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特開2023-142153制御装置、制御方法、制御システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142153
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、制御システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/36 20060101AFI20230928BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20230928BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61M5/36 500
A61M5/145 500
A61M25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048883
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC03
4C066FF01
4C066LL09
4C267AA31
4C267HH21
(57)【要約】
【課題】インデフレータのシリンジ内部及びシリンジに接続される管から気泡を退避させる制御装置、制御方法、制御システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置は、医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータを撮影するカメラと、該カメラにより撮影された画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部の気泡を検知する検知部と、該検知部により気泡が検知された場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータを撮影するカメラと、
該カメラにより撮影された画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部の気泡を検知する検知部と、
該検知部により気泡が検知された場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、検知された気泡の数、前記インデフレータ内における位置、及び大きさに基づいて前記インデフレータを傾斜させるか、又は、前記インデフレータを外側から振動させるかを決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、検知された気泡が所定の第1サイズ以上である場合、前記インデフレータを前記機構により傾斜させ、検知された気泡が前記第1サイズよりも小さい第2サイズ以下である場合、前記インデフレータを前記機構により振動させると決定する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、検知された気泡の数、前記インデフレータ内における位置、及び大きさに基づいて前記インデフレータの押子を移動させるか否かを決定する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記機構の制御が実行された後、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動するリスクが低減されたか否かを、再度前記カメラにて撮影された画像に基づいて判断し、
リスクが低減されたと判断されるまで、前記機構の制御内容を続行する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、リスクが低減されたと判断されるまで、前記制御内容を再決定する
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記カメラにより撮影された画像が入力された場合に、画像に写る気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を出力するように学習された制御決定モデルに基づいて制御内容を決定する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御決定モデルは、前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部を撮影した画像と、前記インデフレータを傾斜させたか、又は、振動させたかの制御内容と、検知された気泡が回避されたか否かの評価と、の組である学習データによって学習されている、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記検知部は、前記カメラにより撮影された画像が入力された場合に、画像内に写る気泡の範囲と、気泡である確度とを出力するように学習されている気泡検知モデルに基づいて検知する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記インデフレータのシリンジを傾斜させる傾斜機構と、前記シリンジを振動させる振動機構とを更に備え、
前記制御部は、前記検知部にて気泡が検知された場合、前記傾斜機構を動作させるか、又は、前記振動機構を動作させるかの制御内容を決定し、
前記傾斜機構又は前記振動機構の動作の前後で前記気泡の位置及び大きさの変化に応じて、前記傾斜機構又は前記振動機構の動作を制御する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータを撮影するカメラにより撮影された画像を取得し、
取得した画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部に気泡が検知されるか否かを判断し、
気泡が検知されたと判断される場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する、
制御方法。
【請求項12】
医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータが載置される保持面を傾斜させる傾斜機構及び前記インデフレータを振動させる振動機構を備える第1装置と、
前記インデフレータを外部から撮影するカメラと、
前記インデフレータのシリンジ又は該シリンジの筒先に接続される管の内部に気泡が検知された場合に、前記傾斜機構又は振動機構の制御内容を決定する第2装置と、
を含み、
前記第2装置は、前記カメラにより撮影された画像から前記シリンジ、又は、前記管の内部に気泡が検知されるか否かを判断し、
気泡が検知されたと判断される場合、前記傾斜機構又は振動機構の制御内容を決定する、
制御システム。
