cに形成される凹部42dと嵌合部42eは、ブランク材42hの時点で形成する。
【0064】
図8は、図7のB-B断面図である。ブランク材42hには、底部42fとなる部分と壁部42cとなる部分との境界に、溝部42gが配置される。溝部42gは、平板であるブランク材42hの厚み方向が溝の深さ方向になり、ブランク材42hの平面視においては円形に形成される溝になっている。溝部42gは、例えば、図8に示すように、溝部42gの延在方向に見た場合における形状が、溝部42gの開口部側から溝の底側に向かうに従って溝の幅が狭くなる、半円状の形状で形成されている。なお、溝部42gは、ブランク材42hの厚み方向から、溝部42gの断面形状に対応する型を押し付けることにより、ブランク材42hを塑性変形させることで形成することができる。また、ブランク材42hを打ち抜く前に溝部42gを形成してもよいし、ブランク材42hを打ち抜いた後に溝部42gを形成してもよい。
【0065】
ヨーク42は、このように形成されるブランク材42hに対してプレス加工を行うことにより、ヨーク42に形状に成形をする。即ち、平板からなるブランク材42hに対して、底部42fの部分と壁部42cの部分とに対して、板の厚み方向において互いに反対方向の力を付与してプレス加工を行い、ブランク材42hにおける溝部42gの外側に位置する部分を、板の厚み方向に曲げる。例えば、ブランク材42hの厚み方向の一方側に、溝部42gと略同じ直径のくぼみを有する凹状金型を配置するとともに、ブランク材42hの厚み方向の他方側に、溝部42gと略同じ直径の突起を有する凸状金型を配置し、凹状金型と凸状金型との間にブランク材42hを挟み込み、凸状金型を凹状金型に向けて押し付けて、ブランク材42hを塑性変形させ、溝部42gを起点にブランク材42hを折り曲げ、底部42fの部分と壁部42cの部分を形成することができる。つまり、ブランク材42hは、溝部42gの位置で折り曲げられる。その際に、溝部42gの部分は、周囲の部分と比較して板の厚みが薄いため、相対的に剛性が低くなっている。このため、ブランク材42hは、溝部42gの位置を支点として曲がり易くなっており、溝部42gの位置で容易に曲げることが可能になっている。
【0066】
溝部42gの位置でブランク材42hを曲げたら、曲げた部分、つまり、ブランク材42hにおける溝部42gの外側に位置する部分を、円筒形の形状にする。これにより、底部42fの周囲に円筒形の壁部42cが配置される形状にし、ヨーク42を形成する。ヨーク42は、第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとのいずれもこれらのように製造を行う。
【0067】
次に、ヨーク42を有するトルク検出部30の組み立てについて説明する。トルク検出部30を組み立てる際には、まず、検出コイル40をそれぞれコイルボビン41に巻き付ける。第1検出コイル40aを第1コイルボビン41aに巻き付ける場合、第1検出コイル40aの先端部分を一方のコイル側端子41hに絡げて半田またはティグ溶接で固定し、第1検出コイル40aを第1コイルボビン41aのフランジ部41c同士の間の部分に巻き付けた後、その終端部分を他方のコイル側端子41hに絡げて半田またはティグ溶接で固定する。第2検出コイル40bについても同様である。
【0068】
次に、検出コイル40を巻き付けた2つのコイルボビン41を、それぞれヨーク42の内側に嵌着する。そして、これら2つのコイルボビン41を、カバーヨーク43を挟んでコイルボビン41同士が互いに向かい合うように配置し、カバーヨーク43に対して軸心方向における両側から第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとをそれぞれ圧入する。
【0069】
2つのコイルボビン41が向かい合う状態で第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとに圧入されることにより、第1コイルボビン41aの端子取付部41gと第2コイルボビン41bの端子取付部41gとが合わさり、コイル側コネクタ45が形成される。トルク検出部30は、これらのように組み立てた状態で入力軸側ハウジング部20aの内側に装着し、コイル側コネクタ45を、回路基板46の基板側コネクタ47に接続する。これにより、トルクセンサ10はステアリング装置80に設置される。
【0070】
回路基板46にはトルクセンサ10を構成するトルク演算回路(図示省略)が搭載されており、トルク演算回路は、第1検出コイル40aと第2検出コイル40bとの出力電圧を検出し、当該出力電圧の差分に基づいて、ステアリングホイール81に付与されて入力軸82aに伝達された操舵トルクを検出する。このように、トルクセンサ10は、入力軸82aと出力軸82bとの相対的な変位(回転変位)を、2つの検出コイル40のインピーダンスの変化に対応させて検出する。
