(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023142197
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】コンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/00 20060101AFI20230928BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E02B7/00 C
E04G21/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048955
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悦央
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 俊久
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有洋
(72)【発明者】
【氏名】樋川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠史
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 清文
(72)【発明者】
【氏名】藤井 攻
(72)【発明者】
【氏名】平塚 毅
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 真
(72)【発明者】
【氏名】正井 洋一
(72)【発明者】
【氏名】朝山 順一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】杉並 和啓
(72)【発明者】
【氏名】横幕 歩
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 旭久
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172BA27
2E172CA11
2E172DB11
(57)【要約】
【課題】急勾配の箇所にも設置できるとともに、ベルトコンベアを所望の状態に洗浄することができるコンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法を提供することを目的とする。
【解決手段】傾斜地の頂部に設けられたコンクリート供給部11と、コンクリート供給部から供給されたコンクリートCを傾斜地の底部のコンクリート打設位置に運搬するコンクリート運搬部と、を備え、コンクリート運搬部は、運搬方向に直交する幅方向の両端部が上方で互いに近接した袋状のベルトコンベア20で構成され、ベルトコンベア20を洗浄する洗浄部14をさらに備え、洗浄部14は、袋状のベルトコンベア20の幅方向両端部を離間させる展開部64と、展開部64の下流側で、ベルトコンベア20を水洗浄する水洗浄部65と、水洗浄部65の下流側で、ベルトコンベア20に空気を吹き付ける空気洗浄部66と、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地の頂部に設けられたコンクリート供給部と、
前記コンクリート供給部から供給されたコンクリートを前記傾斜地の底部のコンクリート打設位置に運搬するコンクリート運搬部と、を備え、
前記コンクリート運搬部は、運搬方向に直交する幅方向の両端部が上方で互いに近接した袋状のベルトコンベアで構成され、
前記ベルトコンベアを洗浄する洗浄部をさらに備え、
前記洗浄部は、
前記袋状のベルトコンベアの幅方向両端部を離間させる展開部と、
前記展開部の下流側で、前記ベルトコンベアを水洗浄する水洗浄部と、
前記水洗浄部の下流側で、前記ベルトコンベアに空気を吹き付ける空気洗浄部と、を備えていることを特徴とするコンクリート搬送設備。
【請求項2】
前記洗浄部は、前記傾斜地の頂部に設けられている請求項1に記載のコンクリート搬送設備。
【請求項3】
前記洗浄部は、前記コンクリート供給部において前記ベルトコンベアの水分が除去された状態になるように配置されている請求項1または請求項2に記載のコンクリート搬送設備。
【請求項4】
生成されたコンクリートをコンクリート供給部からベルトコンベアに供給するコンクリート供給工程と、
前記ベルトコンベアを袋状に保持した状態で、前記コンクリートを運搬するコンクリート運搬工程と、
コンクリート打設位置において前記コンクリートを前記ベルトコンベアから受け取るコンクリート受取工程と、
前記コンクリートを排出した後の前記ベルトコンベアを洗浄するベルトコンベア洗浄工程と、を有し、