【請求項13】
医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータの気泡を回避する機構を制御する制御装置と接続される処理部に、
前記インデフレータを撮影するカメラにより撮影された画像を取得し、
取得した画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部に気泡が検知されるか否かを判断し、
気泡が検知されたと判断される場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用カテーテルへの液剤充填に使用されるインデフレータの気泡を退避させるための制御装置、制御方法、制御システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管及び脈管等の管腔器官に存在する病変部の診断用又は治療用に医療用カテーテルが用いられている。医療用カテーテルは、造影剤、生理食塩水等の流体が充填されるルーメンを有するシャフトを備える。
【0003】
シャフトに流体を充填するために、シャフト内部の圧力が把握できるインデフレータが用いられる。診断又は治療施術の前に、医療者は、圧力を確認しながらインデフレータを操作し、流体を充填する。特許文献1には、減圧するための第1のシリンジと、プライミング液を充填するための第2のシリンジとを備え、カテーテル内を第1のシリンジで減圧してから第2のシリンジに接続して自動的にプライミング液を充填させるプライミング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-181534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療者がインデフレータを操作する場合であっても、特許文献1に開示されているような自動充填装置を用いる場合であっても、血管内に挿入するカテーテルのシャフト内の先端寄りに気泡が存在することは回避されるべきである。そのためには、インデフレータ又は自動充填装置で流体が充填されたシリンジ内部、及びシリンジからシャフトへ接続される管内に気泡が存在する場合に、気泡をシャフトからインデフレータ側へ移動させ、シャフト内への侵入を回避させる必要がある。
【0006】
本開示の目的は、インデフレータのシリンジ内部及びシリンジに接続される管から気泡を退避させる制御装置、制御方法、制御システム及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータを撮影するカメラと、該カメラにより撮影された画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部の気泡を検知する検知部と、該検知部により気泡が検知された場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する制御部とを備える。
【0008】
本開示に係る制御方法は、医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータを撮影するカメラにより撮影された画像を取得し、取得した画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部に気泡が検知されるか否かを判断し、気泡が検知されたと判断される場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する。
【0009】
本開示に係る制御システムは、医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータが載置される保持面を傾斜させる傾斜機構及び前記インデフレータを振動させる振動機構を備える第1装置と、前記インデフレータを外部から撮影するカメラと、前記インデフレータのシリンジ又は該シリンジの筒先に接続される管の内部に気泡が検知された場合に、前記傾斜機構又は振動機構の制御内容を決定する第2装置と、を含み、前記第2装置は、前記カメラにより撮影された画像から前記シリンジ、又は、前記管の内部に気泡が検知されるか否かを判断し、気泡が検知されたと判断される場合、前記傾斜機構又は振動機構の制御内容を決定する。
【0010】
本開示に係るコンピュータプログラムは、医療用カテーテルへ流体を充填させるインデフレータの気泡を回避する機構を制御する制御装置と接続される処理部に、前記インデフレータを撮影するカメラにより撮影された画像を取得し、取得した画像から前記インデフレータのシリンジ、又は、前記シリンジの筒先に接続される管の内部に気泡が検知されるか否かを判断し、気泡が検知されたと判断される場合、検知された気泡が前記管から前記医療用カテーテルへ移動することを回避するための機構の制御内容を決定する、処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インデフレーション装置の概要図である。
図2】インデフレーション装置の構成を示すブロック図である。
図3】インデフレーション装置の処理部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】画像処理の詳細手順の一例を示すフローチャートである。
図5】処理部により制御対象及び制御内容を決定する決定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】インデフレーション装置による処理の説明図である。
図7】インデフレーション装置による処理の説明図である。
図8】インデフレーション装置による処理の説明図である。
図9】第2実施形態のインデフレーション装置の構成を示すブロック図である。
図10】気泡検知モデルの概要図を示す。
図11】第2実施形態における画像処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】第3実施形態のインデフレーション装置の構成を示すブロック図である。
図13】制御決定モデルの概要図を示す。
図14】第3実施形態のインデフレーション装置の処理部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図15】第4実施形態のインデフレーションシステムの構成を示すブロック図である。
図16】第4実施形態のインデフレーションシステムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る制御装置の具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、インデフレーション装置1の概要図であり、図2は、インデフレーション装置1の構成を示すブロック図である。インデフレーション装置1は、インデフレータ8の流体が充填された部分に気泡が存在する場合に、その気泡がインデフレータ8の先へ流入しないように制御する装置である。