【0071】
次に、実施形態に係るステアリング装置80の作用について説明する。ステアリング装置80が搭載される車両の運転時に、ステアリングホイール81が操作をされた場合は、ステアリングホイール81に付与された操舵力は、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に伝えられる。
【0072】
ステアリングシャフト82に伝えられた操舵力は、操舵トルクとしてステアリングシャフト82から中間シャフト85に伝達され、中間シャフト85からスタブシャフト87を経てピニオンギヤ88aに伝達される。これにより、ピニオンギヤ88aを有するステアリングギヤ88は、ピニオンギヤ88aから伝達された回転運動を、ラック88bの直線運動に変換し、タイロッド89を動作させる。
【0073】
また、本実施形態に係るステアリング装置80は、運転者の操舵をアシストする補助操舵トルクを発生させる電動モータ94を有している。電動モータ94は、ステアリングシャフト82に亘って配置されるトルクセンサ10により検出した操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを発生する。
【0074】
トルクセンサ10は、ステアリングシャフト82に付与された操舵トルクを、ステアリングシャフト82が有する入力軸82aと出力軸82bとが相対回転した際における相対回転の角度に基づいて検出する。即ち、入力軸82aと出力軸82bとは、トーションバー82cを介して連結されているため、ステアリングシャフト82に操舵トルクが付与された際には、入力軸82aと出力軸82bとの間では、トーションバー82cを介して操舵トルクが伝達される。その際に、トーションバー82cが僅かに捩じれることにより、入力軸82aと出力軸82bとは、相対回転をする。
【0075】
入力軸82aはトルクセンサ10を構成するセンサシャフト部31を有しており、出力軸82bにはトルクセンサ10を構成するセンサスリーブ32が連結されているため、入力軸82aと出力軸82bとが相対回転をした場合、センサシャフト部31とセンサスリーブ32も相対回転をする。トルクセンサ10は、センサシャフト部31とセンサスリーブ32と相対回転した際における相対回転の角度を検出することにより、操舵トルクを検出する。
【0076】
詳しくは、トルクセンサ10で操舵トルクを検出する際には、検出コイル40で磁界を発生し、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とが相対回転をした際に、検出コイル40で発生した磁界が変化することにより変化する検出コイル40のインピーダンスの変化量を電気信号として読み取ることにより、操舵トルクを検出する。
【0077】
入力軸82aと出力軸82bとが相対回転をすることに伴ってセンサシャフト部31とセンサスリーブ32とが相対回転をした場合における変化を、図9図10を用いて説明する。図9図10は、センサスリーブ32に対してセンサシャフト部31が相対回転をした状態を示す概念説明図である。図9図10は、図3に対してセンサシャフト部31が矢印の方向にセンサスリーブ32に対して相対回転をした状態の概念説明図になっている。センサシャフト部31には、凸部31aが複数配置されており、センサスリーブ32には窓孔33が複数配置されており、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とが相対回転をした場合、センサシャフト部31の凸部31aと、センサスリーブ32の窓孔33との相対的な位置が変化する。
【0078】
ここで、磁界を発生する検出コイル40の周囲に配置されるヨーク42とカバーヨーク43、及びセンサシャフト部31は、磁性材料からなるため、磁束を通すことができる。一方で、センサスリーブ32は、非磁性かつ導電性の材料(例えば、アルミニウム合金など)からなるため、検出コイル40から高周波数の交番磁界を発生させた場合、センサスリーブ32の表面で渦電流が発生するので、磁束は通り難くなっているものの、窓孔33の位置には導電性の材料が存在しないので、センサスリーブ32の表面には渦電流が発生せず、窓孔33が空いていない部分に比べ、磁束が通り易くなっている。
【0079】
このため、センサシャフト部31の周方向において窓孔33が配置されている位置では、検出コイル40で発生した磁界の磁束は窓孔33を通過することができるため、ヨーク42とカバーヨーク43とセンサシャフト部31の凸部31aとを通る磁路の磁束量が大きくなる。これに対し、センサシャフト部31の周方向において窓孔33が配置されていない位置では、検出コイル40で発生した磁界の磁束はセンサスリーブ32によって遮られ易くなるため、ヨーク42とカバーヨーク43とセンサシャフト部31の凸部31aとを通る磁路の磁束量は小さくなる。
