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特開2023-142152インデフレーション装置、インデフレータ、インデフレーションシステム、制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142152
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】インデフレーション装置、インデフレータ、インデフレーションシステム、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20230928BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20230928BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/145 508
A61M39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048882
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066HH02
4C066QQ14
4C066QQ25
4C066QQ35
4C066QQ47
4C066QQ58
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】
【課題】インデフレーション装置、インデフレータ、インデフレーションシステム、制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】インデフレーション装置は、医療用カテーテルに接続されるインデフレータを保持する保持部と、前記保持部に保持されたインデフレータのシリンジの押子を移動させる押子駆動部と、前記押子駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、記憶される設定データに基づき、前記シリンジ内に充填された流体の圧力に応じて、前記押子駆動部の制御データを決定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用カテーテルに接続されるインデフレータを保持する保持部と、
前記保持部に保持されたインデフレータのシリンジの押子を移動させる押子駆動部と、
前記押子駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、記憶される設定データに基づき、前記シリンジ内に充填された流体の圧力に応じて、前記押子駆動部の制御データを決定する
インデフレーション装置。
【請求項2】
前記シリンジ内に充填された流体の圧力を測定する測定部を更に備え、
前記制御部は、前記測定部により測定された圧力が、前記設定データに含まれる圧力値を超過しないように、前記押子駆動部の制御データを決定する
請求項1に記載のインデフレーション装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記インデフレータのシリンジ内と連通する空間を封止するように前記インデフレータに設けられた可撓性を有する隔膜に、当接する圧力センサである
請求項2に記載のインデフレーション装置。
【請求項4】
前記流体の圧力を含む制御データを表示する表示部を更に備える
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインデフレーション装置。
【請求項5】
医療用カテーテルに接続されるチューブと、
前記医療用カテーテルへ流体を供給するシリンジと、
前記チューブ及びシリンジの間に設けられ、先端に可撓性を有する隔膜が設けられた分岐管と
を備えるインデフレータ。
【請求項6】
医療用カテーテルに接続されるチューブと、
前記チューブを介して前記医療用カテーテルへ流体を供給するシリンジと、
前記シリンジの押子の先端面又は基端面に配置される圧力センサと
を備えるインデフレータ。
【請求項7】
前記チューブ及びシリンジの間に、前記シリンジの内部空間と連通するエアチャンバを備える、
請求項5又は6に記載のインデフレータ。
【請求項8】
前記エアチャンバは、活栓を介して前記チューブ及びシリンジに接続されており、
前記活栓は、
前記チューブ及びシリンジの間を連通させるか、前記シリンジ及びエアチャンバの間を連通させるかを切り替える
請求項7に記載のインデフレータ。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のインデフレータと、
該インデフレータを保持して該インデフレータのシリンジの押子を移動させるインデフレーション装置とを含み、
前記インデフレーション装置は、
前記シリンジの押子を移動させる押子駆動部と、
前記押子駆動部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、記憶される設定データに基づき、前記シリンジ内に充填された流体の圧力に応じて、前記押子駆動部の制御データを決定する
インデフレーションシステム。
【請求項10】
請求項5又は6に記載のインデフレータと、
該インデフレータを保持してシリンジの押子を移動させるインデフレーション装置とを含み、
前記インデフレーション装置は、
前記シリンジの押子を移動させる押子駆動部と、
前記押子駆動部を制御する制御部と、
保持された前記インデフレータに設けられた分岐管の先端の隔膜を介して前記シリンジ内に充填された流体の圧力を測定するセンサとを備え、
前記制御部は、前記センサに基づく圧力と、記憶されている設定データとに基づき、前記押子駆動部の制御データを決定する
インデフレーションシステム。
【請求項11】
医療用カテーテルに接続されるインデフレータの制御方法であって、
前記インデフレータのシリンジ内に充填された流体の圧力の測定値を取得し、
圧力値及び昇圧時間の設定を受け付け、
設定された圧力値及び昇圧時間に基づき、前記インデフレータの押子を移動させる押子駆動部の制御データを決定し、
前記制御データに基づき、設定された圧力値を超過しない範囲で、前記押子駆動部を駆動させる
制御方法。
【請求項12】
インデフレータの押子を移動させる押子駆動部を駆動する処理部に、
前記インデフレータのシリンジ内に充填された流体の圧力の測定値を取得し、
圧力値及び昇圧時間の設定を受け付け、
設定された圧力値及び昇圧時間に基づき、前記インデフレータの押子を移動させる押子駆動部の制御データを決定し、
前記制御データに基づき、設定された圧力値を超過しない範囲で、前記押子駆動部を駆動させる
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用カテーテルへの液剤充填に使用されるインデフレータから、気泡を退避させるためのインデフレーション装置、インデフレータ、インデフレーションシステム、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管及び脈管等の管腔器官に存在する病変部の診断用又は治療用に医療用カテーテルが用いられている。医療用カテーテルは、造影剤、生理食塩水等の流体が充填されるルーメンを有するシャフトを備える。