【0014】
インデフレーション装置1は、インデフレータ8が有するシリンジ81を保持する保持部10と、シリンジ81を撮影する第1カメラ11、シリンジ81に接続するチューブ82を撮影する第2カメラ12とを備える。インデフレーション装置1は、保持部10、第1カメラ11、及び第2カメラ12を位置決めする筐体13と、後述する処理を実行する処理部14とを更に備える。筐体13には、操作部15及び報知部16が設けられており、処理部14と内部で接続されている。
【0015】
保持部10は、筒状のシリンジ81の外筒側面の一部に沿うような曲面の保持面101を有する。保持面101は、複数種類のシリンジ81に適合するような長さを有し、長さ方向の端部には保持面101に垂直に、シリンジ81の長さ方向を固定するためのフック1011が立設されている。フック1011は、シリンジ81の筒先寄りの縮径部を抑えるように接する。保持面101において、インデフレータ8が設置された場合の押子側の端部は、多様な形状に適合するように解放されている。押子側には、フック1011に対応するシリンジ81のための押さえ具1012が筐体13の長さ方向に摺動可能に設けられており、フック1011及び押さえ具1012によってシリンジ81の長さ方向を固定する。
【0016】
第1カメラ11は、保持部10の上方にシリンジ81の透明又は半透明の外筒内側を撮影できる画角で筐体13に固定されている。第1カメラ11は、撮影中の外筒内側の画像の画像信号をリアルタイムに逐次出力する。第1カメラ11は、保持部10の側方から、シリンジ81の外筒内側を横から撮影してもよいし、側方及び上方の両方から撮影してもよい。第1カメラ11は、複数のカメラで構成されていてもよい。
【0017】
第2カメラ12は、保持部10に保持されたシリンジ81の筒先に接続された透明又は半透明のチューブ82の内面を撮影できる画角で筐体13に固定されている。第2カメラ12は、撮影中のチューブ82の内面を画角に捉えた画像の画像信号をモニタ出力する。第2カメラ12は、チューブ82の内面を側方から撮影してもよいし、側方及び上方の両方から撮影してもよい。第2カメラ12は、複数のカメラで構成されていてもよい。
【0018】
操作部15は、押ボタンである。操作部15はスタート及びストップボタンである。なお操作部15は、押ボタンに限らず、ユーザがインデフレータ8を保持部10に載置した上で処理スタートを指示できる操作機構であれば他の手段であってもよい。操作部15は、操作内容を表示するためのディスプレイを設けてもよい。
【0019】
報知部16は、ランプ又はスピーカである。報知部16は、ランプの光の色によって、インデフレータ8に対する処理の完了又は警告を報知してもよいし、スピーカから発する音によって、処理の完了又は警告を報知してもよい。報知部16は、操作部15が操作内容を示すためのディスプレイを有する場合、このディスプレイを用いてもよい。
【0020】
処理部14は、筐体13内部に固定されており、第1カメラ11及び第2カメラ12と信号線で接続されている。処理部14は、操作部15及び報知部16と接続されている。更に処理部14は、後述の傾斜機構103及び後述の振動機構104と接続されている。処理部14は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit )等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含む。処理部14は、例えばマイクロコントローラである。ROMには、処理プログラム1P、設定データ等が記憶されている。プロセッサが、この処理プログラム1Pに基づいて、操作部15からの操作に応じて、第1カメラ11及び第2カメラ12から得られる画像信号を取り込み、画像信号に基づいて後述の傾斜機構103又は振動機構104の制御処理を実行し、結果を報知部16から報知する。
【0021】
保持部10は、インデフレータ8のシリンジ81又はチューブ82に流体を充填した状態で、混入された気泡がチューブ82よりも、接続されるカテーテルへ移動することを回避するための機構を備える。第1実施形態の機構は、保持面101に傾斜を与える傾斜機構103である。傾斜機構103は例えば、図1に示すように、筐体13に固定された基部に対して保持面101の長さ方向に垂直な軸で回転可能なステージに保持面101が取り付けられて構成される。ステージの回転軸にホイール及びウォームネジを接続してウォームネジをモータにより回転する機構により、自動的に傾斜の調整が可能である。なお、傾斜の回転軸は上記に限らない。傾斜機構103はこの構成に限らず、他の方法を採用してもよい。傾斜機構103は例えば、筐体13を支柱に取り付け可能であって、その筐体13自体が支柱に対して傾斜するものであってもよい。
【0022】
第1実施形態の機構は更に、保持面101に振動を与える振動機構104である。振動機構104は、図1に示すように、保持面101に設けられた1又は複数の振動用モータで構成される。
【0023】
第1実施形態の機構は更に、載置されたインデフレータ8のシリンジ81の押子を押し引き可能な押子駆動機構105を備える。押子駆動機構105は必須ではない。押子駆動機構105は、筐体13の端に固定された基部1051と、基部1051に対して筐体13の長さ方向に移動可能なスライダー1052とを有する。スライダー1052には、押子を固定するためのクランプ1053が設けられており、スライダー1052の移動により押子の押し引きが可能である。スライダー1052は、基部1051内に設けられたモータ(図示せず)の駆動により回転する送りねじによって双方向に移動する。
【0024】
保持部10に保持されたシリンジ81の筒先から延びるチューブ82が配置される位置には、チューブ82を弾くように刺激を与えうる機構が設けられてもよい(図示せず)。
【0025】
このように構成される第1実施形態のインデフレーション装置1は、第1カメラ11及び第2カメラ12のうちの少なくとも一方を利用し、設置されたインデフレータ8のカテーテルのシャフトに接続される管内に気泡が含まれる場合、チューブ82から、接続されるカテーテルへの気泡の移動を回避する。インデフレーション装置1は、気泡の移動を回避するために、傾斜機構103で保持面101に載置されているシリンジ81に、押子側が上がるように傾斜を持たせる。またインデフレーション装置1は、気泡をできるだけまとめるために、振動機構104で保持面101を振動させ、シリンジ81内部の流体に刺激を与える。インデフレーション装置1は、気泡を移動させるために、押子駆動機構105で押子を引いて、気泡をチューブ82からシリンジ81へ引き込む。
【0026】
