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特開2023-142166円筒積層ゴム及び鉄道車両の軸箱支持装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142166
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】円筒積層ゴム及び鉄道車両の軸箱支持装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/387 20060101AFI20230928BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20230928BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230928BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20230928BHJP
   B61F 5/30 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F16F1/387 F
F16F1/40
F16F15/04 P
F16F15/08 K
B61F5/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048904
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】大坪 繁宏
(72)【発明者】
【氏名】北垣 啓
(72)【発明者】
【氏名】玉木 健斗
(72)【発明者】
【氏名】大庭 拓也
(72)【発明者】
【氏名】花井 勝祥
(72)【発明者】
【氏名】矢追 貴士
(72)【発明者】
【氏名】神谷 翔太
(72)【発明者】
【氏名】滝野 雄一郎
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD11
3J048BA08
3J048BA19
3J048BB03
3J048EA15
3J059AA04
3J059AC01
3J059BA42
3J059BA43
3J059BA54
3J059BC01
3J059BC06
3J059BD07
3J059CA14
3J059CB02
3J059DA18
3J059EA06
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】大変位を防止する規制部材の変形や当接位置のずれを生じさせない。
【解決手段】円筒積層ゴム1は、内筒2と、内筒2の外側で同軸配置される外筒3と、内筒2と外筒3との間に設けられ、ゴム5A~5Cと支持板6A,6Bとを外筒3の径方向へ交互に積層してなる積層部4と、内筒2と外筒3との間で径方向に形成される空隙部7と、を含むと共に、空隙部7内で内筒2に固定され、外筒3に向かって径方向に延びる内側規制部材10と、空隙部7内で外筒3に固定され、内筒2に向かって径方向に延びる外側規制部材20と、を備える。内側規制部材10及び外側規制部材20は、径方向で空隙を介して対向しており、積層部4の変形に伴って互いの内対向面14a,外対向面24a同士が当接可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、前記内筒の外側で同軸配置される外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられ、弾性部材と支持部材とを前記外筒の径方向へ交互に積層してなる積層部と、前記内筒と前記外筒との間で前記径方向に形成される空隙部と、を含む円筒積層ゴムであって、
前記空隙部内で前記内筒に固定され、前記外筒に向かって前記径方向に延びる内側規制部材と、
前記空隙部内で前記外筒に固定され、前記内筒に向かって前記径方向に延びる外側規制部材と、を備え、
前記内側規制部材及び前記外側規制部材は、前記径方向で空隙を介して対向しており、前記積層部の変形に伴って互いの対向面同士が当接可能となっていることを特徴とする円筒積層ゴム。
【請求項2】
各前記対向面は、面積が互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載の円筒積層ゴム。
【請求項3】
前記内側規制部材の前記対向面は、前記外側規制部材の前記対向面よりも面積が大きいことを特徴とする請求項2に記載の円筒積層ゴム。
【請求項4】