前記ベルトコンベア洗浄工程において、袋状のベルトコンベアの幅方向両端部を離間させた後、前記ベルトコンベアに対して水洗浄およびエア洗浄を行うことを特徴とするコンクリート搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダムの建設現場においてコンクリートを打設する方法として、コンクリートを製造するプラントを現場内に設け、当該プラントで生成されたコンクリートを打設現場までベルトコンベアを用いて搬送する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、ベルトコンベアを設置する箇所の勾配が25度程度までしか対応できず、さらなる急勾配の箇所においても直線的にコンクリートを運搬したい要望があった。また、ベルトコンベアにコンクリートを供給する際にベルトコンベアの表面に水分が付着しているとコンクリートの性状が変化する虞があるため、コンクリート供給時にはベルトコンベアの表面を乾燥させた状態にしたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、急勾配の箇所にも設置できるとともに、ベルトコンベアを所望の状態に洗浄することができるコンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート搬送設備は、傾斜地の頂部に設けられたコンクリート供給部と、前記コンクリート供給部から供給されたコンクリートを前記傾斜地の底部のコンクリート打設位置に運搬するコンクリート運搬部と、を備え、前記コンクリート運搬部は、運搬方向に直交する幅方向の両端部が上方で互いに近接した袋状のベルトコンベアで構成され、前記ベルトコンベアを洗浄する洗浄部をさらに備え、前記洗浄部は、前記袋状のベルトコンベアの幅方向両端部を離間させる展開部と、前記展開部の下流側で、前記ベルトコンベアを水洗浄する水洗浄部と、前記水洗浄部の下流側で、前記ベルトコンベアに空気を吹き付ける空気洗浄部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ベルトコンベアを袋状に構成することにより、急勾配の箇所に設置してもコンクリートが漏出することなく目的地まで確実に搬送することができる。また、ベルトコンベアを洗浄する洗浄部を設け、洗浄部において袋状のベルトコンベアを略板状に離間させる展開部と、水洗浄部および空気洗浄部と、を備えることにより、ベルトコンベアを効率的に洗浄することができる。
【0008】
また、前記洗浄部は、前記傾斜地の頂部に設けられていてもよい。
この発明によれば、傾斜地の頂部に洗浄部を設けることにより、コンクリートの打設工事が進んでも洗浄部の位置を移設する必要が無い。
【0009】
さらに、前記洗浄部は、前記コンクリート供給部において前記ベルトコンベアの水分が除去された状態になるように配置されていてもよい。
この発明によれば、ベルトコンベアの洗浄後に乾燥した状態でコンクリート供給部においてコンクリートが供給することができるため、コンクリートの性状が変化することなく安定した品質のコンクリートを打設することができる。
【0010】
本発明に係るコンクリート搬送方法は、生成されたコンクリートをコンクリート供給部からベルトコンベアに供給するコンクリート供給工程と、前記ベルトコンベアを袋状に保持した状態で、前記コンクリートを運搬するコンクリート運搬工程と、コンクリート打設位置において前記コンクリートを前記ベルトコンベアから受け取るコンクリート受取工程と、前記コンクリートを排出した後の前記ベルトコンベアを洗浄するベルトコンベア洗浄工程と、を有し、前記ベルトコンベア洗浄工程において、袋状のベルトコンベアの幅方向両端部を離間させた後、前記ベルトコンベアに対して水洗浄およびエア洗浄を行うことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ベルトコンベアを袋状に構成することにより、急勾配の箇所に設置してもコンクリートが漏出することなく目的地まで確実に搬送することができる。また、洗浄部において袋状のベルトコンベアを略板状に離間させた後、水洗浄部および空気洗浄部を行うことで、ベルトコンベアを効率的に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベルトコンベアを袋状に構成することにより、急勾配の箇所に設置してもコンクリートが漏出することなく目的地まで確実に搬送することができる。また、ベルトコンベアを洗浄する洗浄部を設け、洗浄部において袋状のベルトコンベアを略板状に離間させる展開部と、水洗浄部および空気洗浄部と、を備えることにより、ベルトコンベアを効率的に洗浄することができるコンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るコンクリート搬送設備の概略側面図である。
【
図2】本実施形態に係るコンクリート搬送設備の概略平面図である。
【
図3】本実施形態に係るベルトコンベアの概略構成斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るコンクリート運搬部の概略側面図である。
【
図5】本実施形態に係るコンクリート運搬部の概略平面図である。
【
図6】本実施形態に係るコンクリート搬送設備の頂部の概略構成平面図である。
【
図7】本実施形態に係る巻き上げ部の概略平面図である。
【
図8】本実施形態に係る洗浄部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態によるコンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法について、