以下、インデフレーション装置1の処理内容を詳細に説明する。図3は、インデフレーション装置1の処理部14による処理手順の一例を示すフローチャートである。ユーザが保持面101に、造影剤等の流体が充填されたシリンジ81を載置し、フック1011及び押さえ具1012でシリンジ81を固定したことを確認し、操作部15のスタートボタンを押下する操作を実行する。インデフレーション装置1は、操作部15にてスタートボタンの押下を検知すると、以下の処理を開始する。
【0027】
処理部14は、第1カメラ11及び第2カメラ12それぞれから画像を取得する(ステップS101)。ステップS101において処理部14は、第1カメラ11からモニタ出力されている画像信号から画像を任意のタイミングでキャプチャ(取得)し、第2カメラ12から出力されている画像信号から任意のタイミングで画像をキャプチャ(取得)できる。
【0028】
処理部14は、取得した画像に対し、気泡の有無、気泡の大きさ及び位置を検知するための画像処理を実行する(ステップS102)。画像処理の詳細は後述する。
【0029】
処理部14は、画像処理の結果、気泡が検知されたか否かを判断する(ステップS103)。
【0030】
気泡が検知されたと判断された場合(S103:YES)、処理部14は、気泡の大きさ、又は位置に基づき、傾斜機構103及び振動機構104のうちのいずれかの制御対象と、その制御内容とを決定する処理を実行する(ステップS104)。決定方法については後述する。
【0031】
処理部14は、ステップS104で決定した制御対象に対し、決定した制御内容を実行させる(ステップS105)。
【0032】
処理部14は、ステップS105の制御内容の実行中に、第1カメラ11及び第2カメラ12それぞれから画像を取得し(ステップS106)、逐次、気泡の有無、気泡の大きさ及び位置を検知するための画像処理を実行する(ステップS107)。ステップS106で取得した画像に対する画像処理の結果、ステップS105の処理後に、ステップS103で検知されていた気泡がチューブ82から、接続されるカテーテルへ移動するリスクは、十分に低減されたか否かを判断する(ステップS108)。
【0033】
ステップS106において処理部14は、モニタ出力されている画像信号の画像を連続的に画像処理することにより、移動する気泡の、連続画像に亘る移動を認識できる。
【0034】
ステップS108において処理部14は、第2カメラ12から取得される画像、即ち、チューブ82の画像に気泡が検知されている場合、リスクが高く、リスクは十分に低減されていないと判断する。シリンジ81の画像に気泡が検知されていない場合であっても、チューブ82の画像に気泡が検知されている場合、リスクは低減されていないと判断される。
【0035】
ステップS108において処理部14は、第1カメラ11から取得される画像からも、第2カメラ12から取得される画像からも、気泡が検知されない場合、リスクは十分に検知されたと判断する。この場合、気泡を除去するための空気溜まりが設けられていることが前提になる。処理部14は、第2カメラ12から取得される画像から、気泡が検知されず、且つ、第1カメラ11から取得される画像からは気泡が検知された場合、検知された気泡が、所定数以下の気泡にまとめられて十分に大きく、押子側に位置している場合、リスクは十分に低減されたと判断する。
【0036】
リスクが十分に低減されたと判断された場合(S108:YES)、処理部14は、インデフレーション装置1の制御の完了を報知部16から報知し(ステップS109)、処理を終了する。
【0037】
ステップS108でリスクが十分に低減されていないと判断された場合(S108:NO)、処理部14は、リスク低減が困難であるか否かを判断する(ステップS110)。ステップS110において処理部14は、ステップS108でリスクが十分に低減されていないと判断されるケースが、ステップS101の処理から所定回数以上、続いている場合、困難であると判断する。処理部14は、所定の実行回数以上、傾斜機構103及び振動機構104のうちの少なくともいずれか一方を実行しても、気泡が押子側へ移動していないと判断された場合、困難であると判断する。
【0038】
リスク低減が困難であると判断された場合(S110:YES)、処理部14は、警告を報知部16から報知し(ステップS111)、処理を終了する。ステップS111において処理部14は、報知部16のランプを警告色で点灯するか、または、スピーカを用いて警告音を発してもよいし、操作部15のディスプレイに警告文を表示させてもよい。
【0039】
リスク低減が困難でないと判断された場合(S110:NO)、処理部14は、処理をステップS105へ戻して制御内容を続行する。処理部14は、再度ステップS101から処理を実行してもよい。
【0040】
ステップS103で気泡が検知されないと判断された場合(S103:NO)、処理部14は、処理を終了する。
【0041】
画像処理について詳細を説明する。図4は、画像処理の詳細手順の一例を示すフローチャートである。処理部14は、以下に示す処理手順を第1カメラ11及び第2カメラ12から取得する画像それぞれに対して実行する。処理部14は、少なくとも、第1カメラ11から取得するシリンジ81の画像に対して以下の処理を実行する。
【0042】
処理部14は、取得した画像に対し、ノイズ除去、エッジ処理等の事前処理を実行した後に(ステップS201)、気泡のパターンとの比較を実行する(ステップS202)。処理部14は、比較結果に基づき、パターン認識と設定データとによって気泡の数、大きさ及び気泡の画像内の位置を決定し(ステップS203)、処理を終了する。
【0043】
処理部14は、ステップS203において、画像内に複数の気泡が存在する場合には、各々の気泡に識別データを割り当て、各識別データに対応付けて大きさ及び位置を決定する。処理部14は、ステップS203において複数の気泡が固まっている場合にはクラスターとして識別データを割り当ててもよい。
【0044】
処理部14は、ステップS203において、第1カメラ11から取得した画像については、シリンジ81の径の設定を受け付けるか、または、シリンジ81の側面に付されている目盛によって寸法の絶対値を特定してもよい。処理部14は、予めインデフレータ8の種別に応じて寸法データを記憶しておき、種別の選択を受け付け、選択された種別に対応付けられている寸法データから、画像内におけるシリンジ81の太さ(画素数)と実寸との対応関係を決定し、その対応関係を利用して気泡の大きさを決定してもよい。第2カメラ12から取得した画像についても、チューブ82の径の設定を受け付けるとよい。
【0045】
処理部14は、ステップS203において、大きさをミリメートル単位の実寸で決定してもよいが、画素数単位で決定してもよい。
【0046】
図5は、処理部14により制御対象及び制御内容を決定する決定処理の一例を示すフローチャートである。
【0047】
