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特開2023-142165処理液供給装置、基板処理装置及び処理液供給装置の検査方法
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  • 特開-処理液供給装置、基板処理装置及び処理液供給装置の検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142165
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】処理液供給装置、基板処理装置及び処理液供給装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20230928BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048903
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】古矢 正明
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩秋
(72)【発明者】
【氏名】森 秀樹
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE10
5F043EE22
5F043EE23
5F043EE28
5F043EE29
5F043EE33
5F043EE40
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB22
5F157BB45
5F157CC11
5F157CC41
5F157CD29
5F157CD33
5F157CD34
5F157CE36
5F157CE37
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF34
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF50
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB37
5F157DC21
5F157DC86
(57)【要約】      (修正有)
【課題】濃度計の機能を検査する処理液供給装置及びその検査方法を提供する。
【解決手段】処理液供給装置1は、処理液Lを貯留するタンクTと、タンクTから処理装置100に処理液Lを供給する供給経路Sと、処理液Lを加熱する、ヒータH1~H4を含む加熱部と、処理液Lの温度を測定する温度計TMと、処理液Lの濃度を測定する濃度計Dと、濃度計Dを検査する検査部23を有する制御装置Eと、を有する。検査部23は、処理液供給装置1が設置されている場所の大気圧と、予め設定された処理液の蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を所定温度として設定する温度設定部231、加熱部により処理液を加熱させることにより、所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度にする加熱制御部232及び濃度計により測定された目標温度となった処理液の濃度が、所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する判定部233を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液により処理する処理装置に、前記処理液を供給する処理液供給装置であって、
前記処理液を貯留するタンクと、
前記タンクから前記処理装置に前記処理液を供給する供給経路と、
前記処理液を加熱する加熱部と、
前記処理液の温度を測定する温度計と、
前記処理液の濃度を測定する濃度計と、
前記濃度計を検査する検査部と、
を有し、
前記検査部は、
前記処理液供給装置が設置されている場所の大気圧と、予め設定された前記処理液の蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を所定温度として設定する温度設定部と、
前記加熱部により前記処理液を加熱させることにより、前記所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度にする加熱制御部と、
前記濃度計により測定された前記目標温度となった前記処理液の濃度が、前記所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する判定部と、
を有する処理液供給装置。
【請求項2】
前記加熱制御部は、前記判定部により前記目標濃度で無く、前記目標濃度よりも高いと判定された場合に、前記処理液の希釈により、前記処理液が前記目標濃度よりも低い濃度、前記目標温度よりも低い温度となった後、前記加熱部により前記処理液を再度加熱させて前記目標温度にし、
前記判定部は、前記濃度計により測定された前記目標温度となった前記処理液の濃度が、前記目標濃度か否かを再度判定する請求項1記載の処理液供給装置。
【請求項3】
前記判定部により前記目標濃度で無いと再度判定された場合に、これを報知する情報を出力する出力部を有する請求項2記載の処理液供給装置。
【請求項4】
前記判定部により前記目標濃度で無いと判定された場合に、前記濃度計の洗浄処理をさせる洗浄処理部を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の処理液供給装置。
【請求項5】
前記大気圧を測定する気圧計を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の処理液供給装置。
【請求項6】
前記処理液を希釈液により希釈する希釈部を有し、
前記タンクは、
前記処理装置に前記処理液を供給する供給タンクと、
前記処理装置において処理済みの前記処理液を回収する回収タンクと、
新しい前記処理液を供給する新液タンクと、
を含み、
前記判定部により前記目標濃度であると判定された場合に、前記濃度計により測定された濃度に基づいて、前記加熱部及び前記希釈部を制御することにより、前記供給タンク、前記回収タンク及び前記新液タンクの前記処理液の濃度を調整する濃度制御部を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の処理液供給装置。
【請求項7】
前記処理装置と、
請求項1乃至6のいずれかに記載の処理液供給装置と、
を有する基板処理装置。
【請求項8】
基板を処理液により処理する処理装置に、前記処理液を供給する処理液供給装置が設置されている場所の大気圧と、予め設定された前記処理液の蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を、所定温度として設定し、
温度計による前記処理液の測定温度が、前記所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度となるように、加熱部により前記処理液を加熱し、
前記処理液が前記目標温度となった場合に、前記処理液の濃度を測定する濃度計により測定された前記処理液の濃度が、前記所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する処理液供給装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液供給装置、基板処理装置及び処理液供給装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やフラットパネルディスプレイなどを製造する製造工程では、半導体ウェーハやガラス基板などの基板の表面に設けられた膜に、エッチング用の処理液を供給することによりエッチングを行い、所望の回路パターンを形成する処理装置が用いられている。
【0003】
例えば、回転する基板に処理液を供給して、1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置は、複数枚を処理液に浸漬させて一括して処理するバッチ式の処理装置よりも、各基板に対する処理の均一性を高いレベルで揃えることができるので、近年の回路パターンの微細化に伴って、多く利用されている。
【0004】
しかし、枚様式の処理装置では処理を1枚ずつ行うので、1枚1枚の処理時間を短くしなければ、バッチ式よりも生産性が劣ることになる。このため、処理性能を高く維持しつつ、生産性を高めるには、短時間でバラツキの少ない処理を行わなければならない。バッチ式では、処理液の温度、濃度等のパラメータの変動は、処理前の処理槽内において時間をかけて調整してから浸漬すれば良い。しかし、枚葉式では、基板に供給される処理液は、プロセス性能に影響するパラメータが常に一定の状態となるように供給される必要がある。
【0005】