前記内側規制部材の前記対向面は、前記外筒の軸方向で前記外側規制部材の前記対向面よりも長いことを特徴とする請求項2又は3に記載の円筒積層ゴム。
【請求項5】
各前記対向面は、前記積層部が変形して互いに当接した際、前記内筒から前記外筒までの前記径方向の距離の1/3~2/3の位置にあることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の円筒積層ゴム。
【請求項6】
各前記対向面は、互いに平行な平面であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の円筒積層ゴム。
【請求項7】
前記内側規制部材及び前記外側規制部材は、芯材と、前記芯材の少なくとも前記対向面側を被覆して前記対向面を形成する被覆弾性部材とからなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の円筒積層ゴム。
【請求項8】
前記芯材は、前記被覆弾性部材よりも硬い材料で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の円筒積層ゴム。
【請求項9】
前記内側規制部材の前記芯材における内筒対向面は、前記内筒と同心円形状の湾曲面となっており、
前記外側規制部材の前記芯材における外筒対向面は、前記外筒と同心円形状の膨出面となっていることを特徴とする請求項7又は8に記載の円筒積層ゴム。
【請求項10】
前記内側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記積層部の前記弾性部材と前記内筒の外周面で繋がっており、
前記外側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記積層部の前記弾性部材と前記外筒の内周面で繋がっていることを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の円筒積層ゴム。
【請求項11】
前記内側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記内筒と前記芯材との間にも介在され、前記外側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記外筒と前記芯材との間にも介在されて、
各前記対向面の各前記被覆弾性部材の厚さは、前記内筒と前記芯材との間の前記被覆弾性部材の厚さ及び、前記外筒と前記芯材との間の前記被覆弾性部材の厚さ以下であり、
互いに当接した状態での各前記対向面の各前記被覆弾性部材と、前記内筒と前記芯材との間及び、前記外筒と前記芯材との間の各前記被覆弾性部材とは、前記径方向の圧縮歪みが略同一となるように設けられていることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の円筒積層ゴム。
【請求項12】
前記内筒の軸方向で、前記積層部における前記弾性部材の前記内筒外周面との当接部分の長さと、前記内側規制部材の長さとは、前記内筒の長さ以下となっており、且つ、前記内側規制部材の長さは、前記積層部における前記弾性部材の前記内筒外周面との当接部分の長さ以下となっており、
前記外筒の軸方向で、前記積層部における前記弾性部材の前記外筒内周面との当接部分の長さと、前記外側規制部材の長さとは、前記外筒の長さ以下となっており、且つ、前記外側規制部材の長さは、前記積層部における前記弾性部材の前記外筒内周面との当接部分の長さ以下となっていることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の円筒積層ゴム。
【請求項13】
輪軸を支持する軸箱体と、その上方の台車枠との間に、コイルバネと、請求項1乃至12の何れかに記載の円筒積層ゴムとを配置したことを特徴とする鉄道車両の軸箱支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両の軸箱支持装置に設けられる円筒積層ゴムと、当該円筒積層ゴムを用いた鉄道車両の軸箱支持装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の軸箱支持装置は、輪軸に対して台車枠を弾性支持するために設けられる。この軸箱支持装置は、輪軸を支持する軸箱体と、その上方の台車枠との間に、主に上下方向の荷重を受けるコイルバネと、主に水平方向の荷重を受ける円筒積層ゴムとを配置してなる。