【0080】
従って、センサシャフト部31の凸部31aと、センサスリーブ32の窓孔33との相対的な位置が変化した場合、検出コイル40で発生した磁界の磁束の通り易さが変化するため、センサシャフト部31の凸部31aとセンサスリーブ32の窓孔33との相対的な位置によって、検出コイル40のインピーダンスが変化する。
【0081】
例えば、図3に示すセンサシャフト部31に配置される複数の凸部31aのうち、1つの凸部31aaに着目すると、図3の状態では、凸部31aaは、センサスリーブ32の窓孔33とは周方向における位置が異なる位置になっている。このため、検出コイル40で発生した磁界の磁束は、凸部31aaを通り難くなっている。
【0082】
これに対し、ステアリングシャフト82に操舵トルクが入力されることによりトーションバー82cがねじれて入力軸82aが出力軸82bに対して相対回転した場合は、センサシャフト部31もセンサスリーブ32に対して相対回転をするため、センサシャフト部31の凸部31aと、センサスリーブ32の窓孔33との相対的な位置が変化する。この場合、検出コイル40で発生した磁界の磁束は、センサシャフト部31の凸部31aと、センサスリーブ32の窓孔33との相対的な位置に応じて、磁束の通り易さが変化する。
【0083】
例えば、図3に示すセンサシャフト部31が、センサスリーブ32に対して図9の矢印で示す方向に相対回転をすることにより、センサシャフト部31の凸部31aaの周方向における位置が、図9に示すように1つの第2窓孔33bと同じ位置になったとする。この場合、第2検出コイル40bで発生する磁界の磁束は、第2窓孔33bを通ってセンサシャフト部31の凸部31aaを通り易くなるため、凸部31aaを通る磁路の磁束量が大きくなり易くなる。
【0084】
一方で、凸部31aaは、周方向における位置が第1窓孔33aとは周方向における位置が同じ位置になっていないため、第1検出コイル40aで発生する磁界の磁束はセンサシャフト部31の凸部31aaを通り難くなり、凸部31aaを通る磁路の磁束量は小さくなり易くなる。
【0085】
また、図3に示すセンサシャフト部31が、センサスリーブ32に対して図10の矢印で示す方向に相対回転をすることにより、センサシャフト部31の凸部31aaの周方向における位置が、図10に示すように1つの第1窓孔33aと同じ位置になったとする。この場合、第1検出コイル40aで発生する磁界の磁束は、第1窓孔33aを通ってセンサシャフト部31の凸部31aaを通り易くなるため、凸部31aaを通る磁路の磁束量が大きくなり易くなる。
【0086】
一方で、凸部31aaは、周方向における位置が第2窓孔33bとは周方向における位置が同じ位置になっていないため、第2検出コイル40bで発生する磁界の磁束はセンサシャフト部31の凸部31aaを通り難くなり、凸部31aaを通る磁路の磁束量は小さくなり易くなる。
【0087】
第1検出コイル40aや第2検出コイル40bで発生する磁界の磁束は、これらのようにセンサシャフト部31とセンサスリーブ32との相対的な回転角度に応じてそれぞれ磁界の磁束量が変化するため、これに伴いそれぞれの検出コイル40のインピーダンスが変化する。トルクセンサ10は、検出コイル40のインピーダンスの変化量を、回路基板46から電気信号としてECU90に対して出力する。
【0088】
ECU90は、トルクセンサ10から伝達された電気信号に基づいて電動モータ94を作動させ、電動モータ94に補助操舵トルクを発生させる。つまり、トルクセンサ10からECU90に伝達された電気信号は、センサシャフト部31とセンサスリーブ32と相対回転の角度に応じて変化し、ステアリングシャフト82の入力軸82aと出力軸82bとの間で作用する操舵トルクに基づいて変化する。このため、ECU90は、トルクセンサ10から伝達された電気信号を、ステアリングシャフト82に作用する操舵トルクによって変化する情報として使用し、トルクセンサ10から伝達される電気信号に基づいて電動モータ94へ供給する電力値を調節し、電動モータ94に補助操舵トルクを発生させる。
【0089】
即ち、ECU90は、トルクセンサ10から操舵トルクの信号を取得し、車速センサ95から車両の車速信号を取得し、さらに、電動モータ94に設けられた回転検出装置から電動モータ94の動作情報を取得し、これらの動作情報と操舵トルクと車速信号とに基づいて電動モータ94に補助操舵トルクを発生させる。電動モータ94で発生した補助操舵トルクは、ステアリングシャフト82の出力軸82bに対して減速装置91を介して伝達される。これにより、運転者がステアリングホイール81に付与した操舵力は、電動モータ94で発生した補助操舵トルクによりアシストされ、操舵補助制御が実施される。
【0090】
