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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142196
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】固着診断装置および固着診断方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/00 20060101AFI20230928BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20230928BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20230928BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01H47/00 C
H01H9/54 C
G01R31/00
H02J7/00 Q
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048954
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
(72)【発明者】
【氏名】亀田 健太
【テーマコード(参考)】
2G036
5G034
5G503
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036AA27
2G036AA28
2G036BB06
2G036BB07
2G036CA06
5G034AC20
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA08
5G503EA09
(57)【要約】
【課題】リレーの固着診断にかかる時間を短縮できる固着診断装置および固着診断方法を提供すること。
【解決手段】固着診断装置は、電池の正極側に接続された正極側リレーおよび電池の負極側に接続された負極側リレーにおける固着の有無を診断する固着診断装置であって、正極側リレーの接点および負極側リレーの接点がともに閉状態にされる前に、正極側リレーの下流側と負極側リレーの上流側との間の電圧値である第1電圧値、および、負極側リレーと並列に設けられた診断回路の電圧値である第2電圧値を取得する取得部と、第1電圧値が第1閾値以上である場合には、正極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定し、第2電圧値が第2閾値以下である場合には、負極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定する判定部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の正極側に接続された正極側リレーおよび前記電池の負極側に接続された負極側リレーにおける固着の有無を診断する固着診断装置であって、
前記正極側リレーの接点および前記負極側リレーの接点がともに閉状態にされる前に、前記正極側リレーの下流側と前記負極側リレーの上流側との間の電圧値である第1電圧値、および、前記負極側リレーと並列に設けられた診断回路の電圧値である第2電圧値を取得する取得部と、
前記第1電圧値が第1閾値以上である場合には、前記正極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定し、前記第2電圧値が第2閾値以下である場合には、前記負極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定する判定部と、を有する、
固着診断装置。
【請求項2】
前記取得部は、
前記正極側リレーの接点および前記負極側リレーの接点がともに閉状態にされる前に、前記電池の電圧値である第3電圧値をさらに取得し、
前記判定部は、
前記第3電圧値に基づいて、前記第1閾値および前記第2閾値を算出する、
請求項1に記載の固着診断装置。
【請求項3】
前記電池、前記正極側リレー、および前記負極側リレーを備えた複数のバッテリーパックが並列に接続されている、
請求項1または2に記載の固着診断装置。
【請求項4】
前記取得部は、
前記正極側リレーの接点および前記負極側リレーの接点がともに閉状態にされた後、前記複数のバッテリーパックそれぞれの内部の電流値である第1電流値と、前記複数のバッテリーパックの外部の電流値である第2電流値とを取得し、
前記判定部は、
前記第2電流値と第3閾値を比較するとともに、前記第1電流値のそれぞれと第4閾値とを比較し、
前記第2電流値が前記第3閾値より大きい一方で、前記第1電流値が前記第4閾値未満である場合、当該第1電流値の取得元である前記バッテリーパックにおいて、前記正極側リレーおよび前記負極側リレーの少なくとも一方の接点が開状態のまま閉状態に遷移できない状態が発生していると判定する、
請求項3に記載の固着診断装置。
【請求項5】