円筒積層ゴムは、例えば特許文献1及び2に開示されるように、金属製の内筒と、内筒と同軸配置される外筒との間に、ゴムと金属板とを半径方向へ交互に積層した一対の積層部を介在させた構造となっている。周方向で積層部の間には、一対の間隙部が形成され、間隙部内には、内筒と外筒との何れか一方に固定されて他方側へ径方向に延びるゴム又はピン等のストッパ(規制部材)が設けられている。ストッパは、台車枠に対して軸箱体が大きく相対変位した際に、他方側と当接することで、円筒積層ゴムの大変位を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-247229号公報
【特許文献2】特開2012-77799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の円筒積層ゴムにおいては、内筒側又は外筒側の一方のみに規制部材を設けているため、規制部材が径方向に長くなる。よって、規制部材が変形(座屈)したり、他方側との当接位置にずれが生じたりするおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、大変位を防止する規制部材の変形や当接位置のずれが生じない円筒積層ゴム及び鉄道車両の軸箱支持装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、内筒と、前記内筒の外側で同軸配置される外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられ、弾性部材と支持部材とを前記外筒の径方向へ交互に積層してなる積層部と、前記内筒と前記外筒との間で前記径方向に形成される空隙部と、を含む円筒積層ゴムであって、
前記空隙部内で前記内筒に固定され、前記外筒に向かって前記径方向に延びる内側規制部材と、
前記空隙部内で前記外筒に固定され、前記内筒に向かって前記径方向に延びる外側規制部材と、を備え、
前記内側規制部材及び前記外側規制部材は、前記径方向で空隙を介して対向しており、前記積層部の変形に伴って互いの対向面同士が当接可能となっていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、各前記対向面は、面積が互いに異なっていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内側規制部材の前記対向面は、前記外側規制部材の前記対向面よりも面積が大きいことを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内側規制部材の前記対向面は、前記外筒の軸方向で前記外側規制部材の前記対向面よりも長いことを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、各前記対向面は、前記積層部が変形して互いに当接した際、前記内筒から前記外筒までの前記径方向の距離の1/3~2/3の位置にあることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、各前記対向面は、互いに平行な平面であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内側規制部材及び前記外側規制部材は、芯材と、前記芯材の少なくとも前記対向面側を被覆して前記対向面を形成する被覆弾性部材とからなることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記芯材は、前記被覆弾性部材よりも硬い材料で形成されていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内側規制部材の前記芯材における内筒対向面は、前記内筒と同心円形状の湾曲面となっており、
前記外側規制部材の前記芯材における外筒対向面は、前記外筒と同心円形状の膨出面となっていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記積層部の前記弾性部材と前記内筒の外周面で繋がっており、
前記外側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記積層部の前記弾性部材と前記外筒の内周面で繋がっていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記内筒と前記芯材との間にも介在され、前記外側規制部材の前記被覆弾性部材は、前記外筒と前記芯材との間にも介在されて、
各前記対向面の各前記被覆弾性部材の厚さは、前記内筒と前記芯材との間の前記被覆弾性部材の厚さ及び、前記外筒と前記芯材との間の前記被覆弾性部材の厚さ以下であり、
