(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142143
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】タービンおよび過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20230928BHJP
F01D 15/08 20060101ALI20230928BHJP
F01D 1/22 20060101ALI20230928BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F02B39/00 Q
F01D15/08 C
F01D1/22
F01D5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048865
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神崎 大
【テーマコード(参考)】
3G005
3G202
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA05
3G005GB79
3G202BA01
3G202BB01
(57)【要約】
【課題】空力性能の向上とタービン翼車の翼振動の低減とを両立させる。
【解決手段】タービンは、タービン翼車17を収容する収容部と、収容部に対してタービン翼車17の軸方向に連続する排出流路と、タービン翼車17に対して径方向外側に巻き回され、収容部と連通するタービンスクロール流路と、タービン翼車17において、周方向に間隔を空けて設けられる複数の主翼17bと、タービン翼車17において、隣り合う主翼17bの間に設けられ、トレーリングエッジTEcが主翼17bのトレーリングエッジTEbよりも排出流路側に対する逆側に配置され、リーディングエッジLEcが主翼17bのリーディングエッジLEbよりも径方向外側に配置されるスプリッタ翼17cと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車を収容する収容部と、
前記収容部に対して前記タービン翼車の軸方向に連続する排出流路と、
前記タービン翼車に対して径方向外側に巻き回され、前記収容部と連通するタービンスクロール流路と、
前記タービン翼車において、周方向に間隔を空けて設けられる複数の主翼と、
前記タービン翼車において、隣り合う前記主翼の間に設けられ、トレーリングエッジが前記主翼のトレーリングエッジよりも前記排出流路側に対する逆側に配置され、リーディングエッジが前記主翼のリーディングエッジよりも径方向外側に配置されるスプリッタ翼と、
を備える、
タービン。
【請求項2】
前記主翼および前記スプリッタ翼のリーディングエッジは、前記排出流路側に進むほど径方向外側に位置する、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記排出流路側に対する逆側における前記主翼のリーディングエッジと前記スプリッタ翼のリーディングエッジとの径方向の離隔距離は、前記排出流路側における前記離隔距離よりも長い、
請求項1または2に記載のタービン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のタービンを備える、
過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンおよび過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機等に設けられるタービンとして、タービン翼車を収容する収容部と連通するタービンスクロール流路がタービン翼車に対して径方向外側に巻き回されるタービンがある。このようなタービンでは、タービンスクロール流路の下流端に面する位置に舌部が設けられる。例えば、特許文献1には、2つのタービンスクロール流路を備えるダブルスクロール式のタービンが開示されている。ダブルスクロール式のタービンでは、2つのタービンスクロール流路の間に、2つの舌部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
舌部とタービン翼車の翼体との距離が短いほど、空力性能が高くなる。しかしながら、舌部とタービン翼車の翼体との距離を短くするために翼体をタービン翼車の径方向に長くすることは、強度面で不利になる要因となる。
【0005】
本開示の目的は、空力性能を適切に向上させることが可能なタービンおよび過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のタービンは、タービン翼車を収容する収容部と、収容部に対してタービン翼車の軸方向に連続する排出流路と、タービン翼車に対して径方向外側に巻き回され、収容部と連通するタービンスクロール流路と、タービン翼車において、周方向に間隔を空けて設けられる複数の主翼と、タービン翼車において、隣り合う主翼の間に設けられ、トレーリングエッジが主翼のトレーリングエッジよりも排出流路側に対する逆側に配置され、リーディングエッジが主翼のリーディングエッジよりも径方向外側に配置されるスプリッタ翼と、を備える。
【0007】
主翼およびスプリッタ翼のリーディングエッジは、排出流路側に進むほど径方向外側に位置してもよい。
【0008】