処理部14は、第1カメラ11から得られる画像に対する画像処理の結果から、シリンジ81内における気泡の数を取得し(ステップS401)、気泡の数が所定数以上であるか否かを判断する(ステップS402)。
【0048】
気泡の数が所定数以上であると判断された場合(S402:YES)、処理部14は、気泡を1つにまとめて移動させるべく、振動機構104を制御対象と決定する(ステップS403)。ステップS403において処理部14は、気泡を移動させるために、傾斜機構103も制御対象に加えるか、又は減圧(若しくは加圧)のために押子駆動機構105を制御対象に加えるように決定する。処理部14は、処理を次のステップS404へ進める。
【0049】
気泡の数が所定数未満であると判断された場合(S402:NO)、処理部14は、ステップS403をスキップして処理をステップS404へ進める。
【0050】
ステップS404において処理部14は、第1カメラ11から得られる画像に対する画像処理の結果から、シリンジ81内における気泡の大きさを取得する(ステップS404)。
【0051】
処理部14は、最も大きい気泡の大きさが第1所定サイズ以上であるか否かを判断する(ステップS405)。第1サイズは例えば、5ミリメートル等比較的大きな気泡のサイズである。第1サイズは、実寸のみならず画素数で予め定められていてもよい。
【0052】
最も大きい気泡の大きさが所定の第1サイズ以上であると判断された場合(S405:YES)、処理部14は、傾斜機構103を制御対象と決定し、制御内容を所定の第1角度以上傾斜させると決定する(ステップS406)。所定の第1角度は例えば30度など比較的大きな角度である。
【0053】
ステップS405にて最も大きい気泡の大きさが所定の第1サイズ未満であると判断された場合(S405:NO)、処理部14は、ステップS406の処理をスキップして処理をステップS407へ進める。
【0054】
ステップS407では処理部14は、最も大きい気泡の大きさが所定の第2サイズ以下であるか否かを判断する(ステップS407)。第2サイズは、所定の第1サイズよりも小さく、例えば2ミリメートル等比較的小さな気泡のサイズである。第2サイズについても実寸のみならず画素数で定められていてもよい。
【0055】
最も大きい気泡の大きさが所定の第2サイズ以下であると判断された場合(S407:YES)、傾斜で移動することが期待できないので、処理部14は、振動機構104及び押子駆動機構105を制御対象と決定する(ステップS408)。ステップS408において処理部14は、振動機構104も制御対象としてもよい。
【0056】
ステップS407にて最も大きい気泡の大きさが所定の第2サイズ超であると判断された場合(S407:NO)、処理部14は、ステップS408の処理をスキップして処理をステップS409へ進める。
【0057】
ステップS409において処理部14は、制御対象が未決定であるか否かを判断する(ステップS409)。ステップS409では、制御対象が未決定である場合は即ち、気泡の数が所定数未満であり、且つ、気泡の大きさが第1サイズ未満、且つ、第2サイズ超である。この場合、処理部14は、傾斜機構103及び振動機構104の両方を制御対象と決定し、所定の第2角度傾斜させると決定する(ステップS410)。このとき傾斜機構103の第2角度は、所定の第1角度よりも小さい角度であってよいし、第1角度以上であってもよい。
【0058】
処理部14は、保持面101にシリンジ81の表面を弾く機構を有している場合、その機構を制御対象と決定してもよい。
【0059】
ステップS409にて制御対象が決定済みであると判断される場合も(S409:NO)、制御対象は傾斜機構103及び振動機構104の両方の場合もある。この場合、処理部14は、そのまま処理を終了する。
【0060】
処理部14は、図5のフローチャートに示した処理手順に、第2カメラ12から得られる画像から気泡の数及び大きさに対する処理を加えてもよい。第1実施形態では、チューブ82そのものに対する傾斜機構103及び振動機構104は有さないため、図5のフローチャートに示した処理では、制御対象及び制御内容を決定するために直接的に第2カメラ12から得られるチューブ82の画像を使用していない。しかしながら、チューブ82内に気泡が検知されており、且つシリンジ81内に気泡が検知されていない場合、ステップS409にて制御対象が未決定となる。この場合、処理部14は、傾斜機構103及び振動機構104の両方を制御対象として決定する。ここで、チューブ82内に検知された気泡の大きさが、第1サイズ以上に大きい場合には傾斜機構103の傾斜角度を所定の第1角度程度の比較的大きい角度とし、且つ、振動機構104を振動させて刺激を与えることにより、チューブ82内の気泡がシリンジ81内部へ移動することが期待できる。チューブ82内の気泡が第2サイズ以下で小さい場合、処理部14は、振動機構104を制御対象として必須とし、チューブ82を弾く機構を備えている場合、この機構を制御対象と決定する。気泡が小さく傾斜機構103で傾斜させても移動しない場合、処理部14は、押子駆動機構105を制御対象と決定し、押子を引いて減圧させて気泡を移動させることを制御内容として決定するとよい。
【0061】
図5のフローチャートを参照して説明した「第1サイズ」「第2サイズ」「第1角度」等は、インデフレーション装置1の出荷前の試験にて設定されるとよい。多様なインデフレータ8に対して試験し、気泡の数及び大きさの様々な条件で、傾斜機構103及び振動機構104を動作させた場合の気泡の移動量、気泡のまとまり方のデータをとって集計した上で、第1サイズ、第2サイズ、及び第1角度、振動の周波数等が決定されるとよい。
【0062】
図6図8は、インデフレーション装置1による処理の説明図である。図6図8は、第1カメラ11及び第2カメラ12にて撮影される画像の内容例を線図で示し、気泡の移動と、気泡の状態を表す。図6に示す画像例では、チューブ82に小さな気泡が残留しており、シリンジ81内にも比較的小さな気泡が複数存在していることが検知される。この場合、インデフレーション装置1は、チューブ82内の気泡をシリンジ81内に移動させ、且つ、気泡をまとめて移動しやすくなるように、傾斜機構103、振動機構104及び押子駆動機構105を制御する。
【0063】
図7に示す画像は、処理部14が、図6に示した画像に対して傾斜機構103及び振動機構104を制御対象として決定し、制御を実行した後の画像の内容例である。図7に示すように、気泡は大きくまとまり、シリンジ81内の押子側に移動している。図8は、図7に示す画像から更に時間が進んだ後の画像の内容例を示す。図8において気泡は、押子まで到達してまとまりつつある。小さな気泡もまとまりながら、押子寄りに進むことが示されている。チューブ82に存在していた気泡は、1つにまとまり、シリンジ81の筒先の押子寄りの位置まで到達している。チューブ82を撮影している第2カメラ12により撮影された画像から、気泡が検知されていないと判断されるようになると、気泡がチューブ82から、接続されるカテーテルへ移動するリスクが低減する。