互いに当接した状態での各前記対向面の各前記被覆弾性部材と、前記内筒と前記芯材との間及び、前記外筒と前記芯材との間の各前記被覆弾性部材とは、前記径方向の圧縮歪みが略同一となるように設けられていることを特徴とする。
この「略同一」は、ゴム歪みが同一となる場合を含んで多少の誤差を許容する趣旨である。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記内筒の軸方向で、前記積層部における前記弾性部材の前記内筒外周面との当接部分の長さと、前記内側規制部材の長さとは、前記内筒の長さ以下となっており、且つ、前記内側規制部材の長さは、前記積層部における前記弾性部材の前記内筒外周面との当接部分の長さ以下となっており、
前記外筒の軸方向で、前記積層部における前記弾性部材の前記外筒内周面との当接部分の長さと、前記外側規制部材の長さとは、前記外筒の長さ以下となっており、且つ、前記外側規制部材の長さは、前記積層部における前記弾性部材の前記外筒内周面との当接部分の長さ以下となっていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、輪軸を支持する軸箱体と、その上方の台車枠との間に、コイルバネと、第1の構成の何れかに記載の円筒積層ゴムとを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、大変位を抑制する規制部材が内側規制部材と外側規制部材とに2分割されるため、それぞれ径方向に短くなる。よって、内側規制部材と外側規制部材との変形(座屈)や、両規制部材同士の当接位置のずれの発生が抑制される。また、両規制部材の設計の自由度(構造、強度、材料)も高くなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、各対向面の面積が互いに異なっているので、当接位置のずれを許容でき、変形時にも一定の当接面積が維持可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、内側規制部材の対向面が外側規制部材の対向面よりも面積が大きいので、対向面同士の相対的なずれを面積の大きい対向面で吸収できる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、内側規制部材の対向面は、外筒の軸方向で外側規制部材の対向面よりも長いので、軸方向での相対的なずれを効果的にカバーできる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、各対向面は、積層部が変形して互いに当接した際、内筒から外筒までの径方向の距離の1/3~2/3の位置にあるので、両規制部材を径方向に同じ長さで形成すれば同等の強度にできる。また、両規制部材の径方向の長さが異なっても、それぞれ形状・材質を調整して同等の強度にしやすくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、各対向面は互いに平行な平面であるので、両規制部材の相対位置が変化しても面接触しやすくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、内側規制部材及び外側規制部材は、芯材と被覆弾性部材とからなるので、両規制部材の当接初期に衝撃緩衝効果が得られ、互いの当接角度にずれが生じても被覆弾性部材で吸収できる。また、両規制部材と内筒及び外筒とを被覆弾性部材を介して加硫接着することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、芯材は被覆弾性部材よりも硬い材料で形成されているので、両規制部材の強度を維持できる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、内側規制部材の芯材における内筒対向面は湾曲面となり、外側規制部材の芯材における外筒対向面は膨出面となっているので、両規制部材を内筒及び外筒に固定しやすくなる。また、対向面同士が当接した際の衝撃が内筒及び外筒へ均等に伝わるため、応力集中による両規制部材の破損が抑制される。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、内側規制部材及び外側規制部材の各被覆弾性部材は積層部の弾性部材とそれぞれ繋がっているので、両規制部材が成形しやすくなる。