また、バッチ式、枚様式のいずれの処理装置においても、処理コストの低減の観点から、処理に使用した液を回収して再利用することが必須となっている。このように再利用を行う場合であっても、バッチ式では、処理槽に浸漬する長い処理時間内において、パラメータを確認しながら調整できる。しかし、枚葉式の場合、基板に供給される処理液のパラメータの変動は、短時間での処理性能のバラツキとして製品に現れる。このため、回収された処理液も含めて、常に最適の濃度や温度に調整されたものが、基板に対して供給され続ける必要がある。つまり、枚葉式では、使用する処理液の濃度や温度の変動を、常に非常に小さい範囲に抑えておくことが必要となる。
【0006】
ここで、処理液の温度の変動に大きく影響を与えるのは、上記の回収液である。つまり、処理に使用した処理液は温度低下するため、使用済みの処理液を回収し、再度昇温させなければならないが、この回収液の温度を比較的高温に維持して供給するには、工夫が必要となる。例えば、回収液は、処理のタイミングで発生量が変動する。特に、同時に複数の処理室で処理している場合には、回収量も時間による変動が大きい。回収液をタンクに集めて加熱して再利用する構成では、回収液の流入によって大きく温度変動が発生することになる。
【0007】
一方、処理液の濃度に関しては、時間をかけて加熱するか、純水などの薄め液の添加により濃度調整する必要があるため、供給タンクで行う。回収液は、供給タンクにおいて濃度調整されて処理液となるため、濃度調整の範囲は比較的小さくて済む。但し、処理液のコストが高い場合には、処理液の回収率を高くして処理コストの低下を図るためには、リンス液等の再使用に支障のない液がある程度混合された処理液も、回収して再利用することになる。このため、処理に使用した処理液の濃度を回復することが重要になる。
【0008】
回収液が必ず低濃度になるような場合でも、処理が長時間行われずに新規の回収液が入ってこない回収タンクでは、回収タンク内の液を高温に維持するための加熱は常時行われるため、時間の経過とともに回収液中の水が蒸発して回収液の濃度は高くなる。回収液が流入しない間は、基板の処理も行われないため、回収タンクを送液する供給タンク側の液量低下も起きないことから、回収タンクの濃度はより一層上昇することになる。従って、回収タンクにおいても、濃度制御は重要になる。
【0009】
このような枚葉式の処理液の回収と再利用の際に、温度を一定に保つ方法として、特許文献1に示すような基板処理装置が提案されている。この基板処理装置は、回収した処理液を処理部へ供給する2つのタンクを設け、処理部とタンクとの接続を交互に切り替えながら、基板処理が行われる。それぞれのタンクには、濃度計が設けられており、この濃度計の測定値によって、処理液の劣化を判断する。処理液の劣化が生じたタンクについては、処理液を交換する作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-273791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
枚葉式の基板処理装置において、微細なパターンのウェーハをエッチング処理する場合、処理液の濃度と温度の変動によって、エッチングレートにバラツキが生じ、製品の品質問題となる。このため、基板に供給される処理液の濃度と濃度のパラメータは、処理性能に大きく影響する。特に、濃度計は、正常に動作しているかを判断できなければ、製品不良を発生させることにつながる。
【0012】
より具体的には、処理液を沸点よりも少し低い温度で、濃度が一定の安定した状態で供給するために、濃度計により測定される濃度値に基づいて、希釈水の添加量と、ヒータ加熱による液温の両方を制御することが必要となる。もし、濃度計が汚れ等によって濃度値にズレを生じていた場合、正しい濃度ではなくなるので、この処理液で処理した製品は、所定のエッチング処理ができないことになる。しかし、現状では、基板処理装置において、濃度計の機能を検査する機能は存在しない。
【0013】
本発明の実施形態は、濃度計の機能を検査できる処理液供給装置、基板処理装置及び処理液供給装置の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態は、基板を処理液により処理する処理装置に、前記処理液を供給する処理液供給装置であって、前記処理液を貯留するタンクと、前記タンクから前記処理装置に前記処理液を供給する供給経路と、前記処理液を加熱する加熱部と、前記処理液の温度を測定する温度計と、前記処理液の濃度を測定する濃度計と、前記濃度計を検査する検査部と、を有し、前記検査部は、前記処理液供給装置が設置されている場所の大気圧と、予め設定された前記処理液の蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を所定温度として設定する温度設定部と、前記加熱部により前記処理液を加熱させることにより、前記所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度にする加熱制御部と、前記濃度計により測定された前記目標温度となった前記処理液の濃度が、前記所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する判定部と、を有する。
【0015】
本発明の実施形態の基板処理装置は、前記処理装置と、前記処理液供給装置とを有する。
【0016】
本発明の実施形態は、処理液供給装置の検査方法であって、基板を処理液により処理する処理装置に、前記処理液を供給する処理液供給装置が設置されている場所の大気圧と、予め設定された前記処理液の蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を、所定温度として設定し、温度計による前記処理液の測定温度が、前記所定温度を基準とする目標温度となるように、加熱部により前記処理液を加熱し、前記処理液が前記目標温度となった場合に、前記処理液の濃度を測定する濃度計により測定された前記処理液の濃度が、前記所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態は、濃度計の機能を検査できる処理液供給装置、基板処理装置及び処理液供給装置の検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の処理装置及び処理液供給装置を示す簡略構成図である。
図2】実施形態の処理液供給装置における処理液の蒸気圧曲線の推移を示すグラフである。
図3】実施形態の処理液供給装置による濃度計検査の手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態の処理液供給装置における濃度制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[概要]
図1に示すように、実施形態の処理液供給装置1は、処理液Lにより基板Wを処理する処理装置100に、複数のタンクTを順次経ることにより、処理液Lを供給する装置である。処理液供給装置1は、複数のタンクTからの処理液Lが流通する共通流路Cに1つの濃度計Dを設け、共通流路Cに流通する処理液LのタンクTを切替部SWによって切り替えながら、各タンクTの処理液Lの濃度を測定して、各タンクTの処理液Lが所定濃度(設定濃度)を基準とする所定範囲内である目標濃度となるように、各タンクTの処理液Lへの希釈液の添加量、処理液Lを加熱する温度を調整する。なお、以下の説明では、処理液供給装置1と処理装置100との間で処理液Lを循環させながら処理を行う装置を、基板処理装置SSとする。
【0020】
また、実施形態の処理液供給装置1では、気圧計Bによって処理液供給装置1が置かれている場所の気圧を測定して、予め求められた処理液Lの蒸気圧曲線から、処理液Lが所定の濃度になる沸点温度を求める。このように求めた沸点温度を所定温度(設定温度)として設定して、処理液Lを加熱する。所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度となった処理液Lの濃度を測定し、この測定した濃度が目標濃度か否かを確認する。これにより、濃度計Dが正常か異常かを判断する。
【0021】
なお、処理液Lの濃度が目標濃度よりも低い場合は、求めた沸点温度を基準とする目標温度にすれば、目標温度で沸騰して、目標濃度に落ち着くことになる。そのため、目標温度となった処理液Lの濃度を濃度計Dにより測定して、目標濃度と比較することにより、濃度測定値が正しい濃度であるか否かを確認できる。しかし、処理液Lの濃度が目標濃度よりも高い場合には、処理液Lは沸騰せず、目標温度になっても濃度は目標濃度よりも高いままである。この場合は、処理液Lの濃度が目標濃度以下になるように、一旦希釈してから、再度加熱して濃度値を測定することで、濃度計Dが正常であるか否かを判断できる。
【0022】