電池の正極側に接続された正極側リレーおよび前記電池の負極側に接続された負極側リレーにおける固着の有無を診断するコンピュータが行う固着診断方法であって、
前記正極側リレーの接点および前記負極側リレーの接点がともに閉状態にされる前に、前記正極側リレーの下流側と前記負極側リレーの上流側との間の電圧値である第1電圧値、および、前記負極側リレーと並列に設けられた診断回路の電圧値である第2電圧値を取得するステップと、
前記第1電圧値が第1閾値以上である場合には、前記正極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定し、前記第2電圧値が第2閾値以下である場合には、前記負極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定するステップと、を有する、
固着診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に接続されたリレーの固着の有無を診断する固着診断装置および固着診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、充放電可能な電池と、電池から電力が供給される負荷と、電池の正極と負荷とを切離可能に接続する正極側リレー(以下、Pリレーという)と、電池の負極と負荷とを切離可能に接続する負極側リレー(以下、Nリレーという)とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上述した構成において、PリレーとNリレーそれぞれにおける固着の有無を診断(判定または検出と言い換えてもよい)する方法が知られている。
【0004】
例えば、Pリレーの固着の有無を診断する場合では、Pリレーをオフ(接点を開状態)にし、Nリレーをオン(接点を閉状態)にした状態でPリレーの下流側とNリレーの下流側との間の電圧を検出し、その電圧が閾値以上であれば、Pリレーに溶着が発生していると診断する。
【0005】
一方、Nリレーの固着の有無を診断する場合では、Nリレーをオフ(接点を開状態)にし、Pリレーをオン(接点を閉状態)にした状態でPリレーの下流側とNリレーの下流側との間の電圧を検出し、その電圧が閾値以上であれば、Nリレーに溶着が発生していると診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-221022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の方法では、PリレーとNリレーを交互にオン/オフする必要があるため、その切り替え動作に時間を要する。また、PリレーとNリレーがともにオンになると故障が発生するおそれがあるため、その防止のために、オン/オフを切り替える際には十分な時間を確保する必要がある。
【0008】
したがって、従来の方法では、リレーの固着診断に時間がかかるという課題がある。
【0009】
本開示の一態様の目的は、リレーの固着診断にかかる時間を短縮することができる固着診断装置および固着診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る固着診断装置は、電池の正極側に接続された正極側リレーおよび前記電池の負極側に接続された負極側リレーにおける固着の有無を診断する固着診断装置であって、前記正極側リレーの接点および前記負極側リレーの接点がともに閉状態にされる前に、前記正極側リレーの下流側と前記負極側リレーの上流側との間の電圧値である第1電圧値、および、前記負極側リレーと並列に設けられた診断回路の電圧値である第2電圧値を取得する取得部と、前記第1電圧値が第1閾値以上である場合には、前記正極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定し、前記第2電圧値が第2閾値以下である場合には、前記負極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定する判定部と、を有する。
【0011】
本開示の一態様に係る固着診断方法は、電池の正極側に接続された正極側リレーおよび前記電池の負極側に接続された負極側リレーにおける固着の有無を診断するコンピュータが行う固着診断方法であって、前記正極側リレーの接点および前記負極側リレーの接点がともに閉状態にされる前に、前記正極側リレーの下流側と前記負極側リレーの上流側との間の電圧値である第1電圧値、および、前記負極側リレーと並列に設けられた診断回路の電圧値である第2電圧値を取得するステップと、前記第1電圧値が第1閾値以上である場合には、前記正極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定し、前記第2電圧値が第2閾値以下である場合には、前記負極側リレーの接点が閉状態のまま開状態に遷移できない状態であると判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、リレーの固着診断にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態に係るバッテリーパックの構成を示す模式図