また、被覆弾性部材の剥離防止にも繋がる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、各対向面の各被覆弾性部材の厚さは、内筒と芯材との間の被覆弾性部材の厚さ及び外筒と芯材との間の被覆弾性部材の厚さ以下となっており、互いに当接した状態での各対向面の各被覆弾性部材と、内筒と芯材との間及び、外筒と芯材との間の各被覆弾性部材とは、径方向の圧縮歪みが略同一となるように設けられているので、両規制部材が当接した際の低剛性部への応力集中による変形、破損が抑制可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、積層部の最内の弾性部材及び内側規制部材が内筒と同じ長さ若しくは内筒より短く、且つ最外の弾性部材及び外側規制部材が外筒と同じ長さ若しくは外筒より短いので、弾性部材と両規制部材との破損が抑制される。また、両規制部材が弾性部材の長さ以下となることで、両規制部材が積層部の軸方向の変形を阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】円筒積層ゴムの平面図である。
図2】円筒積層ゴムの正面図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4図1のB-B線断面図である。
図5図2のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、円筒積層ゴムの一例を示す平面図である。図2は、円筒積層ゴムの正面図である。図3は、図1のA-A線断面図、図4は、B-B線断面図である。便宜上図1の上側を前方、図2の上側を上方として、前後左右及び上下方向を規定する。
円筒積層ゴム1は、中央に位置する平面視円形の内筒2と、内筒2の外側に同軸配置される平面視円形の外筒3とを備えている。内筒2の上下方向(軸方向)の長さL1は、外筒3の上下方向の長さL2よりも長くなっている。外筒3は、内筒2の上下方向の長さの略中間位置に配置されている。
【0010】
内筒2と外筒3との間には、一対の積層部4,4が設けられている。各積層部4は、外筒3の径方向に、内筒2側から、平面視が内筒2と同心円弧状となるゴム5A,5B,5Cと支持板6A,6Bとを交互に積層してなる。ゴム5A~5Cは、支持板6A,6Bに加硫接着されている。最内のゴム5Aは、内筒2の外周面に加硫接着され、最外のゴム5Cは、外筒3の内周面に加硫接着されている。支持板6A,6Bは、上下方向の長さが内筒2より短く、且つ外筒3より長くなっているが、内側の支持板6Aが外側の支持板6Bよりも長くなっている。ゴム5A~5Cは、最内のゴム5Aが最も上下方向に長く、ゴム5B,5Cの順に短くなっている。
積層部4,4は、平面視が扇状となって、内筒2を中心とした左右の点対称位置に配置されている。よって、内筒2と外筒3との間で積層部4,4の間には、内筒2を中心とした前後対称に一対の空隙部7,7が形成されている。
【0011】
各空隙部7内には、内側規制部材10と外側規制部材20とがそれぞれ設けられている。
内側規制部材10は、内側芯材11と、内側芯材11の外面を被覆する被覆ゴム12とからなる。内側芯材11は、図3及び図5に示すように、平面視が四角形状で上下方向に延びる角柱状である。内側芯材11の径方向内側の外面は、対向する内筒2の外周面と同心円形状の湾曲面11aとなっている。内側芯材11の径方向外側の外面は、上下左右方向で規定される平面11bとなっている。
被覆ゴム12は、内側芯材11の上下端面を除いて内側芯材11の前後左右の外面を覆う格好で内側芯材11に加硫接着されている。被覆ゴム12において、内側芯材11の径方向内側に位置する内被覆部13が、内筒2の外周面に加硫接着されている。よって、内側規制部材10は、内筒2から径方向外側へ突出する状態で支持される。内被覆部13は、各積層部4の最内のゴム5A,5Aと内筒2の外周面で繋がっている。
被覆ゴム12において、内側芯材11の径方向外側に位置する外被覆部14の外面は、内側芯材11の平面11bと平行な内対向面14aとなっている。
【0012】
外側規制部材20は、外側芯材21と、外側芯材21の外面を被覆する被覆ゴム22とからなる。外側芯材21は、図3及び図5に示すように、平面視が四角形状で上下方向に延びる角柱状である。外側芯材21の径方向外側の外面は、対向する外筒3の外周面と同心円形状の膨出面21aとなっている。外側芯材21の径方向内側の外面は、上下左右方向で規定される平面21bとなっている。
被覆ゴム22は、外側芯材21の上下端面を除いて外側芯材21の前後左右の外面を覆う格好で外側芯材21に接着されている。被覆ゴム22において、外側芯材21の径方向外側に位置する内被覆部23が、外筒3の内周面に加硫接着されている。よって、外側規制部材20は、外筒3から径方向内側へ突出する状態で支持される。