また、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に操舵トルクが入力された場合において、操舵トルクに対して抵抗するトルクをステアリングシャフト82が中間シャフト85側から受けない場合は、ステアリングシャフト82は、トーションバー82cがほとんど捩じれることなく、入力軸82aと出力軸82bと一体に回転をする。この場合、トルクセンサ10は、操舵トルクが0であることを示す信号を出力する必要がある。
【0091】
つまり、ECU90は、トルクセンサ10から出力される電気信号も用いて操作補助制御を行うため、トルクセンサ10から出力する電気信号は、操舵トルクに対して高い精度で出力する必要がある。このため、トルクセンサ10から出力する電気信号の精度が許容範囲内に収まらない場合には、当該トルクセンサ10は製品として用いることができなくなる。
【0092】
ここで、本願の発明者らは、トルクセンサ10から出力する電気信号について、トルクセンサ10の形状による影響について研究を行った。具体的には、磁界を発生する検出コイル40を保持し、磁束を通すヨーク42は、ブランク材42hを折り曲げて成形を行うが、壁部42cの高さが周方向において変化するため、ブランク材42hをプレス加工してヨーク42の形状にした際に、真円度が低くなり易くなっている。
【0093】
検出コイル40は、コイルボビン41に巻き回されることにより略円環状の形状で形成され、ヨーク42は、壁部42cが略円筒形の形状で形成されて検出コイル40の径方向における外側に壁部42cが位置する状態で、コイルボビン41に巻かれる検出コイル40を保持する。検出コイル40で発生した磁界の磁束は、磁性材料により形成されるヨーク42も通るため、ヨーク42の真円度が低い場合は、検出コイル40で磁界を発生した際における磁束量の安定性が低くなり、検出コイル40のインピーダンスも不安定になり易くなる。このため、ヨーク42の真円度が低い場合は、トルクセンサ10から出力される電気信号の精度が低くなり易くなる。
【0094】
本願の発明者らは鋭意研究の結果、これらのようにヨーク42の真円度が、トルクセンサ10から出力される電気信号に影響を与えることについての知見を得た。本実施形態では、この知見に基づいて、ヨーク42の底部42fと壁部42cとの境界に溝部42gを配置することにより、ヨーク42の真円度を高め、トルクセンサ10から出力される電気信号の精度の向上を図っている。
【0095】
次に、本実施形態に係るトルクセンサ10から出力される電気信号の精度について説明するために、比較例に係るトルクセンサ10から出力される電気信号と比較することにより説明する。比較例に係るトルクセンサ10は、検出コイル40を保持するヨーク42のみが実施形態に係るトルクセンサ10と異なっており、それ以外は実施形態に係るトルクセンサ10と同じ構成になっている。
【0096】
比較例に係るトルクセンサ10では、ヨーク42における底部42fと壁部42cとの境界には、上述した実施形態とは異なり溝部42gが配置されておらず、ヨーク42は、溝部42gが形成されていない平坦なブランク材42hに対してプレス加工を行うことにより、壁部42cを略円筒形の形状にする。その際に、壁部42cは、底部42fからの高さが周方向において変化する形状で形成されるため、高さが変化する部分で絞りしわが発生し易くなり、円筒形の真円度が低くなり易くなる。また、壁部42cは、底部42fからの高さが周方向において変化する形状で形成されるため、プレス加工を行った際における形状の戻りである、いわゆるスプリングバックも、周方向における位置により異なり、これによっても円筒形の真円度が低くなる。
【0097】
図11は、比較例に係るトルクセンサ10が有するヨーク42の真円度を示す概念説明図である。図12は、比較例に係るトルクセンサ10のセンサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で等速回転させた場合における、トルクセンサ10から出力される電気信号の電圧を示す概念図である。比較例に係るトルクセンサ10では、ヨーク42には溝部42gが形成されていないため、ヨーク42の外径の真円度が低くなっている。このため、比較例に係るトルクセンサ10が有するヨーク42の外径の真円度である真円度Racは、ヨーク42の外径の目標となる真円度である目標真円度Rtに対して、図11に概念的に示すように大きく離隔している。
【0098】
このように、ヨーク42の真円度が低い比較例に係るトルクセンサ10のセンサシャフト部31とセンサスリーブ32とを、双方の間で負荷が生じない無負荷の状態で、一体で検出コイル40に対して回転をさせた場合、トルクセンサ10から出力される電気信号であるセンサ出力Scは、図12に示すように、出力される電圧が大幅に変動してしまう。即ち、ヨーク42の真円度が低い比較例では、センサシャフト部31とセンサスリーブ32との間で大きなトルクが作用せず、トルクセンサ10で検出すべきトルクが発生していない場合でも、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とが回転をすることにより、センサ出力Scは大きく変動してしまう。