このように、処理液供給装置1は濃度計Dのセルフチェック機能を有する。許容範囲内である場合、つまり正常の場合は、濃度計Dを使用し続ける。許容範囲外である場合、つまり異常の場合は、警報を出力する、濃度計Dを洗浄する、処理液Lの供給を停止するなどの処理を行う。
【0023】
[処理装置]
処理装置100は、例えば、回転する基板Wに処理液Lを供給することによって、基板Wの被処理面上に形成された不要な膜を除去して回路パターンを残す枚葉式のエッチング装置である。以下の説明においては、処理液Lにおける処理のための有効成分を薬液と呼ぶ。また、濃度とは、処理液Lに含まれる薬液の濃度である。本実施形態では、薬液であるリン酸(H3PO4)を含む水溶液(以下、リン酸溶液とする)を、処理液Lとして使用する。リン酸溶液は、処理レートを確保するために高温とすることが必要であり、温度低下を防ぐ必要性が高い。但し、使用する処理液Lは、これには限定されず、例えば、フッ酸及び硝酸の混合液、酢酸、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric hydrogen Peroxide Mixture)等、酸系の液体を広く用いることができる。
【0024】
処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。処理装置100は、容器であるチャンバ100aに構成された回転部101、供給部102、回収部103を有する。回転部101は、回転体101a、駆動源101cを有する。回転体101aは、チャックピンなどの保持部101bにより基板Wの縁を保持して、基板Wに直交する軸を中心に回転する回転テーブルである。駆動源101cは、回転体101aを回転させるモータである。
【0025】
供給部102は、ノズル102a、アーム102bを有する。ノズル102aは、回転する基板Wの処理面に向けて、処理液Lを吐出する吐出部である。アーム102bは、先端にノズル102aが設けられ、ノズル102aを回転体101aの中心上方と、回転体101aから退避する位置との間で揺動させる。ノズル102aは、後述の供給配管S1を介して処理液供給装置1に接続され、処理液Lが供給される。
【0026】
回収部103は、回転体101aを包囲するように設けられ、ノズル102aから回転する基板Wの処理面に供給されて、基板Wの端面から漏れた処理液Lを、その底部から回収する筐体である。回収部103の底部及びチャンバ100aの底部には開口が設けられ、この開口が後述の回収配管R2を介して処理液供給装置1に接続されている。
【0027】
[処理液供給装置]
処理液供給装置1は、処理装置100に処理液Lを供給する。また、処理液供給装置1は、処理装置100において処理済の処理液Lを回収し、新たに供給される処理液Lとともに、処理装置100に供給する。図1では図示を省略しているが、処理装置100は、1つの処理液供給装置1に対して、複数設けられている。
【0028】
処理液供給装置1は、タンクT、供給経路S、加熱部H、希釈部I、共通流路C、濃度計D、制御装置Eを有する。タンクTは処理液Lを貯留する。タンクTは、複数のタンク、例えば、供給タンクT1、回収タンクT2、バッファタンクT3、新液タンクT4を含む。以下、これらT1~T4を区別しない場合には、タンクTとして説明する。
【0029】
供給経路Sは、複数のタンクT1~T4の間で処理液Lが流通可能となるように、複数のタンクT1~T4を接続し、複数のタンクT1~T4を順次経ることにより、処理装置100に処理液Lを供給する。供給経路Sは、供給配管S1~S4を含む。加熱部Hは、処理液Lを加熱する。加熱部Hは、ヒータH1~H4を含む。なお、複数のタンクTを順次経るとは、処理液Lを貯留する複数のタンクTのうち、2以上のタンクTを経る構成であればよい。つまり、少なくとも2つのタンクTの間が、処理液Lが流通可能となるように接続されていればよい。
【0030】
(供給タンク)
供給タンクT1は容器10aを有し、容器10a内に処理装置100に供給される処理液Lを貯留する。容器10aは、処理液Lに対して耐食性を有する素材からなる。供給タンクT1には、供給配管S1、戻り配管R1が接続されている。供給配管S1は、容器10aの底部に接続され、処理装置100の供給部102に処理液Lを供給する配管である。
【0031】
供給配管S1の経路上には、ポンプP1、ヒータH1、フィルタF、バルブV1aが設けられている。ポンプP1は、供給タンクT1の底部から処理液Lを吸引して送り出す。ヒータH1は、ポンプP1の下流側に設けられ、ポンプP1から送り出された処理液Lを、所定の目標温度に加熱する。なお、ここでは、供給タンクT1から処理装置100へ向かう流れにおける供給タンクT1側を上流、処理装置100側を下流としている。ヒータH1の下流側には、温度計TMが設けられ、この温度計TMからのフィードバックを受け、ヒータH1の出力が調整される。温度計TMは、例えばサーミスタである。ヒータH1により、目標温度まで加熱された処理液Lは、処理装置100の供給部102に供給される。
【0032】
フィルタFは、ヒータH1の下流に設けられ、供給配管S1を流れる処理液Lから不純物を除去する。バルブV1aは、フィルタFの下流に設けられ、処理装置100への処理液Lの供給の有無を切り替える。
【0033】
戻り配管R1は、供給配管S1のバルブV1aの上流で分岐して、供給タンクT1に接続されている。戻り配管R1には、バルブV1bが設けられている。供給配管S1から処理装置100に供給される処理液Lは、基板Wの処理が行われていない場合には、バルブV1aが閉じてバルブV1bが開くことにより、戻り配管R1を介して供給タンクT1に戻される。つまり、戻り配管R1と供給配管S1によって、循環経路が形成される。この循環経路において、ヒータH1の加熱により、供給タンクT1内の処理液Lの温度が一定温度に維持される。
【0034】
また、図示はしないが、供給タンクT1には、液面を検知する液面センサが設けられている。これにより、供給タンクT1内の処理液Lが、一定量以下となったか否かが検知できる。なお、供給タンクT1の容器10a内に、処理液Lを一定温度に加熱するヒータが設置されていても良い。
【0035】
(回収タンク)
回収タンクT2は容器20aを有し、容器20a内に処理装置100から回収した処理液Lを貯留する。容器20aは、処理液Lに対して耐食性を有する素材からなる。回収タンクT2には、回収配管R2、供給配管S2が接続されている。回収配管R2は、処理装置100の回収部103から、エッチング処理後の処理液Lを回収する配管である。
【0036】
供給配管S2は、容器20aの底部に接続されている。供給配管S2には、ポンプP2、ヒータH2が設けられている。ポンプP2は、回収タンクT2の底部から処理液Lを吸引して送り出す。ヒータH2は、ポンプP2の下流に設けられ、ポンプP2から送り出された処理液Lを、所定の目標温度に加熱する。なお、ここでは、回収タンクT2の底部から、後述するバッファタンクT3、回収タンクT2の上部(戻り)又は共通流路Cへ向かう流れにおける回収タンクT2の底部側を上流、これと反対側を下流としている。ヒータH2の下流側には、温度計TMが設けられ、この温度計TMからのフィードバックを受け、ヒータH2の出力が調整される。温度計TMは、例えばサーミスタである。
【0037】
供給配管S2の途中には分岐点があり、この分岐点から後述するバッファタンクT3に送液する経路と、回収タンクT2に戻る経路に分岐している。分岐した経路のそれぞれにはバルブV2a、V2bが設けられている。バルブV2aは、バッファタンクT3への処理液Lの供給の有無を切り替える。バルブV2bは、回収タンクT2への処理液Lの戻りの有無を切り替える。
【0038】
バルブV2aが閉じ、バルブV2bが開くことにより、ヒータH2により加熱された処理液Lは、通常は回収タンクT2に戻されるので、循環している。これにより、ヒータH2は、回収タンクT2の処理液Lを目標温度に加熱する。但し、バッファタンクT3の処理液Lが一定量以下となり補充が必要となった場合には、バルブV2aが開き、バルブV2bが閉じることにより、目標温度まで加熱された処理液LがバッファタンクT3に供給される。これにより、回収されて再加熱された処理液Lが、再度利用可能になる。
【0039】
また、図示はしないが、回収タンクT2には、液面を検知する液面センサが設けられている。これにより、回収タンクT2内の処理液Lが、一定量以下となったか否かが検知できる。一定量以下となったか否かを検知することで、バッファタンクT3に処理液Lを供給するか否かを判断できる。つまり、一定量以下になった場合は、バッファタンクT3に処理液Lを供給せずに、回収タンクT2への循環を続ける。また、一定量を超えた場合には、処理液Lの温度及び濃度を調整した後に、バッファタンクT3への供給を開始する。なお、回収タンクT2内には、処理液Lを一定温度に加熱するためのヒータが設置されていても良い。
【0040】
(バッファタンク)