【0003】
シャフトに流体を充填するために、シャフト内部の圧力が把握できるインデフレータが用いられる。診断又は治療施術の前に、医療者は、圧力を確認しながらインデフレータを操作し、流体を充填する。特許文献1には、減圧するための第1のシリンジと、プライミング液を充填するための第2のシリンジとを備え、カテーテル内を第1のシリンジで減圧してから第2のシリンジに接続して自動的にプライミング液を充填させるプライミング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-181534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているようなシリンジポンプでは、流体の供給速度(時間当たりの供給量)、及び供給時間の指定は可能であったが、輸液が主な目的であるため、圧力の調整については考慮されていなかった。まして、シリンジ内部の流体の圧力を測定しながら、流体を過度に力をかけて押し出さないように制御するものではなかった。
【0006】
また、医療者がインデフレータを操作する場合であっても、特許文献1に開示されているような自動充填装置を用いる場合であっても、血管内に挿入するカテーテルに気泡が存在することは回避されなければならない。そのためには、インデフレータ又は自動充填装置で流体が充填されたシリンジ内部、及びシリンジからシャフトへ接続される管内に気泡が存在する場合に、気泡をシャフトからインデフレータ側へ移動させ、シャフト内への侵入を回避させる必要がある。
【0007】
本開示の目的は、インデフレータを安全且つ自動的に、圧力を調整しつつ気泡を退避させることを可能とするインデフレーション装置、インデフレータ、インデフレーションシステム、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るインデフレーション装置は、医療用カテーテルに接続されるインデフレータを保持する保持部と、前記保持部に保持されたインデフレータのシリンジの押子を移動させる押子駆動部と、前記押子駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、記憶される設定データに基づき、前記シリンジ内に充填された流体の圧力に応じて、前記押子駆動部の制御データを決定する。
【0009】
本開示に係るインデフレータは、医療用カテーテルに接続されるチューブと、前記医療用カテーテルへ流体を供給するシリンジと、前記チューブ及びシリンジの間に設けられ、先端に可撓性を有する隔膜が設けられた分岐管とを備える。
【0010】
本開示に係るインデフレータは、医療用カテーテルに接続されるチューブと、前記チューブを介して前記医療用カテーテルへ流体を供給するシリンジと、前記シリンジの押子の先端面又は基端面に配置される圧力センサとを備える。
【0011】
本開示に係るインデフレーションシステムは、本開示に係るインデフレータと、該インデフレータを保持して該インデフレータのシリンジの押子を移動させるインデフレーション装置とを含み、前記インデフレーション装置は、前記シリンジの押子を移動させる押子駆動部と、前記押子駆動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、記憶される設定データに基づき、前記シリンジ内に充填された流体の圧力に応じて、前記押子駆動部の制御データを決定する。
【0012】
本開示に係るインデフレーションシステムは、本開示に係るインデフレータと、該インデフレータを保持してシリンジの押子を移動させるインデフレーション装置とを含み、前記インデフレーション装置は、前記シリンジの押子を移動させる押子駆動部と、前記押子駆動部を制御する制御部と、保持された前記インデフレータに設けられた分岐管の先端の隔膜を介して前記シリンジ内に充填された流体の圧力を測定するセンサとを備え、前記制御部は、前記センサに基づく圧力と、記憶されている設定データとに基づき、前記押子駆動部の制御データを決定する。
【0013】
本開示に係る制御方法は、医療用カテーテルに接続されるインデフレータの制御方法であって、前記インデフレータのシリンジ内に充填された流体の圧力の測定値を取得し、圧力値及び昇圧時間の設定を受け付け、設定された圧力値及び昇圧時間に基づき、前記インデフレータの押子を移動させる押子駆動部の制御データを決定し、前記制御データに基づき、設定された圧力値を超過しない範囲で、前記押子駆動部を駆動させる。
【0014】
本開示に係るコンピュータプログラムは、インデフレータの押子を移動させる押子駆動部を駆動するコンピュータに、前記インデフレータのシリンジ内に充填された流体の圧力の測定値を取得し、圧力値及び昇圧時間の設定を受け付け、設定された圧力値及び昇圧時間に基づき、前記インデフレータの押子を移動させる押子駆動部の制御データを決定し、前記制御データに基づき、設定された圧力値を超過しない範囲で、前記押子駆動部を駆動させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のインデフレータの略示斜視図である。
図2】活栓の模式図である。
図3】活栓の略示断面図である。
図4】インデフレーション装置の略示斜視図である。
図5】インデフレーション装置の構成を示すブロック図である。
図6】圧力センサの略示断面図である。
図7】他の形態の圧力センサの略示断面図である。
図8】インデフレーション装置の制御部による基本的な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】インデフレーション装置の制御部による基本的な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】気泡の排出処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】気泡の移動の説明図である。
図12】気泡の移動の説明図である。
図13】気泡の移動の説明図である。
図14】気泡の移動の説明図である。
図15】第2実施形態のインデフレータの略示斜視図である。
図16】第2実施形態のインデフレーション装置の構成を示すブロック図である。
図17】第3実施形態のインデフレーションシステムの斜視図である。
図18】インデフレーションシステムの構成を示すブロック図である。
図19】第3実施形態におけるインデフレーションシステムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