図2】本開示の実施の形態に係る固着診断装置の構成を示すブロック図
図3】本開示の実施の形態に係るオン固着診断方法の流れを示すフローチャート
図4】本開示の変形例に係るバッテリーパックの構成を示す模式図
図5】本開示の変形例に係るオフ固着診断方法の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
まず、本実施の形態に係るバッテリーパック1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、バッテリーパック1の構成例を示す模式図である。
【0016】
図1に示すように、バッテリーパック1は、電池10、Pリレー(正極側リレー)11、Nリレー(負極側リレー)12、抵抗13、14、電圧計15、16、17、電流センサ18を有している。
【0017】
電池10は、充放電可能な二次電池である。電池10としては、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、または全固体電池等を用いることができるが、これらに限定されない。また、図1では、バッテリーパック1内に設けられる電池10が1つである場合を図示しているが、電池10は複数個あってもよい。
【0018】
Pリレー11は、一端が電気配線(符号略)を介して電池10の正極と接続され、他端が電気配線(符号略)を介してジャンクションボックス2に接続された高電圧リレーである。
【0019】
Nリレー12は、一端が電気配線(符号略)を介して電池10の負極と接続され、他端が電気配線(符号略)を介してジャンクションボックス2に接続された高電圧リレーである。
【0020】
本明細書では、リレーの接点が開状態であることを「オフ」といい、リレーの接点が閉状態であることを「オン」という。なお、図1では例として、Pリレー11とNリレー12がともにオフであること(接点が開状態であること)を示している、
【0021】
抵抗13は、一端が電気配線(符号略)を介してPリレー11の上流側に接続され、他端が電気配線(符号略)を介してNリレー12の下流側に接続された抵抗器である。
【0022】
抵抗14(診断回路の一例)は、一端が電気配線(符号略)を介してNリレー12の上流側に接続され、他端が電気配線(符号略)を介してNリレー12の下流側に接続された抵抗器である。すなわち、抵抗14は、Nリレー12と並列に設けられている。
【0023】
電圧計15は、一端が電気配線(符号略)を介してPリレー11の下流側に接続され、他端が電気配線(符号略)を介してNリレー12の上流側に接続された計器である。図示は省略しているが、電圧計15は、後述する固着診断装置100(図2参照)と電気的に接続されている。
【0024】
電圧計15は、Pリレー11の下流側とNリレー12の上流側との間の電圧値(第1電圧値の一例)を検知し、その電圧値を固着診断装置100へ通知する。以下では、電圧計15により検知された電圧値を「検知電圧Va」と記す。
【0025】
電圧計16は、一端が電気配線(符号略)を介して抵抗14の上流側に接続され、他端が電気配線(符号略)を介して抵抗14の下流側に接続された計器である。図示は省略しているが、電圧計16は、後述する固着診断装置100(図2参照)と電気的に接続されている。
【0026】
電圧計16は、抵抗14の電圧値(第2電圧値の一例)を検知し、その電圧値を固着診断装置100へ通知する。以下では、電圧計16により検知された電圧値を「検知電圧Vb」と記す。
【0027】
電圧計17は、一端が電気配線(符号略)を介してPリレー11の上流側に接続され、他端が電気配線(符号略)を介してNリレー12の上流側に接続された計器である。図示は省略しているが、電圧計17は、後述する固着診断装置100(図2参照)と電気的に接続されている。
【0028】
電圧計17は、電池10の電圧値(第3電圧値の一例)を検知し、その電圧値を固着診断装置100へ通知する。以下では、電圧計17により検知された電圧値を「検知電圧Vc」と記す。
【0029】
電流センサ18は、一端が電気配線(符号略)を介してNリレー12の下流側に接続され、他端が電気配線(符号略)を介してジャンクションボックス2に接続された計器である。図示は省略しているが、電流センサ18は、後述する固着診断装置100(図2参照)と電気的に接続されている。
【0030】
電流センサ18は、バッテリーパック1の内部の電流値(第1電流値の一例)を検知し、その電流値を固着診断装置100へ通知する。以下では、電流センサ18により検知された電流値を「検知電流Ia」と記す。
【0031】
なお、図1では図示を省略しているが、複数のバッテリーパック1が1つのジャンクションボックス2を介して並列に接続されている。具体的には、ジャンクションボックス2の電気配線21には、図示しない他のバッテリーパック1のPリレー11の下流側が接続されており、ジャンクションボックス2の電気配線22には、図示しない他のバッテリーパック1のNリレー12の下流側が接続されている。
