IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

<>
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図1
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図2
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図3
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図4
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図5
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図6
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図7
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図8
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図9
  • 特開-基板処理装置及び基板処理方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142160
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048897
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】林 宗儒
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 晃久
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝佳
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157BH11
5F157DB02
5F157DB45
(57)【要約】
【課題】処理工程の増加を抑制しつつ、基板の端面部以外の部分に余分な撥液剤が塗布されることを抑制できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置100は、基板保持部13と、塗布部材151とを備える。基板保持部13は、基板Wを保持しつつ基板Wを回転させる。塗布部材151は、回転中の基板Wの径方向RD外側の端面部51に接触することで、基板Wを処理する処理液を弾くことの可能な撥液物質を含む撥液剤を、基板Wの端面部51に塗布する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しつつ前記基板を回転させる基板保持部と、
回転中の前記基板の径方向外側の端面部に接触することで、前記基板を処理する処理液を弾くことの可能な撥液物質を含む撥液剤を、前記基板の前記端面部に塗布する塗布部材と
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記塗布部材は、自転しながら、前記撥液剤を前記基板の前記端面部に塗布する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板の前記端面部は、表面縁部と、表面肩部と、側面部と、裏面肩部と、裏面縁部とを有し、
前記表面縁部は、前記基板の表面と裏面とのうちの前記表面側において、前記基板の本体よりも径方向外側に位置し、
前記表面肩部は、前記表面側において、前記表面縁部よりも径方向外側に位置し、
前記裏面縁部は、前記裏面側において、前記基板の前記本体よりも径方向外側に位置し、
前記裏面肩部は、前記裏面側において、前記裏面縁部よりも径方向外側に位置し、
前記側面部は、前記基板の径方向の最も外側に位置し、
前記塗布部材は、前記側面部に対して前記撥液剤を塗布する、請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記塗布部材は、前記表面肩部、前記側面部、及び、前記裏面肩部に対して、前記撥液剤を塗布する、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記塗布部材の少なくとも一部は、前記基板の前記端面部に存在するノッチに進入し、前記ノッチの底点に接触する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記塗布部材を前記基板の径方向内側に向けて付勢する付勢機構を更に備える、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記塗布部材に対して前記撥液剤を供給する撥液剤供給部を更に備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を保持しつつ前記基板を回転させる工程と、
回転中の前記基板の径方向外側の端面部に塗布部材を接触させることで、前記基板を処理する処理液を弾くことの可能な撥液物質を含む撥液剤を、前記基板の前記端面部に塗布する工程と
を含む、基板処理方法。
【請求項9】
前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記塗布部材を自転させながら、前記撥液剤を前記基板の前記端面部に塗布する、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板の前記端面部は、表面縁部と、表面肩部と、側面部と、裏面肩部と、裏面縁部とを有し、
前記表面縁部は、前記基板の表面と裏面とのうちの前記表面側において、前記基板の本体よりも径方向外側に位置し、
前記表面肩部は、前記表面側において、前記表面縁部よりも径方向外側に位置し、
前記裏面縁部は、前記裏面側において、前記基板の前記本体よりも径方向外側に位置し、
前記裏面肩部は、前記裏面側において、前記裏面縁部よりも径方向外側に位置し、
前記側面部は、前記基板の径方向の最も外側に位置し、