被覆ゴム22において、外側芯材21の径方向内側に位置する外被覆部24の外面は、外側芯材21の平面21bと平行な外対向面24aとなっている。よって、内側規制部材10の外被覆部14の内対向面14aと、外側規制部材20の外被覆部24の外対向面24aとは、互いに平行となる。
内被覆部23は、外筒3の内周面に接着される薄肉のゴム25,25を介して積層部4の最外のゴム5C,5Cと繋がっている。
【0013】
内側規制部材10と外側規制部材20とは、左右の幅は共に同じであるが、上下方向の長さは、内側規制部材10の長さ(図3に示すL3:内側芯材11で規定される実質長さ)の方が外側規制部材20の長さ(図3に示すL4:外側芯材21で規定される実質長さ)よりも長くなっている。内側芯材11と外側芯材21も、左右幅は同じで、上下方向の長さは、内側芯材11の方が外側芯材21よりも長くなっている。
上下方向で、内側規制部材10の長さL3は、内筒2の長さL1よりも短くなっている。外側規制部材20の長さL4は、外筒3の長さL2よりも短くなっている。
内側規制部材10の内筒2の外周面からの突出量(径方向の距離)と、外側規制部材20の外筒3の内周面からの突出量(径方向の距離)とは互いに等しく、各突出量は、内筒2の外周面と外筒3の内周面との間の径方向の距離の半分よりも短くなっている。よって、内側規制部材10の内対向面14aと、外側規制部材20の外対向面24aとは、径方向に所定の間隙を保って互いに対向することになる。
【0014】
ここで、図5に示すように、互いに対向する外被覆部14,24の径方向の厚さt1,t2は互いに等しくなっている。また、この径方向の厚さt1,t2は、内筒2と内側芯材11との間の内被覆部13の径方向の厚さt3及び、外筒3と外側芯材21との間の内被覆部23の径方向の厚さt4よりもそれぞれ薄くなっている。
また、上下方向において、積層部4における最内のゴム5Aの内筒2外周面との接着部分の長さ(図4に示すL5)と、内側規制部材10の長さL3とは、内筒2の長さL1よりも短くなっている。さらに、内側規制部材10の長さL3は、最内のゴム5Aの接着部分の長さL5よりも短くなっている。
さらに、上下方向において、積層部4における最外のゴム5Cの外筒3内周面との接着部分の長さ(図4に示すL6)は、外筒3の長さL2と等しくなっている。また、外側規制部材20の長さL4は、外筒3の長さL2よりも短くなっている。さらに、外側規制部材20の長さL4は、最外のゴム5Cの接着部分の長さL6よりも短くなっている。
【0015】
以上の如く構成された円筒積層ゴム1は、鉄道車両の軸箱支持装置に、輪軸に対して台車枠を弾性支持するために設けられる。軸箱支持装置は、輪軸を支持する軸箱体と、その上方の台車枠との間に、主に上下方向の荷重を受けるコイルバネを備えた周知の構造である。円筒積層ゴム1は、コイルバネと同軸上で、軸箱体と台車枠との間に配置されて、内筒2が台車枠に、外筒3が軸箱体に、図1と同じ前後方向の向きでそれぞれ固定される。
よって、円筒積層ゴム1は、主に水平方向の荷重を受ける。前後方向に荷重が加わる場合は、積層部4,4が剪断変形し、左右方向に荷重が加わる場合は、積層部4,4が圧縮変形してそれぞれ緩衝作用を発揮する。
そして、加減速の際等に、台車枠に対する軸箱体の前後方向の相対変位が大きくなると、積層部4,4が大きく剪断変形する。すると、内筒2の前後何れかに位置する内側規制部材10と外側規制部材20とが相対的に接近し、内対向面14aと外対向面24aとを互いに当接させる。このため、円筒積層ゴム1の大変位を抑制することができる。
【0016】
特に、内側規制部材10と外側規制部材20とは、外被覆部14,24同士の当接となるため、緩衝作用も得られる。また、互いに当接した状態での外被覆部14,24と、内被覆部13と、内被覆部23とは、径方向の圧縮歪みが略同一となるように設定されている。よって、各被覆部13,14,23,24は均等に弾性変形し、部分的な応力集中が生じにくくなる。
内側規制部材10と外側規制部材20とは、それぞれ内筒2の外周面からの突出量と外筒3の内周面からの突出量とが等しく、内側規制部材10の内対向面14aと外側規制部材20の外対向面24aとは、内筒2と外筒3との径方向の距離の1/2付近で互いに当接する。よって、内側規制部材10と外側規制部材20との径方向長さがそれぞれ短くなり、両規制部材10,20の変形(座屈)や、内対向面14a、外対向面24a同士の当接位置のずれが生じにくくなる。
【0017】