図20】第3実施形態におけるインデフレーションシステムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る制御装置の具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のインデフレータ1の略示斜視図である。インデフレータ1は、一方が縮径されている円筒形のシリンジ12と、縮径されていない方に、シリンジ12内に充填されている流体を押し込むように設けられた押子11とを備える。インデフレータ1は、シリンジ12内に予め造影剤、又はプライミング液等の流体が充填される。第1実施形態のインデフレータ1には更に、シリンジ12の縮径された側の筒先に活栓13が設けられており、更にその先に、流体の供給先と接続されるチューブ14が接続されている。
【0018】
活栓13は、四方に分岐した管を有し、ハンドル(図2参照)の操作によって4つの管のうち3つの管の間を導通させるようにルートを切り替える。活栓13には、制御信号を受けて自動的にハンドルを切り替えることができるようにハンドル駆動部16が接続されている。ハンドル駆動部16は、後述するように、インデフレーション装置2側に設けられていてもよい。第1実施形態のインデフレータ1に設けられた活栓13には更に、分岐管17が設けられている。なお、第1実施形態では活栓13によって導通する管を選択しているが、それぞれの管に開閉可能な弁を備え、弁の開閉を組み合わせることで、導通する管を選択する形態としてもよい。
【0019】
図2は、活栓13の模式図である。図2は、活栓13において接続されるルートとハンドル18との関係を2通り示す。活栓13の3つのルートの内、1つはシリンジ12に接続され、1つは流体の供給先へつながるチューブ14と接続され、残りの1つには、気泡の退避先となるエアチャンバ15に接続される。活栓13は、分岐方向を含む面と平行な面上で回転可能なハンドル18の角度により、内部にルートが設けられた切替体131(図3参照)が回転し、シリンジ12内部とチューブ14との間を通すか、シリンジ12内部とエアチャンバ15との間を通すかを切り替え可能である。図2Aは、シリンジ12内部とチューブ14との間が連通する状態を示し、図2Bは、シリンジ12内部とエアチャンバ15との間が連通する状態を示す。
【0020】
上述したように、活栓13には分岐管17が設けられている。分岐管17は、図2に示したようにシリンジ12とチューブ14とが接続される場合と、シリンジ12とエアチャンバ15とが接続される場合との両方において、シリンジ12内と接続された状態になる。分岐管17は、少なくとも、活栓13がシリンジ12内部とチューブ14との間を通すように切り替えられている場合にシリンジ12の内部と導通すれば、他の部分に設けられていてもよい。
【0021】
図3は、活栓13の略示断面図である。図3では、内部に充填される流体の図示を省略する。活栓13は、図3に示すように、3つの管の交差部分に3方向へのルートが設けられた円柱状の切替体131を内部に設けている。図3は、シリンジ12内部とチューブ14との間が連通する状態を示している。
【0022】
活栓13の分岐管17の先端は、拡径されている。分岐管17の先端は、拡径部分よりも基端側で、図3に示すように、隔膜171で封止されている。活栓13の切替体131がシリンジ12内部とチューブ14との間が連通する角度とした状態において、分岐管17はシリンジ12内と連通する。分岐管17に充填される流体の圧力は、シリンジ12の内部の流体の圧力と同等である。隔膜171は可撓性を有する膜であって、流体を分岐管17の内部に留める強度で、分岐管17内の流体の圧力に応じて分岐管17から外側に膨らんだり、内側に凹んだりすることが可能である。隔膜171は、後述するインデフレーション装置2(図4参照)に設けられた圧力センサにて、分岐管17内部の流体の圧力を測定可能にする。なお、隔膜171の変位を、圧力センサのみならず、後述するインデフレーション装置2に設けられるレーザー光源及び反射光測定装置を含む変位センサで計測することにより、流体の圧力は測定可能である。
【0023】
図4は、インデフレーション装置2の略示斜視図であり、図5は、インデフレーション装置2の構成を示すブロック図である。図4では、インデフレーション装置2の制御対象となるインデフレータ1も図示している。本開示のインデフレーション装置2は、インデフレータ1を保持し、自動的にインデフレータ1の押子11を移動させて加圧及び除圧が可能である。インデフレーション装置2は更に、インデフレータ1における流体が充填されている部分に気泡が存在する場合に、インデフレータ1から流体の供給先へその気泡が流入しないように制御する機能も有する。
【0024】
インデフレーション装置2は、インデフレータ1の長さ方向に沿い、台上に設置される長細の直方体状の本体20の上面に、インデフレータ1を保持する保持部21を備える。保持部21は、インデフレータ1のシリンジ12の基端側及び先端側を挟み込むように、押子11と筒先とをそれぞれ支持するコの字(U字)状の第1支持部211と第2支持部212とを有する。保持部21は更に、本体20の一端に、インデフレータ1の活栓13のチューブ14側の管を支持するコの字(U字)状の第3支持部213を有する。第1支持部211~第3支持部213は、インデフレータ1の寸法に合わせて長さ方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0025】
インデフレーション装置2は、保持部21がインデフレータ1を保持する状態でその押子11を押すための押子駆動部22を、本体20の他端に有する。押子駆動部22は、本体20の他端に固定された基部221と、基部221に対して本体20の長さ方向に移動可能なスライダー222とを有する。スライダー222には、押子11を固定するためのクランプ224が設けられており、スライダー222の移動により押子11の押し引きが可能である。スライダー222は、基部221内に設けられたモータ(図示せず)の駆動により回転する送りねじ223によって双方向に移動する。押子駆動部22は、本体20の内部に設けられた制御部200からの制御信号に応じて、モータを制御し、制御信号によって指示される速度で送りねじを回転させるようにしてある。
【0026】
押子駆動部22の構成は、図1及び図4を参照して説明した上述のような押し引きを実現する構成には限られない。例えば、シリンジに対して押子11をねじ式とし、押子11の基端をモータで回転させることでシリンジの内筒を移動させる方式としてもよい。その場合、押子駆動部22は、押子11の基端を回転させるモータ及びモータの回転の伝動部を設けるとよい。
【0027】
保持部21及び押子駆動部22は、インデフレータ1を清潔野に存在させるようにカバーを介してインデフレータ1を保持するようにしてもよい。接触することが必要な圧力センサ201以外、カメラ202、第1操作部203から第4操作部206は、保持部21及び押子駆動部22から離隔して存在し、保持部21、押子駆動部22及びインデフレータ1が清潔野に存在できるように無線により接続される構成としてもよい。
【0028】
第1実施形態のインデフレーション装置2は、保持部21の第2支持部212及び第3支持部213の間の、保持されたインデフレータ1の分岐管17に対応する箇所に、圧力センサ201を備える。圧力センサ201は、分岐管17の先端の隔膜171に接触し、隔膜171の撓みを検知し(図6参照)、圧力に対応する信号を制御部200へ出力する。