前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記側面部に対して前記撥液剤を塗布する、請求項8又は請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記表面肩部、前記側面部、及び、前記裏面肩部に対して、前記撥液剤を塗布する、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記塗布部材の少なくとも一部は、前記基板の前記端面部に存在するノッチに進入し、前記ノッチの底点に接触する、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記塗布部材を前記基板の径方向内側に向けて付勢する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記塗布部材に対して前記撥液剤を供給する工程を更に含む、請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された基板処理装置は、周縁部用処理ヘッドを備える。周縁部用処理ヘッドは、スピンチャックに保持される基板の表面周縁部に対する処理を行う。周縁部用処理ヘッドは、吸引管を備える。吸引管は、表面周縁部上の余分な処理液を吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-70023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の基板処理装置では、吸引管による吸引工程が必須となる。従って、処理工程が増加する。一方、本願の発明者は、処理液を弾くことの可能な撥液剤を、基板の径方向の端面部に塗布する処理に着目した。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理工程の増加を抑制しつつ、基板の端面部以外の部分に余分な撥液剤が塗布されることを抑制できる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、基板処理装置は、基板保持部と、塗布部材とを備える。基板保持部は、基板を保持しつつ前記基板を回転させる。塗布部材は、回転中の前記基板の径方向外側の端面部に接触することで、前記基板を処理する処理液を弾くことの可能な撥液物質を含む撥液剤を、前記基板の前記端面部に塗布する。
【0007】
本発明の一態様においては、前記塗布部材は、自転しながら、前記撥液剤を前記基板の前記端面部に塗布することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様においては、前記基板の前記端面部は、表面縁部と、表面肩部と、側面部と、裏面肩部と、裏面縁部とを有することが好ましい。前記表面縁部は、前記基板の表面と裏面とのうちの前記表面側において、前記基板の本体よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記表面肩部は、前記表面側において、前記表面縁部よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記裏面縁部は、前記裏面側において、前記基板の前記本体よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記裏面肩部は、前記裏面側において、前記裏面縁部よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記側面部は、前記基板の径方向の最も外側に位置することが好ましい。前記塗布部材は、前記側面部に対して前記撥液剤を塗布することが好ましい。
【0009】
本発明の一態様においては、前記塗布部材は、前記表面肩部、前記側面部、及び、前記裏面肩部に対して、前記撥液剤を塗布することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様においては、前記塗布部材の少なくとも一部は、前記基板の前記端面部に存在するノッチに進入し、前記ノッチの底点に接触することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様においては、基板処理装置は、付勢機構を更に備えることが好ましい。付勢機構は、前記塗布部材を前記基板の径方向内側に向けて付勢することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様においては、基板処理装置は、撥液剤供給部を更に備えることが好ましい。撥液剤供給部は、前記塗布部材に対して前記撥液剤を供給することが好ましい。
【0013】
本発明の他の局面によれば、基板処理方法は、基板を保持しつつ前記基板を回転させる工程と、回転中の前記基板の径方向外側の端面部に塗布部材を接触させることで、前記基板を処理する処理液を弾くことの可能な撥液物質を含む撥液剤を、前記基板の前記端面部に塗布する工程とを含む。
【0014】
本発明の一態様においては、前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記塗布部材を自転させながら、前記撥液剤を前記基板の前記端面部に塗布することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記基板の前記端面部は、表面縁部と、表面肩部と、側面部と、裏面肩部と、裏面縁部とを有することが好ましい。前記表面縁部は、前記基板の表面と裏面とのうちの前記表面側において、前記基板の本体よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記表面肩部は、前記表面側において、前記表面縁部よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記裏面縁部は、前記裏面側において、前記基板の前記本体よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記裏面肩部は、前記裏面側において、前記裏面縁部よりも径方向外側に位置することが好ましい。前記側面部は、前記基板の径方向の最も外側に位置することが好ましい。前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記側面部に対して前記撥液剤を塗布することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様においては、前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記表面肩部、前記側面部、及び、前記裏面肩部に対して、前記撥液剤を塗布することが好ましい。
【0017】
本発明の一態様においては、前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記塗布部材の少なくとも一部は、前記基板の前記端面部に存在するノッチに進入し、前記ノッチの底点に接触することが好ましい。
【0018】
本発明の一態様においては、前記撥液剤を塗布する前記工程では、前記塗布部材を前記基板の径方向内側に向けて付勢することが好ましい。
【0019】
本発明の一態様においては、基板処理方法は、前記塗布部材に対して前記撥液剤を供給する工程を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、処理工程の増加を抑制しつつ、基板の端面部以外の部分に余分な撥液剤が塗布されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の内部を示す平面図である。
図2】本実施形態に係る撥液剤塗布ユニットの内部を示す平面図である。
図3】本実施形態に係る撥液剤塗布ユニットの内部を示す側面図である。
図4】本実施形態に係る撥液剤塗布方法を示す図である。