【0099】
トルクセンサ10から出力されるセンサ出力には、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で回転させた際におけるセンサ出力に対して、製品としての許容範囲が設定されるが、センサ出力Scの変動が大きい場合は、許容範囲を超えてしまうことがある。センサ出力Scの変動が許容範囲を超えてしまった場合、そのトルクセンサ10は製品として用いることができないため、センサ出力Scの変動に対して影響を与えるヨーク42の真円度は、トルクセンサ10の製造時における歩留まりに対しても影響を与える。
【0100】
図13は、実施形態に係るトルクセンサ10が有するヨーク42の真円度を示す概念説明図である。図14は、実施形態に係るトルクセンサ10のセンサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で等速回転させた場合における、トルクセンサ10から出力される電気信号の電圧を示す概念図である。なお、図11図13は、トルクセンサ10が有するヨーク42の外径の真円度が目標真円度に対して離隔している状態について理解し易くするために、ヨーク42の外径の真円度と目標真円度との離隔の大きさを、図11図13で同じ倍率で倍率を大きくして図示したものになっている。また、図12図14とは、電圧の大きさが縦軸となる概念図になっており、図12図14とでは、縦軸に示される電圧の範囲は同じ範囲になっている。
【0101】
本実施形態に係るトルクセンサ10では、ヨーク42には底部42fと壁部42cとの境界に溝部42gが配置されている。このため、ブランク材42hに対してプレス加工を行うことにより、壁部42cを略円筒形の形状にする際に、壁部42cは溝部42gの位置で曲がり易くなり、絞りしわが発生し難くなる。また、溝部42gの位置で曲がり易くなることにより、プレス加工を行った際におけるスプリングバックも発生し難くなるため、ヨーク42は、壁部42cの形状である円筒形の真円度が高くなる。従って、実施形態に係るトルクセンサ10が有するヨーク42の外径の真円度である真円度Raeは、図13に概念的に示すように、ヨーク42の外径の目標となる真円度である目標真円度Rtに近くなる。
【0102】
このように、ヨーク42の真円度が高い実施形態に係るトルクセンサ10のセンサシャフト部31とセンサスリーブ32とを、双方の間で負荷が生じない無負荷の状態で、一体で検出コイル40に対して回転をさせた場合、トルクセンサ10から出力されるセンサ出力Seは、図14に示すように、出力される電圧の変動が小さくなる。即ち、高い真円度でヨーク42が形成される実施形態では、センサシャフト部31とセンサスリーブ32との間で大きなトルクが作用せず、トルクセンサ10で検出すべきトルクが発生していない場合には、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とが回転をしても、センサ出力Seはあまり変動しない。
【0103】
これにより、実施形態に係るトルクセンサ10では、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で回転させた際におけるセンサ出力Seの変動を、製品としての許容範囲内に収めることができるため、製品として用い易くすることができる。即ち、ヨーク42の底部42fと壁部42cとの境界に溝部42gが配置される、実施形態に係るトルクセンサ10では、ヨーク42の外径の真円度を高めることができるため、不必要なセンサ出力Seの変動を抑えることができ、操舵トルクを安定して検出することのできるトルクセンサ10を製造することができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0104】
また、実施形態に係るトルクセンサ10では、第1検出コイル40aを保持する第1ヨーク42aと、第2検出コイル40bを保持する第2ヨーク42bとのいずれも、底部42fと壁部42cとの境界に溝部42gが配置されている。これにより、第1ヨーク42aと第2ヨーク42bとのそれぞれで、外径の真円度を高めることができる。従って、不必要なセンサ出力Seの変動を抑えることができ、操舵トルクを安定して検出することのできるトルクセンサ10を製造することができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0105】