排出流路側に対する逆側における主翼のリーディングエッジとスプリッタ翼のリーディングエッジとの径方向の離隔距離は、排出流路側における離隔距離よりも長くてもよい。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の過給機は、上記のタービンを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、空力性能を適切に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態の過給機を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態のタービン翼車を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態のタービン翼車を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態のタービン翼車の主翼の形状を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態のタービン翼車のスプリッタ翼の形状を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本開示の実施形態の過給機TCを示す概略断面図である。以下では、
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング5と、コンプレッサハウジング7とを備える。タービンハウジング5は、ベアリングハウジング3の左側に締結ボルト9によって連結される。コンプレッサハウジング7は、ベアリングハウジング3の右側に締結ボルト11によって連結される。過給機TCは、タービンTおよび遠心圧縮機Cを備える。タービンTは、ベアリングハウジング3およびタービンハウジング5を含む。タービンTは、ダブルスクロール式のタービンである。ただし、後述するように、タービンTは、ダブルスクロール式以外のタイプのタービンであってもよい。遠心圧縮機Cは、ベアリングハウジング3およびコンプレッサハウジング7を含む。
【0014】
ベアリングハウジング3には、軸受孔3aが形成される。軸受孔3aは、過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3aには、軸受13が配される。軸受13は、例えば、セミフローティング軸受である。ただし、軸受13は、セミフローティング軸受以外のタイプの軸受であってもよい。軸受13は、シャフト15を回転自在に軸支する。シャフト15の左端部には、タービン翼車17が設けられる。タービン翼車17は、タービンハウジング5に回転自在に収容されている。シャフト15の右端部には、コンプレッサインペラ19が設けられる。コンプレッサインペラ19は、コンプレッサハウジング7に回転自在に収容されている。シャフト15の軸方向が、過給機TCの軸方向(つまり、左右方向)である。以下、過給機TCの軸方向、径方向および周方向(つまり、タービン翼車17の軸方向、径方向および周方向)を、それぞれ単に軸方向、径方向および周方向とも呼ぶ。
【0015】
コンプレッサハウジング7には、吸気口21が形成される。吸気口21は、過給機TCの右側に開口する。吸気口21は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の対向面によって、ディフューザ流路23が形成される。ディフューザ流路23は、空気を昇圧する。ディフューザ流路23は、環状に形成される。ディフューザ流路23は、径方向内側において、コンプレッサインペラ19を介して吸気口21に連通している。
【0016】
また、コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路25が形成される。コンプレッサスクロール流路25は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路25は、例えば、ディフューザ流路23よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路23とに連通している。コンプレッサインペラ19が回転すると、吸気口21からコンプレッサハウジング7内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ19の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路23およびコンプレッサスクロール流路25で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0017】
タービンハウジング5には、排出流路27と、収容部29と、排気流路31とが形成される。排出流路27は、過給機TCの左側に開口する。排出流路27は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。排出流路27は、収容部29と連通する。排出流路27は、収容部29に対して軸方向に連続する。収容部29は、タービン翼車17を収容する。収容部29の径方向外側には、排気流路31が形成される。排気流路31は、不図示のエンジンの排気マニホールドと連通する。不図示のエンジンの排気マニホールドから排出された排気ガスは、排気流路31および収容部29を介して排出流路27に導かれる。排出流路27に導かれる排気ガスは、流通過程においてタービン翼車17を回転させる。
【0018】
タービン翼車17の回転力は、シャフト15を介してコンプレッサインペラ19に伝達される。コンプレッサインペラ19が回転すると、上記のとおりに空気が昇圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0019】