【0064】
処理部14は、図8の内容例よりも更に時間が進み、シリンジ81の筒先に存在していた気泡がシリンジ81の外筒の押子寄りの位置まで移動することを確認すると、気泡がチューブ82から、接続されるカテーテルへ移動するリスクが十分に低減した、と判断する。これにより、ユーザがインデフレータ8をインデフレーション装置1に載置して操作部15を操作するという容易な動作によって、インデフレータ8の内部の気泡を、リスクが十分に低い程度に移動させることが可能である。
【0065】
(第2実施形態)
第1実施形態では、図4のフローチャートを参照して説明したように、パターン認識によって気泡を検出した。第2実施形態では、画像における物体検知の学習モデルを用いて気泡を検知する。
【0066】
図9は、第2実施形態のインデフレーション装置1の構成を示すブロック図である。インデフレーション装置1は、処理部14内部のROMに、処理プログラム1Pに加えて、気泡検知モデル1Mを記憶している。第2実施形態のインデフレーション装置1の構成は、気泡を検知する気泡検知モデル1Mを使用して画像処理を実行する以外は、第1実施形態におけるインデフレーション装置1の構成と同様であるから、共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
図10は、気泡検知モデル1Mの概要図を示す。気泡検知モデル1Mは、入力された画像内に対象の物体が存在するか否か、存在する場合、画像内のどこに存在するかを検知するニューラルネットワークを深層学習によって学習して作成されるモデルである。気泡検知モデル1Mは、R-CNN(Regional Convolutional Neural Network)、YOLO(You Only Look Once)、若しくはSSD(Single Shot MultiBox Detector)、又は、これらのモデルをベースにしたモデルである。気泡検知モデル1Mは、その他、エッジ抽出処理等の処理との統合モデルをベースにしたものであってもよい。
【0068】
気泡検知モデル1Mは、画像が入力された場合に、その画像に検知対象である気泡が写っている範囲を示す座標データと、その範囲に気泡が写っている確度とを出力するように学習されている。具体的には、気泡検知モデル1Mは、インデフレータ8のシリンジ81内に気泡が存在する場合に撮影され、事前に気泡の位置をアノテーション済みの画像により、パラメータを学習済みである。気泡を含むインデフレータ8をインデフレーション装置1に設置した状態で、第1カメラ11と同一の画角で撮影した画像に、アノテーションを施したデータによって学習されることが好ましい。しかしながら、これに限らず、多様なインデフレータの気泡を含む画像によって学習されてもよい。また気泡検知モデル1Mは、インデフレータ8のチューブ82内に気泡が存在する場合に撮影され、事前に気泡の位置をアノテーション済みの画像でも学習されてよい。気泡検知モデル1Mは、シリンジ81内を撮影した画像用のモデルと、チューブ82の内部を撮影した画像用のモデルとに分別して学習されてもよい。
【0069】
このように学習された気泡検知モデル1Mを用いた場合の処理について説明する。第2実施形態においてもインデフレーション装置1の処理部14は、図3のフローチャートに示した処理手順を実行する。そしてステップS102及びステップS107の処理について、図4のフローチャートに示した処理手順ではなく、以下に説明する気泡検知モデル1Mを用いた処理を実行する。図11は、第2実施形態における画像処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0070】
処理部14は、取得した画像(第1カメラ11及び第2カメラ12のいずれかから取得した画像)に対し、ノイズ除去等の事前処理を実行する(ステップS211)。
【0071】
処理部14は、事前処理後の画像を気泡検知モデル1Mへ入力する(ステップS212)。処理部14は、気泡検知モデル1Mから出力される座標データと確度とを、気泡の数に応じて取得する(ステップS213)。
【0072】
処理部14は、確度が所定値以上の座標データに基づき、取得した画像内の気泡の大きさ及び気泡の画像内の位置を、気泡の数に応じて決定し(ステップS214)、処理を終了する。
【0073】
処理部14は、ステップS214において、画像内に複数の気泡が存在する場合には、各々の気泡に識別データを割り当て、各識別データに対応付けて大きさ及び位置を決定する。気泡の大きさについては第1実施形態におけるステップS203の処理の説明と同様に、画像内の画素数と実寸との対応関係に基づいて決定されてもよいし、画素単位で決定されてもよい。
【0074】
(第3実施形態)
第3実施形態では、制御内容の決定についても学習モデルを用いる。図12は、第3実施形態のインデフレーション装置1の構成を示すブロック図である。インデフレーション装置1は、処理部14内部のROMに、処理プログラム1Pに加えて制御決定モデル2Mを記憶している。第3実施形態のインデフレーション装置1の構成は、画像に基づいて制御内容を決定する制御決定モデル2Mを使用して画像処理を実行する以外は、第1実施形態におけるインデフレーション装置1の構成と同様であるから、共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
図13は、制御決定モデル2Mの概要図を示す。制御決定モデル2Mは、画像が入力された場合、画像内に検知される気泡の数、大きさ及び位置に応じた制御内容、即ち傾斜機構103、振動機構104及び押子駆動機構105のいずれを動作させるかを出力するモデルである。制御決定モデル2Mは、画像の特徴量を出力する畳み込み層等を含む。制御決定モデル2Mは、画像の特徴量と、画像に写る気泡の数、位置に応じたその気泡の回避方法との関係を学習して作成されるモデルである。制御決定モデル2Mは、第2実施形態における気泡の位置と確度とを出力するように学習された気泡検知モデル1Mを含んでもよい。
【0076】
制御決定モデル2Mは、シリンジ81及び/又はチューブ82に気泡が含まれるインデフレータ8を撮影した画像と、そのインデフレータ8を傾斜機構103で傾斜させた場合の気泡の状態変化、又は、振動機構104によって振動させた場合の気泡の状態変化とによって学習される。学習用データは、気泡が含まれるインデフレータ8を撮影した画像と、そのインデフレータ8を傾斜機構103で傾斜させたという制御内容のタグに、気泡の状態に改善が見られたか否かの評価「改善:1/改善無:0」を付与したデータとの組を含む。その他の制御内容のタグが付された画像も学習用データに含まれる。タグは、「傾斜」、「振動」、「押子駆動」、「傾斜及び振動」、「振動及び押子駆動」、「押子駆動及び傾斜」、「全部」という7通りの制御内容のいずれに相当するかを示すデータである。改善が見られたか否かは、気泡が押子側に移動したか否か、及び、気泡が集まったか否かの内のいずれか一方又は両方の結果に対応する。学習用データは更に、気泡が含まれるインデフレータ8を撮影した画像と、そのインデフレータ8を振動機構104で振動させた場合に、気泡の状態に改善が見られたか否かの評価「改善:1/改善無:0」を付与したデータとの組を含む。学習用データはつまり、画像と、制御内容のタグ「傾斜/振動/押子駆動/傾+振/振+押/押+傾/全部」と、その評価「1/0」とのセットである。