バッファタンクT3は容器30aを有し、容器30a内に回収タンクT2からの処理液Lを貯留する。容器30aは、処理液Lに対して耐食性を有する素材からなる。バッファタンクT3には、供給配管S3、上記の供給配管S2が接続されている。
【0041】
供給配管S3は、容器30aの底部に接続されている。供給配管S3には、ポンプP3、ヒータH3が設けられている。ポンプP3は、バッファタンクT3の底部から処理液Lを吸引して送り出す。ヒータH3は、ポンプP3の下流に設けられ、ポンプP2から送り出された処理液Lを、所定の目標温度に加熱する。なお、ここでは、バッファタンクT3の底部から、供給タンクT1、バッファタンクT3の上部(戻り)又は共通流路Cへ向かう流れにおけるバッファタンクT3の底部側を上流、これと反対側を下流としている。ヒータH3の下流側には、温度計TMが設けられ、この温度計TMからのフィードバックを受け、ヒータH3の出力が調整される。温度計TMは、例えばサーミスタである。
【0042】
供給配管S3の途中には分岐点があり、この分岐点から供給タンクT1に送液する経路と、バッファタンクT3に戻る経路に分岐している。分岐した経路のそれぞれにはバルブV3a、V3bが設けられている。バルブV3aは、供給タンクT1への処理液Lの供給の有無を切り替える。バルブV3bは、バッファタンクT3への処理液Lの戻りの有無を切り替える。
【0043】
バルブV3aが閉じ、バルブV3bが開くことにより、ヒータH3により加熱された処理液Lは、通常はバッファタンクT3に戻されるので、循環している。これにより、ヒータH3は、バッファタンクT3の処理液Lを目標温度に加熱する。但し、供給タンクT1の処理液Lが一定量以下となり補充が必要になった場合には、バルブV3aが開き、バルブV3bが閉じることにより、目標温度まで加熱された処理液Lが供給タンクT1に供給される。
【0044】
また、図示はしないが、バッファタンクT3には、液面を検知する液面センサが設けられている。これにより、バッファタンクT3内の処理液Lが、一定量以下となったか否かが検知できる。一定量以下となったか否かを検知することで、回収タンクT2から供給を受けるか否かを判断できる。つまり、一定量以下になった場合は、回収タンクT2から供給を受けて、供給タンクT1に処理液Lを供給せずに、バッファタンクT3への循環を続ける。また、一定量を超えた場合には、回収タンクT2から供給を受けずに、処理液Lの温度及び濃度を、それぞれの目標値、つまり、目標温度及び目標濃度に調整した後に、供給タンクT1への供給を開始する。なお、バッファタンクT3内には、処理液Lを一定温度に加熱するためのヒータが設置されていても良い。
【0045】
さらに、上記の供給タンクT1、回収タンクT2、バッファタンクT3の底部には、それぞれバルブVzが設けられた配管が接続され、共通の配管である排出路Zに合流している。排出路Zは、工場の廃液経路に接続されている。
【0046】
(新液タンク)
新液タンクT4は容器40aを有し、容器40a内に、新たに調合された処理液L(以下、新液と呼ぶ)を貯留する。容器40aは、処理液Lに対して耐食性を有する素材からなる。新液タンクT4には、送液配管R3、供給配管S4が接続されている。送液配管R3は、図示しない処理液Lの供給源から、新液タンクT4に処理液Lを供給する配管である。
【0047】
供給配管S4は、容器40aの底部に接続されている。供給配管S4には、ポンプP4、ヒータH4が設けられている。ポンプP4は、新液タンクT4の底部から処理液Lを吸引して送り出す。ヒータH4は、ポンプP4の下流に設けられ、ポンプP4から送り出された処理液Lを、所定の目標温度に加熱する。なお、ここでは、新液タンクT4の底部から、回収タンクT2、バッファタンクT3、供給タンクT1、新液タンクT4の上部(戻り)又は共通流路Cへ向かう流れにおける新液タンクT4の底部側を上流、これと反対側を下流としている。ヒータH4の下流側には、温度計TMが設けられ、この温度計TMからのフィードバックを受け、ヒータH4の出力が調整される。温度計TMは、例えばサーミスタである。
【0048】
供給配管S4は、回収タンクT2、バッファタンクT3、供給タンクT1に送液する送液経路と、新液タンクT4に戻る経路に分岐している。送液経路は、回収タンクT2、バッファタンクT3、供給タンクT1に分岐して、それぞれにバルブV4a、V4c、V4dが設けられている。バルブV4a、V4c、V4dは、それぞれ回収タンクT2、バッファタンクT3、供給タンクT1への処理液Lの送液の有無を切り替える。送液経路及びバルブV4a、V4c、V4dは、回収タンクT2、バッファタンクT3、供給タンクT1の少なくとも1つに新液を供給する新液供給部Jである。新液タンクT4に戻る経路には、バルブV4bが設けられている。バルブV4bは、新液タンクT4への処理液Lの戻りの有無を切り替える。
【0049】
バルブV4a、バルブV4c、バルブV4dを閉じ、バルブV4bが開くことにより、ヒータH4により加熱された処理液Lは、通常は新液タンクT4に戻されるので、循環している。これにより、ヒータH4は、新液タンクT4の処理液Lを目標温度に加熱する。さらに、新液が処理液Lとして使用可能な状態になった場合で、且つ供給タンクT1の処理液Lが一定量以下となり、バッファタンクT3の処理液Lも一定量を下回るような状況となった場合、バルブV4bを閉じて、バルブV4dを開き、供給タンクT1に、あらかじめ定められた一定量を送液する。これにより、処理装置100に供給されて処理に使用され、バッファタンクT3からの供給では不足する処理液Lが補充される。なお、新液タンクT4から回収タンクT2への新液の供給は、バルブV4bを閉じて、バルブV4aを開くことにより行われる。但し、回収タンクT2への新液の供給は、回収タンクT2が回収液と新液によって溢れないように、回収タンクT2の処理液Lが一定量以下となり、且つ処理装置100から回収液が入って来ない状況が続く場合に限って行われる。
【0050】
供給タンクT1に処理液Lを補充した新液タンクT4には、補充した分の新液を、送液配管R3から追加して、次の加熱を行う。なお、バッファタンクT3への新液の補充も、バッファタンクT3の処理液Lが一定量以下となり、回収タンクT2からの供給では不足する場合に、バルブV4cを開くことにより行われる。
【0051】
また、図示はしないが、新液タンクT4には、液面を検知する液面センサが設けられている。これにより、新液タンクT4内の処理液Lが、一定量以下となったか否かが検知でき、送液配管R3からの送液により補充すべきか否かが判断できる。なお、新液タンクT4内には、処理液Lを一定温度に加熱するためのヒータが設置されていてもよい。
【0052】
(希釈部)
希釈部Iは、処理液Lを希釈液により希釈する。希釈液は、タンクT内の液の濃度を低下させる液体であり、本実施形態では純水である。希釈部Iは、送液配管R4を有する。送液配管R4は、図示しない純水の供給源から、供給タンクT1、回収タンクT2、バッファタンクT3、新液タンクT4に分岐して、それぞれに希釈液を供給する配管である。分岐した各タンクT1~T4への配管には、それぞれバルブV5が設けられている。後述する濃度計Dによる各タンクT1~T4の処理液Lの濃度測定に基づいて、各タンクT1~T4へ、所定の添加量の純水が添加される。
【0053】
(共通流路)
共通流路Cは、複数のタンクT1~T4の処理液Lが流通する共通の経路である。本実施形態の共通流路Cは、供給配管S1~S4から分岐した配管t1~t4が合流する配管である。つまり、供給配管S1のフィルタFの下流に分岐点が設けられ、この分岐点から配管t1が分岐している。供給配管S2のバッファタンクT3及び回収タンクT2への分岐点から、配管t2が分岐している。供給配管S3の供給タンクT1及びバッファタンクT3への分岐点から、配管t3が分岐している。さらに、供給配管S4の供給配管S1等及び新液タンクT4への分岐点から、配管t4が分岐している。供給配管S1~S4からの配管t1~t4には、それぞれバルブV6aが設けられている。また、共通流路Cは、複数のタンクT1~T4に分岐して戻す配管bp1~bp4に接続されている。共通流路Cから分岐して複数のタンクT1~T4へ向かう配管bp1~bp4には、それぞれバルブV6bが設けられている。これらのバルブV6a、V6bは、いずれを開くかによって、共通流路Cに流通する処理液Lが、いずれのタンクT1~T4の処理液Lかを切り替える切替部SWである。
【0054】
(濃度計)
濃度計Dは、共通流路Cに設けられ、共通流路Cを流れる処理液Lの濃度を測定する。濃度計Dへの送液とタンクTへの戻りは、切替部SWのバルブV6a、V6bの切り替えにより、タンクT1~T4毎に区別され、タンクT1~T4間で処理液Lが混合しないように行われる。つまり、少なくとも共通流路C内に溜まった他のタンクTの処理液Lが混合しないように、同じタンクTから出た処理液Lは、同じタンクTに戻るように構成されている。本実施形態の濃度計Dは、共通流路Cに1つ設けられている。濃度計Dは、比較的精度の高い光学式のものを用いることが好ましい。
【0055】