図2は、
図1のA-A断面図である。
図2では、タービン翼車17について、外周のみを円で示す。
図2に示すように、排気流路31は、排気導入口33と、排気導入路35と、タービンスクロール流路37と、スクロール出口39とを備える。
【0020】
排気導入口33は、タービンハウジング5の外部に開口する。排気導入口33には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導入される。
【0021】
排気導入路35は、排気導入口33とタービンスクロール流路37とを接続する。排気導入路35は、例えば、直線状に形成される。排気導入路35は、排気導入口33から導入された排気ガスをタービンスクロール流路37に導く。
【0022】
タービンスクロール流路37は、スクロール出口39を介して収容部29と連通する。タービンスクロール流路37は、排気導入路35から導入された排気ガスを、スクロール出口39を介して収容部29に導く。
【0023】
タービンハウジング5には、仕切板41が形成される。仕切板41は、排気流路31内に配される。具体的には、仕切板41は、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37内に配される。仕切板41は、排気流路31をタービン翼車17の周方向に仕切る。仕切板41は、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37の内面に対して、軸方向に接続される。仕切板41は、排気流路31に沿って延在する。つまり、仕切板41は、排気ガスの流れ方向に沿って延在する。以下、排気ガスの流れ方向の上流側を単に上流側と呼び、排気ガスの流れ方向の下流側を単に下流側と呼ぶ。
【0024】
排気導入口33は、仕切板41により第1排気導入口33aと第2排気導入口33bとに分割される。本実施形態では、第1排気導入口33aは、第2排気導入口33bよりも径方向内側に位置する。
【0025】
排気導入路35は、仕切板41により第1排気導入路35aと、第2排気導入路35bとに分割される。本実施形態では、第1排気導入路35aは、第2排気導入路35bよりも径方向内側に位置する。第1排気導入路35aは、第1排気導入口33aと連通する。第2排気導入路35bは、第2排気導入口33bと連通する。
【0026】
タービンスクロール流路37は、仕切板41により第1タービンスクロール流路37aと、第2タービンスクロール流路37bとに分割される。本実施形態では、第1タービンスクロール流路37aは、第2タービンスクロール流路37bよりも径方向内側に位置する。第1タービンスクロール流路37aは、第1排気導入路35aと連通する。第2タービンスクロール流路37bは、第2排気導入路35bと連通する。第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17に対して径方向外側に巻き回される。第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17の回転方向RDに進むにつれてタービン翼車17に近づくように、巻き回される。各タービンスクロール流路37の径方向の幅は、上流側から下流側に向かうにつれて小さくなる。
【0027】
第1タービンスクロール流路37aおよび第2タービンスクロール流路37bは、タービン翼車17の周方向の互いに異なる位置で収容部29とそれぞれ連通する。第1タービンスクロール流路37aは、第1スクロール出口39aを介して収容部29と連通する。第2タービンスクロール流路37bは、第2スクロール出口39bを介して収容部29と連通する。
【0028】
第1スクロール出口39aおよび第2スクロール出口39bは、周方向に沿って形成される。具体的には、第1スクロール出口39aは、収容部29の一側の半周(具体的には、
図2中の左側の半周)に亘って収容部29と連通される。第2スクロール出口39bは、収容部29の他側の半周(具体的には、
図2中の右側の半周)に亘って収容部29と連通される。第1スクロール出口39aおよび第2スクロール出口39bは、タービン翼車17を挟んで径方向に対向している。
【0029】
タービンハウジング5には、第1舌部43aと、第2舌部43bとが形成される。なお、以下では、第1舌部43aおよび第2舌部43bを特に区別しない場合、単に舌部43とも呼ぶ。各舌部43は、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとを区画する。また、各舌部43は、第1スクロール出口39aと第2スクロール出口39bとを区画する。
【0030】
第1舌部43aは、第1タービンスクロール流路37aの下流端に面する位置に設けられる。第1舌部43aは、仕切板41の下流側の端部に形成される。第1舌部43aは、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとを区画する。また、第1舌部43aは、第1スクロール出口39aの下流端と第2スクロール出口39bの上流端とを区画する。
【0031】
第2舌部43bは、第2タービンスクロール流路37bの下流端に面する位置に設けられる。第2舌部43bは、第2タービンスクロール流路37bと第1タービンスクロール流路37aとを区画する。また、第2舌部43bは、第2スクロール出口39bの下流端と第1スクロール出口39aの上流端とを区画する。
【0032】