【0077】
制御決定モデル2Mは、図13に示すように、制御内容が(傾斜,振動,押子駆動,傾+振,振+押,押+傾,全部)のいずれが改善させるかの確度の列(0~1,0~1,0~1,0~1,0~1,0~1,0~1)を出力するようにしてある。制御決定モデル2Mは、画像に写るインデフレータ8を「傾斜」させて改善が見られた画像を入力した場合には(1,0,0,0,0,0,0)に近い出力が得られるように、そして、画像に写るインデフレータ8を振動させて改善が見られた画像を入力した場合には(0,1,0,0,0,0)に近い出力が得られるように、中間層のパラメータを学習する。同様にして制御決定モデル2Mは、画像に写るインデフレータ8を「傾斜」も「振動」もさせて改善が見られた画像を入力した場合には(0,0,0,1,0,0,0)に近い出力が得られるように、学習する。制御決定モデル2Mは、改善が見られない画像、即ち出力が(0,0,0,0,0,0,0)である画像についても学習するとよい。これにより、制御決定モデル2Mは、画像が入力された場合に確度の列(例えば、(0.8,0.2,0,0,0,0,0)等)を出力するように学習される。
【0078】
制御決定モデル2Mの学習方法はこれに限られず、画像と、最も気泡に改善が見られた制御内容との組み合わせを含む学習用データによる学習方法であれば、公知の他の技術を採用してもよい。
【0079】
図14は、第3実施形態のインデフレーション装置1の処理部14による処理手順の一例を示すフローチャートである。図14のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の図3のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0080】
処理部14は、画像処理の結果、気泡が検知されたと判断された場合(S103:YES)、ステップS101で取得した画像を制御決定モデル2Mへ入力する(ステップS124)。処理部14は、制御決定モデル2Mから出力される制御内容を取得し(ステップS125)、取得した制御内容に基づき、制御対象(傾斜機構103、振動機構104及び押子駆動機構105のいずれか1つ、2つ又は全部)を制御し(ステップS126)、処理をステップS106へ進める。
【0081】
これにより、インデフレータ8に存在する気泡が、インデフレーション装置1の傾斜機構103、振動機構104及び押子駆動機構105のいずれか1つ、2つ又は全部を実際に動作させた場合の結果に基づいて制御内容が決定される。
【0082】
なお、制御決定モデル2Mは、気泡検知と一体化し、気泡が検知されない場合には、(0,0,0,0,0,0,0)に近い出力が得られるように学習されてもよい。この場合、図14のフローチャートに示した処理手順のうち、ステップS102の時点で制御決定モデル2Mへ入力し、ステップS103の気泡が検知されたか否かの判断処理の代わりに、制御内容が出力されたか否かを判断し、制御内容が出力されない、即ち制御決定モデル2Mから制御内容を決定できない場合には、処理を終了させる、としてもよい。
【0083】
(第4実施形態)
第1実施形態から第3実施形態のインデフレーション装置1は、処理部14が、第1カメラ11及び第2カメラ12から取得した画像に対して画像処理、気泡検知、制御内容決定等の分析処理と、傾斜機構103、振動機構104及び押子駆動機構105を制御する制御処理と、の両方を実行するものとして説明した。しかしながら、分析処理については外部の演算資源を用いてもよい。
【0084】
図15は、第4実施形態のインデフレーションシステム100の構成を示すブロック図である。インデフレーションシステム100は、インデフレーション装置3と、制御装置4とを含む。第4実施形態のインデフレーション装置3は、カメラを備えず、通信部37を備える点以外は、第1実施形態のインデフレーション装置1と同様のハードウェア構成を有する。インデフレーション装置3は、処理部34、操作部35、報知部36、傾斜機構303、振動機構304を備える。処理部34による処理内容以外は、第1実施形態のインデフレーション装置1の操作部15、報知部16、傾斜機構103、振動機構104、及び押子駆動機構105と同様であるから対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0085】
インデフレーション装置3が備える通信部37は、近距離無線通信を実現する無線通信モジュールである。通信部37により、制御装置4と通信が可能である。通信部37は、近距離無線通信に限らず、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信用のモジュールであってもよい。
【0086】
制御装置4は、ユーザが所持するスマートフォン、タブレット端末等の可搬型の通信端末である。制御装置4は、処理部40と、記憶部41と、通信部42と、カメラ43と、表示部44と、操作部45とを備える。
【0087】
処理部40は、CPU、MPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)等である。処理部40は、記憶部41に記憶されている処理プログラム4Pを読み出して実行することにより、後述するようにインデフレーション装置1の制御内容を示す制御データを作成する。
【0088】
記憶部41は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶部41は、処理部40が読み出す処理プログラム4Pと、設定データ等を記憶する。設定データは、気泡検知用のデータ、第1サイズ、第2サイズ等の設定データである。
【0089】
通信部42は、インデフレーション装置3と通信するための無線通信モジュールである。通信部42は、インデフレーション装置3の通信部37と対応する通信規格により通信を実現できるモジュールであれば、無線/有線を問わない。
【0090】
カメラ43は、制御装置4の筐体(図示せず)に外向けに設けられたレンズを有し、制御装置4のユーザが写真及び動画を撮影できるモジュールである。カメラ43は、起動すると、画角内に存在する物体の画像信号をモニタ出力し、処理部40は、カメラ43からの画像信号から、逐次画像をキャプチャ(取得)可能である。