【0032】
また、ジャンクションボックス2には、電流センサ20が設けられている。図示は省略しているが、電流センサ20は、後述する固着診断装置100(図2参照)と電気的に接続されている。
【0033】
電流センサ20は、ジャンクションボックス2内の電流値(バッテリーパック1の外部の電流値である第2電流値の一例)を検知し、その電流値を固着診断装置100へ通知する。以下では、電流センサ20により検知された電流値を「検知電流Ib」と記す。
【0034】
上述したバッテリーパック1およびジャンクションボックス2は、車両(例えば、電気自動車)に搭載される。また、バッテリーパック1は、例えば、車両の動力源(図示しない走行用モータへの電力の供給源)として用いられる。なお、本実施の形態では例として、バッテリーパック1がジャンクションボックス2に接続される場合を例に挙げて説明したが、ジャンクションボックス2は必須の構成要素ではない。
【0035】
以上、バッテリーパック1の構成について説明した。
【0036】
次に、本実施の形態に係る固着診断装置100の構成について、図2を用いて説明する。図2は、固着診断装置100の構成例を示すブロック図である。
【0037】
固着診断装置100は、Pリレー11およびNリレー12における固着の有無を診断する装置である。具体的には、固着診断装置100は、オン固着診断方法およびオフ固着診断方法(ともに固着診断方法の一例)を行う。
【0038】
オン固着診断方法とは、Pリレー11とNリレー12のそれぞれにおいて、接点が閉状態(オン)のまま開状態(オフ)に遷移できない状態(以下、オン固着状態という)が発生しているか否かを診断する方法である。
【0039】
オフ固着診断方法とは、Pリレー11およびNリレー12の少なくとも一方において、接点が開状態(オフ)のまま閉状態(オン)に遷移できない状態(以下、オフ固着状態という)が発生しているか否かを診断する方法である。オフ固着診断方法は、オン固着診断方法の後に行われる。
【0040】
本実施の形態ではオン固着診断方法について説明し、オフ固着診断方法については後述の変形例で説明することとする。
【0041】
図示は省略するが、固着診断装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)等を有する。以下に説明する固着診断装置100の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。例えば、固着診断装置100は、ECU(Electronic Control Unit)によって実現される。なお、固着診断装置100は、バッテリーパック1の内部に設けられてもよいし、バッテリーパック1の外部に設けられてもよい。
【0042】
図2に示すように、固着診断装置100は、取得部110および判定部120を有する。
【0043】
取得部110は、Pリレー11およびNリレー12がともにオンにされる前に(換言すれば、バッテリーの起動前に)、電圧計15、16、17のそれぞれから、検知電圧Va、Vb、Vcを取得する。
【0044】
また、取得部110は、検知電圧Vcに基づいて、第1閾値および第2閾値を設定する。
【0045】
具体的には、取得部110は、検知電圧Vcの所定割合(例えば、95%)の値を算出し、その値を第1閾値に設定する。また、取得部110は、検知電圧Vcの所定割合(例えば、50%)の値を算出し、その値を第2閾値に設定する。なお、ここでいう所定割合は、予め定められているものとする。また、ここでは例として、第1閾値および第2閾値を検知電圧Vcを基に設定する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1閾値および第2閾値は、予め設定された電圧値が用いられてもよい。
【0046】
判定部120は、検知電圧Vaと第1閾値とを比較し、その結果に基づいて、Pリレー11におけるオン固着状態の有無を判定する。
【0047】
具体的には、判定部120は、検知電圧Vaが第1閾値以上であるか否かを判定する。検知電圧Vaが第1閾値以上である場合、Pリレー11にオン固着状態が発生していると判定する。一方、検知電圧Vaが第1閾値未満である場合、Pリレー11にオン固着状態が発生していないと判定する。
【0048】
また、判定部120は、検知電圧Vbと第2閾値とを比較し、その結果に基づいて、Nリレー12におけるオン固着状態の有無を判定する。
【0049】
具体的には、判定部120は、検知電圧Vbが第2閾値以下であるか否かを判定する。検知電圧Vbが第2閾値以下である場合、Nリレー12にオン固着状態が発生していると判定する。一方、検知電圧Vbが第2閾値より大きい場合、Nリレー12にオン固着状態が発生していないと判定する。
【0050】
また、判定部120は、上述した各判定の結果、すなわち、Pリレー11とNリレー12それぞれにおけるオン固着状態の有無を記憶部(図示略)に記憶する。なお、記憶部は、固着診断装置100の内部に設けられるものでもよいし、固着診断装置100の外部に設けられるものでもよい。
【0051】