第1舌部43aと第2舌部43bとは、タービン翼車17の周方向に等間隔に配置されている。つまり、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°ずれている。ただし、第1舌部43aと第2舌部43bとは、タービン翼車17の周方向に不等間隔に配置されていてもよい。つまり、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°と異なる角度でずれていてもよい。
【0033】
不図示のエンジンの排気マニホールドは、2以上の複数の分割路を備える。複数の分割路のうちの一部の分割路は、第1排気導入口33aに接続される。複数の分割路のうちの他の分割路は、第2排気導入口33bに接続される。不図示のエンジンから排出される排気ガスは、分割路を流通し、第1排気導入口33aまたは第2排気導入口33bに導入される。一方の排気導入口33に排気ガスが導入されるタイミングでは、基本的に、他方の排気導入口33には排気ガスが導入されない。第1排気導入口33aへの排気ガスの導入と、第2排気導入口33bへの排気ガスの導入とが、交互に繰り返される。
【0034】
第1排気導入口33aへ導入された排気ガスは、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aを通って、第1スクロール出口39aから収容部29に流れる。第2排気導入口33bへ導入された排気ガスは、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bを通って、第2スクロール出口39bから収容部29に流れる。一方のタービンスクロール流路37に排気ガスが流れるタイミングでは、基本的に、他方のタービンスクロール流路37には排気ガスが流れない。ゆえに、第1タービンスクロール流路37aと第2タービンスクロール流路37bとの間で圧力差が生じ、2つのタービンスクロール流路37間での排気ガスの漏れ流れが生じる。上記の漏れ流れでは、排気ガスが、一方のタービンスクロール流路37から他方のタービンスクロール流路37へ、舌部43の近傍を通って漏れ流れる。排気ガスの漏れ流れは、タービンTの性能および過給機TCと接続されるエンジンの性能を低下させる要因となる。
【0035】
ここで、舌部43とタービン翼車17の翼体との距離が長いほど、排気ガスの漏れ流れが生じやすくなる。舌部43とタービン翼車17の翼体との距離は、具体的にはタービン翼車17の翼体が舌部43に最も接近したときの、舌部43と当該翼体のリーディングエッジとの距離である。なお、タービン翼車17の翼体の詳細については、後述する。舌部43とタービン翼車17の翼体との距離を短くすることによって、排気ガスの漏れ流れが抑制され、空力性能が高くなる。しかしながら、舌部43とタービン翼車17の翼体との距離を短くするために翼体をタービン翼車17の径方向に長くすることは、強度面で不利になる要因となる。本実施形態のタービンTでは、タービン翼車17の翼体に工夫を施すことによって、空力性能を適切に向上させることが実現される。以下、
図3から
図6を参照して、このような工夫について、詳細に説明する。
【0036】
図3は、タービン翼車17を示す斜視図である。
図4は、タービン翼車17を示す平面図である。具体的には、
図4は、タービン翼車17をタービン翼車17の軸方向に見た図である。
図3および
図4に示すように、タービン翼車17は、ハブ17aと、複数の主翼17bと、複数のスプリッタ翼17cとを有する。
【0037】
ハブ17aは、シャフト15(
図1を参照)の左端部と接続されている。ハブ17aの外径は、過給機TCの左側に向かうほど小さくなる。ハブ17aの外周面に、主翼17bおよびスプリッタ翼17cが翼体として設けられる。複数の主翼17bは、周方向に間隔を空けて設けられる。各主翼17bは、ハブ17aの外周面から径方向外側に延びて形成される。スプリッタ翼17cは、隣り合う主翼17bの間に設けられる。ゆえに、複数のスプリッタ翼17cも、主翼17bと同様に、周方向に間隔を空けて設けられる。各スプリッタ翼17cも、主翼17bと同様に、ハブ17aの外周面から径方向外側に延びて形成される。
【0038】
主翼17bの外周縁は、リーディングエッジLEbと、トレーリングエッジTEbとを含む。リーディングエッジLEbは、主翼17bにおける排気ガスの流れ方向の上流側の縁部である。トレーリングエッジTEbは、主翼17bにおける排気ガスの流れ方向の下流側の縁部である。スプリッタ翼17cの外周縁は、リーディングエッジLEcと、トレーリングエッジTEcとを含む。リーディングエッジLEcは、スプリッタ翼17cにおける排気ガスの流れ方向の上流側の縁部である。トレーリングエッジTEcは、スプリッタ翼17cにおける排気ガスの流れ方向の下流側の縁部である。タービン翼車17の収容部29(
図1または
図2を参照)を通過する排気ガスは、リーディングエッジLEb、LEcの近傍、翼体間の空間、および、トレーリングエッジTEb、TEcの近傍をこの順に通過する。
【0039】
スプリッタ翼17cのトレーリングエッジTEcは、主翼17bのトレーリングエッジTEbよりも排出流路27側に対する逆側(つまり、矢印R側)に配置される。換言すると、主翼17bのトレーリングエッジTEbは、スプリッタ翼17cのトレーリングエッジTEcよりも排出流路27側(つまり、矢印L側)に配置される。つまり、タービン翼車17の軸方向において、主翼17bはスプリッタ翼17cよりも長い。ゆえに、主翼17bは、スプリッタ翼17cよりも大きい。つまり、主翼17bの表面積は、スプリッタ翼17cの表面積よりも大きい。