なお、共通流路Cには、濃度計D内を洗浄する洗浄液供給回路Kが接続されている。洗浄液供給回路Kは希釈部Iからの希釈液を共通流路Cに供給して、濃度計D内を洗浄させる配管及びバルブVk1を有する。また、共通流路Cには、洗浄液供給回路Kから供給されて濃度計Dを洗浄した希釈液を、排出路Zに排出させる配管が直接接続され、この配管にバルブVk2が設けられている。
【0056】
(気圧計)
気圧計Bは、処理液供給装置1を収容する筐体である処理室であって、制御装置E等が配置された付帯エリアに設置されている。但し、気圧計Bの設置位置は、これには限定されない。つまり、処理液供給装置1が設置されている場所の気圧を測定できればよいため、処理液供給装置1の外部であっても、処理液供給装置1が設置された室内又はフロア内等であってもよい。
【0057】
(制御装置)
制御装置Eは、基板処理装置SSの各部を制御する。制御装置Eは、基板処理装置SSの各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサ、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。なお、制御装置Eは、情報を入力する入力部Ei、情報を出力する出力部Eоが接続されている。入力部Eiは、タッチパネル、キーボート、マウス、スイッチ等の入力装置である。出力部Eоは、ディスプレイ、ランプ、スピーカ、ブザー等の出力装置である。
【0058】
制御装置Eは、基板処理制御部21、濃度制御部22、検査部23、洗浄処理部24、記憶部25を有する。基板処理制御部21は、処理装置100及び処理液供給装置1の各部を制御することにより、基板Wの処理を実行させる。つまり、基板処理制御部21は、チャンバ100aへの基板Wの搬入搬出、保持部101bによる基板Wの保持、駆動源12による回転体101aの回転、アーム102bによるノズル102aの揺動、バルブV1a、V1bの切り替えによる処理液Lの供給の有無、バルブV2a、V2b、V3a、V3b、V4a、V4bの切り替えによる各タンクT1~T4への処理液Lの補充等を制御する。
【0059】
濃度制御部22は、濃度計Dに、タンクT1~T4のそれぞれの処理液Lの濃度を測定させ、処理液Lの濃度が、所定の目標値(目標濃度)となるように、加熱部H及び希釈部Iを制御する。目標濃度は、設定濃度を含み、その前後の所定の範囲である。設定濃度は、例えば87.7%である。なお、この濃度制御においては、上記のように、処理液Lの温度についても、所定の目標値(目標温度)となるように制御する。目標温度は、設定温度を含み、その前後の所定の範囲である。設定温度は、例えば160℃である。濃度制御部22は、測定値と目標値(目標濃度、目標温度)との差異及び測定値の変化量のいずれか一方又は双方に基づいて、加熱量及び希釈液の添加量を算出して、加熱部H及び希釈部Iを制御する。なお、測定値と目標値との差異を算出する場合には、設定濃度、設定温度を用いるが、これらの設定濃度、設定温度に正確に一致させるよう制御する必要はなく、目標濃度、目標温度の範囲に収まるように制御できればよい。
【0060】
より具体的には、濃度制御部22は、切替部SWのバルブV6a、V6bの開閉を切り替えて、濃度を測定するタンクT1~T4を切り替える。タンクT1~T4の切り替えは、タンクT1~T4毎に設定された所定の時間間隔で行う。また、濃度制御部22は、加熱部HであるヒータH1~H4の出力、希釈部IのバルブV5の開閉を切り替えることにより、処理液Lの加熱による濃縮、純水の添加による希釈を行う。
【0061】
時間間隔の設定により、全てのタンクTの測定時間を同じにすることも、各タンクTの測定時間を異なるものにすることもできる。例えば、特定のタンクTの測定時間を長くすることができる。但し、同じ測定時間の場合、1回の測定時間を長く確保するよりも、測定頻度を増加させることが好ましい。これにより一定の時間内において、多数のタンクTを測定して、それぞれの濃度を調整できるので、全体が目標値に収束し易くなる。
【0062】
検査部23は、温度設定部231、加熱制御部232、判定部233を有する。温度設定部231は、処理液供給装置1が設置されている場所の大気圧と、予め設定された処理液Lの蒸気圧曲線に基づいて、所定濃度となる沸点温度を、所定温度(設定温度)として設定する。大気圧(処理液供給装置1が設置されている場所の大気圧)は、制御装置Eに接続された気圧計Bから取得する。加熱制御部232は、加熱部Hにより処理液Lを加熱させることにより、設定温度を基準とする所定範囲内である目標温度にする。判定部233は、濃度計Dにより測定された目標温度となった処理液Lの濃度が、所定濃度(設定濃度)を基準とする所定範囲内、つまり目標濃度であるか否かを判定する。
【0063】
加熱制御部232は、判定部233により目標濃度で無く、目標濃度よりも高いと判定された場合に、希釈部Iからの希釈液の供給により、処理液Lが目標濃度よりも低い濃度、目標温度よりも低い温度となった後、加熱部Hにより処理液Lを再度加熱させて目標温度にする。判定部233は、濃度計Dにより測定された目標濃度となった処理液Lの濃度が、目標濃度であるか否かを再度判定する。
【0064】
出力部Eоは、判定部233により目標濃度で無く、目標濃度よりも低いと判定された場合、目標濃度よりも高く希釈後の再加熱により再度目標濃度で無いと判定された場合に、これを報知する情報を出力する。例えば、出力部Eоのディスプレイが、濃度計Dが正常でないことを示す情報を表示したり、ランプが点灯や点滅によって濃度計Dが正常でないことを報知する。また、出力部Eоのスピーカが、濃度計Dが正常でないことを報知する音声を出力したり、ブザーによるアラームが鳴ることによって濃度計Dが正常でないことを報知する。
【0065】
蒸気圧曲線は、処理液供給装置1を設置した場所で、処理液Lを沸騰させて目標濃度にした時の温度と気圧を測定し、低気圧と高気圧との間で気圧が変化したときの沸点温度を測定することで求めることができる。処理液供給装置1の構成上の影響で、タンクT内の気圧と大気圧とに差があることも考えられるため、同じ装置構成での評価をしておくことが望ましい。蒸気圧曲線は、制御装置Eが演算により求めたものを設定しても良いし、入力部Eiから入力したものを設定しても良い。
【0066】
ここで、大気中で処理液Lを加熱して、沸騰する状態の蒸気圧曲線の例を、図2に示す。図2は、初期濃度の蒸気圧曲線VPCiを点線、目標濃度の蒸気圧曲線VPCtを実線、目標濃度よりも高濃度の液の蒸気圧曲線VPChを一点鎖線で示す。なお、図2は、後述するように、新液タンクT4に目標濃度よりも低濃度の新液を補充した後、加熱して沸騰させることによって濃度が変化する挙動を示している。つまり、図1に示した処理液供給装置1の新液タンクT4の加熱の経路を使って、濃度を調整している例である。但し、ここで示した蒸気圧曲線VPCi、VPCt、VPCh、温度及び濃度変化の挙動は、処理液Lの一般的な挙動と共通であるため、図2に従って説明する。
【0067】
液体の沸点は、大気圧が変化すると蒸気圧曲線に沿って移動する。このため、標高が高い位置に装置が設置されている場合や、台風などにより低気圧が通過する場合には、沸点が低下する現象が生じる。つまり、図2の蒸気圧曲線VPCiに示すように、高い気圧Paの場合には高い沸点Bpaとなり、低い気圧Pbの場合には低下した沸点Bpbとなる。このように、気圧により沸点が変化するとは、ある濃度の処理液Lを加熱したときに、気圧が低い方が沸騰が早く始まり、気圧が高い方が沸騰の始まりが遅くなることを意味する。処理液Lが沸騰する際の沸点は、処理液Lの濃度と気圧によって決まるため、予め目標温度を決めても、気圧の変化により処理液Lの濃度が変化して一定にならない。つまり、沸点が変化すると沸騰する温度が変化して、蒸発する水分量が変化するため、処理液Lを同じ温度(目標温度)にしたとしても、沸騰した処理液Lの濃度は変化することになる。
【0068】
発明者は、濃度計Dが正常か否かを判定する有効な手法を得るために、このような蒸気圧曲線に着目した。そして、鋭意検討した結果、以下のような手法を見出した。すなわち、使用する処理液Lに関して、設定濃度に対する蒸気圧曲線VPCtを求める。また、蒸気圧曲線VPCtから、大気圧変化(蒸気圧変化)に応じた沸点温度を求める。例えば、気圧Paの場合の沸点温度Ta、気圧Pbの場合の沸点温度Tbを求める。さらに、処理液Lを加熱して沸点温度Ta、Tbとなった処理液Lの濃度を濃度計Dで測定し、測定値が設定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度であるか否かを判定する。これにより、濃度計Dが正常か否かをチェックできる。
【0069】