【0029】
第1実施形態のインデフレーション装置2は、保持部21に保持されたインデフレータ1のシリンジ12、活栓13に接続される筒先、及びチューブ14を撮影可能な位置に設置されるカメラ202を備える。カメラ202は複数に分けられていて各所を撮影するようにしてあってもよい。カメラ202は、撮影される画像の画像信号を、本体20の内部に設けられた制御部200へ出力する。
【0030】
インデフレーション装置2は、本体20の一側面側に設けられた斜面に、第1操作部203、第2操作部204、第3操作部205及び第4操作部206を備える。第1操作部203及び第2操作部204はそれぞれ、表示パネルと、2つの物理ボタンとを有する。第1操作部203は、圧力を設定するための操作インタフェースであり、第2操作部204は、時間を設定するための操作インタフェースである。第3操作部205は、自動制御を開始するスタートボタン(auto start)及び制御を停止するストップボタン(stop)を有する。第4操作部206は、手動でインフレーション(昇圧・加圧)させるボタン(manual inflation)及び手動でデフレーション(除圧・減圧)させるボタン(manual deflation)を有する。
【0031】
制御部200は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit )等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含む。制御部200は図示しないタイマを有する。制御部200は、ROM、RAM以外に、処理に用いる設定データを記憶しておく不揮発性メモリを有している。ROMを書き換え可能として設定データを記憶させてもよい。制御部200は、例えばマイクロコントローラである。ROMには、制御プログラム2P、初期設定データ等が記憶されている。制御部200は、インタフェース(I/O)を介して圧力センサ201、カメラ202、第1操作部203、第2操作部204、第3操作部205、第4操作部206及び押子駆動部22との間で信号を授受可能である。制御部200のプロセッサは、制御プログラム2Pに基づいて、第1操作部203、第2操作部204、第3操作部205及び第4操作部206で受け付けられた操作内容に応じて、押子駆動部22へ制御信号を出力する。
【0032】
第1操作部203は、制御部200の制御により、設定対象の「圧力」を表示パネルに表示する。ユーザが2つの物理ボタンを押下する都度、設定対象の圧力を上昇させるか、下降させ、表示パネルの数値を更新する。表示パネルに表示されている数値が、設定対象の圧力であり、インデフレーション装置2は、設定された圧力を維持するように押子駆動部22を制御する。表示パネルは、設定された圧力のみならず、圧力センサ201にて測定中の実測値を表示する。
【0033】
第2操作部204は、制御部200の制御により、設定対象の「時間」を表示パネルに表示する。ユーザが2つの物理ボタンを押下する都度、設定対象の時間を長くするか、短くし、表示パネルの数値を更新する。表示パネルに表示されている数値が、設定対象の所定単位の時間の長さであり、インデフレーション装置2は、設定された時間で押子駆動部22を制御する。
【0034】
第3操作部205のスタートボタンが押下された場合、制御部200は、設定された圧力を維持するように設定された時間で押子駆動部22を昇圧・加圧する方向に移動させる。ストップボタンが押下された場合、制御部200は、設定された圧力を維持するように設定された時間で押子駆動部22を除圧・減圧する方向に移動させる。
【0035】
第4操作部206の手動インフレーションボタンが押下された場合、制御部200は、設定された速度(モータ回転速度)で押子駆動部22を昇圧・加圧する方向に移動させる。手動でデフレーションボタンが押下された場合、単純に、制御部200は、押子駆動部22を除圧・減圧する方向に移動させる。
【0036】
更に制御部200は、圧力センサ201から得られる圧力に対応する信号、及びカメラ202から得られる画像信号のいずれか一方又は両方に基づき、押子駆動部22へ制御信号を出力する。
【0037】
図6は、圧力センサ201の略示断面図である。図6は、圧力センサ201によるインデフレータ1のシリンジ12内の流体の圧力の測定方法の概要を示す。図6Aは、分岐管17が圧力センサ201に接触する前の状態を示し、図6Bは、分岐管17が圧力センサ201に当接した状態を示す。図6に示すように、圧力センサ201は、分岐管17の拡径部の内径に対応する外径を有する円柱状の基体の端面に、円盤状の圧電センサ2011を設けて構成される。分岐管17の拡径部の端面が圧力センサ201の基体の端面に接触すると、隔膜171が圧電センサ2011に当接する。圧電センサ2011は、隔膜171の撓みを圧力として電気信号へ変換して制御部200へ出力する。
【0038】
圧力センサ201は上述したように、圧電センサ2011により隔膜171の撓みを測定することに限定されない。図7は、他の形態の圧力センサ201の略示断面図である。図7Aは、分岐管17が圧力センサ201に当接する前の状態を示し、図7Bは、分岐管17が圧力センサ201の基部に当接した状態を示す。図7に示すように、圧力センサ201は、隔膜171と所定の距離を保つように、圧力センサ201の基体に設けられた凹部の底に、変位センサ2012を設置して構成される。変位センサ2012は、レーザー光源及び反射光測定装置を含み、反射光測定装置で測定した隔膜171で反射した光の受光位置によって測定される変位に応じた信号を出力する。この場合、制御部200は、出力された変位に基づき、隔膜171の撓みと圧力との関係に基づいて圧力を導出する。
【0039】
このように構成されるインデフレータ1及びインデフレーション装置2は、インデフレータ1のシリンジ12内の流体の圧力を測定しながら、所定の圧力を維持、加圧、除圧、加圧時間、及び除圧時間を制御しながら、インデフレータ1に接続されるカテーテルへの流体の自動供給及び供給停止を可能とする。
【0040】
ユーザは、シリンジ12内に予め流体(造影剤等)が充填されたインデフレータ1をインデフレーション装置2の保持部21に保持させるように載置する。ユーザがインデフレーション装置2の電源(図示せず)をオンとし、第1操作部203及び第2操作部204を操作すると、インデフレーション装置2がインデフレータ1に対する自動制御を開始する。
【0041】
以下、制御の例をフローチャートを参照しつつ説明する。図8及び図9は、インデフレーション装置2の制御部200による基本的な処理手順の一例を示すフローチャートである。電源が入ったインデフレーション装置2の制御部200は、以下の処理手順を実行する。
【0042】
制御部200は、ROMあるいは不揮発性メモリから、圧力及び時間の設定データを読み出す(ステップS101)。ステップS101で読み出す設定データは、ROMに記憶されている初期値であってもよいし、その後、直近で設定されて不揮発性メモリに保存されている設定データであってもよい。
【0043】