【0040】
よって、タービン翼車17により生成される回転動力のうちの大部分が主翼17bによって生成される。主翼17bに加えてスプリッタ翼17cが設けられることによって、主翼17bの数を単に増やした場合のように翼体間の全ての箇所で流路断面積が小さくなることを抑制しつつ、タービン翼車17により生成される回転動力を大きくできる。ただし、タービン翼車17は、少なくとも主翼17bおよびスプリッタ翼17cを備えていればよく、後述するように、
図3および
図4の例に限定されない。
【0041】
図4では、各主翼17bのリーディングエッジLEbのうち最も径方向外側の部分を繋ぐ一点鎖線の円が示されている。各スプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcは、この円よりも外側に位置している。つまり、スプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcは、主翼17bのリーディングエッジLEbよりも径方向外側に配置される。以下、
図5および
図6を参照して、スプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcと、主翼17bのリーディングエッジLEbとの位置関係について、詳細に説明する。
【0042】
図5は、タービン翼車17の主翼17bの形状を模式的に示す図である。
図6は、タービン翼車17のスプリッタ翼17cの形状を模式的に示す図である。
図5および
図6は、
図2のB-B断面図に相当する。
図5および
図6には、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分の形状が示されている。なお、第2舌部43bのタービン翼車17に面する部分の形状については、第1舌部43aのタービン翼車17に面する部分の形状と同様であるので、図示を省略する。
【0043】
図5に示すように、主翼17bのリーディングエッジLEbは、主翼17bの右端側に形成される。リーディングエッジLEbは、舌部43に対して径方向内側に配置されている。リーディングエッジLEbは、舌部43に対して径方向に対向する。主翼17bのトレーリングエッジTEbは、主翼17bの左端側に形成される。トレーリングエッジTEbは、周方向にねじれながら径方向に延びている。トレーリングエッジTEbは、排出流路27側(つまり、矢印L側)に臨む。主翼17bの外周縁のうち、リーディングエッジLEbとトレーリングエッジTEbの間の部分は、タービンハウジング5のうち収容部29を画成するシュラウド部29aに沿って延びている。
【0044】
図6に示すように、スプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcは、スプリッタ翼17cの右端側に形成される。リーディングエッジLEcは、舌部43に対して径方向内側に配置されている。リーディングエッジLEcは、舌部43に対して径方向に対向する。スプリッタ翼17cのトレーリングエッジTEcは、スプリッタ翼17cの左端側に形成される。トレーリングエッジTEcは、周方向にねじれながら径方向に延びている。トレーリングエッジTEcは、排出流路27側(つまり、矢印L側)に臨む。スプリッタ翼17cの外周縁のうち、リーディングエッジLEcとトレーリングエッジTEcの間の部分は、タービンハウジング5のうち収容部29を画成するシュラウド部29aに沿って延びている。
【0045】
図6では、
図5に示す主翼17bの外周縁が二点鎖線によって示されている。
図6に示すように、スプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcは、主翼17bのリーディングエッジLEbよりも径方向外側に配置される。具体的には、タービン翼車17の軸方向のいずれの位置においても、スプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcは、主翼17bのリーディングエッジLEbよりも径方向外側に配置される。それにより、スプリッタ翼17cが舌部43に最も接近したときの舌部43とスプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcとの隙間は、主翼17bが舌部43に最も接近したときの舌部43と主翼17bのリーディングエッジLEbとの隙間よりも小さくなる。ゆえに、スプリッタ翼17cが舌部43の近傍を通過する際の排気ガスの漏れ流れが抑制されるので、空力性能が高くなる。
【0046】
また、タービン翼車17の軸方向において、スプリッタ翼17cは主翼17bよりも短いので、主翼17bをタービン翼車17の径方向に長くすることと比べて、スプリッタ翼17cをタービン翼車17の径方向に長くすることがタービン翼車17の強度に与える影響は小さい。ゆえに、タービン翼車17の強度の低下が抑制されつつ、空力性能が向上する。よって、空力性能を適切に向上させることが実現される。
【0047】
図6に示すように、主翼17bおよびスプリッタ翼17cのリーディングエッジLEb、LEcは、排出流路27側(つまり、矢印L側)に進むほど径方向外側に位置する。具体的には、リーディングエッジLEb、LEcは、径方向外側に膨らむように湾曲している。タービン翼車17の回転軸とリーディングエッジLEb、LEcとの間の径方向の距離は、排出流路27側に進むにつれて長くなっている。このように、翼体のリーディングエッジが排出流路27側に進むほど径方向外側に位置するタイプのタービン翼車17では、翼体のリーディングエッジがタービン翼車17の軸方向と平行に延在する場合と比べ、翼体のリーディングエッジと舌部43との間に大きな隙間が形成される。ゆえに、スプリッタ翼17cをタービン翼車17の径方向により長くしやすい。よって、空力性能をより向上させやすい。