また、実施形態に係るトルクセンサ10では、底部42fからの壁部42cの高さが、ヨーク42の周方向において周期的に変化して形成されるヨーク42に対して溝部42gが配置されるため、壁部42cの高さが周期的に変化するヨーク42であっても、ヨーク42の外径の真円度を高めることができる。これにより、ヨーク42が有する壁部42cの高さが周期的に変化する場合であっても、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で回転させた際におけるセンサ出力Seの変動を抑えることができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0106】
また、実施形態に係るトルクセンサ10では、ヨーク42の溝部42gは、ヨーク42の周方向における全周に亘って連続的に配置されるため、壁部42cの高さの変化の仕方に関わらずヨーク42の外径の真円度を高めることができる。これにより、ヨーク42が有する壁部42cの高さの変化の仕方に関わらず、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で回転させた際におけるセンサ出力Seの変動を抑えることができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0107】
また、実施形態に係るトルクセンサ10の製造方法では、ヨーク42は、平板からなるブランク材42hに溝部42gを形成し、溝部42gの位置でブランク材42hを折り曲げることによって底部42fと壁部42cとを形成するため、ヨーク42の真円度を高めることができる。これにより、トルクセンサ10からの出力の不必要な変動を抑えることができるため、操舵トルクを安定して検出することのできるトルクセンサ10を製造することができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0108】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、ヨーク42の溝部42gは、ヨーク42の全周に亘って連続的に配置されているが、溝部42gは全周に亘って連続的に配置されていなくてもよい。図15は、実施形態に係るトルクセンサ10の変形例であり、溝部42gが断続的に配置される場合におけるヨーク42のブランク材42hの平面図である。溝部42gは、例えば、図15に示すように、ヨーク42の周方向における全周に亘って断続的に配置されていてもよい。即ち、溝部42gは、ブランク材42hに対してプレス加工を行う際に、壁部42cの真円度を、センサ出力Seの変動を許容範囲内に収めることができる程度の真円度にできれば、ヨーク42の全周に亘って連続的に配置されていなくてもよい。
【0109】
一方で、検出コイル40で発生する磁界の磁路は、ヨーク42によっても形成されるため、ヨーク42に配置される溝部42gが多い場合、ヨーク42の体積は小さくなるため、ヨーク42を通る磁束の量は少なくなる。このため、溝部42gをヨーク42の周方向における全周に亘って断続的に配置した場合は、周方向における全周に亘って連続的に配置した場合と比較して、ヨーク42の体積を大きくすることができるため、ヨーク42を通る磁束の量も多くすることができる。
【0110】
これにより、トルクセンサ10によって検出する操舵トルクの検出精度を、溝部42gを周方向における全周に亘って連続的に配置した場合と比較して高めることができる。従って、溝部42gを、ヨーク42の周方向における全周に亘って断続的に配置した場合は、操舵トルクの検出精度を確保しつつ、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0111】
図16は、実施形態に係るトルクセンサ10の変形例であり、壁部42cの高さが低い位置に溝部42gが配置される場合におけるヨーク42のブランク材42hの平面図である。また、溝部42gは、例えば、図16に示すように、ヨーク42の周方向において底部42fからの壁部42cの高さが低い位置に配置され、壁部42cの高さが高い位置には溝部42gは配置されていなくてもよい。
【0112】
つまり、ブランク材42hをプレス加工することによって壁部42cを略円筒形の形状に形成する場合、壁部42cにおける高さが低い部分は、高さが高い部分と比較して曲げづらくなっている。このため、ヨーク42のブランク材42hから加工する際に曲げづらい、壁部42cの高さが低い位置に溝部42gを配置することにより、壁部42cをバランス良く効果的に曲げ易くすることができ、ヨーク42の真円度を高めることができる。これにより、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で回転させた際における、センサ出力Seの変動を抑えることができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0113】