制御部200は、読み出した圧力及び時間の設定データに基づき、第1操作部203及び第2操作部204の表示パネルに、設定されている圧力及び時間の数値を表示させる(ステップS102)。
【0044】
制御部200は、第1操作部203にて操作がされたか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103において制御部200は、第1操作部203の物理ボタンが押下された場合に操作がされたと判断する。操作がされたと判断した場合(S103:YES)、制御部200は、操作に応じて圧力の設定値(設定データ)を上昇又は下降させ(ステップS104)、表示パネルの表示を更新する(ステップS105)。
【0045】
操作がされないと判断した場合(S103:NO)、制御部200は、処理をステップS106へ進める。
【0046】
制御部200は、第2操作部204にて操作がされたか否かを判断する(ステップS106)。ステップS106において制御部200は、第2操作部204の物理ボタンが押下された場合に操作がされたと判断する。操作がされたと判断した場合(S106:YES)、制御部200は、操作に応じて時間の設定値(設定データ)を上昇又は下降させ(ステップS107)、表示パネルの表示を更新する(ステップS108)。
【0047】
操作がされないと判断した場合(S106:NO)、制御部200は、処理をステップS109へ進める。
【0048】
制御部200は、第3操作部205のスタートボタンの操作がされたか否かを判断する(ステップS109)。操作がされていないと判断した場合(S109:NO)、処理をステップS103へ戻す。
【0049】
操作がされたと判断した場合(S109:YES)、制御部200は、インデフレータ1の状態に異常がないことを確認した上で(ステップS110)、ステップS104及びS107の圧力及び時間の設定値を確定させる(ステップS111)。
【0050】
ステップS110において第1実施形態の制御部200は、インデフレータ1が流体の供給先と接続されている状態で、圧力センサ201にて圧力が1[atm ]以下であることを確認する、カメラ202にて気泡が存在しないことを確認する、等の処理を実行する。圧力に異常が検知される場合、例えば、昇圧(加圧)させていないにもかかわらず、液圧が上昇している場合、制御部200は異常を検知して動作を停止する。音声出力部を設けて報知してもよいし、第1操作部203の表示パネルに異常を示す記号、文字を表示させてもよい。
【0051】
制御部200は、確定させた圧力及び時間により、昇圧速度(圧力上昇率)を算出し(ステップS112)、算出した昇圧速度に応じて押子駆動部22におけるモータの回転の制御データ(電力等)を決定する(ステップS113)。ステップS112,S113の制御データについては、外部からデータを取得してもよい。
【0052】
制御部200は、時間計測を開始し(ステップS114)、ステップS113で決定した制御データで押子駆動部22を駆動させてインデフレータ1を昇圧させる(ステップS115)。制御部200は、昇圧時間がステップS111で確定させた設定時間に到達したか否かを判断する(ステップS116)。
【0053】
昇圧時間が、確定した設定時間に到達したと判断された場合(S116:YES)、制御部200は、時間計測を終了し(ステップS117)、インデフレータ1を除圧させるように押子駆動部22を駆動させる(ステップS118)。制御部200は、圧力センサ201により、インデフレータ1内部の圧力が戻ったことを確認し(ステップS119)、処理を終了する。
【0054】
ステップS116で、昇圧時間が設定時間に到達していないと判断された場合(S116:NO)、制御部200は、圧力センサ201により得られる圧力値に異常があるか否かを判断する(ステップS120)。ステップS120において制御部200は、圧力値が、ステップS111で確定させた設定値を超えた場合に異常があると判断する。ステップS120において制御部200は、圧力値が急激に低下した場合にも異常があると判断する。インデフレータ1が接続されているカテーテルに設けられたバルーンが破裂する等、流体がいずれかの箇所から漏れると圧力が急激に低下するためである。
【0055】
ステップS120において異常があると判断された場合(S120:YES)、制御部200は、設定時間に到達しなくともステップS117へ処理を進める。この場合、インデフレータ1での昇圧は、中断される。
【0056】
ステップS120において異常がないと判断された場合(S120:NO)、制御部200は、第3操作部205のストップボタンが押下されたか否かを判断する(ステップS121)。ストップボタンが押下されていないと判断された場合(S121:NO)、制御部200は処理をステップS116へ戻す。
【0057】
ストップボタンが押下されたと判断された場合(S121:YES)、制御部200は、処理をステップS117へ進める。この場合、昇圧中に異常ではなくユーザの操作によって昇圧が中断される。
【0058】
従来のシリンジポンプによるインデフレータ1等のシリンジの自動加圧では、流体の供給速度の指定は可能であったが、輸液が目的であったため、圧力の調整については考慮されてこなかった。圧力が上限を超過しないように制御されていたものは、押子を移動させる機構で使用されたモータトルクと、シリンジ寸法から圧力を推測するものであって、シリンジ内部の流体の圧力を測定しながら制御するものではなかった。
【0059】
第1実施形態におけるインデフレータ1は、カテーテルへの造影剤の注入速度、注入時の圧力変化については、迅速に実行することが必要であることに加え、カテーテルやバルーンの仕様で定められている圧力の上限に達しないように制御することが必要である。ユーザが、臨床において手作業で実施する場合、仕様通りの圧力をかけられるとは限らない。インデフレータ1及びインデフレーション装置2を使用することで、昇圧のコントロールを正しく、圧力を検知しつつ安全に実行することが可能となる。
【0060】
インデフレータ1では、活栓13にエアチャンバ15が接続されており、インデフレーション装置2にはカメラ202が使用可能であって、更に圧力を検知しながらの昇圧・除圧が可能である。そこでインデフレータ1の状態確認でシリンジ12内に気泡が存在した場合に、インデフレーション装置2の制御により、気泡を自動的に排出することも可能となる。
【0061】
図10は、気泡の排出処理手順の一例を示すフローチャートである。図10のフローチャートに示す処理手順は、図8及び図9のフローチャートに示した処理手順のうち、ステップS110にて異常(気泡)があると判断された場合に、制御部200により実行される。
【0062】
制御部200は、カメラ202から画像を取得する(ステップS201)。ステップS201において制御部200は、カメラ202から出力されている画像信号から画像を任意のタイミングでキャプチャできる。
【0063】
制御部200は、取得した画像に対し、気泡の大きさ及び位置を検知するための画像処理を実行する(ステップS202)。
【0064】