【0048】
ただし、主翼17bおよびスプリッタ翼17cのリーディングエッジLEb、LEcの軌跡は、上記の例に限定されない。例えば、リーディングエッジLEb、LEcは、排出流路27側に進むにつれて径方向外側に直線的に傾斜してもよい。つまり、タービン翼車17は、斜流式であってもよい。この場合にも、上記と同様の効果が奏される。例えば、リーディングエッジLEb、LEcは、タービン翼車17の軸方向と平行に延在してもよい。つまり、タービン翼車17は、ラジアル式であってもよい。
【0049】
図6に示すように、排出流路27側に対する逆側(つまり、矢印R側)における主翼17bのリーディングエッジLEbとスプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcとの径方向の離隔距離は、排出流路27側(つまり、矢印L側)における離隔距離よりも長い。具体的には、リーディングエッジLEbとリーディングエッジLEcとの径方向の離隔距離は、排出流路27側に進むにつれて短くなっている。
【0050】
特に、
図6の例のように翼体のリーディングエッジが排出流路27側に進むほど径方向外側に位置するタイプのタービン翼車17では、翼体のリーディングエッジのうち排出流路27側に対する逆側の部分と舌部43との間に大きな隙間が形成される。ゆえに、リーディングエッジLEbとリーディングエッジLEcとの径方向の離隔距離を、排出流路27側に対する逆側において長くすることによって、スプリッタ翼17cを全体的に舌部43に近づけることができる。つまり、スプリッタ翼17cが舌部43に最も接近したときの舌部43とスプリッタ翼17cのリーディングエッジLEcとの隙間を、タービン翼車17の軸方向の各位置において小さくできる。よって、スプリッタ翼17cが舌部43の近傍を通過する際の排気ガスの漏れ流れがより抑制されるので、空力性能がより向上する。
【0051】
ただし、リーディングエッジLEbとリーディングエッジLEcとの径方向の離隔距離の軸方向における分布は、上記の例に限定されない。例えば、リーディングエッジLEbとリーディングエッジLEcとの径方向の離隔距離は、全体的に、または、部分的に、排出流路27側に進むにつれて長くなっていてもよい。例えば、リーディングエッジLEbとリーディングエッジLEcとの径方向の離隔距離は、タービン翼車17の軸方向位置によらず一定であってもよい。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
上記では、タービンTが過給機TCに搭載される例を説明したが、タービンTは、過給機TC以外の装置(例えば、発電機等)に搭載されてもよい。
【0054】
上記では、第1排気導入口33a、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aと、第2排気導入口33b、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bとが径方向に並んで形成される例を説明したが、排気流路31における各構成要素間の位置関係は、この例に限定されない。例えば、第1排気導入口33a、第1排気導入路35aおよび第1タービンスクロール流路37aと、第2排気導入口33b、第2排気導入路35bおよび第2タービンスクロール流路37bとが、部分的に軸方向に並んで形成されていてもよい。
【0055】
上記では、タービンTがダブルスクロール式である例を説明したが、タービンTのタイプは上記の例に限定されない。例えば、タービンTに設けられるタービンスクロール流路37の数は1つであってもよい。この場合、タービンTに設けられる舌部43の数は1つとなる。例えば、タービンTは、軸方向に並んで配置される2つのタービンスクロール流路37を備えるツインスクロール式であってもよい。ただし、タービンTがダブルスクロール式である場合、排気ガスの漏れ流れを抑制することが特に重要となる。ゆえに、タービン翼車17の翼体に上記の工夫を施すことが特に有効となる。
【0056】
上記では、タービン翼車17において、主翼17bおよびスプリッタ翼17cが周方向に交互に配置される例を説明した。ただし、タービン翼車17は、少なくとも主翼17bおよびスプリッタ翼17cを備えていればよく、タービン翼車17における翼体の配置はこの例に限定されない。例えば、隣り合う主翼17bの間に複数のスプリッタ翼17cが設けられていてもよい。また、寸法または形状が互いに異なる複数種類のスプリッタ翼17cがタービン翼車17に設けられていてもよい。例えば、
図3および
図4の例におけるスプリッタ翼17cとは異なるスプリッタ翼として、主翼17bよりも軸方向長さが短いものの、スプリッタ翼17cよりも軸方向長さが長いスプリッタ翼がタービン翼車17に追加されてもよい。
【0057】
本開示は、空力性能の向上を促進するので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0058】
17 タービン翼車
17b 主翼
17c スプリッタ翼
27 排出流路
29 収容部
37 タービンスクロール流路
LEb リーディングエッジ
LEc リーディングエッジ
T タービン
TC 過給機
TEb トレーリングエッジ
TEc トレーリングエッジ