図1乃至
図8に基づいて説明する。
【0015】
図1、
図2に示すように、本実施形態のコンクリート搬送設備1は、例えばダムの建設現場においてダムコンクリートCをコンクリート製造設備2からコンクリート打設位置3まで搬送するものである。なお、コンクリート製造設備2は、ダムコンクリートCの製造プラントであり、コンクリートCの材料となる骨材などは、輸送用ベルトコンベア5により外部からコンクリート製造設備2へと運搬する。
【0016】
コンクリート搬送設備1は、傾斜地4の頂部Tに設けられコンクリート製造設備2で製造されたダムコンクリートCを供給するコンクリート供給部11と、コンクリート供給部11から供給されたダムコンクリートCを傾斜地4の底部Bに運搬するコンクリート運搬部12と、コンクリート運搬部12を支持する支持架台13と、を備えている。なお、本実施形態の傾斜地4の勾配は約45°である。
【0017】
図2に示すように、コンクリート運搬部12は、傾斜地4の頂部Tと底部Bとの間を略直線的に結ぶように配設されている。
【0018】
図3に示すように、コンクリート運搬部12は、無端状のコンベアベルト20と、コンベアベルト20を支持するコンベアベルト支持機構25と、を備えている。コンベアベルト20は、運搬方向Xに直交する幅方向Yの両端部21,22が上方で互いに近接して二つ折りされた袋状の状態で運搬方向Xに沿って移動する。
【0019】
コンベアベルト支持機構25は、支持枠27に取り付けられたローラ支持板28と、ローラ支持板28の一方の端部21側の位置に取り付けられた外側支持ローラ29と、ローラ支持板28の外側支持ローラ29に対して内側(他方の端部22側)の位置に取り付けられた内側支持ローラ30と、を備えている。コンベアベルト20の一方側の端部21と他方側の端部22で構成される幅方向に二つ折りされた屈曲状態のコンベアベルト20の上縁部31は、外側支持ローラ29と内側支持ローラ30とで外内から挟持して支持されている。
【0020】
なお、ローラ支持板28は、支持枠27に固定される内外方向に延びる直線状の平板部33と、平板部33の内端から下方に延びる垂下部34と、を備えている。外側支持ローラ29は、平板部33の下面に回転可能に支持されている。内側支持ローラ30は、円錐台形状に形成され、垂下部34の外面に回転可能に軸支されている。
【0021】
外側支持ローラ29は、回転軸が略鉛直方向を向いており、コンベアベルト20の一方側の端部21に当接している。内側支持ローラ30は、回転軸が水平方向よりも若干傾斜した方向を向いており、コンベアベルト20の他方側の端部22に当接している。
【0022】
コンベアベルト20の一方側の端部21および他方側の端部22には、それぞれ膨出部37,38が形成されている。膨出部37,38は、上下方向に並ぶように配されることで、コンベアベルト20が袋状に保持されている。
【0023】
図1、
図4に示すように、コンクリート運搬部12は、支持架台13に支持固定されている。支持架台13は、傾斜地4の形状に合わせて柱状部材40を組み合わせて構築されている。柱状部材40は、鉄骨や軽量鉄骨などの鋼材で構成されている。支持架台13の上面13aにはコンクリート運搬部12が載置されている。コンクリート運搬部12は、鉄骨や軽量鉄骨で構成された枠部41を備え、枠部41の内部の空間にコンベアベルト20およびコンベアベルト支持機構25が運搬方向Xに沿って配設されている。
【0024】
図4、
図5に示すように、コンクリート運搬部12は、運搬方向Xの途中に所定間隔で中間駆動部45が設けられている。中間駆動部45は、1つの駆動プーリ46と、駆動プーリ46の前後に配された従動プーリ47,48と、を備えている。駆動プーリ46および従動プーリ47,48が軸中心に回転することにより、コンベアベルト20が搬送方向Xに動く。コンベアベルト20は、中間駆動部45において、従動プーリ47に案内された後、駆動プーリ46を通過して、従動プーリ48へ案内される。駆動プーリ46と、従動プーリ47,48とは、プーリの直径が異なっている。コンベアベルト20は、駆動プーリ46を通過する際に、Y方向にクランクするように各プーリ46~48の配置が決められている。駆動プーリ46は、回転制御を遠隔または自動で行うことができるように構成されている。駆動プーリ46が停止することでコンベアベルト20の移動は一時的に停止される。
【0025】
コンクリート運搬部12の下端には、コンベアベルト20で運ばれてきたダムコンクリートCを排出する排出口49が設けられている。排出されたダムコンクリートCは、生コン車などの打設装置50に供給されて、コンクリート打設位置3においてコンクリートCを打設することができる。
【0026】
ダムコンクリートCを排出したコンベアベルト20は、排出口49付近にて折り返し、コンクリート運搬部12を頂部Tに向かって戻っていく。底部Bに向かってくるコンベアベルト20と、頂部Tに戻っていくコンベアベルト20とは、コンクリート運搬部12の枠部41内において上下に所定距離位置ずれして配設されている。なお、上段には頂部Tから底部Bに向かうコンベアベルト20が配設され、下段には底部Bから頂部Tへ戻るコンベアベルト20が配設されている。