洗浄処理部24は、判定部233により目標濃度で無いと判定された場合に、濃度計Dの洗浄処理をさせる。洗浄処理部24は、洗浄液供給回路KのバルブVk1、Vk2を制御することにより、濃度計Dに希釈液を流通させて洗浄を行う。つまり、バルブVk1、Vk2を開くことにより、洗浄液供給回路Kから希釈液を共通流路Cに供給して、濃度計Dを洗浄し、排出路Zに排出するように切り替える。また、各タンクTの処理液Lの濃度を測定するとき、共通流路C内の処理液Lを置換する動作を行う。つまり、濃度を測定するタンクTからの処理液Lを、一定期間、共通流路Cに流してから、濃度測定を行う。このように、各タンクTからの濃度計Dへの通液の最初の一定時間は、前の処理液Lを置換する処理になるため、タンクTに戻さずに、バルブVk2を開くことにより、共通流路Cから排出路Zに処理液Lを直接流す。なお、この場合に、共通流路Cから排出路Zに直接流す流路を別途設けるなどによって、タンクTを介さずに排液できる構成としてもよい。
【0070】
記憶部25は、メモリに構成され、目標濃度、目標温度、時間間隔、蒸気圧曲線等を記憶する。目標濃度、目標温度、時間間隔は、作業者が入力部Eiによって所望の値を入力できる。例えば、処理に使用されるために濃度、温度の変動が大きい処理液Lを回収する回収タンクT2について、測定の頻度を他のタンクTよりも多くして測定時間を長くして、濃度を調整することができる。また、基板処理への影響が直接的な供給タンクT1の測定の頻度を、他のタンクTよりも多くして、基板Wの処理の安定化を図ってもよい。なお、目標濃度、目標温度は、所定濃度、所定温度と許容される所定範囲との組み合わせにより設定されていてもよい。
【0071】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置SSの動作を、図1及び図2に加えて、図3及び図4を参照して説明する。なお、以下のような手順により基板Wを処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
【0072】
(基板処理)
まず、処理装置100による基板処理を説明する。処理対象となる基板Wは、搬送ロボットによって回転体101a上に搬入され、保持部101bによって保持される。駆動源101cが回転体101aを回転させることにより基板Wが回転する。処理液供給装置1によって所望の濃度、温度となった処理液Lは、バルブV1aが開き、ノズル102aから基板Wの被処理面に供給されることにより、エッチング処理がなされる。
【0073】
所定の処理時間が経過すると、バルブV1aが閉じ、処理液Lの供給が停止する。その後、基板Wが回転を停止して、保持部101bによる保持が解放された基板Wを、搬送ロボットがチャンバ100aから搬出する。
【0074】
(処理液の供給)
次に、処理液供給装置1による処理液Lの調整処理を説明する。供給タンクT1の処理液Lは、処理装置100へ供給する前に、バルブV1aを閉じ、バルブV1bを開いた状態で、供給配管S1、戻り配管R1、供給タンクT1を循環しながら、ヒータH1により加熱されることにより、目標温度に維持されている。そして、上記のように処理装置100における処理のタイミングで、供給タンクT1の処理液Lが処理装置100に供給される。
【0075】
バッファタンクT3の処理液Lは、供給タンクT1へ供給する前に、バルブV3aを閉じ、バルブV3bを開いた状態で、供給配管S3、バッファタンクT3を循環しながら、ヒータH3により加熱されることにより、目標温度に維持されている。そして、供給タンクT1の処理液Lが、一定量以下になった場合に、バルブV3aを開き、バルブV3bを閉じることにより、供給タンクT1に供給される。
【0076】
回収タンクT2の処理液Lは、バッファタンクT3へ供給する前に、バルブV2aを閉じ、バルブV2bを開いた状態で、供給配管S2、回収タンクT2を循環しながら、ヒータH2により加熱されることにより、目標温度に維持されている。そして、バッファタンクT3の処理液Lが、一定量以下になった場合に、バルブV2aを開き、バルブV2bを閉じることにより、バッファタンクT3に供給される。
【0077】
新液タンクT4の処理液Lは、回収タンクT2、バッファタンクT3、供給タンクT1へ供給する前に、バルブV4a、V4c、V4dを閉じ、バルブV4bを開いた状態で、供給配管S4、新液タンクT4を循環しながら、ヒータH2により加熱されることにより、目標温度に維持されている。そして、バッファタンクT3の処理液Lの液量が一定量を下回り、供給タンクT1に供給できず、さらに、供給タンクT1の液量も一定量を下回っている場合に、バルブV4dを開き、バルブV4bを閉じることにより、新液タンクT4からの新液が供給タンクT1に供給される。同様に、回収タンクT2、バッファタンクT3においても、供給が足らずに処理液Lが一定量以下になっている場合には、バルブV4a、V4cを開くことにより、新液を回収タンクT2、バッファタンクT3に供給してもよい。
【0078】
(濃度制御)
以上のように、各タンクT1~T4を順次経ることにより、処理液Lが処理装置100に供給される過程で行われる濃度制御を説明する。まず、濃度測定は、上記のように、切替部SWのバルブV6a、V6bにおけるt1-T1、t2-T2、t3-T3、t4-T4の各組のいずれかに対応するバルブを開き、他を閉じることを、所定の時間間隔で順次切り替えることにより、共通流路Cに流通する処理液LのタンクT1~T4を切り替えて、濃度計Dにより濃度を測定することにより行う。
【0079】
各タンクT1~T4の処理液Lの濃度を測定するとき、上記のように、濃度を測定するいずれかのタンクTからの処理液Lを、一定期間、共通流路Cに流して前の処理液Lを置換してから、濃度測定を行う。これにより、タンクT1~T4から選択的に処理液Lを共通流路Cに流通させることが可能になるので、1つの濃度計Dによって、各タンクT1~T4の濃度を、所定の時間間隔で測定できる。
【0080】
そして、測定された濃度と目標濃度との差分に応じて、濃縮が必要な場合には、対応するタンクT1~T4のヒータH1~H4の出力を上げる。希釈が必要な場合には、対応するタンクT1~T4への希釈部Iの配管のバルブV5を開いて、所定量の純水を添加する。
【0081】
上記のように各タンクT1~T4における処理液Lの濃度は、濃度計Dを用いて調整できる。この濃度調整は、処理装置100に処理液Lを供給する供給タンクT1において、処理液Lの濃度を目標濃度に安定させることを目的としている。タンクT1~T4のうち、回収タンクT2は、回収した処理液Lの流入により、処理液Lの温度と濃度が比較的大きく変動する。このため、バッファタンクT3に送液するタイミングでは、回収タンクT2において、目標濃度に合わせることができていない場合がある。そこで、バッファタンクT3においては、回収タンクT2からの処理液Lが流入しても、供給タンクT1に送液する時には温度や濃度の変動量がわずかになるようにして送り出す。このため、濃度計Dによる濃度測定に基づいて、濃度を制御することが必要となる。このような制御を効率的で短時間に行うことができれば、タンクT1~T4を段階的に分けて調整することを省略できる場合もある。
【0082】
また、新液タンクT4に室温の新液が補充されると、それまで目標濃度と目標温度に調整されていた処理液Lが、補充された新液によって変化する。変化する方向は、温度は目標温度より低温側に、濃度は補充された新液の濃度側となる。処理液Lの温度に関しては、ヒータH4の出口の温度が、処理液Lの温度が目標温度となるような設定温度にしておくことで、新液タンクT4の処理液Lの温度を回復できる。一方、濃度に関しては、補充される処理液Lの濃度によって、可能な調整方法が変化する。
【0083】
基板Wの処理に使用される処理液Lは、高濃度の薬液に純水を混合して濃度を調整して使用することが多い。しかし、リン酸溶液のように、使用温度が溶液の沸点でエッチングレートが最も高くなる処理液Lでは、沸点近傍での調整が必要となるため、室温の処理液Lを沸騰させることにより濃度を上昇させて調整する。このような処理液Lでは、低濃度側から高濃度となるように、加熱により調整する方法が主となる。
【0084】
一方、一旦加熱により温度を調整した処理液Lが、目標濃度よりも高い状態になると、新液タンクT4の表面からの放熱で処理液Lの温度だけを低下させても、処理液Lの濃度は低下しない。濃度を低下させるには、希釈水の添加又は低濃度の新液の混合によって、新液タンクT4における処理液Lの全体の濃度を低下させる必要がある。この場合には、温度の低下も伴うことになるので、濃度と温度の両方を目標濃度、目標温度に同時に合わせるには、混合液の濃度と温度から添加量を計算して添加する。但し、濃度を目標濃度に合わせる添加量で、同時に温度も目標温度に合わせるような解を求めることは困難である。そこで、濃度を目標濃度にする希釈水又は新液の添加を行って、一旦温度を低下させてから、加熱によって温度を目標値に合わせることになる。
【0085】
(濃度計検査)