このように、上記形態の円筒積層ゴム1は、内筒2と、内筒2の外側で同軸配置される外筒3と、内筒2と外筒3との間に設けられ、ゴム5A~5C(弾性部材)と支持板6A,6B(支持部材)とを外筒3の径方向へ交互に積層してなる積層部4と、内筒2と外筒3との間で径方向に形成される空隙部7と、を含む。そして、円筒積層ゴム1は、空隙部7内で内筒2に固定され、外筒3に向かって径方向に延びる内側規制部材10と、空隙部7内で外筒3に固定され、内筒2に向かって径方向に延びる外側規制部材20と、を備え、内側規制部材10及び外側規制部材20は、径方向で空隙を介して対向しており、積層部4の変形に伴って互いの内対向面14a,外対向面24a(対向面)同士が当接可能となっている。
この構成によれば、大変位を抑制する規制部材が内側規制部材10と外側規制部材20とに2分割されるため、それぞれ径方向に短くなる。よって、内側規制部材10と外側規制部材20との変形(座屈)や、両規制部材10,20同士の当接位置のずれの発生が抑制される。また、両規制部材10,20の設計の自由度(構造、強度、材料)も高くなる。よって、例えば、規制部材が1つの場合よりも強度の低い材料が使用できる場合がある。
【0018】
特に、内対向面14aと外対向面24aとは、面積が互いに異なっている。よって、当接位置のずれを許容でき、変形時にも一定の当接面積が維持可能となる。
この場合、内対向面14aが外対向面24aよりも面積が大きいので、外対向面24aの相対的なずれを内対向面14aで吸収できる。内対向面14aは、外対向面24aよりも上下方向に長いので、上下方向での相対的なずれを効果的にカバーできる。
内対向面14aと外対向面24aとは、積層部4が変形して互いに当接した際、内筒2から外筒3までの径方向の距離の1/2の位置にある。よって、両規制部材10,20を径方向に同じ長さで形成でき、強度等を同等に設計できる。
内対向面14aと外対向面24aとは、互いに平行な平面である。よって、両規制部材10,20の相対位置が変化しても面接触しやすくなる。
【0019】
内側規制部材10及び外側規制部材20は、内側芯材11及び外側芯材21と、内側芯材11及び外側芯材21を被覆して内対向面14a及び外対向面24aを形成する被覆ゴム12及び被覆ゴム22(被覆弾性部材)とからなる。よって、両規制部材10,20の当接初期に衝撃緩衝効果が得られ、互いの当接角度にずれが生じても被覆ゴム12,22で吸収できる。また、両規制部材10,20と内筒2及び外筒3とを被覆ゴム12,22を介して加硫接着することができる。金属製の内側芯材11及び外側芯材21の腐食防止にもなる。
内側芯材11及び外側芯材21は、金属(被覆ゴム12,22よりも硬い材料)で形成されている。よって、両規制部材10,20の強度を維持できる。
内側規制部材10の内側芯材11における内筒2との対向面(内筒対向面)は、内筒2と同心円形状の湾曲面11aとなっており、外側規制部材20の外側芯材21における外筒3との対向面(外筒対向面)は、外筒3と同心円形状の膨出面21aとなっている。よって、両規制部材10,20を内筒2及び外筒3に固定しやすくなる。また、内対向面14aと外対向面24aとが当接した際の衝撃が内筒2及び外筒3へ均等に伝わるため、応力集中による両規制部材10,20の破損が抑制される。
【0020】
内側規制部材10の被覆ゴム12は、積層部4,4のゴム5A,5Aと内筒2の外周面で繋がっており、外側規制部材20の被覆ゴム22は、積層部4,4のゴム5C,5Cとゴム25,25を介して外筒3の内周面で繋がっている。よって、両規制部材10,20が成形しやすくなる。また、被覆ゴム12,22の剥離防止にも繋がる。
内側規制部材10の被覆ゴム12は、内筒2と内側芯材11との間にも内被覆部13として介在され、外側規制部材20の被覆ゴム22は、外筒3と外側芯材21との間にも内被覆部23として介在されて、内対向面14aの外被覆部14及び外対向面24aの外被覆部24の厚さは、内被覆部13,23の厚さ以下である。また、互いに当接した状態での内対向面14a及び外対向面24aの外被覆部14,24と、内被覆部13,23とは、径方向の圧縮歪みが略同一となるように設けられている。よって、両規制部材10,20が当接した際の低剛性部への応力集中による変形、破損が抑制可能となる。
【0021】