図17は、実施形態に係るトルクセンサ10の変形例であり、溝部42gの深さが周方向における位置によって変化する場合におけるヨーク42のブランク材42hの平面図である。図18は、図17のC-C断面図である。図19は、図17のE-E断面図である。また、溝部42gは、図17図18図19に示すように、ヨーク42の周方向において底部42fからの壁部42cの高さが低い位置での深さDaが、底部42fからの壁部42cの高さが高い位置での深さDbよりも深く形成されていてもよい。壁部42cの高さが低い位置での溝部42gの深さDaを、壁部42cの高さが高い位置での深さDbよりも深くすることにより、壁部42cの高さが高い部分と低い部分とのいずれの位置でも、プレス加工によってバランス良く効果的に曲げ易くすることができる。これにより、ヨーク42の真円度を高めることができ、センサシャフト部31とセンサスリーブ32とを無負荷の状態で回転させた際における、センサ出力Seの変動を抑えることができる。この結果、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0114】
また、上述した実施形態では、溝部42gは、溝部42gの延在方向に見た場合における形状が半円状の形状で形成されているが、溝部42gは、これ以外の形状で形成されていてもよい。図20は、実施形態に係るトルクセンサ10の変形例であり、溝部42gの断面形状が二等辺三角形の形状で形成される場合における溝部42gの断面図である。図21は、実施形態に係るトルクセンサ10の変形例であり、溝部42gの断面形状が直角三角形の形状で形成される場合における溝部42gの断面図である。溝部42gは、溝部42gの延在方向に見た場合における形状が、例えば、図20に示すように、二等辺三角形の形状で形成されていたり、図21に示すように、直角三角形の形状で形成されていたりしてもよい。即ち、溝部42gの延在方向に見た場合における溝部42gの形状は、3つの頂点のうちの1つの頂点が溝底に位置する、三角形の形状で形成されていてもよい。
【0115】
溝部42gの形状を、二等辺三角形や直角三角形等の三角形の形状で形成することにより、ブランク材42hの壁部42cを曲げる際に、ブランク材42hは溝部42gの溝底の位置で曲がり易くなるため、スプリングバックを発生し難くすることができる。また、溝部42gの位置でブランク材42hを曲げた際には、三角形の形状で形成される溝部42gの面同士が当たるため、曲がり方を均一にすることができ、絞りしわを発生し難くすることができる。これにより、ヨーク42の真円度を高めることができ、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0116】
図22は、実施形態に係るトルクセンサ10の変形例であり、溝部42gの断面形状が四角形の形状で形成される場合における溝部42gの断面図である。また、溝部42gの延在方向に見た場合における溝部42gの形状は、例えば、図22に示すように、四角形の形状で形成されていてもよい。溝部42gの形状を、四角形の形状で形成することにより、ブランク材42hにおける溝部42gが形成される部分の剛性をより低下させることができ、ブランク材42hの壁部42cを曲げる際に、ブランク材42hを溝部42gの位置で曲がり易くすることができる。これにより、ヨーク42の真円度を高めることができ、トルクセンサ10の製造時における歩留まりを向上させることができる。
【0117】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 トルクセンサ
20 ハウジング
20a 入力軸側ハウジング部
20b 出力軸側ハウジング部
30 トルク検出部
31 センサシャフト部
31a 凸部
31b 溝部
32 センサスリーブ
32a 連結部
33 窓孔
33a 第1窓孔
33b 第2窓孔
40 検出コイル
40a 第1検出コイル
40b 第2検出コイル
41 コイルボビン
42 ヨーク
42a 第1ヨーク
42b 第2ヨーク
42c 壁部
42f 底部
42g 溝部
42h ブランク材
43 カバーヨーク
45 コイル側コネクタ
46 回路基板
47 基板側コネクタ
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
82c トーションバー
83 操舵力アシスト機構
84 ユニバーサルジョイント
85 中間シャフト
86 ユニバーサルジョイント
87 スタブシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオンギヤ
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
91 減速装置
92 ウォームホイール
93 ウォーム
94 電動モータ
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22