図5】(a)は、本実施形態に係る基板及びブラシを示す断面図である。(b)は、本実施形態に係る基板の側面部に撥液剤が塗布された状態を示す断面図である。(c)は、本実施形態に係る基板の表面肩部、側面部、及び、裏面肩部に撥液剤が塗布された状態を示す断面図である。
図6】本実施形態に係る基板の一部を示す平面図である。
図7】本実施形態に係る基板を示す平面図である。
図8】本実施形態に係るブラシがノッチに接触している状態を示す平面図である。
図9】本実施形態に係るブラシ及びノッチを示す平面図である。
図10】本実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解を容易にするために、X軸、Y軸、及び、Z軸を適宜図示している。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、X軸及びY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。なお、「平面視」は、鉛直上方から対象を見ることを示す。また、「平面図」は、鉛直上方から対象を見たときの図面を示す。
【0023】
図1図10を参照して、本発明の実施形態に係る基板処理装置100を説明する。まず、図1を参照して、基板処理装置100を説明する。図1は、基板処理装置100の内部を示す平面図である。図1に示す基板処理装置100は、基板Wを処理する。基板Wには、例えば、複数の構造物を含むパターンが形成されている。
【0024】
基板Wは、例えば、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、電界放出ディスプレイ(Field Emission Display:FED)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、又は、太陽電池用基板である。以下、一例として、基板Wは、シリコンウェハである。
【0025】
図1に示すように、基板処理装置100は、複数のロードポートLPと、インデクサーロボットIRと、センターロボットCRと、複数の処理ユニット1と、制御装置2と、複数の流体ボックス3と、薬液キャビネット4と、撥液剤塗布ユニット5とを備える。
【0026】
ロードポートLPの各々は、複数枚の基板Wを積層して収容する。インデクサーロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサーロボットIRと処理ユニット1との間、インデクサーロボットIRと撥液剤塗布ユニット5との間、又は、処理ユニット1と撥液剤塗布ユニット5との間で基板Wを搬送する。撥液剤塗布ユニット5は、基板Wに撥液剤を塗布する。撥液剤塗布ユニット5の詳細は後述する。
【0027】
処理ユニット1の各々は、処理液によって基板Wを処理する。処理ユニット1の各々は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。具体的には、処理ユニット1は表面用ノズル7及び裏面用ノズル8を含む。表面用ノズル7は、基板Wの表面(上面)と裏面(下面)とのうち、基板Wの表面に処理液を供給して、基板Wの表面を処理する。裏面用ノズル8は、基板Wの裏面に処理液を供給して、基板Wの裏面を処理する。
【0028】
処理液は、薬液又はリンス液である。薬液は基板Wを処理するための液体である。薬液は、例えば、希フッ酸(DHF)、フッ酸(HF)、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、燐酸(H3PO4)、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、シュウ酸)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、アンモニア過酸化水素水混合液(SC1)、塩酸過酸化水素水混合液(SC2)、イソプロピルアルコール(IPA)、界面活性剤、又は、腐食防止剤である。
【0029】
リンス液は、薬液、薬液による処理後副産物、及び/又は、異物を、基板Wから洗い流すための液体である。リンス液は、例えば、脱イオン水(DIW:Deionized Water)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、または、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水である。
【0030】
所定数の処理ユニット1(図1の例では3つの処理ユニット1)が鉛直方向に積層されて1つのタワーTWを構成している。ただし、図1の例では、複数のタワーTW(図1の例では4つのタワーTW)のうち、1つのタワーTWは、1つの処理ユニット1に代えて1つの撥液剤塗布ユニット5を含む。複数のタワーTWは、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置される。なお、撥液剤塗布ユニット5の配置は、特に限定されず、例えば、撥液剤塗布ユニット5は、基板処理装置100における専用スペースに配置されていてもよいし、基板処理装置100の外部に配置されていてもよい。また、基板処理装置100は、複数の撥液剤塗布ユニット5を備えていてもよい。
【0031】
複数の流体ボックス3の各々は流体機器を収容する。複数の流体ボックス3は、それぞれ、複数のタワーTWに対応している。薬液キャビネット4は薬液を収容する。薬液キャビネット4内の薬液は、いずれかの流体ボックス3を介して、流体ボックス3に対応するタワーTWに含まれる全ての処理ユニット1に供給される。
【0032】
制御装置2は、ロードポートLP、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、処理ユニット1、流体ボックス3、薬液キャビネット4、及び、撥液剤塗布ユニット5を制御する。制御装置2は、例えば、コンピューターである。
【0033】
制御装置2は、制御部21と、記憶部22とを含む。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。記憶部22は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。具体的には、記憶部22は、半導体メモリー等の主記憶装置と、半導体メモリー、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置とを含む。記憶部22は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶部22は、非一時的コンピューター読取可能記憶媒体の一例に相当する。
【0034】
次に、図2を参照して、撥液剤塗布ユニット5を説明する。図2は、撥液剤塗布ユニット5の内部を示す平面図である。図2に示すように、撥液剤塗布ユニット5は、チャンバー11と、スピンチャック13と、撥液剤塗布機構15と、撥液剤供給部17と、液受け部19とを備える。撥液剤供給部17は、撥液剤ノズル171と、バルブ172と、配管173とを含む。制御部21は、スピンチャック13、撥液剤塗布機構15、及び、撥液剤供給部17を制御する。