ステップS202において制御部200は、第1例では、画像に対してノイズ除去、エッジ処理等の事前処理を実行した後、気泡のパターンとの比較によって気泡を検知する。制御部200は、第2例では、画像が入力された場合に、気泡が写っている範囲の座標データと、気泡である確度とを出力するように学習された学習モデルを用いて気泡を検知する。制御部200は、いずれかの方法又はいずれの方法を使用してもよい。
【0065】
制御部200は、ステップS202の画像処理の結果、気泡がチューブ14に存在するか否かを判断する(ステップS203)。ステップS203において制御部200は、気泡がエアチャンバ15が接続されている活栓13よりもカテーテル側、即ち患者側にあるか否かを判断する。
【0066】
気泡がチューブ14に存在すると判断された場合(S203:YES)、制御部200は、気泡をシリンジ12内に引き込むべく、ハンドル駆動部16を、ハンドル18がシリンジ12内とチューブ14とを連通させる向きとさせたまま、押子11を引いてシリンジ12内を減圧させるように制御する(ステップS204)。続いて制御部200は、処理をステップS201へ戻し、新たに取得した画像からチューブ14からシリンジ12側に気泡が移動したと確認できるまで処理を繰り返す。なおこのとき、押子11を引いても気泡が移動しない場合、制御部200は、別途備える音声出力部や表示パネルから報知するなどしてもよい。
【0067】
インデフレーション装置2が、シリンジ12を傾斜させる機構を備える場合、押子11を引いても気泡が移動しないときには、制御部200は傾斜するように機構を制御する。シリンジ12を振動させる機構を用いて、制御部200がシリンジ12及びチューブ14等を振動させて気泡に刺激を与えるようにしてもよい。
【0068】
気泡がチューブ14内に存在しないと判断された場合(S203:NO)、制御部200は、気泡がシリンジ12又はその筒先に存在するか否かを判断する(ステップS205)。
【0069】
ステップS205で気泡がシリンジ12及びその筒先にも存在しないと判断された場合(S205:NO)、気泡が存在するという以外の異常であるか、又は、気泡が解消されているので処理を終了する。この場合、制御部200は、図8及び図9のインデフレータ1の制御に進む。
【0070】
気泡がシリンジ12及びその筒先に存在すると判断された場合(S205:YES)、制御部200は、気泡をエアチャンバ15内へ逃がすべく、ハンドル駆動部16を、ハンドル18がシリンジ12内とエアチャンバ15とを連通させる向きとする(ステップS206)。制御部200は、シリンジ12又はその筒先に存在する気泡を、活栓13へ押し込むべく、押子11を押してシリンジ内を加圧させるように制御する(ステップS207)。
【0071】
制御部200は、再度カメラ202から画像を取得し(ステップS208)、画像処理を実行して(ステップS209)、画像処理の結果、気泡がシリンジ12又はその筒先から、移動したか否かを判断する(ステップS210)。ステップS210において制御部200は、例えば、気泡が検知できないと判断されるか否かによって移動したか否かを判断する。活栓13の管のうち、エアチャンバ15へ接続される管を透明としてカメラ202で撮影し、気泡の移動を確認してもよい。
【0072】
移動しないと判断された場合(S210:NO)、制御部200は、処理をステップS207へ戻し、気泡がエアチャンバ15へ排気されるまで加圧を続ける。なおこのとき、押子11を押しても気泡が移動しない場合、制御部200は、別途備える音声出力部や表示パネルから報知するなどしてもよい。
【0073】
移動したと判断された場合(S210:YES)、制御部200は、処理を終了する。
この場合制御部200は、インデフレータ1の異常の確認を終了し、図8及び図9のフローチャートに示した処理手順を実行可能である。
【0074】
図10のフローチャートに示した処理手順による気泡の移動を図を参照して説明する。図11から図14は、気泡の移動の説明図である。図11は、インデフレータ1の模式断面図にて、チューブ14内に存在する気泡を示す。図12及び図13は、同模式断面図にて、シリンジ12の筒先に引き込まれた気泡を示す。図14は、同模式断面図にて、エアチャンバ15へ向けて排出される気泡を示す。
【0075】
図11に示すように、気泡がチューブ14に存在する場合、インデフレーション装置2の制御部200は、ステップS203でこれを判断して検知する。制御部200は、図11内の白抜き矢符で示すように、押子11を引くようにして気泡をシリンジ12側に引き込む。気泡がシリンジ12側に移動することで第1段階として、気泡がインデフレータ1から先の患者の体内側に移動するリスクは低減する。
【0076】
図12では、図11に示したように押子11を引くことによって気泡がシリンジ12の筒先の接続部分に引っかかっていることが示されている。
【0077】
図13では、図12に示した状態に比較して、活栓13のルートが変更され、シリンジ12内と、エアチャンバ15との間が連通した状態となっていることを示す。この状態で制御部200は、押子11を押して加圧することにより、気泡をエアチャンバ15へ誘導する。
【0078】
図14では、図13で押子11が押されることによって気泡がエアチャンバ15へ向かっていることが示されている。
【0079】
図11から図14に示したような気泡の移動は、従来、ユーザが補助として、インデフレータ1を目視で確認しつつ、これらの作業を事前に実行していた。しかしながら、昇圧・除圧を制御できるインデフレータ1及びインデフレーション装置2によって自動で気泡を移動させ、気泡がカテーテルから患者の体内に混入するリスクを低減させることが実現可能である。
【0080】
(第2実施形態)
第1実施形態のインデフレーション装置2は、圧電センサ又は変位センサを用いて分岐管17の先端に設けられた隔膜171を介して圧力を測定する圧力センサ201を用いるものとして説明した。第2実施形態のインデフレーション装置2は、押子を押子駆動部22で移動させる際の反力から求められる圧力をインデフレータ4から取得して用いる。
【0081】
図15は、第2実施形態のインデフレータ4の略示斜視図である。インデフレータ4は、第1実施形態のインデフレータ1と、分岐管17を備えていない点と、押子41の端面にセンサ48を設けている点とで異なる。分岐管17を設けていないため、活栓43は3つの管を導通させるのではなく、2つの管を導通させるようにルートを切り替えるように機能する。これらの点以外は、インデフレータ4は、第1実施形態のインデフレータ1と共通する構成を有するため、共通する構成には対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
インデフレータ4は、センサ48の出力と、シリンジ内筒の断面積とを用い、センサ48で測定された反力Fを断面積で除した値を圧力として演算する演算部49を設ける。演算部49は、押子41に取り付けられ、有線又は無線によりインデフレーション装置2へ出力する。
【0083】
図16は、第2実施形態のインデフレーション装置2の構成を示すブロック図である。インデフレーション装置2は、圧力センサ201を用いず、インデフレータ4の演算部49から出力される信号を入力して圧力を取得する。