【0091】
表示部44は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイである。表示部44は例えば、タッチパネル内蔵型ディスプレイである。処理部40は表示部44に、処理プログラム3Pに基づき、カメラ43からのモニタ出力画面を含む操作画面を表示する。
【0092】
操作部45は、例えば表示部44内蔵のタッチパネルである。操作部45は、物理ボタンであってもよい。操作部45は、音声入力部であってもよい。
【0093】
このように構成されるインデフレーションシステム100では、以下のような手順でインデフレータ8のシリンジ81又はチューブ82内に存在する気泡が、チューブ82から先に移動するリスクを低減させることができる。ユーザは、インデフレーション装置1の保持面101に、造影剤、又は生理食塩水等の流体が充填されたシリンジ81を載置し、フック1011及び押さえ具1012でシリンジ81を固定したことを確認する。ユーザは、処理プログラム4Pを起動し、操作画面に含まれるカメラ43からのモニタ出力に基づいてシリンジ81及びチューブ82に対してカメラ43を位置決めする。ユーザがインデフレーション装置3の操作部35のスタートボタンを押下し、制御装置4の操作部45にて操作画面中のスタートボタンを選択すると、インデフレーションシステム100は、以下の処理を開始する。
【0094】
図16は、第4実施形態のインデフレーションシステム100による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0095】
インデフレーション装置3の処理部34は、制御装置4との通信を開始し(ステップS301)、待機する。
【0096】
制御装置4の処理部40は、カメラ43から画像を取得し(ステップS501)、取得した画像に対し、気泡の有無、気泡の大きさ及び位置を検知するための画像処理を実行する(ステップS502)。画像処理の詳細は、第1実施形態の図4のフローチャートに示した処理手順と同様である。
【0097】
処理部40は、画像処理の結果、気泡が検知されたか否かを判断する(ステップS503)。
【0098】
気泡が検知されたと判断された場合(S503:YES)、処理414は、気泡の大きさ、又は位置に基づき、インデフレーション装置3の傾斜機構303、振動機構304及び押子駆動機構305のうちのいずれかの制御対象と、その制御内容とを決定する処理を実行する(ステップS504)。ステップS504の決定方法については、第1実施形態の図5のフローチャートに示した処理手順と同様である。
【0099】
処理部40は、ステップS504で決定された制御対象及び制御内容を含む制御データをインデフレーション装置3へ送信する(ステップS505)。
【0100】
待機中であったインデフレーション装置3は、制御対象及び制御内容を含む制御データを受信すると(ステップS302)、処理部34が、制御データに基づき傾斜機構303、振動機構304及び押子駆動機構305の内の1つ、2つ又は全部を動作させる制御を実行する(ステップS303)。処理部34は、制御実行を通知する(ステップS304)。
【0101】
制御装置4の処理部40は、制御実行の通知を受信すると(ステップS506)、インデフレータ8を撮影しているカメラ43から再度画像を取得し(ステップS507)、気泡の有無、気泡の大きさ及び位置を検知するための画像処理を実行する(ステップS508)。
【0102】
ステップS507で取得した画像に対する画像処理の結果、ステップS503で検知されていた気泡がチューブ82から先へ移動するリスクは、十分に低減されたか否かを判断する(ステップS509)。ステップS509の判断処理は、第1実施形態におけるステップS108の処理内容と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0103】
リスクが十分に低減されたと判断された場合(S509:YES)、処理部40は、インデフレーション装置3の制御完了をインデフレーション装置3へ通知しつつ、操作画面に制御完了を表示し(ステップS510)、処理を終了する。
【0104】
ステップS509でリスクが十分に低減されていないと判断された場合(S509:NO)、処理部40は、リスク低減が困難であるか否かを判断する(ステップS511)。ステップS511における処理は、第1実施形態におけるステップS110の処理内容と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0105】
リスク低減が困難であると判断された場合(S511:YES)、処理部40は、警告をインデフレーション装置3へ通知しつつ、操作画面に警告を表示し(ステップS512)、処理を終了する。
【0106】
リスク低減が困難でないと判断された場合(S511:NO)、処理部40は、処理をステップS505へ戻して同様の制御内容による制御を続行させる。この場合処理部40は、再度ステップS501から処理を実行してもよい。
【0107】
インデフレーション装置3では、制御完了の通知を受信し、これに応じて報知部36から報知し(ステップS305)、通信部37による通信を終了し(ステップS306)、処理を終了する。
【0108】
ステップS503で気泡が検知されないと判断された場合(S503:NO)、制御装置4の処理部40は、処理をステップS510へ進める。この場合も、インデフレーション装置3の処理部34は、制御完了の通知を受信し、通知内容を報知部36から報知し(S305)、通信を終了して(S306)、処理を終了する。
【0109】
このように、第4実施形態のインデフレーションシステム100でも、第1実施形態のインデフレーション装置1による処理内容と同様の処理が実行可能である。インデフレーションシステム100では、同様にして、インデフレーション装置3と制御装置4とで分散して第2実施形態又は第3実施形態のインデフレーション装置1による処理内容と同様の処理を実行可能である。
【0110】
本実施形態では、冠動脈の治療に用いられ、造影剤の注入が必要な治療用カテーテルを例に説明した。しかしながら、適用対象はこれに限らず、同じく造影剤の空気混入を防いだ注入が必要な診断用カテーテルを対象としてもよいし、管腔器官は血管に限らない。
【0111】
上述のように開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1,3 インデフレーション装置
11,31 第1カメラ
12,32 第2カメラ
14,34 処理部
10 保持部
103,303 傾斜機構
104,304 振動機構
1P,3P 処理プログラム
4 制御装置
40 処理部
43 カメラ
4P 処理プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16