なお、判定部120は、所定のタイミングで、判定結果を記憶部から読み出し、その判定結果を示す情報を所定装置(図示略)へ出力(送信)してもよい。その場合、所定装置は、判定結果の出力を行ってもよい。
【0052】
例えば、所定装置としては、車両に搭載された報知デバイス(例えば、ランプ、ディスプレイ、または、スピーカ等)、または、車両の外部に設置されたコンピュータ(例えば、整備者が使用可能な端末装置、または、ネットワーク上のサーバ等)が挙げられる。また、例えば、ディスプレイやコンピュータに出力される判定結果は、数字やアルファベットの組み合わせからなるコードであってもよい。
【0053】
以上、固着診断装置100の構成について説明した。
【0054】
次に、固着診断装置100が行うオン固着診断方法の流れについて、図3を用いて説明する。図3は、オン固着診断方法の流れを示すフローチャートである。
【0055】
図3に示すフローは、例えば、Pリレー11およびNリレー12がともにオンにされる前に開始される。
【0056】
まず、電圧計15、16、17のそれぞれから、検知電圧Va、Vb、Vcを取得する(ステップS1)。
【0057】
次に、取得部110は、検知電圧Vcに基づいて、第1閾値および第2閾値を設定する(ステップS2)。
【0058】
次に、判定部120は、検知電圧Vaと第1閾値とを比較し、かつ、検知電圧Vbと第2閾値とを比較する(ステップS3)。
【0059】
具体的には、判定部120は、検知電圧Vaが第1閾値以上であるか否かを判定し、かつ、検知電圧Vbが第2閾値以下であるか否かを判定する。
【0060】
次に、判定部120は、ステップS3の比較結果に基づいて、Pリレー11とNリレー12のそれぞれにおけるオン固着状態の有無を判定する(ステップS4)。
【0061】
具体的には、判定部120は、検知電圧Vaが第1閾値以上である場合、Pリレー11にオン固着状態が発生していると判定し、検知電圧Vaが第1閾値未満である場合、Pリレー11にオン固着状態が発生していないと判定する。
【0062】
また、具体的には、判定部120は、検知電圧Vbが第2閾値以下である場合、Nリレー12にオン固着状態が発生していると判定し、検知電圧Vbが第2閾値より大きい場合、Nリレー12にオン固着状態が発生していないと判定する。
【0063】
次に、判定部120は、判定結果(Pリレー11とNリレー12のそれぞれにおけるオン固着状態の有無)を所定の記憶部に記憶する(ステップS5)。
【0064】
その後、判定部120は、所定のタイミングで、判定結果を記憶部から読み出し、その判定結果を示す情報を所定装置へ出力(送信)してもよい。
【0065】
以上、オン固着診断方法の流れについて説明した。
【0066】
なお、本実施の形態では、オン固着診断方法は、Pリレー11およびNリレー12がともにオンにされる前に行われる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。オン固着診断方法は、Pリレー11およびNリレー12がともに、オンにされた後で(換言すれば、バッテリーの起動後)一時的にオフされた場合(例えば、車両が走行を開始した後で一時的に停車した場合)に行われてもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態の固着診断装置100は、電池10の正極側に接続されたPリレー11および電池の負極側に接続されたNリレー12における固着の有無を診断する装置であって、Pリレー11の接点およびNリレー12の接点がともに閉状態にされる前に、Pリレー11の下流側とNリレー12の上流側との間の電圧値である検知電圧Va、および、Nリレー12と並列に設けられた抵抗14の電圧値である検知電圧Vbを取得する取得部110と、検知電圧Vaが第1閾値以上である場合には、Pリレー11の接点が閉状態のまま開状態に遷移できないオン固着状態であると判定し、検知電圧Vbが第2閾値以下である場合には、Nリレー12の接点が閉状態のまま開状態に遷移できないオン固着状態であると判定する判定部120と、を有することを特徴とする。
【0068】
この特徴により、上述した従来の方法のようにPリレーとNリレーを交互にオン/オフする切り替え動作を行う必要がないため、速やかにリレーの固着診断(以下、単に診断ともいう)を開始でき、診断にかかる時間を短縮することができる。その結果、車両(例えば、電気自動車)を速やかに起動することができる。
【0069】
特に、複数のバッテリーパック1が並列に接続された構成において従来の方法を適用した場合、複数のバッテリーパック1を1つずつ順番に診断することとなり、時間がかかる。あるいは、複数のバッテリーパック1において同時に診断を行うとすると、固着が発生したバッテリーパック1を特定するために更なる診断を行う必要が出てくるため、時間がかかる。すなわち、従来の方法は、複数のバッテリーパック1が並列接続された構成における診断に適していない。
【0070】
これに対し、本実施の形態の固着診断装置100では、Pリレー11およびNリレー12を動作させることなく診断を開始できるので、並列接続されたバッテリーパック1の数が多いほど、より大きな時間短縮効果を発揮することができる。