【0084】
第2実施形態におけるインデフレーション装置2の制御は、圧力センサ201から圧力値を取得することに代替して、インデフレータ4の演算部49から圧力を取得する点以外は、第1実施形態の図8から図10のフローチャートに示した処理手順と同様である。したがって、詳細な処理手順を省略する。
【0085】
(第3実施形態)
インデフレーション装置2は、インデフレータ1を保持する保持部21と、押子11を押す押子駆動部22と、圧力センサ201を備えるインデフレーション装置2と、処理部30を備える制御装置3とに分離して構成されてもよい。
【0086】
図17は、第3実施形態のインデフレーションシステム100の斜視図であり、図18は、インデフレーションシステム100の構成を示すブロック図である。インデフレーションシステム100は、インデフレーション装置2と制御装置3とを含み、制御装置3を演算資源としてインデフレータ1に対する昇圧・除圧を制御する。インデフレーション装置2の制御部200以外の構成については第1実施形態のインデフレーション装置2と同様である。したがって、第1実施形態と第3実施形態とで共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0087】
第3実施形態におけるインデフレーション装置2は、制御部200に代替して処理部24と、通信部25とを備える。処理部24は、制御装置3から得られる制御データに基づき、押子駆動部22及びインデフレータ1のハンドル駆動部16を制御する。インデフレーション装置2は、スタート/ストップボタンを含む第3操作部205と、手動でインフレーションさせるボタン及び手動でデフレーションさせるボタンを含む第4操作部206を備える。圧力及び時間については表示パネルのみ備える。インデフレーション装置2は第1操作部203及び第2操作部204を備えていてもよい。
【0088】
処理部24は、CPU、MPU等のプロセッサ、ROM、RAM等のメモリを含む。処理部24は、インタフェース(I/O)を介して圧力センサ201、第3操作部205、及び押子駆動部22との間で信号を授受可能である。処理部24は、インタフェースを介してハンドル駆動部16との間で信号を授受可能であってもよい。
【0089】
通信部25は、近距離無線通信を実現する無線通信モジュールである。通信部25により、インデフレーション装置2は制御装置3と通信が可能である。通信部25は、近距離無線通信に限らず、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信用のモジュールであってもよい。
【0090】
制御装置3は、インデフレーション装置2に対するコントローラとして特別な装置である。制御装置3は、ユーザが使用するタブレット端末等の通信端末であってもよい。制御装置3は、不潔野に存在していてもよい。制御装置3は、処理部30と、記憶部31と、通信部32と、カメラ33と、表示部34と、操作部35とを備える。
【0091】
処理部30は、CPU、MPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)等である。処理部30は、記憶部31に記憶されている制御プログラム3Pを読み出して実行することにより、後述するようにインデフレーション装置2の制御データを作成する。
【0092】
記憶部31は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶部31は、処理部30が読み出す制御プログラム3Pと、設定データ等を記憶する。設定データは、操作によって設定される圧力及び時間の設定値である。
【0093】
通信部32は、インデフレーション装置2と通信するための無線通信モジュールである。通信部32は、インデフレーション装置2の通信部25と対応する通信規格により通信を実現できるモジュールであれば、無線/有線を問わない。
【0094】
カメラ33は、制御装置3の筐体に外向けに設けられたレンズを有し、制御装置3のユーザが写真及び動画を撮影できるモジュールである。カメラ33は、起動すると画角内に存在する物体を捉えた画像の画像信号をモニタ出力する。処理部30は、カメラ33から出力される画像信号に対し、逐次キャプチャ(取得)を実行できる。
【0095】
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。表示部34は例えば、タッチパネル内蔵型ディスプレイである。処理部30は表示部34に、制御プログラム3Pに基づき、カメラ33からのモニタ出力画面を含む操作画面を表示できる。
【0096】
操作部35は、例えば表示部34内蔵のタッチパネルである。この場合、操作部35は、表示部34に、制御プログラム3Pに基づき表示される操作画面によって操作可能である。操作部35は、物理ボタンであってもよい。操作部35は、音声入力部であってもよい。
【0097】
このように構成されるインデフレーションシステム100では、以下のように、インデフレーション装置2と制御装置3とで処理を分散してインデフレータ1の自動制御が実現できる。
【0098】
ユーザは、シリンジ12内に予め流体が充填されたインデフレータ1をインデフレーション装置2の保持部21に保持させるように載置する。ユーザはインデフレーション装置2の電源をオンとし、制御装置3で制御プログラム3Pを起動させ、操作画面に含まれるカメラ33からのモニタ出力に基づいて、シリンジ12からチューブ14を撮影できるようにカメラ43を位置決めする。ユーザが制御装置3の操作部35にて操作画面中のスタートボタンを選択すると、インデフレーションシステム100は、インデフレーション装置2と制御装置3とにより、以下の処理手順を実行する。
【0099】
図19及び図20は、第3実施形態におけるインデフレーションシステム100による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0100】
制御装置3の処理部30は、通信部32を介してインデフレーション装置2との間で通信を開始する(ステップS301)。
【0101】
制御装置3の処理部30は、記憶部31から、圧力及び時間の設定データを読み出す(ステップS302)。ステップS302で読み出す設定データは、記憶部31に記憶されている初期値、あるいは直近に設定されて保存されている設定データであってもよい。
【0102】
処理部30は、表示部34に表示する操作画面内に、ステップS302で読み出した圧力及び時間の設定値を表示し(ステップS303)、操作部35により設定値の変更がされたか否かを判断する(ステップS304)。ステップS304において処理部30は、操作画面内に、設定値そのものの数値の入力欄、又は、値の上昇若しくは下降を受け付けるコントロールを設け、入力欄又はコントロールが操作されたか否かを判断する。
【0103】
変更がされたと判断された場合(S304:YES)、処理部30は、操作に応じて設定値を変更し(ステップS305)、表示中の設定値を更新し(ステップS306)、処理をステップS307へ進める。