【0035】
チャンバー11は略箱形状を有する。チャンバー11は、スピンチャック13、撥液剤塗布機構15、撥液剤ノズル171、及び、液受け部19を収容する。スピンチャック13は、本発明の「基板保持部」の一例に相当する。
【0036】
スピンチャック13は、基板Wを保持しつつ基板Wを回転させる。具体的には、スピンチャック13は、基板Wを略水平に保持しつつ、基板Wを回転軸線AX1の周りに回転させる。撥液剤塗布機構15は、基板Wの径方向RD外側の端面部51に撥液剤を塗布する。端面部51は、基板Wのうち回転軸線AX1の周りの略円環状の部分である。本実施形態では、径方向RDは水平方向に略平行である。また、径方向RDは、回転軸線AX1に直交する。径方向RDは、回転軸線AX1に対する径方向と捉えることもできる。なお、回転軸線AX1の周りの円周方向を周方向CDと記載する場合がある。周方向CDは、基板Wの周方向と捉えることもできる。
【0037】
撥液剤は撥液物質を含む液体である。具体的には、撥液剤は、撥液物質を含む溶液である。撥液物質は、基板Wを処理する処理液を弾くことの可能な物質である。つまり、撥液物質は、基板Wよりも処理液を弾く性質を有する物質である。撥液物質は、撥液性を有する。撥液性とは、液体を弾く性質のことである。例えば、接触角が90度以上の物質は、撥液物質である。
【0038】
撥液剤は、溶媒と、溶質としての撥液物質との混合物である。溶媒は、例えば、水である。水は、例えば、リンス液と同じ液体である。撥液物質は、例えば、高分子化合物である。撥液物質は、好ましくは、非フッ素系撥液物質である。一例ではあるが、撥液物質として、日華化学製のネオシード(登録商標)を使用できる。なお、撥液剤は、ワックスであってもよい。
【0039】
撥液物質は、例えば、撥水物質である。撥水物質は、水を弾くことの可能な物質である。つまり、撥水物質は、基板Wよりも水を弾く性質を有する物質である。撥水物質は、撥水性を有する。撥水性とは、水を弾く性質のことである。例えば、接触角が90度以上の物質は、撥水物質である。この場合の水は、例えば、リンス液と同じ液体である。撥液物質として、撥水物質を使用する場合、処理液が水溶液である場合に有効である。なお、撥液物質が撥水物質である場合は、撥液剤は撥水剤である。
【0040】
撥液物質は、例えば、シリコン系撥液物質であってもよしい、アクリル系撥液物質であってもよい。シリコン系撥液物質は、シリコン自体、および、シリコンを含む化合物に撥液性を付与する。シリコン系撥液物質は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化剤の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0041】
なお、撥液物質は、例えば、メタル系撥液物質であってもよい。メタル系撥液物質は、金属自体、および、金属を含む化合物に対して撥液性を付与する。メタル系撥液物質は、例えば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物の少なくとも一つを含む。
【0042】
具体的には、撥液剤塗布機構15は、ブラシ151を含む。ブラシ151は、本発明の「塗布部材」の一例に相当する。
【0043】
塗布位置P1において、ブラシ151は、基板Wの回転中に基板Wの径方向RD外側の端面部51に接触することで、基板Wを処理する処理液を弾くことの可能な撥液物質を含む撥液剤を、基板Wの端面部51に塗布する。従って、ノズル等によって撥液剤を基板Wに吐出する場合と比較して、基板Wの端面部51以外の部分に余分な撥液剤が塗布されることを抑制できる。加えて、余分な撥液剤を吸引する吸引工程が不要である。よって、本実施形態によれば、処理工程の増加を抑制しつつ、基板Wの端面部51以外の部分に余分な撥液剤が塗布されることを抑制できる。基板Wの端面部51以外の部分は、例えば、基板Wにおいてパターンが形成されている部分である。なお、例えば、ノズル等によって撥液剤を塗布する場合には、ノズル等は基板Wに対して離隔しているため、ノズル等から撥液剤を吐出する際に、撥液剤が基板Wの端面部51以外の部分に飛び散る可能性がある。
【0044】
塗布位置P1は、ブラシ151が基板Wの端面部51に接触する位置を示す。一方、待機位置P2は、塗布位置P1よりも径方向RD外側の位置を示す。つまり、待機位置P2は、ブラシ151が基板Wから径方向RDに離隔した位置を示す。待機位置P2の下方には、液受け部19が配置される。液受け部19は、例えば、ポットである。
【0045】
待機位置P2において、撥液剤供給部17は、ブラシ151に対して撥液剤を供給する。従って、本実施形態によれば、撥液剤をブラシ151に効果的に染み込ませることができる。
【0046】
ブラシ151は、例えば、略円柱形状を有する。ブラシ151は、例えば、弾性を有する。ブラシ151は、例えば、多孔質物質を含む。この場合、例えば、ブラシ151は、スポンジ状であってもよい。ブラシ151は、撥液性を有することが好ましい。撥液剤が基板Wに転移し易くなるからである。ブラシ151の素材は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、又は、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)である。なお、例えば、ブラシ151は、複数の部材を組み合わせて構成されてもよいし、複数の毛を含んでいてもよい。
【0047】
具体的には、撥液剤供給部17において、撥液剤ノズル171が、待機位置P2に位置するブラシ151に対して撥液剤を吐出する。その結果、撥液剤がブラシ151に染み込む。
【0048】
更に具体的には、撥液剤ノズル171には、配管173が接続される。配管173は、撥液剤を撥液剤ノズル171に供給する。配管173には、バルブ172が配置される。バルブ172は、配管173の流路を閉塞又は開放する。制御部21は、バルブ172が配管173の流路を開放するように、バルブ172を制御する。その結果、バルブ172が配管173の流路を開放するため、撥液剤ノズル171は撥液剤をブラシ151に向けて吐出する。ブラシ151に染み込まなかった撥液剤は、液受け部19に落下し、液受け部19に溜る。
【0049】
次に、図3を参照して撥液剤塗布ユニット5を詳細に説明する。図3は、撥液剤塗布ユニット5の内部を示す側面図である。図3に示すように、撥液剤塗布ユニット5において、スピンチャック13は、真空吸着式チャックである。具体的には、スピンチャック13は、スピン軸131と、スピンベース132と、スピンモータ133とを含む。スピン軸131は、略鉛直方向に沿って延びる。スピンベース132は、略円板形状を有し、スピン軸131の上端に取り付けられる。そして、スピンベース132は、略水平な姿勢で基板Wを保持する。図3の例では、スピンベース132は、基板Wを略水平な姿勢で基板Wの裏面を吸着して保持する。スピンモータ133は、スピン軸131と同軸に結合された回転軸を有する。そして、スピンモータ133は、基板Wがスピンベース132に保持された状態で、スピン軸131の回転軸線AX1の周りに基板Wを回転させる。