次に、濃度計Dの検査の手順について、図3のフローチャートを参照して説明する。まず、制御装置Eの検査部23は、気圧計Bが測定した処理液供給装置1が設置されている場所の大気圧を取得する(ステップS01)。温度設定部231は、取得した大気圧と、予め設定された処理液Lの蒸気圧曲線(設定濃度の蒸気圧曲線)に基づいて、設定濃度となる沸点温度を、所定温度(設定温度)として設定する(ステップS02)。加熱制御部232は、加熱部Hにより処理液Lを加熱させる(ステップS03)。温度計TMの測定値から判断して、処理液Lが目標温度になった場合(ステップS04のYES)、濃度計Dに処理液Lを流すことにより処理液Lの濃度を測定する(ステップS05)。なお、濃度計Dの検査のための濃度測定においても、予めタンクTからの処理液Lを濃度計Dに一定時間通液することにより、前の処理液Lを置換する。
【0086】
判定部233は、濃度計Dにより測定された処理液Lの濃度が、目標濃度であるか否かを判定する(ステップS06)。目標濃度である場合には(ステップS07のYES)、検査を終了して、基板Wの処理を継続する。目標濃度で無く(ステップS07のNО)、目標濃度よりも低い場合には(ステップS08のNO)、出力部Eоがこれを報知する情報を出力する(ステップS15)。
【0087】
目標濃度で無く(ステップS07のNO)、目標濃度よりも高い場合には(ステップS08のYES)、希釈液を添加することにより、濃度値を目標濃度よりも下げ、温度を目標温度よりも下げる(ステップS09)。そして、加熱制御部232は、加熱部Hにより処理液Lを再度加熱させ(ステップS10)、目標温度となった場合(ステップS11のYES)、濃度計Dにより処理液Lの濃度を測定する(ステップS12)。判定部233は、濃度計Dにより測定された処理液Lの濃度が、目標濃度であるか否かを再判定する(ステップS13)。目標濃度である場合には(ステップS14のYES)、検査を終了して、基板Wの処理を継続する。目標濃度で無い場合には(ステップS14のNO)、出力部Eоがこれを報知する情報を出力する(ステップS15)。
【0088】
なお、上記のように大気圧を測定することで沸点温度の変化を計算し、この沸点温度までタンクTの処理液Lの温度を上昇させれば、処理液Lの濃度を目標濃度にする制御を行うこともできる。このように、濃度と温度を目標濃度と目標温度に合わせることは、処理液Lの準備ができるまで、他のタンクT1~T3への補充を行わない新液タンクT4で実施することが好ましい。低濃度の新液を補充した後に、加熱させて、目標濃度になる目標温度まで昇温することで、目標濃度にも合わせることができる。
【0089】
ここで、図4に、新液タンクT4における処理液Lの温度(実線)と、ヒータH4で加熱された処理液LのヒータH4の出口温度(点線)の時間経過における変化を示す。図4の実線に示すように、濃度と温度が低下した新液タンクT4の処理液Lを、循環経路の加熱部H、つまりインラインのヒータH4で加熱すると、新液タンクT4に戻った処理液Lによって、濃度と温度が目標濃度及び目標温度に次第に近づいて行く。インラインのヒータH4による加熱では、図4の点線に示すように、ヒータH4の出口温度を、設定温度よりもわずかに高い温度設定にする。これにより、ヒータH4で加熱された処理液Lが新液タンクT4に戻されると、新液タンクT4内に処理液Lの温度の上昇を速めることができる。つまり、時間経過とともに処理液Lの温度が上昇し、新液タンクT4の処理液Lの温度と濃度を、目標温度と目標濃度に近づけることができる。その値は、濃度計Dを用いた希釈水の添加量の制御で、新液タンクT4の温度を目標温度に維持できる温度設定にすることが好ましい。
【0090】
インラインのヒータH4では、処理液Lが沸騰して新液タンクT4に戻されるため、発生した水蒸気が、新液タンクT4の表面から放出される。この時の沸騰温度は、大気圧で変化した沸点温度になっており、濃度は目標濃度になっている。温度を少し高めにすることは、濃度の低い新液タンクT4の処理液Lとの混合で、目標濃度に速く近づけることにもなる。循環する経路の加熱により、新液タンクT4の処理液Lの温度は、次第に上昇し、目標温度に近くなる。その場合、循環する経路で吸引される処理液Lの温度とヒータH4の設定温度の差が小さくなり、ヒータH4の加熱量が僅かになる。
【0091】
この状態になると、ヒータH4による沸騰は、ごく僅かになり、ヒータH4の出口温度も安定する。この状態の処理液Lを、濃度計Dで測定しても、測定された濃度値は安定する。この濃度値は、予め設定した沸点の濃度であり、目標濃度になっている。このため、上記のように、濃度計Dの濃度値が目標濃度を示しているか否かによって、濃度計Dが正常に機能しているか否かをチェックすることが可能になる。
【0092】
このチェックは、沸騰が治まってから行うことが、より安定して測定できるため、濃度計Dの表示値が、目標濃度よりも多少高めに出る可能性はある。この場合には、処理液Lの濃度を別の方式で測定して、目標濃度との差を調べて、この差分をオフセット値として次回から使用することで、より高精度に濃度計Dが正常か否かの判定が可能になる。別の方式としては、例えば、処理液Lをサンプリングして比重測定することにより、濃度を確認する方式がある。
【0093】
新液タンクT4の処理液Lを加熱して沸騰させることを利用して、濃度計Dの機能が正常か否かを判定できれば、他のタンクT1~T3の濃度制御を濃度計Dで行うことのリスクを無くすことができる。しかも、新液タンクT4での処理液Lの補充は、処理装置100での処理基板数に応じて行われるため、一定の処理間隔で、濃度計Dの機能を確認できることになる。処理の頻度が多い場合には、一定の時間間隔での設定に変更できる。
【0094】
濃度計Dが正常でないと判定された場合には、上記のように警報を出力する。さらに以下のような処理を行うことも可能である。例えば、前回の新液の補充では、正常であった濃度計Dであるため、直ぐに装置を止めるレベルには無いと判断して、供給タンクT1を使い切るまでは、基板Wの処理を継続してもよい。
【0095】
この間に、濃度計Dの洗浄によって、リセットできるか否かを再確認しても良い。再確認は、洗浄処理部24が濃度計Dの洗浄を行わせ、濃度値が許容範囲内になれば使用可能になる。濃度計Dは、処理液Lによる汚れの付着等が原因で、濃度値が正常値から変化することが多くあるため、洗浄によるリセットが有効である。洗浄後であっても、測定される濃度値が許容範囲外である場合には、オペレータが判断可能となるように、出力部Eoが警報を出力しても良い。また、濃度値が許容範囲外であって、そのズレ量が非常に大きい場合は、処理液供給装置1を停止しても良い。
【0096】
より具体的に、処理液供給装置1が、リン酸溶液を含む高温の処理液Lを処理装置100に供給することによって、基板Wであるウェーハの窒化膜をエッチングする処理について説明する。リン酸溶液は、沸点液のエッチングレートが最も高い(極大値)ことから、沸点近傍での処理が行われる。しかし、沸騰液での処理は、ウェーハへのダメージも考えられるため、実際には沸点よりも少し低い温度で使用される。この場合でも高いエッチングレートを得るには、処理液L中のリン酸濃度は高くしておくことが有効になる。
【0097】
処理液供給装置1によって供給を安定して行える温度は160℃程度が一般的であり、リン酸溶液を含む処理液Lの濃度は87.7%程度である。そこで、処理液供給装置1では86%程度で補充される新液を加熱して沸騰させることにより、水分を蒸発させて濃度を上昇させる。
【0098】
この場合、タンクT内の処理液Lの全体を加熱すると、タンクT全体で沸騰が始まり、濃度上昇を継続することは危険であり実施が難しい。例えば、タンクT全体を加熱して濃度上昇させる場合、大量の処理液Lが一気に沸騰することもあり、この場合、タンクTの液面の変動、一気に増える水蒸気によるタンクTの内圧の上昇による蒸気漏れ、排気管への処理液Lの流入などの現象が生じる場合がある。このため、通常は、上記のようにタンクTからポンプPで吸引した処理液Lを、インラインの加熱部Hで加熱沸騰してタンクTに戻す方式で、タンクT内の処理液Lを濃度、温度を徐々に上昇させる。処理液Lの沸騰は、加熱後からタンクTに戻される配管内で起き、処理液LがタンクTに戻ると、発生した水蒸気がタンクTの表面から大気に放出され、装置外に排気される。
【0099】
このようにして、タンクT内の処理液Lの濃度を87.7%にするが、インラインの加熱部Hの出口温度を160℃に制御するだけで、タンクT内の濃度を常に同じ87.7%にできるわけではない。これは、加熱部Hの出口の気圧によって、処理液Lの沸騰温度が変化するためである。
【0100】
タンクTに低濃度の新液を補充して、加熱沸騰で濃度を目標値に制御する場合の気圧による沸点の変化は、上記の図2に示したものと同様の蒸気圧曲線で表すことができる。気圧が高いPaの場合は、目標濃度の沸点温度Taに、所定温度を設定する。処理液Lを加熱して行くと、新液の補充で低下した処理液Lの濃度は、設定された所定温度よりも低い温度で沸騰が始まり、次第に濃度が上昇して行く。やがて処理液Lの温度が設定温度に近づくと、加熱部Hの加熱が弱まり、タンクTの温度は目標温度になる。この時に、タンクTの処理液Lの濃度は、目標濃度になる。
【0101】