【0071】
また、本実施の形態の固着診断装置100は、上述した従来の方法のようにPリレーとNリレーを交互にオン/オフする切り替え動作を行う必要がないため、その切り替え動作に必要な消費電力を削減することができ、省電力化を実現できる。
【0072】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0073】
例えば、固着診断装置100は、上述したオン固着診断方法の実行後(Pリレー11の接点およびNリレー12の接点がともに閉状態にされた後)、オフ固着診断方法を実行してもよい。上述したとおり、オフ固着診断方法とは、Pリレー11およびNリレー12の少なくとも一方においてオフ固着状態(接点が開状態のまま閉状態に遷移できない状態)が発生しているか否かを診断する方法である。
【0074】
以下、オフ固着診断方法の具体例について、図4図5を用いて説明する。図4は、本変形例に係るバッテリーパック1の構成を示す模式図である。図5は、本変形例に係るオフ固着診断方法の流れを示すフローチャートである。
【0075】
本変形例では、図4に示すように、2つのバッテリーパック1A、1Bがジャンクションボックス2を介して並列接続されている場合を例に挙げて説明する。バッテリーパック1A、1Bは、図1に示したバッテリーパック1と同じ構成であるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
まず、取得部110は、バッテリーパック1A、1Bそれぞれの電流センサ18から検知電流Iaを取得するとともに、ジャンクションボックス2の電流センサ20から検知電流Ibを取得する(ステップS11)。
【0077】
なお、取得部110および判定部120は、検知電流Iaの取得元(すなわち、検知電流Iaのそれぞれについて、バッテリーパック1Aから取得したものであるか、または、バッテリーパック1Bから取得したものであるか)を識別可能であるとする。
【0078】
次に、判定部120は、検知電流Ibと第3閾値とを比較し、各検知電流Iaと第4閾値とを比較する(ステップS12)。
【0079】
第3閾値、第4閾値は、それぞれ、例えば、オフ固着状態が発生していない場合における、ジャンクションボックス2を流れる電流値(絶対値)、バッテリーパック1A(1B)を流れる電流値(絶対値)である。例えば、第4閾値は、第3閾値よりも小さい値であり、バッテリーパックの数に応じて設定される。
【0080】
次に、判定部120は、ステップS12の比較結果に基づいて、Pリレー11とNリレー12の少なくとも一方におけるオフ固着状態の有無を判定する(ステップS13)。
【0081】
具体的には、判定部120は、検知電流Ibが第3閾値より大きい一方で、検知電流Iaが第4閾値未満である場合、その検知電流Iaの取得元であるバッテリーパックのPリレー11とNリレー12の少なくとも一方においてオフ固着状態が発生していると判定する。
【0082】
次に、判定部120は、判定結果(バッテリーパック1A、1Bのそれぞれにおけるオフ固着状態の有無)を所定の記憶部に記憶する(ステップS14)。
【0083】
その後、判定部120は、所定のタイミングで、判定結果を記憶部から読み出し、その判定結果を示す情報を所定装置へ出力(送信)してもよい。
【0084】
以上説明したオフ固着診断方法によれば、電圧値を用いての診断に比べて、精度良くオフ固着状態を検出することができる。例えば、車両の走行中において、図4に示すように、バッテリーパック1AのPリレー11でオフ固着状態が発生したとする。この場合、図4に示すようにバッテリーパック1BのPリレー11およびNリレー12が正常(ともにオン)であるかぎり、バッテリーパック1Aでは正常に電圧値が検知される。よって、電圧値に基づくオフ固着診断方法では、バッテリーパック1Aにおけるオフ固着状態の発生を検出することはできない。これに対し、本変形例では、電圧値ではなく電流値を用いてオフ固着状態の有無を判定するため、診断精度が向上する。
【0085】
なお、本変形例では、並列接続されたバッテリーパック1の数が2つである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。オフ固着診断方法は、3つ以上のバッテリーパック1が並列接続された場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示の固着診断装置および固着診断方法は、電池に接続されたリレーにおける固着の有無を診断する技術全般に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 バッテリーパック
2 ジャンクションボックス
10 電池
11 Pリレー(正極側リレー)
12 Nリレー(負極側リレー)
13、14 抵抗
15、16、17 電圧計
18、20 電流センサ
21、22 配線
100 固着診断装置
110 入力部
120 判定部
図1
図2
図3
図4
図5