【0050】
撥液剤塗布ユニット5は、加熱部20を更に備える。加熱部20は、制御部21による制御の下、基板Wの裏面側から、基板Wの径方向RD外側部分を加熱する。加熱部20は、スピンチャック13よりも径方向RD外側に配置される。加熱部20は、基板Wよりも下方に配置される。具体的には、加熱部20は、基板Wの径方向RD外側部分の下方に配置される。図3の例では、加熱部20は、回転軸線AX1の周りに延びる略円環形状を有する。加熱部20は、例えば、ヒーターである。なお、回転軸線AX1に沿った方向を軸方向ADと記載する場合がある。軸方向ADは、基板Wに直交し、鉛直方向に略平行である。
【0051】
撥液剤塗布機構15は、制御部21による制御の下、ブラシ151を水平方向に沿って揺動させたり、ブラシ151を昇降させたりする。撥液剤塗布機構15は、ブラシ151を塗布位置P1(図2)と待機位置P2(図2)との間で移動させる。
【0052】
具体的には、撥液剤塗布機構15は、揺動アーム152と、揺動機構153と、昇降機構154と、アーム基軸155とを含む。揺動アーム152の水平方向一方側の先端には、ブラシ151が取り付けられる。そして、揺動アーム152は、ブラシ151を略水平方向に沿って揺動させたり、ブラシ151を昇降させたりする。
【0053】
更に具体的には、揺動機構153は、制御部21による制御の下、揺動アーム152を揺動軸線AX3の周りに略水平方向に沿って揺動させる。詳細には、アーム基軸155の上端部が、揺動アーム152の水平方向他方側に結合される。揺動機構153の駆動力は、アーム基軸155に入力される。揺動機構153の駆動力をアーム基軸155に入力することで、アーム基軸155を往復回転させて、揺動アーム152を、アーム基軸155を支点に揺動させる。揺動機構153は、例えば、モーターを含む。
【0054】
また、昇降機構154は、制御部21による制御の下、揺動アーム152を昇降させる。詳細には、アーム基軸155に、昇降機構154が結合されている。昇降機構154は、アーム基軸155を上下動させて、アーム基軸155と一体的に揺動アーム152を上下動させる。昇降機構154は、例えば、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与えるモーターとを含む。
【0055】
具体的には、揺動アーム152は、アーム本体156と、支持軸157と、自転機構158とを含む。アーム本体156は、中空であり、略水平方向に延びる。アーム本体156は、揺動機構153によって略水平方向に沿って揺動する。アーム本体156は、昇降機構154によって昇降する。支持軸157は、アーム本体156の水平方向一方側に位置し、略水平方向に突出する。自転機構158は、支持軸157に支持される。自転機構158の下端部には、ブラシ151が取り付けられる。
【0056】
自転機構158は、制御部21による制御の下、回転軸線AX2の周りにブラシ151を回転させる。つまり、自転機構158は、ブラシ151を自転させる。具体的には、自転機構158は、ブラシモーター160と、ブラシホルダー162とを含む。ブラシモーター160の出力軸161は、鉛直下方に向けて延びている。つまり、出力軸161は、軸方向ADに沿って下方に延びている。出力軸161の下端部には、ブラシホルダー162が取り付けられる。ブラシホルダー162は、ブラシ151を保持する。ブラシモーター160は、出力軸161を回転させることで、ブラシホルダー162と共にブラシ151を回転軸線AX2の周りに回転させる。本実施形態では、回転軸線AX2は回転軸線AX1と略平行である。従って、軸方向ADは、回転軸線AX2に略平行である。
【0057】
また、揺動アーム152は付勢機構159を更に含む。付勢機構159は、制御部21による制御の下、支持軸157及び自転機構158を介して、ブラシ151を基板Wの径方向RD内側に向けて付勢する。具体的には、付勢機構159は、基板Wの端面部51に対するブラシ151の径方向RDの押し圧を予め設定された押し圧に保持する。押し圧は、径方向RDにおいて端面部51にブラシ151を押し付けるときの圧力である。例えば、付勢機構159は、エアシリンダーによって支持軸157を径方向RDに沿って駆動することで、ブラシ151を基板Wの径方向RD内側に向けて付勢する。
【0058】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る撥液剤塗布方法を説明する。撥液剤塗布方法は、本実施形態に係る基板処理方法の一部を構成する。図4は、本実施形態に係る撥液剤塗布方法を示す図である。
【0059】
図4に示すように、撥液剤塗布方法は、工程S10、工程S20、及び、工程S30を含む。
【0060】
まず、工程S10において、待機位置P2にて、撥液剤ノズル171は、自転中のブラシ151に向けて撥液剤81を吐出する。その結果、ブラシ151に撥液剤81が染み込む。特に、工程S10では、自転機構158(図3)がブラシ151を自転させているので、撥液剤81がブラシ151に均等に染み込む。図4では、撥液剤ノズル171は、回転軸線AX2に交差する方向に撥液剤81を吐出している。具体的には、撥液剤ノズル171は、回転軸線AX2に略直交する方向に撥液剤81を吐出している。
【0061】
次に、工程S20において、塗布位置P1にて、ブラシ151は、回転中の基板Wの端面部51に接触することで、基板Wの端面部51に撥液剤81を塗布する。好ましくは、工程S20では、自転機構158(図3)がブラシ151を自転させる。この場合、ブラシ151は、自転しながら、撥液剤81を基板Wの端面部51に塗布する。その結果、本実施形態によれば、撥液剤81をより確実に基板Wの端面部51に塗布できる。
【0062】
図4の例では、基板Wの端面部51とブラシ151との接触位置において、基板Wの回転方向とブラシ151の自転方向とは逆である。従って、撥液剤81をより確実に基板Wの端面部51に塗布できる。なお、基板Wの端面部51とブラシ151との接触位置において、基板Wの回転方向とブラシ151の自転方向とが同じであってもよい。
【0063】
次に、工程S30において、加熱部20は、基板Wの下方から、基板Wの径方向RD外側部分を加熱することで、端面部51に塗布された撥液剤81(工程S20)を乾燥させる。その結果、撥液剤81から溶媒が蒸発し、撥液物質82が基板Wの端面部51に付着する。つまり、加熱部20は、撥液剤81を乾燥させて、撥液剤81中の撥液物質82を基板Wの端面部51に付着させる。
【0064】
例えば、端面部51に撥液物質82が付着した基板Wは、処理ユニット1(図1)に搬入される。そして、裏面用ノズル8(図1)が、基板Wの裏面A2に処理液を吐出する。この場合、基板Wの端面部51に付着した撥液物質82が処理液を弾くので、処理液が基板Wの裏面A2から表面A1に回り込むことを抑制できる。その結果、基板Wの表面A1に形成されたパターンが裏面A2に吐出された処理液の影響を受けることを抑制できる。
【0065】