【0027】
図6に示すように、頂部Tにはコンベアベルト20の一部を巻き取るための巻き取り部15が設けられている。巻き取り部15は、コンベアベルト20の搬送径路上に設けられている。巻き取り部15は、後述する洗浄部14とコンクリート供給部11との間に配設されている。
【0028】
図7に示すように、巻き取り部15は、巻き取りプーリ55を備えている。巻き取りプーリ55は、鋼材からなる支持材56に移動機構57を介して支持されている。移動機構57は、巻き取りプーリ55を支持するプーリ支持材58と、プーリ支持材58と支持材56との間に介装された移動ローラ59と、移動ローラ59に連結されたワイヤー60と、ワイヤー60を巻き取り・繰り出しするウィンチ61と、を備えている。ウィンチ61を駆動させることにより、巻き取りプーリ55は、支持材56に沿って移動可能に構成されている。巻き取りプーリ55が移動することにより、巻き取り部15に進入するコンベアベルト20の長さを調整することができる。つまり、コンクリート打設位置3の高度が上昇して、コンクリート運搬部12の全長を短くする際に発生するコンベアベルト20の余長分を、巻き取りプーリ55を移動させることにより、巻き取り部15において吸収することができる。
【0029】
図8に示すように、洗浄部14は、枠部材63と、袋状のコンベアベルト20の両端部21,22を拡げる展開部64と、コンベアベルト20を水洗いする水洗浄部65と、コンベアベルト20にエアを吹き付ける空気洗浄部66と、を備えている。枠部材63の内部には、コンベアベルト20が通過可能な空間が形成されている。水洗浄部65は、水をコンベアベルト20の表面に向かって噴射する水ノズル67を備えている。空気洗浄部66は、空気を水洗浄後のコンベアベルト20の表面に空気を噴射する空気ノズル68を備えている。水ノズル67および空気ノズル68の大きさや個数などは適宜設定すればよい。空気洗浄部66を通過したコンベアベルト20の表面が乾燥した状態になるように構成されている。なお、洗浄部14にはブラシなどの物理的なもので洗浄する部位を設けてもよい。
【0030】
本実施形態のコンクリート搬送設備1を用いてダムコンクリートCを運搬する方法について説明する。
【0031】
コンクリート製造設備2で製造されたダムコンクリートCは、コンクリート供給部11においてコンベアベルト20へ供給される。このとき、コンベアベルト20の両端21,22は、互いに離間した展開状態に保持されている。
【0032】
ダムコンクリートCが供給されたコンベアベルト20は、両端部21,22を上方において近接させるように折り曲げて袋状に変形する。袋状のコンベアベルト20は、コンベアベルト支持機構25に支持されて運搬径路Xを案内されながら移動する。
【0033】
ダムコンクリートCが供給されたコンベアベルト20は、コンクリート運搬部12に案内される。コンクリート運搬部12は、傾斜地4の頂部Tから底部Bまで直線状に配設されており、コンベアベルト20は、コンクリート運搬部12を往復移動するように案内される。コンベアベルト20を袋状にしてコンクリーCを運搬することにより、傾斜地4の勾配は、45°まで対応できる。
【0034】
コンクリート運搬部12の途中には中間駆動部45が所定間隔ごとに配設されている。中間駆動部45は、例えばコンクリート運搬部12において約35mごとに設置されている。中間駆動部45によりコンベアベルト20はスムーズに移動する。中間駆動部45において、コンベアベルト20は運搬方向Xに対して若干クランクしている。万一、トラブルが発生しても中間駆動部45の駆動プーリ46を停止する非常停止装置を有することにより、ダムコンクリートCが重力によりコンベアベルト20内を底部Bに向かって流れ出ていくのを防止できる。
【0035】
コンクリート運搬部12の下端12aの展開部51において、コンベアベルト20の両端部21,22を袋状から板状に開くように展開し、ダムコンクリートCをコンクリート運搬部12の排出口49から搬出する。
【0036】
ダムコンクリートCが搬出されたコンベアベルト20は底部Bにおいて折り返して頂部Tへと戻るように移動する。その際、コンベアベルト20の両端部21,22は再び上方に近接するように移動させて袋状に変形させる。なお、コンベアベルト20は、袋状に戻さず、両端部21,22が展開された略板状の状態で頂部Tへ戻るようにしてもよい。
【0037】
頂部Tまで戻ってきたコンベアベルト20は、洗浄部14において両端部21,22が離間するように展開し、その後、水洗浄および空気洗浄をこの順番で行う。洗浄部14を通過する際には、コンベアベルト20が乾燥した状態に保持されている。
【0038】
その後、巻き取り部15を通過してコンクリート供給部11へと戻る。この動作を継続することによりダムコンクリートCを頂部Tからコンクリート打設位置3の底部Bへと連続的に運搬することができる。
【0039】
次に、コンクリート運搬部12の長さ調整(短縮)方法について説明する。
コンクリートCの打設が進み、コンクリート打設位置3の標高が上がってくると、コンクリート運搬部12の全長を短くする必要がある。