しかし、処理液Lを加熱する場合、気圧が高くなる(Pb→Pa)と沸騰温度は高くなる(Tb→Тa)。このように、処理液Lが沸騰する、つまり飽和蒸気圧となる温度は、気圧で変化する。このため、沸騰した時の処理液Lの濃度も変化する。すると、気圧が低いPbの時は、設定温度をTaに設定してしまうと、タンクTの処理液Lは沸騰しながら温度Taに上昇する。つまり、処理液Lの蒸気圧曲線は、目標濃度よりも高い濃度値の蒸気圧曲線になる。従って、処理液Lの状態はα点で目標濃度よりも高い濃度値になってしまう。
【0102】
これを防ぐために、予め目標濃度の蒸気圧曲線を求めておき、加熱時の大気圧に応じて設定温度を修正すれば、加熱による温度制御だけで、タンクTの処理液Lを目標濃度にすることができる。例えば、大気圧の変化による濃度87.7%のリン酸溶液を含む処理液Lの沸騰温度を予め調べておき、処理液供給装置1が置かれている雰囲気の大気圧、すなわち設置されている場所の大気圧を測定することで、低濃度の処理液Lを加熱沸騰させて、処理液Lの濃度が87.7%になる時の温度を知ることができる。処理液供給装置1においては、この温度を設定温度にして、タンクTの処理液Lの加熱を続けて目標温度になれば、87.7%の目標濃度の処理液Lができたことになる。その後は、温度と濃度を維持すればよい。このように、タンクTの処理液Lの濃度制御を行えば、タンクTの濃度を一定に維持することができる。
【0103】
また、上記のように、タンクTの処理液Lの温度が目標温度になったときの濃度が、濃度計Dで濃度値が87.7%を示していれば、濃度計Dが正常に計測できていると判定できる。つまり、測定誤差等を含めた設定濃度の許容値内に、濃度計Dの計測値があるかどうかで、濃度計Dが正常に機能しているかをチェックでき、その後の濃度計Dによる濃度制御が可能か否かを判断できる。
【0104】
[効果]
(1)本実施形態は、基板Wを処理液Lにより処理する処理装置100に、処理液Lを供給する処理液供給装置1であって、処理液Lを貯留するタンクTと、タンクTから処理装置100に処理液Lを供給する供給経路Sと、処理液Lを加熱する加熱部Hと、処理液Lの温度を測定する温度計TMと、処理液Lの濃度を測定する濃度計Dと、濃度計Dを検査する検査部23と、を有する。
【0105】
検査部23は、処理液供給装置1が設置されている場所の大気圧と、予め設定された処理液Lの蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を所定温度として設定する温度設定部231と、加熱部Hにより処理液Lを加熱させることにより、所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度にする加熱制御部232と、濃度計Dにより測定された目標温度となった処理液Lの濃度が、所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する判定部233と、を有する。
【0106】
また、本実施形態の処理液供給装置1の検査方法は、基板Wを処理液Lにより処理する処理装置100に、処理液Lを供給する処理液供給装置1が設置されている場所の大気圧と、予め設定された処理液Lの蒸気圧曲線とに基づいて、所定濃度になる沸点温度を設定温度として設定し、温度計TMによる処理液Lの測定温度が、所定温度を基準とする所定範囲内である目標温度となるように、加熱部Hにより処理液Lを加熱し、処理液Lが目標温度となった場合に、処理液Lの濃度を測定する濃度計Dにより測定された処理液Lの濃度が、所定濃度を基準とする所定範囲内である目標濃度か否かを判定する。
【0107】
このように、処理液Lの加熱と濃度比較により濃度計Dが正常か否かをチェックできるため、正常値からズレた濃度の処理液Lで処理されることによる製品不良等の発生を低減できる。濃度計Dの機能に問題がある場合には、処理を止めることもできるので、製品不良を未然に防ぐことができる。補充される処理液Lの加熱は、処理液Lの供給過程で随時発生しており、その度に濃度計Dの検査を行うこともできるため、濃度計Dの洗浄や校正などの作業による処理待ちを最小限に抑えることができる。さらに、濃度計Dに、故障等の明らかに使用を継続できない異常があった場合に、代替手段を用いて使用を継続するという手法とは異なり、正常値からのズレまでチェックして濃度計Dを検査できるので、精度の高い処理が可能となる。例えば、汚れによる測定値の変化まで検査できる。
【0108】
(2)加熱制御部232は、判定部233により目標濃度で無く、目標濃度よりも高いと判定された場合に、処理液Lの希釈により、処理液Lが目標濃度よりも低い濃度、目標温度よりも低い温度となった後、加熱部Hにより処理液Lを再度加熱させて目標温度にし、
判定部233は、濃度計Dにより測定された目標温度となった処理液Lの濃度が、目標濃度か否かを再度判定する。
【0109】
判定部233により目標濃度で無いと再度判定された場合に、これを報知する情報を出力する出力部Eоを有する。このため、濃度計Dの異常をオペレータが知ることができ、処理の継続の可否を判断できる。
【0110】
(3)判定部233により目標濃度で無いと判定された場合に、濃度計Dの洗浄処理をさせる洗浄処理部24を有する。このため、濃度計Dの測定値にズレがあった場合に、洗浄処理を行って機能回復を行うことにより、製品不良の発生を低減できる。
【0111】
(4)処理液供給装置1は、大気圧を測定する気圧計Bを有する。このため、処理液供給装置1が設置された場所の気圧を正確に測定することができる。
【0112】
(5)処理液Lを希釈液により希釈する希釈部Iを有し、タンクTは、処理装置100に処理液Lを供給する供給タンクT1と、処理装置100において処理済みの処理液Lを回収する回収タンクT2と、新しい処理液Lを供給する新液タンクT4と、を含み、制御装置Eは、判定部233により所定範囲内と判定された場合に、濃度計Dにより測定された濃度に基づいて、加熱部H及び希釈部Iを制御することにより、供給タンクT1、回収タンクT2及び新液タンクT4の処理液Lの濃度を調整する濃度制御部22を有する。
【0113】
このため、複数のいずれかのタンクTの処理液Lで濃度計Dの機能チェックを行うことで、濃度計Dによる濃度制御を行う他のタンクTの制御の信頼性が高くなる。
【0114】
[変形例]
上記の実施形態は、以下のような変形例も構成可能である。
(1)設定濃度に対する許容範囲を、2段階で設定しておき、1段階の許容範囲を超える場合には処理液の洗浄を行い、2段階の許容範囲を超える場合には、処理液Lの供給を停止するようにしても良い。
【0115】
(2)濃度計Dが1つではなく、複数の濃度計Dを用いる場合についても、各濃度計Dの機能が正常か否かを確認できる。例えば、上記の図1で示したt4とt2が接続された経路、t4とt1が接続された経路に、それぞれ濃度計Dが設けられていても良い。また、バッファタンクT3は省略して、回収タンクT2から供給タンクT1に処理液Lが供給される構成としても良い。
【0116】
(3)上記の態様では、水添加によって処理液Lを希釈していたが、低濃度の新液を追加することで、希釈、つまり濃度低下を図ってもよい。さらに、処理液Lは、処理装置100へ供給する時の濃度と温度を所定の値に制御できていれば良いので、バッファタンクT3や回収タンクT2の目標濃度は、必ずしも供給タンクT1の目標濃度に合わせる必要はない。つまり、タンクT毎に、目標濃度を変更してもよい。例えば、加熱の制御性と水添加の制御性の差に応じて、目標値を変更することにしても良い。
【0117】
(4)検査部23、記憶部25の全部又は一部は、処理液供給装置1の全体を制御する制御装置Eに構成する場合には限定されない。制御装置Eとは別体の制御装置に構成してもよく、温度計TM、濃度計D等の制御部に構成してもよい。
【0118】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 処理液供給装置
2 回収タンク
4T 新液タンク
10a~40a 容器
12 駆動源
20a :容器
21 基板処理制御部
22 濃度制御部
23 検査部
24 洗浄処理部
25 記憶部
100 処理装置
100a チャンバ
101 回転部
101a 回転体
101b 保持部
101c 駆動源
102 供給部
102a ノズル
102b アーム
103 回収部
231 温度設定部
232 加熱制御部
233 判定部
B 気圧計
C 共通流路
D 濃度計
E 制御装置
Ei 入力部
Eо 出力部
F フィルタ
H 加熱部
H1~H4 ヒータ
I 希釈部
K 洗浄液供給回路
L 処理液
P1~P4 ポンプ
R1、R5 戻り配管
R2 回収配管
R3、R4 送液配管
S 供給経路
S1~S4 供給配管
SS 基板処理装置
SW 切替部
T タンク
T1 供給タンク
T2 回収タンク
T3 バッファタンク
T4 新液タンク
T5 共用タンク
TM 温度計
V1a~V6b、Vk1、Vk2、Vz バルブ
Z 排出路

図1
図2
図3
図4