ここで、基板Wの端面部51に付着した撥液物質82は高分子化合物である。従って、撥液物質82を除去する作業は不要である。なぜなら、撥液物質82は、端面部51に存在するに過ぎないからである。
【0066】
次に、図5及び図6を参照して、基板Wの詳細を説明する。図5(a)は、基板W及びブラシ151を示す断面図である。図5(b)は、基板Wの側面部515に撥液剤81が塗布された状態を示す断面図である。図5(c)は、基板Wの表面肩部512、側面部515、及び、裏面肩部514に撥液剤81が塗布された状態を示す断面図である。図5(a)~図5(c)では、基板Wの径方向RD外側部分の断面を拡大して示している。図6は、基板Wの一部を示す平面図である。図6では、基板Wの径方向RD外側部分の表面A1を拡大して示している。
【0067】
図5(a)及び図6に示すように、基板Wは、本体50(以下、「基板本体50」と記載)と、端面部51とを有する。基板本体50は、基板Wのうち端面部51を除く部分を示す。換言すれば、基板本体50は、基板Wのうち端面部51よりも径方向RD内側部分を示す。更に換言すれば、基板本体50は、基板Wのうち径方向RDに沿った略平坦な部分を示す。基板本体50には、パターンが形成されている。例えば、基板Wの表面A1側において、基板本体50にパターンが形成されている。なお、例えば、基板Wの裏面A2側において、基板本体50にパターンが形成されていてもよい。基板本体50は、略円板形状を有する。なお、図6では、理解の容易のために、基板本体50と端面部51との境界を破線で示している。
【0068】
具体的には、基板本体50は、本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502を含む。本体表面周縁部501は、基板本体50の表面A1のうちの周縁領域を示す。本体裏面周縁部502は、基板本体50の裏面A2のうちの周縁領域を示す。本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502の各々は、回転軸線AX1(図2)の周りの略円環状の領域である。本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502の各々の径方向RDの幅は、例えば、1mm以上4mm以下である。
【0069】
端面部51は、基板Wのうち基板本体50よりも径方向RD外側の部分を示す。換言すれば、端面部51は、基板Wのうち基板本体50よりも径方向RD外側の端面領域を示す。更に換言すれば、端面部51は、基板Wのうち本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502よりも径方向RD外側の端面領域を示す。端面部51は、表面縁部511と、表面肩部512と、側面部515と、裏面肩部514と、裏面縁部513とを有する。
【0070】
表面縁部511は、基板Wの表面A1と裏面A2とのうちの表面A1側において、基板本体50よりも径方向RD外側に位置する。表面縁部511は、回転軸線AX1(図2)の周りの略円環状の領域である。表面縁部511は、平面視において、基板本体50(具体的には本体表面周縁部501)を周方向CDに囲む。表面縁部511は、断面視において、本体表面周縁部501から表面肩部512に向かって基板本体50の表面A1に対して傾斜する傾斜面を含む。表面縁部511は、本体表面周縁部501と表面肩部512とを接続する。
【0071】
表面肩部512は、表面A1側において、表面縁部511よりも径方向RD外側に位置する。表面肩部512は、回転軸線AX1(図2)の周りの略円環状の領域である。表面肩部512は、平面視において、表面縁部511を周方向CDに囲む。表面肩部512は、断面視において、表面縁部511から側面部515に向かって湾曲している湾曲面を含む。表面肩部512は、表面縁部511と側面部515とを接続する。
【0072】
裏面縁部513は、裏面A2側において、基板本体50よりも径方向RD外側に位置する。裏面縁部513は、回転軸線AX1(図2)の周りの略円環状の領域である。裏面縁部513は、平面視において、基板本体50(具体的には本体裏面周縁部502)を周方向CDに囲む。裏面縁部513は、断面視において、本体裏面周縁部502から裏面肩部514に向かって基板本体50の裏面A2に対して傾斜する傾斜面を含む。裏面縁部513は、本体裏面周縁部502と裏面肩部514とを接続する。
【0073】
裏面肩部514は、裏面A2側において、裏面縁部513よりも径方向RD外側に位置する。裏面肩部514は、回転軸線AX1(図2)の周りの略円環状の領域である。裏面縁部513は、平面視において、裏面縁部513を周方向CDに囲む。裏面肩部514は、断面視において、裏面縁部513から側面部515に向かって湾曲している湾曲面を含む。裏面肩部514は、裏面縁部513と側面部515とを接続する。
【0074】
側面部515は、基板Wの径方向RDの最も外側に位置する。側面部515は、回転軸線AX1(図2)の周りの略円環状の領域である。側面部515は、平面視において、表面肩部512及び裏面肩部514を周方向CDに囲む。側面部515は、断面視において、表面肩部512から裏面肩部514に向かって延びる平坦面を含む。側面部515は、回転軸線AX1の周りに略円筒形状を有する。側面部515は、表面肩部512と裏面肩部514とを接続する。
【0075】
本実施形態では、好ましくは、図5(b)に示すように、ブラシ151は、側面部515だけに接触して、側面部515に対して撥液剤81を塗布する。従って、ブラシ151による撥液剤81の塗布中に、撥液剤81が本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502に進入することを確実に抑制できる。その結果、基板本体50に余分な撥液剤81が塗布されることをより効果的に抑制できる。また、本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502に撥液剤81が進入しないので、本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502にもパターンを形成することができる。
【0076】
また、図5(c)に示すように、ブラシ151は、表面肩部512、側面部515、及び、裏面肩部514に接触して、表面肩部512、側面部515、及び、裏面肩部514に対して、撥液剤81を塗布してもよい。この場合でも、表面縁部511及び裏面縁部513があるため、ブラシ151による撥液剤81の塗布中に、撥液剤81が本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502に進入することを抑制できる。その結果、基板本体50に余分な撥液剤81が塗布されることを抑制できるとともに、本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502にもパターンを形成することができる。
【0077】
例えば、制御部21は付勢機構159による付勢力(押し圧)を調整し、ブラシ151を弾性変形させることで、ブラシ151を、表面肩部512、側面部515、及び、裏面肩部514に接触させる。