【0040】
コンクリート運搬部12を短くする場合、まず途中の枠部41を例えば1スパン分撤去する。枠部41を撤去する際は、例えば、展開部51に隣接するスパンの枠部41a(
図4参照)を撤去する。
【0041】
続いて、撤去した枠部41の運搬方向Xに沿う長さと同じ長さのコンベアベルト支持機構25を撤去する。この時コンベアベルト20の余長分はそのままにしておく。
【0042】
撤去した枠部41よりも下方に配設されているコンベア支持機構25および展開部51および排出口49などをクレーンなどで引き上げる。その際、支持架台13にスライド機構(不図示)などを設け、当該スライド機構に沿って引き上げてもよい。
【0043】
引き上げたコンベア支持機構25を上方のコンベア支持機構25と連結する。コンベア支持機構25、展開部51および排出口49を引き上げたことで下方に残置された支持架台13を撤去する。
【0044】
巻き取り部15において、巻き取りプーリ55を移動機構57により所定の方向に移動してコンベアベルト20の余長分を吸収する。
【0045】
上記方法によりコンクリート運搬部12の全長を短くすることができ、これを定期的に繰り返すことによりコンクリート運搬部12の全長を段階的に短くすることができる。
【0046】
本実施形態のコンクリート搬送設備1は、傾斜地4の頂部Tに設けられたコンクリート供給部11と、コンクリート供給部11から供給されたコンクリートCを傾斜地4の底部Bのコンクリート打設位置3に運搬するコンクリート運搬部12と、を備え、コンクリート運搬部12は、運搬方向Xに直交する幅方向Yの両端部21,22が上方で互いに近接した袋状のコンベアベルト20で構成され、コンベアベルト20を洗浄する洗浄部14をさらに備え、洗浄部14は、袋状のコンベアベルト20の幅方向両端部21,22を離間させる展開部64と、展開部64の下流側で、コンベアベルト20を水洗浄する水洗浄部65と、水洗浄部65の下流側で、コンベアベルト20に空気を吹き付ける空気洗浄部66と、を備えている。
【0047】
コンベアベルト20を袋状に構成することにより、急勾配の箇所に設置してもコンクリートCが漏出することなく目的地まで確実に搬送することができる。また、コンベアベルト20を洗浄する洗浄部14を設け、洗浄部14において袋状のコンベアベルト20を略板状に離間させる展開部64と、水洗浄部65および空気洗浄部66と、を備えることにより、コンベアベルト20を効率的に洗浄することができる。
【0048】
また、洗浄部14は、傾斜地4の頂部Tに設けることにより、コンクリートCの打設工事が進んでも洗浄部14の位置を移設する必要が無い。
【0049】
さらに、洗浄部14は、コンクリート供給部11においてコンベアベルト20の水分が除去された状態になるように空気洗浄部66を設けたため、コンベアベルト20の洗浄後に乾燥した状態でコンクリート供給部11においてコンクリートCを供給することができる。結果として、コンクリートCの性状が変化することなく安定した品質のコンクリートCを打設することができる。
【0050】
本実施形態のコンクリート搬送方法は、生成されたコンクリートCをコンクリート供給部11からコンベアベルト20に供給するコンクリート供給工程11と、コンベアベルト20を袋状に保持した状態で、コンクリートCを運搬するコンクリート運搬工程と、コンクリート打設位置3においてコンクリートCをコンベアベルト20から受け取るコンクリート受取工程と、コンクリートCを排出した後のコンベアベルト20を洗浄するベルトコンベア洗浄工程と、を有し、ベルトコンベア洗浄工程において、袋状のコンベアベルト20の幅方向両端部21,22を離間させた後、コンベアベルト20に対して水洗浄およびエア洗浄を行うことを特徴とする。
【0051】
コンベアベルト20を袋状に構成することにより、急勾配の箇所に設置してもコンクリートCが漏出することなく目的地(排出口49)まで確実に搬送することができる。また、洗浄部14において袋状のコンベアベルト20を略板状に離間させた後、水洗浄部65および空気洗浄部66で洗浄を行うことで、コンベアベルト20を効率的に洗浄することができる。
【0052】
以上、本発明に係るコンクリート搬送設備およびコンクリート搬送方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0053】
例えば、本実施形態は洗浄部14を傾斜地4の頂部Tに設けたが、洗浄部14の位置は任意である。
また、洗浄部14は、コンクリート供給部11においてコンベアベルト20の水分が除去された状態になるように配置したが、洗浄部14の出口において、若干水分が残っていてもコンクリート供給部11においてコンベアベルト20の表面が乾燥していればよい。
【符号の説明】
【0054】
1…コンクリート搬送設備 3…コンクリート打設位置 4…傾斜地 11…コンクリート供給部 12…コンクリート運搬部 13…支持架台 14…洗浄部 20…コンベアベルト(ベルトコンベア) 21…端部 22…端部 64…展開部 65…水洗浄部 66…空気洗浄部 C…ダムコンクリート(コンクリート) T…頂部 B…底部 X…運搬方向 Y…幅方向