【0104】
変更がされないと判断した場合(S304:NO)、処理部30は、処理をステップS307へ進める。
【0105】
処理部30は、カメラ33からの画像信号に基づき、インデフレータ1の状態に異常がないことを確認した上で(ステップS307)、ステップS304の処理後における圧力及び時間の設定値を確定させる(ステップS308)。
【0106】
ステップS307における異常確認処理は、カメラ33から得られる画像に基づき、処理部30が、チューブ14及びシリンジ12に気泡が確認されないことを確かめることを含む。気泡が確認された場合、処理部30は、第1実施形態の図8及び図9のフローチャートに示した処理手順をインデフレーション装置2と協働して実行する。
【0107】
処理部30は、確定させた圧力及び時間により、昇圧速度(圧力上昇率)を算出し(ステップS309)、算出した昇圧速度に応じたインデフレーション装置2における押子駆動部22の制御データ(電力等)を決定する(ステップS310)。
【0108】
処理部30は、決定した制御データを通信部32を介してインデフレーション装置2へ送信する(ステップS311)。
【0109】
インデフレーション装置2の処理部24は、圧力及び時間に関する制御データとを受信する(ステップS401)。処理部24は、受信した制御データの数値を表示パネルに表示するなど、受信できたことを通知するとよい。処理部24は、圧力センサ201からの信号により圧力に異常がないことを確認する(ステップS402)。
【0110】
処理部24は、第3操作部205のスタートボタンの操作がされたか否かを判断する(ステップS403)。操作がされていないと判断した場合(S403:NO)、処理をステップS403へ戻す。
【0111】
ステップS403における操作は、制御装置3の表示部33に表示される加圧開始を指示するボタンであってもよい。この場合、通信によって制御装置3に加圧開始の操作ボタンを表示させるように、インデフレーション装置2と制御装置3とで連携するとよい。
【0112】
操作がされたと判断した場合(S403:YES)、時間計測を開始し(ステップS404)、受信した制御データで押子駆動部22を駆動させてインデフレータ1を昇圧させる(ステップS405)。
【0113】
処理部24は、昇圧時間が制御データに含まれる設定時間に到達したか否かを判断する(ステップS406)。昇圧時間が、設定時間に到達したと判断された場合(S406:YES)、処理部24は、時間計測を終了し(ステップS407)、インデフレータ1を除圧させるように押子駆動部22を駆動させる(ステップS408)。処理部24は、圧力センサ201により、インデフレータ1内部の圧力が戻ったことを確認し(ステップS409)、処理部24は、完了通知を制御装置3へ送信し(ステップS410)、処理を終了する。処理部24は、通信接続を切断してもよいし、維持したまま、次の制御まで待機してもよい。
【0114】
処理部24は、昇圧時間が設定時間に到達していないと判断された場合(S406:NO)、圧力センサ201により得られる圧力値に異常があるか否かを判断する(ステップS411)。ステップS411において処理部24は、圧力値が、ステップS401で受信した制御データにおける圧力の設定値を超えた場合に異常があると判断する。ステップS411において処理部24は、圧力値が急激に低下した場合にも異常があると判断する。インデフレータ1が接続されているカテーテルに設けられたバルーンが破裂する等、流体がいずれかの箇所から漏れると圧力が急激に低下するためである。
【0115】
ステップS411において異常があると判断された場合(S411:YES)、処理部24は、設定時間に到達しなくともステップS407へ処理を進める。この場合、インデフレータ1での昇圧は、中断される。
【0116】
ステップS411において異常がないと判断された場合(S411:NO)、処理部24は、第3操作部205のストップボタンが押下されたか否かを判断する(ステップS412)。ストップボタンが押下されていないと判断された場合(S412:NO)、処理部24は処理をステップS406へ戻す。
【0117】
ストップボタンが押下されたと判断された場合(S412:YES)、処理部24は、処理をステップS407へ進める。この場合、昇圧中に異常ではなくユーザの操作によって昇圧が中断される。
【0118】
制御装置3側では、インデフレーション装置2における制御が完了した完了通知を受信できた場合には(ステップS312)、表示部34に表示し(ステップS313)、処理を終了する。
【0119】
ステップS412におけるストップボタンの操作は、制御装置3の表示部33に表示される除圧を指示するボタンであってもよい。この場合も、通信によって制御装置3に除圧の操作ボタンを表示させるように、インデフレーション装置2と制御装置3とで連携するとよい。
【0120】
このように、インデフレーション装置2と制御装置3とで、モータ等の駆動部の制御部と演算資源とを分離することにより、より豊富な演算資源にて画像処理などの複雑な処理を実行した上で制御に反映できる。例えば、制御装置3は、接続されるカテーテル、カテーテルに設けられているバルーンに関する情報に基づいて決定される加圧に関するパラメータ(加圧上限、加圧速度、大きさ等)を外部から取得し、インデフレーション装置2の制御に適用できる。制御装置3は、外部から与えられる加圧に関するパラメータと、インデフレーション装置2の圧力センサ201から得られる実際の圧力とから、圧力の目標値に達するように押子駆動部22を制御できる。
【0121】
第3実施形態では、インデフレーション装置2は、制御装置3から無線等の通信によって制御データを受信することとして説明した。しかしながら、インデフレーション装置2が他の装置(制御装置3等)から制御データを取得する手段は、通信手段に限らない。例えば、インデフレーション装置2は、不揮発性の可搬型の記憶媒体からデータを読み取る読取部を備え、読取部を介して他の装置から制御データを取得してもよい。
【0122】
第3実施形態では、制御装置3は、第1実施形態に示した分岐管17に設けられた隔膜171を介して圧力を測定する圧力センサ201から、インデフレーション装置2を介して圧力を取得する構成として説明した。しかしながら、第3実施形態の制御装置3は、隔膜171を有する分岐管17が設けられていない第2実施形態のインデフレータ4を対象として、圧力センサ221から圧力を取得して同様に制御するものであってもよい。
【0123】
上述のように開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1,4 インデフレータ
11,41 押子
12,42 シリンジ
13,43 活栓
14,44 チューブ
15,45 エアチャンバ
17 分岐管
171 隔膜
2 インデフレーション装置
200 制御部
201,221 圧力センサ
202 カメラ
2P 制御プログラム
図1
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