【0078】
なお、本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502に撥液剤が進入しない限りにおいて、ブラシ151は、基板Wの表面縁部511、表面肩部512、側面部515、裏面肩部514、及び、裏面縁部513に接触して、表面縁部511、表面肩部512、側面部515、裏面肩部514、及び、裏面縁部513に撥液剤を塗布してもよい。
【0079】
ここで、図5(a)に示すように、例えば、ブラシ151の軸方向ADの長さLbは、基板Wの軸方向ADの厚みdよりも長い。例えば、基板Wの厚みdは765μmであり、ブラシ151の長さLbは800μmである。また、例えば、表面肩部512の曲率半径は270μm、側面部515の軸方向ADの長さL0は228μm、裏面肩部514の曲率半径は238μmである。また、例えば、長さL1は314μm、長さL2は323μmである。長さL1は、表面縁部511の径方向RD内側端部から、表面肩部512の径方向RD外側端部(側面部515)までの径方向RDに沿った距離を示す。長さL2は、裏面縁部513の径方向RD内側端部から、裏面肩部514の径方向RD外側端部(側面部515)までの径方向RDに沿った距離を示す。また、表面縁部511は、本体表面周縁部501に対して傾斜角度θ1を有する。裏面縁部513は、本体裏面周縁部502に対して傾斜角度θ2を有する。例えば、傾斜角度θ1は22.3度、傾斜角度θ2は23.3度である。
【0080】
次に、図7を参照して、基板Wに形成されるノッチ52を説明する。図7は、基板Wを示す平面図である。図7に示すように、基板Wは、ノッチ52を有する場合がある。ノッチ52は、平面視において、基板Wの端面部51から径方向RD内側に窪む凹部である。ノッチ52の周方向CDの幅は、例えば、径方向RD内側ほど小さくなる。
【0081】
次に、図8を参照して、ノッチ52への撥液剤の塗布を説明する。図8は、ブラシ151がノッチ52に接触している状態を示す平面図である。図8に示すように、ブラシ151の少なくとも一部は、基板Wの端面部51に存在するノッチ52に進入し、ノッチ52の底点BMに接触する。従って、本実施形態によれば、端面部51の場合と同様に、基板本体50(具体的には、本体表面周縁部501及び本体裏面周縁部502)への撥液剤の進入を回避しつつ、ノッチ52に撥液剤を塗布できる。
【0082】
図8の例では、平面視において、ブラシ151の全体がノッチ52に進入している。ただし、ブラシ151がノッチ52の底点BMに接触する限りは、平面視において、ブラシ151の一部がノッチ52に進入していてもよい。
【0083】
また、図8の例では、ブラシ151の直径2Rは、ノッチ52の周方向CDの最大幅Lよりも小さい。「R」は、平面視におけるブラシ151の半径を示す。本実施形態では、断面視において、ブラシ151は略円形である。この場合の断面視は、回転軸線AX2(図3)に垂直な仮想平面によってブラシ151を切断して見ることを示す。また、本実施形態において、ブラシ151の半径R及び直径2Rは、それぞれ、断面視におけるブラシ151の半径及び直径を示す。加えて、図8の例では、ブラシ151の直径2Rは、ノッチ52の径方向RDの深さDよりも小さい。従って、平面視において、ブラシ151の全体が、ノッチ52の内部に収まる。基板Wは、回転方向D1に回転するため、ブラシ151は、ノッチ52に対して相対的に移動する。従って、ノッチ52の全体に、撥液剤を塗布できる。
【0084】
特に、本実施形態では、付勢機構159(図3)は、ブラシ151を基板Wの径方向RD内側に向けて付勢する。従って、基板Wの回転によってブラシ151がノッチ52に位置した場合に、ブラシ151は速やかにノッチ52に進入する。その結果、より確実に、ノッチ52に撥液剤を塗布できる。
【0085】
次に、図7及び図9を参照して、ブラシ151の半径Rの決定方法の一例を説明する。図7に示すように、ノッチ52の幅Lは、式(1)によって示される。式(1)において、「Rw」は、基板Wの半径を示す。「θ」は、ノッチ52に対する中心角を示す。中心角θの単位は、「度」である。
【0086】
L=2π×Rw×(θ/360) …(1)
【0087】
図9は、ブラシ151及びノッチ52を示す平面図である。図9に示すように、ノッチ52の底点BMを原点0として、x座標及びy座標を定義する。そして、ノッチ52を放物線yで近似する。従って、ノッチ52は、式(2)によって示される。式(2)の係数aは、式(3)によって示される。
【0088】
y=a×x2 …(2)
a=y/x2=By/Ax2 …(3)
【0089】
放物線yの各点xにおける曲率半径Rcは、式(4)によって示される。「y1」は、式(2)の1回微分を示し、式(5)によって示される。「y2」は、式(2)の2回微分を示し、式(6)によって示される。
【0090】
Rc=(1+y123/2/y2 …(4)
y1=dy/dx …(5)
y2=dy/dx …(6)
【0091】
放物線yの原点0における曲率半径R0、つまり、ノッチ52の底点BMにおける曲率半径R0は、式(7)によって示される。つまり、式(7)において、x=0である。
【0092】
R0=(1+(2a)2×x23/2/2a=1/2a …(7)
【0093】
本実施形態では、原点0における曲率半径R0をブラシ151の半径Rに設定する。その結果、ブラシ151をノッチ52に確実に進入させることができ、ノッチ52に確実に撥液剤を塗布できる。
【0094】
ここで、一例として、ブラシ151の半径Rの最大値Rmx及び最小値Rmnを算出する。
【0095】
まず、最大値Rmxを算出する。この場合、基板Wの半径Rw=150mm、中心角θ=2とすると、式(1)によって、ノッチ52の幅L=5.24mm、である。また、Ax=2.62mm、By=1.20mmとすると、式(3)によって、係数a=0.175、である。係数aを式(7)に代入すると、曲率半径R0の最大値は、2.86mm、となる。よって、ブラシ151の半径Rの最大値Rmxを2.86mmに設定する。
【0096】
次に、最小値Rmnを算出する。この場合、基板Wの半径Rw=150mm、中心角θ=1.5とすると、式(1)によって、ノッチ52の幅L=3.93mm、である。また、Ax=1.96mm、By=1.20mmとすると、式(3)によって、係数a=0.31、である。係数aを式(7)に代入すると、曲率半径R0の最小値は、1.61mm、となる。よって、ブラシ151の半径Rの最小値Rmnを1.61mmに設定する。
【0097】
すなわち、例えば、ノッチ52の幅Lが3.93mm以上5.24mm以下である場合、ブラシ151の半径Rを1.61mm以上2.86mm以下に設定する。
【0098】
次に、図1図3及び図10を参照して、本実施形態に係る基板処理方法を説明する。基板処理方法は撥液剤塗布方法を含んでいる。図10は、本実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。図10に示すように、基板処理方法は工程S1~工程S10を含む。工程S1~工程S10は基板処理装置100によって実行される。