内筒2の軸方向で、積層部4におけるゴム5Aの内筒2外周面との当接部分の長さL5と、内側規制部材10の長さL3とは、内筒2の長さL1より短くなっており、且つ、内側規制部材10の長さL3は、ゴム5Aの内筒2外周面との当接部分の長さL5より短くなっている。また、外筒3の軸方向で、積層部4におけるゴム5Cの外筒3内周面との当接部分の長さL6は、外筒3の長さL2と等しくなっており、外側規制部材20の長さL4は、外筒3の長さL2より短くなっている。そして、外側規制部材20の長さL4は、ゴム5Cの外筒3内周面との当接部分の長さL6より短くなっている。すなわち、ゴム5A及び内側規制部材10が内筒2より短く、且つゴム5C及び外側規制部材20が外筒3と同じ長さ若しくは外筒3より短いので、ゴム5A,5Cと両規制部材10,20との破損が抑制される。また、両規制部材10,20がゴム5A,5Cの長さ以下となることで、両規制部材10,20が積層部4の軸方向の変形を阻害することがない。
【0022】
以下、変更例を説明する。
上記形態では、内側規制部材の内対向面と外側規制部材の外対向面とは、内対向面が上下方向に長くなるように面積を異ならせているが、上下方向でなく、内側規制部材の左右幅を大きくして内対向面が周方向に大きくなるように面積を異ならせてもよい。上下方向と周方向との両方で内対向面の面積が大きくなるようにしてもよい。逆に、外対向面の方が内対向面より面積が大きくなるようにしてもよいし、内対向面と外対向面との面積を等しくしてもよい。
内側規制部材及び外側規制部材は、径方向で左右幅が同じとなる形態に限らない。例えば、内筒又は外筒との固定側から互いの対向面側へ向かうに従って左右幅が小さくなるテーパ状(平面視台形状)とすることもできる。これは芯材(内側芯材及び外側芯材を含む、以下同じ)についても同様である。
【0023】
内対向面と外対向面との当接位置は、内筒と外筒との径方向の距離の1/2に限らず、1/3~2/3の間にあるようにしてもよい。この場合も両規制部材で略同等の設計が可能となる。
内対向面と外対向面とは平面に限らない。応力集中による影響がなければ、互いに平行でなくてもよい。
被覆ゴムは、芯材の前後左右を被覆する形態に限らず、芯材の上下面を被覆させてもよい。被覆ゴムは、少なくとも対向面側にあればよい。よって、内被覆部を省略して芯材を直接内筒及び外筒に固定してもよい。この場合、芯材は内筒及び外筒と一体に形成してもよい。被覆ゴム自体を省略することもできる。
芯材は、金属製に限らない。被覆ゴムより硬い材料であれば、樹脂等で形成してもよい。複数の芯材と被覆ゴムとを径方向に複数重ねてもよい。
芯材における内筒及び外筒との対向面は、湾曲面及び膨出面としなくてもよい。例えば平面であってもよい。
内側規制部材と外側規制部材とは、同じ構造でなくてもよい。例えば一方の規制部材を芯材がない構造としたり、被覆ゴムがない構造としたり等、所望の緩衝作用が得られれば互いに異なる構造とすることは妨げない。
【0024】
内側規制部材及び外側規制部材の内被覆部は、積層部のゴムと繋がらない形態であってもよい。
内側規制部材と外側規制部材との外被覆部と内被覆部との径方向の厚みの関係は、上記形態に限定されない。例えば、各外被覆部がそれぞれ内被覆部と同じ厚みであってもよいし、各外被覆部がそれぞれ内被覆部より厚みが大きくなってもよい。
内側規制部材と外側規制部材との互いの外被覆部が当接した際の径方向の圧縮歪みは、応力集中による影響がなければ、各内被覆部の圧縮歪みと同一でなくてもよい。
上記形態では、内側規制部材の上下方向の長さL3は、積層部の最内のゴムの内筒外周面との当接部分の長さL5より短くなっているが、内側規制部材の長さL3は、最内のゴムの長さL5と同じであってもよい。当該当接部分の長さL5は、内筒2の長さL1と同じであってもよい。
また、積層部の最外のゴムの外筒内周面との当接部分の長さL6は、外筒の長さL2と等しくなっているが、最外のゴムの長さL6は、外筒の長さL2より短くなっていてもよい。さらに、外側規制部材の長さL4は、最外のゴムの長さL6と同じであってもよい。
【0025】
その他、積層部のゴムと支持板との数(層)は適宜増減可能である。支持板の形状も適宜変更できる。
積層部及び空隙部の形状は、上記形態に限定されない。
【符号の説明】
【0026】
1・・円筒積層ゴム、2・・内筒、3・・外筒、4・・積層部、5A~5C,25・・ゴム、6A,6B・・支持板、7・・空隙部、10・・内側規制部材、11・・内側芯材、11a・・湾曲面、11b,21b・・平面、12,22・・被覆ゴム、13,23・・内被覆部、14,24・・外被覆部、14a・・内対向面,20・・外側規制部材、21・・外側芯材、21a・・膨出面、24a・・外対向面、L1・・内筒の上下方向長さ、L2・・外筒の上下方向長さ、L3・・内側規制部材の上下方向長さ、L4・・外側規制部材の上下方向長さ、L5・・最内のゴムの内筒外周面との当接部分の上下方向長さ、L6・・最外のゴムの外筒内周面との当接部分の上下方向長さ。
図1
図2
図3
図4
図5