【0099】
まず、工程S1において、撥液剤供給部17(図2)は、待機位置P2(図2)に位置するブラシ151を自転させながらブラシ151に対して撥液剤を供給する。具体的には、制御部21は、ブラシ151が自転するように、自転機構158(図3)を制御する。その結果、自転機構158はブラシ151を自転させる。更に、制御部21は、撥液剤をブラシ151に供給するように、撥液剤供給部17を制御する。その結果、撥液剤供給部17は、ブラシ151に撥液剤を供給する。なお、ブラシ151の自転と撥液剤の供給とは同時に実行されてもよいし、自転が先で撥液剤の供給が後でもよいし、自転が後で撥液剤の供給が先でもよい。なお、ブラシ151への撥液剤の供給が完了すると、自転機構158はブラシ151の自転を停止する。
【0100】
次に、工程S2において、制御部21は、基板Wを撥液剤塗布ユニット5に搬入するように、センターロボットCR(図1)を制御する。その結果、センターロボットCRは、基板Wを撥液剤塗布ユニット5に搬入し、基板Wをスピンチャック13(図3)に保持させる。
【0101】
次に、工程S3において、制御部21は、基板Wを回転するように、スピンチャック13を制御する。その結果、スピンチャック13は、基板Wを回転させる。
【0102】
次に、工程S4において、ブラシ151は、自転しながら、回転中の基板Wの端面部51に接触して、基板Wの端面部51に撥液剤を塗布する。
【0103】
具体的には、制御部21は、ブラシ151が自転するように、自転機構158を制御する。その結果、自転機構158は、ブラシ151を自転させる。そして、制御部21は、ブラシ151が待機位置P2から塗布位置P1(図2)に移動するように、揺動アーム152(図3)を制御する。その結果、揺動アーム152はブラシ151を待機位置P2から塗布位置P1に移動させる。つまり、制御部21は、自転中のブラシ151が基板Wの端面部51に接触するように、揺動アーム152を制御する。その結果、揺動アーム152は、自転中のブラシ151を基板Wの端面部51に接触させる。よって、基板Wの端面部51に撥液剤が塗布される。撥液剤の塗布が完了すると、揺動アーム152はブラシ151を待機位置P2に移動させるとともに、自転機構158はブラシ151の自転を停止する。
【0104】
次に、工程S5において、制御部21は、基板Wの付着した撥液剤を加熱するように、加熱部20(図3)を制御する。その結果、加熱部20は、撥液剤を加熱して、撥液剤を乾燥させる。その結果、撥液剤に含まれる撥液物質が基板Wの端面部51に付着する。
【0105】
次に、工程S6において、制御部21は、基板Wの回転を停止するように、スピンチャック13を制御する。その結果、スピンチャック13は、基板Wの回転を停止する。
【0106】
次に、工程S7において、制御部21は、基板Wを撥液剤塗布ユニット5から搬出するように、センターロボットCRを制御する。その結果、センターロボットCRは、基板Wを撥液剤塗布ユニット5から搬出する。
【0107】
次に、工程S8において、制御部21は、撥液物質が端面部51に付着した基板Wを処理ユニット1(図1)に搬入するように、センターロボットCRを制御する。その結果、センターロボットCRは、基板Wを処理ユニット1に搬入する。
【0108】
次に、工程S9において、制御部21は、処理液によって基板Wを処理するように、処理ユニット1を制御する。その結果、処理ユニット1は、処理液によって基板Wを処理する。一例として、処理ユニット1の裏面用ノズル8(図1)は、処理液を基板Wの裏面A2に吐出することで、基板Wの裏面A2を処理する。他の例として、処理ユニット1の表面用ノズル7(図1)は、処理液を基板Wの表面A1に吐出することで、基板Wの表面A1を処理する。
【0109】
次に、工程S10において、制御部21は、基板Wを処理ユニット1から搬出するように、センターロボットCRを制御する。その結果、センターロボットCRは、基板Wを処理ユニット1から搬出する。そして、処理は終了する。
【0110】
以上、図10を参照して説明したように、本実施形態に係る基板処理方法によれば、基板Wの端面部51にブラシ151を接触させることで、基板Wの端面部51に撥液剤を塗布する(工程S4)。従って、撥液剤が飛び散ることを抑制できるため、余分な撥液剤の吸引工程が不要である。よって、処理工程の増加を抑制しつつ、基板Wの端面部51以外の部分に余分な撥液剤が塗布されることを抑制できる。
【0111】
また、本実施形態によれば、工程S9において、例えば、基板Wの裏面A2に処理液が吐出された場合であっても、処理液が基板Wの表面A1に回り込むことを抑制できる。なぜなら、工程S4で基板Wの端面部51に撥液剤を塗布し、工程S5で基板Wの端面部51の撥液剤を乾燥させることで、基板Wの端面部51には撥液物質が付着しているからである。
【0112】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0113】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0114】
(1)図4及び図10を参照して説明した実施形態では、ブラシ151は自転機構158によって自転した。ただし、ブラシ151は、基板Wに従動して自転してもよい。なお、基板Wの端面部51に撥液剤を塗布できる限りにおいて、ブラシ151は自転しなくてもよい。
【0115】
(2)図10を参照して説明した実施形態では、基板Wに撥液剤を塗布した後、処理ユニット1が処理液によって基板Wを処理した。ただし、基板Wに撥液剤を塗布した後、撥液剤塗布ユニット5が、処理液によって基板Wを処理してもよい。この場合、撥液剤塗布ユニット5が、処理液を基板Wに吐出するノズルを備える。例えば、撥液剤塗布ユニット5が、表面用ノズル7及び/又は裏面用ノズル8を備えていてもよい。
【0116】
(3)図3を参照して説明したブラシ151は、略円柱形状を有していたが、ブラシ151の形状は特に限定されない。ブラシ151のうち基板Wの端面部51に接触する部分が、少なくとも、例えば、略円板形状又は略円柱形状であればよい。この場合、曲率半径R0が設定されるブラシ151の半径Rは、ブラシ151のうち基板Wの端面部51に接触する部分の半径を示す。例えば、ブラシ151は、略逆円錐台形状部分と、略円板状部分と、略円錐台形状部分とが、軸方向ADに並んだ一体形状を有していてもよい。
【0117】
(4)図3を参照して説明したスピンチャック13は、真空吸着式であったが、例えば、挟持式又はベルヌーイ式であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0119】
13 スピンチャック(基板保持部)
17 撥液剤供給部
100 基板処理装置
151 ブラシ(塗布部材)
158 自転機構
159 付勢機構
511 表面縁部
512 表面肩部
513 裏面縁部
514 裏面肩部
515 側面部
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10